連載小説
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4.First Contact!
彼女を探してみることにしたとはいえ、どこをどう探したものか分からずにぶらぶらしていると、あの雷に撃たれた辺りに差し掛かった
ハンチング帽を被り特徴的な目をしていて蛇のような尻尾が特徴的な・・・女性
その特徴的な格好とカメラを所持していたことから写真屋か記者のような仕事をしていたと思われる

注意深く辺りを確認しながら歩む
どうやら向こう側は牧場か何かのようだ
柵があり低い草草が茂り遠くに家畜の姿が確認できる
あの人は一体なにをしていたのだろうか?

こちら側は河原に面していてちょっとした公園になっており近くにベンチがあったので観察してみることにした
・・・特に変わったものは見られない
人影もなく風に揺れ動く草草が写っているだけだった

その日からそのベンチでの観察が始まった
ノートPCと三脚持ち込んで暇つぶし
延々とゲームで地雷つぶしを繰り返していた
そんなある時・・・

カメラの画面に変化があった
牧場の柵に木箱カメラをセットしているハンチング帽姿の人影
しめた!と思った
おそらくあのときの私と同じように雷にうたれていた人だ

その人をよく観察したくて少しずつ近づいてみた
こちらから行くと丁度、その人の後から近づくことになる
まず気になっていたしっぽ・・・
やはり腰と尻辺りから出ている
それがただの飾りでないことは左右に揺れたりして動いていることからもわかる
何かの皮で出来た黒いスカートを穿いていて、腰に掛かっているポーチにはなんだかわけのわからない道具がたくさん入っているのが見える
ポーチの下には短剣のようなモノも見える
スカートからは白くむっちりとしたいい太もも
でも足の平はまるで恐竜の足のようだ。そこから伸びるつめは鋭かった
で、上半身は後からだとよく見えなかったため横に回ってみた
やはり、皮のジャケットを着ている
そこから見える胸は大きく美しいと感じた
女性的ですらりとした腕、掌はやはり爬虫類のよう
栗毛色の髪はポニーテールのように後で束ねられていてハンチング帽がちょんと頭にのっている
顔はおもわず見とれた
外国人モデルのように美人
きりりと引き締まった表情
でもやはりその瞳は、爬虫類のように瞳孔が細く鋭かった

やっぱりこの人も人ではなかったか・・・
正面から見たくてそっちに回ると、突然その人が動いた
すこし屈んで熱心にカメラを覗いていたその人が、起き上がって目をぱちくりとするとまた屈んでカメラを覗きだした
何をしているのだろうか?彼女のカメラの先に面白い物でも現れたのだろうか?
そちらにカメラを向けたが、特に面白い物は写っていない
また彼女にカメラを向けると、彼女のカメラはこちらを向いていた
何度も彼女と向いている先を確認するけど、何を見ているのかわからない

自分の動きを彼女のカメラが追っているのに気が付いたのは、それからしばらくしてだった

見えているのか?!
この人にも私が?
信じられない・・・どうして?

ためしに、手を振ってみた
“・・・”
反応なし・・・どうしたものか?
しょうもないことが頭に浮かんだ
とりあえず!逃げてみる!!
向こうはコンデジとは違って持ちながら見るなんて出来まい!

とりあえず走り出してみた
思った通り、あわててカメラ持って走り出す彼女
ついてこれているか、振り返るとコケていた
牧場の柵に足を引っ掛けたらしく顔から・・・
なんとかカメラだけでも守ろうとしたのだろう、カメラを脇に抱えた不自然な格好で倒れていた

少し起き上がってこちらを確認するとむくれたような顔をして、まるでこちらが見えているかのように睨む彼女
私は思わず手を差し出した
こちらを確認した彼女も思わず手を掴もうとしたらしい
当然、掴めるわけもなく空振りに終わる
でも、それだけでお互い相手を確認できているという認識が出来たのがうれしかった
彼女も少しバツの悪そうな顔をして苦笑いをしている

それから、起き上がりカメラに異常がないか確認すると
何か口を動かして言っている。けれどもわからない。読唇術なんて出来ないし、そもそもあれは日本語なのか?
身振り手振りで何かを言っているのだけれどもやはりわからなかった
どこかに行こうとしているのか歩き出していた
手招きをしている様は“とにかくこい!”とでも言っているように見えたのでついていくことにした

しかし、少し困ったことになった
あちら側の道は当然ながらこちら側では道でない
幸い、ここは河原だから何とか追えてるけど川の中とかへんな所を通られたらついていけない
ついて来ているかちらちらと確認しながら歩く彼女

河原沿いに大きな工場があるのが見えてきた
向こう側の道はどうやらその中へ続いているらしい
・・・困った。これでは彼女を追う事は出来ない
なんとか気が付いてもらえないかと止まって身振り手振りをしているが、とにかくこい!とでも言うかのように大ぶりに手招きをしている
やっぱり無理なので立ち止まって無理と伝えるけれど、ずんずんと歩いていく彼女・・・
まさか、工場の中に不法侵入するわけにもいかない
しかたがない・・・工場を迂回した辺りまで走ることにした

ゼィゼィ・・・全力で走ったけどかなり時間が掛かってしまった
彼女は・・・見当たらない
あたりをくまなく探しては見たけれども、やはり見当たらなかった
見失ったか・・・
さっき出会ったところに戻ってみてもいなかった
その日はどこをどう探してもやはり彼女を見つけることは叶わなかった・・・
11/01/02 22:27更新 / 茶の頃
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■作者メッセージ
明けましておめでとうございます
今年もよろしくです
レンズの向こう側ですが
2000字前後でちまちま書いていく予定・・・

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