連載小説
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盃の儀式
「姐さん、伯父貴からお電話です。」ティコ

「ん?今なんでも」麗奈

「ちょっとそんな空気じゃなさそうですよ」ティコ

「・・・変われ」麗奈

ここは鬼山組。しかし現在はティコと二人だ。ハウは部屋の前で待機している。

「親父」麗奈

「ああ麗奈。久し振りだね」哲二

「なんだ?珍しく真面目だな」麗奈

「ふふっ僕は仕事に関しては真面目さ。さて、用件を言おう。」哲二

「なんだ?」麗奈

「うん。会長からお電話があったんだ。」哲二

「会長?王魔のか?」麗奈

「うん。それで今から王魔へ向かってほしいんだ。話の内容は不明。けど会長のご命令とご指名だ。」哲二

「アタシに?何かヘマしたか?」麗奈

「いや、どうやらそんなことじゃないらしい。」哲二

「そうか。ならいい。陽達は?」麗奈

「どうやらティコちゃんとハウちゃん。幹部のみの同行を許可するだって。」哲二

「ちっ。旦那は留守番だな。」麗奈

「あっそれと麗奈。」哲二

「なんだ?まだ何か?」麗奈

「幹部連中も席にいるらしいからね。」哲二

「マジかあ」麗奈

どうやら珍しく真面目なお話らしい。一体何だろうか?











「つーわけで、アタシは今からティコとハウで王魔会に行く。」麗奈

「会長からのお話とありましたが一体・・・?」ティコ

「アタシも知らん。けど親父はご指名とご命令だと。」麗奈

「指名・・・?一体何が?」ハウ

「まあ行きゃ分かる。」麗奈

「麗奈さんお気を付けて。」陽太郎

「ティコさんも!」士郎

「ハウさんもね」勤

「ああ。行ってくるよ。」麗奈

こうして麗奈達は王魔会へと向かったのであった。




〜・・・・〜

「うーん・・・なんと言いますか、王魔の門が重く見えますね。」ティコ

「いつもより変なオーラがあるといいますか。」ハウ

「行きゃ分かるんだ。早く行くぞ。」麗奈

「「へい」」



ギイイイイイイイイイ




「「「「「「「お疲れ様です!」」」」」」」


「あーもう。また挨拶だよ・・・」麗奈

「組の長なんですから。」ティコ

「行きましょう。」ハウ



コツコツコツ····




「あっ麗奈様ですね。こちらへ。どうぞお連れの方も。」モブ

「了解。」麗奈

「どうも。」ティコ

「ありがとう。」ハウ


受付の組員に連れられ、ある部屋へと連れていかれる麗奈達。

「こちらで会長、以下幹部の皆様がお待ちです。」モブ

「おう・・・」麗奈

「姐さん私達は別のとこで。」ティコ

「ああそうしてくれ。」麗奈

コンコン···

「入って」?

ガチャ···










「ご足労ご苦労様。麗奈。」リリム

「ミキ会長・・・」麗奈

王魔会 本部会長 北条 ミキ (ほうじょう みき)
種族はリリム 座っているだけでもただならぬオーラ、格の違いが伺える。その手腕で王魔会をこの世界の頂点へとのし上げた。本気で怒らせると本部が吹き飛ぶと言われる。

「こんな昼間からすまねえな麗奈」人虎

「雅さんも。」麗奈

王魔会 本部直参 本部会長補佐 阿南 雅 (あなん みやび)
種族は人虎 唯一麗奈がケンカで両親以外に敗北に終わった人物。相当の手慣れであり、直参の名に恥じない女性。もともとは組長であったが、現在は会長補佐役となっている。

「相変わらず可愛いのお。麗奈ちゃん。肩揉んでくれんか?」

「後にしてくれ親父さん。」麗奈

王魔会 本部直参 本部最高顧問 東條 正富 (とうじょう まさとみ)
最高幹部の中で、唯一人間の男性 多くの組員からは、名前ではなく「親父さん」と呼ばれている。齢はすでに100を超えていると言われるが、顔以外の衰えが一切見られない。謎が多い男性である。現在は前線を退いているが、相談役として多くの組員に慕われている。ちなみに最高顧問とは主に一次団体にしか存在しない役職である。組で言うと若頭、つまりNo.2に当たる。しかし本人は跡目に興味が無く、雅に譲る気でいるらしい。

「まあ座って、麗奈ちゃん。ケジメとかめんどくさいことじゃないわ。」

「そっか。なら大丈夫だな。七瀬さん。」麗奈

王魔会 本部直参 本部最高顧問補佐 西園 七瀬 (にしぞの ななせ)
種族はワイト 王魔会の金の回りを担当。その手腕は加奈子を上回るとも言われている。アンデッドをまとめあげる組長であったが、雅と同じく組長の座を後継者に譲り現在は正富の補佐役として本部に身を置く。

「よっこいしょ。」麗奈

「おっさんくさいぞ麗奈。」雅

「ほっほっほ。まあ良いじゃないか。雅ちゃん。」正富

「さあ会長、本題へ・・・」七瀬

「ああ、さて・・・麗奈。わざわざ本部に来てもらったのはほかでもない。」ミキ

「なんすか?」麗奈

「お前を本部直参へ昇格させたい。」ミキ













「は?」麗奈

「いや、本部直参へ・・・」ミキ

「いやなんで」麗奈

「功績から」ミキ

「アタシなんかしました?」麗奈

「えーと、朝の通学路の挨拶当番。地域の安全管理。夕方あたりの不審者取り締まり。夜の見回り。ご老人の荷物運び。その他もろもろ。そして加奈子の多額の上納金ね。」ミキ

「上納金以外アタシが暇潰しでやってたんですが。しかもやってんの加奈子だし。」麗奈

「それで十分なのよ。私達は極道といっても桜の紋にお世話になるような悪いことはしないし。目指すは地域密着型の極道組織だし。」ミキ

「極道ってそれでいいんですかね・・・?」麗奈

「まあ元々は極道は自警団だったらしいし。細かいことは良いのよ。」ミキ

「あー・・・けどミュイは?相当の古参でしょ?クロエとか・・・」麗奈

「ミュイは3時のおやつが食べられない。クロエは私にするなら麗奈さんに。という理由から直参へは昇格したくないらしいのよ。」ミキ

「ええ・・・」麗奈

「他の直系組長も了承済みだわ。それに私達は雅とまともに張り合えるほどの組員を放っては置けないのよ。」ミキ

「負けたんですが。」麗奈

「雅にまともに拳を入れられる時点でおかしいのよ。」ミキ

「さすがにアレにはビビったよ。一時間も耐えるもん。おまけに私の顔面に一撃かましたのはお前が初めてだよ。」雅

「まあそういうわけで本部直参へ昇格してほしいのよ。」ミキ

「は、はあ・・・」麗奈

「お願いできんかのお。麗奈ちゃん。」正富

「お願いよ麗奈ちゃん。」七瀬

「・・・分かりました。」麗奈

「ありがとう麗奈。よし。持ってきてー!」ミキ

「へい」モブ

ミキが何かを指示すると、扉の外から組員の声が聞こえた。何かを持ってくるようだ。

ガチャ····



「持ってきました」モブ

「ありがとう麗奈の前へ」ミキ

「へい。どうぞ麗奈さん。」モブ

「おう・・・えーと会長・・・これは・・・」麗奈

「見ての通り盃よ。」ミキ

麗奈の前には盃が置かれた。様々な種類の儀式の盃があるが、この場合は契りの盃、親子の盃といったところか。しかし、麗奈が戸惑っている理由はとういうと。

「でかすぎやしませんか・・・?」麗奈




すんごいでかいのである。どれくらいかというと、横に1mくらいだろうか。深さも中々ある。

「魔物娘サイズよ。」ミキ

「因みに酒は・・・?」麗奈

「リリム殺しよ。アルコール度数300%。」ミキ

「ちょっと待って。何かがおかしい。」麗奈

「大丈夫よ。大量の氷入れるし。」ミキ

「・・・・」麗奈

「ほい氷。」ミキ

ジャボンジャボンジャボン







ジュウウウウウウウウウウウウウウ



「ちょっと待って。ほんとにおかしい。氷がこんなことなる酒なんか聞いたことないし見たことない。」麗奈

「一口だけでいいから。」ミキ

「頑張れ麗奈。」雅

「ワシも大変じゃったのう。一気飲みじゃったが・・・」正富

「親父さんはほんとに何者なの・・・?」七瀬

「ちくしょう・・・」麗奈

意を決して、麗奈は盃を掴む。そして口にお酒を運ぶ。

「んぐっ・・・ぶふぇ!」麗奈

「OK。儀式は完了ね。」ミキ

「喉がヒリヒリする・・・」麗奈

麗奈は喉を抑えて、少し涙を流している。名に恥じない酒のようだ。

「さっもう帰ってもいいわよ。」ミキ

「もう終わりっすか。」麗奈

「ええ。後は私達で話しておくわ。」ミキ

「そうっすか。じゃあアタシはこれで・・・」麗奈

「あっ麗奈。」ミキ

「なんですか会長?」麗奈

「承知しているとは思うけど、盃の掟は絶対よ。とくに契りはね。」ミキ

「ええ。もちろん。」麗奈

「掟を破れば、その時は貴方といえどもケジメを迫ることになるわ。」ミキ

「ケジメの内容は・・・?」麗奈

「・・・・1ヶ月旦那と性行為禁止。」ミキ

「ファッ!?」麗奈

「破らなければいいのよ。」ミキ

「辛い・・・」麗奈

「1、親の命令は絶対。けどたまには休め。2、地域の人に迷惑をかけない。3、旦那を大切に。これが盃の掟よ。」ミキ

「・・・・掟なんですかね?」麗奈

「あまり厳しくしすぎても意味がないわ。まあ今日は帰りなさい。」ミキ

「へーい。さいならー」麗奈

ガチャ····



バタン····



〜・・・・〜

「おーい。帰るぞ。ティコ、ハウ。」麗奈

「姐さん!一体どんなお話だったんですか?」ティコ

「ヘマとかの話ではないらしいですけど・・・」ハウ

「ああ。アタシ本部直参になった。」麗奈





「「へ」」ティコ&ハウ

「明日から肩書きが、本部直参、直系組長になる。」麗奈

「「ええええええええええええ!!!!????」」ティコ&ハウ

「そこまで叫ぶことないだろう。」麗奈

「いやいやいや!本部ですよ!?」ティコ

「いくら姐さんといっても、信じられねえですよ!?阿南さんや親父さん、七瀬さんまでいるんですから!」ハウ

「といってももう盃交わしちゃった。」麗奈

「はっや!?」ティコ

「もう頭が追い付かねえです・・・」ハウ

「まあいいじゃねえか。これで直参だ。町をさらに守れるぞ。」麗奈

「姐さんがそういうならいいですが・・・」ティコ

「鬼山帰ったらまた大騒ぎっすよ・・・」ハウ


そんなこんなで直参へと昇格した麗奈。その夜、鬼山組はお祭り騒ぎだったようだ。


















〜・・・・〜

「姐さん。次は小学校周辺地域の見回りを・・・」ティコ

「その次は幼稚園周辺の見回りです。」ハウ

「組長。農場の婆さんが畑手伝ってください。と。報酬は大量の野菜です。」薫

「逃げた猫のミーちゃんを探してくれと・・・」葵

「えーと、警察学校のシゴキをお願いしたいと。」菊

「ぬわああああああああああああああ!!!!!!めんどくせえええええええ!!!!!」麗奈

「1ヶ月禁止・・・」ティコ

「ちっくしょおおおおおおおおおお!!!!」麗奈


あまり考えずに直参へと昇格してしまった麗奈を待ってたのは地域の大量の依頼だった。皆さんもしっかり考えて決断しましょう。


END
16/03/10 16:00更新 / 海藻
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■作者メッセージ
海藻参上!ひっさしぶりのヤーさんです。今回は盃のお話でした。

後、少々補足を。
直系とは会長直属の子分が組織した組の事を指します。直参とは会長と直接盃を交わした組長個人の事を指します。また、一次団体とありましたが、それは一番上の組織。つまりこの物語だと王魔会を指します。直系は二次団体。三次団体は○○組系 ○○組 と、直系の組のさらに内部の組を指します。三次団体は直系とはなりません。例えば鬼山組で葵が組を作ると、鬼山組系 葵組 となります。

今回はヤーさん成分がほとんどになってしまいました。次回はおとぎ話の方を先に投稿するかもしれません。それではノシ

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