5.同棲?!
あの日は結局会えなかったけれど、彼女とのコンタクトがうまくいってから時々、例の場所で会えるようになった
まあ、決まって日曜日になるのだけれど
あちらの世界でも日曜日なのかな?
コンデジと違い、木箱カメラは少々大きめで覗きながら来るのは大変そうだ
ある日、彼女はついてこいと木箱カメラでこちらをちらちら見ながらゆっくりと私を誘う
この前みたいに道ではないようなところでコケたり、進入禁止のとこを横切ろうとして互いに迷子になるようなことはない
彼女はこちらのことを気にしながら動いてくれるので、車や自転車などに気をつけながら歩いていった
――――――――――向こう側――――――――――――
森の中の開けたところにその家はあった
石と木と漆喰を使った、まるでヨーロッパの街並みの片隅にあるような石の家がポツンとある
二階建てで円錐の屋根から煙突が突き出していて、まるで魔法使いが住んでいるかのような家
つる草が壁伝いに茂り、なかなか快適そうだ
窓から見える室内に干されている服や床に積まれた本が見える
――――――――――こちら側――――――――――――
河原沿いを抜け、人気の少ない雑木林にむかって歩くと、昔ながらの平屋住宅が見えてきた
赤茶色した昔ながらの瓦
茶色いトタンの外壁
どこか懐かしさを感じさせる古びた茶色の玄関扉
人が住んでいるのかいないのか
ひっそりといくつかの平屋住宅はあった
各家々には“空き家”の看板が見える
街からだいぶ離れているから、人も住まなくなったのだろう
老朽化も結構きているようだ
その中の家では軽乗用車が来ていて中で何かの作業をしている
リフォーム中だろうか?
画面の中の彼女は付いて来いとでもいうかのように玄関だろうか?の扉を開けて手招きをしている
「ごめんくださーい?」
『はい?』
作業服を着たおっさんが中から顔を出してくれた
「ここ空き家なんですか?」
『ああ。古いし街からだいぶ離れていて不便だからって、かなり前にここはほとんどの住民が出て行っちゃってね。だから、リフォーム中だよ。もしかして、家探している?だったらここの不動産屋も歓迎してくれるよ?家賃も安いしね』
「そうなんですか?実は静かな所探していまして、車あるから郊外なのは不便かもしれないけどいいかなぁ〜と・・・」
出まかせだったけど今この中に入るためにはこれしかないかもと思った
『じゃあ、不動産屋の住所と電話番号のメモ渡しておくね。気が向いたら問い合わせてみるといいよ』
「ありがとうございます。折角ですから中、見せてもらっていいですか?」
『ああ。ちょっと散らかっているけれど気をつけてもらえればいいよ。危ないから靴のままでいいから』
「はい。それじゃ、お邪魔しまーす」
メモを渡すとおっさんは作業に戻っていった
再びカメラの画面を見ると待ちかねたぞ?とでもいいたげに、壁にもたれ腰に手をかけてこちらを見ていた
そして、こっちだと手招きをして奥へ誘う
平屋は玄関を上がるとすぐにトイレと風呂がありその向こうにキッチンと居間があった
少々狭いが一人暮らしなら丁度いい感じである
リフォームも今風な内装になっていてこれなら家の見た目はおんぼろだけれど大丈夫そうだ
画面の中もやはり居間なのであろうか広くゆったりとした空間があった
部屋の真ん中には薪ストーブがある。隙間からは火が赤々と燃えているのが見えて、ポットからは薄く湯気が出ている。それを囲むように大きなソファ、乱雑に本や羊皮紙というのだろうか黄色っぽい紙が置かれた机、壁は本棚になっていてたくさんの本が所狭しとならべられている
キョロキョロと見回す私の前に彼女は立つと、手のひらを広げて突き出し右から左へとふった後、自分の胸に手のひらを置いて何か言っている。その顔はちょっと自慢げだった
“どうだ?ここが私の家だ!”
なんだかそう言っているように思った
“いいところだろ?”
笑顔はそう言っていた
こちらも笑顔で親指を立ててグーとやってやった
『・・・内装気に入った?』
後から作業服のおっさんが聞いてきた。どうやらグーとやっていたのを見られたらしい
「・・・え?あっ、はい。もっと古臭いイメージがあったけど・・・ぜんぜん今風で・・・」
あわててこの部屋の感想を言う。危ない危ない向こうのことは誰も知らないこと…頭のおかしな人に思われてしまう
『そっか。なら少し気になってた箇所があるからそこも直してあげよう』
「え?いいんですか?」
『なに、入ってくれるんでしょう?だったら万全にしてあげないとね』
「え?いや…はい…そうですね…」
いや、そうではなくて入るか入らないかわからないからいいのか聞いたんだけどな・・・
そう言うとおっさんは屋根裏へと入っていった
え?私、入ることに決まっちゃったの?
入らなかったらなんか気まずいかなぁ・・・
まあ、気の持ちようだ。向こう側のことを知るいいきっかけかも知れない。そう思うことにした
再び、カメラを向けると彼女もカメラを覗きながらどうしたんだとも言いたげな顔をしていた
仕方がないから、持っていたメモ帳を出すと絵を描いていく
描いたのは家の絵と人の絵
そして、それを見せた
彼女は何事かと興味津々と言うような顔をしている
まずこの場所を指差して絵の中の家を指差す
次に人の絵を指差して自分自身を指差す
「ここ、この家が絵のこの家ね。んで、この棒人間が私な」
意味かわかったのだろう。コクコクとうなずいている
絵に矢印と家の絵の中に棒人間を書き入れる
「私がこの家に入るんだ。寝たりご飯食べたり・・・」
身振り手振りでここに住むことになりそうだと言うと、
本当か!?というかのようにメモ帳とペンを構えてグイとこちらに身を乗り出した
その顔は好奇心で目がキラキラと輝いている
思わず乗り出したのだろう。あっ…という顔をして慌ててカメラに戻る彼女・・・
少々苦笑をしながらうなずいてやると、彼女は親指を立ててグーと突き出した
私もグーと突き出してやる
笑顔の彼女と私
まったくの異世界なのにその時少し触れ合えたような気がした
まあ、決まって日曜日になるのだけれど
あちらの世界でも日曜日なのかな?
コンデジと違い、木箱カメラは少々大きめで覗きながら来るのは大変そうだ
ある日、彼女はついてこいと木箱カメラでこちらをちらちら見ながらゆっくりと私を誘う
この前みたいに道ではないようなところでコケたり、進入禁止のとこを横切ろうとして互いに迷子になるようなことはない
彼女はこちらのことを気にしながら動いてくれるので、車や自転車などに気をつけながら歩いていった
――――――――――向こう側――――――――――――
森の中の開けたところにその家はあった
石と木と漆喰を使った、まるでヨーロッパの街並みの片隅にあるような石の家がポツンとある
二階建てで円錐の屋根から煙突が突き出していて、まるで魔法使いが住んでいるかのような家
つる草が壁伝いに茂り、なかなか快適そうだ
窓から見える室内に干されている服や床に積まれた本が見える
――――――――――こちら側――――――――――――
河原沿いを抜け、人気の少ない雑木林にむかって歩くと、昔ながらの平屋住宅が見えてきた
赤茶色した昔ながらの瓦
茶色いトタンの外壁
どこか懐かしさを感じさせる古びた茶色の玄関扉
人が住んでいるのかいないのか
ひっそりといくつかの平屋住宅はあった
各家々には“空き家”の看板が見える
街からだいぶ離れているから、人も住まなくなったのだろう
老朽化も結構きているようだ
その中の家では軽乗用車が来ていて中で何かの作業をしている
リフォーム中だろうか?
画面の中の彼女は付いて来いとでもいうかのように玄関だろうか?の扉を開けて手招きをしている
「ごめんくださーい?」
『はい?』
作業服を着たおっさんが中から顔を出してくれた
「ここ空き家なんですか?」
『ああ。古いし街からだいぶ離れていて不便だからって、かなり前にここはほとんどの住民が出て行っちゃってね。だから、リフォーム中だよ。もしかして、家探している?だったらここの不動産屋も歓迎してくれるよ?家賃も安いしね』
「そうなんですか?実は静かな所探していまして、車あるから郊外なのは不便かもしれないけどいいかなぁ〜と・・・」
出まかせだったけど今この中に入るためにはこれしかないかもと思った
『じゃあ、不動産屋の住所と電話番号のメモ渡しておくね。気が向いたら問い合わせてみるといいよ』
「ありがとうございます。折角ですから中、見せてもらっていいですか?」
『ああ。ちょっと散らかっているけれど気をつけてもらえればいいよ。危ないから靴のままでいいから』
「はい。それじゃ、お邪魔しまーす」
メモを渡すとおっさんは作業に戻っていった
再びカメラの画面を見ると待ちかねたぞ?とでもいいたげに、壁にもたれ腰に手をかけてこちらを見ていた
そして、こっちだと手招きをして奥へ誘う
平屋は玄関を上がるとすぐにトイレと風呂がありその向こうにキッチンと居間があった
少々狭いが一人暮らしなら丁度いい感じである
リフォームも今風な内装になっていてこれなら家の見た目はおんぼろだけれど大丈夫そうだ
画面の中もやはり居間なのであろうか広くゆったりとした空間があった
部屋の真ん中には薪ストーブがある。隙間からは火が赤々と燃えているのが見えて、ポットからは薄く湯気が出ている。それを囲むように大きなソファ、乱雑に本や羊皮紙というのだろうか黄色っぽい紙が置かれた机、壁は本棚になっていてたくさんの本が所狭しとならべられている
キョロキョロと見回す私の前に彼女は立つと、手のひらを広げて突き出し右から左へとふった後、自分の胸に手のひらを置いて何か言っている。その顔はちょっと自慢げだった
“どうだ?ここが私の家だ!”
なんだかそう言っているように思った
“いいところだろ?”
笑顔はそう言っていた
こちらも笑顔で親指を立ててグーとやってやった
『・・・内装気に入った?』
後から作業服のおっさんが聞いてきた。どうやらグーとやっていたのを見られたらしい
「・・・え?あっ、はい。もっと古臭いイメージがあったけど・・・ぜんぜん今風で・・・」
あわててこの部屋の感想を言う。危ない危ない向こうのことは誰も知らないこと…頭のおかしな人に思われてしまう
『そっか。なら少し気になってた箇所があるからそこも直してあげよう』
「え?いいんですか?」
『なに、入ってくれるんでしょう?だったら万全にしてあげないとね』
「え?いや…はい…そうですね…」
いや、そうではなくて入るか入らないかわからないからいいのか聞いたんだけどな・・・
そう言うとおっさんは屋根裏へと入っていった
え?私、入ることに決まっちゃったの?
入らなかったらなんか気まずいかなぁ・・・
まあ、気の持ちようだ。向こう側のことを知るいいきっかけかも知れない。そう思うことにした
再び、カメラを向けると彼女もカメラを覗きながらどうしたんだとも言いたげな顔をしていた
仕方がないから、持っていたメモ帳を出すと絵を描いていく
描いたのは家の絵と人の絵
そして、それを見せた
彼女は何事かと興味津々と言うような顔をしている
まずこの場所を指差して絵の中の家を指差す
次に人の絵を指差して自分自身を指差す
「ここ、この家が絵のこの家ね。んで、この棒人間が私な」
意味かわかったのだろう。コクコクとうなずいている
絵に矢印と家の絵の中に棒人間を書き入れる
「私がこの家に入るんだ。寝たりご飯食べたり・・・」
身振り手振りでここに住むことになりそうだと言うと、
本当か!?というかのようにメモ帳とペンを構えてグイとこちらに身を乗り出した
その顔は好奇心で目がキラキラと輝いている
思わず乗り出したのだろう。あっ…という顔をして慌ててカメラに戻る彼女・・・
少々苦笑をしながらうなずいてやると、彼女は親指を立ててグーと突き出した
私もグーと突き出してやる
笑顔の彼女と私
まったくの異世界なのにその時少し触れ合えたような気がした
11/01/05 21:42更新 / 茶の頃
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