場所:『B』-S BACK

「――っと、さて、ついに最後か。中々疲れやがるが……面白ぇ」
軽く槍を振り回しつつ、『暴徒鎮圧』を終えたリッツはインターバルの間に体の具合を整えていた。彼の愛槍にガタが来る気配もなく、また、彼自身も体力が有り余っている状態だ。だが次の『魔物襲来』のスコア如何によって、本陣に乗り込めるかが決まってくるともなれば、流石に準備の一つは必要だろう。
故に彼は適度に体を動かし、次のゲームに向けてテンションを上げているのだ。目的を達成するために全力を尽くす。彼は根っからの武人肌であった。
「……っおし!」
ブザーの音と共に、彼は槍を持ち、ステージに上がる。どこか廃墟を思わせるステージであるが、槍を振り回すだけの余裕は十分あった。そして、ステージに入った彼を取り囲むように、何人――いや何匹もの醜悪な成りをした魔物が出現した。
「――ヘッ、いきなり絶体絶命ってわけかい」
言葉に怯えの気配はない。寧ろどこか期待をしているようなようにすら感じられるリッツの声。それは遠慮を知らず武器を振るえる事への歓喜か、それとも教会兵士としての使命感か……。
地面を踏み締め、槍を握り締めつつ、リッツは瞼を大きく剥き、獣達に向けて大声で叫んだ。

「――覚悟しろ、魔物共!」

「――イィィヤッ!破ぁっ!疾っ!ホァイヤッ!」
リッツの攻撃は、まさに疾風怒濤であった。一度槍を薙ぎ払えば、一つ目の巨人が上半身と下半身に分かれ、貫くように突き出せば、人のような形をした植物が五匹、一気にその名を店に返した。
また石突きや取っ手での打撃に人狼や猫娘はダウンし、袈裟に刃が動けばミノタウロスの胸が裂かれていった。
時折烏の嘴や、獣の爪などによってダメージこそ受けていたが、それを物ともせず槍を捌いていくリッツ。
「――秘槍技'ヴェスパ'!あぁぁららららららららぁっ!」
目の前の敵に対する、ホーネットの如き苛烈な突きを繰り出すことから名付けられたその技によって、オークやトロールが蜂の巣にされていく。突きと抜きを高速で繰り出すことによって発生するつむじ風に、烏は羽を裂かれ、小さな魔物は首が飛び命を落とした。
まさに一方的な蹂躙。足を薙いだ後に、そのまま胴体に向けて刃を振るう。倒れた魔物の胴体をかき分けて出る小物に炎の術法を当て燃やしつつ、背中を狙う魔物に蹴りを食らわし、そのまま貫く。まさに一騎当千であった。
「――せいやぁあああっ!」
――だが、槍を振るいつつも、リッツの心中は冷静に、敵の様子を捉えていた。それも、一部の敵に対する疑念を浮かべるほどに。
(……一部の奴、襲いかかるでもなく、命乞い……らしきものをしてやがった)
知性のない魔物にも、命を大事にするような感情があったのだろうか。それも、他の魔物を押し退けるようなそれではない形のものが。
一部の魔物は、小さな魔物を庇うような仕草まで行われていた。どこか生々しい、恐怖と決意が入り交じった表情を浮かべながら。
「……まさかな」
恐らく、このアトラクションを作った魔法使い、それが意図的に織り交ぜたフィクションだろう。この領の元領主は意地の悪さでは右に出る者はいないという評判だ。だからこそ狡猾さの象徴である狐をシンボルにしているとさえ言われている。今回の魔物の行動も、そうした狡猾さの一環だろう。
「……(だが、魔物は魔物だ)」
戦うことを好まない博愛主義者ならこの手段は効果があるが、自分達は戦い、魔を殲滅することを生業としている教会兵士だ。このようなまやかしなど通じるはずもない。
何故なら――魔は人類の敵だからだ。敵を認識している以上、そこに慈悲も何も存在するはずもない。そうリッツは自ら考えていた。昨今の魔物の性質が変化したものであったとしても、それは変わらない。
ただし彼の流儀として、卑劣な手を使うつもりはない。信仰と自らの誇りを裏切ることになるからだ。その両者を保ちながら生きること、それが彼の理想とする姿であったのだ。
「――っつらぁぁぁぁぁぁぁっ!」
脳内での思考を打ち切り、リッツはそのまま槍を横薙ぎに払った。その刃が生み出す軌跡が、多くの魔物に断末魔をあげさせ――!

『TIME IS UP』

――妙に渋い男の声がした。それと同時に、今まで切り裂いて突き崩してきた魔物の姿が一気に消え失せ、ステージを満たす魔力の気配が消える。
「……っふぅ……っと」
リッツは息を調えつつ、モニターらしき物を眺めた。そこはまだ暗黒に満たされていたが――。

『FINAL Stage Clear!!
U'r Score is……Oh! Newwwwwwww Recooooooooord!!!
AND U've GOT A RIGHT 2 FIGHT 4 PRIDE……V.S. MY MASTER!!!』

――激しい爆破音と共に、モニターに映る文字。警戒をしながらも、リッツはその言葉に内心ガッツポーズをし……心鋭く、モニターの下に開く扉を見つめていた。
モニターが、『GO』の二文字を映し出す。それを眺めたリッツは……そのまま愛槍を握り、ドアへと走っていった……。


ENEMY:10
10/04/06 00:21 up
正々堂々な彼にはNext Stepを。
ジョイレインはハンパな策士と裏口入学者以外は気に入るようです。

ということで彼の話はまだ続きます……が、その前に。
初ヶ瀬マキナ
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