その2
「…あ……っと…」
崩れ落ちるネリーをしっかりと捕まえて抱き寄せるマークの顔には、最初のようなケダモノのような色は決してなかった。どれだけ射精したのか当事者ではないボクには分からないが、結合部から漏れ出し、薄黄色の水溜りに泡を広げるだけの量は、決して一度や二度ではないだろう。流石に両手で数えられないほどではないだろうが、それだけの回数をこなしていればインキュバスと言えど、若干、冷静になる。
「…とりあえず…ネリーはソファで良いかな?」
「あ、あぁ、うん。良いと思うよ」
唐突にマークがボクを見下ろしているのに気づき、ボクは若干どもりながらもそう応えた。それに彼は頷いて、そっとネリーの身体をソファへと横たえる。返事こそ無いものの、意識はあるのか「ふぁあ…♪」と甘えるように声を漏らすネリーからマークがオチンポを引き抜くと、開いたままのオマンコからどろどろと精液が漏れ出してソファを汚した。どれだけマークが、ネリーのオマンコで感じていたのかを見せ付けられるようなその光景にボクの我慢はついに決壊してしまう。
「…ねぇ…マークぅ…♪」
ネリーが心配なのか、ソファから離れても心配そうに彼女を見ているマークにボクは自分でも以外だと思う程、甘えた声を出しながら寄りかかった。ボク自身が軽いというのもあるのだろうけれど、服の上からでは分からないほど逞しい肢体を持つ彼はそっと受け止めて抱きしめてくれる。
「次はボクの番だからぁ…ボクを見てよぉ…っ♪」
「…あぁ、ごめんね」
オスに媚を売るような甘い甘い声のまま言うボクの背を彼の手がそっと這う。薬草を磨り潰したりする関係上、ちょっとゴツゴツしている男らしい指がボクの汗を拭うように降りていく。それがマークの指だと知っているボクにとっては、それだけで足元からぞわぞわと蟲が背中を這い上がるような快感が湧き起こった。思わず崩れ落ちたくなるけれど、内股になりながら堪え、ボクはそっとマークの胸に顔を埋める。
―あぁ…♪マークぅマークぅぅう……っ♪
ネリーの甘いフェロモンの残滓こそついているものの、春の草原のような彼の体臭は未だに健在だ。彼女の残り香に若干の嫉妬を感じるけれど、でも、逆にそれがボクとマークだけの時間が回ってきた事を強く意識させ、オマンコからどろりとまた愛液を漏らす。寧ろこの残滓を消し飛ばすくらい甘く交われば良いだけだ、と肯定的に受け取ったボクはそのままマークの胸板に指をつつと這わせた。
「…まったくぅ……寂しかったんだからねぇ♪」
「…ははっ」
―…あれ?
てっきり困ったような表情を浮かべるかと思ったけれど、マークは寧ろ嬉しそうな笑みを浮かべている。無論、その中には気まずさのようなものも確かに存在しているが、それよりも大きな喜びの色が見て取れた。思わず首を傾げたくなったボクを見ながら、マークは逃がさないようにぎゅっと抱きしめて耳元に顔を近づけてくる。思いもよらないマークの積極的なアプローチにボクは抵抗しようと言う気さえ起こらないまま、自分からも腕を彼の身体に回した。
「…昔もそう言ってくれたよね」
―え…?昔って…え……?
けれど、幸せな時間と言うものはそこで終わってしまう。マークの言葉にボクの身体の中の熱がサーッと落ちて、寒気さえ感じた。さっきまでは子宮が我慢できなくなるくらい疼き溶けてしまいそうな熱が全身を覆っていたのに、その片鱗さえも感じさせないほど見事な消え失せた今は寧ろ日差しの中で寒気さえ感じてしまう。
―え…なんで……え……?
確かにボクは以前、マークにそう言った事がある。…でも、それは『ボク』ではなく『私』だったはずだ。…こうやって堕天使になる以前に出会った頃…マークと恋人同士であった頃の『私』だったはずなのだ。
―勿論、ボクだって堕天使のまま生まれてきたわけじゃない。天使だった時代は確かにあった。
天使の中でもそこそこのエリートだったボクは…かつてのネリーと同じように主神である『お母様』の言葉を託宣を授けられ、地上へと降り立った。教会の中枢部に降り立ったボクはそのまま魔界への侵攻を助ける為、様々な祝福を彼らに授け、磐石の態勢で魔界へと攻め込んで行ったけれど……結果は惜敗。何度も何度も戦った『私』たちは魔王軍と一進一退を繰り返し、二年ほど戦い続けましたが…それでも結果は変わりません。目の前で私を逃がす為に戦う騎士たちを助ける事も許されず、気づいたときは私一人でボロボロになって倒れていました。
―天使といえど所詮、私は下級天使です。受肉すれば食料が必要になります。けれど、その時の私には『食べられるもの』なんて何もありませんでした。
無論、きちんとした知識があれば食べられる草やキノコなんてものもあったのでしょう。近くに川もあったし、魚だって泳いでいたと思います。でも、その時の私にそんな知識は何も無く、お母様の言いつけも護れず、ただ朽ちていくだけの運命を呪い、涙を流すしか出来ませんでした。
―…そして、そんな私の前に現れたのがマークです。
薬剤師になる試験の一環として山の中に薬草を探しに奥まで入り込んだ彼は傷ついた私の応急手当をし、止血する為に服を脱がせようとしていたのを…良く覚えています。無論、私だって抵抗しようと思いましたけれど……でも、真摯な顔で色気の欠片も無く必死に助けようとしてくれているマークの姿に胸を打たれて結局抵抗できないまま私の身体の隅々まで――まぁ…彼の名誉の為に言うと秘部までは流石に白日の下に晒されなかったわけですけれど…――彼の視線に犯されてしまい…恥ずかしさの中で私は意識を失いました。
―…次に目を覚ましたのは『あの街』の診療所で……私のベッドの脇には疲れ果てて眠るマークの顔がありました。
無論、最初に覚えたのは羞恥です。だって、私の身体の一部を除き全部を彼に見られてしまったのですから。見ず知らずの…まだ少年とも言える幼さを残した――私は身体こそ成長が止まっていますが、それでも三桁を超える年月を軽く過ごしていますし――マークが傍に寝ていると言う事実に、邪な悪戯をされたのではないかと身体中を探ってみましたが別にそんな様子は無く、寧ろ丁寧過ぎるくらいに巻かれた包帯が印象的だったのを良く覚えています。何もされていない事に安堵した私は…そのまま彼の寝顔に釘付けになりました。
―だって…それは見たことが無いくらい安らかで可愛らしい寝顔だったのですから。
少年から青年への過渡期の無防備な寝顔を見た瞬間、私は胸が強く打ったのを感じました。まるで書物に出てくる『病気』にでもなったのかと思うくらい、顔に熱が上ってきて両手を当てるまでもなく分かるほど赤くなっていましたし、動悸が激しくなっていきました。思考はどうにも上手く働かず、視線は彼の寝顔に惹きつけられて離す事は出来ません。…思えば私はこの時、彼に恋していたのでしょう。今まで色恋沙汰なんてまるで興味の無く、人間の営みの一環としか捉えていなかった私を強く惹き付け、彼から視線さえ離さない感情はそれ以外に何と表現すればいいのか少なくとも私は知りません。
―そのまま何時間も見つめ続けた彼が起きた瞬間…浮かべた笑みに…私は完全に心を掴まれてしまったのです。
それはとても純朴な笑みでした。美しさなんてまるでない、素朴に喜びを表現しただけの笑みです。けれど、だからこそ、マークが打算も何も無く、ただ私を助けたいが為に助けてくれたのだと…何より私の心に訴えていました。そんな彼を…私はもうその時点で嫌う事なんて出来なくなってしまったのです。
―それから…私と彼の共同生活が始まって…。
診療所に下宿している彼との共同生活は楽しいものでした。まだ衰弱し、上手く飛ぶことの出来ない私をマークは献身的に介護し、リハビリにだって付き合ってくれたのを良く覚えています。けれど、他の住人と会ったり、外へ出ることだけは禁じられていて首を傾げながらも私はそれに従っていました。…普通、疑問に思う点であろうと自分でも思うのですが、この時の私は完全にマークを信用…いえ、信頼し、疑問に思わないほど彼に傾倒していたのです。それに…まぁ、私はマークがいればそこそこ満足だったのでした。天使としてはあるまじき事ですが――まぁ…この時点で私はもう完全な天使ではなくなっていたのでしょうけれど…――、彼が傍にいてくれるだけで私は幸せで、他の事なんてどうでも良かったのです。
―…そして私が全快し、病室の外へ出たとき…迎えてくれたのはマークと…そして見慣れない男性と紅いスライムでした。
無論、その時は混乱しましたとも。だって、人類の敵である魔物娘と人間が手と手を取り合って普通に暮らしているのですから。当時の私の価値観ではそんな事、ありえるはずがなかったのです。混乱を通り越して、パニックになった私は暴れて逃げようとしましたが、マークがぎゅっと抱きしめてくれた瞬間、電撃が走ったように身体中が震え、暴れる力さえ失ってしまいました。
―…今から思えば…これが私の初めての性感だったのでしょう。
けれど、当時の私にとってはそれはまだ未知の感覚でした。身体の中から弾けて、下腹部に熱が灯るようなそれはまだ決して大きくは無かったのもありますが、自慰なんて今までしたことも無かった私にとって言葉に出来ない初めての感覚だったのです。…けれど、未知であるが故に、私は無防備にソレを受け入れ、もっと感じたいと心の底から思ったのでした。
―そして…大人しくなった私を責める事無く、お二人は迎え入れて事情の説明をしてくれました。
ここは魔界から適度に離れている地域の商業都市である事。そして早くから魔物娘を受け入れて、人と共存を目指している事。魔物娘はルールで決められているので人目のつくところでは交わらず、夜か部屋が主な営みの場所である事。ルールが基本的には護られているので、人間の営み自体はそれほど変わっていない事。魔物娘と敵対して欲しくないと言う事。…他にも色々な事を教わりました。あまりにも多すぎて私の思考がパンクし、今まで築き上げてきた価値観や基準のようなものが崩れていった程です。
無論、そんな衝撃を一片も外に出さないほど私は自己管理の出来る天使ではありませんでした。自分の中の大事な物が消えていく感覚に震える――今、思うと自分が崩れていくと言う被虐的な快感を感じていた所為でしょう――私の手を横に座ったマークがぎゅっと掴んでくれて安心させてくれたのです。…瞬間、自分の身体を再び走った快感に私は顔を真っ赤にしながらも、彼の手を振りほどく事はできませんでした。
―それから…私の生活はちょっとだけ変わりました。
ひとまず納得した私は外出が出来るようになったのです。無論、私はまず事実を確認する為にマークと共に、街中へ出かけました。天使が魔物娘がいる都市の中にいるのが珍しいのか奇異の視線を沢山浴びましたが、彼が何気なく庇ってくれたり、しっかりと繋いでくれた手のお陰でまるで気になりません。…そして、何日か出かけて街中を見回りましたが…確かにあの二人の言うとおり魔物娘と人間が、一定の秩序に従ってしっかりと生活していたのです。
―多分、既にこの辺りで私はもうサキュバスになりかけていたのでしょう。
以前の価値観であれば、それでも魔物娘は不浄な者だと反発していたはずです。けれど、その時の私の価値観は、決してそうではありませんでした。「こんな風に秩序だった中で生活しているのならば…問題ありませんね」と答えを出し、診療所の中でお手伝いをしながら日々の糧を稼ぐようになりました。『あの街』のように魔物娘と人が手を取り合って幸せに暮らす姿を間もあたりにして、教会に戻って再び魔界へと侵攻するのを選ぶほど私の心は割り切れなかったのです。…その答えの裏にはマークの姿があったのは否定できません。彼は『あの街』が大好きで、異なる種族が手を取り合って発展していく様に目を一杯に輝かせていて…そして私はそんな彼の傍にずっと居たかったのですから。
―その当時の私の懸念は…一つでした。
それはお世話になった人々への恩返しです。私はお金なんて持っておらず、精々、幾つかの魔法と、祝福が使える程度。診療所の中でお手伝いする事で、お二人にはある程度、恩を返せていたと思いますが…マークに差し出せるものなんて当時の私には無かったのです。…勿論、私は悩みに悩みぬきました。…そして、ある日の朝食の際…マークと手が触れ合った瞬間、私が今まで感じていた未知の感覚が快感であると言う事に気づいてしまったのです。
―…そして、私が返せるモノが一つだけあることも気づいてしまいました。
元々、性交というモノがとてつもない快楽を伴う事は知識で知っています。人間が異性を求める行動の裏には性欲と言う欲があるほどである、とも聞いていました。以前の私であれば「人間と天使なんて…」と一笑にしていたでしょうが、既に私は異種族である魔物娘と人間が手を取り合って生活している世界を目の当たりにしているのです。魔物娘が出来て、天使に出来ないはずは無い…と覚悟を決めた私の心の中に…彼への好意があったのをその時の私はもう薄々、認めていました。
―それから……彼へのアプローチを始めて…。
ムードというモノが重要であると当時お世話になっていたレッドスライムから教えてもらった私は、そのムードを作ろうと躍起になっていました。…無論、片方が躍起になっても上手い事行くはずも無く、空振りを続ける事に落ち込むこともありましたが…私はついにマークと結ばれる事に成功したのです。
―そして…段々エスカレートしていって…。
元々、田舎から出てきたマークはかなりの苦学生で、勉強の為の学費を免除してもらう為、優等生でいなければいけませんでした。また、勉強するのに必要な機材や筆記用具も働いたお金で支払い、親戚である診療所の経営者にも必要以上に頼ろうとはしません。そんな彼の息抜き兼ご褒美として――勿論、私の欲望も多分に混ざっている事は否定しません――性交は激しさを増して……私はある日、ふと気づいてしまったのです。
―マークがどんどんと精力を増やしている事に。
最初は一晩で三回が限界でした。けれど、どんどんと回数をこなす内にマークの精力は雪だるま式に増えていたのです。当初は慣れていっているだけだと思っていましたが、一晩中繋がっていてもまだ満足しないマークのオチンポを見た瞬間、私は彼がインキュバスへの道を着実に進んでいる事に気づいてしまったのでした。
―…それはつまり…私が…完全にサキュバスと化しているということで……。
サキュバスの魔力に満ちた魔界に二年も居たのですから当然と言えば当然です。他の騎士たちのお陰で魔物娘に襲われる事なく脱出する事はできましたが、魔界の魔力はしっかりと私を蝕んでいたのでしょう。当時はまだ性に対しても目覚めていなかったので疼きを感じる事はありませんでしたが、マークとの性交を知り、愛のあるセックスの気持ち良さに溺れ始めた私は加速度的にサキュバス化が進み、ついに彼さえもインキュバスへの道を歩ませていたのです。
―それに気づいたとき…私は決心しました。
彼の元から離れなければ、彼が駄目になってしまいます。当時でさえあまりにも強い精力のまま私と交わり、勉学方面で軋轢が生じているのにこのままインキュバス化が進めば完全に彼は薬剤師を目指す道を閉ざしてしまう事になります。それは……マークの為には決してなりません。だって、彼は出身地の村にいる薬剤師が老齢へと差し掛かり、限界なのを知ってこの道を歩んでいるのですから。私がその道を妨げ、道を閉ざす事になれば優しいマークは強く心を痛めるでしょう。
―…それだけはしたくありませんでした。
私が居なくとも…『あの街』には沢山の魔物娘が居るのです。愛の言葉を交わした私が消えても、マークほどの良い男を他の魔物娘が放っておくはずもありません。そうなれば…いずれ彼の心の傷は癒えて、安心して目的を叶える事が出来る…と……そう涙ながらに…決心したのです………。
―けれど…それからの彼は荒れました。
消えた私の情報を求める為に情報屋という仕事を始めて…街の暗部にも何度も接触しました。医療を教える学校では誰もが認める優等生として人の良い笑みを浮かべる彼が、夜には街の酒場で情報を売り、時に人を陥れる姿は…私にとっては辛いものです。けれど…姿を消して彼の様子を覗き見る私には…それをどうする事も出来ません。ただ、彼がせめて破滅だけはしないようにと見守り…祝福を授けるのが関の山なのです。
―そして…堕ちる彼と比例するかのように私もまた堕ちていって…。
彼と接触しないと決めてから…私の疼きは激しくなりました。私と彼を引き離した疼きが憎くて、どれだけ認めまいとしてもそれは私の中を荒れ狂うのです。彼と離れてからオナニーを覚えて…淫語使うようになって…眠る彼のオチンポをこっそりしゃぶりあげるのが日課になっても…まだ収まらない疼きから目を背けるのも限界になった時…私はついに堕天使になってしまいました。
―その時の私の衝撃は…筆舌にし難いものでした。
彼が好きといってくれた純白の翼も、彼が綺麗だといってくれた血色の良い肌も、可愛いねと言ってくれた天使の輪も…全部が全部、失ってしまったのです。彼のオチンポをしゃぶりあげる私が鏡に映る姿は…完全に淫らな魔物娘そのもので…ついに私は完全にアイデンティティーを失い…架空の人格を…つまり『ボク』を作り上げるしかなかった。…だって、そうだろう?ネリーとは違い、ボクには導いてくれる人なんていなかった。愛してくれた人は居たけれど…愛した人は居るけれど…でも、だからこそ、『ボク』と『私』は決して違うのだと、明確に区分しなければ、離れると決心してもこっそりとする淫らな行為を止められない『ボクら』はバラバラになってしまうのだから。
―そして…多分、それはマークも知っていて…。
あの日…ネリーが堕ちて堕天使となったあの日…我慢しているボクに対して素直にマークを求める彼女に強い嫉妬を覚えたボクは…確かにヒントを出してしまった。その時は、うやむやになって収まったものの…彼も流石に勘付いたのだろう。口には出さないけれど、ボクを愛撫するときも的確に弱点を…『私』だった頃の弱点を突いてくるようになった。…でも、それは暗黙の了解の内に『秘密』であったはずだ。少なくとも…さっきのように口に出していいものじゃない。
―まさか…ボク…捨て…られるの………?
今まで暗黙の了解でお互いにそれを表さないと、うやむやにするのだと、決めていた事を突っ込まれる…そんな事態なんてそう多くは無い。そして…ネリーに劣等感を抱くボクにとっては、それは『別れ』を告げられる事しか思いつかなかった。そもそも…今のこの状況自体がとても歪と言えるのだから。かつてマークの元から去り…彼に深い傷を残しながら、今こうしてのうのうと彼の前に顔を出す自分勝手な女と、彼を純粋に慕い、愛している女と同棲しているなんてどうかしている。そんな状況を正常化するには…どちらか一方を捨てるしかないだろう。…そして、捨てるのであれば誰だって前者を選ぶに違いない。
―嫌だ…っ!聞きたくない…!ネリーが居るから要らないなんて…聞きたくないよぉおおっ!
本能的に恐怖を感じてマークを押し剥がそうとするけれど、ボクの弱い力じゃ鍛えているマークに勝てるはずも無い。必死に抵抗するけれど、彼の逞しい体はびくともしなかった。ならばせめてもの抵抗とばかり目をぎゅっと閉じて耳を遠ざけようとするけれど、それもあまり意味のあるモノとは決して言えない。
「落ち着いてアイシャ」
「やだ…っ!捨てられたくない…嫌だよぉ!」
ボクの身体をぎゅっと抱きしめてくれるマークの姿に、かつての出来事を想起してしまう。あの時…初めて周りの状況を説明された日に…暴れるボクを抱きしめてくれた事を。残滓の思い出とも言えるその記憶に、ボクの身体からはふっと力が抜けた。
「捨てたりなんかしないさ。…ごめん。ちょっとデリカシーがなかったね。…でも、落ち着いて欲しいんだ」
「あ……ぅ……」
―そんな事を言われたら…抵抗できないじゃないか…。
安心させるように耳元で囁く彼の言葉に、ボクの中の恐怖感がどんどんと薄れていく。医者も兼任している所為だろうか。マークの言葉は耳にすんなり入ってきて安心感を呼び起こしてくれる。流石に捨てられるんじゃないかと言う不安が全部消えたわけでは無いけれど、それでも話を聞こうという気にはなった。
「…さっき…アイシャは泣いてたから…昔を思い出してね」
―み…っ見られてた……っ!?
さっき…とは、多分、ネリーとマークの交歓の真っ最中の事だろう。確かにボクはその時、泣いていたけれど…まさか見られているとは思わなかった。マークはネリーを貪るのに夢中だったし、ボクはマークの死角に居たはずなんだから。
「まぁ、実際、見たわけじゃないんだけれどね。…でも、目尻が少し濡れて、目が赤かったから」
「う……」
泣き顔を見られては居なかったけれど、その残滓を見られていたという事実にボクの顔が赤くなった。思わず目を背けたくなるけれど、ぎゅと抱きしめられている状態じゃそれも出来ない。キャラじゃないって言うのに真っ赤になった顔を、隅々まで見られて、さっき一気に冷え込んだボクの中の被虐心に火が点いた。
「それで…ずっと昔の事を思い出してね。…あの時も君は…泣いてた顔を隠して…寂しかったと…僕に甘えてきてくれた」
―…うん……『私』もそれはちゃんと覚えていますよ…。
その日…マークは薬草調達の実習でした。山の中へと篭って実践で薬草を選び取ってくる実習は一週間程でしたが…その間、勿論、私も彼と触れ合う事が出来ず、悶々とした日々を過ごしていたのです。久々に味わう一人寝の夜に何度ベッドと枕を濡らしたか分かりません。けれど、マークが無事に帰ってきてくれたあの日…私は今のように泣いていた事を悟られまいと今のように気丈に振舞ったのです。
「あの日…もう二度と君を泣かさないと心に誓ったのに…今、こうして泣かせているという事がどうにも…情けなくて…ね」
「違うよ…!悪いのは全部ボクなんだからっ!」
顔に苦々しいものを浮かべるマークが自分を責めているのに気づいてボクははっきりとそう言った。それはボクの心の底からの本心だ。そもそも…こんな歪な状況を作っているのはボク自身の迷い以外の何物でもない。それでマークが苦しむというのは、ボクには我慢できなかった。
けれど、彼はそうは思っていなかったらしい。苦々しい表情を変える事無くそっとボクの背を撫でてくれる。まるで幼い子供をあやす様なその仕草に羞恥心が煽られるものの、ソレよりも大きな安心感がボクを包み込んだ。
「いや…僕が優柔不断なのが悪いんだよ。…どっちも拒絶できずに良い顔ばかりするんだから。…でもね。そんな僕でも……はっきりと言える事が一つだけあるんだ」
―な…何……?
苦々しいものを消して真剣な表情を顔一杯に浮かべてボクを見る彼に、さっきから動悸が治まらない。マークに好きだと言われたを髣髴とされるような鼓動がボクの身体中に血液を送り込む。冷え込んだ肢体に血液と共に熱が戻ってきて、またも強い興奮が子宮の奥でうねり出すのが分かった。
「アイシャ…君が誰であろうと…どんな人であろうと…僕は君の事を愛してる。2度と離さない…っ!」
―その言葉に燃え上がらない女なんてきっと居ないだろう。
好きな男にこんなにはっきり愛してると言われる感覚は何度味わっても我慢できるものではない。まして…長年、その言葉を聞いていなかったボクにとってそれは興奮を爆発させるほどの威力を持つ媚薬だった。血液が沸騰するような錯覚と共に、溢れる感情のままボクは強く抱きつく。何か言わなければ、と分かってはいるものの、急かすような感情が空回りして、口を開けども言葉は出てこなかった。溢れる歓喜の念があるのに、それを表す事のできない不器用なボクの目からはまるで喜びが涙となっているように無制限に流れ出している。
「抱いて……っ♪マーク…ボクを抱いてぇえ…♪激しくぅ…刻み込んでええっ♪」
結局、ボクの口から出てきたのはそんな言葉だ。自分の事とは言え、何処か頭が痛くなるのを感じるけれど…実際、ボクの身体はいい加減、限界に近かったし仕方ない。一度、彼の身体で絶頂しているとは言え、それからずっと焦らされっぱなしで一度だってアクメまで到達できなかったのだから。それが何もこんなシーンでなくとも…とは思うものの、結局、ボクが堕天使になったように完全に本能に逆らう事は出来ないのだろう。
「あぁ…大丈夫。分かってる」
ムードも何もなく、おねだりしたボクに嬉しそうに微笑みながら、マークはそっとボクの両肩を包み込むように抱き上げてくれた。自分の足が地面から離れ、ふわりとした感覚がボクを掴むけれど、決して不安にはならない。大好きなオスがボクを支え、護ってくれているのだから不安になる理由などあろうはずがなかった。
―でも…負担には…なりたくないし…。
だから、ボクはせめてあまり重くないようにきゅっと力を込めて腕と足を巻きつける。さっきまでのネリーと同じように駅弁の形になったボクらは、お互いの顔をじっと見つめあった。
―マークも…とっても興奮してる…♪
顔を赤く染めて、口から発情した息を吐き続けるマークはネリーにオチンポを捻じ込んでいる時ほど理性が吹っ飛んでいるわけでは無い。けれど、その興奮はその時とは勝るとも劣らない程だった。何度か射精して幾分、冷静になっているとは言え、本来のマークの射精の量からすればまだまだ微々たる物である。まだまだ残っている精液が蠢いて、メスを孕ませる瞬間を今か今かと待ち望んでいるのが透けて見えるかのように彼のオチンポは孤立し、びきびきと青筋を立てていた。
―それは…まぁ…ボクもきっと同じなんだろうけれど…っ♪
さっきの告白で我慢が吹っ飛び、荒れ狂う興奮と歓喜を制御できないまま、涙さえ流しているボクもマークから見れば興奮しきっているのだろう。実際、さっきあれほど冷え込んだのが嘘のように今の身体は熱く、全身がまるでマークのオチンポを欲しがっているかのように疼き出している。一度止まったはずの愛液は再びマグマのような熱を持ち、ボクのオマンコからどろどろとあふれ出してマークのお腹を汚していた。
「…挿入れるよ…」
「うん…うん…っ♪来てぇ…♪」
そう宣言するマークの声に甘えた声で返しながら…ボクは荒れ狂う熱を持て余している腰をそっと近づける。その腰をしっかりと受け止めながら、マークはあれだけ射精したのにガチガチに勃起して、はち切れそうになっているオチンポで既に下着としての役割と果たしていない薄布をずらした。精液と愛液の残滓、そしてカウパーの複合液がボクの肌をまるで穢す様に塗られていく。けれど…それはマークのカウパーと精液、そしてネリーの愛液なのだ。二人が好きで、マゾの趣味も持っているボクにとっては興奮を刺激する材料にしかならず、ぴりぴりと走る悦楽に身体を揺らしそうになってしまう。
―あふぁ…♪こ、これだけで気持ち良いなんてぇ…っ♪
オチンポで擦られる感覚だけでも、絶頂の手前でずっと焦らされ続けていたボクは絶頂するのに十分過ぎるほどの快感を呼んだ。けれど、どうせアクメを迎えるのであれば、こんな前戯にもならないものでなく、マークのオチンポで膣奥まで貫かれた感覚で迎えたい。その一念でボクは必死に絶頂を堪えていた。けれど、ボクの蕩けきったオマンコは堪え性が無く、くちゅりといやらしい音をさせながら粘膜同士が擦れあうだけで、我慢ごと消し飛ばしてしまいそうな快楽を走らせる。
―早くぅううっ♪マーク…早くボクの奥まで貫いてぇええっ♪
ボクのその気持ちが通じたわけではなかっただろう。けれど、ボクがそう思った瞬間、マークはゆっくりと腰を進めて来た。子供の握りこぶしくらいある亀頭が狭い膣に押し込まれ、恥骨ごとゴリゴリと広げようとしているようにさえ感じる。けれど、ボクはそれに恐怖を感じる事は決してない。寧ろ、それだけ大きなマークのモノにこれから陵辱され、たっぷりと蕩ける快楽を約束されている未来に期待と被虐心で身を震わせて、甘い息を着いてしまうのだ。
そして、それはマークも同じように見える。狭くて窮屈でマークの気持ち良い所を全部扱きあげる専用のオマンコを無理矢理広げて陵辱し、これから味わう快楽の予感に何度も荒く息を着いて、目には劣情ばかりが浮かんでいた。さっきまでは確かにあった理性はどんどんと色が薄くなっていて、より本質的な、オスの本能のようなものに支配され始めているのが傍目にも分かる。
―あぁ…♪支配して…っボクの隅々まで…マークの本能で塗り替えてぇええぅ♪
愛しいオスが本能に支配され始めるのを見て、メスの本能が燃え上がるのを感じた瞬間、ボクの身体を衝撃が貫いた。
「あ…くぁぁぁ…♪」
大きく膨れ上がった亀頭が、膣口を通り過ぎただけで恥骨が広がり、バラバラになってしまいそうな錯覚がボクを包む。けれど、それほど広げられているというのに、痛みはまったく無いのだ。何度も何度もマークと性交したボクにとってそれは性感以外の何物でもなく、ボクの我慢を消し飛ばして絶頂へと押し上げていく。せめて子宮に来るまで…っ!と願うボクの制止を振り切って、一気にアクメへと振れる身体をボクは制御する事が出来なかった。身体中の熱が荒れ狂い、ようやく味わう絶頂に蕩けていくような錯覚を覚える。けれど、そんな身体の中を熱と共に電流が走って、ボクの身体をびくびくと震わせるのだ。
「きゅううううっ♪」
そんな風にアクメを迎えるボクだけれど、そんな事は本能に支配されたマークに関係無い。夜になれば、ある程度、性欲も落ち着いて気遣ってくれるだろうけれど、残念ながらまだ時刻は昼過ぎくらいで、まだまだ射精の回数が足りないのだ。射精する事とメスを孕ませる事しか考えられない今のマークにとって、メスが絶頂を迎えたところで腰を進めるのを止められるはずも無い。自然、絶頂にぎゅうっと締め付けるオマンコをこじ開けるようにしてゴリゴリとボクの膣の中をマークの大きなオチンポが蹂躙する。
「あああああっ♪広げ…っ♪イッちゃああっ♪」
アクメで敏感になっている上に、ぎゅうっと締まってマークのオチンポと密着している膣の中を無理矢理、掘り進められている感覚はさらなる快感を呼び起こす。そして、その快感と絶頂しているのもお構いなしに貪られている被虐感が結びついて、ボクを更なる絶頂へと押し上げていった。
「ふぁ…あああぁ…っ♪」
必死にしがみ付く腕や足にはまだ辛うじて感覚が残っているもののそれ以外はまるでボクの身体じゃないように蕩けきって制御できない。頭の中もピンク色に染まりきって、気持ち良い事しか考えられなくなっている。理性なんてとっくの昔に溶けきっているボクに今、出来る事といったら淫語を口走る事やアクメ中にマークをぎゅうっと締め付けて気持ちよくしてあげる事くらいだろう。けれど、後者はともかく、前者は気持ち良過ぎて嬌声の色が濃くなり過ぎている。
―だってぇ…だって…こんなぁぁあっ♪アクメ終わらないよおおおっ♪
未だゴリゴリと膣内を掘り進んでいるだけで膣奥まで到達していない。なのに、その間だけでボクは両手の指じゃ数え切れないほどの絶頂を経験している。絶頂の最中に絶頂し、雪だるま式に快感が高まっていく感覚は、自分の中の無くしちゃいけない大事なモノまで溶かしきってしまうんじゃないかという不安があるほどだ。けれど、今更、後戻りしようという気が起こるはずも無く、結局その不安はボクの中の被虐感を煽るだけの媚薬に過ぎない。
―こんな…っ♪こんなに気持ち良いのに…敏感な子宮口を突かれたら……ぁあっ♪
ふと浮かんだ妄想にボクの身体に強い痺れが走ってしまう。敏感になりすぎたボクの肢体は、その妄想だけでも絶頂し、身体中に甘い電流を走らせるほどだらしが無くなっている。でも、それも仕方ない事だろう。だって…それはあまりにも甘美な妄想だったのだから。膣中とは比べ物にならないくらい気持ち良い敏感なお口を…マークの大きなオチンポでぐりぐりって擦りあげられたら……気持ち良過ぎて壊れてしまうかもしれない。…そんな淫らで…心の底からそう願ってしまう妄想をして…アクメしないマゾなんてきっといないだろう。
「うああああっ♪マークぅううマークうううっ♪」
心の何処かで望んでいる自分に…理性も何も無く、ただマークのメスとして彼から与えられる快楽に溺れて、ネリーに嫉妬する事も無く生きていく淫らな自分になるのが怖くて、ボクは必死に彼の名前を呼んだ。けれど、ボク自身、それで何を伝えたいのか分からない。これ以上するのを止めて欲しいのか、それとももっと激しくして壊して欲しいのか……どちらの気持ちも確かにあったし、どちらの気持ちも同じくらい強かったのだから。
「あぁ…っアイシャ…っ!」
そしてマークはそれを催促だと受け取ったらしい。顔にさらに強い興奮を浮かべて、ボクの腰をがしっと掴んだ。そのまま腰の力だけでなく、腕を引きつける様にしてゴリゴリとボクの膣を進んでいく。興奮の所為か、さらに広がった彼のカリ首にボクの収縮した膣の突起が絡みつくが、それをまるで意にも介していないように激しく、強く、強引に、進み……そしてついにマークの亀頭は膣奥へとぶつかった。
「ひぃああああああぅっ♪」
―溶けちゃううううっ♪大事なモノ…全部溶けちゃ♪無くなっちゃうぅううっ♪
それは思った以上に甘美な感覚だった。身体中がバラバラになりそうなオチンポに力づくで膣を征服され、膣奥に押し当てられた経験は今までだって何度もある。ネリーが目の前で犯されるのを見た上に、焦らされる快感に興奮した状態で彼に犯された経験だってあるのだ。…けれど、数年振りにマークの口から「愛している」なんて言葉を聞けた所為だろうか。それらがまるでお遊びに思えるくらい、身体が燃え上がりそうな熱が子宮の中でうねり出す。そして最初はただ、熱としか感じられなかったそれが快感だと認識された時、ボクの身体は今まで味わった事の無い波に飲み込まれていた。
「ひゃぅっうう♪ひぃぁ…ひゃあああっ♪」
けれど、その波に翻弄されるボクを見ながら、キツキツに締まっているはずの膣でマークはピストンを開始する。ボクは他の男性のオチンポなんて見たことも無いけれど、明らかに大きすぎてボクの小さな身体には不釣合いな男根がズルズルと引き抜かれる度に膣肉を持っていかれそうな感覚を覚えてしまう。マークの手でたっぷりと開墾されたボクの膣内は、彼を気持ち良くする為の淫肉の突起を山ほど着けているし、きっとそれがカリ首に引っ張られているのだろう、と分かっていても、その感覚に我慢できる余裕なんて無い。ボクに出来る事といったら膣肉一つ一つから弾ける様な快感が脳へと送られ、身体をびくびくと揺らすだけだ。
―ああああっ♪こんな…こんなああっ♪
そして淫肉が引っ張られきって、ピンッと反動で戻る瞬間、ボクの突起がボク自身の膣を擦り上げる。絶頂の証のようにぴっちりと隙間が無いほど締め付けられている膣の突起同士が触れ合い、絡み合い、そこでも激しい快感を産んだ。普通の絶頂では決して味わえない快楽に、堪えようと思う思考も蕩けたボクが耐え切れるはずも無い。さらに痙攣を激しくして、ボクを支えてくれている彼の身体を揺らす。
「はぁぁ…アイシャ…アイシャぁっ!」
「ひぅ…まぁきゅうううっ♪」
陶酔とした気持ちのままボクの名前を読んでくれる彼に必死に応えようとするけれど、ボクの舌はもう上手く回っていない。出て来るのはまるで赤ん坊のような舌足らずで甘えた声だけだ。それがまたボクの快感を呼び起こし、アクメへと導いていく。
―無理ぃ…♪こんなの…無理だよおおっ♪
何が無理なのか…ボク自身、分からない。堪えるのが無理なのか、壊れるのを止めるのが無理なのか。けれど、そう思うボクの胸の中には嫌な感情のような物は決して無かった。寧ろ愛しいオスと結ばれているという無上の歓喜とマークに対する溢れそうな愛情と、そして何より自分自身を変えてしまいそうな快楽だけがボクを支配していたのだから。
「ひぅううううううううううううううっ♪」
そして…その瞬間、マークの亀頭が子宮口と勝るとも劣らない敏感な膣の箇所…Gスポットを擦りあげた。子宮でうねって全身に広がるような快感とは違い、脳に直接突き刺さるような悦楽は何時ものボクであっても我慢できるものでは無い。まして今の強い興奮と性感に支配されているボクに我慢など出来るはずも無く、ボクの恥ずかしい穴が急激に収縮し、ぴゅっと透明な液体を吐き出す。無論、その液体はボクの身体を抱えているマークの身体を穢し、とろりと粘性を発揮しながらゆっくりと床へと落ちていくのが見えた。
「やあああっ♪ごめ…なさ…っぁああっ♪」
大事で、好きで、愛し過ぎるマークを、ボクの恥ずかしいオシッコの穴から飛び出た液体が穢す感覚に、ボクの中の嗜虐心がゾクゾクとした痺れを走らせる。けれど、感じている場合ではない。せめて謝らなければ…と口を開くボクにお構いなしにマークは再び腰を突き入れる。
―あ、謝らせる事もさせて…させてくれないなんてええっ♪
「そんな事より気持ち良くしろ」と言わんばかりの彼の行動に、嗜虐的なものとは違う痺れがゾクゾクと背筋を這い上がってくる。その快楽の量はさっきとは比べ物にならない。基本の性質がマゾであるネリーと比べて、ボクはサド寄りではあるけれど、マークに対してはネリーと同じか、それ以上の被虐趣味を持っているのだろう。実際、ボクはマークを押し倒して言葉で責めるよりも、こうして性欲処理の道具のように使われる方がよっぽど気持ち良い。それは『私』の頃からも変わっていないボク自身の性質でもあるのだろう。
―それに…何より…引き抜かれるよりもぉ♪押し込まれるほうが気持ち良い…っ♪
どろどろに蕩けた狭い膣をぐりぐりと押し広げられ、ぐんぐんと逞しいマークのオチンポに擦り上げられるのにボクの中のマゾヒスティックな部分が刺激され、強い性感を生み出している。一度開いた恥骨が再び開かれ、みりみりと肉が開かれる音が耳の奥で聞こえるが、それもまたボクの中で興奮となって、身体の隅々を溶かそうとしていた。そして性感と興奮が、ボクの胸の中で合わさり、マークへの愛情と絡み合って、何とも形容し難い感情となる。気持ち良くて、大好きで、嬉しくて、愛しいその感情はボクの小さな身体には収まらず、ボロボロと瞳から涙という形で再び溢れ出し始めた。
「いぁあっ♪ひゃ…み、見ない…れええっ♪」
嬉しいのに、愛しいのに、気持ち良いのに、何故か溢れてしまう涙が無性に恥ずかしくなって顔を隠そうにも、彼の肩に回して抱きついているので何も出来ない。仕方なくボクは懇願するように言うけれど、マークはまったく言う事を聞いてくれないのだ。寧ろボクの泣き顔に興奮しているのか、腕により力を込めてボクの狭い膣を奥まで陵辱しようとしている。
―そ…それならボクだって考えが…あるんだからぁ…っ♪
ボクの顔を見ながら激しく息を吐いてケダモノのように貪っているマークの身体を抱き寄せるようにボクは腕と足に力を込める。無論、マークに支えられたままのボクが抱き寄せられるはずも無く、寧ろボクが引き寄せられていった。ボクとマークの胸が近づき、密着する姿勢はボクの泣き顔を隠すには丁度、良い。…けれど、それはボクの乳首と…そして敏感なクリが彼の身体に押し付けられると言う事でもあった。
「んひゅううぅっ♪クリぃいいっ♪乳首いっ♪」
そして、膣の感覚だけでも限界をとっくに超えていたボクが乳首とクリがマークの肌で押しつぶされるような感覚に耐えられるはずも無い。新しい場所で子宮へと直接注がれる電流のような快感が膨れ上がり、ボクの腰をがくがくと前後に震わせ、子宮の奥で再び絶頂が暴れ始める。今まで膣内だけに集中していれば良かったのに、外からの新鮮な快楽が加わり、再び大きな波になってボクを飲み込もうとし出した瞬間、再びマークのオチンポがボクの膣奥をこつんと叩いた。瞬間、ぶつんとボクの頭の中で何かが千切れる音がして、子宮の中に蠢いていたそれが一気にボクの身体を飲み込でいく。
―〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!!
まるで濁流のような快楽がボクの身体中を駆け巡り、力も言葉も思考も理性も我慢も何もかも押し流して…ボクの身体からだらんと完全に力が抜けてしまう。自然、マークの背や腰に必死に絡みついていたボクの四肢からも力が抜け、マークの身体から離れそうになるが、それよりも早く彼がボクの背中を抱きとめてくれたお陰で崩れ落ちる事は無かった。…けれど、それを幸運と思う余裕も今の僕には決して無く、身体中を駆け巡る快感に身を震わせる事しか出来ない。
―あはぁ…♪ボク…ボクぅ…ば、馬鹿になっちゃったぁぁ…♪
身体中に力が入らず、オマンコさえ脱力してガバガバになっている。今もなお絶頂の中に居て本来はオマンコで痛いくらいに締め上げてもおかしくないのに、そんな力さえボクには残っていなかった。ぱくぱくと空気を吐き出すだけの穴になったボクの口からはどろりと唾液が零れ落ちるが、それを留める事も今のボクには出来ない。無論、そんな状態で思考が上手く行くはずも無く、気持ち良い事だけがボクの頭の中を占領し、他を完全に追い出してしまっている。
「しゅきぃ…♪オチンポらいしゅきぃ……っ♪」
気持ち良い事だけしか考えられないボクは、思考する暇も無く本能のまま淫語を口にした。魔物娘の本能が、こうすればもっと気持ち良くなれると、もっと興奮してくれると教えてくれて、自分がどういう意味なのか語彙を調べる暇も無く、言葉になってしまう。けれど、今のボクにとって、淫語を口にするのはとっても気持ち良い事でそれ以上でもそれ以下でもなく、恥ずかしい気持ちなんてまずあろうはずもなかった。
「まぁくぅ…まぁくの所為でぇ…ボクのオマンコぉ♪壊れちゃったよぉ…♪」
実際のところは締め付けを担当する骨盤底筋が一時的に麻痺してしまっているだけなのだろう。壊れたと言っても最初の頃のようにぎゅっとマークのオチンポを咥え込んでいるし、奥へ奥へと誘うような突起の律動は健在だ。しかし、それでも、絶頂を味わっているはずなのにまったく力の入らないオマンコは壊れたといっても違和感が無い。メスとして一番、重要なオスの精子を搾り取る機能が半ば麻痺してしまったのだから。
「せきにん…しぇきにんとっれぇえきゃふうううっ♪」
そして大分、緩んだボクのオマンコを好機とばかりにマークのオチンポがピストン運動を開始する。緩んだといってもボク自身の身体が小さいのでまだまだキツいはずなのに、彼はまるで性欲処理に使う淫らなイボイボの一杯ついた道具のようにボクの身体を簡単に持ち上げて、抽送して見せた。勿論、まだまだ収まらない絶頂感はオマンコの中を敏感にしているので、ごしごしと反り返ったカリ首で膣壁を擦られるたびに、ボクは何度も絶頂していく。
「ひゃあっ♪おにゃほーるみたいにされるのイイっ♪まぁくのせいよくしょりぃ…♪さいこーっ♪」
擦られたオマンコの壁からじんじんした熱が広がり、オチンポに押し上げられるように子宮へと流し込まれて膣奥を叩かれる快楽と一緒になって絶頂感に。一度の突き入れのたびに高く高く絶頂していき、ボクの中から四肢が消えていく。どんどんと過敏になっていくオマンコに集中する為に、四肢の感覚が消えて、全身がマークの精液を搾り出す為の淫らな穴になっていくような錯覚がボクを支配し始めていた。
―でもぉ…っでもそれがとっても…とっても気持ちイイよぉおっ♪
余計な事を何も考えず、ただ、マークだけを感じている幸せに誰が抗えるというのか。少なくともボクには抗おうという気さえ起こらず、その感覚を甘美なものとして受け入れていた。当然だろう。気持ち良い事しか考えられない今のボクにとって、その感覚は至上の幸せだったのだから。
「まぁくぅっ♪いつでもだしてねっ♪しゃせーしてねっ♪ボク、まってるからぁっ♪しきゅうでぇまってるからあぁぁっ♪」
それは間違いなく本心だった。既に何度も絶頂を経験しているボクの子宮は限界なんてとっくに超えていて、早く精液を味あわせろ、と強く主張している。孕む準備も万全に出来ている子宮は抽送をより激しく受け入れる為に今も、ゆっくりと下に下りてきてのオチンポに激しく吸い付いているのだ。けれど、肝心な射精はネリーにたっぷりと注がれた所為か中々、来ない。筋肉に力が入らなくて幾分、緩くなったとしても、オマンコの中で激しく暴れまわっているオチンポは衰えるどころか大きく、熱くなっていて、気持ち良くなってくれているとは思うものの、こうも焦らされると流石に心配になって来て、思わず懇願してしまうのだ。
「うっ…くっ…!!!」
その懇願に応えてくれたわけでは無いだろう。けれど、マークはそう小さく呻きながら歯の根をガチガチと鳴らした。しっかりと歯を食いしばっている口からはボクと同じようにだらだらと唾液が漏れだして、顔を真っ赤にしながら快感を堪える姿は他の人が見れば情けない男と映るかもしれない。でも、マーク以上に情けない顔を――未だに涙が止まらず、唾液と汗で顔中を濡らしているのだから――しているであろうボクにとっては、それは最高の瞬間が近づいているという証拠だった。
―あぁぁっ♪まぁくの射精来る…っ♪ボクの子宮一杯にしちゃうううっ♪
そしてその予感だけでボクが絶頂した瞬間、コリコリした肉の硬さと柔らかさを併せ持つ子宮口に再びマークの亀頭が到達し…子宮の奥へ爆発するような熱を撒き散らす。一瞬の間を伴って、ソレが射精であると子宮が認識した瞬間、ボクの身体は子宮から湧き起こるアクメにがくがくと揺れ、より激しく搾り出そうとオマンコがマークを締め上げる。同時に締め上げられた尿道から潮が再び噴出して、マークの下腹部にまたボクの匂いをしっかりと残してしまう。
「びゅぅううってぇ♪びゅるびゅるきちゃうううううっ♪あついのいっぱいくるううううううっ♪」
「あ…ぐぁ……っ!」
ボク自身、制御できない膣の締め付けにマークが翻弄され、小さく声を上げるのが見えた。それがまたボクの中の興奮を燃え上がらせる媚薬となって、絶頂をより高いものにしていく。自然、ボクの小さな身体に収まりきらず外へと溢れ出す様な強いアクメは、復活した骨盤底筋を強く収縮させ、一滴残らずマークの尿道から精液を搾りだそうとしていた。
―ふぁぁ…しぇいえきぃ…おいしいよぉ…♪
精液が一滴さえ漏れ出ない様になってから、ようやくボクの絶頂もひとまずの収まりがついた。けれど、収まりがついたって言うだけでまだまだ余韻はボクの中に残っていて、時折びくんと腰を震わせてしまう。その度に一度の射精程度じゃ衰えず、未だボクの中で青筋を浮かべて力強く押し広げるマークと擦れあって、子宮まで快楽が上ってくるのだ。
「まぁ…くぅ……♪」
絶頂の余韻をそのまま吐き出しているかのように甘く舌足らずな声で彼の名前を呼ぶと、マークは幾分、理性を取り戻した瞳でボクを見下ろしていた。しかし、今は所謂、『賢者タイム』というだけで、興奮そのものは決して衰えていないに違いない。だって、ボクのオマンコの中にぴくぴくと震えるマークは、射精して一回りほど小さくなったけれど、まだまだガチガチに勃起していて子宮口をゴリゴリと削ってくれているんだから。
「アイシャ…ごめん…僕はまだ…」
「うん…分かってるよぉ…♪」
気遣うように謝る彼の懸念は、ボクの体調だろう。自分の腕の中でぐったりとしていて、口調こそ確かなものの理性の色を完全に失っているのだから、冷静になれば誰だって不安になる。ましてボクら堕天使は幼い少女のまま成長が止まっているのだ。その罪悪感もさらに強いものとなるだろう。けれど――。
「ボクだってぇ…まだまだ満足してないからぁ…♪ネリーよりも…一杯一杯射精してくれないと…許さないからぁ…♪」
たった一度の射精で魔物娘の本能が収まるはずもない。インキュバスであるマークは一度だけで一般男性の数倍の量を射精するけれど、精液の味を覚えた魔物娘にとってそれは前菜程度の量だ。寧ろこれから味わうであろう精液の量を思って、子宮が疼きを収めるどころかより激しく亀頭へと吸い付いている。さらに…ボクの場合、目の前でさっきまで激しく犯されていたネリーがいるのだ。何度も何度も射精されて、膣から漏れ出すくらい愛してもらっていた彼女を思い出せば収まる理由などあるはずもない。
「うん……分かった」
納得したように言って、マークはネリーが横たわっているのとは対岸のソファへと歩き出した。無論、オマンコ以外には力が抜けて指先一つ動かせないボクも彼に抱きかかえられて移動している。普段、自分で歩く時にはそれほど気にはならない揺れが一歩踏み出すたびにボクの子宮を押し上げ、どろどろの熱い愛液を漏らした。腰を突き入れられ、激しく貪られるのとは少し違う振動は何処か新鮮でぴりぴりとした痺れを肌の下に走らせる。
「少し…下ろすよ」
「うん…♪」
安心させるようにしっかりと言ってくれるマークの心遣いだけで子宮が熱くうねるのを感じながらボクは小さく頷いた。それを確認したマークはゆっくりとソファへとボクの身体を下ろしていく。けれど、ボクらの一番敏感なところだけは決して離れることは無く、下ろされていくボクに引きずり込まれるようにマークもソファの淵に膝をかけた。
「よいしょっと」
「んぁああっ♪」
そして、マークはそのままボクの身体をくるりと回転させる。彼のオチンポを軸にするように回り、今のボクはマークに背筋と羽を晒すような状態になっていた。御尻をマークの方へと突き出した今のボクの格好はまるでケダモノで…そんなボクと繋がる体位は俗に言う後背位というモノだろう。けれど、ボクにそんな格好をさせたマークは中々、動かずに、ボクの腰辺りにはっきりと感じられるほどの視線を落としていた。
「ま…まぁく……?」
その焦らされるような感覚に、理性なんて吹っ飛んでしまっているボクが我慢できるはずも無い。ピストンを乞うように腰を左右に振るうけれど、マークの反応は悪かった。ボクのオマンコの中では、小さくなっていたオチンポが再び力を取り戻し始めて、血液を亀頭に集めて蕩けそうな熱を放ち始めているので冷めてしまった訳では決して無いだろう。
―それなのにぃ…どうしてぇ…♪ボクはもう…焦らされるのは嫌だよぉ……っ♪
そんな切実な気持ちに身体に少しばかり力が戻り、ボクは首を思いっきり傾けて後ろを向いた。そこではマークが何処か真剣な目でボクの翼を見ている。どうしたのだろう?と蕩けきった思考の中で考えるけれど、中々、答えは出ない。
「……綺麗だ」
―…え…?
唐突に告げられたマークの言葉にボクの胸中に熱い何かが蘇る。最初は漠然として形になっていなかったそれが、一度は消えたはずの羞恥心だと気づいた時、ボクの顔は興奮とは違う感情で真っ赤になった。
「そ…そんなお世辞は要らないよ…っ♪」
そうつれなく答えるけれど、その中に眠る歓喜や羞恥の念まではまったく隠せていないのはボク自身、良く分かっていた。甘ったるい舌足らずな声に、明らかな上ずった色が篭っていたのだから。時折、ボクよりもボクの事を知っているんじゃないかと思うくらい聡いマークに、そんな声で感情を隠しきれるとは到底、思えない。
「お世辞じゃないよ。…アイシャの翼は本当に綺麗だ…」
―〜〜〜〜〜っ!!!!
追撃のように放たれたその言葉にボクの中の恥ずかしさが爆発する。だって…ボクよりもネリーの方がきっと綺麗な羽をしているのだ。どれだけ手入れしても、自慢の翼だと思っていても、彼女はさらにその上を行く。綺麗と言われる質こそ違うモノの、自分の翼に見慣れているボクでさえ、ネリーの美しさには目を奪われる事は少なくない。そして…それはボクの中でとてもコンプレックスだったのは言うまでも無いだろう。だからこそ、ボクはマークの言葉を信じることはできなかった。
「…アイシャの翼の方が僕は好きだ」
その「方が」と言う比較対象は、間違いなくネリーだろう。…そう思うと胸の中に熱い何かが湧き上がる。マークは確かに優柔不断な面があるし、お世辞は言うけれど…嘘は決して言わない。そんな信頼がボクの中にある所為だろうか。コンプレックスだったはずの翼を好きと言ってもらえて…ボクの中に燃え上がったそれはさっき快楽に流されて失っていた愛しさだった。
「好き………ぃ♪ボクも…好きだよぉ…♪マークの事…大好きだよぉ…っ♪」
「アイシャ…」
さっきは言えなかった言葉が今は何故かすらすらと言える。…それはきっと…ボクの中でネリーに対する嫉妬や、劣等感のようなものが少なくなったお陰なのだろう。ボク自身あまり自覚していなかったけれど…心の何処かでボクは二人のお邪魔蟲で…好きと決して言ってはいけないと…自分の中で歯止めをかけていたのかもしれない。
―でも…今はぁ……♪
ボクのコンプレックスだった翼を好きだと言ってくれたお陰で、劣等感が減り、素直に好きと言葉を出せるようになった。それだけで…何処かボクは救われた気分になる。…今まではきっと何処かで、遠慮や我慢をし続けていたのだろう。それが無くなって、心の中が軽くなったのがボク自身、強く感じる。
「だからぁ…♪一杯、愛してぇっ♪ネリーよりも沢山愛してっ♪たっぷり射精して…っネリーよりも先に孕ませてぇええっ♪」
懇願するボクに小さく頷いて、マークはそっとボクの腰を掴んだ。そのままマークのお腹に着きそうなくらい反り返ったオチンポでゴリゴリとアナルの側の壁を削り始める。さっきとは逆の側のオマンコを掘り進む快楽はやっぱり強く、さっきと同じようにボクの中の愛しさを押し流し、ボクを気持ち良い事しか考えられない駄目な子にしてしまうかもしれない。けれど…マークが傍に居てくれれば、どれだけ壊れても、きっと元に戻れる。そんな信頼がボクの中には生まれていた。
―あぁ…そうかぁ…♪ボクは…今も堕ちてるんだね……ぇ♪
快楽ではなく、マークと言う一人のオスに。身も心も惹きつけられて、どんどんと堕ちていく。それは天使から堕天使に変わったときのように際限など決して無い。無限に堕ち続け、彼に強く依存していく感覚は…ある意味、とても恐ろしいモノだろう。…けれど…ボクにとってはそれはとても幸せで、何より幸運な事だと思うのだ。…だって、それだけ惹かれ、心酔出来るオスをボクは見つけることが出来たのだから…それが幸運や至福でなくて何と言えるだろうか。
―マークぅ…これからも堕としてねぇ…♪
甘えるようなその願いをボクは心の中にだけそっと閉じ込めながら、ボクは何度も何度も彼へと堕ちていく感覚に、どんどんと夢中になっていった。
BAD END
〜おまけ〜
「ふぁあっ♪まぁくいいよぉ♪もっとずんずんしてぇっ♪ケダモノセックスしてぇええええっ♪」
−…まったく。何時まで交わっているんですか。二人とも。
心の中で呆れたようにそう言えども、私の身体は起きる事が出来ません。無論、身体にはいい加減、力が戻り始めていますし、意識もしっかりしています。二人の交わりを間近で感じさせられて、オマンコが濡れ濡れになって、子宮が疼いていますが、別に何時もの事なので気にしません。…体調はほぼ万全。精液を沢山貰って頭も若干すっきりしている私が起きられない理由なんて…一つだけでしょう。
―…ようやく結ばれたんですから今日だけは許してあげますけれどね。
目の前で激しく交わる二人――私の愛するマークと、私の大好きなアイシャさんがようやく想いを交わして本来の恋人らしい姿で交わっているのです。その様を邪魔するほど、私は無粋ではありません。
―…ホント……良かった……。
そう思う私の心に嫉妬や悲しさと言うものがない、とは決して言い切れません。だって…アイシャさんに堕とされて淫乱堕天使になった私だって女の子なのですから。愛するオスを独占したいと言う気持ちは少なからずあります。けれど…私は決してマークの心を掴む事は出来ませんでした。
―だって彼の心の中にはずっと…アイシャさんが居て…。
長年一緒に暮らしてきているのですから、二人の間に過去、何かがあったのは私にだって想像がつきます。マークに深く突っ込んで聞いた事はありませんが――そもそも私は突っ込まれるのが好きですし…っ♪――時折、アイシャさんを見るときの目が遠い過去を見るもので…その色には愛しさの残滓が一目で分かる程、残っていたのですから。アイシャさんもアイシャさんで、ときどきマークさんを見る目に愛しさだけでなく、悲しさのようなものを浮かべている…となれば…私の思いつく答えなんて一つしかありません。
―もっとも…なんで二人が別れなければいけなかったのか、と言う所までは判りませんけれど…。
けれど、私にとってはそれで十分でした。自分の女としての敗北を知るには…いえ、最初から勝負にもなっていない事に気づくのには十分過ぎるくらいだったのです。…勿論、最初はかなり苦しみました。けれど…私と同じかそれ以上にアイシャさんやマークも苦しんでいるのに私は気づいてしまったのです。
―それからは…趣味と実益とお節介を兼ねてマークさんに積極的にアピールしたりして…。
嫉妬や悲しみの感情はあったけれど、私にとってお二人はやっぱり愛してる人であり、大好きな人なのです。だから…私は積極的にアピールする事で、マークさんやアイシャさんが少しでも素直になれるように働きかけてきました。…まぁ、そこに自分だけを見て欲しいと思う独占欲が無かったと言えば嘘になりますが、それでも結果はこうして二人が想いを交わしたのだからハッピーエンドと言えるでしょう。
―そう…だから…私はもう…お邪魔虫なのです……。
そう思うと閉じているはずの目尻から涙が流れるのが判りました。横たわって動けない振りをしているのですから、そんなものを流してしまえばバレてしまいます。だから、必死に私は涙を堪えようとしましたが…私の身体は言う事を聞かずに、まるで壊れた水道のように涙を漏らしてソファを濡らしていました。
―…あぁ…でも…今だけは…二人の交わりが終わったときに、せめて笑って祝福して差し上げられるように…今だけは…。
「あはぁっ♪ねぇ…ねりぃ…♪いつまでねたふりをしてるんだい…っ♪」
―…え?
余りにも近くで聞こえるアイシャさんの蕩けきった声に私は思わず目を開けてしまいました。瞬間、私の目にはマークに両手を掴まれて、串刺しになっている――勿論、マークの逞しいオチンポにです――彼女の姿が飛び込んできます。身体中に汗を浮かべて、普段、私を押さえる側のアイシャさんが劣情で顔一杯に染めて、くりくりとした可愛らしい瞳から涙を漏らしながら、舌足らずの声と共に甘い吐息を吐く姿は…とても美しいものでした。黒曜石を一枚一枚丹念に削り出したかのような美しい翼と、無駄な贅肉の一片たりとも着いていないすらりとした足、そして控えめな胸と薄桃色の乳首が、マークの太いオチンポに蹂躙されるたびにがくがくと震える様は私にとっては酷く羨ましい姿で…子宮から精液交じりの愛液を漏らしてしまうのです。
「あは…♪やっぱりおきてたぁ…っ♪」
「あ…ぅ……」
隠れて盗み聞きしていた事をあっさりと見破られて、私は顔を赤く染めました。せめて涙に濡れた瞳だけは見せまいと逸らしますが、きっと泣いていた事もきっとお見通しなのでしょう。アイシャさんは何時だって…人の心の機微には敏感な女性なのですから。私が二人の間に入り込まない事を知って落ち込んだときにも…マークと一緒に慰めてくれた程の人なのです。恋敵である私にさえ反応して、そこまでしてくれる女性に、淫らな行為でしかマークの気を惹けない私が勝てるはずなんて最初から…無かったのでしょう。
「ボクもぉ…そろそろげんかいらからぁ…♪つ…つぎよろしくねぇ…っ♪」
「え…でも……」
―もう二人は想いを交わしていて…。
私はただのお邪魔虫なはずなのです。アイシャさんがマークを独占するのには正直、邪魔な存在のはずです。なのに…なのに、どうして、アイシャさんはそう言ってくれるのか、私には理解できませんでした。
「まぁくはぁ…ぼくたちのもにぉ…らからぁ♪」
―アイシャさん……。
既に襲い来る快感が言葉すら飲み込み始めているのでしょう。アイシャさんの言葉は段々と言葉の様相から外れて言っているのが分かりました。けれど…それでも必死に私に伝えようとしてくれている事もまた…私には分かりました。
「それにぃ…♪いうじうふだんのまぁくがぁ…ぼくだけがしゅきなはず…ないしっ♪」
―…それにはちょっぴり同意します。
マークさんの優柔不断っぷりは私がこうして二人の間に強引の割り込めた事からでも分かります。本命はアイシャさんのはずなのに、私にも時折、誤解してしまいそうな熱い視線をくれるのですから。それだけならまだしも、インキュバス化しきったマークさんは快楽のルーンが刻み込まれた堕天使一人では相手にしきれないほどの精力を持っているのですから性質が悪いのです。
―けれど…それでも上から情けをかけられている感は否定できません。
二人は既に想いを通じているわけですから私は正直、オマケです。それなのに私を認めてくれている…と言う事に勝利者独特の余裕があるような気が…敗北者の私にはするのです。無論、それだけではなく単純に私やマークの事も考えてくれているのでしょうが、やはり敗北者としてはその情けは無視できません。
―だからこそ、私は嬉しいのを…堪えても…言わなければいけない一言があるのです。
「……後悔…しますよ?」
「んきゅっ…♪させてみればいいよぉ…♪」
はっきりとした私の敵対宣言にアイシャさんはぴくぴくと震えながらそう応えます。見れば股間からは今日、何度目かの潮を噴出していて、床を汚していました。けれど、そんなアイシャさんに構う事無く、再び性欲に支配されているマークさんは腰を激しく振るだけです。その姿にさっきまで彼女に愛を囁いていたマークと言う男性はまるでおらず、交わっているメスをただ孕まそうと言う事しか考えられないオスそのものでした。
「そしてぇ…おちていこうね…♪ボクたちみんなでぇ…♪さんにんでからみあってぇ…いっしょにぃ…っ♪」
そう言った瞬間、アイシャさんの顔から余裕のようなものが完全に消えました。元々、大分、我慢してくれていたのでしょう。顔一杯に広げた欲情をまるで発散するかのように、彼女の口からは淫語が飛び出し始めます。
「ふぁああああっ♪まぁくのオチンポがイイぃぃっ♪おちちゃうのぉっこれなんどでもおちちゃううううっ♪」
―アイシャさん…綺麗……♪
全身で愛しいオスを感じてきらきらを光る汗を弾けさせながら身を捩るアイシャさんの姿に、さっき落ち着いたはずの私の身体に火が灯ります。だって…彼女が感じて身悶えしている快感は…私だって一歩踏み出せば手に入るものなのですから。まるで見せ付けられるように私の目の前で感じて、淫語を撒き散らす彼女の姿に、少し先の自分の姿を重ね合わせてしまい、じゅんっと子宮が愛液を潤滑油にして唸りをあげるのです。
「おちるうううっ♪とけちゃってるのがおちてぇぇっ♪とんじゃううううっ♪」
矛盾した嬌声を上げながらアイシャさんは全身をびくびくと震わせます。足や翼、胸だけではなく、マークに掴まれている腕や腰までも含めて全身で感じている姿は芸術品めいた美しさでした。…いえ、実際、アイシャさんは芸術品なのでしょう。マークと言う人の手で磨き上げられ、魂を込められ、これ以上無い美しさとエロスを撒き散らす彼女が…芸術品の括りに入らない訳もありません。
「あひゅ…ふわぁ……♪」
そしてその芸術品は…崩れ落ちて瞳から色を失ってもまだ美しいのです。瞳に色を失い、時折ぴくりと全身を震わせて余韻を感じる以外はまるで動かないアイシャさんには病人さながらの不健康さを感じますが、それがまた崩れ落ちる彫像のような倒錯した美しさを発揮していました。一瞬、大丈夫なのだろうかと不安になりましたが、息はしっかりとしていますし、あまりの快楽についにヒューズが飛んで意識が混濁しているのでしょう。私も…さっきまでは同じ状態だったから分かります。
「あの……マーク…」
「…うん。その…ごめん」
意識を失いかけているアイシャさんを見ながらも…私の胸はこれから味わうであろう快楽の予感に胸が一杯になっていました。そんな自分の浅ましさに何処か嫌気が差してしまいますが…きっとソレはマークも同じなのでしょう。だらりと肢体を広げるようなアイシャさんを抱きかかえ、私の脇へと寝かせながらも、その顔はとても気まずそうなものでした。
「アイシャの言うとおりだよ。…僕は優柔不断だ。…アイシャに告白したけれど…ネリーにも惹かれている自分が居るのは確かだ」
「マーク…」
「…だから、悪いのは全部、僕なんだよ。ネリーもアイシャも何も悪くない」
―マークも…自分を責めている……。
考えてみれば当然です。優柔不断と言うのは他人もそうですが、自分も強く傷つける欠点なのですから。きっと今のマークの胸中には、どちらと決める事のできない激しい自責の念が荒れ狂っているのでしょう。…しかし、そう理解していても、私にはそれを解消してあげる事は出来ません。三角関係の当事者である私が何を言っても…マークにとってはきっと何の慰めにもならないのですから。
―だから…せめて……。
その気持ちを解きほぐす事は出来ないけれど…少しでも忘れられるように、と私は一歩、彼に近づき、背伸びをして彼の唇に舌を押し付けました。驚いて身を硬くするマークが逃げられないように、頬を両手で挟みこむようにしてしっかりと捕まえ、ちゅるちゅると唇を吸い上げます。まるで…アイシャさんがさっきやっていた行為をリピートするかのようなキスに…マークも少しずつ応えるようになり…舌を絡ませて唾液を塗りつけて始めました。
―たっぷり気持ち良くしてあげます…全部…自責の念も何もかも忘れられるくらい全部………っ♪
その気持ちのまま激しくなっていく舌はそのまま興奮となり…私とマークはまた快楽の坩堝の中に飲み込まれ、何処までも堕ちていくのでした。
10/11/11 03:25更新 / デュラハンの婿
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