後編
―…疲れた…ぁ…。
そんな風に思うのはもう何度目だろうか。町長のコネでこの避難所に新しく開かれた学校の教職についてから、もう数え切れないほど浮かべた気がする。最初こそ町長の言葉に突っ込んでいたが、教師なんて教科書通りに教えるだけの楽な仕事だと思っていたのだ。だが…想像と実際はまるで違い…毎日、ストレスが溜まる日々を送っている。
―子供って意外と賢いんだよなぁ…。
俺が受け持つのは特に専門知識の必要ない歴史の授業だ。…と言うかそれしかできない。算数や国語の教科書も眺めてみたが、何が何だか分からなかった。魔術は少しだけ分かるものの、人に教えられるほどではない。結局、俺が出来るのは特に専門的知識の要らない歴史だけで…俺の授業は殆どが興味なさそうに眠っているか、話しているかのどれかだ。勿論、俺も必死になって授業をしたり注意をしているが、やっぱりどうしても舐められてしまっているのだろう。まだ生まれて十年も経っていない様な子供ではあるが、馬鹿にして良い相手としちゃいけない相手の区別は本能的にしているのだ。
―…心が折れそうだ…。
別に何か志して教師を選んだわけじゃない。寧ろそれしか選択肢が無いからこその教師であった。だけど、それでも自分の話に興味をなさそうにされるのは正直辛い。コネで入った俺をあまりよくは思っていないのか、他の教師との折り合いも悪いし、精神的な負荷は今までと比べ物にならないくらいだ。
―これでも一応…努力してるんだけどなぁ…。
時間があるときは他の先生の授業を覗き見たりしている。重要そうな部分をメモして、自分の授業でフィードバックしたりもしているのだ。だが、それでも俺の授業を聞いてはくれない。他の先生はそれなりに真面目に聞いているのに、俺は生徒に完全に舐められきってマトモに授業を行えることの方が珍しいレベルだ。
「…はぁ……」
少しだけだが、教師は簡単な仕事であると思っていた。そんな当時の自分を殴り倒してやりたい。考えても見れば自分の中の考えを相手に誤解無く伝えるだけでもかなり難しいのだ。それを何十人を相手に同時に行うというのが難しくないはずが無い。しかも、俺の場合、それほど歴史に造詣が深いわけでもなく…きちんとした訓練を受けているわけでもなかった。そんな俺が教師と言う職業をマトモにこなせるはずもない。
―…辞めようかな…。
生徒も俺のような駄目教師に教えられるよりはしっかりとした教師に教えられる方が良いだろう。他の分野ならば兎も角、俺が就いているのは教職と言う分野だ。俺が教えた事が、或いは教えなかったことが一生残る分野である。そんな重要な場所に俺が居て良いのか。最近はそんな事をずっと考えてしまう。
―…悪い傾向だな。
自分の視野がどんどんと狭くなっていく感覚にそう思ったものの、気分が上向くことは無い。教職についてから既に数ヶ月が経過しているが、ずっとこんな感じだ。最近は定期的にではなく、常に胃が痛むくらいなので穴くらいは開いているかもしれない。しかし、病院に行く気にもなれず、俺は常に明日の授業の準備に追われる毎日であった。
「おっと…」
そんな事を考えていると家を通り過ぎてしまいそうになった。どうやら疲れすぎて注意力も散漫になっているらしい。そんな自分に気合を入れるように頬を叩いたが、眠気が過ぎ去っただけでまるで気合が入らなかった。多分、身体ではなく精神そのものが疲れきっているのだろう。そろそろ倒れてしまうかもしれない、そんな事を考えながら、俺はそっと我が家の扉を潜った。
「ただいまぁ…」
「おかえり。今日も御飯出来てるよ」
疲れた俺の声に対して暖かくベルが迎えてくれる。それにそっと顔を上げると、何時もの快活な笑顔が目に入った。どうやら今日も早番だったらしい。部屋の中には暖かい料理の香りが漂っている。迎えたベルは純白のエプロンを身に着けているし、ついさっき出来上がったばかりなのかもしれない。
「今日は自信作なんだよ。一杯食べておくれ」
「あぁ…いや…」
とは言われるものの、疲れた俺の身体はまるで食欲が無かった。ぐるぐると蠢く胃は胃酸だけを吐き出していて、食欲ではなく微かな痛みだけを脳へと伝えている。昼もこんな調子で結局、何も食べなかったからそろそろ何か口に入れなければ行けないとは分かっているのだ。しかし、俺の身体はどうにも食べ物を求めておらず、疲れた心は食べる気を起こさない。
「いや…今日もやめとくよ。授業の準備をしなきゃいけないしな」
「…そう」
そんな風に彼女の料理を断るのは何度目だろうか。ここ最近は毎日の様な気がする。そして…その度に悲しげに目を伏せる姿を見るのも。俺としても…別にそんな風に悲しませたい訳じゃない。本当はもっと嬉しそうに笑って欲しいのだ。だけど…どうしても食べる気が起こらず、彼女の脇を逃げるように通り過ぎる。
「じゃあさ。簡単に摘めるサンドイッチも作ったんだよ!そっちは食べられるだろ?」
「いや…俺は……」
諦めずに俺の後を着いてくる彼女がそっとテーブルの上の籠を指差した。そこには鮮やかな食パンに挟まれた色とりどりの野菜が見える。恐らく食欲の無い俺の為に作られているのだろう。野菜以外には特に具材は見えず、彼女の大好きな肉は一つも入っていない。しかし、そんなサンドイッチを見ても俺の身体は拒否反応を示すだけで、食べる気力も沸かなかった。
「…悪い。やっぱり不慣れだからさ。ちょっと…食べてる余裕が無いんだわ」
「…そっか…そうだよ…な」
―その声はもう泣きそうなくらいになっていた。
しかし、泣きたいのはこっちの方だ。職場ではうまくいかない。生徒には舐められている。食事も受け付けず、一日一日がまるで命を削っているようだ。その上…その上、ベルを泣かせる位、困らせているのだ。そんな情けない自分にとんでもなく嫌気が指す。自己嫌悪で胸がドス黒く染まり、胸を掻き毟りたくなってしまうくらいだ。そんな俺に宿るのは『死にたい』と言う自殺衝動だけであり、生きる気力なんて殆ど失われている。
―…ホント、どうしてこうなったのかなぁ…。
職さえ就けば、きっと幸せに…少なくとも今よりはマシな生活が待っていると思っていた。だが、現実はそんなに優しくなかったのだろう。寧ろ以前よりベルに迷惑を掛けている気がする。そうと分かっていても、俺の感情は上向かず、まるで泥沼に沈み込むように落ちていった。
―…まぁ、とりあえずは明日の準備だな。
逃げるようにそう考えながら俺はそっと椅子に座った。そのままテーブルに教科書を広げて、重要そうな場所にラインを引き始める。魔物娘の技術で大分、生活技術が上向いてきたとは言え、未だに本と言うのは高級品だ。生徒一人1人に配る余裕など無いため、俺がこうして教科書を要約して生徒に伝えなければならない。…と言うか、専門知識も技術も何も持たない俺に出来るのはそれくらいなのだ。せめて、それだけはしっかりやろうと、俺の思考は文字の群れの中に没頭する。
「……」
そんな俺の目の前にそっとベルが座ったのが見えた。浮かない表情をしているのはきっと俺の所為だろう。本当は俺だってそれをまず第一に何とかしてやりたい。だが、自分自身すらどうにも出来ない俺に彼女に何か出来るはずもないのだ。まるで言い訳をするように諦めて、俺は再び教科書の中へと戻る。
「…………」
「…………」
そのまま無言で向かい合って数分ほど。何時もは俺を元気付けようと明るく話しかけてくれるベルは珍しく無言だ。作業が進むので勿論、それ自体は喜ばしいことであるのだが…やはり、どうにも気になってしまう。そっと視線を教科書から上げれば、ベルは完全に俯いてしまって表情を伺うことさえ出来ない。
―…俺は……。
普段は決して見せない暗い様子に俺の胸がズキリと痛む。思わず何か言おうと口を開くが、出てくるのが吐息だけで言葉にはならない。まるで陸に上がった魚のようにぱくぱくと口を開くだけで、肝心の言葉が出てきてはくれないのだ。そもそも、俺は何を言いたいのかさえ自分自身でも理解できず、俺はじっとベルの様子を見続けている。
「あーーーーーーー!!!!!もうっ!!!!!」
「うぉっ!!」
そんな俺の目の前でいきなりベルが立ち上がる。ガタンッと部屋中に響くような音と共に彼女の座っていた椅子が倒れた。よっぽどの勢いだったのだろう。椅子所かテーブルさえ揺れる動きに、俺は思わず声を上げてしまった。しかし、そんな俺に構わず、ベルは二人掛けの小さなテーブルを掴み、脇へとずらす。テーブルの上に乗せていた教科書やサンドイッチごと俺から逃がすような動きに俺はまるで対応できず、ぽかんと口を開けた間抜け面のままベルを見ていた。
「え?あの…べ、ベルさん…?」
怖々と尋ねてみると、きっとベルが怒りの篭った目で俺を射抜いた。それは様々なアクシデントがあった居候生活の中でも見たことの無い程の怒りである。尻尾を燃え上がらせるようなドス黒いそれに俺は思わず、喧嘩を売ったときの事を思い出した。背筋に冷ややかな汗が流れ、本能が逃げろと叫んでいる。しかし、あの時からさらに衰えた俺の身体は椅子から腰を上げることさえできず、彼女の前で震えているだけだった。
「アタシはね!!頭で考えるのは苦手なんだよ!!」
「いや…うん。それは知ってる」
直情型過ぎて時折、居候している俺が困るくらいなのだ。そんな彼女が思慮深いとは口が裂けても言えない。そもそも彼女がもう少し思慮深いのであれば、俺なんかを居候させはしないだろう。そんな事は今更、カミングアウトされなくても分かっている。
「だから…!だからね!!アタシも何が言いたいのか分かんないけどさぁ…!!」
ポツリポツリと漏らすような彼女の言葉に胸が疼く。必死に何か言おうとしている彼女は、その考えるのが苦手な頭を必死に使ってくれているのだろう。それは勿論、俺に何かを伝える為である。その何処かいじらしい姿に胸を疼かせる俺は、呆然と彼女の言葉を待っていた。
「うー…うー……!!と、とりあえずアンタは剣を取れ!!」
「…は?」
しかし、待っていた言葉は俺の右斜めをベルゼブブのようにかっとんで行く様なモノであった。それにさっきとは別の意味で呆然とした目線を向けるが、彼女はまるで気付いてくれない。それどころか満足そうな笑顔を浮かべて、キッチンに立てあけてあった自分の剣を取った。
「さぁ!とりあえず戦るよ!!!」
「…え?」
そのまま鞘を抜いてこちらへ剣を突きつける彼女にどう反応すれば良いのか分からない。いや、そもそも彼女の意図さえ今の俺には把握できなかった。俺は何を求められているのか、何が目的なのか。分からない事尽くしで、軽くパニックになる頭で必死に考えるものの、何一つとして答えは出ない。突拍子もない彼女の行動には少しは慣れたと思っていたが、訳が分からないは行動は初めてだ。
「惚けてないで立ちな!そして後ろの置いてある剣を取るんだよ!!」
指示するような言葉に後ろを振り向いてみるが、そこには鞘に入れられた一振りの長剣が置いてあった。最近は心労と疲労で完全に気力が折れて、まったく触っていなかったそれをそこに置いた記憶はない。つまり…彼女が何かのつもりでそこに置いたのだろう。それは…多分、俺と戦うつもりで…。
「……本気か?」
「勿論だよ。アタシはサラマンダーとして正式にアンタに勝負を申し込む…!!」
問いかける俺の言葉にはっきりと強い意思を込めてベルが返した。だが、今の俺には彼女とまともに勝負できるだけの技量はない。それどころか訓練を怠った最近は筋力さえも減っているだろう。そんな俺が彼女に勝てる可能性なんて1%も無いのだ。そんな事はベルも分かっている筈だろう。それなのに、はっきりと勝負を申し込むと言う事は――。
―…何かあるのか。
一合さえもマトモに打ち合えないであろう男にわざわざ「サラマンダーとして」勝負を申し込む理由。それはリザードマンがよくやるような、旦那探しではないだろう。それよりももっと別な…彼女なりの考えが有るはずだ。それならば…ただでさえ迷惑を掛けている俺としても受けて立たなければならない。
「…分かった」
短く応えて俺はそっと剣を握った。教師と言う職業についてから早数ヶ月。その間、殆ど振るっていなかったそれはやっぱり俺の手には簡単に馴染んでくれない。元々、この剣は俺のモノではなく、ベルの父親のものだったのだから当然と言えば当然だろう。だが、それでもきちんと訓練と続けていた頃は少しずつ馴染み始めていたのだ。それを感じないというのはこの剣に不甲斐ない自分を叱責されているような気さえする。
―まぁ……今は…。
剣の事よりも目の前のベルの事だ。そう思って、俺はそっと歯で鞘を抑えて、左手で剣を抜いた。すらりと音を立てて証明の下に晒された白銀の刀身は俺の記憶の中のモノと遜色無い輝きを放っている。職についてから一切、手入れをしていなかった長剣がここまで輝いているのは…きっと俺がいない間にベルが手入れをしてくれていたのだろう。それに感謝の念を感じながら、俺はそっと左肩を前に出すように構えた。
「…へぇ…少しは様になってるじゃないか」
「有り難うよ」
さっと切っ先を地面に向けるように構えながら、俺は短く返す。そんな俺の目の前でぎゅっと身体を縮こませるように正眼に構えた。だが、それはまるで剣を初めて握った初心者のような姿である。肩に力が入りすぎて、腕も完全にこわばっている。そんなものではマトモな斬撃一つ放てないだろう。
「…舐めてるのか?」
それは俺が以前見たベルの構えとはまったく違う。元々の彼女の構えは肩の力を抜いた完全な自然体であったのだ。だからこそ、アレだけの天性のバネを生かした斬撃を幾重にも放つことが出来た。だが、俺に相対する彼女は自然体どころかガチガチに緊張している。それでは彼女の元々のバトルスタイルを活かす事なんて出来ないだろう。
「舐めてなんかないよ。これが今のアタシの全力さ」
なんとも無いように言うが…それは間違いなく嘘だろう。何せサラマンダーはリザードマンと同じく戦いに大きな重きを置く種族なのだ。例え数ヶ月の間、ろくに身体を動かしていなくともその技量が落ちるとは思えない。まして彼女の場合はそれ以前の問題だ。正直、ここまであからさまだとわざと自分の能力を制限しているようにしか見えない。
―…舐めやがって…!!
俺は本気で彼女の勝負を受けるつもりであった。それなのに…ベルはあからさまに俺を舐めた態度を取る。勿論、俺とベルの間にはそれでも歴然とした実力差が存在しているのは確かだ。だが…それでも俺は男である。ここまで馬鹿にされて黙っていられるほどプライドの低いつもりはない。今までずっと冷水を被せられたままの怒りがふつふつと煮え滾り、一気に俺の心を支配する。ぎゅっと柄を握る俺の拳に力が篭り、意識が戦闘へと向いて行くのを感じた。
「ついでだ。初手も譲ったげるよ。何処でも打ち込んできな」
「っ…!そうかよっ!!」
その声と共に一気に俺の脚が床を踏み抜いた。何処か鈍い音と共に俺の脚が一歩二歩と前へと出る。しかし、それでも彼女の表情は崩れない。きっとこちらを隙無く見つめるその顔を驚愕に歪めてやろうと、俺の腕は一気に振りあがり、そのまま横薙へと変化する。
「っ!!」
振り上げからの薙ぎ払い。疑似的なフェイントに小さく声を上げてベルが反応する。しかし、その声さえ漏らしたものの、その顔には驚きは無い。それもまた当然だろう。何せ所詮、俺はどれだけ怒ったとしても片手なのだ。どれだけ必死に剣を振っても長剣では、彼女の反応速度は超えられない。
―なら!!これで…!!
そこでさらに一歩踏み込む。薙ぎからの突き。左腕の筋肉を酷使するそれにベルがはっきりとその表情を変えた。しかし、俺はそれを見る余裕は無い。それよりも一歩二歩を踏み込んで、彼女の防御を突き崩そうと一気に肩を前へと押し出した。
「はぁぁ!!」
だが、それも彼女の持つ剣が煌いて弾かれてしまう。だが、俺の一撃を弾いたのは刀身ではなく、柄の部分である。時として手を傷つけかねないそこで受けなければいけないほど、彼女は逼迫していた。そう思えば、多少の戦果はあったと言えよう。次に同じことをしても確実に受けられるだろうが…脳裏にちらつかせる見せ技としては十分だ。
「…驚いたね。まさかそこまでそのサイズの長剣を操るなんて」
「どうあっても筋力やスピードで敵わないからな」
片腕になってしまった俺では駆け出しの冒険者相手にさえ苦戦を強いられてしまうだろう。何せ筋力の要であった右腕を失い、不慣れな左腕しか残っていないのだ。慣れの問題は時間が解決するかもしれないが、それでも両腕で放たれる力任せの一撃は受けられない。ならば…俺に勝負できる部分なんてテクニックしかないのだ。片腕で何よりも正確に、誰よりも確実に。想像から数ミリのズレさえなく、剣を扱うのを目標としていた。
―…まぁ、あくまで目標だったんだけどな。
教師になる寸前は惜しい所までイケたのだが、まだまだだ。特に今の俺はブランクが有る。さっきの一撃は上手く彼女の憶測を超えられる動きが出来たが、次は途中で筋肉が吊って剣を取り落としてしまうかもしれない。実際、久しぶりに酷使された俺の左腕はぎしぎしと唸って鈍い悲鳴をあげている。少なくとも…さっきと同じくらい変化する一撃は当分、使えないはずだ。
「そうかい…じゃあ…それだけ分かってて…なんで…!!」
「っ!!」
そこまで言って今度はベルが一気に踏み込んでくる。上段に振りかぶっての振り下ろし。勿論、そんなものは受けてはやれない。ただでさえさっきの一撃で腕が悲鳴を上げているのだ。絶好調であっても剣を取り落としかねない一撃を受ければその時点で間違いなく負けてしまう。そう思って数歩後ろに下がったが、元々、決して狭いとは言えない室内だ。次の一撃で追い詰められてしまうだろう。
―なら…!!
後ろに下がれないのであれば前に出れば良い。そう判断し、俺はさらに踏み込んでくる彼女へと迫る。そんな俺に向かって右斜めに切り上げるような斬撃が飛んだ。しかし、それをすっと重心を動かして交わし、彼女の腹へと刀身を進める。
「甘いよっ!!」
だが、それも彼女の膝に跳ね上げられてしまう。何と言う反応速度。そして何と言う無茶な身体の使い方だ。だが、俺の目の前で不敵に笑うサラマンダーに痛みの色は決して見えない。寧ろ嬉しそうにその頬を歪ませながら、振り上げた膝をそのまま蹴りへと変化させる。
「っ!!」
――衝撃。
鳩尾に入ったそれはまるで体重が載っていない一撃であった。だが、それでも一瞬、俺の意識が霞む。揺れた胃が吐き気を催して、すっぱい液体を咽喉元まで運ぶくらいだ。これがもし、体重の載った一撃であればあっさりと昏倒させられていただろう。だが、俺はまだ起きていられる。一瞬、飛びそうになった意識をその一念だけでつなぎとめ、俺は崩れ落ちるのだけは堪えた。
「はっ…意外と根性あるじゃないか!!」
「人間様……を…舐めてんじゃねぇぞ…!!」
不敵に笑うベルに必死に笑顔を取り繕って返してやる。だが、どれだけ取り繕っても俺の背中では冷や汗が止まらない。正直、今の一撃で俺の身体はかなりガタが来ていた。元々、実力差があるのに加えて、俺は最近、ろくに寝ていないし、食事も取っていないのである。痛みで冷え込んだ身体で腹だけが熱い感覚は妙に不快で、今にも崩れ落ちてしまいそうだ。今、もう一度、襲ってこられたら確実に俺は剣を取り落としてしまって負けるだろう。
「そこまで言えるなら…言えるなら…なんでそんな自暴自棄なのさ…」
「…あ…?」
そんな一杯一杯の俺に余裕を見せているのだろうか。構えた剣を降ろしてベルがぽつりと漏らす。悲しそうに歪むその顔はまるで何処か遠くを見ているようだ。勿論、その姿は隙だらけで…今、打ち込めば一撃くらいは入れられるかもしれない。だが、痛みに揺らぐ俺の身体には残念ながら、そんな余力は無く…『自暴自棄』と言う言葉を聞かされるだけだ。
「以前のアンタはもっと生き汚い男だったじゃないか…!何があっても生き延びてやるって…そんな事ばっかり考えてるぎらついた目をしてた癖に…」
そのままそっと目を伏せた彼女に何も言えなくなってしまう。確かに…ベルと出会った頃の俺は生きることしか考えていなかった。それは…紛れも無い事実である。その為にはどんな相手だって見殺しにしたり、見捨てたりしてきた。
―そんな俺が…死ぬことばかりを考えてきている。
それは別に教職に就いてからの話だけではないのだろう。それ以前にも…ベルは俺の事を変わったと評していた。あの町長にも同じようなことを言われた記憶がある。…その時は深く考え込まなかったが…確かに今の俺は自暴自棄なのだろう。言われてみれば…そんな気もする。
「確かに…アンタの腕を奪ったのはアタシだよ…!!それでアンタが自暴自棄になったのかさえ馬鹿のアタシには分からないけどさ…だけど…!!」
「くっ!!」
そこで言葉を区切って、再びベルが突っ込んでくる。そのまま彼女は上段から打ち据えるように剣を振るった。予想もしない動きに俺は1テンポほど反応が遅れてしまう。後ろに下がる余裕も無く、それを迎撃するしかない。苦し紛れに左腕を跳ね上げるが…それで何とかなるほど甘い相手ではないだろう。
―だが――
まるで彼女の一撃は紙か何かの様に軽いものであった。緊張で身体を強張らせる様にしていてもとんでもなく早いのに、俺の苦し紛れの一撃であっさりと弾かれてしまう。それに驚愕を感じる暇も無く、彼女は跳ね上がった一撃を何度も何度も俺へと向かって降ろしてくる。
「自暴自棄になったアタシに生きる事を教えてくれたのは…!外の世界を教えてくれたのはアンタだろう!!そんなアンタが…どうしてそんな風に…どうして!!」
―それはまるで子供の駄々っ子のような一撃だ。
まるで大人の大きな胸をドンドンと叩くような子供の。剣さえ持っているものの、軽々しく弾かれるそれにどうしてもそんな印象を抱いてしまう。そして、その印象を…ボロボロと堪えきれないように大粒の涙を零す彼女の表情がまた加速させているのだ。見ているだけでぎゅっと胸が掴まれるような辛くて、悲しそうな表情は普段の彼女からは決して想像もできないような姿だろう。だが…多分、それはベルがずっと押し込めてきただけで、彼女の本当の姿なのだ。俺が気付いてやれなかっただけで…ベルはずっとこうして悩み続けてきたのだろう。そう思うだけで彼女への申し訳ない気持ちが膨れ上がった。
「どうすれば…どうすればアタシはそんなアンタに償える…!?どうすれば…どうすれば元のアンタに戻ってくれるんだよ…!!」
―だが…それでも、この言葉だけは見逃せない。
「…自惚れてんじゃねぇぞベル…!!」
「…え…?」
「償い?ざけんな!これは俺がヘマやっただけの話だ…!!それを償いだとか…お前…ずっと俺を同情心で見てきやがったのか…!?」
ふつふつと身体の底からどす黒い何かが沸き起こる。それはさっき舐められていると思ったときよりも遥かに鋭く、黒いものであった。だが、その黒い何かが今は心地良い。まるで忘れていた何かを思い出させるようなドス黒い衝動に、俺の視界が真っ赤に染まる。だが、それでも何処か頭だけは冷静であり、打ち下ろされた剣を弾く。そのまま跳ね上がった彼女の剣を弾き飛ばすように、一気に剣を振り落とした。
「俺は…一度だってお前の所為だなんて思ったことはねぇ!!俺が…俺が一度だってお前の所為だって言ったかよ!!」
「それ…は…」
それを持ち前の反射神経で受け止めながら、ベルは応える。その表情には何処か戸惑いの色が浮かんでいた。だけど、今更、そんなもの知ったことじゃない。俺はあくまで自分勝手で最低な男なのだ。ベルの都合も知らず、思いも知らずに、ずっと我侭を言ってきただけの馬鹿な男である。そんな俺が…今更、ベルの都合を考える筈も無い。
「これは俺が自分で喧嘩売って、傷を甘く見た挙句の失態だ!それをお前…自分の所為だと…?世界中の不幸が自分の所為で起こったとでも思ってるのかっ!!」
「違う…けどさ!!アンタの傷は…アタシが…もう…取り返しのつかないことで…!!」
「それこそ自惚れつってんだよ!!取り返しのつかない?この腕のお陰で俺は立派にコネが使えたじゃないか!昔の俺じゃ逆立ちしたって就けない職に就けた。寧ろ幸せじゃねぇかっ。それを…お前の尺度で取り返しがつかないとか決め込んでるんじゃねぇ!!」
ガンッと鋼同士がぶつかり合う音がする。鍔迫り合いの形で一気に近づいた俺とベルが剣越しににらみ合った。だが、未だこのサラマンダーはうじうじと悩んでいるようで、表情が暗い。これだけ言ってもまだ自分を責めるような馬鹿に下手に何か言っても無駄だろう。ならば…俺が不幸なんかじゃないと言う事を思い知らせてやるだけだ。
「それに…知ってるかよ…!毎度毎度、お前の無防備な姿を見て楽しんでたんだぜ…!!」
「え…え??」
「ケツも胸もデカイ良い女…しかも、無防備に男の前に薄着で出るような美人だ。そんな奴に炊事洗濯掃除までさせて何処が不幸だって言うんだよ!!あ?言ってみろ!!」
逆切れも良い所なのは何処か冷静な俺自身、理解していた。だけど、今更、止まらない。ふつふつと湧き上がるドス黒い怒りはさっきからまるで収まってはくれないのだ。寧ろその色をより激しく、濃くして、俺を飲み込もうと迫ってくる。それはもはや感情の殆どを飲み込み、本来、顔を出すであろう羞恥心さえ押さえ込んでいた。
「そんな垂涎モノのシチュエーションで俺が自暴自棄になってたのも俺の責任だ!テメェにはその責任の一片たりともやらねぇよ!!」
「はは…怒ってるんだか慰めてるんだか…どっちなんだい」
その形の良い目尻に薄っすらと涙を浮かべながらもベルはそっと微笑む。どうやら、その気持ちは少しだけでも晴れたようだ。普段通りの優しい笑みに少しだけ安心の気持ちを覚える。だが…それもすぐ怒りに飲み込まれて消えてしまった。今の俺に残るのは…ただ一つ。この生意気な女に少しでも痛い目を見せてやろうという怒りの感情だけだ。
「じゃあ…決着をつけようか!今度こそテメェを跪かせて喘がせてやるよ!!」
「はっ…面白いじゃないか!出来るものならやってみせなよ!!」
―剣戟が踊る。
右へ左へ。上へ下へ。前へ後ろへ。突き。薙ぎ。振り。斬り。お互いに持つ剣をぶつけ合うようにして、狭い部屋の中で俺達は戦う。まるでお互いしか、お互いのみにしか世界に存在しないようにのめり込みながら。勿論、それはベルが大きく手加減してくれているが故に成り立つ戦いだ。だが、それさえも戦いに没頭する俺には関係ない。今の俺にとって必要な情報はベルが如何動くかと言うだけなのだ。
「ははっ!あはははははははっ!!」
それは多分、彼女も同じなのだろう。今までに聞いたことが無いくらい大きな笑い声を上げながら、彼女も踊る。その背にはベルの興奮をあらわすようにして真っ赤な炎が燃え上がっていた。まるで天井まで焼け焦がしそうなそれはそれだけ彼女が楽しんでいる証拠なのだろう。そして…楽しむと同時にまた追い詰められている。あのクスリを使った時よりもさらに。それは…俺の全身全霊を持ってして、彼女に立ち向かっているからなのだろう。
―だが…それでも…。
五分、十分と身体を動かすとどうしてもキレの差が出てくる。元々、俺は片腕だ。ぶつかり合う剣戟の負荷を分散することも出来ない。二十合、三十合と繰り返しているうちに俺の腕は痺れ始め、そして、ついに彼女の一撃に耐え切れず、剣を落としてしまった。
「…ぜぇ…はぁ…ぁ…」
胸を大きく上下させながら、俺はその場に倒れこんだ。正直、もう指一本動かせる気がしない。身体中から余分な体力を丸ごと搾り出したようだ。だが…その疲労感が今は心地良い。心の中も何処かすっきりしていて、さっきまで胸を覆っていた怒りも、そして悩みも何処かへ消えてしまっていた。
―…ホント…下らないことを悩んでいたもんだな。
生徒が話を聞かないのであれば、無理矢理にでも話を聞かせてやれば良い。負担な授業の準備が必要であれば歴史の授業なんぞ投げてしまえば良い。他の教師との折り合いが悪ければ、そんな連中切り捨ててしまえば良い。それは勿論、世間様一般では我侭といわれるようなものなのだろう。だが…別に世間様一般でどう思われようと俺は俺だ。今まで何人もの人間を見捨ててきた奴が今更、どんな風評を怖がるというのか。それでクビになったとすれば、盗みでも何でもして生きれば良い。その果てに惨めな死に様を迎えるとしても…自分を押さえ込んで胃に穴を開ける生活よりもよっぽどマシだろう。
「あははははっ!やった!!勝ったよ!!」
そんな俺の上でベルが無邪気にはしゃいでいる。どうやらよっぽど嬉しかったらしい。剣を振り回すように全身で喜びを表現している。そんな彼女に危ないと思うものの、変に水を差してやるのも可哀想だ。もう少しくらい素直に喜ばせてやっても良いだろう。まぁ…その考えには疲れ過ぎて話すのさえ辛いという理由もあるのだが。
―あ…そう言えば……。
そのまま数分ほど仰向けになって呼吸を整える俺はどうしても納得できなかったことを思い出した。まだ上手く話せるほど呼吸は整っていないが、思いついたそれを抑えるのはどうにも難しい。体力的にはそろそろ回復しているし、先に聞いておこうと、俺は口を開いた。
「…つーか…お前…さ…。なんで…あんな……手加減…を…」
結局、戦いの最中、ベルは一度も無茶苦茶な振り方をしなかった。肩や腕にガチガチに力が入っていたとしても、きちんとした手順で振るわれる一撃ばかりだったのである。お陰様で、ここまで保つ事が出来たが、もし、ベルが山でであった時と同じ戦い方をしていれば十秒も持たなかっただろう。彼女はそんな自分を『全力』と称したが、俺にはどうしても納得が出来なかった。
「ん?手加減なんてしてないさ。アレが今のアタシの全力なのは事実」
「訳が…分から…ねぇ」
「んー…まぁ、一言で言うなら昔の自分との決別…かな。アレは…ほら、ぶんぶん振り回してるだけで子供っぽいじゃないか」
―子供っぽいねぇ…。
確かにそれは否定しない。否定しないが、それで簡単に捨てられるものだといえば決してそうではないだろう。恐らく、そこに至るまで色々と悩みなんかがあったはずだ。だが、どうやら彼女はそれを俺に言うつもりは無いらしい。何処か誤魔化すような笑顔を向けてくる。
「…でも…アレはアレで…綺麗だと思うけど…な」
―それは紛れも無く本心だ。
あの初めて出会ってボッコボコにされた日。踊るようにして回りながら全身で剣を打ち付けてくる姿に美しいと思ったのは確かだ。それなのにアレがもう見られないと聞くと流石にちょっと残念な気がする。出来ればベルにはあのままあの剣技を極めていって欲しいと思うのだが…。
「綺麗って…まぁ、そういう風に言われて悪い気はしないけどね。でも、どうせ口説くならアタシ本人を褒めて欲しいよ?」
「言ってろ…ばーか…」
ケラケラと笑いつつも、ベルは譲るつもりは無いようだ。まぁ、それならそれで俺が何か言えるような義理でもあるまい。別に俺は彼女の親でも恋人でもなんでもないのだ。彼女の血こそ流れてはいるものの、精々、居候と言う関係が精一杯だろう。そんな俺が何かを言っても、この妙に頑固なサラマンダーは素直に受け取るまい。
「それより…さ。悪いんだけど…」
「ん?」
仰向けに倒れこんだ俺を覗き込むようにしてずずいとベルが近寄ってくる。その顔にはさっきとは違う興奮の色が浮かんでいた。まるで熱に浮かされたように潤む瞳はまるで欲情しているようである。しかし、今回は何か仕込む余裕などなかったのだ。彼女がそんな表情を浮かべる意味が分からず、俺はそっと首を傾げる。
「アタシ…火が点いちゃったみたいでね…その…分かってると思うけど、そういう意味で」
珍しく言いにくそうにしている彼女の背中を見れば、未だに真っ赤な炎が燃え上がっている。だが、それはさっきよりも何処か不純でいやらしい赤だ。まるで彼女自身の心境を現しているようなそれを見た瞬間、俺はサラマンダーが勝たなくても発情する種族である事を思い出す。彼女達はより自分より強い男を認めるリザードマンと違い、その戦いが自分にとっても燃え上がるものであれば、身体を火照らせてしまうのである。
―これは…やばい…か?
何がやばいって勿論、俺の自制心である。今までどんな姿を見ても何とか自分をコントロールしてきた理性の箍が緩み始めていた。はぁはぁと疲労とは別の意味で吐き出される吐息が顔にかかって、俺の身体まで興奮してきているようである。この数ヶ月ずっと抑えられ続けてきたムスコもむくむくと起き上がり始めていた。しかし…何より問題なのは、そんな自分の変化を受け入れる俺自身がいることで……。
―…と言うか…そもそも受け入れて何が悪いかって…その問題さえあやふやなんだが。
彼女がそれを求めるのであれば、俺だって吝かじゃない。何せベルは美人で、何より良い女である。口調こそぶっきらぼうだが、その実、そこらの女より遥かに女らしい。懐も大雑把と形容したくなるくらいに大きく、優しい人だ。そんな相手に迫られて、一体、何が不満だって言うのか。
―…いや、不満なんて言ったら怒られるか。
はっきり言おう。今の俺は幸せだ。こんなに良い女に言い寄られるのだから。問題は俺の心にまだ自虐の考えが残っていることだが…そんなものは投げ捨てれば良い。これだけ良い女が俺を選んでくれたのだ。それに応えない方が失礼だろう。
「だから…アタシみたいなガサツな女は嫌かもしれないけど…」
「誰がガサツだ。誰が」
あっさりとその心を欲望に流しながら、俺はそっと目を伏せるベルの頬を撫でた。相変わらず彼女は自分の魅力が良く分かっていないらしい。そもそも、ベルをガサツと表現するなら世の中の大半の女はガサツ女かそれ以上の鈍感馬鹿になってしまう。確かに無防備だと思う点は多いが、毎日、しっかりと心遣いをしてくれているのは誰よりも俺が良く知っているのだ。それをガサツ呼ばわりして、貶められるのは彼女自身であっても面白くは無い。
「俺はお前以上に女らしい女を知らないよ。口調は…まぁ、確かにぶっきらぼうだけどさ。俺の知る誰よりも優しいし、良く人の事を見てる。心遣いも出来て、料理も美味い。それどころか炊事洗濯は完璧で、背中を洗うのも上手だ。そんな女とするのが嫌な訳ないだろ」
―その言葉にボンッと音が聞こえそうなくらいベルの顔が真っ赤に染まった。
元々、薄褐色で赤にも近いその肌をまるで林檎のように染めた彼女の様子は間違いなく可愛らしい。普段は綺麗であるとか格好良いという形容詞が相応しい姿なだけに今の表情はとても新鮮だ。だが、見ているだけで頬が緩みそうなその表情の奥では燃え上がった炎が天井をチロチロと舐め上げるまでに成長している。彼女自身が敵意を持たなければ何かを燃やすものではないと分かっていても、その光景は心臓に悪い。
「…そんな事言われたら止まれないよ…?」
「この期に及んで止まるとか言われたら寧ろ生殺しだっつの。逆に襲うぞ。俺が」
何せ今までずっと生殺しの状態だったのだ。それがようやく結実したと言うのに誰が止まって欲しいと思うものか。正直、ずっとこんな関係を夢見てきたのだ。妄想の中でベルを犯したのなんて一度や二度ではない。目の前でこれだけ美味しそうな肢体を四六時中晒されているのだ。ソレも当然だろう。
―そこまで思った瞬間、俺の前を黒い何かが過ぎ去った。
まるで女豹か何かのような瞬発力を発揮して、ベルが俺の視界からそっと過ぎ去る。驚いて視線を下の方へと向ければ、真っ赤な顔に強い欲情を浮かべた彼女が俺のズボンを必死で脱がそうとしているのが眼に入った。何処かケダモノを彷彿とさせるそれに俺も強い興奮を覚えながらも、脱がされるような羞恥プレイは趣味じゃない。彼女の動きを止めようと左腕を延ばすが、それはあっさり彼女の腕に押さえられてしまう。
「全部…アタシがやったげるから…アンタは横になってるだけで良いよ…♪」
その声に陶酔と興奮を強く込めてベルが俺の視界の中で破顔する。蕩けきったその表情はもはや限界も同然なのだろう。普段は決して見せないであろう姿に俺の胸が強く脈打った。それに意識を奪われた瞬間、強靭な彼女の腕が煌き、あっさりと俺の下半身が彼女の前に晒されてしまう。下半身を見られるのはシャワールームで背中や髪を洗ってもらっているので何時もの事とは言え、やはり服を脱がされるというのが羞恥の感情を想起させた。
「あは…ぁ♪もう…アンタもこれだけ大きくなってるぅ♪」
「そりゃ……な。アレだけ生殺しにされた…くぅっ!!」
そこまで言った瞬間、ベルの手がするりとトランクス越しに俺のムスコを撫でた。大きなトカゲのような手は見かけによらず、肌触りが繊細で、まるで絹のような感触を俺のムスコに与える。するすると通り過ぎる透明な感覚を俺は堪える事が出来ない。その全てを快感として受け取って、彼女の前で小さく呻いた。
「ふふ…♪しかも…まだまだ大きくなるんだねぇ…♪」
うっとりするような彼女の目の前で、俺のムスコがむくむくとその身体を持ち上げている。その大きさは余裕を持って作られているトランクスが窮屈なくらいくらいだ。まるで狭い部屋に閉じ込められるような圧迫感にムスコが出して欲しいと信号を送る。だが、ムスコを解放しようにも今の俺に動かせる腕はなく、ただ、彼女に責め立てられるしかない。
「人間のオスってホント不思議だねぇ…こんな硬いのを身体の外につけてるんだからさ♪」
「それを大きくするのはメスの仕事だけどな…」
「あはぁっ♪そうだねぇ…オスに心奪われたメスの仕事だ。しかも、今回は初仕事であるし…これは…少し気合を入れてかからないといけないね♪」
俺の下ネタにそっと微笑みながら、ベルの手がトランクスの裾を掴んだ。そのまま一気にずるずると引き摺り下ろして、俺のムスコを解放する。ピンッと跳ねるように跳ね上がった亀頭の先からはもう透明な液体が零れていた。そんな自分にどれだけ堪え性が無いんだと一瞬、思ったが、ここ数ヶ月ずっと禁欲の毎日であったし仕方が無い。
「これが…オスの…ううん…♪アンタの…オチンポの匂いぃ…っ♪」
そんな俺の下でそっとベルが陶酔した声を漏らす。しかも、それは普段の彼女の口からは決して聞こえないであろう淫語だ。思わず胸を掻き毟りたくなるような興奮を覚えて俺も小さく呻く。だが、そんな俺とは対照的にベルはそっと目を閉じて、静かにすんすんと鼻を鳴らしている。亀頭の先に触れ合いそうなくらいの距離で揺れ動く形の良い鼻に強い羞恥と興奮を覚えた。何せそこは俺の身体でもっともオス臭いであろう場所である。確実に恥ずかしい匂いしかしないであろう場所を嗅がれるのはやはりどうしても恥ずかしい。だが、一方で俺の匂いに陶酔するようなメスの姿にどうしてもオスとして強い興奮も覚えてしまうのだ。
「青臭くて…つんって鼻に来て…形容しがたい匂いだね…っ♪でも…本能って凄い…♪そんな匂いでも…ちゃんとエッチな匂いって分かるみたいだ…♪さっきから御腹がきゅんきゅん疼いて止まらないよ♪」
すんすんと夢中で鼻を動かしながら、ぽつぽつとベルが漏らす。その頬は興奮で強く彩られ、蕩けきっているように緩んでいた。それが今の淫語と相まって、俺の興奮にさらなる熱を込める。そして、俺自身よりも本能に忠実なムスコがそれにさらなる力を手に入れ、びきびきとその身を反り返らせるまでに成長し始めていた。
「あはは…♪また…エッチな匂いが濃くなったよ…♪興奮…してくれてるんだねぇ…♪」
「これで興奮しないとかインポも同然だろ」
「アレだけ誘惑したのに一度も手を出さなかった男が言って良い台詞だとは思えないよ♪」
「精進が足りないんだよ精進が」
そんな風に言葉を交わしているものの、彼女の無防備な姿に何度、理性を吹き飛ばしそうになったかは分からない。それが今まで保ったのは俺が生来持っていたへタレさのお陰だろう。しかし、それを今更、彼女に言うつもりは無い。言っても俺が恥ずかしいだけだし…一応、ベルにだけは良い格好をしておきたいのだ。
「つか、お前、アレ誘惑だったのかよ」
「ん…?どうだろうねぇ…正直、アタシにも分からないよ」
てっきり天然なだけだと思っていたが、別にそういう訳でもなかったらしい。首を傾げる彼女自身にも分からないようだが…少なくともそう言うと言う事は何かしらの意図があったのは確かだろう。それが何かは俺には分からないが…出来れば恋や愛なんていう甘いものであれば良いと少しだけ期待した。
「何せアンタにはアタシの血が流れてる訳だからねぇ…殆ど家族として認識していて無防備だったのは否定はしない」
「…そうか」
しかし、そんな俺の淡い期待はあっさりとぶち壊されてしまう。まぁ、それも当然だ。俺と彼女が甘い関係になるような要素は今まで何一つとしてなかったのである。寧ろ迷惑を掛けっぱなしの俺が嫌われて無かっただけ御の字であると言えよう。
「でも…意識をしてるはずなのに一向に手を出す気配の無いアンタにやきもきしてたのは事実かな…♪」
「…おい」
「ふふふ…っ♪さぁ…どっちなんだろうねぇ…お姉ちゃんにも分からないよ♪」
「お姉ちゃんって…くぉ…!!」
同じ血が流れているからか冗談めかして姉と言うベルに突っ込もうとした瞬間、彼女の手が再び俺のムスコを撫でる。それに小さく呻きながら視線を送ると、彼女が欲情にテラテラと妖しく光る瞳を開いて、ハァハァと荒い吐息を立てていた。どうやらもう匂いだけを味わうのは止めにしたようで、彼女の手の滑らかな感触が俺のムスコを何度も上下する。
「ふふ…っ弟のオチンポ固くてあっついよぉ…♪サラマンダーだけど…火傷しちゃいそ…♪」
「誰が…!弟だって…の…!!」
しっかりと突っ込むものの、俺の意識は何度かチカチカ光って快感に飲み込まれそうになっていた。血管の浮き出るくらい硬くなったムスコをするすると優しく撫でられているのである。しかも、ここ数ヶ月ほどマトモに構ってやれなかった不肖の駄目ムスコをだ。するすると透明な絹の中を通り過ぎるような緩やかな快感は普段であれば決して射精には結びつかないものだろう。だが、数ヶ月の間、ずっと禁欲生活を続けてきた俺にとってはそれだけでも十二分に致命傷なのだ。
「あはは…♪そう言う趣味もあるかなぁって思ったんだけど…嫌かい?」
「嫌って言うか…似合いすぎて困るっつぅか…」
元々、誰より姉御肌と言う言葉が似合うような女性だったのだ。それがこんな風にお姉ちゃんぶられて違和感が有るはずが無い。寧ろ、俺としては無さ過ぎて怖いのだ。そんなつもりなんてまるでなかったのに、あっさりとそれを受け入れてしまいそうになるのが。
「じゃあ…興奮…する…?」
「…まぁ、ちょっとは」
思わず目線を逸らしながら言ったその一言は…恥ずかしながら嘘じゃない。普通、こんなタイミングで姉ぶられても萎えてしまうだけだろう。だが、俺は萎えるどころか血の繋がりなんて実際には無いに等しいというのに、今まではそんな素振りなんてまるで無かったというのに、どうにもふつふつと背徳感が湧き出てくる。そして湧き出た背徳感がしっかりと興奮に結びついて、ゾクゾクとした感覚を背筋に走らせた。
「ふふ…やっぱりアタシの血のお陰かな…♪アタシも…今、結構、興奮してるんだよ…♪」
「んなもん顔見りゃ分か――ぐぅっ!」
何せ半開きになった口の端からは吐息だけじゃなく唾液まで溢れ始めているのだ。その上、頬がどんどんと血色がよくなって赤く染まるから性質が悪い。蕩けた頬は今にも落ちてしまいそうで、濡れた瞳と相まって恐ろしい威力を発揮しているのだ。正直、そんなベルを見ているだけでこっちだって興奮している。
しかし、それを主張しようとした瞬間、ヌルリと彼女の指が俺の亀頭に触れた。オスの身体の中でも断トツで敏感な部位であるそこに触れられて俺の言葉は途中で途切れる。そして、思わず歯を食いしばった俺を嬉しそうに見つめながら、ベルはそのまま指を左右へ動かすように撫で回した。
「う…ぉぉ…!!」
「凄い…感じてる…♪やっぱりここって敏感なんだな…♪」
確認する様な彼女の言葉に当然だと返したかった。しかし、亀頭に刷り込まれるような快感に俺は言葉が上手く紡ぐ事が出来ない。まるで呻く様な声を上げて背筋をそっと逸らすくらいだ。腰こそガクガクと震わせるような失態こそしなかったものの、もう少し強く刺激されればそんな姿も見せてしまうかもしれない。
「あは♪必死で我慢してる顔可愛い…っ♪」
そんな恥ずかしい姿だけは必死に見せまいとする俺に向かって、ベルの口から聞き逃せない言葉が漏れでた。何時もの俺であればとても聞き逃せない言葉であるが、しかし、今の俺には何かを言えるような余裕は無い。ぎゅっと歯を食いしばりながら、きっとその視線にキツいモノを込めるが、ベルはまったく応えてはいないようだ。いや、寧ろ俺の反抗を嬉しそうに見つめて、するすると亀頭周りを撫でている。
「可愛いって言われるのが気に障ったのかい?それについては謝るよ。内容までは否定するつもりは無いけどね♪」
―こ…のぉ…!!人の事玩具にしやがって…!!
余裕さえ浮かべる彼女の表情に湧き出る怒りの感情。このままで済ませて溜まるかと言う男のプライドは、しかし、与えられる快楽の前にあっさり膝を屈する。既にベルには男の急所とも言うべきムスコを握られてしまっているのだ。数ヶ月の禁欲の果てにある今の俺には、反応を堪える事が唯一、出来る抵抗である。
「ふふ…そんなに必死で我慢して…そんなに我慢されると…アタシも燃えちゃうじゃないかぁ…♪」
そんな俺を見て何かを感じ取ったのか嬉しそうにベルが微笑んだ。そのまま俺に見せ付けるようにゆっくりと口を開き、舌を突き出す。何処か薄くらいその口の中は、彼女の興奮の所為かどろどろの唾液がたっぷり詰まっていた。そして、ぬるぬると蠢く粘膜に視覚的に興奮した亀頭の先端に一瞬、強い疼きが走る。だが、それを追い払う余裕も無く、彼女の口の端から降りてきた唾液が俺のムスコへと降りかかってきた。
―う…ぉぉ…!!
それは今まで感じたことの無い熱さだ。勿論、それは熱湯と言う程ではない。所詮、人の体温――彼女の場合、それが人よりも少し高いが――の範疇に有る液体だ。だが、本来は生暖かいであろうそれが熱くて仕方が無い。まるで彼女自身の興奮をムスコに移している様にじわじわと疼くような熱が男根へと入り込んでくる。
「ひゅふ…♪あらしの唾液…あちゅいれしょ…♪」
「何言ってるんだか…分かんねぇよ…!!」
さっきの指で撫でられる愛撫は止まっているのでギリギリ言葉を返すことくらいは出来る。だが、べっとりとねばついた粘液は今も俺のムスコを覆っていた。張り付くようなその粘液はまるで俺の皮をずるずるとした感覚と共に少しずつ少しずつ降りていく。だが、彼女の口から降って来る量はそれとは比べ物にならないくらいだ。あっという間に俺の男根は粘液塗れになって、四方八方から熱い感覚を味わう事になる。
「おいしそぉ…♪」
そして、透明な液体でコーティングされた俺のムスコを見ながらうっとりとしながらベルが言った。正直、魔物娘でない俺にはその感覚が分からない。ビキビキと青筋を当てて、真っ赤な亀頭を膨らませる肉棒を見て、自分の身体ではあるがグロテスクであるとさえ感じるのだ。だが、彼女の言葉には嘘はないようで、うっとりとした表情のままスリスリと頬を寄せてくる。
「う…ぉぉ…べ、ベル…!!」
鱗に覆われた手の感覚をシルクに例えたが、俺が今、味わっているそれはすべすべと吸い付くような肌の感触だ。まるで一つ一つに唇でもついているかのように、彼女の頬は俺のムスコを離さない。自分の唾液塗れでお世辞にも綺麗だとは言えないだろうに、まるで宝物だと言わんばかりに頬ずりを続けるのだ。勿論、既に臨戦態勢になった俺のムスコはそれに強い快楽を感じて、ビクビクと彼女の頬と手の間でその身を震わせる。
「あは…♪アタシの頬でも感じてくれるんだね…♪ちょっと…嬉しいかな…♪」
「これで…感じない奴なんかいるかよ…!!」
吸い付くようなもち肌とシルクのような滑らかさの手によるサンドイッチ。どっちの感覚に集中すればいいのかさえ分からず、肉茎から亀頭までしっかりと愛撫される感覚に我慢など出来るものか。正直、彼女が頬ずりする透明な液体の中には俺のカウパーも幾らか混じっていることだろう。流石にそんな事を言えば、気分を損ねるので言わないが、俺が順調に絶頂への階段を登らされているのだけは事実だ。
「ふふ…♪じゃあ…そろそろ本番に行こうか…♪」
「本番ってお前――」
―もうヤる気か?
そう言おうととした俺の言葉が吹き飛んだ。まるで爆発でも起こったように集めた筈の言葉が散り散りになっていく。それに困惑する暇も無く、俺の思考は快楽で一杯になってしまっていた。例えるならそれはじゅるじゅるでぬちょぬちょの快楽。粘液塗れの刺激を敏感なムスコで味わい、俺の思考は一気に霧散した。
「ぢゅる…っ♪」
チカチカと快楽で点滅するような視界を必死に安定させれば、俺の股間に彼女が顔を埋めている。本来あるべき、ムスコが見えないと言う事はきっと彼女の口に入っているのだろう。ぐちゅぐちゅと粘膜が四方八方から絡みついてくるような感覚も、それを肯定する。だが、考えられたのはそこまでだけで、それさえもまた快楽の中に屈していった。
「う…ああああああああぁぁっ」
快楽に叫ぶ俺のムスコを完全に、彼女が銜え込んでいた。それこそ根元まで一気に。素人とは思えないほど思い切りの良いディープスロートに、慣れない俺のムスコが震える。しかし、彼女の口に完全に捉えられた今では逃げ場なんて有るはずも無く、ぐにぐにと形を変える彼女の口腔で弄ばれるしかない。そんな感覚が何処か被虐的で俺の興奮をさらに加速させた。
「ぢゅぅぅっ♪ちゅ……れろぉぉ…っ♪」
そんな俺のムスコの根元をベルの唇がきゅっと締め付ける。亀頭には劣るとは言え、敏感な根元が形の良い唇に囲まれて悦んだ。だが、それで終わりではない。彼女は今、人並み以上には有る俺のムスコを根元まで銜え込んでいるのだ。その先である亀頭は既に咽喉の奥にでも突っ込んでいるのか、まるで狭い粘膜に包まれるような感覚が支配している。疑似的な性交とも言うべきその感覚にさっきから快楽が溢れて止まらない。彼女が小さく身じろぎするたび、或いは唾液を嚥下しようとする肉体的な反応を見せるたびに、きゅっと咽喉が細まって腰を震わせるほどの快感が襲うのだ。
「れろぉぉ…♪でゅる…っ♪ちゅぅぅぅぅっ♪」
その上、肉茎部分は彼女の舌が激しく這い回っている。まるでそれ自体が別の生き物のように激しく周辺を回る舌はその独特の柔らかさと硬さを持って俺のムスコを刺激していた。正直、それだけでもさっきの指とは比べ物にならない感覚だ。それに併せて、時折、ムスコを吸い上げて、頬の粘膜を押し付けるようにして締め付けられるのである。
そんな快楽の群れに俺が堪えられるわけが無い。一気に豪華四点責めを喰らった俺のムスコはあっさりと我慢を決壊させてびくびくと震えだす。明らかに射精の予兆だと分かるような動き。だが、ベルはそれでも俺から離れてはくれない。そのまま激しく咽喉を蠢かせ、最後のスパートと言わんばかりに激しく責めてたてた。そして、彼女の頑張りに応えるように俺の二つの玉はきゅっと這い上がり、精管へ一気に白濁したマグマを送り込む。
「うっおおおおおおぉぉっ!!」
数ヶ月ぶりに味わう射精。それに叫び声さえあげながら、ぎゅっと俺の手は彼女の頭を掴んだ。そのまま逃がさないように奥へ奥へと送り込む。まるで子宮の奥で射精しようとする本能のような動きであったが、彼女はそれを何も言わずに受け入れてくれた。それどころか僅かに見える顔に陶酔さえ浮かべて、ゴクゴクと咽喉を鳴らして精液を飲んでくれる。そして勿論、その度に咽喉が収縮し、敏感な俺の亀頭やカリ首を締め上げるのだ。それに再び絶頂へと押し上げられて、俺の射精はどんどん続いていく。
「う…あぁぁぁぁ…っ!!」
まるで玉の中の精液全てを打ち出すまで終わらないような快感に俺の視界が一気に霞む。殆ど何も見えなくなり、感じられるのは男根からの快楽だけと言う有様だった。しかし、それが良い。既に射精の快感に支配されてしまった俺にとって今やそれだけが重要な案件であり、ほかの事はどうでも良いのだ。寧ろ好都合だといわんばかりにムスコに感覚が集中し、ぎゅっと彼女の顔を逃がさないように押さえ込んだまま何度も何度もその咽喉奥で射精を繰り返す。
「…う……は…ぁ…」
「ひゅーっ♪ふーっっ♪ふゅーぅぅぅっ♪」
そんな俺がようやく落ち着いたのはかなりの時間が経ってからだった。時間にして数分くらいだろう。一度や二度の射精で無かったとは言え、余りにも長すぎる。最後の方の射精だけでも数十秒は射精しっぱなしだったのだ。その余韻に脱力する今はまだ分からないが、俺の身体は何かがおかしい。少なくとも以前の俺はモノは人並み以上ではあったが、射精する時間や量について何か言われた記憶が無いのだ。小さな事でも男の自尊心を満たそうとするプロである娼婦が何も言わなかったというのは平均かそれ以下くらいの時間なのだろう。
―なのに……俺の身体はもうからっぽなくらいで…。
ずきずきと鈍い痛みを走らせる金玉はもう限界だと両手を挙げていた。本番もマダだというのに情けないとは自分では思うものの、数ヶ月の禁欲の末、いきなりアレだけの快楽を叩き込まれたのである。正直、意識を吹き飛ばさなかっただけマシだと主張したい。少なくとも今の俺の身体は慣れない連続射精に疲れきっていて、彼女の腕を押さえていた手さえ動く余裕がなかった。
「ぢゅぷ……んんっ♪」
脱字した俺とは違って、まだ余力や興奮を残す彼女がそっと唇を動かす。ずるずると口腔内を引き出すように動きにはっきりとした快感を感じながら、俺は小さく呻いた。しかし、それはもう終わりだろう。何せ俺の玉袋はもう空っぽで一滴残らず、ベルに精液を献上したのだ。もはや余力なんて残ってはおらず、彼女の相手なんて出来る筈も無い。
―そう思っていた俺の腰に向かって彼女の唇が再び降りてくる。
ぐぢゅると淫らな水音をかき鳴らしながら、再び亀頭が彼女の咽喉に締め付けられる。それに思わず呻くほどの快感を感じながらも、俺は困惑を隠すことが出来ない。それも当然だろう。俺はもう射精できる精液を何一つとして残していないのだ。全部、ベルの胃に向かって吐き出している。それなのにどうしてまだ貪欲に精液を求めようとするのか。ただ、満足できないだけなのかそれとも別の試みでもあるのだろうか。
しかし、そんな困惑も注ぎ込まれる快楽にあっさりと消し飛ばされてしまう。何せ俺はついさっき射精してまるでインターバル無く、彼女の口腔に閉じ込められているのだ。射精の快楽をよりはっきり味わおうと敏感になった快楽神経は未だそのままで放置されている。それらがさっきとは比べ物にならない快楽を拾って、再び俺のムスコをびきびきと青筋を立てた逸物に仕立て上げていった。
―な…んで…!?おかしいだろ…!?
数ヶ月越しの禁欲生活であったとは言え、本来であれば萎えてふにゃふにゃになっているはずだ。だが、俺の男根は寧ろここからが本番だと言わんばかりに滾っている。それははっきりと確認していないが、さっきのモノとまるで見劣りしないものだった。いや、寧ろ同等以上と言っても良いのかもしれない。俺が今まで見たことも感じたことも無いくらい大きな張りを示すムスコの姿に一瞬、恐怖の感情さえ抱く。
「ぢゅろろろろろぉっ♪」
「くぅぅぅっ!!」
そんなムスコを追い立てるように彼女の口がにゅるにゅると蠢く。だが、それはさっきとは一つの点で決定的に違った。ベルの頭は今、ゆっくりと俺のムスコを扱く様に上下運動を開始しているのである。下はドロドロの粘膜と唇で亀頭と根元を締め付けられる感覚であり、上は唾液と舌が渦巻く粘膜の世界だ。勿論、そのどちらも今まで味わったどんな舌技よりも気持ち良い。特に亀頭周辺に唾液を塗すような彼女の舌の動きや、そのまま頬の粘膜に押し当てるような動きは鮮烈な咽喉の快感と違って何処か優しいのだ。一気に脳髄に突き刺さるものではなくとも、ずるずると無防備に侵略するその熱に俺の思考が再び射精へと走る。
―でも…俺はついさっき一滴残らず射精した筈で…!!
だが、俺の身体はその思考に引っ張られるように、二つの玉の中では急速に熱が高まってぎゅるぎゅると蠢く。何かが中にいるような不快感に一瞬、眉を顰めるが、それもまた快楽の波に飲み込まれた。そして快楽に頭が染まっている間にムスコの奥では一気に精液が増産され、その発射のタイミングを今か今かと待っている。さっき射精たばかりだと言うのに今の俺はもう欲求不満で射精しないとどうにかなってしまいそうだ。
「じゅぷぅ…♪ちゅるるっ♪」
そんな俺の股間でベルがその顔一杯に喜色を貼り付けた。フェラをしながらの、どうにも間抜けな顔だが爛々と期待と欲情に輝く瞳が何より如実に彼女の感情を語っている。多分、ベルはこのまま俺を射精まで追い込むつもりだ。また咽喉の奥であの気持ち良い絶頂を味わわせようとその貪欲な口を開いて迫っている。だが、それは今の俺には自ら飛び込んでしまいたくなるほど気持ち良く、そして簡単に誘惑に抗いがたいものであった。
「は…!そんな必死…でフェラ顔…しやがって…そんなに……美味しいかよ…?」
それでも何とか散り散りになった理性をかき集めて、そう強がった。だが、彼女はそれに何の反応も示さない。まるで何処吹く風と言わんばかりに俺のムスコを美味しそうにしゃぶり続けている。それだけ彼女が夢中になってくれていると言うのに男のプライドが満足感を覚えるが、それ以上に注がれる快感にもう二度目の射精が刻一刻と迫ってきていた。
―どうするか…?
勿論、このまま射精するのも良い。だって、これだけ気持ち良いのだ。どうしてかムスコの奥にはまた精液が溜まっているし、また彼女の咽喉奥に種付けするのも良いだろう。だが、流石に二度連続、フェラで射精するというのも芸が無い。咽喉奥が射精の度にきゅっと締め付け、また絶頂する快感は勿論、魅力だが、どうしてもやられっぱなしは性に合わないのだ。
―そうと…決まれば…!
快楽で霞む思考を感情やプライドと言ったモノで必死に補強しながら、俺は上体を起こした。そして、じゅぱじゅぱと汁気を飛ばすようなフェラを繰り返すベルの胸へと左手を送る。よっぽど夢中だったのだろう。普段の彼女であれば決して反応できない速度ではなかったが、俺の左手はさっきとは違って彼女の胸に到達し、その柔らかさを薄布越しに堪能する。
「んんっ♪」
それにまるで抗議するような声をベルが上げるが、こっちだって負けてがいられない。そのままそっと手で紐を開き、彼女の布の内側へ手を送る。その手に何処か硬い糸が入った絹の感覚が遮った。恐らくこれがブラだろう。それを傷つけないようそっとカップの外側から手を蠢かせ、俺は何の障害も無い彼女の胸を初めて味わった。
―…こ…れは……!!
今まで何だかんだで背中に押し当てられてきたが、そんなものとは比べ物にならない。薄布二つ無いだけで、これだけ違うのかと思うくらいだ。ドロドロと熱を灯すその柔らかな感触は焼きたての白パン以上に俺の指を飲み込む。だが、しっかりとした張りがそれを途中で遮り、俺の指の間を乳肉で埋めるくらいまでしか進まない。だが、敏感な指全てを飲み込み、慈しむような優しい熱を感じる。俺が愛撫している筈なのに、まるで愛撫されるような感覚だ。
―やばい…まさか…これほどとは…。
勿論、気持ち良さで言えば、俺の下で抗議の声を上げながら舌で亀頭を嘗め回し、カリ首を唇で絞めるフェラの比ではない。だが、それ以上にベルの胸からは暖かさと優しさを感じるのだ。それは母性と表現するような何かなのだろうか。上手く表現できる良い言葉は見当たらないが…それを味わう俺が病みつきになり始めているのだけは事実だ。
「じゅぷぅっ♪れろぉぉっ♪」
「うぉ…ぉ!!」
そんな俺を拒絶するように彼女の舌がさらに激しく動く。今までは亀頭周辺を嘗め回す程度であったのが、カリ首を抉るような激しいものへ。溜まった恥垢ごと貪ろうとするような激しい動きはビリビリとした快楽に変換される。まるで無理矢理、射精させられるような激しい快楽に思わず呻きながら、俺の手は止まった。
「ふゅふ…♪んちゅぅぅっ♪」
そして止まった俺に勝ち誇ったように笑いながら、ベルの手がすっと伸びる。けれど、それは未だ胸の合間に手を突っ込んでいる俺の左手ではない。その対角上にあるムスコ…正確にはその下にある二つの玉へと伸びていく。それを快楽に濁った思考で認識した瞬間、彼女の手がそっと二つの玉を掴み、コロコロとその手の中で弄び始めた。
「うあぁぁ!!」
ある意味、ムスコ以上に敏感な二つの肉を滑らかな彼女の手の中で弄ばれるのだ。右へ左へと艶やかな鱗に押し当てられるような愛撫は凌辱的で、尚且つ甘い。まるでたっぷりと精液を作れと適度に刺激するような動きに、俺の中の被虐感が高まる。だが、それはまるで愛しい何かにするような情熱的な愛撫でもあり、湧き上がる快楽を拒絶する事が出来ない。時折、きゅっと締まる手に強い圧迫感さえ感じているはずなのに、今の俺にはそれさえ射精への後押しにしかならないのだ。
「ちゅぱぁぁ…♪ぢゅるるるるるっ♪」
そして俺を一気に押しつぶすかのようにベルの大攻勢が始まる。コリコリと玉袋を弄びながら、指ではその根元をぐいぐいを押し込み始めた。前立腺にも近い根元を押し込まれるとそれだけでビリビリとした感覚が走る。その上、また一気にムスコを飲み込み、きゅっと咽喉元で締め付けてくるのだ。勿論、肉茎の部分も唾液たっぷりの舌がねちょねちょと這いまわる。根元はリズミカルに左右に揺れる唇が精管を刺激して、中を緩めた。
「う…くううぅぅぅぅ!!」
それに俺の我慢は再び決壊する。さっきよりもさらに激しい快楽の波が再び俺の我慢ごと理性を飲み込み、熱いドロドロのマグマを先から噴出させた。ぎゅっと胸を掴みながら、ガクガクと腰を震わせて再び射精の快楽に堕ちる。チカチカと点滅する視界の下では、ゴクゴクと咽喉を鳴らして美味しそうにベルが精液を飲み込んでいた。うっとりと蕩けるような表情で必死に咽喉を鳴らす表情はとても艶かしく、それがまた俺の興奮に火を点け、次の絶頂へと渡らせる。
「く…あ……ぁぁ」
一回目と同じく数分の射精を終えた後、俺の身体は完全に脱力した。流石に倒れこむようなことは無かったものの、彼女の胸に押し当てた手も完全に力を失っている。ブラや下着としか思えないような薄布が無ければ床に崩れ落ちていた頃だろう。大きく上下する肩も余力がまるでなく、まるで快楽に痺れているように動かなかった。
「じゅるるるるるるるっ♪」
だが、そんな俺を彼女は許さない。精管に残る精液さえ全て吸いだそうとするように激しくバキュームする。口の端から漏れ出る唾液が混ざりこむような音にまた強い興奮を覚えながら、俺は一滴残らず吸い出される感覚に身を委ねた。そのまま数十秒吸って満足したのだろうか。ちゅるちゅると音を立てて、舌を這わせながら、彼女の口はようやく俺のムスコを解放した。
「うふふ…♪アンタの精…とっても美味しかったよぉ♪」
「…そりゃどうも」
蕩けきったメスの表情を浮かべるベルの顔をどうにも直視出来ない。頬を蕩けさせ、欲情と興奮で真っ赤に染まったその顔は見てるだけで彼女を押し倒してしまいたくなるのだ。その顔全てを俺のモノであると上書きさせ、独占したい。そんな感情さえ湧き上がってしまう。だが、流石にそんな感情に身を委ねるわけにはいかない。受身過ぎるのもどうかと思うが、恐らく彼女は初めてなのだ。あんまり鼻息荒く迫ってトラウマになるような真似はしたくない。
―まぁ…魔物娘だから大丈夫だとは思うんだが……。
主な食料は人間とそう変わらないサラマンダーでも、その本質はオスを誘惑し、精を得る魔物娘の物だ。多少、手荒に扱ったとしてもその全ては快感になるだろう。だが、そうと分かっていても、俺はどうにも自分の中のケダモノに身を委ねる気にはなれなかった。まぁ、それは多分、俺が――。
「あんなにいやらしくて美味しい味がこの世にあるなんて思いもよらなかったよ…♪アタシ…癖になっちゃってね♪さっき二回も飲んだばっかりだけど……また飲ませておくれ♪」
「…俺を殺す気かお前は」
既に二回も精嚢を空っぽにされ、脱力して指も動かせないような状態なのだ。それでもまだ満足できないというようなベルの姿に思わず戦慄を感じる。いや、火が点いたサラマンダーここで終わるだなんてまったく思ってもいなかったが、まさかまだ飲ませろと言われるとは流石に予想してはいなかった。
「何さ。アンタだって、ここはもうヤる気じゃないか♪」
「うぉ…」
からかうような言葉と共にぎゅっとムスコの根元を握られてしまう。そこは彼女のお掃除フェラですっかり力を取り戻し、天を突くような張りと硬さを取り戻していた。何時までも萎える気配の無いそのムスコの下では再び精液が作られ、次弾の装填が始まっている。俺の思考はもうある程度、すっきりしているのだが、まだまだ俺の身体は満足してはいないようだ。
「ふふ…♪二回も射精したのにまだコレだけ硬くしちゃってさぁ…♪それだったら…もうちょっと前菜を楽しんでも良いじゃないか♪」
「…つまみ食いは程ほどにしないと太るぞ」
「それなら大丈夫♪これからアンタの上でたぁっぷり運動するからね♪」
そっとウィンク一つ送りながら、そっとベルは男根から手を離した。てっきり、そのまま扱くと思っていただけにちょっぴり拍子抜けしてしまう。驚いたように彼女の姿を見れば、丁度、身体から紐をはずしている所だった。不器用そうな外見とは裏腹に、とても繊細に動く器用な指先で一つ一つ解きながら、ベルはそっと胸の薄布を肌蹴させる。そして、そのまま純白のブラを晒した状態で、きゅっと腕を寄せて谷間を作った。
「それに…アンタも気持ちよくなれるよう…この胸でたっぷりとサービスしてあげるから…ね♪」
谷間を作ったままそっと微笑む彼女の姿に思わず咽喉がゴクリと鳴った。それも当然だろう。何せ俺はついさっきその魅惑的な感触をダイレクトに味わってきたばかりだったのだ。思わず癖になってしまった感覚を思い返すだけでムスコがずきずきと疼く。しかも、それだけじゃなく『サービス』までしてくれると言うのだ。それが何なのか大体、分かってしまう俺は、どうしても期待に胸を高鳴らせてしまう。
「……好きにしろよ。でも…あんまり搾り取ると本番前に弾切れになるぞ…?」
「ふふ…♪それなら大丈夫…♪だって…アンタもうアタシと同じ魔物じゃないか♪」
―…あー…なるほど。
彼女の言葉でようやく合点を得る。そう言えば俺は魔物娘であるベルの血を輸血してもらったからこそ、こうして生き長らえているのだ。魔力を宿す彼女の血が俺の中で巡っているうちにインキュバス化してもおかしくはない。そして、インキュバスと言えば底無しの精力と回復力を誇る文字通り精の化け物である。中には好色で知られるサキュバスを圧倒するほどの固体さえ存在するようだ。そんな化け物連中と俺が同じ種族になった――正確には既になっていた――実感は無いが、言われて見れば未だに満足する気配の無い身体や何度も何度も作られる精液と類似点は多い。
「まぁ…アタシもそろそろ余裕が無いからね…♪本番前の最後の前菜のつもりさ♪」
「程ほどにしておけよ」
さっきはその前菜で二度も搾り取られたのだ。例え、俺がベルの言う通りインキュバスになっていたとしても絞られ続ければどうなるか分からない。そもそも俺がインキュバスになっているという確証も無いのだ。これで「実は溜まった数か月分の性欲を発散してるだけでした」となったら、洒落にならない。
「ふふ…じゃあ、程ほどにする為にも…一発、濃いのをアタシの口に頼むよ♪」
そんな風に笑いつつ、そっと彼女の手が自分の後ろに回る。そのままそっとホックを外して、純白の布が俺の前からパサリと落ちていく。そして、その下から現れたのは夢にも見た薄褐色の綺麗な胸だ。丸いお椀型の美しいフォルムはブラを外して尚、崩れない。それどころか今までが窮屈だったといわんばかりにふるふると震えてその存在をアピールしていた。その上、その頂点に位置する鮮やかな桃色の乳首はピンと張って、オスの目を引く。はっきりと興奮の色合いを見せ付けられるようなその張りに俺の咽喉は再び唾液を嚥下した。
「うふふ…♪さっきもここに執着してたからもしかして…って思ったけど…そんなに胸が好きなのかい?」
「…うっせーよ」
からかうような彼女の言葉に強い羞恥を感じて、俺はそっと視線を逸らした。だけど、その内心は彼女にはお見通しだったらしい。クスクスと微笑ましいものを見たような笑い声が耳に飛び込んでくる。そんな音を煩わしいと思う一方、どうにも強く抵抗する事が出来ない。彼女の言葉が俺の本心に限りなく近いからだろうか。どうにも罰の悪さだけが先立って怒りのような感情は沸いて来なかった。
「それじゃあ…アンタの大好きなこの胸でたっぷり奉仕してあげるからねぇ♪」
「…おう」
まるでハニービーの蜂蜜のような甘い声でそっと彼女が囁く。それに短く返す俺の目の前でベルが膝を折った。まるで跪くようなそれに満足感を感じる一方で、視覚的に迫ってくる双丘に胸が高鳴る。それを必死で押し隠しながらも、どうにもベルにはバレバレだったようでクスリとまた小さな笑い声を上げられてしまった。
「…早くしろよ」
「はいはい♪まったく…堪え性の無い男だね♪」
からかうように言いつつも、ベルはそのまま身体を前に倒す。それだけで柔らかな双丘は形を変えて、ふるんと揺れた。だが、それに気を取られる暇も無く、彼女の胸が俺のムスコを覆う。それは、まだ覆っただけの段階だ。彼女の手は何も添えられてはいない。だが、指を飲み込むような乳肉に覆われて何も感じないほど俺のムスコは謙虚ではなかった。胸の谷間で感じる乳圧とも言うべき圧力を感じながら、その身を嬉しそうに震わせている。
「ふふ…♪もうこんなにビクビクして…これで動かしたらすぐ出ちゃうんじゃないのかい?」
彼女から向けられた言葉に俺は否定する要素を持たない。何せ俺が何を言うより正直に俺のムスコがびくびくと震え続けているのだ。自分で見ても堪え性の無いその姿は正直、情けない。だが、それだけ自分を罵ってもベルの胸の谷間から与えられる快感は無くならないのだ。流石に今のままで射精するようなものではないとは言え、このままぎゅっと押しつぶされればあっさりと絶頂まで押し上げられてしまうだろう。
「あんまり早く射精したら、お代わりだからね♪」
「うぉ…!!」
その言葉と同時にぎゅっとベルの胸が潰れる。両脇から寄せられた彼女の腕が胸の谷間に一片の隙間もない程、押し寄せたのだ。自然、胸の谷間に埋まるムスコはその圧力の中に閉じ込められてしまう。だが、それは決して苦痛ではなく、寧ろ吸い付くような肌の感覚をムスコ一杯に感じられて気持ち良い。亀頭もカリ首も肉茎も、殆ど埋まって彼女の胸を感じる感覚に思わず声を漏らしてしまった。
「あはは…♪じゃあ…だえひとうひゃぁ♪」
そして次にドロドロの唾液が胸の谷間に降って来る。それは口腔の中で俺のムスコを虐めたその粘液は未だ代わらないドロドロとした粘性を伴ってゆっくりと胸へと降りていっていた。そして、それは谷間の間に蠢く俺のムスコにも降りかかる。さっきも感じた淫熱を込められるような粘液がまたムスコを興奮させ、その身をさらに硬くさせた。だが、今回はそれだけではない。唾液が絡みつくのは男根だけでなく、興奮の所為でじっとり汗ばんだ胸にもだ。ドロドロでグチョグチョな粘液が胸の谷間に張り付いて、張り付くような感触と圧力をより強いものに変える。
「ふゅふ…♪あたひのなかでぴきゅぴくしてひゅぅ…♪」
「間抜けな顔を…しながら言うなっての…!!」
口をくっぱりと開き、舌を突き出した彼女の顔は間抜けと表現する他無い。だが、俺はその間抜けであるはずの顔にさえ強い欲情を感じていた。彼女の口腔内でどろどろと糸を引いて垂れ落ちる唾液が性的なモノを連想させるからだろうか。見ているだけで胸が高鳴って身体が熱くなっていく。勿論、ムスコから這い上がるゾクゾクとした感覚の影響も強いが、それに負けないくらい視覚的な情報が俺の胸を占めていた。
「ふふ…♪しょんなちゅよがってもぉ…ここはみょうドロドロぉ…♪」
その言葉を皮切りにゆっくりと彼女の腕が上下に動く。ぎゅっと締め付けるそれが動くと言う事は双丘の間にある圧力の掛かり方もまた変わるのだ。さっきとは少しだけ違う触れ方に慣れることも出来ない。その上、彼女は両手を常に交差するように逆に動かしているのだ。根元から亀頭まで全部、すべすべの胸にすりあわされるような感覚を味わって、我慢できる筈がなかった。
「おぉぉ…!」
ぎゅっと足を張って堪えようとするが、どうしても声が漏れ出てしまう。まだ緩やかに胸を擦り合わせているだけと言うのに、俺は強い快楽を感じていた。よっぽど欲求不満だったのか、或いはこれもインキュバスの能力なのか。その答えも出ないままにゅるにゅると唾液を潤滑油にする彼女の双丘に思考を剥ぎ取られていく。またも思考が快感で一杯になるような感覚に思わず腰が引けそうになるが、ぎゅっと俺のムスコを捕まえたベルの胸からは逃げることが出来ない。
「あぁ…っ!!」
「あはは…っ♪そんなに感じてる顔をされると…メス冥利に尽きるってもんだね…♪」
俺の股間で胸を擦り合わせながら、そっとベルが微笑む。喜色を強く浮かべたそれは見ているだけでも、心が温かくなるような穏やかで…そして淫らな笑みだろう。だが、その笑顔と共に漏らされた言葉がどうにも気に入らない。怒っている訳ではないが、そんな風に言われると男って奴はどうしても意地を張りたくなってしまうのだ。俺も勿論、例外ではなく、きゅっと顔に力を込めて、表情を押し留めようとする。
「くぅ…!!」
だけど、それはあっという間に決壊してしまう。彼女の胸の感触はそれだけ甘美で抵抗できないものであったのだ。快楽の総量だけで言えば、さっきのフェラの方がよっぽど気持ち良いだろう。だが、その豊満な胸はどうしても甘えたくなってしまい、抵抗と言う考えが薄れてしまう。正直、そんな自分が情けないものの、情けない俺さえ受け入れてくれる柔らかい感触にまた声が漏れ出た。
「そんな我慢しなくても良いんだよ…♪口の端から涎漏らして…また射精しな♪」
その声と共に彼女の胸が上下にではなく、前後に揺れ始める。勿論、俺のムスコも前後に圧力が掛かり、その谷間で翻弄された。吸い付くすべすべの肌で揺らされる感覚はカリ首を含む亀頭を巻き込でいた。そして、その柔らかさで密着した乳肉は、溝を擦るように前後に移動し、敏感な亀頭から強い悦楽を俺に流し込んでくる。それにぎゅっと握り拳を震わせて堪えるが、その効果は芳しくない。
「ほぉらぁ…♪ぐるぐるってオチンポ回されるの気持ち良いだろう…♪ネチャネチャなんだから…当然だよねぇ♪」
「うぁぁ…!!」
彼女の言う通り、前後に擦られる感覚は上下に擦られるのとはまた違った形で気持ち良かった。ただでさえふわふわでぐちょぐちょの肉が亀頭を中心にぐるぐると動くのだから当然だろう。その甘くて蕩けるような快感をもっと味わおうと俺の腰がビクビクと痙攣するくらいだ。二度の射精を経ているので少しだけ冷静であるとは言え、このまま攻められれば三度目の射精はそう遠い話ではないだろう。
「ふふ…♪こう言う事言ったらきっと怒るだろうけどさ…今のアンタ…とっても可愛いよ…♪…気に入ってる男だから…そう思うのかもしれないけどさ♪」
告白紛いの事を言いつつ、再びベルは谷間を上下に動かす。まるで胸から注ぎ込む快楽に慣れさせまいとするかのようだ。勿論、性の方面で魔物娘に失敗などあろうはずもなく、俺は変わった快楽に翻弄させる。ようやく慣れ始めたと思ったところに動きを変えられ、俺は這い上がる快感にぎゅっと歯を噛み締めた。その歯の間からドロドロと涎が落ちて、下腹部を汚すが、そんな事を気にしている余裕さえ今の俺は失っている。
「またそんな必死な顔をして…♪そんな顔をされると…もっと気持ち良くしてやりたくなるじゃないか…♪」
だが、その顔がいけなかったらしい。その声に強い興奮を灯しながら、彼女の胸が再び前後運動に変わる。だが、今度はただ前後しているだけではない。ピンと立った乳首を亀頭に沿わせるように形を変えた擦り方だ。
「うぁぁぁぁっ!」
何処か硬いはずなのに柔らかい。そんな形容しがたい感覚の乳首がゾリゾリと俺の亀頭と触れ合う。真っ赤に晴れ上がった亀頭はそれを鮮烈な快楽として受け止め、きゅっと玉を持ち上げた。背筋にもゾクゾクとはっきりとした快感が走って止まらない。まるで無理矢理、射精への階段を上らせられるような強い快感に叫び声をあげながら俺は四肢を強張らせた。
「ふふふ…♪気持ち良いんだね…♪アタシも…乳首ビリビリで気持ち良いよ…っ♪」
そんな俺の下でさらに陶酔の色を濃くしたベルが激しく乳首で亀頭を擦り上げる。さっきまでまるで甘やかすような熱と柔らかさの中にあった亀頭はそれに耐え切る事が出来ない。びくびくとその身を震わせて白濁した先走りを漏らす。そんな亀頭の下では相変わらず、ドロドロでネチョネチョとした淫らな熱に包まれているのだ。上と下でまったく違う快感を注ぎ込まれるそれはさっきのディープスロートにも似ていたが、その落差は今回の方が激しい。上から下から注ぎ込まれる快感を従順にどっちも受け取ってしまう俺は意識がどっちつかずのまま翻弄され、射精への階段を一気に駆け上がっていく。
「じゃあ…♪次は…カリ首をゾリゾリぃ…っ♪」
そして、俺をさらに追い立てるように彼女の乳首が俺のカリ首のすぐ下を撫で回す。独特の硬さを持つ乳首がズリズリと敏感な反り返しを這い回り、視界が一瞬、真っ白に染まった。背筋が跳ね、寒気すら混ざった感覚が背中の中を這いまわる。ギリギリ射精までには至らなかったものの、もう少し歯を食いしばるのが遅ければ決壊してしまっていたかもしれない。だが、堪えたといっても快楽が無くなった訳ではなく、じりじりと降り積もる快感はそう遠くない内に俺を射精へと導くだろう。
「これで母乳でも出ればもっとえっちなんだけどねぇ…♪」
余裕のまるで無い俺の下でマイペースにベルがそんな事を呟いた。それに突っ込もうにもぐにぐにとぬるぬるとした二つの快感の前では、言葉ではなく呻き声しか出てこない。そんな意味を成さない言葉の羅列に何かの確信を強めたのだろうか。欲情を強くして、囁くようにゆっくりと口を開いた。
「ふふ…♪まぁ…母乳はアンタに孕ませてもらえば幾らでも出るから…後のお楽しみにとっておくよ♪」
本気なのかそれとも冗談なのか。嬉しそうに笑う彼女の姿からはどっちとも取る事が出来る。だが、サラマンダーである彼女が今、これだけ欲情していると言う事は俺はベルに認められたのだろう。そう思うと…冗談めかしている本気である可能性が高いような気がした。
―まぁ…コイツらしい…っちゃらしい…か…な…。
快楽に鈍る思考の中でそんな事を思う。変に女としての自信が無いベルはこういう事は冗談めかしてでしか言えないのだろう。そんな彼女にふつふつと暖かいモノが胸の奥から湧き出てくるが、今はそれは重要ではない。それより、何か言ってやるべきだろうと言葉を捜すが、ビリビリと走る電流に邪魔されて上手く思考をまとめることが出来なかった。
「でも…意外と我慢するねぇ…♪正直…瞬殺だと思ってたんだけど…中々、根性あるじゃないか♪」
そんな俺の心境を知ってか知らずか。ずちゅずちゅと擦り合わせながら、ベルがそっと微笑む。褒めるようなその声音に少しだけ男として満足するものの、パイズリが始まってまだ五分も経っていない。そんな短時間でもう射精してしまいそうになっていると言うのだから、あまり褒められている気がしない。とは言え、からかうような色合いは無かったので本当に褒めているつもりなのだろう。
「だけど…ぉ…♪そろそろ…アタシが我慢できなくなっちゃってね…♪トドメと行こうじゃないか♪」
そう言いながら、彼女の口がくっぱりと開く。相変わらずドロドロで糸を引く淫らな粘膜に思わずゴクリと咽喉が鳴ってしまう。そして…そんな俺の目の前で開かれた口がムスコへと近づいていき――亀頭を丸ごと、その中へと飲み込んだ。
「ぐぁ…あああっっ」
「ぢゅるるるるるるっ♪」
ついさっき嫌と言う程、味わった粘膜の感覚。それはまるで色褪せることなく、俺を攻め立ててくる。反り返ったカリ首を上手に唇の内側で扱く様な彼女の口腔の中に敏感な亀頭が入り込んでいるのだ。勿論、ただ、入っているだけでなく、淫らな音を聞かせるようにかき鳴らし、亀頭を吸われている。勿論、ドロドロの唾液に塗れた頬の粘膜と舌の粘膜も俺の亀頭をまるで撫で回すかのように触れて、腰が砕けそうな激しい快感を湧き上がらせた。
「ぢゅるっくちゅぅぅっ♪」
しかし、そんな激しい快感とは裏腹に、根元は相変わらず彼女の胸に包まれていてふわふわと溶かすような快感が這い上がっているのだ。亀頭から感じる激しい感覚と、肉茎から感じる蕩けるような甘い感覚。それらが腰の奥でガツガツとぶつかりあって、どちらも譲らない。勿論、それを感じさせられている俺はどちらにも翻弄されるように身体を震わせ、その思考を桃色に染め上げた。
「う…あぁ……ああぁぁ!」
そんな俺に出来るのは呻くように声を漏らすことと、ガクガクと下半身を震わせることだけだ。相反する二つの快感がぶつかり合って生まれる感覚は強すぎて、本能的に腰が逃げようとさえしている。しかし、がっちりと俺を捕まえたベルは本当の美味しそうにムスコを頬張り続けて、逃がさない。それどころか、俺に与える快感をもっと激しいものにしようとしているように、亀頭の先にある鈴口をグリグリと穿った。
「ふゅふ♪ちゅっ♪んんんっ♪」
精液が噴出す場所でもある敏感な口を穿られるのは、まるで射精を強要されているような激しい快感すら感じる。ビリビリとゾクゾクと。電流なのか寒気なのか。どちらとも言えるようなその快感は根元から玉の方へと降りて、暴れまわる。きゅっと跳ね上がった玉の中が疼き、今にも射精してしまいだ。いや…それ以前に…もう…我慢…がぁ…!!
「っ♪」
―ッッッ!!!
快楽に疼く思考を必死に繋ぎとめようとした瞬間、今までに無いはっきりとした感覚が亀頭に襲いかかる。舌よりももっとはっきりしていて、硬いその感覚は俺の我慢に大穴を開けた。そして、ムスコから注がれる快感がそこから一気に溢れ出し、俺を射精へと導いていく。もはや我慢なんて考える暇も無く、視界を真っ白に染めた俺は、より奥で射精しようとする本能的な動きのまま彼女の胸を思いっきり突き刺した。
「ふゅふぅぅぅっっ♪」
そして始まる本日三度目の射精。だが、それでもその勢いと量は一度目とまるで遜色ない。まるで精液全部を吐き出そうとするかのように激しく、長く続いていく。勿論、始まった射精を堪えられる余裕など俺には無く、寄せては返す絶頂の波に腰を震わせていた。
「ちゅるぅ…♪く…ぅ…んぐぅ…ぅ♪」
そんな俺からもっと精液を搾ろうとしているかのように彼女の胸は激しく動いた。前後上下と揺れ動き続けるそれに俺の肉茎はまるで形を失ったかのように消えていく。勿論、それは本当に消えているわけではないのだろう。だが、境界線が薄れ、彼女の胸の感覚だけを感じる器官に成り下がったそこは殆ど感覚は薄れていた。ただ、触覚もなく、彼女の胸から与えられる甘美な快感だけに埋め尽くされている。何処か安心する暖かなそれに身を委ねたくなるくらいだ。しかし、亀頭の先から這い上がる鮮烈な快感がそれを許さず、彼女の奥へ奥へと子種汁を撃ち出し続けている。
「…う…おぉ………」
そのままさっきと同じく数分ほど。ようやく射精が落ち着いた俺はぐったりと背筋を前倒しにするようにして力尽きていた。今までも射精の後は余力がないなどと表現してきたが…今度こそ本当に力一つ入らない。まるで魂ごと魅了するような甘く激しい絶頂が今も俺の身体を這い回って止まらないのだ。俺の力の全部を奪いつくそうとするその痺れに抵抗することさえ考えられず、俺は彼女に覆いかぶさるようにして倒れこもうとする。
「じゅるるるるるるっ♪」
だが、それさえも彼女は許してはくれない。その頬をすぼませて精管に残る精液を一滴残らず吸い出そうとするのだ。それに身体が硬直して、倒れこもうにも倒れ込めない。身体はもう本格的に休息を求めているのに、それさえも許してもらえない感覚に理不尽ささえ感じる。だが、今の俺は彼女に文句一つ言う事も出来ず、ベルから与えられる快感に反応を示すだけの木偶でしかなかった。
「ちゅ…ぷぁぁっ♪」
そんな無抵抗な俺から精液を一滴残らず引きずり出して、ベルはようやくムスコから口を離した。よっぽど激しい刺激だったのだろう。また真っ赤に晴れ上がってしまった亀頭が何処か痛々しい。たっぷりと注がれた唾液からはかなりの熱が篭っていて、湯気が見えるような気さえする。しかし、それだけ虐められたにも拘らず、俺のムスコは俺とは別の意思で動いているのか、しっかりと硬くなったまま天を向いている。
「味良し…♪匂い良し…♪濃さ良し…♪量もたっぷり…♪うん…100点をあげよう♪」
「そりゃ…どう…も…」
途切れ途切れに言葉を漏らすのが精一杯な俺とは違い、ベルはとても幸せそうに頬を蕩けさせている。勿論、その身体には元気が有り余っているのだろう。嬉しそうに歪める顔の向こうにはこれから先の『行為』に対する強い期待が見え隠れしていた。そんなベルを見てるとこれから先、どれくらい搾り取られるのかと不安にさえなってしまう。
―…まさか腎虚で死ぬようなことは無いと思うが……。
今の俺は人間としては異常としか言う他無いくらいの回復力を誇っているのだ。此処まで来ると、間違いなく俺はインキュバスに変化していると言えるだろう。そして、インキュバスが腎虚で死んだという話なんて一度も聞いた事が無い。実際、今の俺も身体そのものが辛いのではなく、ソコから発生する快楽に翻弄されて神経が疲れている側面が強いのだ。例え、これから一晩中、絞られ続けたとしても身体だけは無事だろう。
「じゃあ…そろそろ…本日の主菜に行こうと思うんだけど…」
「……好きにしろよ。ココまで来て逃げたりはしないって」
その瞳に少しだけ怯えるような色を浮かべさせたベルにきっぱりと言い放ってやる。何も考えず襲い掛かってこればまだマシだって言うのに、この期に及んでまだ変に気を使うとは。それだけ俺に対する罪悪感が消えていないと言う事なのだろう。勿論、さっきの決闘紛いである程度、解消したとは思っているが、その全部がなくなった訳じゃないのだ。しかし、まぁ、その辺は『これから』幾らでも時間が有る。折角、インキュバスになっているのに気付いて底無しの精力も手に入れたことだし、今はその魅力的な肢体をじっくりと楽しむことだけ考えよう。
「とは言っても身体はまだ動かないから…もうちょっと休憩をだな」
「ん?何か言ったかい?」
「……いや、何でも」
明らかに聞こえているはずの距離なのに、そう返されると何も言えなくなってしまう。そもそも我慢しろと言って我慢できるような種族ではないのだ。そもそも三度、口に射精しただけで彼女自身にはほとんどと言って良い程、触れていない。口からの精の摂取で満足するタイプも世の中にはいるらしいが、残念ながらサラマンダーはそうではないのだ。勿論、あの戦いからベルもまた強く欲情しているし、それは今もまるで収まってはいない。それは彼女の背中の炎を見れば良く分かる。
「それじゃあ…っと」
低い仮設住宅の天井くらいなら届きそうな激しい炎を吹き上がらせながら、ベルはそっと俺の身体を仰向けにしようとしている。まるで介護されるようなそれに若干の気恥ずかしさを覚えるが、今の俺は本当に指一本動かせない。文字通りの意味で彼女に身体を預けるしかないのだ。
「ふふ…♪じゃあ…本番に行くよ…♪」
宣言するようにそう告げながら、彼女がそっと立ち上がった。今まではずっと跪くような姿勢だっただけに分からなかったが、彼女の股間を隠す黒い薄布はぐちょぐちょになっている。既に衣服――と表現して良いのかわからないが、一応、下に下着は身に着けているはずだ――としての役割を果たしていないそれはねとりと糸を引く粘液を床に垂れ落としていた。本来は艶やかな色であったはずの黒はもう完全に変色して形容しがたい色に染まっている。それら彼女の興奮の証が明確な視覚的情報として飛び込んできた俺の胸は強く高鳴り、疼いた。再び奥から沸き上がってくる熱に熱い吐息を吐きながら、俺はまるで縫い付けられたかのように視線をソコへと送り続けている。
―そして…俺の目の前でベルの指が動いて……。
無骨そうな外見とは裏腹にとても器用に動く彼女の指が横の紐をそっと解いた。それだけで抑えるものが無くなったベルの薄布がばさりと床に落ちる。だけど…その下には予想したような下着は無かった。あるのは美しい薄褐色の肌と、焦げた赤の薄い茂み。そして、くっぱりと身を広げる淫らな陰唇だけだ。
「どう…かな?アタシの…変じゃない…?」
―不安そうにベルが言うが、その言葉の大半は俺の耳には入っていなかった。
何せソコは俺が今まで見た中で一番、淫らな形をしていたのだ。興奮の所為か粘膜を開くようにしてひくつく陰唇は、その度に粘液を垂れ流している。その間から少しだけ見える粘膜は赤に近いくらい鮮やかなピンク色だ。まるで誰一人として触ったことが無いんじゃないかと思うくらい鮮やかなその粘膜に目を惹かれそうになってしまう。だが、それ以上に俺の目を引くのはその中心にある小さな穴だ。まるでオスを誘うように蠢くそこに俺の心は完全に奪われてしまった。
「……うぅ…何か言ってくれよ…流石に…ちょっと不安になるだろう…?」
困ったような彼女の声が届いて、俺はようやく正気に戻る。弾かれるように彼女の顔を見つめるが、ソコには不安そうに肩を落とす姿があった。それでいてはっきりとその目に欲情や期待を浮かばせているのだから性質が悪い。相反する二つの様子に強いギャップを感じて、何時も以上に魅力的に見えてしまうのだ。
「…少しエロい形してると思うけど、変じぇねぇよ。…つーか、こんな恥ずかしい事言わせんな…」
恥ずかしすぎて顔から火が出そうだが、その言葉に彼女の顔が明るくなった。それを見るだけで、まぁ、価値はあったかもしれないと思ってしまう。そんな自分に甘いとは思うものの、明るい彼女の顔は俺にとってそれだけ魅力的だ。
「仕方ないじゃない。やっぱり女としちゃ自分の形は気になるってもんだよ。特に…ココでオスを気持ち良くするんだから尚更ね♪男が自分のモノのサイズを気にするのと似たようなもんさ♪」
「そう言うもんかなぁ…」
言われて見れば納得できる気もするが、凄い詭弁を聞かされている感も確かにする。そもそも人間の性器はセックスアピールとしての機能を殆ど失っているのだ。変わりにそれを行っているのが二足歩行でも視界に入りやすい胸であり、唇である。まぁ、聞きかじりの知識では有るが、性器ではなく胸の大きさにコンプレックスを持つ人間もいる状況を省みるにそっちの方が正しい気もするのだ。
「まぁ…アタシとしちゃ…どんなサイズでもアンタのであればそれで十分だけどね♪」
「…恥ずかしい事言うなっての」
告白めいた…と言うか告白そのものの言葉に思わず目を背けてしまう。本当は俺だって、何かしら返した方が良いのは気付いているのだ。しかし、このシチュエーションで何かを言っても状況に流されたようにしか聞こえないだろう。それならば…もう少し先でも良いんじゃないだろうか。勿論、そこに羞恥から逃げるような感情が有るのも否定しないが、どうせなら腰を据えてしっかりと彼女に伝えたい。
「そんな真っ赤になって照れちゃってさぁ…♪そんな可愛い顔をされると我慢できなくなるって言っただろう?」
「我慢する気もねぇ癖に何を今更…」
「あは…♪それもそうだね。寧ろ…焦らされ続けて今もちょっとヤバいし…♪」
陶酔を色濃く浮かべながら、そっと彼女は近づいた。そのまますっと俺の下腹部に腰を降ろしてくる。その度に視界の端で開いたり閉じたりして見え隠れする粘膜が妙に艶かしい。思わず咽喉を鳴らしながら、俺はベルが跨るのを見続けていた。そんな俺にそっと微笑みながら、ベルは根元を押さえるようにムスコを摘む。そして、半開きの陰唇を開き、亀頭をこすり付けるように腰を動かす。
「うぁぁ…っ♪」
「くぅっ!!」
それは二人で思わず呻き声をあげてしまうくらい気持ちの良い行為だった。もう限界なのかドロドロになっている粘膜は口腔とは比べ物にならないくらい熱い。触れているだけで火傷してしまいそうな激しい熱と唾液とは比べ物なら無いくらい粘性の高い粘膜に包まれ、ビリビリとした感覚を走らせる。それはそれ単体で射精するような激しいものではなかったが、前戯としては十二分なくらい俺の身体に火を点けた。
「ふふ…♪そんなに…ひぅ…うめいちゃって…さぁ♪」
「そっちだって…同じ…だろうが……!!」
そんな風に強がりながら、彼女の腰はにちゅにちゅと音を立てて動く。まるで唾液の上から愛液を上書きする様なソレにじりじりと欲求不満が溜まっていった。既に俺の玉袋の中には精液が補充されて解放の瞬間を今か今かと待ち望んでいる。その上、ようやく本番だという所でこんな風に焦らされれば当然だろう。怒りを覚える程ではないにせよ、強い焦燥感を胸に灯した俺は口を開いた。
「さっさと…しないのかよ…」
「デリカシーの無い…んっ♪男だね…♪一応、アタシは初めて…くぅ…んっ♪なんだよ。少しくらいこわがったっておかしくはないだろう?」
「そりゃ…そうだけど…さ」
しかし、魔物娘が初体験とは言え怖がるものだろうか。勿論、一律で何かを語るのは危険な思想では有るが、余りそうは思えない。寧ろサラマンダーは火が点いたら一直線な魔物娘なのだ。こうして焦らされること自体、あまり想像出来ない事だろう。なら、何かあるのかと首を傾げてみるが、特に思いつく要素は無かった。
「…ふぅ…コイツに女心を求めたアタシが馬鹿だったのかもね…」
そんな俺の耳にしみじみとしたベルの声が届く。本来は抑えるつもりだったのだろう。ぽつりと漏らされたそれは今までの彼女の物よりも遥かに小さい。普段が少しばかり大きめなので、あくまで相対的なものであり、普通に俺の耳にも届く程度ではあったが、彼女にしては珍しい音量だ。恐らく独り言のつもりだったのだろう。しかし、その事に気付いても、その言葉の意味までは俺には理解できなかった。
「…まぁ…良いかな。…それじゃあ…今度こそ本当に挿入れるよ」
諦めたように頭を振った後、宣言するようにベルが言った。ソレに何か反応する暇もなく、彼女の腰がゆっくりと降りていく。勿論、その先では既に矛先を定められたムスコが反り返っていた。彼女の手によって微調整されたムスコはそのままくちゅりと陰唇を分け入り、文字通り彼女の処女地に頭を埋め始める。元から身体を鍛えている所為だろうか。その締め付けはきつく、激しい。入り口の時点で亀頭が四方八方から締めつけられる感覚に背筋にゾクゾクとした痺れを感じるくらいだ。
「くぅぅぅっ♪」
そんな入り口を押し広げるように男根は奥へ奥へと入り込んでいく。それを誘う彼女が苦悶とも喘ぎ声とも似つかない声をあげた。そして、ベルはそのまま腰をゆっくりと引き落としていく。だが、見せ付けるように股を開きつつ、苦悶するような姿は何処か硬い。やっぱり初めてだから緊張しているのだろうか。俺のオスを受け入れる腰の動きも遅々としたもので、あまり芳しいとは言えない。
―…とは言っても…なぁ。
動くのは口くらいなもので未だ身体には強い脱力感が襲っている。指一本も動かせないと言う程ではないが、それでも身体が本調子ではないのは確かだ。腕を動かしても殆どマトモに力は入らないだろうし、細かい作業など持っての他だろう。腕さえ動くのであれば、ぎゅっと抱き締めてやるのも悪くは無い。上体を起こせるのであれば緊張した胸を嘗め回しても良い。だけど、今の俺にはその両方ともが遠い代物だった。ならば…この動く口だけで何か出来る事を考えるしかないだろう。
―言葉で何か…何か出来る事………か…。
そこまで考えてふと一つだけ思いついた。だが、それはあまりにも恥ずかしい台詞である。そもそも、本来であればこんなシチュエーションで言うべき言葉ではない。だが、俺の胸にふと湧き上がったそれは強い存在感を示して、ほかの考えに目を向けさせない。ならば…その言葉を口にするしかないだろう。そんな風に結論付けて、俺はそっと口を開いた。
「…ベル」
「何…さ…今…余裕…無いんだからね…♪」
「……好きだ。愛してる」
「……ふぇ…ぇ…?」
―そう言った瞬間のベルの顔は見物だった。
ワーシープが無理矢理、起こされたってそんな顔はしないだろう。そう思うくらい間抜けで唖然とした顔だった。口を半開きになって、目をぱちくりと開閉させている。だが、その顔も長くは続かない。まるで今までのそれが嘘であったようにストンと落ちた腰に快楽に染まった叫び声を上げて、首を左右に振るう。半開きになった口から唾液を垂れ流しながら、ぷるぷると震える姿は、まるで何かに堪えるようだ。だが、その瞳の焦点は合っておらず、荒れ狂う快感にでも翻弄されているのかあっちへこっちへと視線が飛んでいる。
「ふゅぁぁぁぁっ♪」
「く…あぁぁっ!!」
そんな彼女の膣肉はさっきまでが嘘のように柔らかく俺を包んでくれている。勿論、それは人間の女性に比べればよっぽどキツイ締め付けだ。だが、解れた肉がじゅるじゅると俺のムスコへと絡み付いてくる。まるでその中にたっぷりと溜め込んだ熱を流し込もうとするような絡みつきは、ゾリゾリと突起を持って男根を虐めた。その身に浮かばせる血管一つ一つさえ丁寧に舐め上げるような突起の動きに俺の口からも声が漏れる。
―しかも…それだけじゃなくて……!!
奥まで入り込んだムスコを熱烈に歓迎してくれるのは何も愛液塗れの突起だけではない。肉厚でぽってりとした唇のような感覚が俺の亀頭を掴んでいる。くにゅくにゅと密着した亀頭を挟むように蠢くそれは子宮口なのだろう。しかし、初めてであるというのにその肉厚の唇はきゅっと亀頭、特に鈴口周辺を包んで中々、離さない。まるで小さな唇で吸い付かれているような感覚に俺の思考がまた一歩、快感へと傾く。
「おきゅっ♪おきゅぅっ♪ふわぁっ♪コツンってぇぇっ♪」
そんな俺の上でベルは今まで聴いたこと無いくらい甘い叫び声をあげている。そこにはさっきのような苦悶の色は混じっていない。緊張を解したのが良かったのだろうか。混じり気無しの快楽の声に俺の興奮も加速する。そして勿論、その興奮が最も如実に現れるムスコはぴくぴくと反応を示し、ベルのまだ不慣れな膣肉を揺らした。
「んぁぁっ♪揺れてぇっ♪ぴくぴうしてりゅぅ…っ♪」
しかし、今のベルはそれさえも快感に感じてしまうのか舌足らずな喘ぎ声を漏らす。それは人間相手では決して見られない反応だろう。どれだけ性交に慣れている女であろうとここまでは感じまい。だが、魔物娘である彼女は反応でさえ男を誘うのか、はっきりと快楽を感じている仕草を示してくれる。それが男としての、いや、オスとしての興奮を掻きたて、俺の腰は知らずに動き始めていた。無論、脱力している身体はまだ上手く動かず、左右に小さく揺れるようなものである。だが、それでもベルは大きな快楽を感じているのか、ふるふると頭を振りながら蕩けきった顔を晒してくれた。
「ふぁぁっ♪や…っぁ♪動くのやなのぉ…っ♪これ…これおかしいっ♪おかしきゅなるからぁっ♪」
彼女が必死にそう言うが、快感に蕩けた顔ではまるで説得力が無い。顔だけでなくその腰も俺を受け入れるようにゆっくりとではあるが動いているのだ。俺と逆の方向へと進むような腰の動きにベルの膣肉の中でムスコが暴れる。右へ左へと愛液塗れの粘膜に押し付けられた男根からビリビリとした感覚が止まらない。そして、それは彼女も同じなのだろう。お互いの腰が揺れ動く度に甘い嬌声を漏らして、膣肉そのものをビクビクと痙攣させる。時折、ぎゅっと締まる感覚は彼女が感じている何よりの証拠だろう。
―くぅ…っ!!こんなに…やばい…なんて…!!
肉棒から湧き上がるドロドロの感触は勿論、気持ち良い。ムスコに巻きついて離れない愛液とそれを塗すような舌のような突起の数々。時折、ぎゅっと締まる膣肉は丁度良いアクセントとなって快楽を慣れさせない。右へ左へと移動するたびに突起が絡みつく反応も良く、まるで待ち構えられているようにさえ感じる。単純に快楽と言う面で図るのであれば、それはさっきのパイズリよりも遥かに気持ち良い。もっと言うのであれば今まで味わってきたどんな快楽よりも、だ。
「はは…!こんなに感じておいて…説得力無いぞ…!」
それでも言葉を漏らせるのは精神的な余裕のお陰だろう。ついさっきまで彼女が勝利者であり、攻める側であった。だけど、今の立場は逆転し、俺が攻める側になっている。それが精神的な余裕となって快楽への防波堤になっていた。しかし、それは余裕がなくなったとき、俺はあっさりと快楽に飲み込まれると言う事に他ならない。折角、主導権を握れたので何とか維持しようと必死に思考を回すが、快楽で頭が一杯になるのを留めるので精一杯だった。
「しかたにゃ…いっ♪こんなぁ…♪こんにゃ気持ち良いの知らないぃっ♪」
そんな俺の上でベルが蕩けた顔で言った。恐らくもう殆ど力が入っていないのだろう。左右に揺れる身体には軸が見えず、ふらふらと揺れている。俺の下腹部に置いて、身体を支えていた彼女の腕もふるふると震えて今にも崩れ落ちそうだ。それでも倒れこまない辺りは流石、武術に秀でたサラマンダーと言ったところだろう。だが、それもそう長く続くものではない。それなら…変に我慢させるよりも一気に攻め立てたほうが良いんじゃないだろうか。
「じゃあ…もっと気持ち良いのを教えてやるよ…!!」
そう言い放ちながら、俺の腰が再び動き出す。珍しく本能と意思が手を取り合ったその動きは、はっきりとした力を灯し、彼女の身体を上下に揺らせる。それはまだまだ弱弱しいものではあったが、ベルの柔らかい乳肉はふるふると揺れて、オスの目を誘った。自分の目の前で揺れる極上の果実を見ながら、俺はそっと彼女の手を引く。
「ひぁぁっ♪ん…っ♪きゅぅぅぅぅっ♪」
倒れこむ身体に内応するかのように、彼女の膣肉がぎゅっと締まった。けれど、それは今までに無い強さを持っている。膣肉に埋められた肉棒が飲み込まれるのではないかと思うほどの締め付けだったのだ。しかし、それだけでは終わらない。たっぷりとオマンコに着いた肉襞の一本一本から震えて、ぶるぶるとムスコを刺激するのだ。今までに無いくらい密着した状態でそんな風に震えられて、我慢など出来るはずも無い。視界が瞬き、白と黒に染まる。食いしばった歯からは苦悶にも似た声が出るが、勿論、苦しい訳ではなく快楽の所為だ。
「うあぁ…!!」
必死で堪える俺にトドメを誘うするかのようにきゅっと子宮口が降りてくる。さっきからコツコツと叩くそれはスルスルと亀頭の方へと落ち、まるで形を覚えこむようにきゅっと締まった。密着するのではなくオマンコと同じく締まる感覚に小さく呻いた瞬間、それは鈴口からを吸い上げるように収縮する。まるで何かを欲しがっているような動きに俺は耐え切れず、腰をガクガクと揺らしてしまった。
「んきゅぅぅっ♪や…やぁぁっ♪やら…そんな揺らしちゃま、またぁぁっ♪」
けれど、俺よりも激しいのが彼女だ。その長身で肉付きの良い身体を俺の目の前でブルブルと震えさせている。まるで凍えているような激しいソレに少しだけ心配になってしまうが、彼女の顔は興奮で真っ赤に染まっていた。ぎゅっと食いしばった歯の向こうから必死に俺を留めようとする表情はさっきよりも快感でドロドロで、涙さえ浮かべ始めている。そんな彼女にどうしても強く性欲を掻きたてられ、俺の腰は激しく、そして強く彼女のオマンコを抉った。
「んぁぁぁっっ♪イきゅうぅっ♪しょんなのまたイッちゃうぅっ♪」
それにまた激しい反応を示し、彼女の背筋が揺れた。ぎゅっと目を瞑って、快感に堪えるような姿は見ているだけでどうしても意地悪したくなってしまう。既に機能を殆ど果たしていない思考はその欲求のまま、震えるその背筋にそっと伸びた手を延ばした。そのまま興奮で珠のような汗を弾けさせる彼女の背筋をつぅぅっと触れるか触れないかくらいの距離で動き、彼女の身体を跳ねさせる。彼女の言葉通り、またイっているのか、ぎゅっとベルのオマンコが収縮し、俺の精液を搾ろうと蠢いてきた。密着する子宮口からもどぷどぷと愛液を溢れ出せ、燃えるような熱い感覚がムスコ全体に広がり、さらに興奮が高まる。
「ふぁぁぁ…♪んっ…きゅぅぅっ…♪」
そんな甘い声を漏らしてぎゅっと俺の身体に抱きつく姿は普段からは想像も出来ないくらい可愛らしい。初めて味わう膣肉での絶頂に翻弄されているのだろうか。腰をガクガクと揺らせているにも拘らず、俺から離れたくないようにとしがみつくような姿は何処か迷子の子供を髣髴とさせる。
「ひゅぅ…っ♪馬鹿ぁぁぁっ♪変にゃこと言うから…あたひ…イキッぱなしになったぁぁっ♪」
しかし、それでも慣れつつあるのかはっきりと意思を込めて、彼女の口から声が漏れた。それはまだまだ快楽に支配されたものではあるものの、余裕のようなものが出始めている。それは魔物娘の高い性への適応能力が現れたからだろう。それに強い感心のような感情を抱いた瞬間、離さないように抱きしめてくる膣に俺の脳髄がジクジクと疼いた。余裕の出てきた彼女とは裏腹にさっきからずっとイキっぱなしになっているオマンコは情熱的に抱き締めてきて、俺の精液を強請ろうとその震えを激しいものにしていく。
「おまんこぉっ♪初めてのせっくしゅでおまんこ壊れたぁぁっ♪しぇきにん…取れぇっ♪」
甘えるように腰を振りながら、ベルは俺の胸板に頭をグリグリと押し付けた。その度に彼女の頭に浮かぶ汗が弾けて、魔力の光をキラキラと反射する。何処か幻想的な雰囲気とは別に、ベルの身体からさっき以上のメスの匂いが吹き上がっていた。まるで部屋中を飲み込もうとするくらい発情したメスの香りは強く、間近で嗅ぐ俺の僅かな理性を完全に吹き飛ばす。
「あぁっ!」
残った本能でその『責任』を取ろうと、俺の左手が彼女の腰に伸びる。そのままベルを上から押さえつけるように柔らかな尻たぶをぎゅっと掴んで、ムスコ側へと引きつけた。無論、腰の方もそれに合わせて、打ち付けるように跳ね上がる。それは初めての頃からは想像も出来ない力強い抽送だ。彼女の身体を浮かせるほどではないが、中腹から一気に子宮口を目指して這い上がる男根は今までに無い勢いでぶつかり、そして激しい快感を二人に生み出している。
「んやぁぁっ♪しょんなお口虐めちゃ馬鹿になるぅっ♪しぇっくすしか考えられない馬鹿になるよぉっ♪」
「なれ…よ…!!責任…取ってやるから…!一生、面倒見てやるから…!!」
既に快楽に蕩けきった俺の脳ではその言葉の重大性が理解できない。だが、それでも本能が彼女がそれを求めていると教えてくれる。それは勿論、物理的なものではなく、心理的な拠り所だ。ずっと一人で生きてきて、誰にも頼れなかったこのサラマンダーに落ち着ける場所を与えてやれと本能は俺に言葉を紡がせる。
「一生…こうやってセックスしてやる…!射精しまくって子宮の中まで俺の精液で一杯にしてやるから…!!」
「馬鹿ぁぁぁっ♪あたひ…しょんあ事言われたら…本当に我慢出来にゃいぃっ♪」
「我慢なんてすんなよ!お前はその肉片の一片まで俺の女なんだからな…!俺の子を孕むメスなんだ!今更、逃げようったって逃がさねぇよ!!一生、その身体中、犯し尽くして…ぇ!!」
そこまで言った瞬間、強烈な射精衝動が込み上げてきた。もう身体は限界だったのだろう。精神力で誤魔化すには余りにも彼女の肢体は魅力的過ぎた。今も尚、ぐちゅぐちゅと愛液の音をかき鳴らしながら、震える彼女の肉襞は亀頭やカリ首を洗うように擦って激しい快楽を生み出している。正直、ここまで持ったのが不思議なくらいだ。しかし、それでも最後の言葉だけはしっかりと伝えようと猛るムスコを必死に抑える。
「種付けして…俺の…嫁…にぃ…!!」
そこまで言った瞬間、ゴツンと子宮口と亀頭の先がぶつかり…そして俺の我慢が決壊した。既に三度、経験したはずのそれは今まで以上の激しさを持って俺の精管を這い上がる。白濁したオスの欲望が膨れ上がった亀頭の先からびゅるびゅると子宮口を目指して放たれた。まるで今まで堪え続けていた全てを一気に吐き出そうとするかのようにその精液の勢いは激しく、絶頂もまた高い。彼女の身体を受け止める俺の身体は腰から這い上がる電撃のような強いそれに震えながらも、自分のメスだけは手放さないようにぎゅっと彼女の背筋を抱き締める。
「ふああああああああっ♪」
そんな俺の上でベルが甲高い声で叫ぶ。しかし、それは快感だけではなく、強い陶酔や満足感も混じったものであった。さっきまでぎゅっと食いしばっていた口から嬉しそうに突き出した舌をブルブルと震わせ、欲情塗れの視線が揺らぐ。そして、それは俺も同じなのだろう。舌こそは突き出していないものの、彼女の瞳に移る俺も似たような顔をしていた。お揃いという状況に条件反射のような満足感を感じるが、それさえも長く長く続く絶頂感の中で霞んでいく。
「来たぁっ♪しぇいえき来たぁぁぁっ♪」
嬉しそうに叫ぶ彼女のオマンコもまた狂喜していた。ぶるぶると震える肉襞全てが奥へ奥へと誘うようにムスコを撫で上げる。今までとはまるで違ったその動きにまた新しい快楽を見つけて、俺の腰が震えた。その上、さっきから執拗なまでに俺の亀頭を挟み込み、精液を強請っていた子宮口はゴクゴクという音が聞こえそうなくらい嬉しそうに精液を吸い上げている。時折、強請るようにその口を震わせ、吸い方に強弱をつける様はまるで、本当の口のようだ。逆に入り口で俺のムスコを僅かたりとも動かすまいとしているかのように強く締まり、腰を引くことも出来ない。勿論、それらを受ける俺はさっきから射精しっぱなしで敏感なままである。そんな快感を注ぎ込まれて無事で済む訳がなく、後から後から湧き出る精液を彼女の子宮へと送り込んだ。
「あちゅいぃっ♪おいしぃっ♪にゃにこれぇ…っ♪お口で味わうよりじぇんぜんっ♪しゅごいぃいっ♪」
舌足らずにそう言いながら、彼女の膣肉は俺を押し詰める様に蠢いてくる。まだだ、もっとだと貪欲に言い寄られるそれに気弱なムスコは対抗する術を持たない。言われるがままに精液を吐き出して…それは俺の精嚢が再び空になるまで続いた。
「ん…っ…♪…ふぁぁぁ…ぁ♪」
そんな蕩けた声を漏らす彼女の背中を抱き締めたまま、俺の後頭部がゴンっと床に落ちる。何時の間にか俺の首は反り返っていたらしい。彼女の事はあれだけ見つめていたのに、自分の事には鈍感だと思うと少し笑えてくる。しかし、また一滴残らず彼女の子宮へと精液を献上した俺は今は胸を上下するくらいしか出来ない。
「んふゅぅ…♪しぇいえき…美味し…っ♪」
だが、俺の上で小指を唇に引っ掛けて微笑む雌豹はまだまだ満足してはいないらしい。いや、寧ろその欲望に火が点いたと表現する方が正しいだろう。初めて味わう精液の味を完全に覚えたベルはもっと精液が欲しいと本格的に興奮を灯していた。まるで一滴残らず吸い上げられるような絶頂を味わったというのに、ここからが本番だと思うと寒気のような痺れが背筋に走る。だが、俺もオスなのだろうか。その痺れには何処か甘いものが混じっていて、期待にも似た感情が胸の底から沸き出でてくる。
「ねぇ…もっとぉっ♪もっと頂戴ぃ…♪」
まるでケダモノのように強請る彼女がゆっくりと腰を上下させ始めた。愛液塗れでぐちょぐちょになった膣肉からまるで引きずり出すように大きく腰を引いて、ゆっくりと降りてくる。それにまだまだ硬いままのムスコは存分に応えて、彼女の膣奥まで一気にその亀頭を押し進めた。その度にイっているのかゾリゾリとした突起をムスコ全体に這い回らせてくる。しかも、それらはとても貪欲で中々、肉棒を手放そうとしない。それらはまるで貪欲な肉の群れに無理矢理、ムスコを突っ込まれているみたいだ。
「うあぁぁっ」
「んふ…♪可愛い呻き声ぇ…♪もっとその声を…♪アンタの声であたひをいっぱいにしてぇ♪」
その言葉と共に彼女の腰が少しずつエスカレートしていく。おずおずと腰を引くだけのものだったのが、じゅるん♪と肉襞から無理矢理、男根を引き剥がすようなものへと。無論、その速度は快楽に直結して俺のムスコを虐める。ただでさえ、抵抗できない状態で無理矢理、犯されているという状況で余裕が無いというのに、容赦なく注ぎ込まれる快楽に俺の視界がまた瞬いた。絶頂の予兆でもあるそれに困惑しながらも、チカチカと点滅するそれは止まらない。
―このままじゃ…またすぐ…!!
どうやら俺は護りに入ると弱いようでゾリゾリと這い上がる快感に絶頂への階段を駆け上がっていた。無論、まだ精液は全弾撃ちつくしたばかりで玉には一発分も残っていない。しかし、それでも俺の身体は関係ないのか胸の底から激しい射精への欲求が鎌首を擡げる。ついさっき消えたはずのソレに驚きつつも、肉襞の群れに無理矢理、突っ込ませるベルの腰の動きがその欲求をより激しいものへと変えていった。
「やめ…ベル…!!」
湧き上がる射精欲求に応えるように俺の玉は熱を灯し凄まじい勢いで精液を作っていく。今までに無い熱さと鈍い痛みを感じて小さく呻いた。しかし、それ以上にベルの身体は熱く、そして気持ち良い。本来は不快でしかない鈍い痛みを快楽のアクセントに変えていた。その強さは凄く、そして雪だるま式に大きくなっている。このままでは俺は本当にすぐ射精してしまうだろう。
「ふふ…♪アタシがさっきそう言った時もアンタは止めなかったじゃないかぁ…♪それに…さっきから身体が熱くて止まらないんだよ…♪またあの熱いのが欲しいって…美味しいのが欲しいって疼いてるんだ♪今更…止められない…っ♪」
しかし、そんな俺には構わず、ベルはぐちょぐちょを腰を振るう。それは僅かずつではあるものの確実にスムーズになっていて、俺の腰とぶつかって弾けてぱちゅぱちゅと肉の音をさせていた。ぎゅっと彼女の背中に回ったままの手もふるふると揺れる尻たぶの感覚を感じ、振り落とされないようにするのが精一杯だ。
「責任…取ってくれるんだろう…?子宮一杯にしてくれるんだろう…?だったら…もうちょっと気張ってくれないとねぇ…♪」
さっきとは比べ物にならない程しっかりとした声で言いながら、ベルはそっと微笑んだ。しかし、しっかりとした声とは裏腹にその顔は欲情と快楽で蕩けきっている。さっきから目尻から零れた涙は赤く染まった薄褐色の頬を落ち、俺の胸へと垂れてきている。汗と混じったその顔は強い興奮を伝えるからだろうか。とても艶やかで、何より淫らだ。それでいて微笑みそのものは母性すら感じさせるのだから性質が悪い。本来であれば相反する二つのものが交じり合う姿に強いギャップを感じ、俺の身体はまた一歩射精へと近づいた。
―くぅ…!こ、このままじゃ…!!
勿論、さっきの言葉は決して嘘ではない。下火になったとは言え未だ燃える本能は出来れば彼女の子宮を俺の精液で一杯にしたいと思っているし、今の交わりはとても気持ち良いモノだ。しかし、相性のような物だろうか。どうにも受ける側は性に合わない。フェラの時はまだマシだったが、こうして無遠慮に腰を振られているとどうにも反撃したいと言う気持ちが沸きあがってくるのだ。しかし、まだ魔物娘との交わりに慣れていない所為か。或いはここ数ヶ月の間、訓練をサボっていた所為か。俺の身体にはまだ力が戻らず、ベルに貪られるだけだ。
―どう…する…?
別にこのまま射精しても何も問題は無い。高い熱を灯し、ぐるぐると中を巡らせる玉は凄まじい勢いで精液を増産している。このまま行けば、そう遠くない内にまた最大まで精液を溜め込むことが出来るだろう。後はそれを彼女に求められるがまま、最奥に吐き出せば良い。それで彼女は満足するし、俺も気持ち良いのだ。だけど、どうにもそんな結末が嫌で、俺は必死に快楽に染まった頭を回す。
―動く…のは腕と顔くらい…なものか。
下半身はさっきの射精で未だ腰砕けになっていて殆ど反応が無い。腹筋はまだ弱弱しい反応を返してくれるが、俺に身体を預けるような彼女を押しのけられる力は残っていなかった。胸板は激しく上下し、柔らかい乳肉の感触と鮮やかな乳首の感覚を享受しているだけである。残っているのは振り回される腕と顔くらいなもので…それでは大した反撃は出来ないだろう。
「うふ…♪そんなに必死で快楽を堪えて…♪そんな可愛い顔をしたら…我慢出来ないって言っただろう…?それとも…アンタは見かけによらず…こうして一方的にヤられるのが好みなのかい?」
そんな俺の視界に真っ赤なルージュを引いたような艶やかな唇が目に入る。からかうような言葉を漏らすそれは手を伸ばすまでもなく、すぐに届きそうな距離になった。元々、彼女は長身で俺と殆ど慎重が変わらないのだ。少しだけ首を上げればすぐに届くだろう。
―そう思った瞬間には、俺の首は動いていた。
さっきの射精の時のようにぎゅっと顔を上げて、彼女の唇に口を合わせる。そのまま驚いた彼女の唇に舌を割り入れて、内側で激しく暴れまわった。まるで粘膜を舐め上げるようなそれにベルは反応できていない。その腰も止めて、唖然としたように俺を見ていた。それに若干、勝った様な気分を味わった瞬間、彼女の舌が反撃を開始する。肉棒で嫌と言う程味わったあの熱い唾液をまるで俺の舌に塗りこむように動き、嘗め回す。それから逃げようにもきゅっと閉じられた歯が俺の舌を離さない。活路を見出した筈のそこは逃げ場の無い袋小路のように俺を追い詰めていく。
「ちゅ…ちゅるぅ…♪」
べったりと粘性の高い唾液を舌先で塗りつけるようにしながら、彼女の唇は俺の舌を吸い上げる。まるで俺から唾液を引き出そうとする様なそれに強い快感が走った。そして思わず動きを止めてしまった俺の舌を扱く様に唇をそっと締めて蠢かせる。ついさっきムスコで嫌と言う程味わった柔らかい感覚にフェラを思い出して、俺の肉棒がピクンと反応した。
「ふふぅっ♪」
そんな俺の動きをベルも感じたのだろう。クスリと微笑みのような表情を浮かべつつ、にゅるにゅるとその口を動かした。まるで舌をフェラチオされているような感覚に俺の脳裏が疼いて止まらない。ビリビリとした電流を走らせて、男根の先から先走りが漏れ出た。
「んっ♪きゅふ…っ♪ちゅぅぅっ♪」
それはベルも同じなのだろう。ムスコが跳ねる度にビクリと反応し、子宮の口からドロリと愛液を漏らしていた。そして、その愛液を男根に馴染ませるように彼女の腰も動き出す。ぱちゅんぱちゅんと弾ける様な音と共に、肉の群れの中に放り込まれる感覚が蘇った。舌から味わう感覚と、下半身から這い上がる感覚。何処か似通った二つに翻弄され、俺の身体からは完全に力が抜けてしまった。
「ひゅふぅ♪…れろぉっ♪」
そして、力の抜け切った俺を貪るようにして彼女の舌が腰がさらに激しくなっていく。もう抵抗はしないと思ったのだろう。俺の唇を取り込んでいた舌を閉じ込めていた歯を開き、くちゅくちゅと舌で弄ってくる。それはどんどんとエスカレートして、さっきは押さえ込まれて使えなかった舌腹で唾液をすり合わせる程にもなっていた。無理矢理、唾液のカクテルを作らされるようなそのキスに逃げようにも何時の間にか俺の首に回った彼女の腕がそれを許さない。結局、俺は無防備のままベルに貪られるしかなく、じゅるじゅるとねちょねちょと交わりのような音をかき鳴らしながら、舌をフェラされている。
「ん…っ♪ぷぁぁ…っ♪」
彼女が俺を離した頃には俺の舌は快楽に痺れて殆ど動かせないものになっていた。ビリビリとした感覚だけが止まらず、まるで麻痺したようになっている。しかし、動かそうにも妙に力が入らないソレを煩わしく思う暇もなく、彼女から与えられる快楽で俺はもう頭が一杯になっていた。ぱちゅぱちゅと打ち付けられる腰の中ではムスコがもう射精寸前の硬さと熱を灯し、燃え上がるようなオマンコの中で確かな存在感を放っている。カサを大きく広げるような大きさも相まって、ベルも強く感じているのだろう。時折、キュッキュと締め付けるのはアクメを迎えているに違いない。しかし、そうと分かっていても俺にはもう反撃の手段も、そして考える能力も無く、大きくなった分、より鮮烈に感じる膣肉に翻弄されていた。
「んふ…♪アレだけザーメンを射精した口にキスするだなんて…中々、勇者じゃないのさ♪そんなに…アタシとキスしたかった…?」
欲情と興奮。そして期待と愛情。ほかにも数え切れないほどの感情を浮かべながら、ベルはそっと抱き締めたままの俺の耳元で囁いた。それは本来、萎えるような台詞だろう。キスをした後に自分の精液の事をぶり返されるとか拷問としか思えない。しかし、既に射精へのカウントダウンを始めている俺には萎える余地などなく、囁かれる耳の刺激に腰を奮わせた。
「嬉しいよ…っ♪とっても嬉しいっ♪精液の事なんてどうでもよくなるくらいアタシの事を好いてくれてるんだね…っ♪…最高の気分さ…っ♪」
勿論、本当はベルに一矢報いたかっただけの話でしかない。しかし、彼女はそれを別の意味にとって、背中の炎をより激しいものに変えた。リザード属特有の長い尻尾を俺の腰に絡み付けるように巻きつけ、その笑みを深くする。その腰もベルの興奮を得て、より激しく強いものに変わり、俺をさらに追い詰めていった。勿論、そんな風に追い詰められている俺に誤解を解ける余裕などあるはずもなく、エスカレートしていく腰に俺の視界が真っ白に染まっていく。
「アタシも大好きだよ…♪愛してる…っ♪アンタの精液で子宮一杯にして欲しいって思うくらい…♪もう…アタシはアンタの女…ううん。メスだよ…ぉ♪だから…一杯、種付けして…っ♪アタシと…本当の家族になってぇぇっ♪」
その瞬間、ベルの膣肉がぎゅっと収縮した。彼女ももう限界だったのだろう。膣肉が一気に絡みついて俺を射精へと無理矢理、押し上げる。今までに無い締め付けと絶頂。そして激しい肉襞の震えを感じた瞬間、俺もまた限界を迎えた。くいっと上がった二つの玉から一気に精液を押し込まれ、何度目かの射精を放つ。肉棒全体を震わせるようなその射精を受けて、密着する子宮口も震えた。白く薄れるような視界で必死に彼女を見れば、目を閉じながらも舌を突き出して甘い甘い顔を晒している。そんな彼女が妙に愛しくて、ぎゅっと抱き締めた瞬間、射精の第二波が俺達を襲った。
「きゅふううううぅぅぅぅっ♪」
ビクビクと抑えた背筋を震わせながら、流し込まれる子種汁の感覚にベルが再び絶頂を迎える。その度に胸に谷間や首筋からむわっと濃いメスの匂いが立ち込めて止まらない。オスを誘うその匂いに俺は抗おうと感じる暇もなく、震える腰で何度も何度も精液を彼女の子宮へと送り込む。それをまた彼女が歓迎するように吸い付き、或いは撫で上げながら、俺の射精は何度も何度も繰り返された。それは最初のフェラと比べても長く、激しいもので、中々、終わらない。本当に彼女の子宮を精液で染め上げようとするかのように男根からは彼女に負けない熱いザーメンを吐き出し続ける。
「ふわぁ…♪…きゅぅぅっ♪」
また精嚢が空っぽになるまで射精した俺はどっと床へと倒れこんだ。しかし、自分から腰をそれほど動かしていなかった所為だろうか。さっきとは違い、余力が残っている。それでも快楽で痺れる身体は彼女を動かせるほどではない。精々、未だ絶頂の余韻に震えるベルの背中を撫でてやるくらいだろう。
「…あぁ…っ♪」
その気持ちのままそっと背筋を撫でると目の前でベルが陶酔したような声を漏らした。少しずつ白い霧のようなものが収まる視界の端で彼女の顔を捉えると目を閉じたまま嬉しそうにしている。その顔は幸せそうに俺の胸板に預けられていた。ベルや俺の唾液で汚れているだろうにそれでも幸せそうにする姿が妙に可愛らしい。
―…にしても、まだ収まらないか…。
そんな彼女のオマンコの中では未だに俺のムスコが力を保っている。回数にして五回。しかも、全部、精嚢を空っぽにするくらい激しくも長い射精ばかりであった。それなのに、俺の象徴はビキビキと青筋を立てて、次の射精を心待ちにしている。収まるどころか寧ろ力強くなっているようなその姿に胸中で溜め息を漏らした。
―…さっきの射精も随分、長かったし…なぁ…。
人間、追い詰められれば何でも出来るというが、射精の量や回復スピード、時間などがここ数回で飛躍的に延びていっている。勿論、それは一回一回が丸ごと搾り取るようなベルに追い詰められての事だが…インキュバスになって尚、成長でもしているのだろうか。確かにインキュバスは魔物であるので、魔物娘の魔力を浴びればより強力な固体になるという話も考えられなくも無いが――。
―…このままだと数日やりっぱなしとかになるんじゃないだろうか。
今はまだ少しばかりのインターバルが必要だが、その間も少しずつ短くなっている。その証拠にもう俺のムスコの奥では精液の増産が始まっていて身体に熱を灯していた。きゅっきゅとリズミカルに甘えるベルの膣肉を押し広げ、もっと貪ってやろうと身体に強い力が篭っている。それは一回の射精で力尽きていたさっきでは考えられないことだ。
―…まぁ、何はともあれ…。
「きゅぅっ♪」
いきなり上体を起こした俺に困惑するようにベルは小さな叫び声を上げた。そんな彼女を落とさないようにぎゅっと抱き締めながら、俺は逆に床へと押し倒す。繋がったままの性器からコポリと愛液と精液のカクテルが漏れ出る目に入る今の体位は所謂、正常くらいと言う奴だ。さっきのままでは少しばかり身体が動かしづらい。こっちであれば思う存分、身体を動かすことも出来るし、ベルからの反撃も制限できる。
「…ふ…あぁ…♪」
未だ絶頂の余韻で痺れる彼女の胸に手を伸ばす。ぎゅっと握った腕には相変わらず柔らかい感覚とピンと張った乳首の感覚が返って来る。オスを魅了して止まないそれを感じながら、俺はゆっくりと腰を動かして彼女の身体を貪り始めた。じゅるじゅると愛液塗れの粘膜が擦れ合う音をかき鳴らしながら、最初から全力で彼女の子宮口へと思いっきりぶち当たる。
「あああああっ♪んぁぁぁあああっ♪」
再び舌足らずの声で叫び声を上げながらも、彼女の足は俺の腰をしっかり掴んで離さない。少なくとも嫌がられているわけではないのだろう。そう思うと熱い彼女の身体に負けないような興奮が灯った。それをまるで叩きつけるように肉棒を抽送し、ベルにさらに強い熱を灯す。それをまた俺が受け取って返し――
―そんな風に俺達はお互いの熱を与え合って、何度も何度も貪るようなセックスを繰り返したのだった。
―最初はただの罪悪感だった。
喧嘩を売られて、むきになりすぎて、彼を傷つけすぎてしまった。別にそんな深手を負わせるつもりは無かったとは言え、結果としてアタシがつけた傷が彼の腕を奪ったのは事実である。彼はそれを自分の責任だといったが、アタシはやっぱりそうは思えない。アタシは…一生掛かってでも彼に償う必要がある。…そう。最初は…ただ、それだけの感情で彼の看病も引き受けたのだ。
―でも…何時しかアタシの目は変わっていって…。
それが何時かは詳しくは覚えていない。もうマグマに飲み込まれたあの町で、彼の苦しそうな寝顔を見た時だろうか。それとも…彼の身体にアタシと同じ血が流れている事に気づいた時だったのかもしれない。でも、アタシは少しずつ彼を「放っておけない」と感じ、より熱心に世話を焼くようになった。それは若干、早熟な――まぁ、アタシの年齢そのものはちょっとしたものなんだけれど――母性の芽生えであったのかもしれない。
―そして…少しずつアタシは彼を家族のように思うようになっていった。
元々、一人で暮らしていて人恋しかった所為だろうか。意識を失ったまま呻く彼をまるで弟のように感じ始めたのだ。それは多分、アタシの血が彼にも流れていると言う事と無関係ではない。結局の所、アタシは溶岩に飲み込まれたトト様とカカ様の墓標に変わる精神の拠り所を求めていただろう。それが同じ血が流れている彼であったというだけで…その時はまだ恋とか愛とかそんな色っぽい感情は決してなかった。
―…それが…どうしてだろうねぇ…。
意識を取り戻した彼に接するうちに、「放っておけない」という気持ちがどんどんと大きくなっていった。勿論、考えるのが苦手なアタシはその感情のままに彼を追いかけ、世話を焼いたのである。彼も腕を失った原因であるアタシを受け入れてくれて、一緒にリハビリなんかを頑張っているうちに…どんどん「放っておけない」って言う気持ちが大きくなっていって――いつの間にかアタシは彼を目で追う様になって言った。
―まぁ…当時はそんな自分の変化にそれほど気付いていたわけじゃないんだけどさ。
ただ、漠然と彼の姿が目に入るようになったというだけで、特に何も考えなかった。仕事中にも「彼は今、何をしているんだろう?」と考えるのも家族、特に弟に向けるような感情であると思っていたのである。けれど…それが違うと気づいたのは、彼が退院し、顔を見なくなった頃で――少しばかり…気づくのが遅かったのだ。
―勿論…最初は苦しんだ。
彼がアタシを好きになってくれるはずなんて無い。だって、アタシは彼に償っても償いきれないだけの傷を着けてしまったのだから。ただでさえ片腕と言う特異性は、彼に一生、付きまとう大きなモノだ。そして、アタシが奪ったのは彼の利き腕である右腕である。もっとも使い慣れた部位を切り捨てた女を憎むことはあっても、誰が好きになったりするものか。そう思って自分を責めた夜は数え切れない。その時のアタシにとって、彼がアタシを憎んでいないだなんて考えもつかないモノだったのだ。
―だけど…彼がボロボロになって傷ついているという話を噂に聞いて……。
当時、この町に必要であったのは何よりまず男手であった。勿論、彼は冒険者だけあって腕っ節もそこそこ強い。しかし、片腕と言う壁と余所者であるという壁が彼を弾いていた。それは本来であれば予想できた事であっただろう。アタシ自身もまた余所者として見られていたことも少なくないのだ。でも…アタシはそれを『魔物娘』に対する視線だと思い込んでいて…人間である『彼』にも向けられていたなんて思ってもいなかったのである。結局、アタシが頬も痩せこけ、虚ろな瞳で必死に歩き回るゾンビのような男がいると聞いた時は、彼はもう憔悴しきっていて心も折れかけていた。
―そんな彼を見かけられたのはある意味、奇跡だったのだろう。
てっきりこの避難所の何処かでしっかりと職に就いているものだとばかり思っていた彼が広場で倒れているのを見た時、アタシは最初、死体だと思った。それくらい彼の身体には生気が無く、ボロボロであったのである。普通であればそんな死体には近づかないだろう。だけど、アタシは一応、命を扱う職業で、墓くらいは作ってやろうと近づいたのだ。
―それが…彼だと知った時には本当に驚いた。
目を閉じて眠るように蹲る彼の顔を見た瞬間、まるで全身の血液が凍ったように感じたのを良く覚えている。足が震えて前に進むのも億劫なくらいであった。それでも必死に足を進めて、震えそうな声を掛け…ゆっくりとではあるが反応があった事に心から安堵したものだ。
―それから…抵抗しようとする彼を背負ったまま部屋に戻って……。
食事を振舞った後、ポツリポツリと漏らした言葉にアタシは自分を殴りたくなったのを覚えている。だって、彼の働き口が早々、見つからない事位、考えるまでも無く分かりきっていた筈だ。それなのに、どうしてアタシは彼が退院する時、何も言わずに見送ったのか。勿論、アタシと一緒に居たくないだろうと言う気持ちはそこにはあった。だけど、それ以上に彼の都合を考えるべきであったのだろう。結局、アタシがあそこで彼に申し出なかっただけで…彼は今にも死にそうな位、憔悴してしまった。それが…また申し訳無くて、アタシの負い目が一つ増える。
―それから…同棲生活が始まって…。
アタシの負い目が増える度、アタシはどんどんと彼を意識するようになっていってしまう。風呂上りのアタシの姿を見て、そっと目を逸らす所なんて何度見ても胸が沸き立った。もっともっとアタシを見て欲しいと、もっと過激な姿を見て欲しいと思ったのは一度や二度ではない。その頃には流石にアタシも彼の事を好きになっていると言う事に気付いていて…でも、数々の負い目がアタシを踏みとどまらせたまま、半年近い年月が過ぎた。
―その頃にはもう彼は教師として就職していて……。
何時の間にかこの避難所の町長に大きなコネを作っていた彼は、ソレを使って教師に就職した。それは間違いなく喜ばしいことだろう。勿論、アタシも――心の中でアタシがずっと養ってあげると思っていたが――それを歓迎した。けれど…教師と言う職業は日に日に彼の命を削っているようで…あっという間に彼は生きた死体のような姿に変貌していたのである。食事も取らない。眠っている間にも魘され続けている。そんな彼にアタシが出来るものは思いつく限りやったものの…それは全部、空振りに終わった。
―そんな彼が…どうにも見ていられなくて…。
元々、腕を失ったことに絶望していたのか。大分、死にたがりになったのはアタシも気付いていた。けれど、それはアタシとの同棲生活が始まってからは大分、ナリを顰めていたのである。しかし、教師と言う職業はよっぽどの激務なのか、その死にたがりの表情が常に顔を出していた。そんな彼に…アタシはついに出来る事を失い…せめて生きる気力だけは取り戻してもらおうと勝負を仕掛けた訳である。
―まぁ…それは散々な結果だったんだけど…。
最初は生きる気力を取り戻してもらおうと仕掛けた戦いであった筈なのに、途中からアタシの暴露大会になってしまった。ずっと内に溜め込んでいた色々な感情を叩きつけるように吐き出して…それで何故か夫は気力を取り戻してくれたのである。何が良かったのかは正直、分からない。二度も彼と手加減抜きで戦って大怪我を負わせた事で身体がガチガチに緊張していたのにプライドを刺激されたのか。或いは私の言葉が気に食わなかったのか。どちらにせよ…彼は怒るような形で気力を取り戻してくれた。
―…そこまでだったらまだ美談で済んだんだけどねぇ…。
ガチガチに固まったアタシの身体は思うようには動かず、彼と剣をぶつけ合わせる度により鈍くなっていった。それでも…私は楽しかったのである。久しぶりに思いっきり身体を動かせた所為だろうか。理由としては兎も角…結果として燃え上がったアタシはそのままの勢いで夫に襲い掛かり――
―…まぁ…その結果として……。
「うぅ…ん……」
「…こうなったんだから不思議だよねぇ…」
ぽつりと呟いた声はチュンチュンと囀る鳥の声にかき消される。時計を見れば、そろそろ起きなければいけない時間だ。アタシも彼もそろそろ出勤時間である。昨日もまた夜中までズッコンバッコンとヤっていた訳だけれど、仕事は別だ。その代償として給金を貰っている以上、真面目に働かなければならない。
「ほぉら…起きな。もう朝だよ」
「うぅ…あ、後五分……」
―まったく…またそれかい…。
呆れるように思うのは、それが毎朝繰り返されるやり取りだからだ。元冒険者であるくせにどうにも彼――アタシの夫は寝起きが悪い。そんな所が可愛いと思うものの、仕事に遅刻させる訳にはいかない。遅刻すれば何か言われるのはアタシではなく夫の方なのだ。出来の良い妻とは言えないが、それは一応、避けてあげたい。
「その後五分で何度、遅刻しかかってるんだい?いい加減、起きないとひっぱたくよ?」
「うぅ…ぼ、ぼうりょくはんたーい……」
舌足らずな声でアタシに訴える彼の眼はまだ閉じている。元々、精悍な顔つきをしているというのに、舌足らずな声も含めてどうにも可愛いという印象が拭えない。東洋系の血でも混じっているのか黒い髪はざっくばらんに切り揃えられ――勿論、夫の髪を整えるのは妻であるアタシの仕事である――野性味が強い。眠そうにしている目蓋の裏には新緑のような瞳も揃っているのだ。美形と言うには少しばかり色々足りないとは言え、平均よりも整った顔立ちをしているのは確かだろう。…まぁ、勿論、アタシにとっては世界で一番かつ最高な顔な訳だけれど、
―まったく…今日はどうしてくれようかねぇ…。
寧ろ疲れているのはこっちの方だろう。昨日もまた嫌と言う程、イかせられて、あの日のプロポーズ通り、たっぷりと精液を注ぎ込まれたのだ。一晩経った――と言っても数時間しか経っていないわけだけれど――今でもそれはアタシの子宮でたぷたぷと揺れて少しだけ重い感じもする。しかし、その重さが妙に嬉しくて、アタシの頬は自然とにやけた。
―ハッ!!い、いけないいけない…!
とろんと落ちそうな頬を堪えたものの、ぼっと身体に熱が灯るのは止められなかった。昨日の情事を思い出した所為だろうか。彼と同じダブルベッドに横たわったままの下半身からとろりと熱い粘液が漏れ出る。ここ数年でもはや御馴染みとなったその感覚にアタシはもう我慢が出来なくなって、もぞもぞと掛け布団の中へと潜り込んだ。
そこは今までの情事の残滓が匂いと言う形ではっきりと残っている。お互い汗や愛液、精液なんかの様々な体液をこのベッドの上で吐き散らかせているのだ。それも一度や二度ではなく、殆ど毎晩。そして、シーツや布団は洗濯しても元は変わっていないから、その奥底にまで匂いが染み付いている。もはや洗濯しても取れないくらいこべりついたオスとメスの匂いを思いっきり吸い込みながら、アタシは彼の胸板を滑り落ちるように下半身へと降りていった。自分の肌をこすりつけるようなそれに少しだけ夫が呻くが、どうやらまだまだ寝ているようである。
「ふふ…♪もう…またこんなに朝勃ちさせちゃってさぁ…♪」
夫の身体で唯一、起きている部分をきゅっと掴みながら、アタシは腹筋を越え、股間へと到達する。そこはもう既に溢れんばかりのオスの香りで一杯だ。ガチガチに勃起したオチンポの先からはもう先走りがドロリと漏れて、止まらない。匂いを嗅いでいるだけで脳髄が痺れるソレにアタシはついに我慢出来なくなって、ぱくりと肉棒にむしゃぶりついた。
―あぁ…美味しい…っ♪
毎晩、味わっている筈のその青臭い匂いとミルクのような甘さは決して飽きる事の無い。勿論、子宮口で味わうあの熱い感覚も好きだけれど、アタシはお口で奉仕するのも嫌いじゃないのだ。こうして舐めていると心まで征服された気分になるし…何より彼のムスコはグロテスクな外見に反して意外とふるふると反応を返してくれる可愛らしい奴なのだから。
「ちゅ♪ふふ…今日もたっぷり美味しい精液を射精してね…♪」
甘えるように言うアタシの思考にはもう時間の概念は残っていない。それで昨日も遅刻したのをすっかりと興奮の彼方へ起きさって、一心不乱に彼の気持ちの良い部分を舐め上げる。勿論、そこには以前あった彼への負い目なんてまったくない。ただ、夫と気持ち良くなる事が最も幸せで、それに心と身体を燃え上がらせる一匹のメスがいるだけだ。
―そう…アタシは今…とっても幸せ…♪
アレから数年が経ち、声がまる聞こえな仮設住宅からも出て行く事になった。代わりに建てた今の家は防音設備もしっかりしていてどれだけ嬌声をあげても外に漏れる心配は無い。仕事でもそこそこ上手くいっていて、医師と変わらない仕事が出来るようになった。勿論、それは彼も同じのようで最近は歴史をぶん投げて、冒険の話ばかりしているらしい。それが以外にも生徒には好評で、人気の有る先生になったそうだ。
―…そして…アタシには夫が、夫にはアタシがいる…♪
それだけで世界の全ては薔薇色に変わって、輝いているように見える。そして…アタシは以前のように自分を抑える必要が無い。サラマンダーの…いや、魔物娘の本能が命じるままに夫を求め、快楽の渦へと飛び込んでいける。それは…あの小さな小屋の中で一生を終えていれば決して手に入らなかった幸せだ。
―そう。昔も今もアタシはずっと夫に助けられ続けている。
それはこれから先もずっと続いていくのだろう。ううん。続けさせるのだ。この幸せが途中で終わるなんて…正直、考えたくも無い。もう二度と『家族』を失う痛みを知るのは嫌だし…何より夫はもうアタシの半身も同然だ。彼を失ってしまえば、アタシは文字通りの意味で生きてはいけない。それこそ自ら進んで火口に身を投げて、確実な死を選ぶだろう。
―でも…アタシ…頑張るからね…♪
アタシが感じている幸せを少しでも返せるように、彼に幸せだと少しでも思って貰う為に。その為ならアタシはなんだって出来るのだ。世界だって敵に回せるし…こうして自分の仕事が危ないのにおしゃぶりだってしてあげる。まぁ…彼の時間も危ないけれど…それは夫が起きないのが悪い。アタシだって最初から素直に起きていれば、こんな風に毎朝、発情しなくても済むのだ。…多分、
「うぅ…!!」
そんなアタシの目の前で夫は小さく呻いた。アタシの口の中に放り込まれた肉棒はビクビクと激しく震えて、そろそろ射精が近いことを教えてくれる。相変わらず早漏気味だ。昨日、アレだけ搾り取ったのに、もう射精するなんて。まぁ…その分、殆どインターバル無しで回復するから素敵なんだけれど。
「ちゅ…ぷぁ…♪ん…れろぉぉっ♪」
そんな夫に止めを刺すためにアタシの口はもぞもぞと蠢く。きゅっと唇で硬い肉茎を扱きながら、舌でぐりぐりと鈴口を穿る。顔を傾けながら、亀頭を頬の粘膜で包むように窄め、ぐちゅぐちゅと唾液を塗した。勿論、硬い歯も時折、少しだけ立てて、快感にアクセントを加えるのを忘れない。
「ん…あああああぁぁっ!」
寝ているので我慢も聞かないのだろう。それらの刺激にあっさりと夫は屈して、口腔で射精を始める。それは昨日、何十回と射精したとは思えない位濃くて、美味しい。それを頬で受け止めつつじゅるじゅると吸い上げた瞬間、アタシの頭にそっと暖かい感覚が降りた。
―…ふ…わぁ…♪
そのまま撫で撫でと左右に動く硬い暖かい感覚。それは見るまでも無く夫の掌だろう。毎朝、何度も何度も味わっているのだ。感じ慣れたその蕩ける様な暖かさを今更、アタシが間違う筈がない。けれど、慣れると感じないのはまったくの別物で、アタシは何度味わっても蕩けるような心地良さに咽喉を鳴らしながら目を細めた。
「…ん…っ♪ふゅふ…おはよぉ…♪」
「あぁ、おはよう、ベル」
そんな風に挨拶しながら、アタシの身体はするすると起き上がっていく。けれど、それはベッドから降りるための物ではない。寧ろそのベッドに腰を下ろすような動きだ。勿論、その腰の下にあるのは未だビンと自己主張する夫の肉棒である。当たり前だが…魔物娘が一度や二度の精液を飲んだ位で満足はしない。寧ろその熱を欲求不満に変えて、より激しく身体を燃え上がらせるのだ。これがまだ従順に夫に仕えるタイプであるなら話は別だろうが…残念ながらアタシはサラマンダー。一度、火が点いた身体は止まらず、満足するまでノンストップである。
「ふふ…♪じゃあ…今日も…ね♪」
「あぁ…分かってる」
諦めようにそう返しながら、夫はそっとアタシの身体を抱き寄せてくれた。寝起きの所為か暖かいその感触に興奮とはまた違う暖かい熱が湧き出る。愛しさとかそんな風に表現されるであろうその熱をアタシは喜んで抱き返しながら、ゆっくりと腰を下ろしていった。そして、そのままくちゅりと水音をかき鳴らしながら、昨晩の続きが始まって――
―そうしてアタシ達は魔界に堕ちた街の中で何百回目の交尾を続け、今日も二人揃って仲良く遅刻したのだった。
11/04/27 18:07更新 / デュラハンの婿
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