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『――うぁぁ……やめろぉ……やめてくれぇぇ……』 まるで血の池地獄にゆでられている男のような声が、明かりのない空間に響きわたる。それに反応するかのように、女達の嘲るような声が響いていく。 『――アンタ自分の立場分かってんのぉ?他人の家の物を勝手に持って行ってはいけません!ってママに習ってないのかしらぁ?』 『――言い逃れも不可能です。杜撰な領主抹殺計画も含めて、証拠は残っています』 声と同時に、何かが歪められていく音がする。解かされ、ねじ曲げられ、歪んでいく。 『あアあ……やメロぉ……ヤめてクレぇ……』 もしも暗視能力がある物がいたら、この部屋で一体何が行われているか、ありありと見ることが出来ただろう。 『折角黄金になったアンタの、バブルスライムすら顔をしかめるほどくっさくて醜い体を、わざわざ役立ててやろうとしてるんだから、命を奪われないだけ感謝しなさいよぉ〜』 魔法によって加工されているガーゴイルの手が、黄金の像に変化し、魂を封じられたアワッゾの体を撫でつつ、魂ごと飴細工のようにねじ曲げ、全く別の物へと変化させていく。そう……彼女と同じガーゴイルのように。 『領主様も中々えげつない罠を実装するものですね。あの部屋に異様に無駄に存在する金を持ちながら、ドアの向こうへ足を踏み入れると、一定時間経ったらその黄金と肉体を一気に融合させ、魂ごと封じてしまうなどという代物。常人では考え付きこそすれ、実行に移そうなど考えつくものではありません』 あの時、アワッゾはアマヨータの黄金を一気に奪った。それが彼の黄金化を一気に押し進めることになるなど誰が予想が付こうか。 『そうそう。そもそもGOLD RUSHなんて尤もらしい看板掛けてる辺りなんて、既に完全にハメる気満点じゃなぃ。あれは[迫り来る金]って意味なのにね〜』 『そ、ソンなァ……』 [迫り来る金]……つまり、完全にあの場所の金全てがトラップである。そこで欲を出して持って行こうとした瞬間に、その者の運命は決まってしまうのだ。因みに、宝石類を持って行った場合はゴーレムへと変化する。 『寂しそうな声出さないのぉ♪アンタのソレ、くっさい外見に似合わず立派だからさぁ、アタシ達が精一杯[お世話]してやるからさぁ♪』 『ふたなりとは中々変わった嗜好ですね。まぁ……わたしも好みですが』 既に女声に変わりつつあるアワッゾの声。その声を耳にしながら首元を撫で、胸元を揉み、背中から尻のラインまで形作っていきながら、あらゆる場所に服従の呪印を刻んでいく二人。その二人に対して、アワッゾだった者は、ただ譫言のように『ヤメロ……』と呟きながら、何故か無尽蔵に湧く精を放つことしかできない。いや、その言葉の意味すら、今のアワッゾには分かっていないかもしれない。ただ、与えられた刺激に、わけも分からず反応しているだけに過ぎない。 『アンタの味にここにいるみんなが飽きたら、アンタからソレ外してやるよ』 『既に台座も用意してあります。共に喜びをもって職務に励みましょう』 彼女達の言葉も、もはやアワッゾの理解の外となる中、新たなる黄金の――ふたなりガーゴイルが完成しようとしていた。 一方、アマヨータは……。 『あ〜あ〜、デカく書いた[Under Construction]略して[U.C]の文字が見えなかったのかねぇ』 『見事な犬神家……』 彼が落ちた地面は、奇跡的に異常なほどに柔らかかった。それこそ、彼が腕を先頭に頭から落ちて、腰辺りまで一気に埋め込まれる程度に。 丁度そこに寄って集ってきたのは、蟻の素敵な建築屋、ジャイアントアント族達だった。この物理法則を無視した長い廊下の建築に、彼女達は全力で関わっている。その彼女達の何人かが、逆さに突き刺さったままの彼をまじまじと眺めたり、ズボンを剥いて生殖器に直接触れたりしていた。 『よかったぁ、生殖機能は無事だよぉ♪』 刺激によって隆起した肌色松茸を確認できた一人が喜ばしげに小躍りするのを、スコップを担いだ一人が制しつつ告げた。 『はいはい一々喜ばない喜ばない。兎に角、ひとまず巣まで運ぶわよ。この男の処遇はその後で考えましょ。まぁ、どうせ盗人だし、休んでばかりの子が有り難く貰ってくれるでしょ』 『『『はーい』』』 その声を合図に彼女達は一斉に彼を掘り出していた。彼の両手と肘は黄金と化していたが、そこから黄金化は進んでいなかった。恐らく黄金を奪われたことで、浸食が止まったのだろう。その意味で、彼は幸運だったのかもしれない。 ――こうして彼は、己の意志の入るはずのない場所で、ジャイアントアントの巣に運ばれることが確定してしまった。その上、会話から推測するに、既にアントアラクネの婿となることが共通理解となっているようだった。 とはいえ、体の自由が利く分、アワッゾよりは身分としてはマシなのかもしれない。それをどう感じるかは、アマヨータの心次第であるが。 再.帰.不.能! 『にゃっはははははは♪他人の家から勝手にお金を盗み出そうとするほどお金が好きなら、自分がお金になればいいじゃない♪そうすれば、毎日側にいられるだろうし……ね♪くすすっ♪ と言うことでお二人さん……けららっ♪お幸せ膝〜♪』 ENEMY:10(-2)
10/04/06 00:17 up
強欲者には、相応の罰を。 彗嵐様のサイトがなければ黄金化なんて思いつかなかった……感謝。 と言うわけでこいつらの冒険は糸冬了……にゃっははははははははorz PC壊れた……んで今親のを使って更新ちう。 まだまだ話は続きます。 初ヶ瀬マキナ
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