連載小説
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1.探偵が賢者になるとき、問題は解決される
「失礼、します。」
扉をノックしても反応はなく、相談者は恐る恐る部屋に入った。
部屋は薄暗く、入ってすぐ見える革のソファーや年季の入った
木製の書斎机の存在は、学園内にもかかわらず、どこかの探偵事務所の
ような雰囲気を醸し出している。
それでも、人の気配は感じない。
「…あ、あのー。すいませーん。」
相談者は少しばかり、先ほどよりも声を張り呼びかけてみたが、
やはり人の反応らしいものは感じなかった。
「…留守、かな?」
残念だけど、一度出直そう。
そう思い、扉を閉め、踵を返した瞬間。
「用事かな?」
「ぴっ!!」
高身長の男が、私を見下ろしていた。
「先輩!余り悪戯が過ぎるようじゃかわいそうですよ!」
「ぴぴっ!!??」
先ほどまで全く人の気配がしなかった部屋から声が聞こえてきた。
恐る恐る扉を開けると、アラクネ…にしては異質な雰囲気を持つ、
私と同学年ぐらいの女の子がいた。
「君も中々悪戯をかましていたではないか?」
「先輩が声を掛けたら出てこようかと思ってましたし!」
「はっはっは、茶を出してくれ。」
「分っかりましたー!」
…私はどうやら、厄介なところに足を踏み入れたかもしれない、
そう感じた。

「お茶をどうぞー。」
素敵なカップにハーブティーが注がれ、目の前に置かれる。
「あ、ありがとうございます。」
カップを口元に運ぶ。
ハーブティーの香りが、ほんのりと甘く、気持ちが和らいだ。
「おいしい。」
飲むたびに、ぽかぽかと身体が火照り、ハーブの効能を感じる。
「どうもです!」
カップを戻した時、「先輩」と呼ばれた男が口を開いた。
「君は一年生の、スライムのニヒラ・ピラさんだったかな?」
「し、知ってるんですね。地味に生活してきた自負はあるんですが。」
「学園全員の名前と出身を覚えるのが趣味でね。私は「尾奈 仁太郎」。
知人には「たろうさん」なんかと呼ばれている。こやつには先輩と
呼ばれておるがな。」
「こやつとは何ですか!わたくしは「キミカ=ナクア」と申します!
先輩の助手などなどをしております!」
「キミカ」と呼ばれたその子はビシッと敬礼をしながら、
こちらに自己紹介をしてくれた。
「ど、どうも。」
「彼女は「アトラク=ナクア」とファントムのハーフでね。」
「ふっふん。得意なんですよ。隠れるの!」
…「アトラク=ナクア」といえば、アラクネの「名家」である。
しかし、目の前のこの子は、名家の子というよりも、もっと
違う育ちのように思えた。
「いやはや、我々が驚かせてしまったことは、謝罪しよう。」
「たろうさん」と呼ばれるその男はハーブティーを飲み干し、
こちらに向き直す。
「さて、ここに来たということは、何か相談事があってのことであろう?」
そうだった、私はここに来た目的を忘れかけていた。
「…えっと、はい。あの、実は…。」

彼女は、少しずつ、事の発端を話し出した。

---私が、もう一人いるらしいんです。
-もう一人?
---はい。
--それー、産んだ子とかじゃないんすか?スライムってポコポコ産まれるって
 聞いたことありますよ。
---ま、まだ産んだことなんかありません!
-ほう、因みに見間違いだったとかでもないのか?
---違う、と思います。
-もう少し、『事』の内容を聞かせてくれ。
---…学校で友達に聞いたんです。帰り道にあるスーパーやモールに寄ってたよねって。
  声をかけても無視されたから、どうしたのかなって思ったって…。
  でも、そもそも私、行くとしてもスーパーやモールには着替えてから行くので
  寄ることもないし、そもそもここ最近、一度も行ってないんです…!
--へえー、それはなんだか、怖いですね。
 因みに、学校ではそのもう一人の自分らしい人にあったことはあります?
---ないです。どうやら、私がいないところにいるそうで。
-見間違いではないっていうのは、あくまで友人からの情報と自分の情報から?
---はい…でも、聞いた感じ、特徴は完全に私と一致していて。
 この髪飾りとかも、同じく付けてたっていうんです。
 これ、姪っ子に作ってもらったのなんで、同じものなんてないですし。
--いいお姉さんですね!
---…正直、友人を無視したりとか、そういうのが
 自分の知らないところで勝手にされていて、噂になっているって
 いうのが耐えられなくて。
-早めに解決してほしい、と。

「なるほどな。」
ニヒラは喋るのを終え、カップのハーブティーを飲む。
仁太郎もキミカが注いでくれたハーブティーを飲み始めた。
「初めにその話を聞いてから、何日ぐらい経つんですか?」
ニヒラはカップを置く。
「…2週間、ぐらいかと。」
仁太郎はカップを置いた。
「ふむ…ふむ…。」
そういうと仁太郎は、コツコツと足音を鳴らしながら、
部屋から出て行った。
「…えっ!?ちょっと!」
「すいません、先輩の『クセ』でして…。」
「はぁ…?」
「いったい、毎度何をしているんだか…。」
分からんですなあ、と、わざとらしくキミカは顎に手を当てた。
「あ、あの!」
「大丈夫ですよ!問題は、ほぼ解決してるかと思いますので。」
ニヒラは、あんぐりと口を開けた。
「…こういう顔を、あんぐりっていうんですかね。」
「え!でも!さっき話したばかりですよ!」
「はい。まぁ、まだ完全な解決にはたどり着いてはいないとは思いますが、それは
明日の調査で、ですねー。」
「…はええ。」
「今日はもう遅い…といっても17時過ぎですが、日も暮れますので
お帰りください。」
どうぞー、とキミカは扉のほうにニヒラを手招く。
「わ…分かりました。」
「あ、そういえばニヒラさん。」
「はい?」
「何か部活はやってます?」
「あ、はい。陸上部で長距離をやっています。
今日は休みましたが…。」
「…そうですか。」
「どうしまし…って。」
いつの間にか、ニヒラの目の前にいたはずのキミカは、既に姿を消していた。
「あの…キミカさん?」
突然、部屋中が静寂に包まれた。
突然現れ、騒がしくなったかと思えば、すぐに静寂へと戻る。
この空間に、不思議というよりも、若干不気味さすら感じた。

「あ、別にカギはあとから先輩が掛けると思いますんでー。」
扉付近から、声が聞こえた。
どうやらキミカは、消えながら移動しているらしい。
「お…おったんかい。」
ニヒラは、力なく方言が出てしまった。


「さて。」
仁太郎は辛抱ならなかった。
カリカリとストレスを必死に抑え、カードキーを取り出し、
リーダーに通す。
近未来的な扉、というよりは門に近いそれは、静かに開いた。
仁太郎は門をくぐり、近くにあった椅子に腰を掛ける。
門は閉じられ、完全防音の個室が出来上がった。
「ふぅ…。」
足早にこの部屋に入ったのは、もちろん、いつも通り「抜く」ためである。
仁太郎は徐に、その準備を始めた。
今回の道具は、やはりこれであろう。
「TENGA…やはりお前だな…。」
仁太郎は先ほどの娘について独察を始めた…。

先ほど来たスライムの娘は…エロかった。
スライムという種族は、過去の生態では、裸で過ごす種族であった。
それは今でも変わらないと考えられる。
というのも、裸で過ごすほうが、彼女らの性質上、心地が良いのだ。
周りの湿度、温度、ほか多くの環境要素を、肌身で感じることで
ある時は襲い、ある時は身を潜めて、といった判断を的確に行い、
命を繋いできた。

仁太郎は膨れ上がった陰茎をTENGAに差し込む。
ぬちゅぬちゅとした触感や音は、まるでスライムに包まれているかの
ような気分になる。
仁太郎はTENGAを上下に振りながら、独察を続ける。

亜人と呼ばれるようになり、人と生活を共にするようになったから
といって、その性質をないがしろにするわけにはいかない。
人と同じように服を着て、人と同じように生活する必要がある。
しかし、スライムにとって、人と同じような服は少々厳しいものがあるのだ。
そこで生まれたスライム用の制服なのだが…。

「あの生地の薄さは…反則だろ。」

そう、薄いのだ。スライムにとって着心地が悪くないよう、できるだけ薄く、
周りから見られても恥ずかしくないように、特殊な作りをしている。
その結果、ギリギリ肌の色が分かるような分からないようなぐらいの薄さの
制服となっている。
しかしそれは、所謂日常生活を過ごしている間のみである。
彼女らが「液体」を口にしたとき、その本性が姿を現す。

「…あの胸と尻の膨らみ…」

スライムはその性質上、水を吸うと体が膨らむ。
そして…その性質は、過去に「魔物娘」として変質を遂げた
彼女らに、魔物娘らしさを色濃く残した。
つまり、特に胸部や臀部の肉付きが、だんだんと良くなるのだ。
薄く、通気性が良い、ひらひらとした制服を羽織った、果実袋を纏った青い果実が、
今にも旬を控える夏野菜のようにふっくらと、収穫のその時を待つように
袋を破ろうとはち切れんばかりに膨らんでいるのだ…!

手の動きが、膨らむ淫妄と等速に加速していく。

しかしまだ、まだ「それだけ」ならばまだ耐えられた。
恐ろしい一押しが、私の目に飛び込んできたのだ。
…乳房が、紅潮していたのだ。
原因はあのハーブティーである。体温を上げる効能があったのは知っていたが
まさかスライムにあのような化学反応を見せるとは思わなかった。
わずか、わずか5秒もないだろう。
ハーブティーを飲むたびに薄い制服の下で、乳房が紅潮し、ゆっくりと色を戻していくのだ。
初めは目を疑ったが、膨らんでいく胸とともに、その紅潮も目に見えて、はっきりと
にもかかわらずチラチラと主張していることに、私は気づいてしまった。
それは果実が水を与えられ、膨らみ、反応を見せ、パンパンに膨れ上がり、
隙間から、果実袋の隙間から、完熟したことを私に見せてくれる、愛らしさ…!
育ち切ったことをどうだと言わんばかり見せつけてくる、ある種の幼さ、いや
若さが…無邪気さが!

「うぅ…くっ!」

誰だってあんなものに包まれてしまいたいと思うだろう。あの果実を見せられて
反応しないものはいない。
最大瞬間風速が駆けるチラリズムと、成長性オーガニズムが、私の陰茎をギシギシと
刺激した。
そう…!私だけではないのだ!ほかの誰でも…!!

「なるほど!!」
私は射精した。

「ふぅぅ…。」
興奮は微熱を帯びつつも、思考は緩やかに峠を下っていく。
「モテるのだろうな…あの子は…。」
いくつかの独察を絡ませ、仁太郎はキミカへの伝言をまとめた。


次の日の昼休み、ニヒラは友人との会話の途中、トイレに向かった。
女子トイレの個室に入り、用のため洋式トイレに腰を掛けた。
「お待たせいたしました!」
瞬間、座った真後ろから声がした!
「ぴぃいい!?」
キミカの声である。背中から30pもない、後ろの壁から。
「あ、ああのあの!もがが!」
不意に口に手がかかり、音が口から出辛くなる。
「できるだけ手短に済ませますのでこのままで!別に女性の御用に御用は
御座いません故!」
キミカの声が耳元に近づいてくる。
「今日の放課後、もう一度あの部屋に来て下さい。原因が掴めました。」
「…えっ!」
「特に必要なものはありませんので。でもまあ、あえて挙げるなら『少しばかりの勇気』ですかね?」
なんですかそれ、と聞いてみたいところだが、まだ手を緩めてくれない。
「あと…そうですね、ニヒラさんはネタバレされても大丈夫な人です?」
ほんの少し、手が緩んだのでニヒラは背中のほうを向き変える。
それと同時に、ぼわっと手が消えていくのが見えた。
「気になるなら、5時間目の体育の時間。男子更衣室に潜んでみるといいですよー!」
声は最後、個室の中に投げ込まれるようにして、奇妙な気配は消え去っていった。
「…び、びっくりしたぁ…。」
ニヒラはなんとか、トイレの個室の中で落ち着きを取り戻していた。
キミカの言葉を思い出す。
「…ネタバレが好きなら、5時間目の男子更衣室に、か。」
ニヒラ自身、ネタバレは好きではない。ここはぐっと我慢して、放課後まで待つことにしよう。
それよりも、どこかに行ってしまった便意が、昼休み中に帰ってくるかのほうが、心配であった。

放課後、改めて異様さを感じる扉の前に立った。
「ここに、原因…きっと犯人が…!」
少しばかりの勇気とは、きっと知る勇気だろう。
私じゃない私が、そこにいるのだから。
足が少し震えているが、私は意を決して、その扉を開けた。
「こ、こんにちは!」
「ひい!」
気持ちが負けないよう、大きな声で入っていったが、それよりだいぶか弱い
悲鳴が聞こえ、ふっと我に返る。
「…えっと、え?」
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
小さな黒髪の少女が、ソファーに体を隠しながら、こちらに向かって、
小さな声で謝り続けていた。
「こ…これは?」
「ドッペルゲンガーだ。」
「ぴぃ!?」
「ひぇえ!?」
情けない声が、この部屋に2つ響いた。
意地の悪い探偵が、またしても相談者の背中から現れた。

「…ドッペル、ゲンガー?」
「あぁ。2年生のドッペルゲンガー、「北 陽炎(きた かげろう)」だ。」
「…小学生、ではないですよね?」
「高校、2年生だ。先輩だぞ?」
仁太郎がチクリとくぎを打つ。
「す、すいません。」
陽炎、と呼ばれた女の子は、未だにもじもじと、居づらそうに眼を右往左往に
泳がせていた。
「で、彼女がその…犯人なのでしょうか?」
「す…すいません!すいません!」
「まあ待て待て!事の流れを知る方が先決だ。」
「そうですよー!はい、お茶をどうぞ。」
今日は麦茶に茶菓子ですよーと、キミカは4つの湯呑に茶を入れ、濡れ煎餅が詰まった茶菓子入れを
持ってきた。
皆が一服し、若干ぴりついた空気が少し、穏やかになった。
「さて、事の全容についてだが…まあもったいぶらず、まずは端的に言おう。
こちらの陽炎さんが、貴女に惚れている陸上部の「赤岡」という男に惚れたことが、原因だったのだ。」
「…えっ。ええええ!」
「その様子じゃ、男子更衣室は覗いてないようですねー。実はモテモテですよ、貴女?」
「え、あの、ほんと知らない!ちょ、ちょっと待ってよ…」
突然の情報に、ニヒラは狼狽えるばかりである。
「その様子であるなら、少しずつ経緯を話すとしよう。まあ、経緯としても大したものではないのだが。」
「では私が話しますねー。」
キミカはメモを取り出し、全容を話し始めた。
「ニヒラ・ピラさんは…取り敢えず本人は、『平凡な生活を送る陸上部のスライム系女の子』と自称しておりますが、その実、陰では『屋外競技のマドンナ』と呼ばれる…乙女ゲー主人公かな、マドンナってのも中々に年代を感じますが…まあ、陰では、男子から注目の的となっている訳です。人気の理由は余り聞きませんでしたが、『中々良い』そうですよ?」
何がですかね、とキミカはわざとらしく顎に手を当てた。
「さてさて、一方、陸上部の『赤岡 大(あかおか だい)』君。高校1年生、普通人ですね。彼はホント、身長も成績も平々凡々の陸上部です。でもまあ、頼めば何でもやってくれるし、友達付き合いも良好で、『良いやつ』を地で行くような男だそうですね。そんな彼も、『屋外競技のマドンナ』に心惹かれる者の一人でした。」
そしてここで!とキミカは捲し立てる。
「そんな平々凡々の赤岡君を好きになってしまったのが!陽炎さん、貴女ですね?」
探偵を目の前に、探偵も顔負けの演技をやって見せ、ドヤ顔を浮かべるキミカとは
対称的に、恥ずかしさに顔が赤くしながら、青ざめているような表情になる陽炎であった。
「は…は…はひぃ。」
「…お茶をどうぞ。」
過呼吸気味になる陽炎を慰めるように、キミカは麦茶を陽炎の湯飲みに注いだ。
陽炎はそれを、一気に飲み干す。
「うくっ!うゅ!…はぁ。」
少しばかり、陽炎に落ち着きがみられる。
「陽炎さんは、すごい、地味な子です。同学年に聞いて回っても、『誰?』が七割、『知ってる気がする。』が二割五分、残り五分も『席が隣だった気がするけど、あまりよく知らない。』といったものばかりで、ほとんど情報が得られませんでした。
…それもそのはずです。貴女、いつもその姿でいませんよね?」
「…はい。」
陽炎は、小さく頷いた。
「過去の写真を眺めていましたが、学園のイベント、授業中ともに、貴女らしい人は見当たりませんでした。ただクラスにたった一人、貴女のクラスには不思議な『よくいる人』が、紛れ込んでいたからです。ある時は平凡な女子高生、男子高校生になるような、そんなよくいる人でした。
極度の恥ずかしがり屋である貴女は、常に『目立たない人』になりきり、日々を過ごしていたのです。」
「…キミカ、それは寧ろ特異的なことだったんじゃあないか?いつもクラスに『知ってるようで知らない人』が何度も登場しているのだからそういうのに詳しいやつの目には留まると思うが。」
「それが、所謂『錯覚』と呼ばれるところを突くのがドッペルゲンガーの『ドッペルゲンガー』たる所以でしてね。
『存在しているのにその存在に触れる人はいない』、人の目を滑る人という人には、結果、迂闊な噂一つ立たないというのが、どうやら事実らしいんですよ。」
「つまり、その異常性に誰も気づかなかったってわけか。」
「もちろん、教師たちは把握していましたが、彼女の性格と、ドッペルゲンガーの特性から、あまり触れない方針でいたそうです。」
さて、とキミカは話を切り返す。
「そんな、陰の存在として、静かに、波風一つ立てずに、高校生活を終えることは、彼女にとって、恥ずかしがり屋の彼女として最も高尚な目的…そのはずでした。彼という男に出会うまでは。」
キミカはペラペラとメモをめくり始める。
「出会いは今から3週間前、目立ちたがらない彼女は、珍しく目立つ行動を取ってしまいました。偶々通りかかった陸上部の部室、といっても正門近くなので通るときは通るんですが、そこで赤岡君に、備品を取り出すのを手伝ってほしいと言われたのです。
まさに偶然、一人で帰ろうとしているところを捕まえられてしまいました。」
キミカは麦茶を少し飲み、話を再開する。
「非常に、非常に陽炎さんは迷いました!困ったことに手を貸してくれる『当たり前の人間』を演じるか、それさえ断る『影の住民』を演じるか…。迷った結果、彼女はドッペルゲンガーらしく、『当たり前の人間』を指し障りなく演じることにしました。」
「楽しかったんです…!」
はっきりと、幼い声が聞こえた。
陽炎が口を開いたのだ。
「初めて…人と話した気がしました…。とても、とても楽しく会話をしました。すごく、楽しかったんです。
何を話したのか…覚えてないけど。すごく楽しかったことだけは、しっかり覚えてます。」
「…それから、どうしたんです?」
「もう一度…もう一度話したいって、思いました。それで、彼の好きな人になって、気持ちを惹こうと、思いました。」
陽炎は、ぐずぐずと涙声になりながらも、しっかりと答えた。
「それで、ニヒラさんの格好になったと?」
「…はい。」
「『影の住人』とは程遠い、目立つ格好をしてまで、話したかったのですか?」
「ごめん…ごべんなざい…!!」
最後は悲痛を叫ぶような、断末魔のような謝罪であった。
崩れる手前、キミカが陽炎を優しく抱きしめる。
「ごめんね…話してくれてありがとう。」
「うわああぁあぁ…。」
キミカの胸の中で、赤子が泣いていた。
初めて学生らしいことをした、青春を抱えた赤子が、ただ泣いていた。

「…さて。」
打って変わり、仁太郎はニヒラに問いかけた。
「どう思う…って、聞こうと思ったが、君も泣いているじゃないか。」
「…ごめんなさい、途中から聞いていたけど。もらい泣きしちゃって。」
ニヒラも目からなぜか、涙がこぼれていた。
それをぬぐいながら、ニヒラは彼について、話し始めた。
「赤岡ねぇ…。友達としては、ほんとにいいやつだし、何でもやってくれるし。頼りにはなるんだけど…そっか。そういう風には考えてなかったなあ。」
「…気になってきたかな?」
「うーん。正直、モヤモヤするんだ。赤岡がどの程度本気で考えているのか知らないけど、少なくとも…陽炎さんの気持ちは本気なんだなって思ったし。でも、それでも好きになってもらおうと思って私の姿になったってのも…。」
ニヒラは、彼女なりに本気で悩んでいた。
そして、よし、と一言掃き出し、腹を決めたようだ。
「私は、赤岡と付き合っても良いって思う。」
「…ぞんなぁ。」
キミカの胸から、弱々しい叫びが聞こえた、気がした。
「でも一番は、彼の気持ちを聞かないといけないなって思うんだ。そろそろ、部活が終わる時間だし。」
ニヒラは、ケータイを取り出し、彼にlineを送った。
「校舎裏に、彼を呼び出すよ。」


夕暮れ時、こんな時、意中の女の子から校舎裏に呼び出されて、
何も思わない男子などいるだろうか。
そわそわしながら、赤岡が校舎裏にやってきた。
「ニヒラ!ごめん、待たせた。」
「ううん、全然。」
「最近部活に来てなかったけど、大丈夫か?」
「うん、明日からはちゃんと行くつもり。今日はちょっと、赤岡と話がしたくて。」
ぷにぷにと、ニヒラは自分の頬を突きながら、赤岡に背を向けた。
「…あのさ、私に、何か言いたいこと、あるんじゃない?」

遠くのほうから、仁太郎、キミカ、そして陽炎がその様子を見守っていた。
その様子を見て、陽炎はずっと、あぁとおぅとか言っている。
「ここに来て奥手か。」
仁太郎はやれやれと首を振った。
「呼び出しておいて言いたいことあるかって、普通怒られる前の常套句ですよね?」
「あぁ。何を言っても言い訳になるやつ。」
「ちなみに先輩、私に何か言いたいことあります?」
「…うーん。」
「どうぞどうぞ、何でもお言いなすって下さい。」
「あのなあ。」
「はい。」
「茶菓子が、そろそろ切れそうだから…買っておいてくれないか?」
「ジジババの会話じゃないですか。」
「まあ、そうなるのでいいところだが。赤岡君なら、まあ空気を読むんじゃないか?」
「いいやつそうですからね。かれ。」

「言いたい、ことか…。」
どうやら、彼も腹を決めたようだ。
「実は…ニヒラ。お前のことが好きだったんだ。」
「…ふーん。」
お高く調子を返してみるが、顔が見える3人組からは、いまにも溶けそうなほど顔を歪ませていることがはっきり分かった。
「…ど、どど、どういうところが、好きなん?」
どうにも言い切れず、訛ったようにニヒラは聞き返した。
「そりゃもう!全部だよ!」
「あひゃ…ふん、ふふんーふ?そう?」
ニヒラはもう、崩壊寸前である。
次の質問と焦ぐように、ニヒラは切り出した。
「なな…何がきっかけだったのさ?」
この質問に、赤岡は言葉を詰まらせた。
「…きっかけか。」
赤岡は、思い返すように語りだす。
「4月後半のさ、一緒に長距離を走ったの、覚えているか?」
「あ…あぁ、うん。練習時間が短いからって、男女一緒に走ったやつだよね。」
「ああ、俺も高校から始めた陸上部だったし、体力には自信がなくて女子と一緒に走ってたんだ。」
「…そういえば、足の速い男子に『そんなに女子と混ざって走って、モテたいのかよ!』って、赤岡、言われてたよね。」
空気が穏やかになり、ニヒラはくすっと笑った。
「あれは…まあしかたなかったさ。」
「…じゃあ何さ、そこで意識しちゃったわけ?」
「いや、その後だ。」
赤岡は確信を持った目で彼女をしっかりと見つめた。
「ニヒラと、肩が当たったんだ。」
「…あっ。」
ニヒラは思い出した。

あの日、赤岡と並んで走っていた時のことだ。
赤岡はぜえぜえと息を切らしながら、ゆらゆらと走っていて。
大丈夫か、走れるか?と私は声を掛けていた。
そして、ふとした瞬間、赤岡は私のほうに大きく体を揺らし、私と肩が当たった。。
私は赤岡が倒れるんじゃないかと不安になったものだが、
赤岡はそれで目を覚ましたかのようにまっすぐ走りだしたのだ。

「あの後の赤岡は凄かったね。練習時間ぎりぎりまで走ってたもんね。
今思えば、初めてのランナーズハイだったんじゃない?」
実際、赤岡の陸上長距離のタイムは、あの頃からずっと縮みっぱなしである。
秋には大会での好成績も望めるんじゃないかって言われているほどだ。
「…私の、おかげだったのかな?」
ニヒラは、気持ちを整えて、赤岡の方に振り返った。
「赤岡。」
「柔らかかったんだ…。」
「…うん?」

「ステェイ!!」
どこかの草むらから声が聞こえたが、どうやら届かないようである。
「俺さ…スライム好きなんだよね。」
「…わたしのこと?」
「ああいや、ニヒラも好きなんだけど…あの、科学の授業で作るやつ。」
「ああ、あれね。ぷにぷにの。」
「そう、ぷにぷにの。ずっと触ってられるくらい好きなんだけどさ。」
赤岡は、じっと、ニヒラの肩を見ていた。
「あの日当たった感触が忘れられなくてさ。すごいって思ったんだよ!
だってスライムって本当にスライムなんだなって思ってさ!!」
「まって、赤岡。」
「でも違うんだよ!どう配分してもあの感触にはならなくてさ!
あぁ!あれが生きているんだって!ニヒラの生きたスライムなんだって実感する毎日だったんだ!」
「…。」
「だから…もし、ニヒラの体に触って、あまつさえ包まれてしまったなら、
俺はそれ以上の幸せはないんだろうなって、思ったんだよ。」
「…それが、きっかけ?」
「あぁ、それがきっかけだ。」
赤石は、まっすぐに彼女を見た。
「ニヒラ!」
「…何?」
「俺と一緒に!スライムを作ってくれ!お前のあの感触が!俺は欲しいんだ!」

やがて本格的な夏に差し掛かる、じめっとした暑さが、一帯を包み込んだ。
「…赤岡。」
「…なんだ?」
「目、つぶって。」
「…分かった。」
彼女の要望に応えるべく、彼はしっかりと目を閉じた。
ニヒラは、彼に近寄り、しっかりと、頬に、
狙いを定め、利き腕である右腕で、スナップを利かしながら、
勢い良く体をねじり、遠心力を最大限に大きくして、
彼の頬を打った。

パァァァァァァンと、はじけるような音がした。
人間でいうところのデンプシーロールをスライムが本気で放ったわけだが、
あれはまだ、スライムが魔物娘よりずっと前、本当にただの魔物だった頃、
高練度のスライムが巨大な動物をしとめる際、体を最大限ねじり、遠心力を利用しながら顎を狙って打撃を与え気絶させ、その後じわじわと取り込むときに使っていた技と、奇しくも似ていた。
「…過去の文献通りならば、あの後赤岡はスライムの捕食されるんだが。」
「馬鹿な奴ですよ、ホント。」
ニヒラの表情は、向こうに顔をむけてしまっていて分からない。
しかし、不思議なことに3人には、ニヒラの表情がいまにも溶けそうなほど顔を歪ませていることがはっきり分かるようだった。

「あ…赤岡さああん!!」
最悪の空気を打ち破ったのは、陽炎だった。
目の前の惨状に、思わず走り出してしまった。
恥も構わず、赤岡の脈を確認する。
「よがった!生きてる!!」
「…流石に殺しはしないよ。」
ニヒラは深いため息をついた。
「はあぁ。なんかなぁ、期待した私が馬鹿みたいじゃんか。
これでも、大分心動かされたんだけどなぁ。」
ニヒラは落ちかけた太陽を見据える。
「これが、失恋か…なんだかなぁ。」
「あ…あの。」
陽炎が思わず、しゃべりだした。
「じゃあ…もう、いいんですか?」
「え…うん。当たり前だよ。…え”っ?」
「え?」
ニヒラは何かを察したらしく、陽炎の肩をしっかりとつかんだ。
「陽炎さん!!やめとけ!!こいつだけは絶対やめとけ!!」
「えっ、でも。」
「こいつはただのクソキチスライムバカだよ!ある意味、私のことも眼中になかった馬鹿だよ!!??」
「あの…ばかはかわいそうです…」
「いや!むしろ『馬鹿』に失礼なレベルだよ!むしろ『馬鹿』がかわいそうだよ!それぐらい残念だよ!やめときなって!!」
ニヒラは、熱く、熱く熱弁した。ストレスでボキャブラリーが削られていても、それでも熱弁した。
「あの…でも。」
それでも、陽炎の気持ちは変わらなかった。
恥ずかしそうに、赤岡の頭を抱えながら、ニヒラをまっすぐ見つめた。
「…はぁ。貴女も馬鹿ですね。もうなんか、いろいろ返してほしいよ。」
ニヒラも陽炎をまっすぐ見つめた。
「絶対、後悔しますよ?」
「…はい。」
「絶対、止めた方が良いですよ?」
「はい。」
「分かってて、どうして?」
「…どうしても、惚れちゃったので。」
陽炎は、影の住人とは思えないほど、柔らかく笑った。
「…分かりましたよ。」
ニヒラはその場を立ち去ろうと、荷物をまとめた。
「陽炎さん、赤岡に伝えといて下さい。『今日のことは忘れてやるから、ちゃんと練習に来い』って。そいつ、なんだかんだでうちのホープなんで。」
「分かりました。」
「あと…『近寄ったら殺すって。』とも。」
「まあ…はい。」
「んでは…お幸せに。」
「…はい!」
ニヒラは残った気力で、精いっぱい陽炎に微笑み、その場を後にした。

「なんだかんだで、ハッピーエンドじゃないか。」
遠くから眺めていた仁太郎は、踵を返し部室に戻り始めた。
「当の相談者が一番傷を負っている気がしますがね。」
「まあ、それも青春だよ。」
にしても、と仁太郎は話し始めた。
「普通に見えている人間というのは、案外一番、変態性を秘めているのかもしれんな。正直感動したよ。」
「趣向とは、秘めるほど深く歪に、開くほど大胆で鮮明になるらしいですよ。」
「まあ、彼もまた、成長するだろう。陽炎さんのことを、どう思うか知らないがね。」
「そうですね、正直、陽炎さんがうまいこと彼にだまくらかされるような未来しか思いつきませんが。」
「そうなったら、今度は彼女が相談者か。ならば、その時まで貯めておこう。」
「何をです?」
「いやいや、何でもない。」
「…ばれてないと思ってんですかね。」
「どうした?」
「なんでもないですよ。でも…案外うまいこと行くかもしれませんがね。」

校舎裏、太陽が沈みかけ、ちらちらと街灯がつき始めている。
「…ハッ!」
赤岡は目を覚ました。瞬間、頬に激痛が走った。
「ぐあぁ…。」
なんとなく、記憶が戻ってきた。
あぁ、確か俺、振られたんだっけ。あれ、でもなんか柔らかい。
ゆっくりと、もう一度目を覚ますと、スライムの女の子がこちらを見下ろしていた。
「…だ、大丈夫ですか?」
「…。」
その姿は、ニヒラそっくりだった。
「…陽炎、さん?」
「…え、えぇ!!」
しゅん、と元の姿に戻った陽炎は、驚愕していた。
極度の恥ずかしがり屋とはいえ、彼女は立派なドッペルゲンガーだ。
その姿を見破られたのは、あの2人組だけである。
それも、中々苦戦したようであり、ここまで、まっすぐ当てられたのは初めてだ。
「あ、あの…なんで。」
「…俺も、同じだからさ。」
「えっ!ドッペルゲンガーですか?!」
「いや…ホント、普通の人間だよ。ただ…普通の人間でいたいだけの、外れた人間。」
「えっ…」
「つっ。ニヒラもひどいな。ごめん…もう少し、このままでいい?」
「あっ…はい。」
赤岡が陽炎に膝枕をされ、少し静寂が訪れた。
虫の声やカエルの声がこだましている。
「あ…あの。」
「うん?」
「ニヒラさんが、『今日のことは忘れてやるから、ちゃんと練習に来い』って。ホープなんですって。」
「ははっ…それは、助かる。あまりバレたくないし。」
「あと…『近寄ったら殺すって。』ですって。」
「…だよなあ。」
「あ…あの。気に障るようでしたら、ごめんなさい…ですが。」
「うん。」
「やっぱり、ニヒラさんが好き、でしたか?」
「…そう、だったんじゃないかな。」
「…というと?」
「…こちらこそ、ごめんなさい、になるんですが。愚痴っぽくなっていい?」
「どうぞ。」
赤岡は、ふうっと息を吐くと、ゆっくりと話し始めた。
「…さっきも言ったけど、俺、普通でいたい人なんだ。」
「はい。」
「幼い頃から、なんとなく、自分が普通の人とのずれているのに気づいていたんだ。そりゃ、小学校ぐらいまでは『人と違う考え方ができる自分』が好きだったんだけど、中学…高校上がる前ぐらいからかな。それが、『すごい気持ち悪いことなんじゃないか』って思い始めたんだ。」
「はぁ。」
「だから、高校デビューじゃないけど、これからは普通の人らしくをモットーに、普通の人らしく振舞おうって思ったんだ。普通に勉強して、普通に部活して…普通に、恋とかしてみて。それで、ニヒラと出会ったんだ。」
「…。」
陽炎は、思わず、口をつぐんでしまう。
「実際、ニヒラはかわいいと思ったし、好きじゃないかと聞かれたら好きだと答えるよ。…でも、その好きってのが、陰でみんなが可愛いって、エロいって言ってるのを、ただ同調してるんじゃないかって、こわくなっちゃって。」
「…。エロ?」
「…絶対、口外しちゃいけないからね。でも、だから自分なりの好きなところを見つけなきゃいけないんじゃないかなって必死になっているうちに、また俺は、普通じゃなくなっていたんだ。」
赤岡は、腕で目を隠し、堪えていた。
「俺って、気持ち悪いよな?」
「…いいえ。」
陽炎は、赤岡の目を隠していた腕を除け、目をしっかりと見つめていた。
「私は…すごく、恥ずかしがり屋なんです。だから、他人を避けながら、必死に人に紛れ込もうとして…私も、『普通の人』になりきって、隠れて生きてきたんです。自分を、隠していきたかったんです。」
「…そっか。」
「その反面…すごく、心の奥で…寂しい、寂しいっていう自分がいたんです。…馬鹿、みたいですよね。
自分から必死に隠れて生きていたのに、寂しいって思うなんて。そんな時、赤岡さんに会ったんです。」
「…あのときだね。」
「はい、私に声をかけてくれて、一緒に練習道具を出しながら、話を弾ませてくれて…私、赤岡さんが凄い優しい人だと思ったんです。」
「…そんなの、見せかけだよ。普通の人っていうのは、優しいんだ。」
「はい、私も普通の人でいようと思って、手伝いをしたんです。そしたら、凄い嬉しかったんです…。赤岡さんは、普通の人になって逃げる私に、普通の人になって喜べることを、普通の人になって楽しいんだってことを、教えてくれたんです!」
いつの間にか、陽炎の目にも、涙が溜まっていた。
「そんな…そんな赤岡さんを、気持ち悪いなんて言いません…!大好きです…!!」
「…ありがとう、でも、駄目だよ。普通の人でいたいんなら、女の子を好きになるためにスライム愛でてる男なんか、好きになっちゃいけないんだ。」
「それが普通じゃないなら、私はおかしくても構いません!!」
陽炎は、今までにないほど、声を出した。声を出して、かき消そうとした。
この堂々巡りに、決着がないことを赤岡も気づいていた。
「…よし、じゃあこうしよう。お互いに誓い合うっていうのはどうだ?」
「…誓い?」
「あぁ。お互い、『普通を辞める』誓いだ。」
赤岡は、陽炎に小指を差し出した。
「…俺は、7月のインターハイに、1年生として出場する。2年、3年を追い越さなきゃいけないから、もう、それはすごい努力をする必要がある。普通とか言ってられないぐらい努力する。中身が全部出ても、頑張る。」
促されるように、陽炎も小指を差し出した。
「…私は、逃げないようにする。普通に逃げないように、今までの、自分を、頑張って、愛してみます。この姿で、学校生活を頑張ります。…友達も、できたら作ります。」
「よし…指切りだ。」
一方は、普通を愛し、普通に愛されなかった人間。
もう一方は、普通に憧れ、偽りの普通に逃げていたドッペルゲンガー。
普通に翻弄された二人は、月下、普通にならないことを誓い合った。

19/08/14 16:48更新 / maska-kist
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■作者メッセージ
初投稿です。
誤字脱字があったらごめんね、指摘して頂けると助かります。


※「1.探偵が賢者になるとき、問題は解決される」の内容において、
キミカについて、「アトラク=ナクアとゴーストのハーフ」と
しましたが、「アトラク=ナクアとファントムのハーフ」と
修正致しました。

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