少しぽっちゃりな彼女とそんな彼女が好きな俺と
俺は、ぽっちゃりが好きだ。名乗るならデブ専ではなくぽちゃ専とでも言っておこう。
「はぁ、可愛い子いないかなぁ……」
高校デビューしてから早くも３ヶ月が経ち夏休みに差し掛かろうとしている中、早くも俺の周りでカップルが出来上がってるが、一番身近なのは何と言っても佐枝森だ。
アイツは高校デビュー当日で彼女を２人もゲットしやがるという、今までにないこの学校始まって以来の伝説を作りあげた人物だ。
「だが俺は、細身なんかに興味はない！！」
「あ〜はいはい、分かった分かった。
よ〜く分かったから、早く黙れ。」
「酷い！？それは酷すぎるぞ、神也！！」
「そうだぞ？
いくらコイツに彼女が居ないからって、黙れは無いだろ？」
「そういう佐枝森も相当酷いこと言ってるがな…。
で、康太はどうするんだ？」
俺こと吉永 康太は（よしなが こうた）は件の佐枝森ともう１人の友人で佐枝森と同じリア充である神也と、ボーイズトークを繰り広げてた。
「さて…どうしたもんか……。
今年入学した女子の中で、ぽっちゃりした子っていたっけ？」
「いなかったと思うが…どうだったけ、神ヤン？」
「あ〜…いたようないなかったような……。
あ、そう言えば！！」
「うぉ、誰かいたのか、神也！？」
「いや、先輩に１人オークがいたような…」
「マジか！！」
おぉっと、これは良い情報じゃないか？
因みに俺は年上だろうが年下だろうが関係無い！！
「あぁ、しかも自分の体型のせいでなかなか彼氏が出来ないとかって噂らしいぞ？」
「おっしゃ！！
それじゃあ、早速放課後コクって見るぜ！！」
----------------------------------------------------------------------
そんな訳で放課後、俺は校門前で美木乃先輩（神也調べ）を待っているところだ。
しかもそろそろ、下駄箱の中のラブレターに気付いた筈だ。
「つかアイツなんでこんな情報知ってんだよ…」
神也調べだと、美木乃先輩は下駄箱の中のラブレターに時めく人で性格はおっとりとしていて理想は自分の全てを愛してくれる人らしい。
「そろそろな筈なんだけど……」
「そろそろって何のこと？」
「美木乃先輩が来る時間の事で……」
「美木乃先輩って私の事じゃないかな？」
「へぇ、貴方が……って美木乃先輩！？」
「そうだよ？
私が、金寺 美木乃（かなでら みこの）だよ？」
「あ…その……美木乃先輩、あの…近くの公園に美味しいクレープ屋が来ているそうなので、一緒に食べに行きませんか？」
「わ〜クレープ屋！？食べる食べる〜！！
それと私の事は、先輩なんて付けなくても良いんだよ、コウ君？」
「あ、はい、それじゃあ……美木乃……さん」
「ホントはさんもいらないんだけど…まぁいいや。
それじゃあ、行こっか？」
----------------------------------------------------------------------
俺と美木乃さんは、学校から数分歩いたところにあるクレープ屋に来ている。
「わ〜、クレープなんて食べるのひさしぶりだな〜。あ、私チョコクリームで。
コウ君は何にする？」
「えっと…俺はチョコバナナで」
「は〜い、それじゃあ合計で1650円お願いします♪」
と、リャナンシーの店員が金額を告げた。
「は〜い♪」
と、美木乃さんが払おうとするのを、俺は慌てて止めた。
「ちょっ…美木乃さんは払わなくて良いですよ！！
俺が全部払いますから」
「え〜…でも、それは悪いよ…」
「あらあら、お２人さん仲が良いですね♪
それじゃあ、私からサービスしちゃって、半分の825円で良いですよ？」
----------------------------------------------------------------------
あの後、俺のゴリ押しで何とか俺持ちでクレープ代を払って、今は近くのベンチに座っている。
「何か結局払わせちゃったね…」
「いやいや良いんですよ。
それにしても、何でリャナンシーの夫婦がクレープ屋を経営しているかと思ったら、こういう事だったんですね」
「そうなの。
ここのクレープ屋って、味も美味しいけど見た目も凄いんだよ？」
確かに俺達の手に握られているクレープは、それはもう見事なまでに芸術的だった。
いやまぁ、芸術センスのない俺が言うのもどうかと思うが。
「さ、クリームが溶けない内に早く食べてしまいましょう？」
「うん、そうだね♪」
で、半分まで食べ終わった訳だけど、何故か美木乃さんが此方…正確には俺のクレープをじっと見ている。
「…美木乃さん、俺の少しあげましょうか？」
「え、良いの？」
「勿論ですよ」
「それじゃあ、お言葉に甘えて……はむ」
美木乃さんは、俺のクレープを１口食べた後その手に持っているクレープを俺の口に持って来て、
「はい、あ〜ん」
をしてきて、俺はそのまま……
----------------------------------------------------------------------
「……何だ、夢か」
という夢を、俺は見ていたようだ。
「兄ぃ、朝だよ、起きて？」
とまぁ、妹の声が聞こえる。
まぁ、これ以上寝ても仕方が無いし、起きるとしますかね？
「あ、兄ぃ、おはよ」
「あ〜はいはい、おはよ……」
「で、早速オハヨウのキスを……」
「絶対にしないからな？」
…言って置くが、妹は人間だ。
只、ちょっと変わった性癖を持っているだけで、断じて魔物娘ではない。
「ちぇ…兄ぃのケチ」
「ケチで結構。
俺は、実の妹と結婚するつもりはない。」
そんなこんなで、妹を部屋から追い出し、妹の突然の乱入に冷静に対処しつつ制服に着替え、朝飯を食った後、学校へと足を運ぶ。
「お〜っす、康太」
「おう、神也。
そして、天原さん…だっけ？」
「うん、そうだよ。
おはよう、康太君」
お〜ぅ、早速神也＆天原ペアが来たか。
じゃあ、そろそろ……3、2、1
「はよ〜っ」
「「おはよう」」
はい、ドンピシャのタイミングで、佐枝森＆紅葉＆縁花組と遭遇。
見事ドンピシャだった俺への賞金は2組のカップルです……くそぅ。
「ったく…お前等は相変わらず仲が良いな…」
「まぁ、そんな事言うなって。
ほら、アレだ、お前好みのヤツ知ってるからさ、教えてやるよ」
「おぅ、マジか！？」
「俺もお前と同じ時期があったからな…。
で、だ、その人は…所属はオークで、名前は金寺 美木乃って言うらしい」
「ふ〜ん、金寺さんか〜……」
そういや、夢の中に出てきたのも美木乃さんだったっけ？
「んぁ？もしかして知ってたとかか？」
「あぁ、まぁ一応な」
「で、何で修司は他の女の子にそんなに詳しいのかなぁ〜？」
「え、あ、ナッツさん？
その…目が怖いんですが？」
…まぁ、アイツの事はほっとくとして、今日の放課後美木乃さんにコクってみようか…。
----------------------------------------------------------------------
そして放課後、俺は美木乃さんにコクる為に校門で待っている途中だ。
グラウンドからは、野球部の熱いかけ声と共に、女子達の黄色い声が聞こえてくるが、俺にはもうあんなものなんて羨ましくはない。
「えっと、君が康太…君かな？」
「あ、はい、美木乃先輩」
「先輩は付けなくて良いよ。
で、大事な話って何？」
「えっと…その、俺…美木乃先輩の事…！！」
やべぇ、周りの視線が凄い気になる……。
「あの…ちょっとゲーセンに行きませんか？」
「え…うん、良いけど」
「じゃあ、早速行きましょう！！」
そう言って俺は、美木乃先輩の手を引っ張って近場にあるゲーセンへと走っていった。
----------------------------------------------------------------------
「…プ、ストップ！！」
どうやら俺は、美木乃先輩に止められるまでずっと走り続けていたようだ。
「はぁ、はぁ……やっと、止まってくれた」
「あ…すいません。
美木乃先輩、大丈夫ですか？」
「うん…何とか大丈夫。
でも、もう少しで負けそうだったかも…」
「へ？
負けるって何がですか？」
「ううん、何でも無いよ？
さ、早くゲームセンターに行こ？」
アレ、そう言えば負けるって何か重要な事だったような……？
「そうですね……と、言いたい所ですけど、やっぱり公園でクレープ食べていきませんか？」
「え…クレープ食べるの？
うん、食べに行こ！！」
そうして俺と美木乃先輩と一緒にクレープを食べに行くことにした。
----------------------------------------------------------------------
「わ〜、クレープなんて食べるのひさしぶりだな〜。あ、私チョコクリームで。
コウ君は何にする？」
「えっと…俺はチョコバナナで」
「は〜い、それじゃあ合計で1650円お願いします♪」
と、リャナンシーの店員が金額を告げた。
「は〜い♪」
と、美木乃先輩が払おうとするのを、俺は慌てて止めた。
「ちょっ…美木乃先輩は払わなくて良いですよ！！
俺が全部払いますから」
「え〜…でも、それは悪いよ…」
「あらあら、お２人さん仲が良いですね♪
それじゃあ、私からサービスしちゃって、半分の825円で良いですよ？」
----------------------------------------------------------------------
あの後、俺のゴリ押しで何とか俺持ちでクレープ代を払って、今は近くのベンチに座っている。
「何か結局払わせちゃったね…」
「いやいや良いんですよ。
それにしても、何でリャナンシーの夫婦がクレープ屋を経営しているかと思ったら、こういう事だったんですね」
「そうなの。
ここのクレープ屋って、味も美味しいけど見た目も凄いんだよ？」
確かに俺達の手に握られているクレープは、それはもう見事なまでに芸術的だった。
いやまぁ、芸術センスのない俺が言うのもどうかと思うが。
「さ、クリームが溶けない内に早く食べてしまいましょう？」
「うん、そうだね♪」
で、半分まで食べ終わった訳だけど、何故か美木乃先輩が此方…正確には俺のクレープをじっと見ている。
「…美木乃先輩、俺の少しあげましょうか？」
「え、良いの？」
「勿論ですよ」
「それじゃあ、お言葉に甘えて……はむ」
美木乃先輩は、俺のクレープを１口食べた後その手に持っているクレープを俺の口に持って来て、
「はい、あ〜ん」
おぉ！？
そう言えばコレって夢の通りなんじゃね？
「あれ、食べないの？」
「え、あ、いや、食べます。食べますよ？」
「じゃあ、はい、あ〜ん♪」
「あ、あ〜ん……ん、美味しいです！！」
「うふふ、良かった♪」
「は、はい…」
ヤッベぇ…すっごくヤベぇよ。
今俺の心の住人が全員鼻からケチャップ出して倒れてるぜ……。
----------------------------------------------------------------------
俺達は今、美木乃先輩のオススメの場所に来ている。
「此処、どうかな？
私の１番のお気に入りなんだけど…」
「はい、凄く綺麗です…」
確かに、風景自体は自分の住んでいる町並みだ。
だけど、夕暮れ時の茜色に染まった町並みを一望できるこの場所は、とても良い場所だと俺は思った。
「でね、この場所、実はコウ君以外まだ誰にも教えたことが無かったんだよ？」
「え…それじゃあ……」
「うん、コウ君が……初めて、なの。」
…俺、この人の事ホントに好きになったかも。
「先輩、あの…！！」
俺はそのまま美木乃先輩と向い合った。
「え…ちょ、ちょっと？」
「俺、先輩…いや、美木乃の事が好きです。
だから、俺と付き合ってください！！」
「付き合ってって…私、コウ君の１つ上だよ？」
「構いません」
「それに私、デブでブサイクだし…」
「そんな事無いです」
「そんな事無いって言っても……」
「あ〜…焦れったい！！
例え俺よりも年上でデブでブサイクだとしても、俺は美木乃が好きです！！」
「うん……うん、ありがと…。
うわぁぁーーん！！」
「え、ちょ…何で泣くんですか！？」
「それはぁ、ヒッグ…嬉しいからなのぉっ！！」
美木乃が急に抱きついてきて少々焦ったけど、俺の腕の中で泣いている女性は、俺の先輩でありそれでいて、世界で１番の存在であり、絶対にその手を離さないとそう思わせた。
----------------------------------------------------------------------
あの日以来、俺の人生は変わった。
「それじゃあ、行って来ま〜」
「あれ兄ぃ、何かここ最近早いね。
…何か変な物でも食べた？」
「んなワケねぇだろ」
今までよりも３０分程早く家を出て、そのまま美木乃の家に向かう。
「だよねぇ〜。
だって、私と同じ物食べてるもんね〜」
「はいはい、それじゃあ行ってくる」
因みに朝食は抜いてある。
それは、毎朝美木乃の作る朝食を食べに行ってるからであり、美木乃の笑顔をずっと見ていたいからだ。
…まぁ、一緒にいる時間を少しでも長くしたいってのもあるけど。
そんなこんなで、徒歩１０分の所にある美木乃の家へと着いた俺は何時ものようにインターホンを鳴らす。
「は〜い、ただいま〜」
少々間延びしているが、多分寝起きなのだろう。
「おはよう、美木乃。
もしかして寝起きだった？」
「ううん、そんな事無いよ？
それよりも朝ご飯食べよ♥」
「うん、そうだね」
そうして俺は家の中に入る。
そしてリビングには扇風機が１台置かれていた。
「そう言えば、そろそろ夏休みだっけ？」
「そういやそうだね？
それで、夏休みなんだけど…」
多分美木乃も考えているだろうけど、此処は俺から言わせて貰う。
「夏休みさ、皆と一緒にどっかに出かけないか？」
「うん良いね♪
それで、何処に出かける？」
「そうだな……」
そんな事を相談している俺達に、窓から涼しい風が入り込んでくる。
もうすぐ、俺達の夏が始まろうとしていた……
「はぁ、可愛い子いないかなぁ……」
高校デビューしてから早くも３ヶ月が経ち夏休みに差し掛かろうとしている中、早くも俺の周りでカップルが出来上がってるが、一番身近なのは何と言っても佐枝森だ。
アイツは高校デビュー当日で彼女を２人もゲットしやがるという、今までにないこの学校始まって以来の伝説を作りあげた人物だ。
「だが俺は、細身なんかに興味はない！！」
「あ〜はいはい、分かった分かった。
よ〜く分かったから、早く黙れ。」
「酷い！？それは酷すぎるぞ、神也！！」
「そうだぞ？
いくらコイツに彼女が居ないからって、黙れは無いだろ？」
「そういう佐枝森も相当酷いこと言ってるがな…。
で、康太はどうするんだ？」
俺こと吉永 康太は（よしなが こうた）は件の佐枝森ともう１人の友人で佐枝森と同じリア充である神也と、ボーイズトークを繰り広げてた。
「さて…どうしたもんか……。
今年入学した女子の中で、ぽっちゃりした子っていたっけ？」
「いなかったと思うが…どうだったけ、神ヤン？」
「あ〜…いたようないなかったような……。
あ、そう言えば！！」
「うぉ、誰かいたのか、神也！？」
「いや、先輩に１人オークがいたような…」
「マジか！！」
おぉっと、これは良い情報じゃないか？
因みに俺は年上だろうが年下だろうが関係無い！！
「あぁ、しかも自分の体型のせいでなかなか彼氏が出来ないとかって噂らしいぞ？」
「おっしゃ！！
それじゃあ、早速放課後コクって見るぜ！！」
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そんな訳で放課後、俺は校門前で美木乃先輩（神也調べ）を待っているところだ。
しかもそろそろ、下駄箱の中のラブレターに気付いた筈だ。
「つかアイツなんでこんな情報知ってんだよ…」
神也調べだと、美木乃先輩は下駄箱の中のラブレターに時めく人で性格はおっとりとしていて理想は自分の全てを愛してくれる人らしい。
「そろそろな筈なんだけど……」
「そろそろって何のこと？」
「美木乃先輩が来る時間の事で……」
「美木乃先輩って私の事じゃないかな？」
「へぇ、貴方が……って美木乃先輩！？」
「そうだよ？
私が、金寺 美木乃（かなでら みこの）だよ？」
「あ…その……美木乃先輩、あの…近くの公園に美味しいクレープ屋が来ているそうなので、一緒に食べに行きませんか？」
「わ〜クレープ屋！？食べる食べる〜！！
それと私の事は、先輩なんて付けなくても良いんだよ、コウ君？」
「あ、はい、それじゃあ……美木乃……さん」
「ホントはさんもいらないんだけど…まぁいいや。
それじゃあ、行こっか？」
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俺と美木乃さんは、学校から数分歩いたところにあるクレープ屋に来ている。
「わ〜、クレープなんて食べるのひさしぶりだな〜。あ、私チョコクリームで。
コウ君は何にする？」
「えっと…俺はチョコバナナで」
「は〜い、それじゃあ合計で1650円お願いします♪」
と、リャナンシーの店員が金額を告げた。
「は〜い♪」
と、美木乃さんが払おうとするのを、俺は慌てて止めた。
「ちょっ…美木乃さんは払わなくて良いですよ！！
俺が全部払いますから」
「え〜…でも、それは悪いよ…」
「あらあら、お２人さん仲が良いですね♪
それじゃあ、私からサービスしちゃって、半分の825円で良いですよ？」
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あの後、俺のゴリ押しで何とか俺持ちでクレープ代を払って、今は近くのベンチに座っている。
「何か結局払わせちゃったね…」
「いやいや良いんですよ。
それにしても、何でリャナンシーの夫婦がクレープ屋を経営しているかと思ったら、こういう事だったんですね」
「そうなの。
ここのクレープ屋って、味も美味しいけど見た目も凄いんだよ？」
確かに俺達の手に握られているクレープは、それはもう見事なまでに芸術的だった。
いやまぁ、芸術センスのない俺が言うのもどうかと思うが。
「さ、クリームが溶けない内に早く食べてしまいましょう？」
「うん、そうだね♪」
で、半分まで食べ終わった訳だけど、何故か美木乃さんが此方…正確には俺のクレープをじっと見ている。
「…美木乃さん、俺の少しあげましょうか？」
「え、良いの？」
「勿論ですよ」
「それじゃあ、お言葉に甘えて……はむ」
美木乃さんは、俺のクレープを１口食べた後その手に持っているクレープを俺の口に持って来て、
「はい、あ〜ん」
をしてきて、俺はそのまま……
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「……何だ、夢か」
という夢を、俺は見ていたようだ。
「兄ぃ、朝だよ、起きて？」
とまぁ、妹の声が聞こえる。
まぁ、これ以上寝ても仕方が無いし、起きるとしますかね？
「あ、兄ぃ、おはよ」
「あ〜はいはい、おはよ……」
「で、早速オハヨウのキスを……」
「絶対にしないからな？」
…言って置くが、妹は人間だ。
只、ちょっと変わった性癖を持っているだけで、断じて魔物娘ではない。
「ちぇ…兄ぃのケチ」
「ケチで結構。
俺は、実の妹と結婚するつもりはない。」
そんなこんなで、妹を部屋から追い出し、妹の突然の乱入に冷静に対処しつつ制服に着替え、朝飯を食った後、学校へと足を運ぶ。
「お〜っす、康太」
「おう、神也。
そして、天原さん…だっけ？」
「うん、そうだよ。
おはよう、康太君」
お〜ぅ、早速神也＆天原ペアが来たか。
じゃあ、そろそろ……3、2、1
「はよ〜っ」
「「おはよう」」
はい、ドンピシャのタイミングで、佐枝森＆紅葉＆縁花組と遭遇。
見事ドンピシャだった俺への賞金は2組のカップルです……くそぅ。
「ったく…お前等は相変わらず仲が良いな…」
「まぁ、そんな事言うなって。
ほら、アレだ、お前好みのヤツ知ってるからさ、教えてやるよ」
「おぅ、マジか！？」
「俺もお前と同じ時期があったからな…。
で、だ、その人は…所属はオークで、名前は金寺 美木乃って言うらしい」
「ふ〜ん、金寺さんか〜……」
そういや、夢の中に出てきたのも美木乃さんだったっけ？
「んぁ？もしかして知ってたとかか？」
「あぁ、まぁ一応な」
「で、何で修司は他の女の子にそんなに詳しいのかなぁ〜？」
「え、あ、ナッツさん？
その…目が怖いんですが？」
…まぁ、アイツの事はほっとくとして、今日の放課後美木乃さんにコクってみようか…。
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そして放課後、俺は美木乃さんにコクる為に校門で待っている途中だ。
グラウンドからは、野球部の熱いかけ声と共に、女子達の黄色い声が聞こえてくるが、俺にはもうあんなものなんて羨ましくはない。
「えっと、君が康太…君かな？」
「あ、はい、美木乃先輩」
「先輩は付けなくて良いよ。
で、大事な話って何？」
「えっと…その、俺…美木乃先輩の事…！！」
やべぇ、周りの視線が凄い気になる……。
「あの…ちょっとゲーセンに行きませんか？」
「え…うん、良いけど」
「じゃあ、早速行きましょう！！」
そう言って俺は、美木乃先輩の手を引っ張って近場にあるゲーセンへと走っていった。
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「…プ、ストップ！！」
どうやら俺は、美木乃先輩に止められるまでずっと走り続けていたようだ。
「はぁ、はぁ……やっと、止まってくれた」
「あ…すいません。
美木乃先輩、大丈夫ですか？」
「うん…何とか大丈夫。
でも、もう少しで負けそうだったかも…」
「へ？
負けるって何がですか？」
「ううん、何でも無いよ？
さ、早くゲームセンターに行こ？」
アレ、そう言えば負けるって何か重要な事だったような……？
「そうですね……と、言いたい所ですけど、やっぱり公園でクレープ食べていきませんか？」
「え…クレープ食べるの？
うん、食べに行こ！！」
そうして俺と美木乃先輩と一緒にクレープを食べに行くことにした。
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「わ〜、クレープなんて食べるのひさしぶりだな〜。あ、私チョコクリームで。
コウ君は何にする？」
「えっと…俺はチョコバナナで」
「は〜い、それじゃあ合計で1650円お願いします♪」
と、リャナンシーの店員が金額を告げた。
「は〜い♪」
と、美木乃先輩が払おうとするのを、俺は慌てて止めた。
「ちょっ…美木乃先輩は払わなくて良いですよ！！
俺が全部払いますから」
「え〜…でも、それは悪いよ…」
「あらあら、お２人さん仲が良いですね♪
それじゃあ、私からサービスしちゃって、半分の825円で良いですよ？」
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あの後、俺のゴリ押しで何とか俺持ちでクレープ代を払って、今は近くのベンチに座っている。
「何か結局払わせちゃったね…」
「いやいや良いんですよ。
それにしても、何でリャナンシーの夫婦がクレープ屋を経営しているかと思ったら、こういう事だったんですね」
「そうなの。
ここのクレープ屋って、味も美味しいけど見た目も凄いんだよ？」
確かに俺達の手に握られているクレープは、それはもう見事なまでに芸術的だった。
いやまぁ、芸術センスのない俺が言うのもどうかと思うが。
「さ、クリームが溶けない内に早く食べてしまいましょう？」
「うん、そうだね♪」
で、半分まで食べ終わった訳だけど、何故か美木乃先輩が此方…正確には俺のクレープをじっと見ている。
「…美木乃先輩、俺の少しあげましょうか？」
「え、良いの？」
「勿論ですよ」
「それじゃあ、お言葉に甘えて……はむ」
美木乃先輩は、俺のクレープを１口食べた後その手に持っているクレープを俺の口に持って来て、
「はい、あ〜ん」
おぉ！？
そう言えばコレって夢の通りなんじゃね？
「あれ、食べないの？」
「え、あ、いや、食べます。食べますよ？」
「じゃあ、はい、あ〜ん♪」
「あ、あ〜ん……ん、美味しいです！！」
「うふふ、良かった♪」
「は、はい…」
ヤッベぇ…すっごくヤベぇよ。
今俺の心の住人が全員鼻からケチャップ出して倒れてるぜ……。
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俺達は今、美木乃先輩のオススメの場所に来ている。
「此処、どうかな？
私の１番のお気に入りなんだけど…」
「はい、凄く綺麗です…」
確かに、風景自体は自分の住んでいる町並みだ。
だけど、夕暮れ時の茜色に染まった町並みを一望できるこの場所は、とても良い場所だと俺は思った。
「でね、この場所、実はコウ君以外まだ誰にも教えたことが無かったんだよ？」
「え…それじゃあ……」
「うん、コウ君が……初めて、なの。」
…俺、この人の事ホントに好きになったかも。
「先輩、あの…！！」
俺はそのまま美木乃先輩と向い合った。
「え…ちょ、ちょっと？」
「俺、先輩…いや、美木乃の事が好きです。
だから、俺と付き合ってください！！」
「付き合ってって…私、コウ君の１つ上だよ？」
「構いません」
「それに私、デブでブサイクだし…」
「そんな事無いです」
「そんな事無いって言っても……」
「あ〜…焦れったい！！
例え俺よりも年上でデブでブサイクだとしても、俺は美木乃が好きです！！」
「うん……うん、ありがと…。
うわぁぁーーん！！」
「え、ちょ…何で泣くんですか！？」
「それはぁ、ヒッグ…嬉しいからなのぉっ！！」
美木乃が急に抱きついてきて少々焦ったけど、俺の腕の中で泣いている女性は、俺の先輩でありそれでいて、世界で１番の存在であり、絶対にその手を離さないとそう思わせた。
----------------------------------------------------------------------
あの日以来、俺の人生は変わった。
「それじゃあ、行って来ま〜」
「あれ兄ぃ、何かここ最近早いね。
…何か変な物でも食べた？」
「んなワケねぇだろ」
今までよりも３０分程早く家を出て、そのまま美木乃の家に向かう。
「だよねぇ〜。
だって、私と同じ物食べてるもんね〜」
「はいはい、それじゃあ行ってくる」
因みに朝食は抜いてある。
それは、毎朝美木乃の作る朝食を食べに行ってるからであり、美木乃の笑顔をずっと見ていたいからだ。
…まぁ、一緒にいる時間を少しでも長くしたいってのもあるけど。
そんなこんなで、徒歩１０分の所にある美木乃の家へと着いた俺は何時ものようにインターホンを鳴らす。
「は〜い、ただいま〜」
少々間延びしているが、多分寝起きなのだろう。
「おはよう、美木乃。
もしかして寝起きだった？」
「ううん、そんな事無いよ？
それよりも朝ご飯食べよ♥」
「うん、そうだね」
そうして俺は家の中に入る。
そしてリビングには扇風機が１台置かれていた。
「そう言えば、そろそろ夏休みだっけ？」
「そういやそうだね？
それで、夏休みなんだけど…」
多分美木乃も考えているだろうけど、此処は俺から言わせて貰う。
「夏休みさ、皆と一緒にどっかに出かけないか？」
「うん良いね♪
それで、何処に出かける？」
「そうだな……」
そんな事を相談している俺達に、窓から涼しい風が入り込んでくる。
もうすぐ、俺達の夏が始まろうとしていた……
13/06/23 04:07更新 / @kiya