連載小説
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第二夜
この蒸し暑い土牢に丸二日も押し込められているうちに着物が汗でべったりと肌に貼り付き、いい加減に気持ちが悪くなってきた。一刻も早く志乃が持ってきてくれた着物に着替えたいところだったが、問題があった。

一日中女たちに見張られている中で着替えるというのは、非常にやりづらいのである。事実、一度こっそり着替えようとした時など、見張りの女がすぐ見つけ、またたく間に仲間を呼び集めてやれ脱げそれ脱げとはやし立て始めた。癪だったのでそのまま着替えずに終わったのだが、それ以来どうも女たちの視線が気になるようになってしまった。

しかしこのままでは間違いなく体中に汗疹ができてしまう。

幸い今の見張りは小柄な女が一人だけである。意を決して、私は女に話しかけてみることにした。



「なあ、ちょっといいか」

「……ん?厠かい?」

「いや……着物を着替えたいんだが、少しの間向こうを向いていてもらえないか?」

正直、従ってもらえるとは思っていなかった。また仲間を呼ばれて大騒ぎされることも覚悟していた。

「……わかった」

しかし意外なことに、女は素直に頷き、私にくるりと背を向けた。

山賊にも話の通じる者がいたことに驚きながらも、私は後ろを向いて着物を脱ぎ始めた。

褌を履き替えながら、ふと、この女からなら何かしら情報を聞き取れるのではないかと思いついた。ここに来てから志乃以外とまともに話をしていなかったので、話し相手に飢えていたというのもあった。

「……お前たち、いつからこの山に住み着いているんだ?」

「半月くらい前かな。お頭が、いい隠れ場所が見つかったって言うもんだから、みんなで移ってきたんだ」

「まさか、俺の村を襲う気じゃあないだろうな」

「さあねぇ。実入りがありそうなら襲うし、そうじゃないなら放っとくだけさ。……でも、あんたの身代金がちゃんと取れれば、その必要もなくなるかもね」

「……志乃は、今いくら払っているんだ?」

「知らない。お頭に聞いてみれば?」

互いに背を向けたまま、淡々と会話が続く。大して有益な情報は得られていないものの、久しぶりのまともな会話に心が幾分か和んだような気がした。

「終わった。もういいぞ」

「ん」

着替えが済み、声をかけると、女がこちらへ向き直る。改めて顔を見ると、体格だけでなく顔つきも少女のようなあどけなさが残る女だった。

その時、ふと女が何かに気づいたように動きを止めた。その目が、私の足元にあるモノに留まった。

「ねぇ……それ……あたしにくれない……?」

途端に女の顔がとろんとだらしなく歪み、媚びるような声で言った。女の指さす先には、私が脱ぎ捨てた着物があった。何を言っているんだと思う間もなく、女の手は素早く伸びて格子越しに私の着物を奪い去った。

「すぅぅぅぅ……はぁぁぁぁ〜〜くっさぁぁい……!あぁんこの匂い……男の汗の濃ゆぅ〜い匂い……あぁん久しぶりぃ……!」

何と女は、完全に蕩けきった目で私の着物を顔に当てると、勢いよくその臭いを吸い込み始めた。

「な……何してる……返せ!」

「いいじゃない減るもんじゃなし!……すぅぅぅぅ……あぁ〜このへんすっごく臭いわぁ……汗で蒸れムレの股間の匂い……あぁんたまんない……!」

気味悪さを感じて取り返そうとするも、女は身を躱してなおも臭いを吸い続け、片方の手は自らの陰部に着物の端をこすり付け始めていた。

「ん……すぅぅぅ……ん、あんっ……汗がぁっ……あたしのマンコに塗り込まれてるぅ……」

突如始まった常軌を逸した自慰に、私はただ絶句するしかなかった。すると女の目がぐるりとこちらを向き、次の瞬間、その小さな口から三尺はあろうかという長い舌がずるりと飛び出した。

「ね〜ぇ……フンドシもくれなぁい?二日間履きっぱなしでぇ……アソコの匂いで蒸れムレのぉ……フンドシぃ……」

女は四つん這いになってこちらへ近づいてくる。着物の合わせの隙間から、小ぶりな乳房の先端にツンと尖った乳首が揺れているのが覗いていた。

私は思わず褌を後ろ手に隠し、後ずさった。

女は舌を揺らしながら猫なで声で迫ってきた。

「それともぉ……直接しゃぶってあげようかぁ……?このベロでぇ……あなたのおチンチンをぉ……レロレロぉ〜ってぇ……」

女のぬらぬらと濡れた舌が牢の中にまで伸びてきて、私の股間のすぐそばにまで迫る。

「ほらぁ……見てぇ……?」

そう言うと女は指で自らの口を押し開いて見せた。

「こぉヨダレまみぇのおクチにぃ……あぁたのおチンチンをずぶぅぅぅって突っこんぇくぇたらぁ……そぇをジュポジュポしゃぶりながらぁ……このベロでぇ……あぁたのからぁじゅうをぉ……トロットロにしてあぇるよぉ……?」

長い舌の先端が、誘惑の言葉に合わせて私の股間の近くをチロチロと揺れ動く。

私は情けなくも自分の股間と褌を必死に守りながら、やがて女が諦めるまで牢の奥でうずくまって耐え続けることしかできなかった。

結局、女から着物を取り返すことはできなかった。





「そいつはあかなめって妖怪だね。あいつら男の汗とか垢が三度の飯より好きなのさ。今のあんたなんて、さぞかしご馳走に見えるだろうねぇ!」

その後やってきた志乃に事の顛末を話すと、志乃はからからと笑いながら着物を取られたことを許してくれた。先ほどの女は、志乃と入れ替わるようにどこかへ消えていた。

「すまない……だが誓ってやましい事は何もしていないからな」

「いやだねぇ、わかってるよそんな事は。……ねぇ……それよりも……」

不意に、志乃が妖しい笑みを浮かべる。

その手が、私の股間を下から優しくなぞり上げた。

「あんたの『ここ』、だいぶ辛くなってきたんじゃないかい?」

そう言いながら、志乃は私の着物の中に手を突っ込み、褌の下から器用に私の肉棒を引っ張り出した。既に固く張りつめていた私のそれは、いとも簡単に解放されるとぴんと反り返り、志乃の白い手の中で存在を主張した。その先端は、既に先走りでしっとりと濡れていた。

「志乃……!待ってくれ、奴らに見られたら……」

「大丈夫。今日は酒を持ってきてやったから、ちょっとの間上で飲んでてくれるってさ。……そんなこと言っても……ねぇ、あんたももう辛抱たまらんだろう?こんな女だらけの牢に繋がれて、ずぅぅぅぅっとあいつらの乳やら尻やら見せつけられて……並みの男ならとっくに気が変になってる頃さ……」

妙に誘惑めいた言葉を囁きながら、志乃は柔らかな手で私の肉棒をぎゅっと握り込む。それだけで、私は全身を快感が駆け巡った。

志乃の言葉は図星だった。ここに来てからというもの、私の分身は常に怒張し続けていると言っても過言ではなかった。牢の前をうろつく女たちは体を見せつけてくるだけでなく、体からは汗を、秘所からは愛液を常に滴らせていた。濃縮された女の匂いとでも言うべきものが地下全体に充満し、私の気を昂ぶらせ続けていたのだった。

「志乃っ……ちょっと待っ……!んむっ」

言いかけた私の口を、志乃が強引に塞ぐ。それだけで私はもう抵抗の意志をなくし、与えられる快感に身をゆだねるだけになった。

志乃は親指と人差し指で輪をつくると、亀頭をくぐらせるように前後に動かす。その動きはあくまでゆっくりと、強い刺激を与えないように抑えられていた。

「ほぉら……にゅっこ……にゅっこ……ふふ、気持ちいいかい?久しぶりの刺激だろう?ずぅっと、こうして欲しかったんだろう……?」

やがて手のひら全体で亀頭を包み込む動きに変わり、濡れた先端がくちゅくちゅと音を立てる。

口ぶりこそ優しかったが、その動きはあくまで射精をさせない、焦らすような手つきに留まっていた。志乃は気分が高まると、このように私の興奮を高めるだけ高めて楽しむ嗜虐的な面もあった。

「う……志乃……早く……」

「ふふ……まあお待ちよ。手だけじゃなくて……」

志乃は唇を離すと、濡れた口を大きく開けて見せた。

「こっちの方でも、楽しみたいだろう……?」



志乃が、私の足元に屈みこんだ。

「そんな……汚いだろう……」

「何言ってんのさ。おクチでしてもらいたい、って顔に書いてあるくせに……。それにねぇ、あかなめほどじゃあないけど、あたしもあんたのくっさいココは、大好きなのさ……」

志乃の唇が亀頭に近づき、ちゅっと軽く口づける。そのまま唇をすぼめると、亀頭から雁首を優しく咥え込んだ。

志乃の口の中は温かく、しとどに溢れる唾液がたちまち亀頭をずぶ濡れにした。ざらついた舌が裏筋に触れ、なぞり上げるたびに私はビクンと体を震わせてしまう。

「う……ぉ……これは……!」

「ん〜〜?ふふ、ひもちいかい……?ん……じゅぽ……ふふ……れろれろぉ……」

「し、志乃……そこは……!」

志乃はしばらく亀頭をしゃぶると、一旦唇を離して舌を出し、尿道口を舌先でチロチロとほじくる。私がビクンと反応するとまた唇をすぼめて亀頭を飲み込む。そんな責めを交互に繰り返されるうちに、私の腰はがくがくと震え、格子に両手でしがみついて支えにしなければ立っていられないほどになっていた。

「んぅ……じゅる……じゅぽ……ろうだぁい?んちゅ……もう限界……?」

「あぁ……もう……!」

「ふふ……じゃあ……もっと激しくしてやろうかねぇ……」

そう言うと志乃は、一旦亀頭を咥え込む。そしてそのまま一息に喉奥まで肉棒を飲み込んできた。

「んっ……、んっ……、んぅっ……!ずぢゅるるるるっ!あむっ……れろぉ……」

首を前後に動かし、深い抽送運動を何度も繰り返す。時折下品な水音を立ててしゃぶってみせ、私の興奮を煽ることも忘れない。美しい妻が、まるでご馳走のように私の肉棒を頬張る姿を見ているだけで、下腹の奥から白い衝動が沸き上がってくるのを感じた。

「志乃……もうっ……!」

「もうダメかい……?ふふ、いいよ、たっぷり出しなぁ……!」

ぢゅるるるるるるっ!

とどめとばかりに、志乃が勢いよく肉棒を吸い上げた。

同時に前後運動も速くなる。

尿道の中から根こそぎ吸い取られるような刺激に一気に射精感がこみ上げ、私は来たる快感に備えて下半身にぐっと力を込めた。

「もう……いっ……!」

その時だった。





「おぉい、あんたたち!いつまで話し込んでんだよ!」

突然地上への扉が開き、山賊の一人の声が地下に響いた。

私たちはビクリと体を震わせ、志乃は慌てて立ち上がった。

私も慌てて逸物を着物へしまった。驚きのあまり、射精感は一度に引っ込んでしまった。

「もう日が暮れちまったよ!面会人は帰った帰った!」

「はいはい、すまなかったね。今帰るよ!」

志乃は乱れた着物を直しながら、山賊に言い返した。荷物をまとめると、志乃は申し訳なさそうな顔で私を見上げた。私たち二人の呼吸は、まだ興奮で荒いままだった。

「……その、すまないね、最後までしてあげられなくて……」

「あ、あぁ……仕方ないさ。気にしないでくれ」

「そう、じゃあ……明日もまた来るからね」

最後に私の手をそっと握ると、志乃は踵を返した。



遠ざかっていく妻の背中と、入れ替わりにやってくる山賊の女。

その姿を見ながら、私の分身は、いまだ着物の中で膨張しきったままであった。
21/06/24 16:20更新 / 琴白みこと
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