連載小説
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7.ブレイブアーマー発進
「なん、じゃと」
エルタニン陥落の報を受けた王の声が部屋に響く。
「はい、しかもそれに関わっているのが2日前にこの国を出発した勇者ブレイブだということです」

信じられん。なんということだ。魔王討伐に出発してわずか二日で親魔物国家ではなく、自国を保護する国を落とすとは。
王は憔悴してしまっていた。
「この国はどうなるのじゃろうか」
自分の立場も忘れて報告してきた相手に問いかけてしまう。
エルタニンを落とす原因を出したこの国に、他の属国だった国からの糾弾は免れないだろう。最悪、有無を言わさずに攻め込まれる可能性もある。

「王よ、ご安心を」
相手はにこりと微笑んだ。
「エルタニンの属国は同様に落とされました。もちろんこの国も」
そこには妖艶に微笑む美女がいた。
「お主、魔物!?」
「はい。これから王妃様ともどもよろしくお願いしますね」
「王妃ともども?、貴様まさか」

扉が開いて若返り、当時よりもより美しくなった王妃が入ってきた。
「あなた。魔物になることがこんなに素晴らしいことだとは知りませんでした。さぁ、早くあなたもインキュバスになってくださいませ」

王に迫る二人の美女。
こうしてエルタニンの属国はブレイブの出身国カッカブを含めて、親魔物国になるという宣言を出した。


「まだ足りない」
しかし、その報告を受けたヴィヴィアンは爪を噛みながら険しい顔をしていたそうだ。




私たちはエルタニンを出発して次の街に向かいます。
カーラが用意してくれた馬車での移動です。流石、貴族様、勇者様様です。もちろんお姫様である私はその上をいきます。
馬車での移動は私が提案したことです。ヴェルちゃんがドラゴンモードで背中に乗せてくれると言っていましたが、私たちの旅が早く進んでも深紅の天災が軽々しく飛び回っていては周りの人々はたまったものでありません。
それに、旅の醍醐味も何もなくなってしまいます。昔の偉い人だって、旅は馬の速さで行くのが一番と言っていました。

手綱を取るのはヴェルちゃんです。あんな提案をしたのに、馬車で移動するのが面白っかたようで名乗り出ててくれました。
ヴェルちゃんの操縦に一流の内装で馬車は快適です。でも、ヴェルちゃんは操縦したかったのでなく、この空気に耐えられなかったのかもしれません。

「さぁ、ブレイブきゅん。今度は私の膝の上にくるといい」
「いいえ、ブレイブさんは私に包まれたいと思っていますよ」
「ダメです。ブレイブは私のおっぱい枕に夢中なんです。私が一番大きいのですから」
「ふっ、ただ大きいだけではダメだろう。私の方が弾力は上だぞ」
「ギュってしたら、バンって弾かれちゃうから、寝心地は悪いんじゃない」
「いやいや、そんなことはない。弾かれないようにギュッと」
「カーラさんにギュッとされたらキュッと逝ってしまいそうですね。そんな危ない肉ッションより、私の体の方がいいですよ。手触りはもとより、弾力も大きさも感触を変化させれば思いのままです。ブレイブさんは誰を選びますか?」
「えと。じゃあ、じゃんけんで決めたらいいんじゃないかな」
「よぉし!。ブレイブきゅんが言うのならば、そうしよう。」
「最初はグー。じゃんけん、「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」」
「ちょっと待って。やると思ったけど、二人して私を狙うのは卑怯ですよ。ブレイブバリアー!」
「ヴィヴィンアン!?。僕を盾にするのやめてくださーい」
「くっ。卑怯な。これはパーにして撫でるしかないではないか」
「おっと、手が滑りました」
「白衣さん、手をチョキにして股間を挟むのやめてください」
「貴様らぁ!。二人してチョキだとぅ!?」
「「ふっふっふ、カーラ敗れたり」」
「ぐぬぁぁぁぁぁ!!」

ブレイブ争奪戦。負けられない戦いがそこにはあるっ!
私たち、ブレイブとセックスできた組の美しーい争いを見つめるリビングアーマーが一体。
早く素直になってブレイブを襲ってしまえばいいのに、アンちゃんは出発してからこんな調子です。
私たちのやり取りを蚊帳の外で眺めています。
せっかくのハーレムパーティなのに、それではこちらも寂しいです。もうブレイブに装備されて彼の体に合わせた形に変わっているのですから、もう何も止めるものはないでしょうに。
さぁさぁ、本体もブレイブ用にされちゃってください。


私たちが交代でブレイブを愛でていると、
「騒いでいるのはいいですが、そろそろバーダンに着きますよ」
ヴェルちゃんから声がかかります。
「オッケー。じゃあ、ブレイブ。ちゃっちゃとアンちゃんと合体しちゃいなさい」
「ええっ。合体って、装備、するってことですよね」
「そうよ。まだまだ未熟なブレイブを守るためにはアンちゃんに身を包むのが一番なんだから。それに、アンちゃんに動いてもらってあなたは戦い方を身につけなさい」
「私だって、手取り足取り、ナニ取り、ナニ取りぃぃぃっ!!。教えるというのに」
「そんな風だからカーラさんには頼めないのでしょう。それに、あなたの剣技は剛剣。勇者とはいえ、体のできていないブレイブさんにはまだ早いと思います」
「ふむ。そう言われてしまっては引き下がるしかないではないか」
「剣技となると素直に引き下がりますね。堕ちても勇者ということですか」
「では、私は服になってブレイブさんを守りましょう」
「「それは認めないっ!」」
「白ちゃんはマント、マントなら許します」
「仕方ありませんね。では、ブレイブさんアンさんを装備してください」
「じゃあ、アンちゃん、いいかな?」

ブレイブに尋ねられて、アンちゃんはもじもじしています。じれったいですね。
じゃあ、パパッと。
「強制パージ、あーんど、キャストオン!」
私は鎧を剥ぎとってブレイブに装備させていきます。
その程度の抵抗では抵抗のうちに入りませんよ。本気で抵抗しないことを見て、私は装備させきります。
ブレイブアーマー発進!

「ブレイブ、具合はどうですか?」
「これは、アンちゃんの匂い?」
あ、鎧がビクッと動きました。ではこのまま。
「とりあえず歩いてみてください」
「はい。あれ、動かない、というか動けないです!?」
「まさかシンクロ率低下!?。ブレイブ、心を開かなければアンちゃんは動いてくれないわよ」
「うええ!?、僕は開いてますよ」
「じゃあ、魔力が足りないの?。ペニス接続、魔力を注入してください」
「この状態でどうやって。というか、ヴィヴィンアンはさっきから何を言ってるんですか!?」

「あ、動いた。あれ、なんでしゃがむの?」
私たちが喚く中、鎧が動き出して膝を抱えて座り込みました。
そして、稼働するためにむき出しだった関節部分や顔面を鎧の金属が覆って、ブレイブの全身を包み隠し切りました。
「持って行かれただとぉ!」
「まさか信じられない。シンクロ率が400%を超えています?。ダメ、それ以上は人に戻れなくなる」
「ヴィヴィンアンさん。ブレイブさんはすでにインキュバスですよ」
「ブレイブきゅんを返せぇぇ!」

突如としてブレイブ確保に移ったアンちゃんに私たちは慌てふためきました。





目の前が真っ暗になったと思ったら、僕の上にアンちゃんが跨っていた。僕もアンちゃんも何も身につけていなくて裸。
アンちゃんの体が透けているからなのか、僕の胸に置いた手は僕の胸の中まで沈み込んでいるし、腰だって混ざっちゃっている。
だけど、相手がアンちゃんだから怖いなんて気持ちは全然なくて、むしろなんだか温かくて気持ちがいい。
腰が混ざっちゃっている体勢ということは、もちろん僕のアレがアンちゃんの中に入っているということで、その部分はまた違った温かさがあって、とっても気持ちがいい。
少しでも動いたら、僕のおちんちんは爆発してしまうかもしれない。

アンちゃんの姿をちゃんと見るのは初めてだ。
アンちゃんの裸は、とても綺麗。外見は僕より少し年上くらいに見える。
少しつり目で男の子っぽい顔立ちだけど、線は細くて女の子らしい。小ぶりで僕の手の平にピッタリ合いそうなおっぱいに、スラッとしたくびれ、お尻は僕の手の平から少しはみ出すくらいだと思う。アンちゃんみたいな人をスレンダーな体っていうのかな。
鎧を着た姿しか見ていないけれど、フリフリのドレスを着てもとっても似合うだろうな。
すっごく可愛い。

”ありがとう。そんな風に想ってくれて”

アンちゃんは頬を染めていた。
アンちゃんの声は少し低めで落ち着いた声。ハスキーボイスって言うんだっけ。
あれ、でも今、僕何かしゃべってた?

”違うよ。喋ってない。この状態だとブレイブの心がそのまま伝わってくる”

えっ、じゃあ、今考えたことも全部?
僕は驚いてしまう。

”うん。でも、いつもじゃないよ。今みたいに深く交わったときだけ。今はブレイブにもボクの気持ちが筒抜けだと思う”

「本当だ。すごくドキドキしてる。それに、僕のことが好きっていう気持ちも」
アンちゃんから温かいものが流れ込んでくる。

”やっぱり伝わってしまうんだね。すごく恥ずかしいけれど、今だけなら大丈夫。ブレイブの気持ちもボクに届いてる。同じ気持ちでいてくれてうれしいよ”

アンちゃんからは、相変わらず温かいものが流れ込んでくる。
アンちゃんは僕を見て、照れたように微笑んでいる。
あれ、でもなんだろう。別のものが混じってくる。モヤモヤ?、ドロドロ?。濁ってはいないと思うのに、とっても熱くて重くて。さっきまでの僕を包み込むようなものではなくて、中にまで入ってくるような。

欲しい、何を、僕?。今は独り占めしたい。ボクと一つになって欲しい。僕も欲しい。

”わかちゃったよね。ごめんね、ブレイブ。僕、もう我慢できそうないよ”

そう言って、アンちゃんは僕にキスをした。
混じり合うような。違う。本当に混じってる。唾も舌も歯も唇も鼻だって。アンちゃんと触れている場所はどこだって僕と混ざっている。
お互いの気持ちも感覚も混ざっている。僕の喉を通って行くのはアンちゃんの唾なのか、アンちゃんに飲み込まれた僕の唾なのか。僕もアンちゃんもどっちがどっちかもうわからない。
でも、一つだけはっきり言えることがある。
僕もアンちゃんも、とちらもたまらなくキモチガイイということ。

僕のおちんちんはアンちゃんのあそこに食べられちゃったままだ。
腰は動かしていないのに、アンちゃんのあそこがきゅうきゅう締まって、そっちもたまらなく気持ちがいい。
アンちゃんから伝わってくるこれは、僕が入っているということなんだろうか。
欲しい、欲しい。僕からかアンちゃんからか、どちらともなく二人の腰が動く。
今でさえこんなに気持ちが良かったら多分、僕のおちんちんから精液が飛び出したら、とんでも無いことになっちゃうんだろう。
僕は僕のものかわからなくなってきた頭で考える。
爆発して、混ざって、ぐちゃぐちゃのドロドロになっちゃうんだろう。
それは、とっても怖そうだけど、とっても気持ちが良さそうで、とってもーーー。

”うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!”

僕のおちんちんが爆発した。
僕らの二つの口からは、一つの叫びがあがる。
全部がぐちゃぐちゃのドロドロで、めっちゃくっちゃだ。

”溶け合う心がボクを壊す”

アンちゃんがそんなことを言った気がしたけど。僕も壊れちゃう。
僕らは滅茶苦茶に混ざりあった。





「うぉぉぉお、ブレイブきゅんをぉ、返っせぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「ねじ切ろうとしてはダメですよ、カーラさん。中にブレイブさんがいるのですから」
「大丈夫、私にサルベージ計画があります」

迂闊でした。魔物娘の愛の爆発をなめてはいけませんでした。
多分、満足したら戻ってくるとは思うのですが。
満足、しますよね。私だったら…、ずっとこのままだー!
一回ことが済むくらいまでの時間は待つとして、それ以上経っても戻って来なければ、ホント強制的に引き戻します。
私たちはまた騒ぐのでした。

馬車の中の喧騒は御者さんにも伝わっています。
「あぁ、今日も空が青いですね」
私はこれからこいつらと旅をするのですね。と、空を仰いでため息を吐くヴェルメリオの眦には雫が光っていました。





結局、自分から戻ってきてくれたのですが、あっちの世界で数え切れないくらいしていたということです。
時間のない場所でいつまでもとは、羨ましすぎます。リビングアーマーの特権恐るべし。

そんなこんなで次の街バーダンに着きました。
バーダンに着くまでにブレイブなら数人くらいゲットできると思っていたのですが、こんなことをしていればできるわけないですね。
そもそも、インキュバス、リリム、ドラゴン、カースドソード、リビングアーマー、一反木綿というパーティには関わろうとする気すら起きないでしょう。

まぁ、気をとりなおして、この街ではどんな出会いが待っているのでしょうか?
16/05/25 22:36更新 / ルピナス
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■作者メッセージ
最初は今回アンちゃんとさせるつもりはなかったのですが、もう姿が見えるようになったリビングアーマーを装着してタダで済むわけがありませんでしたね。
こんな感じで第二部開始させていただきます。

第二部には自分の世界を混ぜていくつもりです。図鑑世界のルールになんとか抵触しないようにしようとは思いますが、ここ危ういんではないか、というものがあれば教えてくださいませ。

よろしくお願いいたします。

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