連載小説
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裏祭り・夜【福男 黒姫襲来】
「ようやくあやつがやって来よるか」
龍神山を覆う空気の質を変わった。龍神様の領域に入ってくるモノがいる。

「黒姫が来るぞ。黒姫が来るぞ!!。こいつは素敵だ全部食われちまう」
宮司が空を見上げて歯をむき出しにして笑う。

「かくして役者は全員演壇へと登り、真夜中の惨劇(オルギア)は幕を上げる」
軍曹が口の端を釣り上げていきりたつ。


かなりの数のカップルが成立したものの、1人の男と複数人の魔物娘がくっつくこともあるため、未婚の魔物娘の数が少なくなってきていた。
だから。喜べ、未だ未婚の男性諸君。おかわりだ。




龍神池の真ん中にぽっかりと、真っ暗な穴が開く。
水を堪えた円の中心。異界と現世の橋が繋がる。
現れたのは1人の女性。彼女を見て、魔物娘たちも金魚たちも戦慄を覚えた。
ここにいる全てが感じたのだ。「いやらしい事になる」と。
このリリムが現れたら最後、いやらしい事になると!!

「ホステス!!。我が招待者よ!!。我が招待者(マイホステス)伊吹縄志那比売(いぶきなわしなびめ)よ!!。依頼(リクエスト)を!!」
リリムの麗しの唇から紡がれた言霊は耳にしたものの性感を震わせて、一気に絶頂へと引き上げる。
声を耳にした者たちは駆け上ってくる快感でその場に釘付けにされてしまっていた。

「我が客(ゲスト)。リリム 橋森結(はしもりゆい)よ!!。依頼(リクエスト)じゃ!!」
龍神様は自らの領域である龍神山に接続して声ならぬ声でリリムに告げた。

「未婚の魔物娘は未婚の男を以って白に染めよ。
既婚の魔物娘は最愛の夫を以って白に染めよ。
一襞(ひだ)一肉尽く汝らの女陰(ほと)を真白に染め上げよ。
見夫交配(サーチ&セックス)!見妻交配(サーチ&セックス)!!
男女ともに絶頂させよ。全員この祭りからイかさず帰すな」
龍神様の宣告は風に乗り音となって龍神山の生きとし生ける者、死しても生ける者、遍く全ての耳に伝わった。
祭りのクライマックスが近い。

「了解、認識した。我が招待者(マイホステス)」
リリムの受諾とともに龍神池を取り巻いていた強者(もののふ)も弱者(きんぎょ)も股ぐらから泡を吹いて崩れ落ちる。

「現世王魔界交流会、開催!!」
龍神様の宣言(おしらせ)が誰を彼をも驚嘆(びっくり)させる。
「交流を果たせ!!幾千幾万と連なる親愛を結べ。契れ!!」
龍神様の言葉に歓声と喝采が返される。小さな漣は大きくなり、やがて山全体を駆け巡る大きな波濤となった。

「私は魔王の娘。魔王は私の未婚を嘆き、皆と共に遣わした」
リリムの悲しい言葉をきっかけに現世と王魔界を繋げる深淵が地鳴りのような音を立ててざわめき出した。

来るぞ、魔物娘が来る、皆のヨメが!!。万人が歓喜し、地獄が嘆く。
深淵から雪崩れ出してくるのは、魔物娘、魔物娘、魔物娘。
妖艶な美女がいる。あどけない顔の少女がいる。快活に笑う童女がいる。中性的な容姿の少女が。病んだ瞳の美女が。手を出せば犯罪になるような幼女が。
天使型が、悪魔型が、獣人型が、アンデッド型が、エレメント型が、爬虫類型が、妖精型が、魚型が、昆虫型が、植物型が、亜人型が、半液状生物型が。
巨乳が、貧乳が、尻が、足が、腋が、あばらが、うなじが、ロングが、セミショートが、ショートが、ボブが、ポニーが、ツインテが。
ネコミミ、イヌミミ、キツネミミ、クマミミ、バニー、馬足、蛇体、鳥足、タコアシ、イカアシ、触手、翼、羽翅、虫脚、軟体、粘体、屍体、霊体etc。
ありとあらゆる容姿性格、フェチを網羅し尽くした彼女たちが溢れ出す。
彼女たちは次々と相手のいなかった男たちに襲いかかっていく。時には相手のいる男にも。


天も無く地も無く。
人々は突っ走り魔物娘は喘ぎ立てる。
まるで彼らの宇宙が一切合切咆哮を始めた様だ。
犯せや犯せや人間は歩き回る片割れに過ぎない。
愛せ交われ、あとはくだらないものだ。
結婚してしまえばよい、幸せになってしまえばよい。
きっと彼らの全てが夫婦で、
世界がその絶対応報に祝砲を上げたのだ。


魔物娘の標的には例外はなく、軍曹にもその波が迫っていた。
「ふ…はは。初めてモテたぞ!!。ああ、これは良い。良い祭りだった」
まだ宮司の元にすらたどり着いていないのに。いや、正直に言えば軍曹を以ってしても宮司は避けて通りたい存在ではあった。
ついに軍曹も己の敗北を認めて大きく手を広げて魔物娘を胸に向かれ入れようとする。

いや違う、彼にはそれだけは、それだけはありないことだ。
例外がないのは魔物娘だけではなく軍曹もだった。彼は例外なく、龍ちゃん以外は受け入れない。
「失せろ!!俺の心も体も命も、龍ちゃんだけのものだ」
軍曹は目前に迫る彼女たちを拒絶して、手を広げた彼は逆バンジーで空に打ち上げられる。

「軍曹、ご武運を!」「ご武運を!」
逆バンジーの発射台を設置発射させた男たちから激励の言葉が投げかけられた。
彼らとて龍ちゃん狙いの古強者(ロリコン)だったが、彼らの上にはすでに魔物娘がのしかかり挿入済みだった。
「「お先にイきます!!」」
彼らは飛び去っていく軍曹を見送って満足そうな幸せそうな顔で射精する。それぞれの好みにどストライクのデビルとフーリーの膣内で。

軍曹の叫びが夜空をかける。龍神神社本社に向かって真っ直ぐに。
「女性との肉体の結合、性器の挿入、精子の放出、男性の本能。
なんと素晴らしい、それはきっと素晴らしいのだろう。きっとそれは歓喜に違いない。だが、冗談じゃない」
軍曹の顔は風圧で歪み、端正な顔は原型をとどめていない。そこにいるのは一匹の雄。

「龍ちゃん以外とは真っ平御免だね。俺のものは、彼女のものだ肉棒一本精液一滴。
彼女がヨメだ。彼女がヨメだ。彼女がヨメだ!!」
軍曹を捕まえようとする空を飛ぶ魔物娘たちを地上から打ち上げられた男性たちが身を呈して防ぐ。
「さようなら軍曹」「さようなら軍曹」「ガーゴイルゲットぉぉ!」
いい笑顔でキューピット、ダークヴァルキリー、ガーゴイルにしがみ付きながら落ちていく男たち。彼らの狙っていた魔物娘たちだったのだろう。

「結婚するとはうらやましいね、眩しい美しい。だから愛しくだからこそ諦めない。
だからこそ龍ちゃんが私のヨメだ。ヨメになっていただく」
軍曹は彼らを見て目を細めながら賞賛を送り決意を固くする。

「獲ったぞ!!」
「獲っていない。獲られたんだ」
軍曹を狙ったワイバーンは頭上から降ってきたチン毛ヘッド午藤君にぶつかり、二人でもつれ合いきりもみしながら落ちていく。

「ついに私はヨメを見つけたぞ私の生涯の。
君と出会ってから私はそのための準備を堂々と始めた。3年をかけて」
馬鹿には目もくれず、軍曹の目はついに本社で龍神様に抱かれる龍ちゃんをとらえた。

「馬鹿だよ、おまえ。大馬鹿野郎」
軍曹の耳に今一番聞きたくない声が聞こえた。

”龍撃掌”
凄まじい速度で宙を飛んでいたはずの軍曹が叩き落される。

その相手を目にして軍曹は歯を噛み締め絞り出すように相手の字名を呼ぶ。
「裏切り者」「白濁の大魔法使い」「龍の召喚者」「お義父さん」
「私はそれを認めていないっ!」
宮司の言葉に軍曹が怨嗟の念を込めて彼を睨む。彼、現在の宮司である龍神の夫はかつて福男たちと肩を並べて立っていた。
だが、実際に宮司と軍曹は肩を並べていたことはない。軍曹が祭りに加わったのは龍ちゃんが生まれてからだ。

「祝言を挙げる夢はもはや醒めた。お家へ帰還せよ」
「叔父さんっ、叔父さんっ!!許して…。叔父さんっ!!許して…っ。叔父さん…っ、叔父さんっ!!」
軍曹が自らの伯父に彼の娘、龍ちゃんとの結婚の許しを請う。

「何という男だ齢15の身でよくぞここまで練り上げた。甥よ!、認めさせてみせろ!!。龍の父に交際を認めさせてみせろ!!」
宮司は軍曹を男と認めて声を荒げる。

「5年前のように!!5年前の私ように!!。この私の夢のはざまを終わらせてみせろ!!、にっくき怨敵よ!!」
「語るに及ばず!!」
宮司と軍曹は拳を握り互いに向かい合った。
16/06/27 13:08更新 / ルピナス
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■作者メッセージ
これはもう掲載してしまっておくことにします。
これならまだ、終わりに向けてつっぱしらなくてもいい、はず。

軍曹は普段、文武両道、容姿端麗、質実剛健の、ベタな生徒会長です。
ただ、龍ちゃんが好きということを公言して、自らフラグをへし折るため浮いた話はありません。

軍曹率いる生徒会は通称フラグクラッシャーズと呼ばれており、魔女も属している。という設定を今考えた。伍長と三等兵は年齢的に生徒会役員ではありません。
賢者はどうしておこうかな。

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