連載小説
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その1
 『拝啓、アイシャ様。このお手紙が届く頃にはもう豊穣の秋も終わりに近づき、冬も間近となっている事でしょう。
 この街では、半期が過ぎ、決算に追われる商人たちが街を賑わせています。アイシャ様のおられる場所はどうでしょうか?この街よりも北にあり、寒さも厳しいのではないかと心配です。どうかお体を暖めて身体を壊さないようにしてください。

 所で例の件ですがお陰様で成功いたしました。アイシャ様の言うとおり、二人でとっても気持ちよくなった事で、お互いに気持ちを通わせる事が出来、今ではとっても幸せです。今はまだ夫――こう書くのもなんだか気恥ずかしいですね…けれど、新鮮な響きです♪――が重要な役職に着いているので街を離れられませんが、一段落着けば万魔殿に住居を移そうと考えています。夫もその案には強く賛成してくれて、時折、待ち遠し過ぎて辞表を出そうか悩んでいる姿が何処か可愛く思えます…♪こうして以前とはまた違った強い絆で結ばれたのも全てアイシャ様のお導きのお陰であり、アイシャ様には感謝したくともし足りません。本当に有難うございます。

 心ばかりのお気持ちですが一緒に小切手を同封させて頂きました。これは私が奉仕活動の際に得た報酬ですので、本当に小額ですが、宜しければ受け取ってください。

 それではまた…万魔殿ででも会える事を祈って。

                                        修道女   ルカ・リリライトより』


 そこまで読んでボクはその丁寧な手紙をそっと畳む。折り目に従って規則正しく折り、ハーピー便で今日届いた封筒に戻ろうとすると、そこには手紙に書いてあった通り一枚の小切手が入っているのが分かった。取り出して額を数えてみると、確かにそれは決して多いとはいえない量である。けれど、基本、奉仕活動をどれだけ行っても報酬を得られない――代わりに何もしないでもパンを得られるのだけれど――修道女がここまでの額を集めるのにどれだけの汗を流したか考えるは難くない。正直、受け取るのに気が引けるが、現金収入の無いボクにはハーピー便を利用するお金すらない。それならば、辻馬車や商人を利用して送るという手が一般的だが、悪意のある業者だった場合、中身を暴かれるという話も聞く。

 ―なら…飛んで行けば良いんだけれどね。

 そう。ボクは人間じゃない。かつてエンジェルとして人を導く為に天界から降り立った存在…の成れの果てだ。種族として正式な名前はボクも知らないけれど、堕天使だのダークエンジェルだのと言う名称が一般的らしい。ストレート過ぎるネーミングだが、これだけ端的にボクらを示す言葉も無いだろう。ボクらは全て天使だった存在が紆余曲折を経て、快楽に染まった存在なのだから。
 そんなボクの背には、天使だった頃から立派な二つの羽がある。見るからに艶やかな黒に染まっていて、広げるだけで目を惹くボクの自慢の翼だ。この翼を持ってすれば、ハーピーほどではないにせよ数日であの街までいける。それは以前、近隣にまで名薬剤師として名を広げているマークの薬を『あの街』まで届けに行った時――そしてこの手紙の主、ルカと出会った時でもある――に証明済みだ。

 ―けれど…問題が一つある。

 「あら…アイシャさん。どうかしました?」

 ―その問題が、小さく小首をかしげてボクを見ている。

 かつて染み一つなかった鮮やかな肌色は、男を誘うような青白い色に変えていながらも、美しさは決して衰えては居ない。暗闇が何より似合うじんわりとした青白さが陽光に晒されているのは何処か場違いのようにも感じるが、それがまた強くギャップを描きたててオスの目を惹くものだ。
 かつて春の陽光そのもののようだった金色の髪も今は一本一本がまるで魔力を込めた銀糸のようにきらきらとしていて、目に眩しいくらいだ。目が飛び出そうなくらい高値で取引されるその糸に決して劣らない煌びやかさは、オスの独占欲を刺激するものだろう。
 また局部しか覆わない純白の薄布と手錠や足枷から伸びて身体中に巻きつけられている鎖が、彼女の持つ淫靡さをさらに助長させている。小さく身じろぎするだけで鉄と鉄が擦り合わさる音がして、自然とそちらに目が引きつけられてしまう。肩から下腹部にかけて刻まれた快楽のルーンを見せ付けるかのように、胸と股間しか隠さない薄布も、同様に目を惹いて止まない。少し手を触れてズラせば、すぐさま性的な部分をお目にかかれるであろう格好は見ているだけでオスの欲情を描きたてるに違いない。
 かつて神の教えのみを是とし、引き締まっていた幼い顔も今は物陰が無い。こうしている間にも快楽のルーンの影響を受けているのか、微かに頬を紅潮させ、舌で唇を潤す動作だけでも色っぽさを感じるものだ。強い意志を込められていたブルーサファイアのような輝きを持った瞳も、今は欲情と淫らな妄想に塗れた紫の濁ったモノになっている。顔の造詣こそ未だ幼い少女のようなものなのに、性感を開発されきった性奴隷のような姿はオスの本能を刺激するモノと言えるだろう。

 ―そして何より…。

 ボクに勝るとも劣らない美しい翼が彼女の背中にはある。羽の一本一本がまるでシルクのような手触りで、触っているだけで夢見心地になりそうになる程だ。色艶も決してボクに劣っておらず、ボクの翼が艶やかならば、彼女の羽は濡れているような美しさだろう。

 ―それがまた…ボクの中の嫌な感情を刺激する。

 「いや、何でもないよ」

 ボクにとっての最大の問題―ボクと同じダークエンジェルのネリーにそう返しながら、ボクは今度こそ手紙を封筒へと戻した。
 そのまま視線を上げると、薄いピンクに塗られた壁と、そこから秋の陽気を一杯に取り込んでいる窓が見える。ボクらがいるのは、この村唯一の薬剤師マークの診療所兼住居の来客用リビングだ。来客用だけあって、壁には見るからに高級そうな本棚や、幾つかの賞状が飾られている。ボクとネリーが今座っているのも羽毛をその身に詰めた黒染めのソファーで、さらさらとした肌触りはそれだけで高級品だと否応ナシに分かる。そこだけ見ると普通だが、以前、ジパングからやってきた、と言う旅人から貰ったカケジクとやらも掛けられているし、マークが助けた商人が遠い国から持ってきたツボなんかも並べられている。小さな村にぽつんとある診療所とは思えないほどのカオスっぷりが展開しているが、そのカオスっぷりがここの主の度量を示しているようで微笑ましい。

 ―まったく…損得勘定抜きで人を助けるんだから。

 彼が助けるのは、何もお金を持っていたり、診療所に駆け込んでくる村の人々だけではない。前述の通り右も左も分からなくて空腹で行き倒れた異邦人もそうだし、盗賊に襲われて身のみ着のままで何とか命からがら逃げ出せた商人もそうだ。損にしかならないと誰もが思う相手でさえ、彼は無償で治療する。前述の商人の時など、商人だけでなく、仲間割れした盗賊までも薬の調合をしていたのだ。その盗賊は今は更正して、魔物娘と元気でやっているが、あの時ほど、マークの正気を疑った事は無い。

 ―…まぁ、理由は分かるだけに何とも言えないんだけど。

 彼のかつての恋人は、いきなり彼の傍からいなくなり、『死んだ』と言う噂まで立てられていたのだから。大事な人が『死んだ』と聞かされる側の辛さはきっと誰よりも知っているからこそ、マークは可能な限り患者を救おうとしている。
 ……けれど、人間だけでなく魔物娘まで治療するのは正直、何とかして欲しい。魔物娘の性質上、周りでボクたちが目を光らせていれば悟って身を引いてくれる娘が多いが、マークに本気になってしまった魔物娘が増えるのでは、と何時だって気が気じゃないのだから。

 ―……けれど、それが原因で…今、こうして彼の傍に居れるんだよね…。

 ずっと昔に諦めていた事だけれど…そうしてマークが魔物娘も差別せず癒してくれたからこそ、ボクは今、こうして彼の傍に居れる。遠くから見つめる事しか出来ないと、会う事なんて持っての他だと決め込んでいたのに、ボクは今、彼に触れられる距離に居られる。…そう考えると責めようにも責められないのが本音だった。

 「あ…またマークさんのこと考えてますねー♪」

 そう言ってボクの顔を覗きこんでくるネリーは…まぁ、ボクにとっては恋のキューピッドのようなものだろう。教会に追われる彼女を逃がしてあげようと、追っ手をかく乱しようとしたのがそもそもの始まりだった。必死に逃げて周りが見えていないネリーを追わせない様に横槍を入れたのだけれど…追っ手は思ったよりも優秀で、深い傷を幾つかつけられてしまった。けれど、その時のボクには傷を治せるような行き着く場所も、落ち着いて治療できるような場所も、帰り着く場所もない。明確に感じる死の予感に身体が蝕まれるのを感じながら、せめて最後にマークの顔をみようとしている時に意識が途絶えて、彼に拾われたのだから。ネリー自身、ボクが傷だらけで倒れていた経緯に関係があるなんてまったく考えた事もないだろうけれど、彼女と関ろうとしなければ、こうしてマークの傍に居る事が出来ないのも事実なのだ。

 「そもそもボクたちに好きな相手の事を考えていない時間なんてあるのかい?」
 「それもそうですね…。私もさっきからマークさんの事を考えていました…♪」

 ―そして、そんな恋のキューピッドは目下ボクの最大の恋敵でもある。

 ネリーもまた、マークに命を救われた魔物娘だ。元々、天使であった彼女は、主神であるお母様から魔物の討伐を命じられ、地上へと降り立った。そして、教会のシンボルとして軍勢を率い、魔界へと侵攻したのだけれど、結果が惨敗。何とか逃げ出したけれど…恐らくはたっぷりと魔力を魔物娘に注がれていたのだろう。魔物化は始まっていて、教会へとたどり着いた時には魔物娘として排除されかけていた。そんな時にボクが通りかかったのだけれど…ネリーはそれに気づかず、天使の象徴でもある翼をボロボロにして行き倒れたところをマークに拾われて、治療を受けた訳だ。

 ―…そして勿論、そんなに優しくされたら気になっちゃうのも仕方ないんだけど。

 天使としてプライドを保ったまま、ネリーは確かにマークに惹かれ続けていた。そして、その影響かどんどんと魔物娘化は進行し、歪んだ形のまま彼の精を強請り続けて居たのだ。ボクとしては、マークから離れて欲しかったけれど、ボクに彼の所有権は無い。ボクはマークの配偶者でも、家族でも、恋人でも何でも無いのだし…そもそものキッカケはボクだったみたいだから。

 ―でも、それがどんどんエスカレートしちゃって…。

 性的な知識を一切与えられていなかった彼女は、本能から男を求める行為を『浄化』と呼んで神聖なものであると固く信じていた。しかし、魔物娘化はどんどんとネリーの中で進行し、思考にも整合性がどんどん取れなくなっているのが外野から見ているボクにも分かる程だったのを覚えている。…かつて、ボクもそんな状況になった事があるから、どうにも不憫になって、結局、ボクは快楽に手を貸してネリーを堕落させた…と言う訳だ。

 「今もぉ…♪マークさんの指で…くちゅくちゅって激しくオマンコ弄ってくれるのを考えてたんですよぉ…っ♪」

 ―…堕落してからはこんな風になっちゃったのは本当、意外だけど。

 元々、天使の中でも抑圧されていたのだろうか。そんな事を思うくらいネリーの変貌っぷりは凄まじい。かつてオナニーだって知らなかった清純な天使が、ボクとマークの手で淫らな知識を教え込まれ、今こうして妄想だけでハァハァと荒く息を着きながら腰を震わせて強い興奮を得ている程だ。正直、ここまで淫乱になるとは思っていなかったので、今の姿には驚きを禁じえない。

 ―…けれど、すっごいいやらしいんだよね…。

 幼い顔が快楽に歪み、欲情に頬を染める姿はそれだけでもオスの興味を惹くだろう。しかし、ネリーはそんなものでは決して満足しない。興味だけでなく全身全霊を自分に向けさせようと、男を…いや、マークを誘惑する。言葉で、姿で、味で、技巧で、フェロモンで、彼を自分だけのものにしようと日々、切磋琢磨しているのだ。

 ―その姿にどうにも危機感のようなものを覚えてしまう。

 無論、ボクにとってネリーは恋敵とは言え、ボク自身の手で堕落させた妹分の様なものだ。嫌ってなどいる訳もないし、恋敵と言っても敵意のようなものを持っているわけでもない。寧ろマークの気持ちを過去から現在へ…今のボクたちへと向ける為の戦友でもある。
 けれど、同時に、そんな風に日々、魅力的になっていくネリーを見ているとどうにも不安になってしまうのだ。何時かボクだけのけ者にされるのでは無いだろうか、ボクを置いて二人だけで幸せになるのでは無いだろうか…そんな不安がどうしても消えてくれない。

 ―…実際、同性から見ても今のネリーはすっごい魅力的なんだよね…。

 ボク直々に性知識を教え込んだネリーは、四六時中、蕩けた表情を浮かべるようになった。思考一つ取っても、ピンク色に染まりきった妄想ばかりで、以前までの理知的な雰囲気は完全に消え失せている。けれど、同時に表情一つ取っても、指の動き一つとっても、ネリーはオスを興奮させる術を知り尽くしているかのように振舞っているのだ。同性であるはずのボクでさえ時折、ドキリとしてしまうような仕草は、男であるマークにとっては目の離せない程の魅力を持っているだろう。

 「…あぁ……♪もう我慢できない……♪マークさんにぃ…一杯精液注いでもらわなくっちゃぁ…っ♪」

 ―夢遊病のようにふらふらとリビングから出て行こうとする姿もまた……って!?

 「だ、駄目だってば!今、マークは診察中なんだから!!」

 ソファから立ち上がって扉へ向かおうとする腕を何とか捕まえると、マークに「魔物娘が嫌いな患者さんも居るかもしれないから、窮屈だけど…可能な限りここから出ないでね」と言われている事を思い出したのか、ネリーの歩みは止まった。けれど、一度火がついた身体を抑えることはできないのか、内股を擦り合わせるようにして、視線をあっちこっちへさ迷わせている。薄布の奥からじんわりと漏れ出している愛液が、もじもじと擦り合わせるたびに触れ合って、にちゃにちゃといやらしい音を立てていた。

 「はぁ……はぁ……♪あ…アイシャさぁん…っ♪」

 ―…そんな目でボクを見られてもなぁ。

 熱病に浮かされたようにとろんと目尻を下げ、瞳に欲情を一杯に湛えながらボクの名前を呼ばれても正直、困ってしまう。ネリーもそうだろうけれど、ボクにだって女の子を睦み合うのが好き、と言う訳では無い。拒否反応を示すほど嫌っている訳でも無いが、やっぱりマークの逞しい腕に抱きしめられて、一杯耳元で愛を囁かれるのには敵わないのだ。…まぁ、そんなシチュエーションなんて今までに数回しかなかったわけだけれど。

 「ね…♪私…我慢できないんです…♪」

 そう言いつつにじり寄ってくる姿は、まるで一昔前のホラー小説に出てくるようなグールかゾンビのようである。ふらふらと重点がしっかりしていない歩みは、一昔前のアンデッドであれば、恐怖さえ感じただろうが、可愛らしい姿のネリーがしているので、恐怖よりも何処か危なっかしくて放っておけない感情が先に湧き上がってくるのだ。

 ―…まぁ、マークに迷惑を掛けるよりはマシ…かな。

 女の子同士なんて趣味ではないにしろ、こうして精一杯、最後の一線だけは我慢しようとしているネリーを拒絶するのも可哀想だ。何より緊急避難と言う形だったとは言え、彼女を堕落させ、こんな淫乱にさせたボクに責任があることも否定できない。

 「…今回だけだよ?」
 「えぇ…分かってます…♪」

 ―その言葉を何回聞いただろうなぁ…。

 堕ちた直後でまだ快感になれていなかった頃に、調子に乗って快楽のルーンを刻み込んでしまった所為だろうか。元々の才能もきっとあったのだろうけれど、ネリーは頻繁にこうして発情し、ボクに性欲の発散を頼み込んでくるようになった。けれど、魔物娘にとって性欲とは食欲も同義だ。同性の愛撫で気持ちよくなる事は出来ても、根本的な解決には決してならない。特に男性の精の味を覚えた魔物娘にとっては、同性の愛撫で幾ら絶頂したところで霞ほどにもお腹が膨れないだろう。

 ―…実際、ボクもそうだったし…。

 下手にマークの精の味を――あの、こってりとして…苦いんだけど、何処か塩味が効いていて…何より深いコクがあって、一度張り付くと離れないほど濃厚な味を覚えてしまいながら、彼と接触しないようにし続けた年月は、何度、自慰をしても物足りなさが晴れる事は無かった。快感が足りないのかと自分で快楽のルーンを刻み込んだりしたが、火に油を注いだ形になってしまう。何をしても焦らされるように感じる生活はボクにとって地獄そのものであった。当時はニ、三時間に一度は発情して、マークに襲い掛からないように必死に自己処理し続けていたが、結局、自慰では根本的な解決にはならないというのはその経験から強く共感できる。

 ―でも…ネリーにはそんな経験は無いんだよね…。

 そんな経験があるから、何とか我慢できているものの、ボクだって、診察時間が終わったらどんな風に可愛がってもらおうだとか、どんな愛撫の仕方で気持ちよくしてあげようだとか…そんな妄想を絶対にしないと言えば嘘になる。そして一度、そんな妄想をしてしまうと、身体に火がついたように熱くなってそればかりしか考えられなくなってしまうのだ。慣れているはずのボクだってそうなのだから、魔物化してからずっとマークに傍に居てもらって、彼の精液を毎日提供してもらっているネリーにとっては、少しマークと離れている間に発情してしまったら如何すればいいのか分からないのだろう。毎日こうなのだからいい加減、自己処理を覚えて欲しい気もするけれど、拒絶するのも気が引けるのだ。

 「さぁ…おいで…♪」

 言いながら手を伸ばしてあげると、顔一杯に喜色を浮かべながらネリーはボクへと近寄ってくる。その姿はまるで子犬のように可愛らしい。…まぁ、実際は子犬とは程遠いほどその胸中には欲情が滾っているのだろうけれど。でも、堕落する以前からは考えられないほど、感情をストレートに示して、甘えるようにボクの手をそっと取る姿に、ゾクゾクと背筋にイケない快感が走ってしまう。

 ―あぁ…やっぱり可愛いなぁ…。

 元々、ボクはSっ気の強い方だ。最近は、ネリーのあまりの変わりっぷりに振り回されることが多いが、振り回されるよりも振り回すほうが好きだったりする。そんなボクに…こんな可愛らしい姿を見せられると、そりゃあ…サド心をくすぐられて苛めたくなってしまうのだ。

 「まったく…ネリーは本当に堪え性がないんだね…♪」
 「やぁぁ…あ♪」

 意地悪そうに言いながら、差し出したのとは別の手で細い肩に触れると、それだけでネリーは小さく震えて、甘く息を吐いた。言葉こそ否定するようなモノだが、ネリーの顔には拒絶するような色は無く、寧ろようやく触れてもらえた喜びと欲情に染め上げられている。快楽のルーンを刻み込まれ、身体中をボクたち二人に開発されたネリーにとっては、肌に触れられるだけで十二分に絶頂出来るほどの快感が走っているはずなのだから、否定の色などあろうハズもなかった。

 「触られただけで喘いじゃう変態さんは…どんな風にされたいのかなぁ…?」
 「はあああっ…ああぁ…♪」

 ―それに何より…ボクがSっ気が強い方ならば、ネリーはMっ気の強い魔物娘だ。

 囁くように低く言うその言葉だけで、被虐的な快感をしっかり覚えているのだろう。ぴくぴくと肩を震わせて、しっかりと反応している。ボクの掌の中にあるすべすべの手も、快感に力を込めてぎゅっと握りこんでくる程だ。腰も若干、引き気味になって角度の着いた内股からは、既に濡れきって灰色になった薄布ではカバーしきれないほどの愛液が零れ落ちて床に染みを作り始めている。何より鮮やかな桃色をした唇から漏れ出る吐息を見れば、誰だってネリーがMとしての快感を覚えているのが判るだろう。

 「このまま肩を撫で撫でされるのが良いのかなぁ…♪それともぉ…腕も撫で撫でされたい…?」
 「は…はいっ!し、してくださいぃっ!撫で撫で…私の身体を一杯撫でてください…っ♪」

 顔を真っ赤にしてそう懇願するネリーの表情に嗜虐心をそそられない人は恐らく居ないんじゃないだろうか。そう思う程蕩けきった彼女の表情にボクは堪える事が出来なかった。ぎゅっと強くネリーの手を握り返して、五本の指でネリーの手を包み込む。そのまま親指は一本一本の骨をなぞる様にして…残りの四本の指はネリーの掌をさわさわとくすぐる様に愛撫した。

 「ふぁああ…♪」

 それだけでネリーには我慢出来ない程の快感が流れているのだろう。…それは愛撫しているボク自身にも反射しているからよく判る。彼女と同じように快楽のルーンを持つボクにも、むずかゆさを何倍にもしたような快感が撫でるたびに返ってくるのだ。愛撫している側がこれなのだから、されている側のネリーはさらに何倍か気持ち良いのだろう。

 ―じゃあ……もっと気持ちよくしてあげないとね…♪

 そう思いつつ、ボクは繋いだ手を愛撫しながら、ネリーの肩に置いた手を再び動かし始める。こちらも遅々とした動きで、むずかゆさを与えるようなものだ。普通であれば、間違っても快感になんて繋がらないであろう部位の愛撫だが、堕落して淫乱になったネリーにとっては十分過ぎる程である。肩甲骨や鎖骨に触れるたびに、指を蠢かせて窪みまでしっかり温めてあげると、その度に甘い吐息を漏らしてくれるのが嬉しい。Sっ気の強いボクにとって、こうしてしっかりと反応してくれるだけでもっと気持ち良く苛めてあげたいと、そんな気持ちが湧きあがってくる。

 「どう…?肩とお手手…どっちだって普通じゃ感じない部分だけど…君はどっちが感じるのかな…♪」
 「ど、どっちもです…っ♪どっちも良いんです…っ!撫でられる度にびりびり来るのぉおっ♪」
 「どっちも…は駄目だよ。どっちか決めてくれなきゃお預け♪」

 ―その瞬間のネリーの顔は……正直、特筆に価すると思う。

 まるで子供が飲んでいる途中の哺乳瓶を取り上げられたかのように、顔一杯に唖然とした色を浮かべる姿に、胸が締め付けられるような興奮を覚える。天国から一転、地獄に叩き落されたようなその表情に、嗜虐心から走る快感がゾクゾクと背筋を駆け抜けて、首に鳥肌を立たせた。

 ―あぁ……♪これだよ…っこの表情が見たいんだ…っっ♪

 Sっ気を酷く刺激されるその表情は、ボクにとってあまりにも魅力的過ぎるものだ。四六時中苛めて、この表情を見続けたいと思う程、マゾヒスティックに歪んだ顔は、ボクの胸を強く高鳴らせる。無論、マークに対するモノには決して及びも着かないが、それでも強い興奮を覚えさせられてしまうのだ。
 そして、その後、涙を目尻に少しばかり浮かべながら迷うように視線をさ迷わせるのも、ボクの嗜虐心をぐりぐりと刺激してくる。あまりにも興奮し過ぎて、つい手を止めてしまったが、それを焦らされているのだと勘違いして熱っぽい視線で媚びるようにボクを見るのもまたとてつもなく可愛らしい。

 「あああぁ……っか…肩…肩が良いんです…っ♪骨を撫でられるとじんわりして…っ肌もぴりぴりでっ気持ち良いんですううっ…♪」

 数分ほど迷った後、決心したように目を瞑りながら叫ぶように言うネリーの様子に堪えきれない笑みを浮かべてしまう。サドっ気を持つ者に、気持ち良い部分の告白をさせる事に愉悦を感じない人は居ないだろう。ましてやそこが、普通では決して感じないであろう部位ならば…さらに格別だ。

 「へぇ…肩がそんなに気持ち良いんだ…♪…君はそんな所で感じちゃう変態だったんだねぇ…♪」

 ―なんてったってこんな風に苛める事ができるからね…♪

 変態呼ばわりされた事に強い悦楽を感じ始めているのだろう。ネリーは小さく何度も首を振って必死にそれを否定しようとするが、その口からはさっきまでとは濃度の違う甘い息が漏れ始めている。ネリー独特のミルクのようなフェロモンを混ざり合ったようなその吐息は、間違いなくさっきまでとは違う興奮を彼女が覚え始めていると言う証左だ。
 言葉こそ発しないものの、全身でまったく矛盾する主張をするネリーの姿に、ボクはさらに強く興奮していく。彼女ほどではないにせよボクの口からもハァハァと短い間隔で息が飛び出しているし、触れ合っている手にはじんわりとした汗が浮かび始めているのがわかる。身体はネリーと同じく熱病に浮かされたように熱く、ボクの一番熱い部分からは愛液が染み出している頃だろう。そしてボクはその興奮をネリーへと叩きつけるように、更に激しく言葉を紡ぐ。

 「違う…?違わないよね…♪だって、こんなにぴくぴくしてるんだもの♪オマンコやオッパイになんて一瞬たりとも触れていないのに、ハァハァって発情した甘い息吐きっぱなしで、まるでメス犬みたいになってるじゃないかぁ…♪それなのに変態じゃないだって…?否定できる要素が何処にあるのかな…?寧ろボクは思いつかないから君に教えて欲しいくらいだよ…♪」

 矢継ぎ早にそう告げながら、ボクはさらにネリーへと近づいた。そのまま、手が撫でているのとは逆の鎖骨に舌を這わせる。

 「ひゃあっ…♪」

 そこは既に興奮に紅く染まっていて、じんわりと汗が浮かび上がっていた。舌先で溝をなぞる様に若干の塩味がするのが、興奮の所為か美味しく感じられる。形自体も、とても細いが、魅力的な窪みをしっかりと見せ付けていて、何処か魅惑的な雰囲気がある。けれど、一番、魅力的なのは形や味ではなく、舌先でぐりぐりと鎖骨を押さえつけるたびに声をあげて体を震わせるネリーの反応なのは言うまでも無い。さっきまではまるで駄々っ子のように首を左右に振っていたのに、今は力を抜いてボクに身を委ねている姿は嗜虐心だけでなく保護欲をそそられるのだから。

 「ほぉら…舐められるだけでこんなに感じちゃうんだよ…♪ぴくぴくって震えて絶頂しちゃいそうになってるのに…変態じゃないの…?」
 「はぁっ…♪やぁああ……♪」

 嫌と言いながらも、ネリーの身体には抵抗する予兆さえ見えなかった。ボクたちを繋ぐ手は未だぎゅと握り返されていて、突き放す気配がない。それどころか、まるでもっとして欲しいと言わんばかりに、ネリーの肢体はゆっくりとソファへと倒れ掛かかっていっている。

 ―可愛いなぁ…ホント…可愛い…♪

 嫌と言いつつも無防備な姿をボクに晒すネリーにどうしてもそんな感情が湧いてしまう。ボクのように可愛げの無い魔物娘とは違い、全身で相手を誘い誘惑するその姿に、劣等感すら感じるのだが、それを覆い尽くすほどの興奮と苛めたいと言う衝動がボクの胸を強く叩いている。

 「ふふ…っ♪…とりあえず…一回目…イっちゃおうか…♪鎖骨だけでイカせてあげる…♪」

 言いながらソファの上で膝を立てるように座りなおして再び、ネリーの鎖骨に舌を這わせ始めた。今度は舌先だけでなく、舌の腹まで使って、一回一回舐めあげる様に。けれど、敏感な窪みを舌先でくりくりと苛めるのも忘れない。

 「ひゅああっん…っ♪」

 そんな媚びた声をあげるのを聞きながら、唇で細い鎖骨を挟み込む。そのまま左右逆に動かすように、鎖骨を扱きあげるのだ。まるで擬似的なフェラチオのような仕草に、ネリーも強い興奮を覚えているのだろう。ソファへと倒れかけていた肢体は完全にソファの上に投げ出されていて、荒く息を吐きながら身体全体を震わせている。縋るように未だ繋がれた手も更なる力が篭り始めていて少し苦しいくらいだったが、それがまたネリーの絶頂へのカウントダウンを伝えてくれるようで、ボクの興奮を掻き立てていた。
 そして、その手が篭る力を堪えきれず震えだした頃、ネリーはいきなり口をぎゅっと噤んだ。今まで嬌声をあげていた口を必死に閉じる理由なんて一つしかない。そう思いながら、ボクはネリーの絶頂をより激しいものにしてあげようと、さらに激しく攻め立てる。…そして、鎖骨の窪みで小さく歯を立てた瞬間、内股になっていたネリーの腰は浮き上がった。

 「あああっイ…っあぅ…イっっっっっ…♪」

 ―あぁ…イッたんだね…♪

 堪えきれない口の端から漏れ出る言葉だけでもネリーが今、絶頂を極めている事が分かる。さらに腰を浮き上がらせながら全身をがくがくと揺らせて、数瞬後に脱力して柔らかいソファに倒れこんだのだから、分からない方がおかしいだろう。まして、ボクがたっぷりと開発してあげた敏感な胸も大きく上下させているのだから、きっと子供だって察せられる。

 ―それにしても……イッた姿も…やっぱり可愛いなぁ…。

 全身を上気させて時折、思い出したかのように走る快楽に身を震わせながら、控えめの胸を大きく揺らせてピンク色の吐息を吐き出す姿は、オスであれば誰でも欲情を掻きたてられそうになるだろう。元々ネリー…と言うかボクも含めてエンジェルは幼い少女のような容姿をしている。そのネリーが、全身で欲情を感じて、興奮を表現しているのだから、オスであれば反応しない訳が無い。実際、同性であり、ネリーには妹分以上の感情を抱いていないボクだって、その姿にはどきどきとしてしまうのは否定できないのだから。

 ―…それに嫉妬してしまうのも否定できないんだけどね。

 きっとネリーがアクメを迎えて、一段落した所為だろう。さっきまでは興奮と強い嗜虐心に隠れていた醜いボクの感情がまたむくりを顔を出した。天使としてあるまじき…なんて題目を唱えるつもりは無いけれど、女としてあまり歓迎したくない感情に、どうしてもボクは自己嫌悪してしまう。

 「あ……あいしゃさん…ありがとう…ございまし…たぁ…♪」

 そんなボクの葛藤を知ってか知らずか、ネリーは大きく胸を上下させながらも、幾分冷静になった状態でそう言った。…その愛らしく礼節を忘れない姿に、ボクの中の劣等感や嫉妬のような感情がまた大きく膨れ上がっていく。

 ―…ボクはこんなにも醜くなってしまったのに…どうして君はそんな風に綺麗なままなんだ……?

 無論、ネリーはボクがたじたじになるくらい性欲に素直になっている。それは確かに変わった点であろう。…けれど、彼女の根本は決して変わっていない。感情を素直に表し、甘えることは多くあったが、何時だって礼節を弁え、天使であった頃と意識もそれほど変質していないのだ。『私』を殺すしかなかった『ボク』にとっては…それがとても眩しく、羨ましく感じてしまう。

 「あい…しゃさ…?」
 「―何でも無いよ」

 未だ絶頂の余韻が後を引き続けているのだろう。舌足らずな声だが、心配そうに名前を呼ぶネリーの頭をボクはそっと撫でた。触れるだけで指の間から零れ落ちていってしまいそうなほどさらさらとした銀髪の心地良さに思わず目を細めたくなってしまう。そんな無様な姿は妹分の前では見せられないと顔に力を入れるものの、恐らく彼女の目からはダラしなく緩んだ口元や目元が見えていることだろう。

 「はあぁ…っ♪」

 そんなボクとは対照的にネリーは嬉しそうな表情を一杯に浮かべて甘く息を吐いた。女の子にとって、髪は立派な性感帯だ。ましてや今のネリーは快楽のルーンを刻み込まれ、尚且つ絶頂の余韻もまだ後を引いていない。無論、本質が甘えんぼである彼女は撫でられる事自体が大好きだが、それ以上に今は快感を感じているに違いないだろう。

 ―コンコンっ

 「…おや?」
 「あら…」

 そんな風に無防備な姿を晒すネリーを撫でていると、唐突に扉がノックされた。彼女をソファに押し倒している状態から、上体を上げて扉を見据えるとガチャリとドアノブを回して、一人の男性が入ってくるのが見える。

 ―あぁ…ようやく終わったんだねぇ…♪

 その男性が入ってくるだけで、ボクの心の中には陶酔にも似た気持ちが一杯に広がっていく。
 彼は純白の白衣を羽織り、安物の生地を原色の青に染められたシャツを着ている。清潔感を出す為か、下は白衣と同じ純白のズボンで、男性が持っている柔和な雰囲気を更に強くさせていた。全体として細身なイメージがあるモノの、それは何処か優男っぽい空気が作り上げているだけで、実際、その服の下には引き締まった肢体があるのをボクもネリーも良く知っている。
 顔つきはまだ何処か幼いものの、全体的に柔和な作りをしていて、話し易い雰囲気を相手に与えるようだ。しかし、良く見ると赤銅色の瞳には意志の強さが表れ、短く切りそろえられた水色の髪は、冷たい彼の内面を象徴しているようにも感じる。全体としてのイメージは決して目を惹く男性ではないが、彼を良く知る人は皆、惹き付けられてしまうだろう、と思えるような魅力を持つ人だった。

 「マークさんっ♪」

 ―…まったく…飼い主を見つけた犬みたいに喜んじゃって…。

 男性――ボクとネリーの思い人でもあり、この診療所の主でもあるマークの姿にネリーはボクの身体の下で嬉しそうに声をあげる。ネリーは獣系の魔物娘では無いので尻尾は無いが、あったら左右に激しく揺れているだろう、と思う程の喜びっぷりだ。実際、ネリーの漆黒の翼はパタパタと落ち着き無く揺れて、全身で喜びを表現しているのだから。

 ―…まぁ、それはボクも同じか。

 必死に自分を制御しようとするものの、ボクの翼も揺れるのを止めない。今まで制御してきたはずの感情があふれ出し、控えめな胸の小さな乳首をむくむくと孤立させ始めた。同時に、きゅううっと膣が収縮し、奥から熱い愛液がどろどろと流れ出して濡れ始めているのが分かる。マークやネリーがいる手前で無様な姿を見せたくは無いが、それ以上に身体を溶かすような歓喜がボクの全身を包み、ボクの中の淫らな感情を湧きあがらせていた。

 ―あぁ…♪マーク…ぅ…♪

 実際、ボクたちとマークが離れていた時間なんて4時間も無い。近くに医者がいないので、薬剤師でありながら、診察まで行う彼の診察時間は基本的に短いのだ。診察以外にも本来の業務である薬剤の調合などもあるので、そう長い間、診察に割く時間は無いのだから。
 けれど、ボクとネリーにとっては、その四時間が何より辛い時間だ。好きな男性と引き離されて、四時間も顔も見れないだなんて地獄以外の何物でもない。マークはボクらが退屈しないように時折、訪れる行商人から調合した薬剤と引き換えに本を買ってくれているが、どれだけその本に集中しようとしてもマークが傍に居ない、と言う事実だけで、何処か落ち着かない気分になるのだ。何をしてても味気がなく、味の無い料理をひたすら食べさせられているような時間がようやく終わったと知り、春の草原のようなマークの体臭が全身を溶かすような熱が駆け巡るのを止める事なんて出来るはずも無いだろう。

 「ごめん。お待たせ。……でも、お邪魔だったかな?」

 その柔和な顔立ちを何処か気まずそうに変えながら、マークはボクらからそっと目線を外した。言われた言葉に首をかしげながら整理してみると……ボクがソファにネリーを押し倒しているように見えるのを思い出す。そんな趣味があると誤解される訳にはいかないと、ボクはネリーからパッと離れて、両手を振りながらそれを否定しようとした。

 「い、いや、べ、別にそんな変な事をしようとしてたわけじゃ…っ」
 「えぇ…♪もう終わりましたし、大丈夫です…♪」

 ―こ…この色ボケ天使め…!!!!いや、堕天使だからしょうがないんだけど…っ!!!

 頬を欲情とも違うピンク色に染め上げながら、ボクの言葉に被せてくるネリーに、ちょっとした怒りが湧き上がって来る。そりゃ…自分は襲われてるように見えているからそれで良いのかもしれないけれど、ボクとしてはマークにそんな趣味があるだなんて思われるのは心外だ。ボクの心も身体も全部、マークに捧げて他の人――男も女も魔物娘にさえ許した事なんて一度も無いのだから。

 「まぁ…どうせネリーがまた発情したって事は見れば分かるんだけどね」

 存外に焦ったボクの様子に気づいてくれたのだろう。マークは表情に笑みと…そして若干の同情のような色を浮かべながらそう言ってくれた。誤解されてはいないようで心の中でボクは胸を撫で下ろす。…そして、ボクに誤解されるんじゃないか、と言う恐怖を与えた張本人――まぁ、本人としては別に嵌めようとした訳じゃなく正直に答えただけなんだろうけれど…――はソファからするりと抜け出してマークに近づいていった。

 「それもこれもマークさんが私たちを放っておくからですよぉ…♪」

 言いながらそっと彼にしな垂れる姿は、まさに娼婦そのものであろう。絶頂の余韻がまだ収まっていないのか、ハァハァと荒く息を吐きながら、劣情を瞳に一杯に浮かべてそっと体重を預けている。さらに負担にならないように重過ぎず…かと言って体重をかけていない訳でもない、男として頼られている事に満足感を感じるであろう最高のバランスでマークの身体にそっと寄り添っている。さらには指先をマークの胸をなぞるように動かして、興奮を誘うのも忘れない。

 「だからぁ…責任取ってくださいねぇ…♪」

 ―むぅぅううう………っ!!!

 抗議の声をあげる暇も無いまま一瞬でそこまでして見せたネリーに、思わず頬を膨らませてしまう。別に紳士協定なんて結んでいるわけでもないので、ネリーに非は無い。寧ろ出遅れたボクが悪いといえば悪いのだろう。けれど、そんな正論ではそれで湧き上がって来る悔しさのような感情を抑える事は出来なかった。

 「はいはい。まぁ…放置してる僕が悪いってのはその通りだよ」

 顔に笑みを浮かべながら、マークはそっとネリーの頭を撫でる。幸せそうに目を閉じてすりすりと自分の匂いを刷り込むようにして甘えるネリーはさらに激しく翼を揺らしていた。そんなネリーを羨ましそうに見ているボクにそっとマークが手を伸ばしてくれる。まるで「おいで」と言ってくれているかのようなその何気ない仕草でさえ、ボクの胸は一杯になってしまった。ネリーが甘えているので、マークの負担にならないように甘えるのは抑えよう、と思う暇も無く、ボクの身体はマークの胸に飛び込んで行く。

 「きゃあっ…もう…っ♪」

 あまりの勢いにマークの身体が揺れて、バランスを崩しそうになったネリーが抗議をするように頬を膨らませるが、ボクは気にせず彼の胸に顔を埋めた。瞬間、ボクの頭を春の草原のような匂いが支配する。薬草を練って薬を作り出す事の多い彼に草の匂いが着いたのだろうか。何時の間にかマークの体臭は、春の日差しを一杯に浴びた草原そのものになっていた。けれど、青臭さのようなものはまったく感じず、決して嫌ではない。寧ろ思わず目を閉じて、その匂いを胸一杯に吸い込みたくなるような誘惑さえあった。

 「マークぅ…♪」
 「はいはい。アイシャも待たせてごめんね」

 陶酔に胸が一杯になり、つい名前を呼んでしまった声にもきちと応えてくれるマークの優しさに、本能の火が燃え上がっていくのが分かる。今まで散々焦らされた上、マークの体臭を胸いっぱいに吸い込んだのだから当然と言えば当然だ。隣を見ると、ネリーも同じように欲情を押さえ切れなくなっている。…もっとも、ボクはネリーのように必死に内股を擦り合わせてねちゃねちゃと淫らな音なんてさせていないけれど。

 ―で、でもぉ…もう…限界…っ♪

 目の前に最高の料理があるのに我慢できるほど、ボクもネリーも大人じゃない。チラリ、とネリーを見ると、ネリーも同感のようでボクの方を見ていた。同じ事を考えているという事に思わず口の端に笑みを浮かべながら、ボクはそっとマークの首に手を伸ばす。

 「ん…アイシャ…?」

 甘えるようにマークの首に抱きついたボクが珍しかったのだろう。マークは不思議そうに小首をかしげながらボクの顔を見つめてくる。そんなマークに、ボクはにっこりと微笑んであげるのだ。これからマークを貪るのだと、そんな意思と欲情を込めた最高にいやらしい蕩けた笑みを。
 そしてネリーはその間にそっとマークの身体をなぞるように降りていく。彼の逞しい胸板から引き締まった腹筋を経て…ボクたちの大好物のある、下腹部へ。そのままカチャカチャと革のベルトを弄り、外そうとしているのが見えないけれど分かる。

 「ちょっ……ま、まだ昼なんだけどっ!」

 ようやくボクたちの目論見に気づいたマークが抵抗しようとするけれど時既に時間切れだ。ボクの手によって堕天し、ダークエンジェルとなる以前から、マークのズボンを剥ぎ取り続けてきたネリーの技巧はどんな抵抗もいなして無力化する。抵抗を回避して、あっという間に彼女はマークのズボンを脱がして、その下にある緋色のトランクスを視界に晒した。

 「それにっ僕としても御飯食べたいかなってっ…!」
 「うん…♪だからぁ…一杯食べさせてあげるよ…♪」
 「勿論…私たちも食べさせて頂きますけれどね…♪」

 せめてトランクスだけは死守しようとネリーの方へを延ばすマークの両腕をそっとボクが捕まえる。そして腕を掴んだままそっと背伸びをして、彼の唇に吸い付いた。

 ―柔らかい……♪

 驚いて身体を一瞬、硬くするマークだったけれど、その唇だけはぷるぷると柔らかく震えてボクの事を受け入れてくれている。それが嬉しくてボクはそっと、彼の唇を舐めあげた。美味しそうに揺れる唇は見るからに美味しそうだが、特に味はしない。けれど、時折、唇の奥から香るマークの唾液の味が伝わって、頭の中が桃色に染まるのを感じる。自然、興奮も高められ、粘性を増してどろどろになった粘液が、ボクとマークの間でちゅるちゅると淫らな音を立てていた。

 「あーーーーっ!!!!」

 悔しそうに声をあげるネリーも今は気にならない。世界中にボクとマークしかいないような錯覚がボクを包んでいたからだ。それが錯覚だと知っていても溺れたいと願うボクはさらに舐めあげるだけでなく、彼の唇を吸い上げる。形の良い唇がボクの口腔の中に引き込まれ、ぷるぷるとした感触を口に広げた。それがまた気持ち良くて、ボクは舌で激しく扱きあげる。

 「くぁ……」

 そんなボクの愛撫にマークは確かに快感を感じてくれているらしい。ボクの手を必死に離そうとしていた腕にはどんどん力が入らなくなっていて、時折ピクリと震えている。まだ抵抗の意識が残っているのか、だらりと垂れ下がるほどではないが、それでもボクの手を振りほどくほどの力は既に無い。

 ―あぁ……♪マーク…マークぅ…♪

 何とか抵抗しようとしているけれど、どんどんと快楽に溺れていく彼の姿は、それだけで絶頂を覚えそうなくらい強い興奮と陶酔をボクに与えてくれる。ネリーを絶頂させた時とは比べ物にならないほどの興奮が背筋を走り、抑えきれない快感が身体に震えを走らせるほどだ。それに夢中になったボクは、さらにマークを感じさせようと腕と足先に力を込めて彼の唇を『飲み込んだ』。

 「ちゅ……っ♪」

 無論、飲み込んだ…なんてのは比喩だ。けれど、口を大きく開けて彼の唇ごと貪りつくすように押し当てた行為に、他の良い表現が思いつかない。増して口の中に引きずり込んだ彼の唇を舌と唇だけじゃなく歯で甘い痛みを与えるように噛んでいるのだ。まるで咀嚼するような行為は飲み込む…と言う言葉が一番しっくり来るような気がする。

 「はむ…っ…♪」

 そのままボクは舌を彼の口へと割り入れる。柔らかい唇にはもう力が入っておらず、ボクの侵入を防ぐ事は出来ない。防ぐものの無いボクの舌は口腔への進入を無事、果たし、ぬるりとしたマークの粘液を舌で舐め取った。

 ―…あまぁい……♪

 それはボクにとって、どんな食べ物よりも甘い代物だった。かつて彼と共に異国のお菓子――蜂蜜と砂糖漬けの甘い林檎だ――も甘かったが、それより遥かに深い甘味が、今ボクの舌の上にはある。でも、それはただ甘いだけじゃない。甘ったるかった異国のお菓子よりも遥かに甘いはずなのに、その味は優しく溶かすような熱を含んでいて、甘さだけを決して感じさせないのだ。そんな極上の甘露が、マークの口一杯に広がっているのだから…夢中になって、彼の口腔を舐めまわしてしまうのも仕方の無い事だろう。

 「んちゅ…っ…ふあぁ…♪」

 ―あぁ……♪頭の中…全部、溶けちゃいそ…♪

 一滴、マークの唾液がボクの舌に触れる度に、頭の中まで突き抜けるような甘さと熱がどろりと思考を溶かしていく。抵抗しようとも思えない熱が欲しくて、何度も何度も彼の口を貪ってしまうのだ。敏感な歯茎から、純白の歯まで。とろとろの頬の粘膜も例外じゃない。全部の場所にある唾液を剥ぎ取り、代わりのボクの唾液を塗りこむように舌先でぐりぐりするのだ。けれど、マークの舌には決して触れない。

 ―そ…そりゃ…ボクだって女の子…な訳だし……。

 一線を越えるのは出来れば男性の方であって欲しい。無論、羞恥心を取り去れる為に一杯唾液を送り込んであげたり、倫理感を麻痺させる為にたっぷり粘膜を舐め上げてあげるし、抵抗を無くす為にぎゅっと吸い上げた唇だってボクの唇で挟み込んでたっぷり愛撫してあげたりと最大限のサポートはする。でも、一線だけは…マークもそう望んでくれているのだ、と安心したいから…舌同士の愛撫だけは彼に任せたい。

 ―そしてぇ…ボクの事…全部溶かして欲しい……っ♪

 そう思うボクの心が見えた訳じゃないだろう。けれど、するすると誘われるように出てきたマークの舌は、ボクにとってはそう思えた。抵抗していたので、罰が悪いのだろうか。ボクの舌腹をつんつんと突く動作も何処かぎこちない。
 しかし、ぎこちなくとも自分の意思ではっきりと一線を越えてくれた彼に、ボクの胸は歓喜で一杯になった。好きな相手が自分を拒んでくれていないと知って喜ばない程、ボクは自信過剰では無い。そして、ボクはその嬉しさをマークに送り出すように、彼の唇を開放し、舌を伝わせて今まで溜め込んでいた唾液を彼の口腔へと流し込む。

 「んんっ…っ」

 あまりの唾液の量に溺れるとでも思ったのだろうか。一瞬、その身を硬くしたマークだったけれど、すぐにその身体から力が抜けていく。ボクがその唾液を、咽喉奥まで流し込むのではなく、彼の舌に塗りつけるようにしたのに安心したのだろう。最初はぎこちなかったマークの舌もボクの唾液を潤滑油にしているのか、何時も通りの動きを取り戻し始め、舌を塗り合わせるように踊り始める。

 ―はぁあ……♪やっぱり…キスぅ…大好き…♪

 無論、快感と言う面ではお互いケダモノになって、愛液と汗と精液に塗れて、恥も外聞も無く番になって孕ませてもらうセックスには遠く及ばない。けれど、キスにはそれとは違う充足感が確かにあった。彼の精を求めるメスとしての充足…ではなく、彼に恋焦がれる一人の女としての充足…とでも言えば良いのか。決して激しくは無い、けれど、とても甘く、何より深い満足感がボクの胸を支配していた。そして、その満足感が今まで抑えこんで来た熱を燃え上がらせ、ついに子宮に飛び火する。今までもじんわりと薄布を染め上げるほどの愛液を垂れ流していた子宮は、もう我慢できないと言わんばかりにきゅううっと収縮して、疼き出すのだ。オマンコも手を伸ばせば掴めそうなほど近いオスの証を欲しがるように奥へ奥へと脈動を始める。そして、そこから広がる熱が、ボクの思考をピンク色一色に染め上げ、マークとの交歓をより激しく味わおうとさせるのだ。

 「ん……ッ♪ちゅ……くふゅ…っ♪」

 そして、それはマークも同じなのかもしれない。薄目を開けて、彼の顔を確認すると彼の顔もまた強い陶酔に染まっているのが見えた。それが何から来るものか分からないが、それを引き出したのがボクであることに違いは無いだろう。

 ―ボクが…ボクがマークから引き出したんだ…っ!ネリーじゃなく、ボクが…っ!!!

 今、彼の全てはボクに向けられている。その感覚が涙が出るほど嬉しい。しかし、その嬉しさは諸刃の刃でもあった。普段は押さえつけているはずの独占欲が燃え上がり、このままボクだけをずっと見て欲しいという欲望がむくむくと鎌首を上げていく。

 ―でも…それは………。

 ボクの頭の中に残った感情が其れをすぐさま否定する。それは…流石にイケない考えだ。ネリーと紳士協定を結んでいるわけではないが…それでも今にも堕ちかけようとしていた彼女にトドメを刺したのはボクなのだから。マーク抜きでは決して生きていけない身体にしておいて、ボクが彼を独占するというのは蟲が良過ぎるだろう。

 ―それに………きっとボクじゃネリーには勝てない…。

 「っああっ……っ!」

 ―…?マーク…?

 ふと浮かんだ自虐的な考えに沈みそうになった瞬間、マークが小さく声をあげてびくんっと身体を震わせた。くるくると円運動を繰り返していた彼の舌もびくりっと痙攣し、立ち止まってしまう。その反応は決してボクがもたらした物ではない。だって、さっきまでずっと舌を絡み合わせて、気分良く踊っていたのだから。甘えるように、愛し合うように、絡ませあう舌の動きは決して激しいものではなく、こんな風に身体を揺らせるほどのものでは決して無い。

 ―…なら答えは……一つしかないじゃないか…っ!!!

 何となく確信めいた気持ちで彼の下腹部に視線を下ろすと、やっぱりそこではネリーがちろちろと舌を動かしていた。何時の間にトランクスまで下ろしたのか、外気に晒されたマークのオチンポを味わうように一舐め一舐めする姿は同性から見ても酷く淫らだ。幼い少女そのものの姿をしているネリーが顔一杯に劣情と陶酔を浮かべながら、濡れ濡れになった股間を見せ付けるように大きく股を開いているのだから淫らでないはずがない。さらに形の良い細い指を時折ぐにぐにと蠢かしながら、肉茎を扱きあげているのだからマークにとっては溜まったものじゃないだろう。

 ―ズルイ…そんな…ズルイ……!!!

 無論、最初にキスをしてマークを独り占めしようとしていたのはボクだから、本当にズルイのはボクの方なのだろう。けれど、今のボクにとって、ネリーのその行為は、ボクとマークだけの世界をぶち壊しにしたようなものにしか思えなかった。

 ―それに…それに…そんな事されて勝てるわけ無いじゃないか…っ!!!

 ボクは唇で、ネリーはオチンポ…どう見たって快感の量でボクに勝ち目は無い。今は焦らすような奉仕ではあるものの、何れネリーはボクや魔物娘の本能が彼女に教えた技でマークを追い詰めていくだろう。その時、彼の頭の中にボクの居場所はあるのだろうか……?そう思うだけで、ボクの瞳からはさっきとは違う涙が溢れそうになった。

 ―あぁぁ…マーク…っマーク……っ!

 縋りつくように彼の舌に絡みつくが、やっぱりその反応はさっきよりは鈍い。確かにマークはしっかり応えようとしてくれているけれど、何処か気も漫ろだ。ボクがどれだけ舌先でマークの舌に唾液を塗りこんでも、さっきまでのようにマークの唾液を塗り替えしてはくれない。それが寂しくて、より激しくマークの舌を舐めあげるも、やっぱり反応は薄かった。

 ―あぁあ…そんな…嫌だよ…嫌だよそんなの……っ!

 マークの中から自分が消えていってしまう…そんな錯覚がボクの胸を支配した。実際には、ネリーから与えられる快感に声をあげながらもしっかりとマークは応えようとしてくれているから、別にボクが完全に意識の外へいっている…と言う訳ではないのだろう。けれど、ボクが意識の外へと置かれるのはきっと遠い未来じゃないはずだ。

 ―あぁ…マーク…ボクを見て…ボクを…っ!!

 その気持ちを一杯に込めて、ボクはマークの両手を離して、彼の頬を両手で包み込む。そのまま逃がさないように固定して、再び彼の唇に吸い付いた。ぷるぷるとした唇は、今もボクの事を決して拒絶していないけれど、それさえも何処か虚ろな反応のように思えてしまう。それが悔しくて、ボクの舌は再び彼の口腔へと割り込み、じゅるじゅると唾液を啜っていやらしい音を立てた。

 ―ほぉら…マーク…ぅ…♪ボクだってこんな…こんなやらしい音出せるんだよぉ…っ♪

 粘液が絡まりながら吸い込まれていく音は、とても淫らだ。その音に興奮してくれているのかマークの口腔からはさらにどろどろと唾液が溢れて、止まらない。ボクが啜ってあげなければ彼自身が溺れてしまいそうなほどの唾液の量に、ボクは手応えを感じながら啜った分と同量の唾液を彼の口に送り込む。自然、マークの口に溜まっていくボクの唾液は、許容量を越えて時折、マークの咽喉にごくり、と飲み込まれているのがはっきりと伝わってくるのだ。

 ―マーク…ぅ♪ねぇ…分かる…?お腹の中までボクで染まり始めてるんだよぉ…♪

 マークの身体の中から自分色に染め上げる感覚に、ボクの中の不安感が若干、薄れてく。どれだけネリーがマークが気持ちよくしても、彼の身体の中まで入ったボクの唾液を止める事は出来ない。その優位性がボクの何よりの精神安定剤となった。

 ―ぢゅるううううううっ♪

 けれど、心の中で胸を撫で下ろした瞬間、ボクが立てたのよりももっと大きく、もっと淫らな音が彼の下腹部より聞こえた。目を向けなくても、そのいやらしい音だけでネリーが舌先で舐めるだけでは飽き足らず、思いっきりマークのオチンポを吸い込み始めたのが分かる。そして、そこから発生する快楽の量が凄まじいのも…彼の反応を見るだけで一目瞭然だ。快感に堪えるように腰を引いて前屈みになり、ボクが送り込んだ唾液を飲み込む余裕も無く、口の端からだらだらと零れ落ちているのだから。

 ―あぁ…そんな……そんなぁぁ……っ!!!

 折角、ボクが注ぎ込んだ唾液が彼の口から溢れているその光景に、ボクの中の不安が再熱する。何とかしようにもボクに残された手なんて殆ど思いつかない。彼の口から唾液が零れ落ちるのを見ながら、それを留めようと必死にキスを繰り返すくらいだ。けれど、その行為は今や状況維持にも役に立たない。マークはぎゅっと目を瞑って、堪える様に息を吐いて、ボクのことなんてまるで見えていないようにさえ思える。

 「ぷふぁ…っ♪マークさんの…ホント美味しいですぅ…♪」

 媚びるような甘いネリーの声に悔しいと思う感情を抑えきれない。無論、堕落しても根は純粋のままのネリーがあてつけとして、そんな言葉を放ったとは思っていないけれど…好きなオスのオチンポと感覚を独占されて良い気持ちになる訳もなかった。何処か呆然とした悔しさのまま、無意味なキスを繰り返す事しかボクには出来ない。

 「このぉ…カリ首にちょっぴり着いた恥垢もぉ…熟成されたチーズみたいでコクがあって…ぇ…♪」

 言いながら、ぺろりと再びネリーはマークのオチンポに喰いついた。真っ赤に腫れあがっていた亀頭を口一杯に含んだネリーはそのまま唇を窄めて、思いっきり吸い上げている。痛々しいくらい反り返って、見ているだけでゾクゾクするようなカリ首を唇できゅっと締め付けながら、必死に吸引する姿は何処か間抜けな絵に見えた。けれど、メスが尊厳も何もかも投げ捨てて、自分に奉仕する姿に興奮を感じないオスは居ないだろう。それだけでなく、ネリーの口腔ではボクが教えたように今も激しく舌が動き回って亀頭を余す所なく舐め回して、マークの興奮を掻き立てているだろうから、そっちに意識が行ってしまうのも仕方ないと言えば仕方ない。

 「ちゅぷっ♪…昨日あれだけ舐め取ったのに…もうこんなに着けちゃってぇ……♪ちゅっ…♪もう…っ恥垢が無くなっても味がなくならないじゃないですかぁ…っ♪」

 一度、オチンポから口を離したネリーの言葉こそ抗議染みているけれど、恥垢の味に陶酔し、心の底から喜んでいるのが一目で分かる。蕩けきった顔で時折、すんすんと鼻を鳴らしてオチンポの匂いを吸い込みながら、ぴちゃぴちゃと濡れた音を立てながら舌を亀頭に這わせているのだから。

 ―あぁぁ……マークの匂い…全部独り占めされてる………。

 彼の恥垢の味を知っているボクにとって、それは最高級の前菜を独り占めされているのと同義だった。ツンとちょっと鼻につく感じこそあるものの、口の中一杯に広がる独特のチーズ臭は舐めているだけできゅんきゅんと子宮を疼かせてしまう最高の媚薬にもなる。汗と混ざっているのか若干の塩味もあり、舌も楽しませてくれるそれはボクとネリーにとって取り合いをしてもおかしくないほどの魅力を持っているのだ。

 ―ボクも……ボクも欲しいのに……っ!

 けれど、ネリーを挟み込むようにがくがくと震えるマークの足の間には、既にボクの入り込む隙なんて無い。無意味なキスを繰り返す気力も奪われてしまったボクはただ呆然とマークが独占されていくのを指を咥えて見るしかなかった。

 「やぁぁ…♪もう…っ♪そんなにぴくぴくさせたら舐められませんよぉ…♪」

 ネリーの言葉に反応しているのか、さっきからマークのオチンポは忙しなく動き自己主張している。特に艶かしい赤に染まったネリーの舌がぺろりと亀頭を舐める度に、オチンポだけじゃなく腰全体を震わせて声を上げるのだ。その快感を堪えようとしているのか、ぎゅっと目を瞑って、両手でネリーの頭をがっしりと掴むマークの姿に、強い胸の痛みを感じてしまう。

 「それともぉ…またお口一杯に頬張って欲しいからそんなに震わせているんですかぁ…♪」
 「うぁっ…!」

 言いながら、きゅっと亀頭に吸い付いたネリーの唇がじゅるじゅると淫らな音を立てた瞬間、マークは声を上げて身体を硬直させる。オチンポ全体に塗りたくられた唾液が粘膜と絡まって立てる音は、聞いているだけのボクの身体にさえ強い火を点すほどの熱を伴っていた。敏感な性器を責め立てられ、誰よりも身近で音を味わっているマークの方は、きっと言うまでも無い。まして、かつてとは違い、娼婦顔負けの技術を手に入れたネリーの技巧はボクに勝るとも劣らない程なのだから、彼の身体はもう射精へと突き進んでいるに違いないだろう。

 ―射精………射精…するの…マーク?ボクじゃなくネリーで…射精するの……?

 呆然とした気持ちのままそう反芻するけれど、ボクには何の打開策も無かった。今なおマークにご奉仕し続けるネリーを押し退けて、自分がその位置に入ろうとするほど、ボクは恥知らずではないし、そんな勇気も無い。それに、妹分が楽しんでいるのを邪魔するほど、ボクはネリーと言う子を嫌ってはいないのだ。

 「うふふ…♪ほぉらぁ…どうなんですかぁ…♪お口の中でいぃっぱい頬張ってぇ…どぷどぷって青臭い精液吐き出したいんですかぁ…♪」

 追い詰めるように言いながらネリーは再び手でオチンポを扱き始める。けれど、その動きは何処かゆっくりしていて焦らすようなものに近い。実際、ある程度、経験を積んでいるマークに、その刺激は物足りないのだろう。荒く息を吐きながら、何とも言えない可愛らしい顔でネリーを見下ろしている。
 そんなマークの姿が…ボクと同じように可愛くて仕方なかったのだろう。くすり、と小さく微笑んで、ネリーはもう一方の手をするすると下腹部へと下ろしていった。そのまま、床に水浸しを作るほど愛液を零し続けている秘部を、もはや布の様相さえ呈していない下着越しに弄り始める。

 「はふぅんっ♪」

 さっきボクがネリーを絶頂へと導いた時だって触れなかったその場所から堪えきれないほどの快感が走っているのだろう。ピンク色に蕩けた顔を快楽に歪めながら、ネリーは何度もそこを擦りあげる。蜜液でどろどろにされた薄布はその度にぐちゅぐちゅと性交を髣髴とさせる淫らな音を掻きたて、その身から愛液を吹き上げていた。

 「マークのオチンポをあんなに舐めてたからぁ…私も愛液噴出して何度もイってるんですよ♪だからぁ…マークも射精したって良いんです…♪お口の中にびゅるびゅるって精液吐き出しても誰も文句言いませんからぁ…っ♪」

 ―それはきっとマークにとっては猛毒と同じくらい恐ろしい威力を持った言葉だったのだろう。

 腰だけでなく背筋から肩まで全身を震わせて甘く息を吐いたマークの目は完全に快楽に支配されていた。彼は普段はとても理知的な男性ではあるが、快楽を全否定するような求道者などでは決して無い。寧ろ、人間からインキュバスへと代わり、膨大になった性欲をこれだけ制御していたのを賞賛すべき事なのだろう。けれど…ボクは…ボクにとっては………それは我慢出来ない事だった。

 「く、咥えtうぐっ…!」

 ―駄目…っ!!それは絶対に言わさない……っ!

 だから、ボクは射精を乞おうとしたマークの唇を再び塞いだ。驚いたマークが一瞬、身体を硬くして押し退けようと抵抗の意思を見せたが、快感に蕩けきった彼の身体を抑え込むのなんてボクにとっては文字通り朝飯前である。朝、三人で一緒のベッドで起きるたびに、ネリーと一緒に準備をしなければ、と抵抗する彼の朝勃ちを解消してあげているのだから。

 「ふぅん…っんちゅ…♪」

 口の端から唾液が零れていくのを構わず、ボクは彼の口腔に唾液を流し込んだ。同時に、溺れそうなほどの唾液を必死に飲み込み続けるしかないマークの舌をボクは自分の舌で翻弄する。決して逃がす事はなく、一片の言葉さえ吐き出させないために舐め上げるのだ。

 ―だって…そんな……聞きたくない……!

 好きな相手が別の女から与えられる快楽に屈して、射精を乞う言葉を誰が聞きたいのか。世の中には特殊な趣味を持つ人々がいるので、少数の人はそれを悦ぶかもしれないが、ボクにはそんな趣味は決して無い。だからこそ、もうマークの胸中はネリーから与えられる快感で一杯になっていて、ボクは何処にも居ないと知っていてもその口を塞ぐのを止める事は出来なかった。

 ―マークっ…マーク……ぅ♪

 精一杯の技巧と、最大限の愛情を込めて、ボクは彼の口腔を吸い上げる。そして吸い上げた後にはボクの唾液を流し込むのだ。無論、そんな激しい交歓をやっていたら酸素が不足する。けれど、ボクは自分が息苦しいのも無視してマークの口に、鼻から取り込んだ空気を送り込んだ。自分がマークの呼吸を奪い、そして彼の心肺機能の一部を担っている、という倒錯した満足感に身を震わせるボクとは違い、困惑したように逃げる彼の舌を何処までも追い詰めて唾液を塗りつけ続ける。同時に、今まで遠慮していた重心をマークの方へと思いっきり傾けて、控えめな胸とぷにぷにとした自慢の太股を彼に押し付けた。

 「ひゃぁっ…♪」

 マークが入ってきたときから既に勃起し薄布の中で擦れるたびに小さな痺れを走らせていた乳首と、ネリーと同じように内股まで蜜液が流れ、濡れている太股を、彼の身体に押し付けるだけで絶頂しそうな悦楽がボクを満たした。さっきから目の前で淫らな光景ばかりずっと続いていたのだ。ボク自身もネリーとマークの交わりの熱に当てられて、かなり興奮していたのだろう。

 「むぅぅう……」

 そんなボクの様子に下から頬を膨らませて拗ねるような声が聞こえる。けれど、ボクにはそれを確認する暇なんて決して無かった。だって、一瞬だって唇を離せば、マークがネリーに射精を乞うかも知れない。それを防ぐ為にこうして自分の酸素さえ彼に分け与えながら、息継ぎの時間も殆ど与えず接吻し続けているのだから。

 ―それに…それにこれ…やっぱり気持ち良い……っ♪

 同時に、ボクは押し当てた肢体を上下へと揺する。その度に、マークの身体とボクの身体が擦れあって、強い快感を生む。快楽のルーンを刻まれ、全身が強い性感帯と化しているボクにとって、それは何時、絶頂してもおかしくない程気持ち良い。舌や指先が震え、意図せず翼が揺れてしまうほどの快感は、自然、ボクの子宮に新しい愛液を増産させる。既に下着としての様相を呈していない黒い布がそれを推し留められる訳が無く、マークの足に擦りつける度に淫液で彼の太股を汚した。

 ―あぁあああ…♪ボクがぁ…ボクが…マークを穢してる……♪

 自分の大事な物を穢す…そんな倒錯を伴った快感がボクの身体を強く揺さぶり、発情したオス犬のように必死に身体をこすり付けているという状況が、ボクの中の被虐的な部分を呼び起こす。どろどろと粘性を強くして、吐き出され続ける愛液は収まるところを知らず、彼の太股を濡らし続けていた。何処かで微かに残っている理性が、「彼の迷惑になるから止めよう」と言うけれど、そんなもので独占欲と欲情を掻きたてられたボクが収まるはずも無い。寧ろ、理性の言葉に従わず、本能に指先まで支配されきった淫らな自分により興奮を強めていくのだ。

 ―はひゅ…マーク………っ♪まぁくううぅ…♪

 そしてその興奮が絶頂への最後の起爆剤になった。胸や下腹部から広がる熱はどんどんと熱くなっていき、際限なく燃え上がるようにも感じる。脳髄まで溶かして自分の境界が消えていくようなその熱は、決して不快ではない。だからこそ、その熱をもっと味わいたくてボクはより強くマークの身体に抱きつき、激しく身体を揺する。絶頂寸前の悦楽に我慢が吹き飛び、彼の口腔を蹂躙し続ける舌も止める事は出来ないまま、ボクの思考は真っ白に染まった。

 ―イッきゅうううう………っっっ♪

 その瞬間、ボクの身体はどろどろと溶け始めた。足先から髪の先まで感覚が薄れてふわふわとした感覚だけがボクを包む。思わずまどろんでしまいそうな心地良さと、今すぐ起き上がってしまいそうな激しい快楽の間で翻弄されるボクは、最後の最後でどろりと愛液を吐き出して全身から力を抜いた。時折、ボクの意思とは無関係に身体中を走り回る絶頂の余韻が、身体を痙攣させるが今のボクにとってはそれさえも心地良い。

 ―…けれどぉ……こんなんじゃ…全然足りないよ………っ♪

 無論、マークの身体で絶頂したのは事実だ。それは一人で自分を慰めるよりも遥かに気持ちよく、今もボクの身体が快感とマークに対する愛しさで一杯になっているのも否定はしない。でも、ボクの本能は、子宮は、独占欲は、決して満足なんてしていなかった。寧ろ一人だけ絶頂し、精液を注がれなかった、と言う事実に疼きを激しくさせて、抗議するようにきゅんきゅんとうねり続けている。

 ―…あぁ…欲しい…マークの精液が欲しい…♪

 お口でも、オマンコでも、御尻でも、何処だっていいから彼の精液が欲しくて溜まらない。今のボクならば、マークの精液をくれるのであれば、どんな変態的なプレイだって応えるだろう。…まぁ、元々、マークの嗜好には何時だって応えてきた訳だけれど、今ならば何時も以上の熱心さで彼に奉仕してあげられる。その代わり…と言っては何だけれど、奉仕した分、マークにも愛してもらいたい。

 ―…けれど…次はやっぱり……。

 痙攣し使い物にならなくなった舌をじゅるりと彼の口腔から引き出して下を見ると、思いっきり頬を膨らませて、涙を目尻に浮かべているネリーの姿があった。間違いなく、今にも射精してもらえそうな所に、ボクが横槍を入れて台無しにしてしまったのが原因だろう。今にも大声で泣き出しそうな姿に良心がじくじくと痛み出す。絶頂したお陰で、少しばかり冷静になったボクは痛む良心に耐え切れず、ネリーに謝ろうとして口を開いた。

 「その、ごめ「ズルいです…!二人だけ気持ちよくなって…っ!!!」

 ―…えー?

 謝る前に被せられた言葉が余りにも予想外過ぎてボクの思考は一瞬停止してしまう。そして、それはマークも同じようだった。何処か気まずそうにしていた顔を、少し呆然としたモノに変えて、自分の足の間で頬を膨らませる愛らしい堕天使を見下ろしている。

 「私なんて一人だけ寂しくオナニーしていたのに……!二人には罰が必要だと思います!お仕置きです!!」
 「え…いや…あの…」

 抗議する暇も無く立ち上がったネリーが、ボクの身体を掴んでぐいっと引き離す。絶頂の余韻で未だ上手く力の入らない身体は拠り所を無くして倒れこむかと思ったが、その辺りはしっかりとネリーがフォローしてくれて幸い無様に座り込む姿を晒すことは無かった。

 ―罰って何なんだろう…?

 未だ痺れるような感覚が後を引くようなボクの頭では、彼女の言う『罰』とやらがどんなものなのか想像は出来ない。ネリーの事だから痛かったり辛かったりする事はしないだろうけれど、それでも『罰』だの『お仕置き』と言うフレーズだけで何処か不安な気持ちになってしまう。…ついでに言えば、不安なだけじゃなく、被虐的な快感が走り背筋にゾクゾクした感覚が這い上がるのもきっとその所為だ。

 ―い、いや、別に期待しているわけじゃないんだけどっ!

 それでも、淫らな妄想を止める事が出来ないのが堕天使の堕天使たる所以だ。ボクの脳裏には完全に縛り上げられ、足を閉じることも出来ない状態で、マークに乱暴に犯されている姿が浮かんでいる。無論、口には文句も言えないようポールギャグを噛まされていて、しっかりと目隠しで目を覆うのも忘れていない。抵抗どころか身動き出来ないボクを気遣う気持ちもまったく無いまま、ただ射精する為の道具として、マークに使われて……膨れ上がったカサにごりごりと膣を抉られて、出るたびに膣ごと持っていかれそうになってしまうのだ。強烈な快感と被虐感に嬌声をあげる事も出来ず、ポールギャグから唾液を漏らすだけのボクの胸を後ろからネリーに沢山弄られて…ピンっと張った乳首こりこりされちゃってぇ…♪

 「じゃあ、アイシャさんは私を気持ち良くして下さい!!」
 「…え?」

 ―も…もしかしてそれがお仕置き…?

 疑問に思って、ボクの腕を掴むネリーの顔を見つめてみるが、ネリーは完全に真顔だった。…どうやら、彼女の中で『罰』や『お仕置き』とは、本当に『ネリーを気持ち良くする事』らしい。

 「マークさんは駄目ですよ。そのまま立っていて下さい。自分でオチンポ扱いてオナニーしちゃうのも禁止ですからね!!」
 「あ…うん……」

 今までに無いほどの剣幕でネリーに所在無さ気に視線をさ迷わせるマークもまた納得できなさそうに首をかしげている。…当然だろう。ネリーが指定したのは到底、罰と呼ばれるような類とは思えないのだから。…尤も、射精寸前でバキバキに勃起しているオチンポを放置されているマークにとっては、罰に近いのかもしれないけれど…。

 ―少なくともボクにとってはそうじゃないような……。

 「さぁ…♪アイシャさんお願いしますねぇ…♪」
 「あ、あぁ…」

 ぽすん、とボクの胸に背中を預けるようにして飛び込んできたネリーの身体を受け止めれる程度には、身体に力が戻り始めていた。元々、絶頂と言ってもマークのオチンポで子宮のお口まで突き上げられて意識が吹き飛んでしまいそうなモノに比べれば、かなり軽いモノだったし、何よりネリーの突拍子も無い提案が思考に力を取り戻すキッカケになってくれたのだろう。

 ―…まぁ、気持ち良くするだけで許してもらえるならば儲けモノかもしれないしね。

 少なくとも二人で交わっているところをずっと指を咥えて見ているだけ…というのに比べればずっと気が楽だ。元々、サドっ気よりもマゾの気質の強いネリーがそんな事は言わない…と思っているものの、押しの強い時の彼女は本当に強く、ボクやマークでさえたじたじになってしまう時も少なくは無いのだから。

 ―…とりあえず…抱きしめるのからいこうか…♪

 ズレた思考もそこそこにボクはそっと後ろから肩を抱え込むように、ネリーの身体を抱きしめた。マークのオチンポをしゃぶり上げて、何度も絶頂を経ているのは嘘ではないのだろう。じんわりと汗の滲み、熱いくらいに体温を高めている彼女の身体は、絶頂の回数を窺わせた。

 「ひゃんっ…♪」

 無論、快楽のルーンを刻み込まれている上、絶頂の余韻で敏感になっているネリーの肢体は抱きしめただけで小さく震える。腰の辺りから伸びる漆黒の羽もぱたぱたと揺れて、何処かこそばゆい快感をボクに齎した。さらに汗で濡れた肌はまるで吸い付くようにしっとりとしていて、手放し難い魅力をボクに伝えてくる。

 「ふわぁ……♪マーク、見てますかぁ…♪私ぃ…敏感になっちゃって……アイシャさんに触れられただけでも感じちゃうんですよぉ……♪」

 まるで実況するようにマークに向かって言い放つネリーの言葉に、所在無さ気に視線をさ迷わせていた彼の目がじっと彼女を射抜いた。マークの気持ちは正直分からなくも無い。これだけ妖しい魅力に溢れたネリーが、まるで誘うように報告してくるのだ。同性であるボクだって、聞いているだけで切なくなってくるようなその声にオスのマークが反応しない訳が無い。自然、視線を外す事も出来なくなって、じぃぃっとネリーの痴態を見つめている。そして、熱の篭ったその視線で射抜かれている淫乱堕天使は、快楽に悶えている姿を見られていると言う被虐的な快感に身体を揺すった。

 ―なるほど…これが狙いなのか…。

 マークの視線を独り占めするネリーに嫉妬が湧き上がるのを感じながら、ボクはようやく彼女の狙いに気づいた。確かにコレならば同時に二人の罰となるだろう。マークは目の前で繰り広げられる痴態に参加できず、ボクはマークの視線の完全に外に追いやられてしまう。どちらの顔もそこそこ立てながら、どちらの側にも物足りなさを残すコレは確かに『罰』と言っていいのかもしれない。

 ―まぁ…これくらいなら良い…かな?

 可愛らしい、とは決して言えないレベルの罰だけれど我慢できないレベルではない。ボクとしても責められるより責める方が性分に合っている――まぁ…責められるのも嫌いじゃないんだけど――し、マークの我慢している顔を見るのもボクとしては楽しみだ。…何より――

 ―ボクの手の中に居るのに、思い通りになると思っているネリーの性根を…教育してあげなきゃ…ね♪

 そう思いながらボクは抱きしめていた手をするすると肌を撫でるように下へと移動させた。そうして一秒も立たない内にボクの手はシルクのような肌触りの薄布に触れる。天使だった時に身に着けていた衣服を再利用して作った淫らな純白の下着は、控えめなオッパイでさえ隠し切る事は出来ておらず、ピンっと勃起した乳首を隠す程度の面積しかない。窓から差し込む秋の日差しを一杯に浴びてキラキラと煌いているその薄布の上から、ボクはそっとネリーのオッパイを揉み上げる。

 「んきゅぅっ♪」

 その刺激にネリーは人差し指を噛みながら堪える。元々、ボクとマークが隅々まで開発したネリーの身体は快楽のルーンなどなくても十二分に敏感だ。胸だけで絶頂する事だってそう難しくは無い。けれど、完全に堕ちきって、ボク以上の淫乱になったネリーの身体には快楽のルーンが刻み込まれているのだ。薄布越しに軽く胸を揉まれるだけで、絶頂しそうな快感が、今、ネリーを襲っているのは想像に難くない。

 「お…おっぱいをブラ越しに触られるの…良いですよぉ…♪びりびりって温かくて…んくっ…♪と、溶けちゃいそうですぅ……♪」

 けれど、その絶頂を堪えながらも、ネリーは健気にもマークにそう伝える。身体中開発されきっていて言葉を考える余裕もないだろうに、未だ彼へと必死に報告しようとする姿に強く興奮を覚える。そして、男と女と言う違いこそあれど、彼女の言葉にどれだけの感じているのかは察する事が出来るのだろう。ネリーを見つめるマークの咽喉も、唾液を嚥下するのに蠢いたのが彼女越しに見えた。

 ―なら、もっと…素敵な絵を見せてあげようじゃないか…っ♪

 段々と興が載って来たボクはネリーの首筋にそっと顔を近づけた。元々、身長が殆ど同じなので若干、顔を下げるだけで甘いフェロモンの香り立つ彼女の首筋に触れることが出来る。けれど、ただ触れるだけでは満足出来ないボクはネリーの首筋にいきなり舌を這わせた。

 「ひゃあっ♪」

 いきなり生暖かい舌が敏感な首筋を這ったのに嬌声とも悲鳴とも取れる声を上げながらネリーは若干、身じろぎをする。ボクのお腹に押し当てられ、つやつやとした感覚を伝えてくれる翼も抗議をするように揺れるが、ボクは気にせず、再び舌を舐め上げた。

 「んひゃっ♪…あ、あのアイシャさっんぁああっ♪」

 抗議をするネリーの声を途切れさせる為、さっきよりも強く胸を揉みあげた、お世辞にも大きいとは言えないサイズのオッパイを無理矢理寄せて谷間を作るような乱暴な愛撫だけど、淫乱なネリーにとっては丁度良い快感だろう。がくがくと足を震わせ始め、内股気味にさえなっているのだから文句は言わせない。

 「ん……ネリーの汗…美味しい…♪」
 「やぁああっ♪」

 羞恥心を煽る為に耳元で囁いたその言葉は決して嘘じゃなかった。沿岸部でしか取れないような上質な塩にも勝る上品な塩味は、何度味わっても飽きる事は無い。さらに首筋からむせ返りそうなくらい甘いネリーの体臭が立ち上っていて、味を強烈に引き立ててくれる。マークのオチンポには及ばないものの、十二分に美味しいご馳走が、ボクの目の前にはあった。

 ―なら…隅々まで味わってあげないと失礼だよね…♪

 そう思いつつボクは再び首筋を舐め上げる。けれど、最初のような味わうようなものではなく、ねっとりと唾液を塗りこむように、だ。最初に舌の腹でべっとりと唾液を塗りつけて、ぐりぐりと舌先で塗りこむようなそれは純白のキャンパスを穢すような妖しい魅力がある。
 無論、それだけに集中して可愛いネリーのオッパイの愛撫も疎かにしない。どんな素材で出来ているのか伸縮性にも富む薄布ごとオッパイを掴んで谷間を作る。そのままぐりぐりと乳首を愛撫するとネリーは叫ぶような嬌声をあげるのを、ボクとマークは良く知っていた。

 「んきゅううぅぅぅっ♪」

 何時も通りか、それ以上の嬌声をあげながら、ネリーは再び身悶えする。けれど、ボクを突き飛ばすような事は決してしない。結局のところ、羞恥心のまま嫌と口に出すけれど、実際はそれほど嫌がっては居ないのだ。そもそもボク以上に快楽に素直になったネリーが気持ち良い事を本当に嫌う訳が無いのだから。

 ―…ホント、可愛い子…♪

 湧き上がる興奮のまま、首筋に吸い付いてキスマークを残そうか、とも一瞬考えたけれど、流石にそれは自重する。最初の頃だって調子に乗りすぎてファーストキスを奪ってしまい、ネリーを泣かした事があったのだ。例え快感のスパイスになる行為だとしても一定のラインは超えるべきではない。

 「はあんっ…♪く…首筋もぉ…舐めるのぉ♪ナメナメ良いんです…っ♪マークとアイシャさんに堕とされちゃったからぁっ♪びりびりしちゃうんですううっ♪」

 ネリーの後ろ側から彼女を愛撫しているボクには見えないものの、彼女の顔はどんどんと快楽に蕩けているのだろう。それは口の端から漏れる唾液や、ネリーを見るマークの興奮しきった表情、またさっきマークにフェラチオしていた時のように蕩けきった甘い声からも分かる。

 「こんなに感じて……やっぱりネリーは変態なんだね…♪」

 囁くそうに言う言葉にネリーは身体をぶるり、と振るわせた。同時にがくり、と彼女の身体が力を失う。倒れこむ前に反応して抱きすくめ、崩れ落ちるのだけは防いだもののその身体には完全に力が入っておらず、ネリーは甘く息を吐き続けるだけだ。時折びくびくと震えるけれど、決して規則性のあるものではなく、彼女の制御下に無いのが一目で分かる。

 ―…これは…もしかしなくとも……♪

 「…ねぇ…ネリー…♪もしかして変態って言われたのでイッちゃったのかな…♪」

 確信を持ちながら、そう言うのはいやらしいと思うものの、そもそも淫らな行為をしているので何も問題は無い。そう自分に言い訳しながらボクが聞くと、ネリーはかくかくと操り人形のように首を上下させて応える。恐らくは言葉を話そうにも、そこそこ強い絶頂を迎えた所為で、舌が回らないのだろう。それはさっきマークの足で絶頂したボクにも起こった事だから良く分かる。

 ―と言っても手加減してあげる事にはならないんだけれどね……♪

 寧ろ言葉で責められる部分を見つけたのであればそこを激しく責め立ててあげるのがネリーの為だ。だってネリーはボクと比べても、大分マゾ気質が強いのだから。それは変態の一文で見事に絶頂し、脱力するほどの快感を得ている姿から見ても一目瞭然だ。

 「へぇ…♪やっぱりネリーは凄い変態マゾなんだねぇ…♪言葉だけでイッちゃうなんて普通のマゾだって滅多にできないよ…♪」

 責める様に言いながら、ボクはぐいっとネリーの足をこじ開けるように、左足を通した。元が天使なので彼女の体重は人間と比べれば大分、軽いけれど、それでも非力なボクの腕だけで長時間支えられる程ではない。自然、もう一つ支えられる場所を作る必要があり…ボクはそれをネリーの股間以外に思いつかなかったのだ。
 けれど、それはネリーにとっては快楽以外の何物でも無い。脱力し重力に引かれた身体がボクの太股に圧し掛かり、ぐじゅっといやらしい音を立てながら薄布から愛液を噴出す。無論、膣奥からもどろどろとした愛液が流れ出て、絶頂の余韻で震えるネリーをさらに追い立てた。

 「ひゅああああんっ♪」

 舌が回らない所為か鼻の抜けた嬌声をあげながら、ネリーは背筋を弓なりに逸らした。細身の肢体が折れてしまうのではないかと心配になる程の感じっぷりに何処か痛ましいイメージさえ受けるが、ぴくぴくと力なく震える腕やどろりと溢れた唾液が頬から零れ落ちるのを見るだけですぐに分かる。

 ―あぁ……やっぱり可愛い…♪

 ボクたち天使――まぁ、ボクもネリーも正確には堕天使だけれど、細かい事は気にしない――は幼い容姿のまま固定されている。人間で言えば二次性徴を迎え、胸が膨らみ始める前くらいだろう。実際、ボクらの胸が控えめなのも貧乳なのではなく、ただ、そこまで成長していないと言うだけなのだが…それはさておき。そんな幼い容姿のネリーが、全身を震わせて快楽に激しく悶え絶頂を覚えていると言う姿に、ボクは強く惹かれて、オマンコの奥からじゅんと熱い粘液をまた漏らしてしまう。

 ―もっと見せて…♪そして見せてあげて…♪ネリーがたっぷり乱れるトコロ…っ♪

 だからこそ、ボクはもっとネリーの乱れる姿が見たくて、弓なりになって絶頂に震えているネリーの胸の薄布をそっとずらす。後ろにいるボクからは見えないものの、ピンッと張ったピンク色の乳首がマークからは見えているはずだ。全身をサキュバスの魔力に犯され、脳髄まで堕落しても、小指の先くらいの可愛らしい乳首はピンク色のままで強いギャップを見る人に与えるのを、ネリーの自慰を良く手伝わされるボクは良く知っている。

 ―そしてぇ…この可愛らしい乳首を可愛がってあげるとぉ……♪

 ようやく触ってもらえる事実に歓喜しているのだろうか。ふにふにとした胸を触っている手からは、激しく脈打つ心臓の鼓動だけでなく、乳首もぴくぴくと揺れている振動が伝わってくる。必死に揺れて、「触って触って♪」と精一杯、自己主張するような乳首をボクは親指と人指し指の腹でぎゅっと押しつぶした。

 「きゅふうううううううううううううううううううんっ♪」

 敏感な性器を、痛みさえ感じかねないほど、強く圧迫されているのにも関らず、ネリーは今まで以上の叫び声をあげて再び絶頂へと追いやられた。激しい快感を逃がそうと、がくがくと激しく揺れる腰はその度にボクの太股とこすれあって、白濁した粘液を垂れ流す。本気汁で太股を濡らされるのもお構いナシに、ボクはそのままぐりぐりと指の間で転がした。

 「ああああっ♪駄目ですっそれ駄目えええええ♪いんらんちきゅびっ♪ぐりぐりしちゃびりびり激しっ…感じ過ぎちゃいますううっ♪」

 その快感は堕天使へと堕ち、淫乱さではボクを軽く凌駕している上に、快楽のルーンまで刻み込まれているネリーにとっても激し過ぎるものなのだろう。ボクの手によって絶頂の中で再び絶頂を迎えながら、どんどんと高まっていくのが分かる。腰はがくがくと揺れ続けて止まる様子も無く、だらりと垂れ下がった腕には力の片鱗さえ見えないのだから。

 ―でも…まだ駄目だよ…♪まだ許してあげない……っ♪

 激しい快楽の中で既に自分さえも見失い、当初の目的なんて忘れているであろう姿を見ても、ボクの中の嗜虐心はまったく満足しない。寧ろそんなネリーの姿に強い興奮を覚えて、もっとネリーを激しく感じさせてあげたい、と、そしてネリーの感じている姿を見てもらい、マークにも興奮して欲しいと、思い、子宮の疼きを激しくさせてしまうのだ。

 ―ほらぁ…マーク見てぇ…♪ボクはこんなにネリーを淫乱に出来るんだよぉ…♪偉いよね…?ボク偉いよね…?

 甘えるような視線をマークに送っても、彼の視線はネリーに釘付けになって離れない。当然だろう。意味の無い仮定だけど、ボクがマークと同じオスならば、後ろで愛撫している可愛げの無い堕天使よりも、全身から色気を振り撒くような可愛らしい堕天使が感じている様の方に目を惹かれるに違いない。…けれど、そう分かっていても、ボクの中の嫉妬のような感情は満足しなかった。

 ―あぁ…憎らしいほど可愛らしい…っ♪ネリーは……本当に生意気だね…♪

 その嫉妬を嗜虐心へと変えて、ボクはさらに激しくネリーを責め立てる。指先に力をさらに込めて、ピンク色の乳首が赤色に染まるまで押し潰した。さらにちょっぴり爪を立ててぐりぐりと乳首の先の穴を刺激するのも忘れない。初心な少女であれば痛みしか感じないであろうそれも、ネリーにとっては淫らな罰にしかならないのだ。

 「やああああっ♪はげし…っ♪駄目ぇえええ♪深いの来るぅううっ♪大きい波来ちゃいますううううううううっ♪」

 何時の日か、マークの子を孕んで沢山、母乳を噴出すであろう大事な穴を犯される感覚と、乳首が磨り潰されるような被虐的な快感にネリーはついに決壊してしまったのだろう。甲高い嬌声をあげたかと思うと今まで以上の震えを全身に走らせて、ちょろちょろと生暖かい液体を股間から漏らし始めた。既に愛液で限界一杯となっている薄布にそれを留める力なんてあるはずもなく、ボクの太股と床を黄色く染め上げる。普通であればアンモニア臭がするであろうそれは、寧ろ甘い蜂蜜のような香りさえする。流石に舐めてみたいとは思わないものの、一般的に言う『おしっこ』と比べると汚いとは思わない。

 「ふぁあああ……ふ…やぁぁ…♪」

 そしてボクの太股を穢してくれたネリーは気の毒になるくらい激しく胸を上下させながら、完全に身体から力を抜け切っていた。思わず責めるのを止めてしまったが、今のネリーであれば、恐らく五歳児でも勝つことが出来るだろう。そんな取りとめの無い事を考えてしまうくらい、今の彼女は全身で無力さを表現していた。

 ―……でも、きっとそれがまた…オスを刺激する。

 幼い姿をするネリーが悦楽に悶え、おしっこさえ我慢出来ない程、身体から力を抜ききった姿に興奮しないオスはきっといない。勿論、インキュバスとなって人並み以上どころか無限とも思えるくらいの精力を手に入れたマークにとって、そんな彼女の姿に興奮を覚えない訳が無かった。今は何とか自制しているようだけれど、ネリーが絶頂し、黄金水を撒き散らした瞬間に思わず一歩踏み出した姿から察するにもうそろそろ限界なのだろう。

 ―このままネリーをイカせ続けて、ボクがマークを独り占めするのも良いけれど…。

 流石にそれはネリーにとって可哀想過ぎる気がする。結局、大好きなマークの精液を貰えないまま何度も絶頂するのは気持ち良いけれど、それだけ辛いのだ。お腹だけは膨れるけれど飢餓感は決してなくならない感覚と言えば分かりやすいかもしれない。実際、ボクの上でぴくぴくと震えて、時折、尿道に残ったおしっこを噴出すネリーの顔は快楽に蕩けているけれど、満足している色なんて欠片も無かった。

 ―…まぁ、ここは姉貴分として譲ってあげるべきなんだろうね…。

 本当は悔しいけれど、本当は寂しいけれど、本当はボクだけのマークで居て欲しいけれど、そういうわけにもいかないのが現実だ。特に今回はボクが大人気なくネリーの邪魔をした…と言う経緯もある。その辺りを考えると、ボクが一番…とか、ボクだけのマークで…なんて言えないのが辛いところだ。

 ―…それに、ボクじゃきっと…ネリーには勝てない…。

 「…ほぉら…♪…マークに何か言う事は無いのかなぁ♪」
 「きゅふぅうっ♪」

 未だ絶頂の波に翻弄されているネリーを太股を動かして揺らすと可愛らしい声を上げながらも、その身体に若干の力が戻り始めているのが分かった。脱力する身体は未だボクに圧し掛かっているものの、ふっと肢体が軽くなったのだから。恐らく快感に翻弄されながらも、自分が今何を求めているのか、何を欲しているのかが分かっているのだろう。…同じものを求めるメスとして悔しいような気持ちの中に、姉貴分として何処か誇らしい感情もあるのが複雑だった。

 「あ、あの…」

 戸惑うように口を開きながら、ネリーは少し後ろを振り向いてボクの顔を窺った。ボクはネリーじゃないので分からないけれど…きっとボクに遠慮しているのだろう。そりゃ…さっきマークの精液を独り占めさせたくなくて、邪魔をするような大人気ない魔物娘だったから当然と言えば当然だ。けれど…姉貴分としてはやっぱりそれはちょっと寂しい。

 ―…まったく…変な所で気を使うんだから。

 基本、ネリーは甘えん坊で末っ子気質だ。マーク相手にだって全力でぶつかって全力で愛情を表現している。…まぁ、ボクだって基本、好き好きと表現しているつもりだけど、ネリーほど羞恥心を捨てられない。そんな彼女が「本当に先で良いの?」と言わんばかりにボクの顔を窺うのは、姉貴分として情けなくて、寂しい気持ちになってしまう。

 「…良いよ♪マークの一番搾りの濃ぉい精液は譲ってあげる…♪」

 安心させるように耳元で囁いたボクの言葉にも絶頂で敏感になったネリーは快感を感じてしまうのだろう。びくりっと再び大きな震えを全身に走らせて、「ふわぁ…♪」と甘い息を吐く。聞いているだけでゾクゾクするような甘い吐息が空気に霧散していく中、ネリーは決心したように再び口を開いた。

 「わ…私の膣奥の中までぇ…堕天使の淫らなオマンコをマークの精液で一杯にしてくださいいっッ♪私の隅々まで犯して…っ♪マークの子供を孕ませてください…ッ♪」
 「…っ!ああっ!!!」

 ようやく得られた『お許し』に、マークは顔一杯に喜びを浮かべながら足を進めてくる。今までお預けを喰らっていた所為だろうか。顔を真っ赤にしながら、荒い息を何度も吐く彼の姿は何処か鬼気迫っていて恐怖さえ感じてしまう。…けれど、同時に、ボクの中のメスの部分がそんなマークに激しく犯され、隅々まで穢されたい、と強く叫び、疼きまくってどうにかなってしまいそうな子宮からどろどろの蜜液を漏らさせる。
 そして、それはボクだけじゃなくネリーも同じなのだろう。一歩一歩と見せ付けるように近寄ってくるマークを迎え入れる為に両腕を広げる彼女の姿には陶酔さえ見える。恐怖なんて一片たりとも感じておらず、寧ろこれから子宮の奥まで犯される予感に全身を震わせて甘い息を吐いていた。

 「来てぇえっ♪一杯…一杯抱きしめてくださいいっ♪」

 甘えるようなその言葉と同時にネリーの身体がボクの手から完全に離れた。ボクの腕の中にあった熱い塊が離れて、秋の日差しの中で身を震わせたくなるような薄ら寒さを感じるけれど、それに浸る暇は無い。目の前で抱き上げられ、マークの首と腰にしっかりとしがみ付く――俗に言う駅弁と言う体位だ――ネリーのオマンコを覆うぐちょぐちょの薄布がズラされ、ゴリゴリとマークのオチンポがめり込もうとしている光景に目を奪われてしまう。

 ―あぁ…♪もうぅ…マークのオチンポが…こんなに大きくなってる…っ♪

 長い間、痴態を見せ付けられオナニーさえ禁じられたマークのそこは既に限界ぎりぎりのサイズになっている。真っ赤に腫れあがっていた亀頭は大気の震えにさえ反応してしまうのかびくびくと震えていて、見るからに辛そうだ。大きくカサを広げたカリはさっきとは比べ物にならない程で、見ているだけで唾液を飲み込んでしまいそうになってしまう。強い興奮の所為か血管が浮き出てボクの手じゃ両手じゃないと掴みきれない太さと長さを持つ肉茎からは、今すぐむしゃぶりたくなる程、オス臭い匂いをむんむんとさせていた。見るだけでメスの欲望が燃え上がってしまうオチンポに胸が高鳴って、今日最高の疼きを見せる子宮に我慢できなくてはしたなく舌を突き出してしまう。

 ―い、いや…我慢だ…我慢……っ!

 はっきりと口に出してネリーに先を譲ったのだ。ここで問題を蒸し返すのは懸命ではない。早く性交が終わるのに協力して、ボクの番が早く回ってくるようにした方がよっぽど建設的だろう。

 ―で、でも……でもぉぉ…っ♪

 愛しいオスの男根が狭いネリーの膣穴をめりめりと押し広げながら進もうとしている様に嫉妬を禁じえない。きっと、ネリーは今、ようやく味わえるであろうマークのオチンポに心を躍らせながら膣奥から淫液をだらだらと流しているのだろう。見ているボクだって、さっきから子宮の疼きが止まらず、愛液を垂れ流しっぱなしなのだから。

 「んっ…ああああああああっ♪」

 ―あぁ…入っちゃったぁ…♪マークのオチンポ……ごりごりって…ネリーの膣の中にぃ…♪

 最高に膨れ上がったカリの部分さえ膣穴を通り抜ければ、後の抽送は簡単だ。太くて太くて…むしゃぶりつきたいくらい大きいマークのオチンポだけれど、ネリーの膣穴もまた、ボクと同じようにマークのオチンポによって広げられているのだから。マークの手によって開発されて、マークを一番感じさせる術を知り尽くしている膣にとって、カリを弾くような最初の締め付けも愛しいオスを感じさせる為のものでしかない。

 ―実際、マークも……ネリーのとろとろのオマンコに挿入して…とっても気持ち良さそう…♪

 ネリーの背中越しに見るマークの顔はぎゅっと歯を喰いしばって射精を堪えるようなものだった。さっきもボクの横槍で射精するまでには至らず、さっきまで痴態ばかりを見せ付けられていたのも無関係では無いだろうが、絶頂に絶頂を重ねてとろとろに蕩けきったネリーのオマンコがあまりにも気持ち良過ぎるのだろう。ボクには男性器は無く、想像でしかないけれど、オス専用に開発されきった堕天使のオマンコが気持ち良くない訳ないのだから。

 「ああああっ…マークのオチンポぉごりごりってぇええっ♪尿道の裏擦っちゃあああ♪」

 そして、それはネリー自身にも言える事だ。何度も何度も挿入され、オスの味を覚えたオマンコは、自然と最高の快楽を引き出すように律動する。マークが引き抜く瞬間、きゅっと強く締まり、敏感なGスポットを擦りあげる瞬間に生まれる快楽は、性感に敏感なネリーとは言え、一擦りで潮を吹くほどだ。

 「おくううっ♪奥もらめれすっ♪やらしいしきぅ突かれちゃああっ♪私、駄目な子になっひゃううううっ♪」

 それだけでなく、奥へと突きこまれた瞬間に、キスをするように亀頭に吸い付こうとする子宮口から弾ける快楽だけでも十二分に絶頂出来る。…それは…まぁ、ネリーだけじゃなく、ボクも同じなんだけれど。ボクだってネリーと同じくらいマークに愛してもらっているのだから…そりゃあ…やっぱりその凄さは身に染みて知っている。

 ―だからこそ…だからこそ……羨ましい……っ♪

 今こうして目の前で激しく交わる二人は、まるで芸術品のように美しい。教会の固まりきった道徳や倫理感を持つ人は決して認めないだろうけれど、理性を含めて情欲と愛情以外の感情を投げ捨て、ケダモノのように交歓する姿は原初の美しさを彷彿とさせる。セックスと美と言うものがどれだけ教会関係者が否定しても無関係では無い事を世に示すような二人だけれど…そこにボクの居場所は決して無い。本格的なセックスのの最中は邪魔をしないという暗黙のルールに縛られるボクに許されるのは、目の前で交わる二人をオカズにしながら、ネリーを自分に置き換えてオナニーする事くらいだ。

 「はあああっ♪マークひゃ…またイきゅ…イっひゃいますうううっ♪」

 再びびくびくと震えて、黄金水を股間から噴出すネリーに合わせる様に二人の結合部からどろりと白い液体が漏れ出ているのが分かった。恐らくマークがついに決壊し、ネリーの膣奥に射精したのだろう。長い間、ずっと塞き止められていた精液だが、全部は子宮に注ぎ込まれていない。射精を開始したとはいえ、マークは抽送を止める事無く、今も激しく腰を動かし続けているのだ。自然、子宮の奥へと送られる分以外は、マーク自身のカリ首に膣ごと引き出されて、ネリーのオマンコから掻き出されてしまう。

 「精液っ♪精液掻きださないでえぇっ♪し、子宮にっ♪堕天使オマンコ孕ませて下さいぃいいっ♪」

 懇願するように言うけれど、性欲に支配されきっているマークが言う事を聴いてくれるはずも無かった。寧ろその淫らな言葉に反応したのか、軽いネリーの身体が浮き上がりそうなほどに激しくしていく。そしてその度に射精しているのか、膣穴近くまでカリ首が引き出されるたびに愛液と精液のカクテルが泡を立てながら、ボクの目の前でダラダラと落ちて来るのだ。

 ―あぁ…こんな…こんなの我慢できるわけないよぉ…っ♪

 目の前での激しい交わりの証が零れ落ちて来るのに、ついにボクは我慢できなくなって、両手を自分の胸に置いた。そこはもう既にビンビンになっている乳首が薄布を持ち上げていて、さっきまでのネリーのようにぽっちりとした可愛らしい形を浮き上がらせている。そんな胸を焦らすように薄布の上からそっと触れた瞬間、ボクの身体にも激しい電流が流れてしまう。

 「んきゅうっ♪」
 「マークぅっ♪もっとぉっ♪もっと射精くださいいいいっ♪」

 射精を強請るネリーを見ながら、ボクは触れた手をゆっくりと淫らなものに変えていく。まずは胸の中心――乳首に向かって絞り上げるように。ネリーと同じく、身体にルーンを刻み込まれているボクにとっても、それだけで身体中に激しい快感が流れて、その場に倒れこみそうになってしまう。けれど、ボクの足元にはさっき――マークの抽送ごとに絶頂する今も勿論、時折漏らしているわけだけれど――ネリーが残してくれた黄金水があるのだ。流石にそこに倒れこむ気持ちにはなれず、ボクは必死に両足で堪えながら、自分の胸を愛撫し続ける。

 「あああっ♪」
 「イキっぱなしの堕天使オマンコ気持ち良いですかっ♪もっと下さいねっ♪一杯っ一杯っ一杯いいいっ♪」

 ―ぼ…ボクも…ボクもマークの精液…一杯注いで欲しい…っ♪

 ネリーの言葉に、ボクの膣奥にも射精しているマークを妄想し、子宮が唸り出す。気持ち良さだけでなく、今すぐ精液が欲しい、と抗議するメスの本能を何とか抑えようとボクは胸を揉みあげる力を強くする。乳首ではなく両サイドから谷間を作るように寄せられた胸をぎゅっと掴むと、それだけで絶頂へと導かれそうになってしまう。

 ―でもぉ…でも…足りないぃ…っ♪

 堕天してからマークの精液の味を知り、彼と寝食…特にセックスを共にしてきたボクにとって、自分の自身の指ではもう絶頂へと導けなくなっていた。さっきのようにマークの身体に思いっきり擦りつけたり、マークの指に意識が飛びそうになるまで激しくGスポットを擦り上げられたりしなければボクの絶頂は決して訪れない。どれだけ興奮して盛り上がったとしても、ふわふわと境界線が溶けていきそうな手前でどうしても止まってしまうのだ。

 ―ああああっ♪切ない…切ないよぉマークぅ♪弄ってぇ…ボクを可愛がってぇええっ♪

 でも、どれだけ心の中でそう叫んでもそれを口にするわけにはいかない。だって、今はネリーが彼と交わっているのだ。前戯の段階ではまだ邪魔したり奪い合いをしたりするが、本番の最中に横槍を入れる訳にはいかない。そこまで恥知らずにはなりたくないし、何よりボクがネリーの立場ならば、そんな風に邪魔されるのはやっぱり辛い。人にされたくない事をしてはいけない…なんて道徳を説くつもりは無いけれど、やっぱり一線というモノはお互いの為に護るべきだろう。

 「マークうぅっ♪マークぅううっ♪」

 ―マークぅっ♪マークうううっ♪

 同じように愛しいオスの名前を呼びながらも、ボクとネリーの状態はまったく違う。ネリーは実際に相手に愛され、求められている側の喜びの声だが、ボクは愛しいオスを独り占め出来ずにあげる敗北者の哀しみの声だ。その落差が、またボクの中に暗い影を落としながらも、被虐的な快感を呼び起こす。それは頭が白くなりそうな強い快感だったけれど、やっぱり絶頂の寸前で失速してしまう。

 ―切ないよぉ…惨めだよぉ…可愛がってよぉ…愛してよぉ……マークマークマークマークぅううっ♪

 しかし、何度、心の中で声を挙げてもマークがボクに振り向いてくれる事は無い。性欲で頭が一杯になっている今のマークには、目の前で自分のオチンポを咥え込んでくれているメスの事しか考えられていないだろうし、何より普段からネリー優先なのだ。ボクは何時だって序で、ネリーのオマケ程度の価値しかないのだろう。

 ―それでも好きなんだよぉ…大好きなんだよぅ…。

 普段、抑え込んでいるはずの切なさが唐突に溢れ出てきて涙という形で現出する。ぽろぽろと珠の様な涙が目尻から流れるのを必死に押さえようとするもののタガが完全に外れたのか、中々上手い事いかない。ネリーの後ろに居るのでまだ気づかれてはいないけれど、もし気づかれたら一大事になってしまう。

 ―だって…だって、面倒臭い女だなんて思われたくは無い…っ!

 勿論、マークはそんな事を思う男じゃないと信じている。笑顔で人を破滅させられる冷酷な一面こそ持っているが、基本的に彼は優しい男だ。トラウマの所為もあるのだろうが、打算無しに人助けをするマークが、そんな事を思うはずは無い。…だけど、世の中には万に一つ…という事もあり得るのだ。…そして、もし彼にそんな風に思われたら、それこそボクはもう生きてはいけない。

 ―だから…だからぁ…止まってよ…止まってくれよぉ…!

 「んきゅううっ♪子宮ごりごりぃいっ♪そんなに淫乱天使のぉぷりぷりのオマンコ孕ませたいんですかぁっ♪」

 けれど、どれだけ我慢しようとしても幸せそうなネリーのその声にボクの中の惨めさが膨れ上がってしまう。無論、ネリーに悪気などあろうはずも無い。それどころかマークにだって悪気は無いのだ。悪いのは自分の時には同じようにネリーに寂しい思いをさせているのに涙を流すボクの弱い心だけ。けれど、それを自覚して尚、溢れ出る涙は止まらない。

 「良いですよぉ♪いっぱいぐりぐりしてぇ熱い精液塗りこんでくださいっ♪精液が流れ出ないようたっぷり栓をしてくださいねぇ…っ♪」

 満足そうに言うネリーに目を向けると、彼女の言うとおり、マークの腰はぐりぐりと膣奥を抉るように円を描いていた。粗方射精し終わって落ち着いたのだろうか。情欲ではなく孕ませたいというストレートな欲望を満たす為の腰の動きは見ているだけで子宮が疼く。膣一杯にくわえ込んだマークの太いオチンポがぐりぐりと膣を広げる感覚はボクも味わった事があるから分かるが、抽送とはまた違う蕩けそうな快感があるのだ。実際、ネリーもしっかりとマークの身体に巻きつかせた手と足以外には殆ど力が入っておらず、どんどんと背筋を弓なりにして快楽を溜め込んでいる。

 「はぅぁ……♪ぐちょぐちょの精液塗りこまれて…蕩けちゃいそうですぅ…♪今度こそ妊娠できるようにぃ…淫らな魔物の子宮の奥まで蕩けさせてくださいねぇ…♪」

 誘うように言うネリーの言葉にきっと再び我慢できなくなったのだろう。ぶるぶるとマークの腰が震えたかと思うと再び抽送を開始した。ぱちゅんぱちゅんと肉同士がぶつかる音が響き、再びネリーの肢体が浮き上がる。またボクを無視して燃え上がっていく二人の姿にボクは涙が止まらないまま乳首を強く抓り上げた。

 「んあああああああっ♪」
 「ひゅううんんっっ♪」

 乳首からびりびりと走り、腰を溶かしていくような快感に声を挙げた瞬間、ネリーも同じように嬌声を発した。綺麗なカーブを描いている弓なりの背中がぴくぴくと震え、艶やかな翼は腰ごとがくがくと上下に揺れて、激しく快楽を貪ろうと、あるいは与えようとしているのが分かる。それを見せ付けられているボクにとっては寂しさと、何より強い興奮を掻き立てられる光景だ。

 「また激しっ…ぃ♪がくがくしちゃあああっ♪今度こそぉ全部っじぇんぶっ飛んじゃいますうううっ♪」

 そう言いながらも自分から激しく腰を使っているネリーの唇からだらだらと透明な唾液が落ちて、愛液と汗と精液とオシッコの混ざり合った薄黄色の海へとダイブする。ぎゅっとしがみ付いた足と手もそろそろ限界なのかふるふると震えて、今にも堕ちそうになっていた。そして…意識ごと堕ちていく寸前のネリーの姿にボクは興奮と、それ以上の歓喜を感じてしまう。

 ―早く…っ早くイって…っ♪次はボクの番だからぁあっ♪早くイってよおおおおっ♪

 けれど、ボクは二人に手を出せない。どれだけ心の中でそう願っても、ボクにはどうする事も出来ないのだ。だから、ボクはその興奮と歓喜を自分の中に刻み込むように乳首を摘む指にさらに力を込める。指の中で真っ赤に染まった乳首を、そのまま前へとぐいっと引っ張ると、無理矢理、扱われているという被虐感と、強い悦楽がボクの身体中に走る。あまりの快感に膝が抜けてしまい、膝立ちの状態でばしゃっと薄黄色の水溜りに飛び込んでしまうが、ボクにはそれを汚いと思う余裕も無かった。

 ―イってイってイってぇぇっ♪ボクはマークじゃないと駄目なんだからぁあああっ♪ネリーと違って、ボクは…ボクはマークのオチンポがないと駄目な子なんだからあああっ♪

 そのまま快楽を求めて下腹部に伸びようとする手を必死に堪えながら、ボクはぐりぐりと伸ばしたままの乳首を手の中で転がす。…だって、ボクのオマンコはマークだけのものなのだから。そこはボクだって触れちゃいけない場所だ。彼にだけ許された彼だけの穴は、今も快楽を欲しがってひくついているけれど、決して触っちゃいけない。…少なくともソレを禁じるだけの理性が、まだボクには残っていた。

 「あはああああっ♪イッてますイッてますうううううううっ♪マークのオチンポぉおおおおっ♪素敵ですうっ♪」

 淫猥な言葉を吐き、何度もイッているけれど、ネリーの意識はまだ飛んではいない。それを知ってかマークの腰の抽送はさらに激しくなっていく。まるで痙攣していると思う程早いペースで、しかし、大きく腰を引いて子宮に打ちつける様なストロークは、ネリーの身体に耐え難い悦楽と衝撃を叩き込んでいるのだろう。けれど、しっかりとネリーの細い腰を掴んだマークの両手が衝撃を逃がさない。浮き上がる事もできず、さっきまでよりもさらに強いストロークを叩き込まれる彼女の身体の中には行き場を失った衝撃と、蕩楽が渦巻いているはずだ。

 「ゴンゴンしゅご…っ♪ゴンゴンって来るのしゅごいですうううっ♪私っわらひもう駄目えええええっ♪」

 そして、それがネリーのトドメになった。普通の魔物娘でさえ蕩けて自分を見失ってしまいそうな程激しいそれは、快楽のルーンを刻まれ普通よりもさらに敏感になったネリーに――…そして…ボクも…♪あぁ…あんな激しくされたら…きっとボクは馬鹿な子になっちゃう…っ♪――我慢できるものではない。自然、唯一、しっかりとしていた腕や足を痙攣させ、今までに無い絶頂に震え始めた。ピーンっと広げられた翼の先もぴくぴくと揺れ、二人の結合部からは透明な潮が噴出し、最後に残っていたのだろう黄金水もちょろちょろと漏れ出す。弓なりになった背筋には沢山の汗と、鳥肌が浮かんでいて、激しい快楽の余韻を一目で窺わせた。
 …けれど、そんな風に絶頂しているネリーとマークのタイミングが後一歩でずれてしまった。既に絶頂をし、自分を見失い始めているネリーの膣にマークが最後の一突きを放った瞬間、彼女も支える彼の太股ががくがくと痙攣し、より深いところに射精しよう腰を思いっきり前に出す。…そして射精。マークが小さく呻いた瞬間、二人の結合部からは白い体液が溢れ、糸を引くような粘性を見せつけながら重力に惹かれて堕ちていく。

 「あああああああああああっっっ♪♪」

 そして…それは既に絶頂し、蕩けきっているネリーにとって明らかな致命打となった。コレ以上無いほど気持ち良い絶頂の中で味わう最高の抽送と愛しいオスの種付けするような激しい射精。それに……そんな気持ち良くって幸せなモノに耐えられるメスなんてきっといない。だって、見ているボクだけでさえ、絶頂を覚えてしまいそうなほど気持ちよくって幸せそうな光景なんだから。実際にマークの射精を膣奥で受け止めているネリーの意識は傍目で見ても吹き飛びかけているのが分かった。

 「んん……あ……っ♪」

 そして、全身の震えが収まった後、力なく堕ちた四肢がマークの腕の中で広がる。あまりの無防備さに大丈夫なのだろうか、と言う気持ちが無いわけではなかったが、それよりも大きな歓喜で胸の中が一杯になっていた。…だって、ネリーが力尽きた今、次はボクがマークに愛してもらえる番なのだから。

 ―あぁ…なんて醜いんだろう……っ♪

 妹分を心配する気持ちよりも、自分がこれから犯される予感に胸を振るわせる…。そんな自分に自己嫌悪と、それに喚起された被虐心が湧き起こった。でも…どれだけ自己嫌悪したってボクの本能は決して止まらない。寧ろそれをスパイスにより激しく興奮を燃え上がらせる。
10/11/11 03:24更新 / デュラハンの婿
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