Episode2 〜自らの身体
「…それじゃあ、行って来ます!!」
「あ…待って優、もしかして今日はアルバイトなの?」
「そうだよ母さん。
あ、でも今日は冷蔵庫に麻婆豆腐が入ってるから今日はそれ暖めて食べて!!
後、セナとルナ用にとびきり甘くしたヤツも作ってあるから間違えないでね?」
「分かったわ。
優、行ってらっしゃい。」
「うん、行って来ます!!」
こうして、朝に元気よく家を出るのは母さんに心配させない為だ。
正直、体中はバイトと妹の世話でガタガタだし、ここ最近はあの夢を毎晩見ているせいかあまり寝れていないのだ。
「優には、あまり無茶をして欲しくないのだけれど……」
----------------------------------------------------------------------
……暗い…これはまた…あの夢……なのか?
それにしては、やけに身体の自由が効くような……?
「何やってんだよ…」
「何って……え?」
突然声が聞こえた方に向いてみると、其処にはもう1人の俺がいた。
「え?って…そういやお前は俺のことを知らないんだっけか?」
「そりゃまぁ、知らないけど……って、お前誰だよ?」
「ん?俺か?
俺は、『もう1人のお前』だ」
「もう1人の…俺?」
「ああ、もう1人のお前だ。
まぁ、違うところがあるとするなら、お前の持っていない記憶があるって所か?」
「俺の知らない記憶って……記憶って何だよ!!
なぁ、もし知ってるなら教えてくれ!!」
「おっと…おしゃべりは此処までのようだぜ?」
「此処まで…ってオイ!!
何だよ、俺の知らない記憶って!!教えてくれ、一体何なんだ!!」
「ああ、これだけは言っとく。
山の中、壊滅した研究所に行けば何か思い出すかも知れないぜ?」
「なんだよそれ!!全く答えになって……!!」
その時急に辺りが白く染まり始めて………。
「祐介クン起きて、もう昼だよ?ねぇ、起きてってば!!」
「ふぁ…?
何だ、夢か……」
「何だ、夢かじゃないよ!?
ほら、今日もお弁当持って来たから早く食べよ?」
「あ…あぁ、そうだな」
----------------------------------------------------------------------
「フューネゴメン!!
俺今日これから急ぎでバイト行かないと行けないから今日は先帰るわ!!じゃあな!!」
「う…うん、じゃあね…」
その後、祐介クンは急いで教室を飛び出していった。
それと入れ違いになるように、ある人物が入ってきた。
「は〜い!!愛しの我が妹は〜っと…あ、いたいた。お〜い!!」
「あ、姉さん。今日の生徒会はもう終わったの?」
「ん〜終わった、というか無かったという方が正しいかもしれないわね?
で、どうしたの?そんな浮かれない顔して」
「うん、ちょっとね…。
ここじゃあちょっと話しづらいから、車の中で話すね?」
そうして私達姉妹は校門を出た後、直ぐ近くで待機していたリムジンに乗って家へと帰った。
その途中、私は祐介クンの夢の話について姉さんに聞くことにした。
「ふぅん、カプセルねぇ…確かそんな実験があったような無かったような……あ、もしかしてアレかしら?」
「え?姉さん、アレって?」
「うん、これから話すのは、少しだけその子の事を見づらくなるけど良いのかしら?」
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「はぁ〜…今日も終わった終わった。」
「あ、センパイお疲れ様です」
「おぅ、お疲れ」
コイツは俺のバイト先の後輩でもあり同じ高校の後輩でもあるアヌビスのルーアだ。
「それにしても今日は凄い速かったですねセンパイ。
もしかして、センパイって…」
「俺はちゃんとした人間だ。
まぁでも今日はギリギリだったからね。ホントに遅れそうでヤバかったんだよ。」
「ふぅん……それでも、自転車であんなにスイスイと車なんて追い越せるものなんですか?」
「ウッ…それを言われるとキツイんだが……」
実は俺は、人間ながらにして人間では到底出せないような身体能力を持っている。
今の会話でも分かるように、自動車は簡単に追い越せる(今日はあれでもかなり力を抜いた方)。だから、体育を本気でやってしまうとその尋常じゃない力で皆に怪我を負わせる危険がある。
ついでに、異常な程の再生能力もあるが、今はまだ説明はいらないだろう。
「まぁ、良いです。
フューネ様と夜の営みをされているのならまだわかりますし……ワゥン♥」
「お〜い、こんな所で妄想で発情すんな〜。
まぁ、いいや。俺は帰らせてもらうぞ?」
「ワゥ…センパイ、お疲れ様でした」
「ほいほい、お疲れ」
そう言って俺は自転車で、ルーアは徒歩でそれぞれの帰路につくことにした。
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夜9時半、セナやルナ達が寝た頃、俺はバイト先からようやく家に着いた。
「ただいま〜…」
「ああ、お帰り、優」
「うん…ただいま、父さん」
俺が家に帰ると、父さんが帰っていて麻婆豆腐を食べていた。
「ごめんな優、手伝ってやれなくて。」
「ううん、良いんだ父さん。
俺をここまで育ててくれたんだから、感謝こそすれ恨むことなんて何も無いよ。」
「…そうだな」
そうして、俺と父さんはただ静かに麻婆豆腐を食べ続けた。
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「…駄目、か」
もう何度目になるか分からないフューネへの電話に諦めを感じながら、俺は自前のPCを点け目の前に座る。
「えっと…8年前ニュースの中にある筈……おっ、あったあった。」
運良く8年前の爆発事故は1件だけだったので、そのページを開く。そのニュースの記事はこう書かれてあった。
食品工場爆発 原因は機材の故障か?
今月未明、下橋市内の山中にある大手食品工場『大山加工食品』が突如謎の爆発により壊滅。
所長によると、機材自体は古いがここ最近業者がメンテナンスを行ったとのこと。
また、警察の調べでは、何らかの原因により連鎖的な爆発が起こったものとして尚も調査を進めている。
「下橋って…確か電車で二駅の所だったよな?
…明日にでも行ってみるか」
俺は明日のバイトのシフトが入って無いことを確認すると、明日下橋の山中にあるという『大山加工食品』へ行くことを決意した。
「自分の知らない過去…か」
その言葉を最後に、俺は眠りへと落ちていった。
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「それじゃあ、行って来ます。
…あ、ゴメン母さん。今日帰るの遅くなるから、何時ものように冷蔵庫の中に入ってるもの温めて食べてね?」
「ええ、分かったわ。
…ねぇ優、最近顔色が悪いけど無理だけはしちゃ駄目よ?」
「それこそ分かってるよ、母さん。
…俺は何時だって大丈夫だから。」
そう言って俺は家を出た。
俺の知らない自分自身の記憶、その決着を付ける為に……。
「まずは、学校に行かないとな……」
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そうして学校にて昼が過ぎ、あっという間に放課後がやって来た。
「ねぇ…祐介クン、今日も……って、バイトだっけ?」
「いや、今日はシフト入って無いけど…。
ゴメン、俺寄る所あるから…ゴメン」
「ううん、良いの。
何時も私から誘ってる訳だから…」
「ホントにゴメン……。
そうだ、明日辺り、フューネに大事な話があるけど大丈夫?」
「うん…大丈夫だけど、何の話?」
「それは明日に話すよ、じゃあまた明日!!」
「また…明日…」
俺は家とは逆方向の小門駅に進んでいった。
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『あ、もしかしてアレかしら?』
昨日の車内、姉さんとの会話が思い出される。
「人類神格化計画…か……」
『昔ね、そんなのがあったらしいのよ。
…内容は、自分達で主神、もしくはそれに近しい者を造ろうっていうもの。』
その計画は、度重なる失敗と実験体の暴走によって永久凍結したらしい。
「でも…そんなまさか、ね」
祐介クンはそうじゃないと信じながら、私は帰路についた。
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「ここが…『大山加工食品』……」
其処にあったのは、建物だった面影が全く感じられない…要は瓦礫の山だった。
「此処に俺の記憶が…?」
こんな何も無い山奥に俺の知らない記憶なんてある訳がない。
そう思って、立ち去ろうとしたときだった。
「あれ、こんな所に人間…か?」
突如瓦礫の山向こうから声が…それも少年のような幼さの残っている声が聞こえてきた。
「…ったく誰だよ、こんな所によぉ」
そして姿が見えると、俺は驚愕した。
「やれやれ、隠蔽だって決して楽なモンじゃ無いんだっての…。
まぁ、いっか。多分ここ、多少派手にやっても気付かれないし。」
その姿は、10代前半で俺より若いし見た目も多分中学生辺りと想像出来る。
だが、その全身から滲み出る殺気は夥しいほど溢れ、その全てを俺に向けられていた。
そして、人間らしからぬ発言と驚愕の真実を俺に放った。
「…なぁお前、一瞬にして痛み無く殺されるのと痛め続けられて苦しんで死ぬのと……って、この俺と同じカンジ……そうか、そうかそうかそうか!!
お前、俺と同じだな!?人間から生まれた訳ではなく、人間によって造られた人間だな!?
は…ハハハハハッ!!まさか…まさかこんな所で会えるとはなぁ、センパイィッ!!」
「あ…待って優、もしかして今日はアルバイトなの?」
「そうだよ母さん。
あ、でも今日は冷蔵庫に麻婆豆腐が入ってるから今日はそれ暖めて食べて!!
後、セナとルナ用にとびきり甘くしたヤツも作ってあるから間違えないでね?」
「分かったわ。
優、行ってらっしゃい。」
「うん、行って来ます!!」
こうして、朝に元気よく家を出るのは母さんに心配させない為だ。
正直、体中はバイトと妹の世話でガタガタだし、ここ最近はあの夢を毎晩見ているせいかあまり寝れていないのだ。
「優には、あまり無茶をして欲しくないのだけれど……」
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……暗い…これはまた…あの夢……なのか?
それにしては、やけに身体の自由が効くような……?
「何やってんだよ…」
「何って……え?」
突然声が聞こえた方に向いてみると、其処にはもう1人の俺がいた。
「え?って…そういやお前は俺のことを知らないんだっけか?」
「そりゃまぁ、知らないけど……って、お前誰だよ?」
「ん?俺か?
俺は、『もう1人のお前』だ」
「もう1人の…俺?」
「ああ、もう1人のお前だ。
まぁ、違うところがあるとするなら、お前の持っていない記憶があるって所か?」
「俺の知らない記憶って……記憶って何だよ!!
なぁ、もし知ってるなら教えてくれ!!」
「おっと…おしゃべりは此処までのようだぜ?」
「此処まで…ってオイ!!
何だよ、俺の知らない記憶って!!教えてくれ、一体何なんだ!!」
「ああ、これだけは言っとく。
山の中、壊滅した研究所に行けば何か思い出すかも知れないぜ?」
「なんだよそれ!!全く答えになって……!!」
その時急に辺りが白く染まり始めて………。
「祐介クン起きて、もう昼だよ?ねぇ、起きてってば!!」
「ふぁ…?
何だ、夢か……」
「何だ、夢かじゃないよ!?
ほら、今日もお弁当持って来たから早く食べよ?」
「あ…あぁ、そうだな」
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「フューネゴメン!!
俺今日これから急ぎでバイト行かないと行けないから今日は先帰るわ!!じゃあな!!」
「う…うん、じゃあね…」
その後、祐介クンは急いで教室を飛び出していった。
それと入れ違いになるように、ある人物が入ってきた。
「は〜い!!愛しの我が妹は〜っと…あ、いたいた。お〜い!!」
「あ、姉さん。今日の生徒会はもう終わったの?」
「ん〜終わった、というか無かったという方が正しいかもしれないわね?
で、どうしたの?そんな浮かれない顔して」
「うん、ちょっとね…。
ここじゃあちょっと話しづらいから、車の中で話すね?」
そうして私達姉妹は校門を出た後、直ぐ近くで待機していたリムジンに乗って家へと帰った。
その途中、私は祐介クンの夢の話について姉さんに聞くことにした。
「ふぅん、カプセルねぇ…確かそんな実験があったような無かったような……あ、もしかしてアレかしら?」
「え?姉さん、アレって?」
「うん、これから話すのは、少しだけその子の事を見づらくなるけど良いのかしら?」
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「はぁ〜…今日も終わった終わった。」
「あ、センパイお疲れ様です」
「おぅ、お疲れ」
コイツは俺のバイト先の後輩でもあり同じ高校の後輩でもあるアヌビスのルーアだ。
「それにしても今日は凄い速かったですねセンパイ。
もしかして、センパイって…」
「俺はちゃんとした人間だ。
まぁでも今日はギリギリだったからね。ホントに遅れそうでヤバかったんだよ。」
「ふぅん……それでも、自転車であんなにスイスイと車なんて追い越せるものなんですか?」
「ウッ…それを言われるとキツイんだが……」
実は俺は、人間ながらにして人間では到底出せないような身体能力を持っている。
今の会話でも分かるように、自動車は簡単に追い越せる(今日はあれでもかなり力を抜いた方)。だから、体育を本気でやってしまうとその尋常じゃない力で皆に怪我を負わせる危険がある。
ついでに、異常な程の再生能力もあるが、今はまだ説明はいらないだろう。
「まぁ、良いです。
フューネ様と夜の営みをされているのならまだわかりますし……ワゥン♥」
「お〜い、こんな所で妄想で発情すんな〜。
まぁ、いいや。俺は帰らせてもらうぞ?」
「ワゥ…センパイ、お疲れ様でした」
「ほいほい、お疲れ」
そう言って俺は自転車で、ルーアは徒歩でそれぞれの帰路につくことにした。
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夜9時半、セナやルナ達が寝た頃、俺はバイト先からようやく家に着いた。
「ただいま〜…」
「ああ、お帰り、優」
「うん…ただいま、父さん」
俺が家に帰ると、父さんが帰っていて麻婆豆腐を食べていた。
「ごめんな優、手伝ってやれなくて。」
「ううん、良いんだ父さん。
俺をここまで育ててくれたんだから、感謝こそすれ恨むことなんて何も無いよ。」
「…そうだな」
そうして、俺と父さんはただ静かに麻婆豆腐を食べ続けた。
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「…駄目、か」
もう何度目になるか分からないフューネへの電話に諦めを感じながら、俺は自前のPCを点け目の前に座る。
「えっと…8年前ニュースの中にある筈……おっ、あったあった。」
運良く8年前の爆発事故は1件だけだったので、そのページを開く。そのニュースの記事はこう書かれてあった。
食品工場爆発 原因は機材の故障か?
今月未明、下橋市内の山中にある大手食品工場『大山加工食品』が突如謎の爆発により壊滅。
所長によると、機材自体は古いがここ最近業者がメンテナンスを行ったとのこと。
また、警察の調べでは、何らかの原因により連鎖的な爆発が起こったものとして尚も調査を進めている。
「下橋って…確か電車で二駅の所だったよな?
…明日にでも行ってみるか」
俺は明日のバイトのシフトが入って無いことを確認すると、明日下橋の山中にあるという『大山加工食品』へ行くことを決意した。
「自分の知らない過去…か」
その言葉を最後に、俺は眠りへと落ちていった。
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「それじゃあ、行って来ます。
…あ、ゴメン母さん。今日帰るの遅くなるから、何時ものように冷蔵庫の中に入ってるもの温めて食べてね?」
「ええ、分かったわ。
…ねぇ優、最近顔色が悪いけど無理だけはしちゃ駄目よ?」
「それこそ分かってるよ、母さん。
…俺は何時だって大丈夫だから。」
そう言って俺は家を出た。
俺の知らない自分自身の記憶、その決着を付ける為に……。
「まずは、学校に行かないとな……」
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そうして学校にて昼が過ぎ、あっという間に放課後がやって来た。
「ねぇ…祐介クン、今日も……って、バイトだっけ?」
「いや、今日はシフト入って無いけど…。
ゴメン、俺寄る所あるから…ゴメン」
「ううん、良いの。
何時も私から誘ってる訳だから…」
「ホントにゴメン……。
そうだ、明日辺り、フューネに大事な話があるけど大丈夫?」
「うん…大丈夫だけど、何の話?」
「それは明日に話すよ、じゃあまた明日!!」
「また…明日…」
俺は家とは逆方向の小門駅に進んでいった。
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『あ、もしかしてアレかしら?』
昨日の車内、姉さんとの会話が思い出される。
「人類神格化計画…か……」
『昔ね、そんなのがあったらしいのよ。
…内容は、自分達で主神、もしくはそれに近しい者を造ろうっていうもの。』
その計画は、度重なる失敗と実験体の暴走によって永久凍結したらしい。
「でも…そんなまさか、ね」
祐介クンはそうじゃないと信じながら、私は帰路についた。
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「ここが…『大山加工食品』……」
其処にあったのは、建物だった面影が全く感じられない…要は瓦礫の山だった。
「此処に俺の記憶が…?」
こんな何も無い山奥に俺の知らない記憶なんてある訳がない。
そう思って、立ち去ろうとしたときだった。
「あれ、こんな所に人間…か?」
突如瓦礫の山向こうから声が…それも少年のような幼さの残っている声が聞こえてきた。
「…ったく誰だよ、こんな所によぉ」
そして姿が見えると、俺は驚愕した。
「やれやれ、隠蔽だって決して楽なモンじゃ無いんだっての…。
まぁ、いっか。多分ここ、多少派手にやっても気付かれないし。」
その姿は、10代前半で俺より若いし見た目も多分中学生辺りと想像出来る。
だが、その全身から滲み出る殺気は夥しいほど溢れ、その全てを俺に向けられていた。
そして、人間らしからぬ発言と驚愕の真実を俺に放った。
「…なぁお前、一瞬にして痛み無く殺されるのと痛め続けられて苦しんで死ぬのと……って、この俺と同じカンジ……そうか、そうかそうかそうか!!
お前、俺と同じだな!?人間から生まれた訳ではなく、人間によって造られた人間だな!?
は…ハハハハハッ!!まさか…まさかこんな所で会えるとはなぁ、センパイィッ!!」
13/08/02 01:21更新 / @kiya
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