【だるま落とし】
金魚すくい会場、龍神池。
池の真ん中の金魚投入台で、シー・ビショップが二人の男をそれぞれ片手で顔面を掴み持ち上げていた。
「私を相手にして逃げようとはいい度胸ですね」
シー・ビショップが万力のような力で二人の顔を締め上げる。
「「GYAAAAAAAAAA!!」」
二人の悲鳴が金魚すくいという晩餐会に、この上ないスパイスとして響き渡る。
「冗談は髪型だけにしてくれないでしょうか。チン毛みたいな変なちりちり頭。誘ってるんですか?。ブッ殺…、コロがしますよ」
「今この巫女さん、殺すって言おうとした!?」
昔ヤンチャしていたとはいえ、今は清楚な巫女さん。ほぼアウトなセーフとしておこう。
チン毛はもちろん魔物娘的にセーフだ。
「好きでこんな髪型してるわけじゃねぇ」
「イグニスにやられたんだよ」
そこは譲れないとばかりに息も絶え絶えに否定するクレイジーボンバーズ改め、チン毛ブラザーズ。
「どう言おうと、私には夫がいるのであなたたちには微塵も興味はありませんよ」
いい笑顔で彼らを切り捨てるシー・ビショップ。
そんな彼女に。
「人妻は大好物だ!。隙ありぃ」
命知らずの兄がシー・ビショップの胸を触ろうとする。
シー・ビショップは弟を盾にしてそれを防ぐがその勢いで弟を池の中に落としてしまう。
「午藤(ごとう)。てめぇ、余計なことしやがっ、」
自らを池に落とすキッカケを作った午藤くんに対して彼は悪態を吐こうとするが、午藤くんを掴んだままのシー・ビショップを見てやめた。
池に落ちていく彼よりもずっと午藤くんに与えられた運命の方が過酷であることを悟ったからだ。
頑張れよ。彼はその言葉を呟くと、池に落ちた。
「鹿島ァァァ、すまーん!」
彼に群がる魔物娘たちを見て、午藤くんはピラニアが獲物に襲いかかった時に水面が波打つ映像を思い出していた。
「お友達の心配よりも自分の心配をした方がいいのじゃないかしら?」
顔面を掴まれたままの午藤くんは無理矢理首を捻られて、シー・ビショップに向き直させられた。
そして、彼は目にした。
「ハンニャ!?。ハンニャなんで!?」
描写できないような表情を浮かべたシー・ビショップ=サンがそこにいた。
「夫にしか許していない私の胸に触ろうとするだなんて、本当にいい度胸をしていますね」
静かな笑顔に変わった般若が笑っていない目をして、午藤くんに顔を近づけながら語りかける。
「ゴメンナサイゴメンナサイ。ゼンを学び、ボンズになります!。だから命だけは許してくださいヤメテ」
午藤くんはシー・ビショップ=サンに掴まれたままなので、心の中で必死に土下座をしながら謝った。
しかし、彼はここでとんでもない間違いを犯していた。
「残念。ここは神社です。そのチン毛ヘッドを悔い改めて坊主頭にすると言うのならまだ許してあげたかもしれませんが、ブディストになるだけというのであれば許すわけにはいきませんね」
「アイエエエエエエエエエエ!」
笑みをより一層深めて尾びれで午藤くんを天高く打ち上げるシー・ビショップ=サン。
スゴイタカイハナビだ。
「花火の時間はまだ後ですし、そのまま戻ってこないでください」
午藤くんは夜空の星になった。
◆
一方の鹿島くんは森を水平にぶっ飛んでいた。
「ひどい、魔物娘ひどい。もう誰も信じない」
このまま魔物娘の餌食になるのなら、と好みの大きな胸の中に飛び込んだのだが、実はそのメロウさんは午藤くん狙いだった。
「私にも選ぶ権利くらいあります!」
メロウさんに拒否されて尾びれでカチ上げられた空中でも好みの大きな胸に飛び込んだのだが、さらにそのヴァルキリーさんにも拒否されてぶっ飛ばされた。
それを数回繰り返して今、彼は森の中を飛行中なのであった。
「えっと、そろそろ息が苦しいし、どうして誰も受け止めてはくれないんだ?」
鹿島くんは涙をちょちょ切らせながら呟いた。
そうして鹿島くんは飛び込んでいけないところに飛び込む。
キケン。魔女=サンだ。
「アルプさん、あなたを見ていると、私なんだかもう我慢が出来なくなってきて」
この際、女でもいいや。いい雰囲気になったし、このまま。
という想いは向かってくる鹿島くんを見て止まる。この軌道ではアルプにぶつかってフラグが立ってしまう。
「その幻想をぶち壊す!」
「ソゲブッ!!」
全力で排除するために彼女は鹿島くんをカチ上げる。雰囲気を壊されたことも相まって力がこもっている。
再び飛んでいく鹿島くん。
今ぶつかっていれば自身にもフラグが立ったかもしれなかったのに、それもぶち壊した魔女はさすがである。
空に打ち上げられ鹿島くんはようやく着地する。着地した場所はダルマ落としのダルマの天辺だった。
突然、降って湧いた景品に魔物娘たちが大いに湧く。
「なんとー、ダルマの頭に男が景品として降り立ちましたー!。これは是が非でも成功させなければいけませんね」
ハンマーを握っていたのはサイクロプス。
彼女の単眼に真っ直ぐに見つめられた鹿島くんは、あまりにぶっ飛とばされすぎたために。
「綺麗な目だなぁ」
素直な感想を思わず口に出してしまっていた。
その言葉がサイクロプスに聞こえなかったはずがない。
膨れ上がり唸りを上げるサイクロプスの上腕二頭筋、恐るべき速度でダルマの胴体が叩き出されていく。
鹿島くんはダルマの高さもあり、ダルマの頭にしがみつくのが精一杯で逃げ出すことができない。
みるみるうちに鹿島くんは地上に近づき、サイクロプスは見事に鹿島くんをゲットしたのだった。
「これはこれで良かったということにしておこう」
散々飛ばされた鹿島くんだが、豊満な胸に抱かれて満足そうにしていた。
鹿島くんの頭の中にはサライが流れ出す。
「ん?、別の女の匂いがする」
「へ?」
サライが止まる。
これまでに何人もの魔物娘と(物理的に)熱くぶつかり合った鹿島くんには誰ものかもわからなくなった匂いがこびり付いていた。
「どういうこと?」
「どういうことだろう」
殴られてきただけなので、鹿島くんには思い当たるものは無かったのだが、それははぐらかしたように聞こえてしまった。
「言いたくないのならいいよ。体に聞くから」
右手にダルマ落としのハンマー、左手に鹿島くんを持ってサイクロプスは歩き出す。
「え、え。どういうこと?」
「しらばっくれるのなら、それでもいい。それに私の匂いで上書きする」
サイクロプスに引きずっていかれる鹿島くん。これから彼に待っているのは天国か地獄か。
鹿島くんに幸あれ。
池の真ん中の金魚投入台で、シー・ビショップが二人の男をそれぞれ片手で顔面を掴み持ち上げていた。
「私を相手にして逃げようとはいい度胸ですね」
シー・ビショップが万力のような力で二人の顔を締め上げる。
「「GYAAAAAAAAAA!!」」
二人の悲鳴が金魚すくいという晩餐会に、この上ないスパイスとして響き渡る。
「冗談は髪型だけにしてくれないでしょうか。チン毛みたいな変なちりちり頭。誘ってるんですか?。ブッ殺…、コロがしますよ」
「今この巫女さん、殺すって言おうとした!?」
昔ヤンチャしていたとはいえ、今は清楚な巫女さん。ほぼアウトなセーフとしておこう。
チン毛はもちろん魔物娘的にセーフだ。
「好きでこんな髪型してるわけじゃねぇ」
「イグニスにやられたんだよ」
そこは譲れないとばかりに息も絶え絶えに否定するクレイジーボンバーズ改め、チン毛ブラザーズ。
「どう言おうと、私には夫がいるのであなたたちには微塵も興味はありませんよ」
いい笑顔で彼らを切り捨てるシー・ビショップ。
そんな彼女に。
「人妻は大好物だ!。隙ありぃ」
命知らずの兄がシー・ビショップの胸を触ろうとする。
シー・ビショップは弟を盾にしてそれを防ぐがその勢いで弟を池の中に落としてしまう。
「午藤(ごとう)。てめぇ、余計なことしやがっ、」
自らを池に落とすキッカケを作った午藤くんに対して彼は悪態を吐こうとするが、午藤くんを掴んだままのシー・ビショップを見てやめた。
池に落ちていく彼よりもずっと午藤くんに与えられた運命の方が過酷であることを悟ったからだ。
頑張れよ。彼はその言葉を呟くと、池に落ちた。
「鹿島ァァァ、すまーん!」
彼に群がる魔物娘たちを見て、午藤くんはピラニアが獲物に襲いかかった時に水面が波打つ映像を思い出していた。
「お友達の心配よりも自分の心配をした方がいいのじゃないかしら?」
顔面を掴まれたままの午藤くんは無理矢理首を捻られて、シー・ビショップに向き直させられた。
そして、彼は目にした。
「ハンニャ!?。ハンニャなんで!?」
描写できないような表情を浮かべたシー・ビショップ=サンがそこにいた。
「夫にしか許していない私の胸に触ろうとするだなんて、本当にいい度胸をしていますね」
静かな笑顔に変わった般若が笑っていない目をして、午藤くんに顔を近づけながら語りかける。
「ゴメンナサイゴメンナサイ。ゼンを学び、ボンズになります!。だから命だけは許してくださいヤメテ」
午藤くんはシー・ビショップ=サンに掴まれたままなので、心の中で必死に土下座をしながら謝った。
しかし、彼はここでとんでもない間違いを犯していた。
「残念。ここは神社です。そのチン毛ヘッドを悔い改めて坊主頭にすると言うのならまだ許してあげたかもしれませんが、ブディストになるだけというのであれば許すわけにはいきませんね」
「アイエエエエエエエエエエ!」
笑みをより一層深めて尾びれで午藤くんを天高く打ち上げるシー・ビショップ=サン。
スゴイタカイハナビだ。
「花火の時間はまだ後ですし、そのまま戻ってこないでください」
午藤くんは夜空の星になった。
◆
一方の鹿島くんは森を水平にぶっ飛んでいた。
「ひどい、魔物娘ひどい。もう誰も信じない」
このまま魔物娘の餌食になるのなら、と好みの大きな胸の中に飛び込んだのだが、実はそのメロウさんは午藤くん狙いだった。
「私にも選ぶ権利くらいあります!」
メロウさんに拒否されて尾びれでカチ上げられた空中でも好みの大きな胸に飛び込んだのだが、さらにそのヴァルキリーさんにも拒否されてぶっ飛ばされた。
それを数回繰り返して今、彼は森の中を飛行中なのであった。
「えっと、そろそろ息が苦しいし、どうして誰も受け止めてはくれないんだ?」
鹿島くんは涙をちょちょ切らせながら呟いた。
そうして鹿島くんは飛び込んでいけないところに飛び込む。
キケン。魔女=サンだ。
「アルプさん、あなたを見ていると、私なんだかもう我慢が出来なくなってきて」
この際、女でもいいや。いい雰囲気になったし、このまま。
という想いは向かってくる鹿島くんを見て止まる。この軌道ではアルプにぶつかってフラグが立ってしまう。
「その幻想をぶち壊す!」
「ソゲブッ!!」
全力で排除するために彼女は鹿島くんをカチ上げる。雰囲気を壊されたことも相まって力がこもっている。
再び飛んでいく鹿島くん。
今ぶつかっていれば自身にもフラグが立ったかもしれなかったのに、それもぶち壊した魔女はさすがである。
空に打ち上げられ鹿島くんはようやく着地する。着地した場所はダルマ落としのダルマの天辺だった。
突然、降って湧いた景品に魔物娘たちが大いに湧く。
「なんとー、ダルマの頭に男が景品として降り立ちましたー!。これは是が非でも成功させなければいけませんね」
ハンマーを握っていたのはサイクロプス。
彼女の単眼に真っ直ぐに見つめられた鹿島くんは、あまりにぶっ飛とばされすぎたために。
「綺麗な目だなぁ」
素直な感想を思わず口に出してしまっていた。
その言葉がサイクロプスに聞こえなかったはずがない。
膨れ上がり唸りを上げるサイクロプスの上腕二頭筋、恐るべき速度でダルマの胴体が叩き出されていく。
鹿島くんはダルマの高さもあり、ダルマの頭にしがみつくのが精一杯で逃げ出すことができない。
みるみるうちに鹿島くんは地上に近づき、サイクロプスは見事に鹿島くんをゲットしたのだった。
「これはこれで良かったということにしておこう」
散々飛ばされた鹿島くんだが、豊満な胸に抱かれて満足そうにしていた。
鹿島くんの頭の中にはサライが流れ出す。
「ん?、別の女の匂いがする」
「へ?」
サライが止まる。
これまでに何人もの魔物娘と(物理的に)熱くぶつかり合った鹿島くんには誰ものかもわからなくなった匂いがこびり付いていた。
「どういうこと?」
「どういうことだろう」
殴られてきただけなので、鹿島くんには思い当たるものは無かったのだが、それははぐらかしたように聞こえてしまった。
「言いたくないのならいいよ。体に聞くから」
右手にダルマ落としのハンマー、左手に鹿島くんを持ってサイクロプスは歩き出す。
「え、え。どういうこと?」
「しらばっくれるのなら、それでもいい。それに私の匂いで上書きする」
サイクロプスに引きずっていかれる鹿島くん。これから彼に待っているのは天国か地獄か。
鹿島くんに幸あれ。
16/06/25 11:14更新 / ルピナス
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