連載小説
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Episode Ex 〜真に怖いのは…
  ピンポーーン……

 門のチャイムを鳴らすと、側にある門……いや、この場合は側にあるのはチャイムの方か。
 …門が自動に開いた。

「さ、入りましょう、センパイ。
 …って、何でそんな所で固まってるんですか?」

「いや、まぁ…ここまで広い家を見るのは初めてで、さ」

「私は小さい頃から良く来てましたよ?
 私の母は此処のメイドですから」

 そう言ってルーアは門を潜っていった。
 フューネの家の門を。

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 事の始まりは私の一言だった。

「…そうだ、祐介クン、今度私の家に来てよ」

「え…フューネの家に?何時?」

「ん〜…今週の週末は?」

「そうだな…シフトは入って無いし、丁度父さんもいるから大丈夫だと思う」

「やった!!じゃあ、ルーアも呼ぼっか?」

「おう、それならルーアとシフトが同じ時間だから俺から言っとくよ」

「うん、ありがと♥」

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「…でだけど、もしかして男子って俺だけ?」

「まっさか〜、ねぇルーア?」

「はい、フューネ様の為に一応男子は呼んでおいたので、そろそろ来る筈ですが…」

  ピンポーーン……

「あ、どうやら来たようですね?」

「ごめんねミルタ、お客様を此処まで案内出来る?」

「はい〜只今ぁ〜」

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「で、自己紹介…は、お互い知ってたから、良いとして…。
 これから我が家の庭にあるプールで泳ぐ?」

「俺は、一応水着持って来てるから良いけどお前等はどうする?」

「私も持って来てますから大丈夫ですよ」

「え…先輩、俺、水着持って来てませんよ…?」

「そりゃあそうですよ、私、センパイにしか言ってませんし」

「なにそれ!?おま、酷くね!?」

「あらら…でも大丈夫!!
 私の家にあるもの貸すから、ね?」

 そうして俺達は水着に着替えに更衣室に入ろうとした……訳だが

「ちょ、水着ってコレかよ!?」

「五月蠅いぞウオカン(魚田 寛太だから)、お前が持って来なかったのが悪い」

「けれども先輩、さすがにブーメランタイプのものは無いっすよ!!」

「それはまぁ…ドンマイ」

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 私が更衣室から出ると、祐介クンとその後輩クン(確かウオカン君だった筈)が、先に準備体操をしていた。

「やっほ、祐介クン。もしかして待った?」

「いや、俺達も少し前に来たところだから大丈夫だよ?」

 祐介クンが着ている水着は白をベースにした青いハイビスカスの柄の入った半ズボンの様な水着だった。
 対してウオカン君の着ている水着は普段ガードマンさん(この暑い中でも周辺の警備お疲れ様です)が着ている紺色のブーメランタイプの水着だった。

「そっか…ウオカン君、ドンマイ」

「ちょ…先輩まで言わないでくださいよ!!」

 対する私の水着は、前で交差するいわゆるクロスビキニで祐介クンの為に昨日新調したばっかりだ。

「フューネ…その黒い水着、いろいろとだな……ヤバイ…ぞ?」

 どうやら、私の水着姿を見て自分の鼻を摘んだ祐介クンは興奮してくれてる様だった。
 と、そんな事を続けている間にどうやらようやくルーアが出てきた様だ。

「すいません、遅れました」

「おっそいぞルーア!!
 ったく、お前のせいでさんざんな目にあっt……ゴハァッ!!」

「ウオカーーンッ!!
 誰か…誰かこの子を助けてやってください、今すぐに血を…血を分けてあげてくださいッ!!」

 目の前で鼻血を噴水の様に出して倒れるウオカン君、そして助けを求める祐介クン。

「…何2人してさして上手くもない芝居をやってるんですか?」

「多分ルーアの水着のせいだと思うけど……。
 で、何でこんなに遅くなったの?」

「それはその…胸が、つっかえちゃって…あ、でもフューネ様の胸よりは小さいですから……ワゥン…」

「気遣いありがと。でも流石にそれは男子達にとっては危険じゃない?」

 ルーアが着ている水着は黒の旧スク水をベースにした水着で腰の部分にスカートのようなフリルが付いた、いわゆるワンピースタイプの水着だ。
 更に要所的に小さい黄色のリボンが付いている辺り、表面は堅物だけど実は可愛い物好きだと思わせる。

 が、ウオカン君が倒れたポイントは何と言ってもその胸だろう。
 ルーアの胸は私とそんなに変わらない大きさ(私がFカップだから多分あの子もFカップ位だと思う)で、谷間を強調させる私の水着とは違って、その形を強調させている水着だ。
 だからウオカン君が倒れたのかもしれない。

「…仕方無いですね。もうすぐミルタさんが出てくるので看病して貰ってはどうです?」

「それもそうだな。
 ほら、ウオカンしっかりしろ、この日が照ってる場所じゃマジで危険だ。」

「も…もう大丈夫です。
 危うく変な川を渡りそうになりましたが、何とか戻ってこれたんで…。」

「すいませ〜ん!!後ろの紐がなかなか結べなくて……」

「「ブァッハァッ!!」」

 今度は2人して鼻血を出して倒れた。

「わわわ…何でお2方が倒れてるんですか〜!?」

「そりゃあ、ミルタの胸を見りゃあねぇ…」

「…あの胸は反則です」

 確かにミルタの胸は余裕で3桁は超えているけど、水着のチョイスが私から見てもいろいろと危ない。
 ミルタの水着は牛柄の三角ビキニなのだが、胸が収まりきらずに下から横からと凄くはみ出していて、ミルタの乳輪が見えるか見えないかという所で隠れて…いなかった。

「なぁ、ウオカン…お前、水着からはみ出していたピンク色の何かが見えたか?」

「はい…見えましたよ…先輩……」

「そうか…それならば…」

 そうして祐介クンとウオカン君は息を合わせて

「「わ…我が障害に、一片の……悔い…無し…」」

 と、言った。

「…2人とも馬鹿やってないで早くパラソルの中に入って下さい。
 ウオカンはあんな胸が良いのかな…クゥン……」

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「…で、誰だか分からないけど…曇りガラスのドアの向こうに誰かいるんですよ…」

 その日の夜、私達は客間で怪談大会をしている最中だ。

「で…それから?」

「それから…そのドアの向こうから声が聞こえてくるんですよ。
 『お前を呪ってやる、私の夫を奪ったお前を…』って。
 それからドアの向こうにいた何かは、スゥっと消えたんですけど…今度は耳元から聞こえてくるんですよ。」

 私はあまりの怖さに祐介クンの腕に自分の腕を知らない間に絡ませていた。
 そしてミルタはウオカン君の腕に抱きついて、今にも気絶しそうになってた。

「…そして次の日、その女性はリビングで自らの首を吊って自殺したそうです……」

 そしてルーアの話が終わって、部屋の明かりを点けたときだった。

「あれ、あそこのドアの向こう誰か居ないか?」

 祐介クンは唐突にそんな事を言ったのだ。

「え…先輩、この話は作り話ですよ?」

「そうだぜ、作り話なんだから…って、ホントに誰かいる!?」

「え…そんな……確かにミルタ以外にもメイドはいるけど、それでもあの格好はメイドの格好じゃないよ…?」

『お前を呪ってやる、私の夫を奪ったお前を…』

「ええっ!?お、おいルーア、あれってホントに作り話なんだよな!?」

 その時、そのドアが突然開いて……

「じゃじゃーん!!ただいまフューネ!!」

「何だ…姉さんか、本当に何かの幽霊かと思ったよぅ…」

「…ま、全くですよ。
 驚かさないでくださいよ、ホントにもう…」

 ホントに怖かったのかルーアは強気な発言をしていながらミルタとは反対の腕に抱きついていた。

「いやぁ、ごめんなさい。
 お姉さんついつい楽しくてやってみちゃった♥
 で・だ・け・ど、私もパーティーからの帰りだけど混ぜて貰って良いかしら?」

「勿論良いけど、確か姉さんって、怖い話キライだったよね?」

「良いの良いの、本当に怖いときはこうやって抱きつくから♥」

 そう言うと姉さんは、祐介クンに抱きついてきた。

「もう姉さん、祐介クンは私のなんだから離れてよ!!」

「はいはい、分かってるわよ。」

「姉さんったら…ホントに油断ならないんだから……」

「…で、そろそろ俺の番か?
 あ、言っとくけど、これホントに悪霊が取り憑く可能性があるけど大丈夫だったり…するか。
 もしそうだったら、ルーアの呪術で何とかなるし。だから、そうなったら頼りにしてるぞ、ルーア」

「分かりました…けど、この場合呪術ではなくてお祓いじゃないんですか?」

「そうしたいのはやまやま何だけど、この場でそんな事が出来るのがお前しかいなくてな?」

「そうですか…分かりました。
 一応除霊の心得はあるのでもしそうなったら、何とかしてみます」

「おう、ありがとな。
 それじゃあ…始めるぞ?
 この話は今の父さんが、父さんの祖父から聞いた話なんだけどな?」

 それは遠い昔、とある山奥の有名なホテルに祖父と祖母が泊まったときの事だったそうだ。
 そのホテルは、善政を行っていた善良な事で有名な領主の別荘跡なのだが、その面影は今でも残っており、その豪華さとは裏腹に価格が安い事で有名なホテルだった。
 
 そしてある日の事、1組のカップルがそのホテルに泊まりに来たときの事だった。

 従業員に案内されたのは2階にある一番端の部屋で、そこから見える湖の景色に2人は大満足だった。
 従業員に湖の事を尋ねると、一本道を進むだけとの事らしいので、2人は昼食を摂った後、湖に向かって行った。
 
 その日の夜、2人が寝ている所に妙なことが起き始めた。

「妙な…事って?」

「まぁまぁ、これから話すって…。
 ん、どうやら悪霊が寄って来たっぽいな…」

「うわぁ…もう、止めましょうよ先輩」

「何言ってんだよ、本番はこれからだぜ?」

 その夜、女性が寝ていると、変な音で目が覚めた。

 女性は最初にネズミが走り回る足音だと思って居たのだが、どうやら違うようで、本来なら外になっている筈の壁からなにか引っ掻くような音が聞こえるのだ。

 次いで女性は更に変な音まで聞こえて来るようになった。

 それは…子供の、それも6,7才位の子供のうめき声みたいな…いや、うめき声そのものだった。

「ほら、聞こえてきてるだろ。その音が」

  カリ…カリ…カリ…カリ…カリ…カリ…

『う…うぅ……うあぁぁ……あぅううう……』

「え、待って…。
 何、この音…」

「だから言ったろ?
 『悪霊が寄ってきた』って」

「えぇ、まさか、そんな…。
 ねぇ、嘘だよね祐介クン?」

「嘘だ…って言いたいけど、ここまで来ると嘘とは言い切れないんだよな、コレ」

 女性はその夜、ずっと寝れなかったそうだ。

 次の日の朝、女性が従業員にホテルの地図を見せて貰った所、あの部屋は本当に一番端の部屋だった。
 納得いかない女性は、ホテルを外から眺める事にしたのだが、おかしな事に1つ気付いた。

 何と、外から見た窓の数が中から見た窓の数より1つだけ多いのだ。
 その事を従業員が確認すると、2階にある壁を男性と一緒にハンマーで破壊し始めた。
 
 暫くて壁に穴が空くと、そこは外ではなく廊下が続いており、横には木の板で封鎖されたドアがあった。
 そこで従業員が釘抜きで釘を抜き、木の板を取り外して中に入ると、其処は窓のない部屋で、鉄の匂いがが辺りに充満していた。

 暗い部屋で電球もなく、仕方なしに懐中電灯を点けるとその部屋の壁という壁に

『お父さん、もう許して。ここから出して』

 と、赤黒い何かで書いてありその部屋の真ん中には子供の全身の骨があったそうだ。

 それからというものの、そのホテルは今では既に廃業したのだが、建物自体は未だに残ってるという……。

「んで、コレがその写真」

「うわぁ…コレがそのホテルなの……なんかもう、凄く怖い所だよね…」

「んでルーアは…ってルーア?」

「わぅん…わぅわぅ…わぅぅ……」

 私がルーアに目を向けると、何とルーアは気絶していた。それもお漏らしした状態でだ。

「さて…俺の話も終わったことだし、そろそろお開きにするか?」

「ちょっと待ってよ、祐介クン余裕そうだけどこの悪霊どうするの?」

「ん?悪霊…?
 ああ、あれか。
 もう良いですよ、ありがとう御座いました、エレナさん」

「いえいえ、私も楽しかったですから!!」

 そう言って壁から出てきたのは、メイドの1人でゴーストのエレナだった。

「あの…祐介クン、これってどういう事?」

「どういう事って…」

 どうやら祐介クンは、エレナと組んでたとのことだった。

「と、言うことは…壁の引っ掻き音もうめき声もエレナがやってたって事?」

「そうゆう事、で、この写真もパソコンから拾ってきた只の廃墟画像って事。」

「じゃあ、今までのは全部作り話だったって事?」

「うん、そう。でもかなり怖かっただろ?」

「そりゃあもう凄く怖かったよ!!
 姉さんなんかいつの間にか何処かに行っちゃってるし…祐介クンのバカ」

「あはは…ゴメンゴメン」

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 皆が寝ている頃、俺は1人テラスで空を見上げていた。
 一応泊まりがけという事は母さんに伝えてあるので、今はフューネの家にいる。

 すると、ドアからノックの音が聞こえてきてフューネが入ってきた。

「ごめんねこんな遅い時間に…」

「どうしたんだフューネ?」

「その、ね?
 何だか寝れなくて…それで、私が寝るまで手を繋いで貰ってても良いかな?」

 フューネが寝れない原因は多分俺にあるので、俺は了承した。

「ああ、良いぞ?」

 そしてフューネがベットに入ると、俺はベットに腰掛けてフューネの手をフューネが寝るまで繋いでいた。
13/08/05 03:35更新 / @kiya
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■作者メッセージ
 まさかの、番外編が何時もより長いという驚愕の事実。

 次回は前の回の続きをやっていきます

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