私の首輪、あなたの鎖 %02 c=15d %02 c=15d %02 c=15d %02 c=15d %02 c=15d %02 c=15d %02 c=15d

羽虫

「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
 少年が走っていく。がやがやとした祭りの喧噪のなか少年が走っていく。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
 少年の手には小額の、しかし、少年にとっては多額の、金が握られている。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
 少年は、走っていく。ただただ、走っていく。











 今日は年に一度のお祭り。国中の『業者』が集まって数日に渡って、飲み、騒ぎ、商いをする。
「ちょ、すいません!通してください!!」
 人混みをかき分け少年は市場へと急いでいた。歳はまだ若そうだが、貧相な体つきに、お世辞にも上等とは言えない服、ぼさぼさの髪が実年齢より老けて見せた。
 押し合いへしあいしながら、少年は目的の市場に着いた。
 市場ではすでに多くの露店が開いており、金持ち貴族が品定めを始めていた。
 少年もあわてて店を回りだすが、
「高い・・・。」
 どの商品も高く、少年のなけなしの財産ではとても手が届かない。
 それでも諦めきれない少年は近くの『羽虫使い』に訪ねた。
「すいません、これだけで買える娘はいますか?」
「んん?・・・それっぽっちでは羽も買えんな。」
「そうですか・・・。」
「いや・・・、まてよ。」
 羽虫使いは後ろに沢山並べている虫籠の山から一番奥においてあったものを取り出した。
「こいつならその値段で売ってやろう。捕まえたはいいが他の所でも売れ残ってな。」
 その羽虫使いの話を聞いてか虫籠の中が騒いだ。
「だったらさっさとここから出してよね!!変態野郎!!」
 羽虫使いは少年に虫籠を押し付けるとその手からさっと金を奪った。
「まいどありぃ〜。」
 少年は虫籠を目線の高さまで掲げマジマジと中身を見た。
「な、何よ。私を選ぶなんて見どころあるけど、あんたなんかの言うことなんて絶対聞かないんだから!変態!変態!!」
 青く透き通った綺麗な羽をばたつかせ、頬を膨らませて睨んでくる『ピクシー』を少年はマジマジと見ていた。


 反魔物領ロシオール、人口は少ないが多くの貴族と商人が暮らす街である。しかし、反魔物領などとは名ばかり、実状はもっとひどい。
 この街では例外的に魔物の売買が許されており、必然的に街には魔物が溢れている。
 魔物たちは貴族たちの愛玩魔物か奴隷としてのみ存在が許されており、成金の商人にとっては魔物を買うことが一つのステータスになっていた。







 少年はとりあえずピクシーを家に持ち帰り、机の上において様子を見ていた。
 ついに買ってしまった。あの金は新しい薬草や野菜を育てるための運転資金のつもりで貯めていたのに、これでまたしばらくは貧乏暮らしだ。
 それでも買ってしまった理由は、卸し先の店長に勧められたことと、少年に女性経験がなかったからだ。
 女を口説くより、魔物を買った方が最終的安くつくと言いながら自身で飼っているラージマウスに乱暴にキスをしていた店長の姿を思い出す。
 そんな風に思い悩んでいると虫籠が騒ぎだした。
「やい、変態!いつまで見てるつもりよ!さっさとここから出せ!!」
「せっかく買ってきたのになんで出さないといけないんだよ。」
「あたしは物じゃない!!勝手なこと言わないで!いいから、ここから出してよ!」
 ピクシーがあまりにも暴れるので虫籠がガタガタと揺れて落ちそうになる。
「危ないッ!もう、暴れるなよ。」
「うるさいうるさい!あんたがここを開ければ済むのよ!この変態!!」
「変態変態、五月蠅いよ。僕は変態なんかじゃ・・・。」
「なによ!魔物を買おうだなんて変態の証拠じゃない!変態変態!べーだッ!」
 ピクシーは舌を出して少年を挑発する。少年はあまりの五月蠅さに頭を抱えた。
「こりゃ売れ残るわけだよ。はぁ、どうしようかな?」
 窓を見るとまだ明るい。仕事がまだ残っている。
「とりあえず、僕は仕事を片付けてくるから、大人しくしててよ。」
「するわけないでしょ!いいから出してよ!変態変態!!」
 少年は罵声を背中に浴びつつ、畑に向かった。


「それで?お前さん、魔物は買ったのかい?」
 店長は鎖で繋いだラージマウスを乱暴に引っ張りながら少年に訊ねた。
「買ったのは買ったんですけど・・・。何と言うか、お金が無かったんで売れ残りを押し付けられました。」
「がははは!おまえさんらしいや!」
 街でも1,2を争う品質を誇るこの卸問屋の店長は少年の作る薬草を正規の値段で扱ってくれる唯一の人物。ラージマウスと彼女に孕ませた子供たちだけで店を切り盛りしている。
 店を駆け回る子供たちの首にも母親同様の重厚な首輪がきらりと光る。
 この街では魔物の子供は生まれつき奴隷なのだ。
「まぁ、魔物なんて値段じゃねぇや。いかに乗りこなすかだぜ。こんな風になッ!」
 店長は鎖を手繰り寄せるとラージマウスを片腕で抱きしめ、股をまさぐり始めた。
 彼女はと言うと、視線を床に落とし、顔を真っ赤にしながら無言で堪えていた。
「はぁ、そ、そうですか。あ、あの、ぼ、僕はこれで失礼します。そ、それじゃあ。」
「おう!代金はガキどもから受け取ってくれ。俺はこれから一戦忙しいからな!がははは!」
 少年が店を出た時、軒先にまで喘ぎ声が聞こえてきた。いつものことなので誰も気にしないが、この店が従業員に困ることはないだろう。




 少年が家に帰ったのは夕刻を過ぎ、あたりが闇に包まれ始めたころだった。
「あ。そう言えば、何も用意せずに出てきちゃったけど大丈夫かな。」
 ピクシーを買ってきたのが昼前、部屋においてそのままで出てきてしまったので彼女のためのご飯を用意していない。
 身体の小さな動物は常に食べ続けなければ生きていけないと店長に聞いたことがある少年は心配になってきた。
「まさか、死んではいないよな?」
 いやな不安がよぎった少年は家に駆け込んだ。

「おーい、生きてるかーい?」
 真っ暗な部屋に入った少年は声をかけてみたが返事がない。
 おかしいと思いすぐに明かりを付けるとうっすらと部屋が映し出された。
 幾つかの薬草の本、農作業の道具、質素なキッチンにベッド、一つきりしかない部屋には、それを埋めるだけには十分なものが雑多に置かれていた。
 その中央、机の上に置かれた虫籠はピクリとも動かない。音も聞こえない。
 そっと中を覗くとピクシーが底の藁束に仰向けで倒れていた。
「まさか、本当に・・・!」
 少年は虫籠を開けてすぐに出そうとしたが、小さくも上下する胸に気づいた。
 ピクシーはどうやら騒ぎ疲れて寝てしまったっていただけのようだ。
「なんだ、びっくりさせるなよ〜。」
 少年は安心して椅子にドッカと座った。
 その衝撃を感じたのかピクシーはピクリと反応し、眠たげに眼をこすりながら身を起こした。
「ん〜、よく寝た♪ふぁ〜、ん?ふぇ?ここどこ?」
「おはよう。ここは僕の家だよ。」
「?!?!!!!へ、変態!こっちよるな、変態変態!!」
 少年の顔を見たピクシーは一気に正気に戻り、また騒がしく暴れだした。
「あ〜もう、騒ぐなよ。」
「うるさいうるさい!あんたがさっさとここから出せばいいんだ!変態変態!!」
「そればっかりだな、たく。」
 そこでふと店長の言葉を思い出した。
「(魔物はいかに乗りこなすか、か・・・。)」

「な、何よ。急に黙りこくって。」
 少年はピクシーが逃げないように慎重に虫籠の扉を開けて中に手を突っ込んだ。
「何よ!何する気よ!いやっ!来ないで!」
「ちょっと大人しくしてよ、怪我させちゃう。」
「するわけないでしょ!いや、ここから出して!出してよ!ヤダヤダヤダヤダーーーーーー!!・・・・ひっ!!」
 少年の指がピクシーの肌に触れると急に静かになり、暴れる様子もなくなった。
 不思議に思った少年が腕を引くともともと小さい体をさらに小さくしたピクシーがいた。
 ピクシーは自分自身を抱きかかえるように膝を折り、両腕で頭を庇い丸くなっていた。そして、何も見たくない、何も聞きたくないと言わんばかりに目と口をギュッと閉じ、耳を覆っていた。
 身体は小刻みに震え、すすり泣く声も聞こえてくる。
「どうして?どうして?いやだよぅ、えぐっ、ふぐっ、いやだよぅ。たすけて、たすけてぇ。」

 その光景を見てしまうと少年は自分が一体何をしたかったのか解らなくなってしまった。
 こんなことがしたかったのか?女の子を泣かせて、怖がらせて、それで満足したかったのか?
 少年は顔を上げて窓を見た。反射した自分の顔が見える。
 いつもと変わりないはずの自分の顔が今では、角が生え、牙をむき出しにしている悪魔のように見える。
 
 少年はなるべく怯えささないようにゆっくりと手を抜き、虫籠の蓋開けはなしたまま離れた。そして、そのまま窓まで歩いていき窓を乱暴に開けたあと、ベッドに腰掛けた。
 自分に迫ってくる存在が消えたことを感じたピクシーはゆっくりと目を開け、今の状況を探るようにきょきょろと周りを見回した。
「?」
「好きなところに行けよ。もう君を捕まえたりなんかしない。追いかけもしない。」
 少年の言葉が信じられないのか探るように少年を見続けた後、これまたゆっくりと虫籠の外にはいずりだした。
 机の上に降り立った後も少年が動かないことを確認した後、ピクシーは素早く窓の外へと飛び去った。

「ごめんよ。」

 飛び去る瞬間に出た謝罪の言葉に返事は無かった。
「はぁ〜〜〜〜〜、俺何やってんだろ。」
 結局、ただ貧乏になっただけ。しかも、その理由が自分がへたれだったから。これでは笑い話にもならない。
「いいや、もう。寝よ。」
 少年はピクシーが飛び立った窓を閉め、ベッドにもぐりこんですぐに寝息を立て始めた。







「なによ、あいつ。襲おうとしたくせに。あんなの全然、これっぽっちも怖くなかったんだから。」
 ピクシーは、しばらく宛てもなく森の中を飛び続けたがやはりどこを見ても知っている風景は見えてこなかった。
「ほんとにここどこなのよ!まったく、なんであたしがこんな・・・・・あっ。」
 ピクシーは急に意識が遠くなりふらふらと落下してしまった。
 無理もない。彼女を捕まえた羽虫使いは「売れ残りに食わすものはない。」と言い、碌な食事も精も与えなかったのだ。
 そんな状態で飛び立てばすぐにスタミナも切れる。
 それでもピクシーは木の根に手をつき、懸命に歩こうとした。
「こんなところで倒れるもんですか!こんなところで・・・。」
 ピクシーは自分の泥だらけの脚と手を見て涙が出てきた。
 悔しい、どうしてこんな目に合わなければならないのか、悔しくて涙が出たのだ。
 
「ごめんよ。」

 何故だか小屋を出るときに聞いた少年の言葉が胸に浮かんだ。自分を襲おうとした相手なのに何故だか温かな気持ちになった。
 しかし、ピクシーはそんな思いをブンブンと頭を振って振りはらった。
「何よ!ちょっと優しくされたからって!あいつの小屋になんか戻らないんだから!絶対森に帰ってやるんだから!」
 ピクシーはふらふらな足取りでさらに森の奥に入っていった。









「それで、おまえさん逃がしちまったのか!?」
「面目ない。」
 翌日、店長の所を訪ね、事の次第を話した。と言うのも、朝になって逃がしたはいいが本当に逃げ切れるのか心配になったからだ。
「まぁ、おまえさんらしいと言えばらしいが・・・。うむぅ。」
「どうですかね?大丈夫ですかね?」
 店長は唸りながら少し考え、
「ちょいと厳しいんじゃねぇか?」
 そう答えた。
「・・・そうですか。」
「この時期は、祭りに乗じて逃げる魔物がいるからな。警備隊もそう言った魔物を逃がさないように目を見張ってる。」
 少年は落胆した。結局、自分は彼女を自由にしたのではなく死地に送っただけだったのだ。
「しかし、おまえさんも変わってるな。魔物一匹ごときを心配するなんて。」
 そうだ、この街では魔物なんて日常茶飯事に死んでる。ストレスの捌け口に、過酷な労働に。忘れればいいのに少年は何故かそうは出来なかった。
「ま、それもおまえさんらしいやな。」
「えっ?それはどう言う・・・?」
「そのまんまの意味さ、がははは!どうだ?代わりに家の一匹持っていくか?」
 店長の言葉に店の中をぐるぐる忙しく走っていた幼いラージマウスたちはぴたりと動きを止めた。
 少年が見ると皆一様に震えている。その恐怖の仕草が昨夜の光景を思い起こさせ少年を嫌な気分にさせた。
「い、いえ、遠慮しておきます。食費とか大変そうだし。」
「そうか?まぁ、確かによく食うからな。がははは!」
 その言葉に安堵したのか、見るからに子どもたちは元気を取り戻し、また忙しそうに仕事に戻っていった。



 少年が家に帰ると玄関に何かが置かれていた。
 見た目は葉っぱの塊の様で動かない。誰かの悪戯かとも思ったが塊が微妙に上下していることに気付いた。
 生きている?
「なんなんだこれ?」
 少年はそっと一番上の葉っぱを取り除いてみた。すると驚いたことに表れたのは昨夜のピクシーだった。
「な!?おい、どうしたんだよこんなところで!」
 とにかく少年はピクシーを部屋に入れ、ベッドに寝かしてやった。
 纏っていた葉っぱを全て取り除いて出てきた身体は何ともひどい有様だった。
 部屋を出て行く時には青く透き通り綺麗だった羽は萎れ、無残にも欠けている部分がある。手足は擦り切れ、顔も服も泥だらけである。
「しっかりしろ!目を覚ませ!何があったんだ?!」
 小さな呼吸を漏らしながらピクシーはやっとのことで口を開いた。
「ぁぅぁ、・・・おなか・・・減って、ぁぁ、一晩中・・・歩いて・・・。」
 信じられない。この小さな体で一晩中森を彷徨い、やっとのことで小屋に帰ってきたのだ。
「わかった。いま、食いもん作ってやるから!」
 少年は狭い小屋の中をあっちゃこっちゃ引き探しながら看病の準備をした。
「えっとえっと、湯沸かして、確か滋養強壮にいい薬草がこっちに、ああ、布も用意しないと。」
 しかし、当然いままで誰かの看病などやったことがない少年には荷が重く、
「あああ!吹きこぼれちまう!痛い!足打ったぁ〜。って熱!!!!」
 大騒ぎの看病のとなった。



「ん、あれ?あたし・・・ここ、どこ?」
「昨日と同じこと言うけど僕の家だよ。」
「!!??!!??!!??」
「ま、まって!!今は動かない方がいい!!」
「!!いった〜〜〜い!!」
「だから言ったのに。」
 ピクシーは急に身体を起こしたので擦り切れていた部分を自分で触ってしまい、ひりひりとした痛みを味わった。
「ほら、ゆっくり身体起こして。」
 少年はピクシーの背に優しく手を入れてやり、背もたれの代わりにした。そして、机に置いた器からスープを一匙すくい、口元に持って行ってやった。
「スープも出来てるよ。栄養になる薬草とか入れたからよく効くはずだよ。」
 見るからに温かそうなスープの湯気を前に、ピクシーは小さいがよく通る音でお腹を鳴らした。
 しかし、その音で我に帰ったのか急に目を吊り上げて勢いよくスプーンを弾き飛ばした。
「こんなので飼い馴らされたりしないんだから!!あんたなんか大っ嫌い!人間なんか大っ嫌い!!」
 不器用ながらに作ったスープを拒まれ、少年は、ぼーっと染み込んでいくスープを見ていた。
 こんなにも傷ついても人間の世話には、自分の世話にはなりたくないと思っている。自分はこんなにも彼女を傷つけてしまった。
 少年はせめてもの贖罪さえ拒まれてしまい、情けない自分に泣きたくなった。
「そ、そうだよね。君を襲おうとしたのに今さらだよね。・・・ぐ、ぐす、ご、ごめん。ふぇん。」
「そ、そうよ!今さらこんな・・・ってなんであんたが泣いてんのよ?!」
「ぼ、僕が?あー、ごめん。なんだかどうすればいいのかわかんなくて、それで、ぐじゅ!なんだか泣きたくなって。ぐす!」
 少年は自分がしてしまったことの後悔ともう二度と許されないと言う不安で涙が止まらなくなり、ベッドに突っ伏してしまった。
 そんな姿を見せられると今度はピクシーの方が居た堪れなくなってきた。
「(もう、泣きたいのはこっちなのに。なんでこんな・・・。)」
 ピクシーは痛む身体を起こして、少年の頬を撫でてやった。
「ほら、もう怒ってないし、スープも飲むから泣かないで。」
「ほ、ほんと?・・・でも、僕は君に。それに人は君にひどいことを・・・。」
「何もされてないし、あんたにされたわけでもないわ。あたしがいいって言ってるんだからいいの!」
 ピクシーはそれだけ言うとまた目眩がしたのかふらふらとベッドに倒れた。
「だ、大丈夫!?」
「・・・・おなかすいた。・・・もっかいスープ頂戴。」



 
 食事も終わると今度はお互いに何を話していいものか居た堪れない雰囲気になった。
「(な、何よ!なんなのよ!なんで黙ってんのよ!てか、なんであたしも黙ってんのよ!)」
 ピクシーが悶々とした感情を押し殺していると少年はますます縮こまってしまう。
「(な、なんであんたの方が小さくなるのよ!あたしより何倍も大きいくせに!)」
 少年の仕草にさらにやきもきしていると突然少年の方から口を開いた。
「あ、あの!」
「!!な、何?(い、いきなり何よ、もう!)」
「ここに居てくれないかな?」
「!?!?!?」
「そ、その、奴隷とかそう言うんじゃなくて、祭りの間は警備も強化されててとてもじゃないけど逃げられないと思うんだ。だから、祭りが終わるまででいいからここに居てくれないかな?」
「べ、別にいいわよ。それくらい。(な、なんだそう言う意味か。って、何考えてるのよ、あたしは〜!!)」
「ほ、ほんとに!?よかった!」
「逃げられないんだから仕方ないでしょ。」
 仕方ない理由があるとは言え、少年はとても嬉しそうにしていた。
 その様子を見ているとピクシーも満更ではない気持ちになってきてしまったのだ。
「で、名前は?」
「え?」
「あんたの名前!まだ聞いてない!あたしは、フェブ。あんたは?」
「ぼ、僕は、アレン。アレン・リッジリー。」
「ふ、ふん!いい名前じゃない。た、建前上はあんたに飼われてるってことにしてあげる。その方が都合がいいんでしょ?」
「あ、ああ。ありがと。」
「べ、別に!あたしはもう寝るから、おやすみ!」
 そう言うとフェブはベッドの真ん中を陣取り、さっさとシーツにくるまってしまった。
「ね、ねぇ、もうちょっと端で寝てくれないかな?僕が入れないんだけど?」
「いやよ!あたしは怪我人なのよ!」
「そ、そんな!小さいんだから端に寄ってくれるだけで僕も寝れr」
「ダメダメダメダメダメ!!!!!入ってきちゃダメ!!プイッ!」
 フェブはそう言うと反対側に寝返り、顔も見せてくれなくなった。
「そんなぁ〜。」
 アレンはしぶしぶ、冬用の掛物を取り出し、床に引いて寝始めた。
 




       こうして、なんとも奇妙な建前だけ主従関係が始まったのである。






    「(こんなにどきどきしてるのに一緒に寝れるわけないじゃない!!バカ!!)」

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 今回はいつも以上に散文になってしまい、読みにくかったり、状況の把握がし辛いかもしれません。いい解決方法が感想にてお待ちしております(切実



 というわけで、今回はピクシーたんを中心に話を書いていこうと思います。フェアリーたんでもよかったのですが、ここは不人気脱出に一肌脱ごうとピクシーたんにしました。
 エロ要素は有りませんが、回を追うごとに入れていこうと思いますのでエロありタグはそのままにします。
 今回もがんばって感想返ししていこうと思いますのでよろしくお願いします。


 ちなみに羽虫使いが積んでいた虫籠の中身はフェブ以外みんなフェアリーです。世の中ひどい人間もいますね。

11/05/06 16:07 特車2課

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