それぞれの時間
朝が訪れた・・・今日もいつもと変わらない、いや・・・変わったことがあった・・・今の僕には虚しさがある・・・以前からどこかで感じていた・・・だけど、それを認めようとしなかった・・・だって・・・それを認めると・・・
「・・・」
僕は今、退院の準備を始めた・・・先日、医者から
『今日一日安静にしていればいいですよ』
と言われたので僕はすぐに病院を出たかった・・・すると・・・
「明!!」
僕のことを呼ぶ声が聞こえたので病室の入り口をみると、そこには
「姉さん・・・」
姉が来ていた・・・僕がこの世界で最も恐れる人が・・・
「明、大丈夫なの!?本当にどこも痛くない!?」
「あ、う、うん・・・」
姉さんは本当に僕に対して過保護だ・・・だからこそ、怖い・・・僕が傷つくたびに次の日には周囲の人間には『破滅』が確定される・・・だから、僕は心を殺して『鬼』になるしかなかった・・・泣くことや怒ることなんてあってはならない・・・僕が苦しむ度にこの人は『鬼』になって僕を守ろうとする・・・
(でも、姉さんの手が汚れるたびに僕は泣いたんだよ?だから、僕はがんばろうと努力したんだよ?それに一番辛かったのは姉さんだよね・・・だって、僕がいるから姉さんは・・・ごめんね・・・)
僕は姉の恐ろしさと愛情を感じながら・・・心の中で謝罪した・・・
日曜日なのに私は気が晴れない・・・それは明日が月曜日だからじゃない・・・主婦にとって月曜日なんて関係ない・・・
「恵美・・・大丈夫か?」
「ええ・・・」
夫は私のことを気づかってくれている・・・でも、やはり子ども達二人に自分たちの悩みを隠しながら過ごすなんて難しい・・・総一郎さんはこれを2年間も耐えていたなんて・・・でも・・・
「ふふふ・・・」
「恵美?どうしたんだ?」
「いえ・・・その・・・」
私は笑い声を発してしまった・・・でも、それは悩みをごまかすものじゃない・・・
「幸せ・・・と思ってね」
「え?」
私の言葉に総一郎さんは驚いたようだった・・・当然よね、明君が苦しんでいるのにそれを通して自分の幸せを実感するなんて・・・でも私は続けた
「だって、こんなに辛いことをあなたは1人で抱えてくれたじゃない・・・それに明君の話を聞いたら私は幸せしか感じられない・・・」
「・・・」
総一郎さんは黙って聞いていた・・・私の言葉一つ一つに総一郎さんは深く考えていた・・・本当に私たちは幸せだ・・・私が平穏な家庭に価値を実感することができたのはこの事件があったからだろう・・・そして、
「俺も幸せだよ、恵美・・・」
と言った・・・その顔は少し照れていたが・・・本当に嬉しそうだった・・・
「実家から追い出された俺にこんな幸せをくれたことに感謝してるよ・・・」
「総一郎・・・」
総一郎さんは名家の一員だった・・・だけど、その一族は自分の家の権力や財産、地位を武器に非常に傲慢だった・・・お金があることをいいことに色々な人間の財産や土地を奪ったりする人間だった・・・総一郎さんは長男だったけど、そう言った実家を嫌って、高校卒業と同時に家を出たらしい・・・もちろん、そんな彼を実家の人間は許さず、色々と嫌がらせをしてきた・・・私との結婚も邪魔されそうになったけど・・・
「政宗さんに感謝しないとね・・・」
「うん・・・」
そんな、私たちを守ってくれたのは明君の祖父である政宗さんだった・・・あの人は名前が売れていて、長男である明君の叔父も経済界においてかなりの地位を持っており、古くから付き合いのある私を守ってくれた・・・だけど、それも恐らく・・・明君の悲劇の一因になったんだろう・・・
「だが、同時に俺は明君を・・・」
「仕方ないわ・・・総一郎・・・」
「だが、もし俺が実家から逃げなければ・・・」
総一郎さんは後悔しているようだった・・・当然だ・・・なぜなら・・・
「俺の実家の連中が嫌がらせで何も関係のない・・・明君を・・・」
総一郎さんは後悔していた・・・自分が実家から逃げたことを・・・それが無関係だった九条の人々を巻き込んでしまい・・・そして、一人の青年を傷付けたことを・・・
「そんなこと言わないで・・・」
「・・・」
私ははっきりそう言った・・・
「あなたが実家から出なっかたら・・・私はあなたと会うことができなかった・・・桜と楓を産むことができなかった・・・あなたの過去は全部大切なものだったのよ」
と笑いながら強くそれを告げた・・・あなたの道に間違いなんてない・・・それだけを私は告げたかった・・・どんなに足掻いても過去は変えられない・・・だけど、必ず苦しい今でもいつかは未来に繋がる・・・だって、実際、あなたはそうじゃない・・・
「そうだな・・・だから、俺は過去にケジメをつけるために政宗さんに自分で『明君を見守っていきます』て誓ったんだ・・・」
「・・・」
総一郎さんは自分の実家が逆恨みとして、政宗さんが特に可愛がっていた孫である明君を傷つけ政宗さんはそれを聞いた瞬間に病態が悪化してしまい、それに罪悪感を感じた総一郎さんは政宗さんに自分から明君を見守ることを申し出た・・・最初は政宗さんは
『君の責任ではない』
と制止を呼びかけるが自分の寿命が短いことを悟り、総一郎さんに明君を託した・・・
「でも、総一郎・・・私・・・もう、大丈夫な気がするわ・・・」
「え?」
なぜか、わからなかった・・・だけど、明君の傷は癒えると思った・・・だって・・・
「この町には天使がいるから・・・」
「は?」
私の言葉に総一郎さんは一瞬呆気に取られた・・・だけど、本当の話なのよ・・・私が娘たちと散歩をしていたとき・・・私は確かに見た・・・翼は黒かったけどだけど、禍々しさは感じられなかった・・・あれは天使だった・・・そして、その天使はこの町にある教会に向かっていった・・・そして、私は教会のことをなぜか明君に話した・・・なんで、教会の話なんてしたんだろう・・・だけど、あの時その話をしなければいけないと思った・・・
「・・・そうか、ならその天使に祈ろうか」
「うん・・・」
総一郎さんも私のことを信じてくれた・・・きっと、この人は私の全てを信じてくれている・・・いや、信頼してくれている・・・
(どうか、明君が救われるようにお願いします・・・)
たとえ、幻でもいいから私たちはそう祈った・・・
私は今、祭壇の前で祈っています・・・堕落神様に祈っているわけでもなく、かつて祈っていた神様に祈っているわけではありません・・・私は・・・本当は神様なんて信じていません・・・それは神様の存在についてじゃありません・・・私の人生は両親の死に始まり、クラスメイトからのいじめ、初恋が失恋で終わったこと、ステラが来てダークプリーストになったこと、魔物娘の本能から来る欲求を抑える13年間、想い人の不幸・・・まるで、フィクションのような悲劇や苦難の連続・・・まるで、私が悲劇のヒロインみたいに筋書きが決まったような人生・・・
(でも、いくつかは・・・私がどうすることができたんですよね・・・)
昔、ステラに聞かせてもらった話によるとステラのいた世界には堕落神様を始めた多くの神がいるらしいです・・・私たち魔物娘を悪と見なし人の生活を守ろうとする教団の『主神』、海の生きるもの全てを愛し幸福を願う『ポセイドン』など多くの神がいます・・・だけど、どの神も決して絶対の存在ではありません・・・特にそれが著しいのは『主神』です・・・教団は人間の生活を守ると言いながらも人間の中には『性欲』によって魔物以上に堕落した人間だっています。ただ快楽を求めるために女性を犯す男性、大金が欲しいがために自分を売る女性、快楽だけを求め『愛』がないセックスを行う人間なんて・・・恐らく、魔物娘になる前の私でも言えます・・・それは『罪』だと・・・中にはロシアの文豪ドストエフスキーの名作『罪と罰』のソーニャのように人々を慰めるために自分を安く売る人間もいるでしょう・・・ですが、現実ではどうでしょうか?教団側の地域ではそう言った『罪』が全くないわけではありません・・・そう、どんなに神様に祈ってもこの世界から悲劇なんてなくなるわけではないのです・・・私の苦しみだって、私が素直に明さんを襲えばすぐになくなったはずです・・・だから、私は決めました・・・
(神様に祈ってばかりじゃいけない)
どの神様も人の幸福を願っています・・・だけど、それは神様が与える幸福ではなく、人々が自分の手で勝ち取る幸福と言う意味です・・・堕落神様にしたってそうです・・・あの方は確かに私たちに愛する人と一緒になる『チャンス』はくれますが後押しだけで強制はしません・・・結局は私が動かない限りは明さんと結ばれることなんてない・・・そして、明さんを癒すことすらできない・・・だから、決めました・・・
(今度こそ、自分の意思で動きます)
祭壇の前で祈ったのは・・・誓いです・・・自分に対する・・・
「もう逃げません・・・」
それが13年間の長い苦しみで得た・・・私の『答え』です・・・
「ほら、着いたわよ?」
「うん、ありがとう・・・姉さん」
僕は姉さんに車で自宅まで送ってもらった・・・僕が車から降りようとすると
「ねえ、明・・・」
「なに・・・?」
姉さんは僕を引き留めた・・・
「実はね・・・私・・・結婚することになったの・・・」
姉さんは僕にそのことを伝えた・・・どうやら、この町に来たのは僕が倒れたのが原因じゃないらしい・・・そう考えると僕は少し、楽になった気がする・・・
「本当?おめでとう」
僕は笑顔でそれを祝福した・・・姉さんはやっと、僕と言う呪縛から解放される・・・
「ありがとう・・・」
姉さんは少し嬉しそうに笑顔で言った・・・恐らく、僕に対しての遠慮があったのだろう・・・姉さんは本当に幼い頃から僕のことばかりをかまけて、自分の幸せを忘れがちだった・・・だから、本当によかった・・・
「ねえ、明・・・もう、仁美さんのことは忘れて・・・お願いだから・・・」
「姉さん・・・」
必死に懇願するようだけど・・・それはできない・・・たとえ、今は忘れることはできてもいつか僕は再び、そのことを思い出して再び苦しむことになるだろう・・・だけど・・・
「大丈夫だよ、姉さん・・・僕はもう気にしていないから・・・」
「そう、それじゃまたね・・・」
姉さんの運転する車が遠くに行ったのを僕は見送った・・・そして・・・
「ごめん・・・姉さん・・・幸せになってね・・・」
僕は嘘をついたことを謝罪して自宅に入っていった・・・
「・・・」
僕は今、退院の準備を始めた・・・先日、医者から
『今日一日安静にしていればいいですよ』
と言われたので僕はすぐに病院を出たかった・・・すると・・・
「明!!」
僕のことを呼ぶ声が聞こえたので病室の入り口をみると、そこには
「姉さん・・・」
姉が来ていた・・・僕がこの世界で最も恐れる人が・・・
「明、大丈夫なの!?本当にどこも痛くない!?」
「あ、う、うん・・・」
姉さんは本当に僕に対して過保護だ・・・だからこそ、怖い・・・僕が傷つくたびに次の日には周囲の人間には『破滅』が確定される・・・だから、僕は心を殺して『鬼』になるしかなかった・・・泣くことや怒ることなんてあってはならない・・・僕が苦しむ度にこの人は『鬼』になって僕を守ろうとする・・・
(でも、姉さんの手が汚れるたびに僕は泣いたんだよ?だから、僕はがんばろうと努力したんだよ?それに一番辛かったのは姉さんだよね・・・だって、僕がいるから姉さんは・・・ごめんね・・・)
僕は姉の恐ろしさと愛情を感じながら・・・心の中で謝罪した・・・
日曜日なのに私は気が晴れない・・・それは明日が月曜日だからじゃない・・・主婦にとって月曜日なんて関係ない・・・
「恵美・・・大丈夫か?」
「ええ・・・」
夫は私のことを気づかってくれている・・・でも、やはり子ども達二人に自分たちの悩みを隠しながら過ごすなんて難しい・・・総一郎さんはこれを2年間も耐えていたなんて・・・でも・・・
「ふふふ・・・」
「恵美?どうしたんだ?」
「いえ・・・その・・・」
私は笑い声を発してしまった・・・でも、それは悩みをごまかすものじゃない・・・
「幸せ・・・と思ってね」
「え?」
私の言葉に総一郎さんは驚いたようだった・・・当然よね、明君が苦しんでいるのにそれを通して自分の幸せを実感するなんて・・・でも私は続けた
「だって、こんなに辛いことをあなたは1人で抱えてくれたじゃない・・・それに明君の話を聞いたら私は幸せしか感じられない・・・」
「・・・」
総一郎さんは黙って聞いていた・・・私の言葉一つ一つに総一郎さんは深く考えていた・・・本当に私たちは幸せだ・・・私が平穏な家庭に価値を実感することができたのはこの事件があったからだろう・・・そして、
「俺も幸せだよ、恵美・・・」
と言った・・・その顔は少し照れていたが・・・本当に嬉しそうだった・・・
「実家から追い出された俺にこんな幸せをくれたことに感謝してるよ・・・」
「総一郎・・・」
総一郎さんは名家の一員だった・・・だけど、その一族は自分の家の権力や財産、地位を武器に非常に傲慢だった・・・お金があることをいいことに色々な人間の財産や土地を奪ったりする人間だった・・・総一郎さんは長男だったけど、そう言った実家を嫌って、高校卒業と同時に家を出たらしい・・・もちろん、そんな彼を実家の人間は許さず、色々と嫌がらせをしてきた・・・私との結婚も邪魔されそうになったけど・・・
「政宗さんに感謝しないとね・・・」
「うん・・・」
そんな、私たちを守ってくれたのは明君の祖父である政宗さんだった・・・あの人は名前が売れていて、長男である明君の叔父も経済界においてかなりの地位を持っており、古くから付き合いのある私を守ってくれた・・・だけど、それも恐らく・・・明君の悲劇の一因になったんだろう・・・
「だが、同時に俺は明君を・・・」
「仕方ないわ・・・総一郎・・・」
「だが、もし俺が実家から逃げなければ・・・」
総一郎さんは後悔しているようだった・・・当然だ・・・なぜなら・・・
「俺の実家の連中が嫌がらせで何も関係のない・・・明君を・・・」
総一郎さんは後悔していた・・・自分が実家から逃げたことを・・・それが無関係だった九条の人々を巻き込んでしまい・・・そして、一人の青年を傷付けたことを・・・
「そんなこと言わないで・・・」
「・・・」
私ははっきりそう言った・・・
「あなたが実家から出なっかたら・・・私はあなたと会うことができなかった・・・桜と楓を産むことができなかった・・・あなたの過去は全部大切なものだったのよ」
と笑いながら強くそれを告げた・・・あなたの道に間違いなんてない・・・それだけを私は告げたかった・・・どんなに足掻いても過去は変えられない・・・だけど、必ず苦しい今でもいつかは未来に繋がる・・・だって、実際、あなたはそうじゃない・・・
「そうだな・・・だから、俺は過去にケジメをつけるために政宗さんに自分で『明君を見守っていきます』て誓ったんだ・・・」
「・・・」
総一郎さんは自分の実家が逆恨みとして、政宗さんが特に可愛がっていた孫である明君を傷つけ政宗さんはそれを聞いた瞬間に病態が悪化してしまい、それに罪悪感を感じた総一郎さんは政宗さんに自分から明君を見守ることを申し出た・・・最初は政宗さんは
『君の責任ではない』
と制止を呼びかけるが自分の寿命が短いことを悟り、総一郎さんに明君を託した・・・
「でも、総一郎・・・私・・・もう、大丈夫な気がするわ・・・」
「え?」
なぜか、わからなかった・・・だけど、明君の傷は癒えると思った・・・だって・・・
「この町には天使がいるから・・・」
「は?」
私の言葉に総一郎さんは一瞬呆気に取られた・・・だけど、本当の話なのよ・・・私が娘たちと散歩をしていたとき・・・私は確かに見た・・・翼は黒かったけどだけど、禍々しさは感じられなかった・・・あれは天使だった・・・そして、その天使はこの町にある教会に向かっていった・・・そして、私は教会のことをなぜか明君に話した・・・なんで、教会の話なんてしたんだろう・・・だけど、あの時その話をしなければいけないと思った・・・
「・・・そうか、ならその天使に祈ろうか」
「うん・・・」
総一郎さんも私のことを信じてくれた・・・きっと、この人は私の全てを信じてくれている・・・いや、信頼してくれている・・・
(どうか、明君が救われるようにお願いします・・・)
たとえ、幻でもいいから私たちはそう祈った・・・
私は今、祭壇の前で祈っています・・・堕落神様に祈っているわけでもなく、かつて祈っていた神様に祈っているわけではありません・・・私は・・・本当は神様なんて信じていません・・・それは神様の存在についてじゃありません・・・私の人生は両親の死に始まり、クラスメイトからのいじめ、初恋が失恋で終わったこと、ステラが来てダークプリーストになったこと、魔物娘の本能から来る欲求を抑える13年間、想い人の不幸・・・まるで、フィクションのような悲劇や苦難の連続・・・まるで、私が悲劇のヒロインみたいに筋書きが決まったような人生・・・
(でも、いくつかは・・・私がどうすることができたんですよね・・・)
昔、ステラに聞かせてもらった話によるとステラのいた世界には堕落神様を始めた多くの神がいるらしいです・・・私たち魔物娘を悪と見なし人の生活を守ろうとする教団の『主神』、海の生きるもの全てを愛し幸福を願う『ポセイドン』など多くの神がいます・・・だけど、どの神も決して絶対の存在ではありません・・・特にそれが著しいのは『主神』です・・・教団は人間の生活を守ると言いながらも人間の中には『性欲』によって魔物以上に堕落した人間だっています。ただ快楽を求めるために女性を犯す男性、大金が欲しいがために自分を売る女性、快楽だけを求め『愛』がないセックスを行う人間なんて・・・恐らく、魔物娘になる前の私でも言えます・・・それは『罪』だと・・・中にはロシアの文豪ドストエフスキーの名作『罪と罰』のソーニャのように人々を慰めるために自分を安く売る人間もいるでしょう・・・ですが、現実ではどうでしょうか?教団側の地域ではそう言った『罪』が全くないわけではありません・・・そう、どんなに神様に祈ってもこの世界から悲劇なんてなくなるわけではないのです・・・私の苦しみだって、私が素直に明さんを襲えばすぐになくなったはずです・・・だから、私は決めました・・・
(神様に祈ってばかりじゃいけない)
どの神様も人の幸福を願っています・・・だけど、それは神様が与える幸福ではなく、人々が自分の手で勝ち取る幸福と言う意味です・・・堕落神様にしたってそうです・・・あの方は確かに私たちに愛する人と一緒になる『チャンス』はくれますが後押しだけで強制はしません・・・結局は私が動かない限りは明さんと結ばれることなんてない・・・そして、明さんを癒すことすらできない・・・だから、決めました・・・
(今度こそ、自分の意思で動きます)
祭壇の前で祈ったのは・・・誓いです・・・自分に対する・・・
「もう逃げません・・・」
それが13年間の長い苦しみで得た・・・私の『答え』です・・・
「ほら、着いたわよ?」
「うん、ありがとう・・・姉さん」
僕は姉さんに車で自宅まで送ってもらった・・・僕が車から降りようとすると
「ねえ、明・・・」
「なに・・・?」
姉さんは僕を引き留めた・・・
「実はね・・・私・・・結婚することになったの・・・」
姉さんは僕にそのことを伝えた・・・どうやら、この町に来たのは僕が倒れたのが原因じゃないらしい・・・そう考えると僕は少し、楽になった気がする・・・
「本当?おめでとう」
僕は笑顔でそれを祝福した・・・姉さんはやっと、僕と言う呪縛から解放される・・・
「ありがとう・・・」
姉さんは少し嬉しそうに笑顔で言った・・・恐らく、僕に対しての遠慮があったのだろう・・・姉さんは本当に幼い頃から僕のことばかりをかまけて、自分の幸せを忘れがちだった・・・だから、本当によかった・・・
「ねえ、明・・・もう、仁美さんのことは忘れて・・・お願いだから・・・」
「姉さん・・・」
必死に懇願するようだけど・・・それはできない・・・たとえ、今は忘れることはできてもいつか僕は再び、そのことを思い出して再び苦しむことになるだろう・・・だけど・・・
「大丈夫だよ、姉さん・・・僕はもう気にしていないから・・・」
「そう、それじゃまたね・・・」
姉さんの運転する車が遠くに行ったのを僕は見送った・・・そして・・・
「ごめん・・・姉さん・・・幸せになってね・・・」
僕は嘘をついたことを謝罪して自宅に入っていった・・・
13/08/17 16:52更新 / 秩序ある混沌
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