連載小説
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Episode1 〜それがなんなのか分からない
 ………暗い…此処は……何処だ…?

 何で俺、こんな所に…って言うか、何で訳の分からない液体の入っているカプセルの中に?

「ふむ、調子は……良さそうだな?」

 誰だ…この爺さんは?

「ん、君の名か?
 …君は個体ナンバーT-035、この実験の成果であり、モルモットだ」

 …は?何言ってんだ?
 俺にはちゃんと優介(ゆうすけ)って名前があるんだ。

 訳の分からないまま困惑していると、次の瞬間、とんでもない会話が繰り広げられた。

「さぁ、とうとう此処まで来た!!
 私達は神をも超えて、人間を超越した人間を完成させた!!
 …だから、次は、コレが何処まで人間の存在を超えたか実験しないとね……さぁ、最初は電撃に対する耐久実験だ。さ、始めてくれ。」

「はい、それでは第2シークエンス、電撃の対する耐久力の実験を行います。
 まずは、100万ボルトから開始します。」

「甘い…甘いよ君、コレは実験体第1号…言ってしまえばオリジナルだ。この個体を元に後から幾らでも同じ物が作れる。
 けれども、コレは人間を超越してるんだよ?
 …だから最初は1億ボルトから始めないとね?」

 え…耐久実験?それに1億ボルトって…人を簡単に殺せるレベルじゃないか!!
 嫌だ、そんなもん受けたら絶対に死ぬ!!
 だから出せ、この…このっ!!

 そんな事を思っているのに自分の身体は動かず、ただただその時だけが刻一刻と迫っていた。

 止めろ止めろォ……止めてくれェッ!!

「しかし……了解、それでは予定変更して1億ボルトから実験を開始します」

 そうして俺の身体に電流が流れ始め、俺の意識は遠く遠のいていった……

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「……ハッ、朝か…」

 俺はどうやら夢を見ていた様だ。只の悪い夢を。

「しかし、夢だったが…何か妙にリアルだったんだよな……」

 暫く考えて埒があかないと悟った俺は、朝食を摂りにリビングへと向かう。
 こうして俺こと、優介の何1つ変わらない平凡な日常が始まった。

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「おっはよ、祐介クン♪」

「ああ何だ、フューネか。おはよう、今日は車で来ないんだ」

 この元気少女はフューネ。俺の席と隣同士だからでこんなにも世話をやく優しい女の子だ。
 とは言っても、種族はあの魔王の娘であるリリムな訳で…実際お嬢様ではあるが、生徒会長の姉と同様…という訳では無い。

「何だって何よ…まぁ、良いわ。
 優介クンって今日は購買のパン食べるの?」

「…ん?まぁ、そのつもりだけど?」

「ふぅん…そっか。
 そんな祐介クンの為に、私、お弁当作って来ちゃいました!!」

「…俺の為に?」

「何よその目は……。
 あ〜っ!!もしかして私料理が出来ないと思ってるでしょ!!
 幾ら私がお嬢様だからって、何時も専用のシェフが作ってる訳じゃ無いんだから!!」

「そんな事、初めから知っているよ。
 そっか、フューネの弁当か…昼休まで待てるかな……?」

 俺はフューネの手作り弁当のおかずを貰った事が1度だけあるが(その時は唐揚げだった)、口に入れた瞬間とてもジューシーで最高に美味かった事を今でも覚えてる。

「も…もぅ、褒めても何も出ないんだからね////」

「はいはい、分かってるって」

「もう……イジワル」

 そんな事を話してると、いつの間にか学校に着く。
 もうそんな事を何度もしたかは分からないが、たった1つ、これだけは言える。

 ……俺は、フューネに恋をしているのかもしれない。

 何時からだっただろか、最初はただ、フューネの事をお嬢様らしくない世話好きなだけの女の子だと思った。
 けれどもそれはいつの間にか恋に変わった。
 ……いや、恋かどうかも分からない。ただ、自らの内にある変な気持ちだけが際限なく増えていった。

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「きをつけ、礼!!」

「「「「「ありがとう御座いました!!」」」」」

 午前中最後の授業が終わり、ようやく昼休憩がやって来た。

 俺とフューネは何時ものように学校の中庭にあるベンチで2人並んで昼食を摂っていた。

「…うん、相変わらずフューネの作る弁当は尋常じゃなく美味いよなぁ」

「えへへ…ありがと♥
 祐介クンにそう言って貰えるととても嬉しいよ♥」

 相変わらずコイツの笑顔は眩しいよなぁと思ってると、いつの間にか時間はどんどん過ぎていって午後の授業が近づいてきた。

「あ…そろそろ、午後の授業の始まりか…なぁフューネ、次って体育だったっけ?」

「うん、そうだよ?」

 そっか…体育か……あんま良い思い出が無いんだけれど……。

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 全ての授業が終わり、生徒それぞれが部活やら塾やら忙しい放課後、俺は真っ直ぐに家に帰る。

「ヤッホ、優介クン、一緒に帰ろ?」

 何時ものように、フューネと一緒にだ。

「ああ、じゃあ…帰ろっか?」

「うん!!」

 そうして、何時ものように俺の家までフューネと一緒に帰る。

「なぁ、フューネ、毎回毎回俺ん家まで帰って大丈夫なのか?
 お前ん家俺とは反対方向だろ?」

「ううん、良いの。
 私は寧ろ、何時までも優介クンと一緒にいたい位なのに…」

「…え、今なんて?」

「ううん、何でも無い!!
 それじゃあ祐介クンの家に着いたことだし、私帰るねっ!!バイバイ!!」

「あ、おい!!
 …まぁ、いっか」

 フューネは逃げるようにして何処かへ逃げた……というよりも、家に帰ったのだろう。

「さてと、俺も家に入りますかね……。
 ただいま〜…」

 そうして、ただいまの一言と共に中に入り靴を脱いでると、ドタドタシュルシュルと何だか慌ただしい音がリビングの方から段々と大きくなりながら聞こえてきた。

「優兄様、お帰りなさい!!」

「優兄ぃ、お帰り!!」

「ああ、セナ、ルナ、ただいま」

 俺の元にやって来たのは、俺の義妹であるセナとルナである。
 因みに、セナがエキドナで小学2年、ルナがワーウルフで小学1年、ついでに言うと俺が高校2年である。

「兄さま、わたし、しゅくだいが分からなくて教えて欲しいのですが…」

「にぃ、いっしょにあそぼ!!ねぇねぇ、はやくはやく!!」

「はいはい、分かったから……。えっと、今日はバイトはっと…うん、無いな。
 おし、それじゃあルナ、まずはセナお姉ちゃんの宿題終わったら、セナお姉ちゃんと遊んであげるからちょっとだけ待っててな?」

「うん、分かった!!
 ルナ、セナおねえちゃんのしゅくだいがおわるまでまってる!!」

「うんうん、ルナは偉いなぁ。
 ほらほら、撫でなで〜」

「エヘヘ、にぃにほめられちゃった…♪」

「よしルナ、じゃあちゃんと待っててな?
 それじゃあセナ、分からない所を解きに行こっか?」

 そうしてセナとルナと一緒にリビングへと入ると、三女で今年で2才になるワイバーンのクゥとクゥに授乳中の母さんがいた。

「あら優、お帰り。
 母さん今手が離せないから、セナとルナお願いね?」

「うん、分かった。
 それで母さん、今日何か食べたいものある?」

「もう、そんな事を母さん聞かないで良いのに……。
 セナとルナは何か食べたいものあるかしら?」

「そうですね…私は兄さまの作るものならなんでもいいです」

「う〜んとね、え〜とね、ルナ、ハンバーグがたべたい!!」

「おっし、じゃあ今日はハンバーグでも作るか!!」

 結局母さんの為に栄養価の高いもの作ろうと思ったのに、ルナの食べたいものになってしまったが、そこは気にしない事にしよう。

「ごめんね優、母さん、優にいっぱい迷惑掛けちゃって……」

「い、いいんだよ母さん!!
 俺が母さんに貰ったものに比べれば、まだまだこれぐらい何でもないさ!!」

 この位、孤児で何処にも行く当てもなかった俺に初めての家族の存在をくれた母さんに恩返しの意味を込めているのだから当たり前だ。

「さて、まずは…セナ、何処が分からないんだい?」

「はい兄さま、ここのけいさんほうほうが分からなくて……」

「そっか、じゃあ、此処をこうやってみようか?」

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 あの後、セナの宿題を終わらせルナと一緒に遊んだ後、夕飯作って片付け終わったが、正直疲れた為今は自室にてタッチパネル型携帯『I バッPhone』のトークアプリ『絶対に切れない線』でフューネと話していた。

フ 優介クンどうしたの?

優 今朝の夢の事でちょっと…な

フ 今朝の…夢?
  まさか優介クンの夢に私が…!?

優 いや、そうじゃないんだ
  ただ…妙にリアルというか、今でも鮮明に覚えてて…

フ なんだ…私じゃないんだ……
  で、どんな夢だったの?

優 それがさ…

「兄ぃ、お風呂空いたよぉ!!」

「うん、分かった、ありがとうルナ!!」

優 ゴメン、今から風呂入るから!!
  この続きはまた後で!!

フ うん…分かった。
  じゃあまた後でね?

「さて、風呂でも入ってきますか…」

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フ そっかぁ〜…う〜んそれは私にも分からないなぁ〜…
  実際そんな事例はどの文献にも載ってない筈だし…

優 あ、いや、分からないなら良いんだ!!
  そっか、それじゃあ仕方無いか…

フ ホントに力になれなくてゴメンね?

優 謝るなよ…フューネのせいじゃ無いんだから
  ん〜…もう良い時間だし、俺は寝るよ

フ うん、おやすみ、優介クン良い夢見てね♥

優 ああ、フューネもな

 俺はフューネとのトークを終えると、そのまま寝る事にした。

 結局、夢の事とこの変な気持ちは分からないままに……

13/08/02 01:21更新 / @kiya
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■作者メッセージ
 主人公の設定はまだ未公開…一応おいおい明かしてく予定なので末永く見守っててください……

 タグの編集違ってたので、魔物娘いろいろからリリムに変更しました

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