36.始まりを告げる鐘がなる
数日後ーーー。
「ヴィヴィアンたち、戻ってこないね」
ブレイブはベッドの上でポツリと呟いた。
周りには死屍累々。ドロドロのグチャグチャに乱れてアヘ顔を晒す、魔物娘たちの姿があった。
一反木綿の白衣は布の体で吸収できないほどのザーメンと、自分のツユで濡れている。
リビングアーマーのアンは、漆黒の鎧が白濁でコーティングされて光沢を増している。
バイコーンのビクトリアは穴という穴から精液を零して倒れ伏している。
日夜繰り広げられた嬌態の宴に、サテュロスのケルンも酔った。
彼女もブレイブに股を開き、開いたまま。股から自分のものではない白濁を零しながら、果てていた。
その中で、ブレイブは股間の勇者の剣で残ったもう一匹の魔物を退治しようとしていた。
「いいじゃない。気持ちがいいんだから♡ あ、はぁぁぁあ」
もう何度目になるのか分からない。ブレイブの射精を受け止め。
もう何度目になるのか分からない。絶頂にガーテンは登り続ける。
「すごい、本当にすごいよ。私、もうキミ無しじゃ生きていけない」
ガーテンが顔をこれ以上ないくらいに淫らに蕩けさせる。
それを見たブレイブは、彼女のヴァギナから己の肉棒を引き抜く。そして、精液で彼女の顔にデコレーションを施していく。
いくら見かけが幼くとも。そこにいるのは、もはや幼子ではない。貪欲に快楽を貪る一匹のオス。
ブレイブはそのまま、ガーテンの胸で己の肉棒を挟み込ませる。
「あはは、好きだねぇ♡ いいよ。私のおっぱいまんこに君の精液を思う存分に注ぎ込んで。アッ、ぅんん」
ブレイブはガーテンの乳首を摘むと、そのまま彼女の胸を揺らす。
相手が痛くないように、気遣ってはいるものの。女を征服している悦びに、ブレイブは陶酔する。
そして、思う存分に全身がオナホールのような、極上の感触を与えてくる。ガーテンの肢体にのあらゆる部位を使用して、彼女に精液を振りかけていく。淫らに濡れた吐息が、室内に聞こえていた。
「今度はまたこっちに、ちょうだい♡」
ガーテンは四つん這いになって、ブレイブに形のよいシリを向ける。向けて、自分の細指で陰唇をおし拡げる。
滴(タ)ラリ。「ヒゥッ」
ブレイブに注がれたものが溢れる感触に、ガーテンは体をわななかせる。
そんな彼女の様子にも御構い無しで、ブレイブは無遠慮に彼女のヴァギナにペニスを突き入れる。
パン、パン。こ気味良く、リズミカルな音が響いている。ガーテンの嬌声とブレイブの荒い呼吸も合わせて奏でられる、情事の三重奏。
その楽曲を聴いているだけでしかない他の面々が呟く。
「ブレイブさん、すごくなりすぎです。もう可愛かったあの子はいないのですね……」
よよよ、と白衣が泣き真似をする。しかし、口元はニマァっと歪んでいる。
アンは無言で頷いている。
「もっと、もっとお仕置きして下さいぃぃ♡」
ビクトリアが馬体をクネクネと揺らしている。
「しぇいえき……。お酒よりも酔えりゅうぅ」
ケルンが醸造家にあるまじき(?)ことを口走っている。
その誰もが、ブレイブに屈服させられて、この上ない悦びを感じていた。
ヴィヴィアンとカーラという攻撃組がいない状態では、ブレイブに太刀打ちできるわけがない。
快楽を受け入れるだけになっていた。
彼らはここ数日、このような淫らに爛れた日々を送っていた。
昼間は街で遊び、夜は夜通し交わり続ける。
ブレイブはすでに、この街に永住しても良いのではないかという気持ちを抱いていた。
ヴィヴィアンとカーラが戻ってきたら相談してみよう。
彼女たちだって魔物娘だ。ブレイブの提案にすぐに乗ってくれるに違いない。
乗ってくれなくとも、下の口を塞げばいろんな意味で飲み込まずにはいられないだろう。
すでに、ブレイブは色んな意味で天狗になっていた……。性的に。
ガーテンの子宮を精液で満たしたブレイブは、今度はシリアナにペニスを突き入れる。
「んぎぃ♡」
苦しそうな声をあげたものの。ガーテンはすぐにシリアナでブレイブの肉棒を締め上げてくる。
キモチガイイ。パンッ。キモチガイイ。ぐにゅうう。キモチガイイ。ドピュ。
ザーメンのみで腹を満たせるくらいに。ブレイブはガーテンの腸肉に精液塗りたくっていく。
はぁっ。ハァっ。
ケダモノたちの宴は、日が昇るまで続く。
◆
ブレイブたちは今日もまた、快楽に濡れた日を享受する。
街の様子は誰もが、楽しそうで、嬉しそうで。
街の中で起こる犯罪は、キョニュー特選隊によって解決される。
今日は、ブレイブたちはバフォメットのメイ改めキョニューと共に街のパトロールに出てきていた。
どうしたことか、キョニューが誘ったのだ。
しかし、今日は……キョニューの様子がおかしかった。
心ここにあらずといった様子で、落ち着きがない。
ケット・シーのカールも姿を見せない。
「勇者砲、ついに実用化されおったか……」
「?」
キョニューの呟きにブレイブが顔を向ける。
キョニューは慌てて自分の口を押さえる。
「すまぬ、何でもない」
この日も、いつもと変わらない平和な日々。
パトロールが終われば、キョニューの屋敷に戻って再び昨日のように皆で交わる。
ブレイブはそれが待ち遠しくてたまらない。
気持ちのイイ夜が待ち遠しい。ガーテンによって、目覚めさせられたナニカがブレイブに狂おしく女体を求めさせていた。
どうしてこんなにも、猛るのか?
今までにこんなことはなかっった。今まで起こってもおかしくは無かった。
何かの匂いを嗅ぎ取った雄のように、ブレイブは体の疼きを持て余している。
そんなブレイブの横顔を見て、キョニューが声をかける。
「ブレイブよ……。屋敷に戻ったらワシと手合わせをしてみぬか?」
「え!?」
ブレイブは思わず、キョニューの体を舐め回すように見てしまう。幼い体躯だが、バフォメットは名器であるとヴィヴィアンから聞いたことがある。しかし、キョニューには夫がいるのでは無かったか?
ブレイブの視線に気がついたキョニューは、フンと鼻を鳴らす。
「そっちではない。ワシにはもうそちらの相手は間に合っておる。幼くともインキュバス。色に走るのは大いに結構。しかし、じゃ。相手のおる者をそうして見るのはやめておくのじゃ」
「ごめんなさい」
「いや、いい。魔物の漢女(オトメ)として、そう見られることはとても好ましい。じゃが、相手の伴侶がどう思うかは、別じゃ。何せ、ワシらはらぶらぶじゃし。あやつはヤキモチ焼きじゃからのぅ」
キョニューがカラカラと笑う。
「じゃあ、手合わせって……」
ブレイブに嫌な予感がよぎる。
「そのままの意味じゃ。ワシと拳で語り合うのじゃ」
『ぇえっ!?』
キョニューの言葉にブレイブだけではなくその場の全員が驚きを露わにする。
そして、口々にブレイブの身を案じる言葉をかけてきてくれる。
「安心せい。ちゃんと手加減はする。じゃが、お主。今、持て余しておるものがあるじゃろう?」
キョニューがニィと口端を歪める。
「ぼ、僕は……」
「問答無用じゃ」
ブレイブの言葉を聞くこともせずに、キョニューはズンズンと今日の興行に向かっていってしまう。
ブレイブたちは、その背中を見ているしかできなかった。
◆
「さて、と」
本当にやるんだ。ブレイブは渡された剣を構える。
ここはメイの屋敷にある武闘場。屋敷の中にこんなものがあるとは、武闘派バフォメットの名は伊達ではない。
寸法が合わないなどという言葉は、魔術、という単語で黙らされる。
相手をするのは、興行(パトロール)を終えて、キョニューからメイに戻ったバフォメットである。
彼女は拳を構えて、ブレイブに対峙する。
「遠慮はいらん。お前の体の疼きを思う存分に解き放つがいい。やり方がわからんというのなら、ワシが引き出してやろう」
「え?」
間合いを一瞬で詰めたメイが、ブレイブの右手を掴む。
「”勇気の火”じゃな。これが、猛っておる。やはり、お主も戦の匂いを感じておるようじゃな」
「いくさ、って?」
訝しがるブレイブに、メイは構わず続ける。
「もうすぐ、この街は攻め込まれるじゃろう。教団によって」
「えぇっ!?」
驚いたブレイブは自分のパーティの顔を見る。その誰もが、驚きを隠せないでいた。
唐突だ。本当に唐突だ。
メイが落ち着かなかったのはそのせいだったのか。
そして、ブレイブが性欲、もとい猛る心音を持て余していたのも。
「いつかは分からぬ。じゃが、今朝、ワシらは恐ろしい情報を入手した。簡単に言えば、教団は悍ましい兵器の開発に成功した。ワシは本当はこの街の住人を避難させたい。魔女めにもそう言ったのじゃが、奴は聞き入れなんだ」
その時のやり取りを思い出すように、ブレイブの右手を掴んだまま、メイは力を込めてしまう。
「い、痛い」
「おお、すまん」
メイは慌ててブレイブの手を離す。
「だから、今日は様子がおかしかったんだ。僕と手合わせをするっていうのは……。もしかして、僕にも戦えってこと!?」
ブレイブが素っ頓狂な声をあげる。メイはブレイブの様子を見て、拍子抜けしたような表情を浮かべる。
「………。そうか、お主は戦おうとしていたわけではなかったのじゃな。すまぬ。それはワシの早合点じゃった。安心せい。ワシは戦いたくない者を戦列に並べるようなことはせん。じゃが、お主はヴィヴィアンの夫じゃからな。死なぬように、自身の身は自身で守れるようになっておいてもらいたいとは思う」
「でも、僕にそんな力はーー」
「ルチアを倒したのはお主じゃと聞いておるぞ」
「うん。だけど、それは無我夢中で。みんなを助けなくちゃ、と思ったからで。僕がみんなに助けられただけで……」
「それも聞いておる。それもお主の力じゃ」
メイが断言する。メイはそうして、一つの魔道具をブレイブに渡す。
これは、確か、ヴィヴィアンが使っていた魔道具。修理の為に、メイに預けていたハズだ。修理が終わったのだろうか?
しかし、それならば、何故自分に渡すのだろう。ヴィヴィアンが戻ってきてから直接渡せばいいハズなのに。
困惑するブレイブにメイは言う。
「これは、お主が使えるように、新しい術を組み込んである。これを使いこなせるようになってもらう為にも、ワシはお主を手合わせに誘ったのじゃ」
ブレイブは恐る恐るその魔道具を受け取る。ルービックキューブのような魔道具。
ヴィヴィアンは、ルチアに殺された魂をこの中に保管していた。そして、ルチアを倒す為に全てを解放した。
ヴィヴィアンの想いも詰まっていたこの道具を手にしたブレイブは、重たいと感じた。
「でも、これはヴィヴィアンのじゃ……」
「いや、もうあやつにこれは必要ない。ルチアを倒した今となっては、必要としてはいかんのじゃ。あやつは本来、こんな魔術に頼らずとも魔法が使える。じゃから、お主が使え。それに、ヴィヴィアンの目的のためにも、これを必要とするのはお主の方じゃ」
「僕の? それに、ヴィヴィアンの目的って」
「それは、ワシの口からは言えん。ヴィヴィアンからお主が聞くべき話じゃ」
そこで、メイは言葉を切って、天井を見上げる。
「一つだけ言っておくとな。あやつは世界を救おうとしておる」
メイは、フゥ、と一つ息を吐き出す。
「協力するかどうかは、お主の自由じゃ。しかし、ワシは、お主が賛同してくれることを願うよ」
ヴィヴィアンの目的。それはブレイブには分からない。しかし、ヴィヴィアンの願いならば叶えてあげたい、ともブレイブは思う。
もしも、それが余りにも常軌を逸していれば、何とか説得しよう。その方法はガーテンのおかげで自分は手に入れたはずだ。
ブレイブは素直に走るだけの少年では、なくなろうとしていた。
メイは年長者として、少年を見ていた。話に聞く限り、ブレイブの成長は著しい。
しかし、成長するのはブレイブだけではない。メイは彼らを微笑ましく思い、彼らを害そうとする者たちを疎ましく思う。
今までは、メイが魔術を仕掛けたこの街に奴らが積極的に攻め入ってくることはなかった。
だが、勇者砲などという恐ろしく、悍ましい兵器を開発してしまった今ならば、奴らが攻め入ってこない道理などない。それがどういったものであるか、という情報は得られていないが、魔界を一つ消しとばしたのは事実である。
奴らがやってくるまでに、ブレイブたちだけ逃すことも考えた。しかし、それは聞き入られない気がする。
ブレイブの先ほどの言動からは、すぐに逃げ出しそうに思えるが……。
話で聞いた内容と、彼の中で猛っている”勇気の火”を見れば、彼は戦う方を選ぶだろうとメイは考える。
だから、それまでに、この魔道具を使いこなせるようになってもらう。
「よし、では始めようかの?」
「えっ、僕はまだ、納得してないよ!?」
「問答無用じゃ」
メイはそう言いながら、ブレイブに打ち掛かってきた。
この日はブレイブは疲れ切って、彼女たちを抱く気力はなかった。
勝手に搾り取られはしたが……。
そうして、それぞれの日々が過ぎていく。
悪意は、人の心など待ってはくれない。
◆
そうした魔物娘とその伴侶としては正しく、乱れに淫れた生活はーーー。
数日後、絶望を告げる鐘の音とともに、ついに破られる。
カァーン、カァーン。平和なドルチャイの町に警鐘が鳴り響く。
門番は見てしまった。遠くからやってくる彼らの姿を。
唐突に、日常は闘争という名の非日常に塗りつぶされる。
ーーー否。闘争状態という真の日常が目を覚ます。
闘争の運び手は、メイの言っていた本当の敵。主神教団過激派。
豪奢な甲冑に身を包んだ騎士と勇者たちが、ドルチャイに向けて侵攻してくる。
彼らの指揮官は一層煌びやかな衣装に身を包んだ大司教。
ここに彼はいない。
神の敵どもという名を冠し、主神への信仰で心の臓を叱咤する狂信者。マステマスは……。
その代わり、ここには奴らがいる。血に飢えた神の狼”ヒルドールヴ”。
群狼の渇望が、彼らの中に潜んでいる。子供達の安寧の地を、敵も味方もなく引き裂こうと嗤っている。
人類の希望であると謳い。魔物が真実、悪であった頃から魔物と戦い続けてきた教団。
すでに魔物が人類の敵ではなくなったというのに、教団はそれを認めない。
彼らは、人のためではなく、魔物を認めない神の、主神のための組織である。
教団の両翼は、人の欲望と欺瞞で象られている。
真実、人々のために戦う勇者たちがいる。しかし、彼らを運用するのは、神か己にのみ従う者ども。
マステマスも、教会上層部も知っている。魔物はすでに敵ではない。
魔物という敵対者によって、人を管理支配してきた主神こそが敵であるハズだ。
しかし、教会の上層部はそれを知って。
半分は欺瞞の中で神の走狗に身をやつし。
半分は己の欲望のために魔物よりも魔物らしく。
彼らはヒトを、魔物を殺せとと駆り立てる。
その命を人のために差し出せと嘯いて。
本心では手を合わせて、神のために。
本心では弛んだ肉を震わせて、己のために。
マステマスは走狗だ。走狗であり、神の暴力装置である。
神のためであれば、敵も味方も、己ですら殺す。
だから、闘争という果実を求めてひた走る狂乱の徒を動員することにも。
勇者の命を使いつぶすことにすら、躊躇いはない。
さぁ、戦争を始めよう。殺したり殺されたり、犯したり犯されたりしよう。
エイメン。
「ヴィヴィアンたち、戻ってこないね」
ブレイブはベッドの上でポツリと呟いた。
周りには死屍累々。ドロドロのグチャグチャに乱れてアヘ顔を晒す、魔物娘たちの姿があった。
一反木綿の白衣は布の体で吸収できないほどのザーメンと、自分のツユで濡れている。
リビングアーマーのアンは、漆黒の鎧が白濁でコーティングされて光沢を増している。
バイコーンのビクトリアは穴という穴から精液を零して倒れ伏している。
日夜繰り広げられた嬌態の宴に、サテュロスのケルンも酔った。
彼女もブレイブに股を開き、開いたまま。股から自分のものではない白濁を零しながら、果てていた。
その中で、ブレイブは股間の勇者の剣で残ったもう一匹の魔物を退治しようとしていた。
「いいじゃない。気持ちがいいんだから♡ あ、はぁぁぁあ」
もう何度目になるのか分からない。ブレイブの射精を受け止め。
もう何度目になるのか分からない。絶頂にガーテンは登り続ける。
「すごい、本当にすごいよ。私、もうキミ無しじゃ生きていけない」
ガーテンが顔をこれ以上ないくらいに淫らに蕩けさせる。
それを見たブレイブは、彼女のヴァギナから己の肉棒を引き抜く。そして、精液で彼女の顔にデコレーションを施していく。
いくら見かけが幼くとも。そこにいるのは、もはや幼子ではない。貪欲に快楽を貪る一匹のオス。
ブレイブはそのまま、ガーテンの胸で己の肉棒を挟み込ませる。
「あはは、好きだねぇ♡ いいよ。私のおっぱいまんこに君の精液を思う存分に注ぎ込んで。アッ、ぅんん」
ブレイブはガーテンの乳首を摘むと、そのまま彼女の胸を揺らす。
相手が痛くないように、気遣ってはいるものの。女を征服している悦びに、ブレイブは陶酔する。
そして、思う存分に全身がオナホールのような、極上の感触を与えてくる。ガーテンの肢体にのあらゆる部位を使用して、彼女に精液を振りかけていく。淫らに濡れた吐息が、室内に聞こえていた。
「今度はまたこっちに、ちょうだい♡」
ガーテンは四つん這いになって、ブレイブに形のよいシリを向ける。向けて、自分の細指で陰唇をおし拡げる。
滴(タ)ラリ。「ヒゥッ」
ブレイブに注がれたものが溢れる感触に、ガーテンは体をわななかせる。
そんな彼女の様子にも御構い無しで、ブレイブは無遠慮に彼女のヴァギナにペニスを突き入れる。
パン、パン。こ気味良く、リズミカルな音が響いている。ガーテンの嬌声とブレイブの荒い呼吸も合わせて奏でられる、情事の三重奏。
その楽曲を聴いているだけでしかない他の面々が呟く。
「ブレイブさん、すごくなりすぎです。もう可愛かったあの子はいないのですね……」
よよよ、と白衣が泣き真似をする。しかし、口元はニマァっと歪んでいる。
アンは無言で頷いている。
「もっと、もっとお仕置きして下さいぃぃ♡」
ビクトリアが馬体をクネクネと揺らしている。
「しぇいえき……。お酒よりも酔えりゅうぅ」
ケルンが醸造家にあるまじき(?)ことを口走っている。
その誰もが、ブレイブに屈服させられて、この上ない悦びを感じていた。
ヴィヴィアンとカーラという攻撃組がいない状態では、ブレイブに太刀打ちできるわけがない。
快楽を受け入れるだけになっていた。
彼らはここ数日、このような淫らに爛れた日々を送っていた。
昼間は街で遊び、夜は夜通し交わり続ける。
ブレイブはすでに、この街に永住しても良いのではないかという気持ちを抱いていた。
ヴィヴィアンとカーラが戻ってきたら相談してみよう。
彼女たちだって魔物娘だ。ブレイブの提案にすぐに乗ってくれるに違いない。
乗ってくれなくとも、下の口を塞げばいろんな意味で飲み込まずにはいられないだろう。
すでに、ブレイブは色んな意味で天狗になっていた……。性的に。
ガーテンの子宮を精液で満たしたブレイブは、今度はシリアナにペニスを突き入れる。
「んぎぃ♡」
苦しそうな声をあげたものの。ガーテンはすぐにシリアナでブレイブの肉棒を締め上げてくる。
キモチガイイ。パンッ。キモチガイイ。ぐにゅうう。キモチガイイ。ドピュ。
ザーメンのみで腹を満たせるくらいに。ブレイブはガーテンの腸肉に精液塗りたくっていく。
はぁっ。ハァっ。
ケダモノたちの宴は、日が昇るまで続く。
◆
ブレイブたちは今日もまた、快楽に濡れた日を享受する。
街の様子は誰もが、楽しそうで、嬉しそうで。
街の中で起こる犯罪は、キョニュー特選隊によって解決される。
今日は、ブレイブたちはバフォメットのメイ改めキョニューと共に街のパトロールに出てきていた。
どうしたことか、キョニューが誘ったのだ。
しかし、今日は……キョニューの様子がおかしかった。
心ここにあらずといった様子で、落ち着きがない。
ケット・シーのカールも姿を見せない。
「勇者砲、ついに実用化されおったか……」
「?」
キョニューの呟きにブレイブが顔を向ける。
キョニューは慌てて自分の口を押さえる。
「すまぬ、何でもない」
この日も、いつもと変わらない平和な日々。
パトロールが終われば、キョニューの屋敷に戻って再び昨日のように皆で交わる。
ブレイブはそれが待ち遠しくてたまらない。
気持ちのイイ夜が待ち遠しい。ガーテンによって、目覚めさせられたナニカがブレイブに狂おしく女体を求めさせていた。
どうしてこんなにも、猛るのか?
今までにこんなことはなかっった。今まで起こってもおかしくは無かった。
何かの匂いを嗅ぎ取った雄のように、ブレイブは体の疼きを持て余している。
そんなブレイブの横顔を見て、キョニューが声をかける。
「ブレイブよ……。屋敷に戻ったらワシと手合わせをしてみぬか?」
「え!?」
ブレイブは思わず、キョニューの体を舐め回すように見てしまう。幼い体躯だが、バフォメットは名器であるとヴィヴィアンから聞いたことがある。しかし、キョニューには夫がいるのでは無かったか?
ブレイブの視線に気がついたキョニューは、フンと鼻を鳴らす。
「そっちではない。ワシにはもうそちらの相手は間に合っておる。幼くともインキュバス。色に走るのは大いに結構。しかし、じゃ。相手のおる者をそうして見るのはやめておくのじゃ」
「ごめんなさい」
「いや、いい。魔物の漢女(オトメ)として、そう見られることはとても好ましい。じゃが、相手の伴侶がどう思うかは、別じゃ。何せ、ワシらはらぶらぶじゃし。あやつはヤキモチ焼きじゃからのぅ」
キョニューがカラカラと笑う。
「じゃあ、手合わせって……」
ブレイブに嫌な予感がよぎる。
「そのままの意味じゃ。ワシと拳で語り合うのじゃ」
『ぇえっ!?』
キョニューの言葉にブレイブだけではなくその場の全員が驚きを露わにする。
そして、口々にブレイブの身を案じる言葉をかけてきてくれる。
「安心せい。ちゃんと手加減はする。じゃが、お主。今、持て余しておるものがあるじゃろう?」
キョニューがニィと口端を歪める。
「ぼ、僕は……」
「問答無用じゃ」
ブレイブの言葉を聞くこともせずに、キョニューはズンズンと今日の興行に向かっていってしまう。
ブレイブたちは、その背中を見ているしかできなかった。
◆
「さて、と」
本当にやるんだ。ブレイブは渡された剣を構える。
ここはメイの屋敷にある武闘場。屋敷の中にこんなものがあるとは、武闘派バフォメットの名は伊達ではない。
寸法が合わないなどという言葉は、魔術、という単語で黙らされる。
相手をするのは、興行(パトロール)を終えて、キョニューからメイに戻ったバフォメットである。
彼女は拳を構えて、ブレイブに対峙する。
「遠慮はいらん。お前の体の疼きを思う存分に解き放つがいい。やり方がわからんというのなら、ワシが引き出してやろう」
「え?」
間合いを一瞬で詰めたメイが、ブレイブの右手を掴む。
「”勇気の火”じゃな。これが、猛っておる。やはり、お主も戦の匂いを感じておるようじゃな」
「いくさ、って?」
訝しがるブレイブに、メイは構わず続ける。
「もうすぐ、この街は攻め込まれるじゃろう。教団によって」
「えぇっ!?」
驚いたブレイブは自分のパーティの顔を見る。その誰もが、驚きを隠せないでいた。
唐突だ。本当に唐突だ。
メイが落ち着かなかったのはそのせいだったのか。
そして、ブレイブが性欲、もとい猛る心音を持て余していたのも。
「いつかは分からぬ。じゃが、今朝、ワシらは恐ろしい情報を入手した。簡単に言えば、教団は悍ましい兵器の開発に成功した。ワシは本当はこの街の住人を避難させたい。魔女めにもそう言ったのじゃが、奴は聞き入れなんだ」
その時のやり取りを思い出すように、ブレイブの右手を掴んだまま、メイは力を込めてしまう。
「い、痛い」
「おお、すまん」
メイは慌ててブレイブの手を離す。
「だから、今日は様子がおかしかったんだ。僕と手合わせをするっていうのは……。もしかして、僕にも戦えってこと!?」
ブレイブが素っ頓狂な声をあげる。メイはブレイブの様子を見て、拍子抜けしたような表情を浮かべる。
「………。そうか、お主は戦おうとしていたわけではなかったのじゃな。すまぬ。それはワシの早合点じゃった。安心せい。ワシは戦いたくない者を戦列に並べるようなことはせん。じゃが、お主はヴィヴィアンの夫じゃからな。死なぬように、自身の身は自身で守れるようになっておいてもらいたいとは思う」
「でも、僕にそんな力はーー」
「ルチアを倒したのはお主じゃと聞いておるぞ」
「うん。だけど、それは無我夢中で。みんなを助けなくちゃ、と思ったからで。僕がみんなに助けられただけで……」
「それも聞いておる。それもお主の力じゃ」
メイが断言する。メイはそうして、一つの魔道具をブレイブに渡す。
これは、確か、ヴィヴィアンが使っていた魔道具。修理の為に、メイに預けていたハズだ。修理が終わったのだろうか?
しかし、それならば、何故自分に渡すのだろう。ヴィヴィアンが戻ってきてから直接渡せばいいハズなのに。
困惑するブレイブにメイは言う。
「これは、お主が使えるように、新しい術を組み込んである。これを使いこなせるようになってもらう為にも、ワシはお主を手合わせに誘ったのじゃ」
ブレイブは恐る恐るその魔道具を受け取る。ルービックキューブのような魔道具。
ヴィヴィアンは、ルチアに殺された魂をこの中に保管していた。そして、ルチアを倒す為に全てを解放した。
ヴィヴィアンの想いも詰まっていたこの道具を手にしたブレイブは、重たいと感じた。
「でも、これはヴィヴィアンのじゃ……」
「いや、もうあやつにこれは必要ない。ルチアを倒した今となっては、必要としてはいかんのじゃ。あやつは本来、こんな魔術に頼らずとも魔法が使える。じゃから、お主が使え。それに、ヴィヴィアンの目的のためにも、これを必要とするのはお主の方じゃ」
「僕の? それに、ヴィヴィアンの目的って」
「それは、ワシの口からは言えん。ヴィヴィアンからお主が聞くべき話じゃ」
そこで、メイは言葉を切って、天井を見上げる。
「一つだけ言っておくとな。あやつは世界を救おうとしておる」
メイは、フゥ、と一つ息を吐き出す。
「協力するかどうかは、お主の自由じゃ。しかし、ワシは、お主が賛同してくれることを願うよ」
ヴィヴィアンの目的。それはブレイブには分からない。しかし、ヴィヴィアンの願いならば叶えてあげたい、ともブレイブは思う。
もしも、それが余りにも常軌を逸していれば、何とか説得しよう。その方法はガーテンのおかげで自分は手に入れたはずだ。
ブレイブは素直に走るだけの少年では、なくなろうとしていた。
メイは年長者として、少年を見ていた。話に聞く限り、ブレイブの成長は著しい。
しかし、成長するのはブレイブだけではない。メイは彼らを微笑ましく思い、彼らを害そうとする者たちを疎ましく思う。
今までは、メイが魔術を仕掛けたこの街に奴らが積極的に攻め入ってくることはなかった。
だが、勇者砲などという恐ろしく、悍ましい兵器を開発してしまった今ならば、奴らが攻め入ってこない道理などない。それがどういったものであるか、という情報は得られていないが、魔界を一つ消しとばしたのは事実である。
奴らがやってくるまでに、ブレイブたちだけ逃すことも考えた。しかし、それは聞き入られない気がする。
ブレイブの先ほどの言動からは、すぐに逃げ出しそうに思えるが……。
話で聞いた内容と、彼の中で猛っている”勇気の火”を見れば、彼は戦う方を選ぶだろうとメイは考える。
だから、それまでに、この魔道具を使いこなせるようになってもらう。
「よし、では始めようかの?」
「えっ、僕はまだ、納得してないよ!?」
「問答無用じゃ」
メイはそう言いながら、ブレイブに打ち掛かってきた。
この日はブレイブは疲れ切って、彼女たちを抱く気力はなかった。
勝手に搾り取られはしたが……。
そうして、それぞれの日々が過ぎていく。
悪意は、人の心など待ってはくれない。
◆
そうした魔物娘とその伴侶としては正しく、乱れに淫れた生活はーーー。
数日後、絶望を告げる鐘の音とともに、ついに破られる。
カァーン、カァーン。平和なドルチャイの町に警鐘が鳴り響く。
門番は見てしまった。遠くからやってくる彼らの姿を。
唐突に、日常は闘争という名の非日常に塗りつぶされる。
ーーー否。闘争状態という真の日常が目を覚ます。
闘争の運び手は、メイの言っていた本当の敵。主神教団過激派。
豪奢な甲冑に身を包んだ騎士と勇者たちが、ドルチャイに向けて侵攻してくる。
彼らの指揮官は一層煌びやかな衣装に身を包んだ大司教。
ここに彼はいない。
神の敵どもという名を冠し、主神への信仰で心の臓を叱咤する狂信者。マステマスは……。
その代わり、ここには奴らがいる。血に飢えた神の狼”ヒルドールヴ”。
群狼の渇望が、彼らの中に潜んでいる。子供達の安寧の地を、敵も味方もなく引き裂こうと嗤っている。
人類の希望であると謳い。魔物が真実、悪であった頃から魔物と戦い続けてきた教団。
すでに魔物が人類の敵ではなくなったというのに、教団はそれを認めない。
彼らは、人のためではなく、魔物を認めない神の、主神のための組織である。
教団の両翼は、人の欲望と欺瞞で象られている。
真実、人々のために戦う勇者たちがいる。しかし、彼らを運用するのは、神か己にのみ従う者ども。
マステマスも、教会上層部も知っている。魔物はすでに敵ではない。
魔物という敵対者によって、人を管理支配してきた主神こそが敵であるハズだ。
しかし、教会の上層部はそれを知って。
半分は欺瞞の中で神の走狗に身をやつし。
半分は己の欲望のために魔物よりも魔物らしく。
彼らはヒトを、魔物を殺せとと駆り立てる。
その命を人のために差し出せと嘯いて。
本心では手を合わせて、神のために。
本心では弛んだ肉を震わせて、己のために。
マステマスは走狗だ。走狗であり、神の暴力装置である。
神のためであれば、敵も味方も、己ですら殺す。
だから、闘争という果実を求めてひた走る狂乱の徒を動員することにも。
勇者の命を使いつぶすことにすら、躊躇いはない。
さぁ、戦争を始めよう。殺したり殺されたり、犯したり犯されたりしよう。
エイメン。
17/01/02 19:37更新 / ルピナス
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