二重世界、自分自身。 森羅万象、唯一無二。
今日は砂漠の街へ行く日だ。確か教会でも魔物でもない勢力がいるんだとか。
しかし実害は今のところ無いと。いや、実害が無いから『調査』なのか…?なんにしても魔王軍が危険視してるんだ、何かがありそうだ。
と、そんなわけで仕事なのだが…。
「さて、準備できたか?出来たんだよな、ああ?」
俺は朝食を済ませ身支度を終えてベッドを見る。
「んー…兄貴にはー準備出来てるようにみえんのかー?」
那由多は未だに布団の中である。しかも明らかに遅れかけてる人間の受け答えじゃない。
「はよ起きろバカ、仕事だぞ。置いてくぞ」
「おいてけぼりはかんべんでーすよぉー」
呆れたことに勘弁と言いながらもぞもぞと布団を揺らすだけで起きてこない。
こいつ確か別次元の俺だっけ?流石に俺はここまでひどくない、こいつやっぱり俺じゃないんじゃないかな。
「よし、那由多置いてく」
なんかもうそれでいい気がしてきた
「ーー2.1.0…っと、よっし行こう!!」ガバッ
那由多が勢いよく布団を弾き飛ばす、布団から出るのに勢いがいるのはまぁ分かるけどさ…
俺と那由多はギルドにダッシュで向かう
ーーーギルドーーー
朝のギルド、珍しく四人も居る室内は少し賑やかに感じる
「ご主人様おっそいわ〜」
出発の時間にはまだあるが暇ですオーラを隠さないライラがぼやく
「んー、まぁ余裕もって招集してあるがなぁ」
それに対しクロードが書類整理をしながら言った。
「カヤもナユもナニやってンだか、いやナニとは言わないけどさ」
「言ってるじゃない」
ヴェルエがボケてライラツッコむ
きっと普段は無いであろうボケとツッコミの応酬。
因みに今日は非番のラナリアはソファでずっと寝ている。
バンッ ギルドの扉を勢いよく開けてカヤと那由多が入ってくる
「すんませんマスター!!遅れました!!」
「スミマセン、寝てましたわ…!!」
カヤが那由多をズルズルと引っ張り入ってきた
カヤばかりが焦って那由多は余裕気味な表情
「いいって、結構余裕をもって呼んであるから」
笑って許してくれるマスター、仕事の遅刻など普通は笑って許せる問題では無いであろう。申し訳無さが込み上げる。
「じゃ、揃ったな?カヤ、ナユ、ライラ、ヴェルエ、俺と。このメンバーで行く」
今回はジローを待つとのことでラナリアは留守番だ
本来偵察任務ならこれでも多い気がするが
「うーん、今日はちょおっとだけゆっくり目に行かない?」
皆が那由多の方を見る、そこに俺が聞いた
「何でさ」
「うん、と言うのもね…うーん」
何故かうなりはじめる、適当いったのか?
「神様のお告げがあったのよん、今日は太陽が真上に上ってからがラッキーデイだよーって」
神様のお告げが?経験値でも聞くのか?
「なんのこっちゃ、皆どうす…る…?」
俺以外は意外にも真剣に受け止めてた
「神様って、あたしたちにとっていい存在なのかしら…?」とヴェルエ
「やっば、神様のお告げって…アタシ大丈夫かな…」とライラ
「ふむぅ…まぁ昼間からなら行けるか…」とマスター
因みにいまはマイ携帯電話が10時を示しております
あと二時間位か…マスターがいいなら良いんだが…
「分かった、昼に出発しようか」
「うん、それがいいよ。ほら兄貴も、暇ができたしイチャイチャしよーぜぇー」
何を言い出すかこの妹(?)は、仮にも自分自身だぞ
「ばっ、誰がお前となんて!!?」
「…!?ってああ、そうとっちゃうか…」
呟いて赤い顔で訂正する
「ライラちゃんと変身の練習でもしながらイチャイチャしてきたら?って意味でおなしゃす…!」
そういう意味か、分かりづらい
「主語を抜くな主語を」
<なんだかんだラブラブだよねーライラとカヤって
<ああ、気持ちに区切りがついたんだろう。ライラの格好を見るに恐らく…
<カヤを襲うタイミング、取れなかったなぁ
いつの間にか起きていたラナリアとクロードが図星を突いてくる。あとヴェルエは冗談じゃなく襲う気だったのね。
「じゃ、ごゆっくりぃ〜」
そう言って那由多は外に出ていってしまった
何なんだろうアイツは…そう思いながらも変身の練習という言葉に思うところもあり…
「そうだな、うん。ライラ、練習しようか」
「ああー、うん。そうしようかな…」
結局那由多の言う通りに行動することに。
二時間の暇を潰す為に二人でギルドを出た
ーーー宿ーーー
ふらふらと、なるべくなにも考えないように宿に戻りリーゼに挨拶をして階段をあがり借りた一室の扉を開けた。
「ああーっぶねぇー」
器用に後ろ足で扉を閉め布団に寝転び一人呟く
「んー流石になぁヘンなこと言ってると思われたろうなぁ…」
ゴロゴロと頭を抱えて悶える、考えれば考えるほど意味がわからない言動だったと思う。
「黒歴史更新しちゃったぞおいいいいいいいいいいい!?」
大体神様(正確には神様を語る集団)が魔物を悪としている世の中で魔物に神様の話をして『信じて?』と言っても普通は信じないだろうし人間にとっても異世界人が何を?と思われるのがオチである
「あああああっー!!!!」
ひたすら悶えたあと仰向け大の字で転がり天井を見つめる
外からは賑やかな人々の声。窓からはまだ朝と言い張れる日射し。
「待ってろよ…」
天井に手を伸ばし拳を握りしめ、その眼差しは真剣な決意を秘めていた。
「ナユちゃーん?大丈夫〜?」
「はぁ〜い、大丈夫で〜すよ〜!!」
暴れすぎて一階からリーゼさんに心配されてしまった
ーーーギルドーーー
ギルドは結局クロードとヴェルエの二人になってしまった
那由多はふらふらと出ていったし、カヤとライラは変化能力の練習に。
実に妙な話だが那由多のいう神のお告げは信じてもいい、信じなければいけないような何かを感じた。それに根拠はなく、『勘』だとか『胸騒ぎ』と呼ばれる何かだった。
そんなこんなでヴェルエと二人。カウンター越しに片や向かい準備をこなし、片や飲み物を片手にカウンターに突っ伏す。普段は見せないそんな様子にクロードが声を掛ける。
「どうした、ヴェルエ。やることはないのか?」
ぐでーっと突っ伏した頭と机の間からやる気のない声が漏れる。
「んー、なんかねぇ…考えることが多くてねぇ…」
考えること、数日前のヴェルエを襲撃した事件。クロードはヴェルエのことを理解しているつもりでいた。ところが今回の事件、クロードの知らないヴェルエ。彼女と過ごした30年間よりもその前数年間の過去がクロードの知らない彼女をクロードに見せる。勿論幼い頃の記憶を無くした彼女が一番ショックを受けているだろうが…。
「お前の平和を掴む覚悟は出来たか?」
ヴェルエは十分幸せではないのか、今のままではいけないのか。だが事実彼女自信にも分からない過去があって、それが邪魔で彼女は悩んでいる。クロードは聞きながら自らも悩んでいた。
「今のままが一番平和よ、そう言う意味じゃ自ら平和を壊しに行ってる自分が何だか可笑しいね」
まるで現状に呆れたように、諦めたようにフッと笑い彼女は言葉を吐き捨てる。
「ヴェルエ、お前…」
分からなかった。やはり平穏無事な今のままただの冒険者として生きる事がいいのか、真実を知ってなお彼女に真の平和をつかんでほしいのか。クロード自信の心も揺れる。
バタンッギルドの扉があき入ってきたのはカヤとライラ
「ふいーただいまー」
汗をかいたのか手に持っていた布で額を拭うカヤとそれに引っ付くライラ…らしき少女。
「あの、あの…ただい、ま…」
人違いだろうか、ライラだと感じたのだがカヤに引っ付く少女は明らかにライラではない。
「なぁ、ライラ…だよな?」
恐る恐る聞いてみる、するとビクンッとしたあと反応があった。
「そう、だけど…」
カヤにしがみつき声は震え蚊の鳴くようなか細い声。普段の横柄さは微塵も感じられない。
何時もの灰色の髪は黒く煌めき、猫の耳が頭にちょんと乗っかるように生えて服装がいつもに比べて少し地味で黒を基調としたワンピースに金の縁取り。もしやと思いクロードは聞いた。
「これ、変身能力の結果か?」
やはりビクンッと震える、怖がらなくてもいいじゃないか…と少し寂しい気持ちになる。
「ああ、そうなんだよ…まぁ、色々あってさ。取り敢えず視界に入ったもので練習させたらドッペルゲンガーの女の子が珍しく素のまま歩いてて、あとワーキャットを見たら…っていってたな」
なぜここまでその状態で連れてきたのだろう…。その疑問は続く言葉で明らかになった。
「んでこんなんじゃ使いたいとき使えないってんで度胸つけるためにつれ回したんだけどさ、これがまた露出プレイみたいなドキドキ感があるとか言い出しちゃうのよこいつ!」
どんどんとうち新人が怪しい方向に…。そう思いながらライラの方を見やると顔を真っ赤にして俯き、小刻みにプルプル震えている。
「…!!?言わないでって…言ったのにぃ…も、う、インプに戻るよ…?えい…!」
その声と共に体の変化が起きた、決して光るわけでも煙が出るわけでもないのだな。と少し感心してしまった。
「もぉーご主人のばかぁー!!言わないって言ったじゃないさ!!」
「はっはっは、すまんないぢめてオーラが見えたもんでつい…な!」
そうしていつものじゃれ合い、まだそう彼らが所属してから日はたってないはずだがこれが日常として浸透しつつある、他者に影響を強く及ぼす面白い二人組だ、とクロードは評価した。
「さて、あとはナユタか」
遅刻ではないがこう早めに皆が揃ってしまうと遅く感じるものだ。
ガチャ 扉が開く、あっけらかんと笑って那由多は来た。
「いやぁー遅れました、すんません」
ふっと笑ってクロードが話し出す。
「よし、揃ったな?では出発前に依頼内容と作戦を話す」
本格的に始まった調査依頼に一同に緊張が走る。
「今回の依頼、依頼主は魔王軍トップのリリー·クライン。内容は第三勢力らしきものの勢力調査だ」
クロードが皆を見渡す
「砂漠の地グラザリルにて調査をする。規模、活動内容、出来れば戦力まで調査がしたい。」
「はいはーい、マスター質問いい?」
「ん、どうした」
確認を取り、頷いてヴェルエは話始めた。
「今回の勢力、正体不明なんでしょ?戦力調査も兼ねて襲ってきたら撃退しちゃって良いよね?」
ヴェルエはこの前の一件もあって警戒しているようだ。それを解っていたのかクロードは大きく頷いた。
「ああ、その為の俺だ。ソコについては向こうで二手に分かれる事を考えている。」
勿論場合に依りけりだが、と付け加える。
「オッケー、わかった。じゃ私からは以上ね」
それを聞いてクロードが見渡す。
「他に何かあるやつはいるか?」
皆なにもないようで、真剣にギルドマスタークロードを見る。
「無いみたいだな、よし。じゃあもう少し詳しく決めておくか。俺はヴェルエと動く。」
「アタシはご主人と動くよ、譲らないから!」
ん、とクロードが頷く。問題は…
「あー、んー、むぅーどーすりゃいいんですかねあたしゃ」
那由多だ、ハッキリしない。戦力も不明であるため皆どちらに加えるか考えたが。
「うし、あたしゃマスターに着くよ、宜しくねマスター」
「よし、お前の働き見せてもらうぞ。」
那由多がはぁーいと気合いのない返事をしてライラがきゅっと俺の手を握る。可愛い。
話が纏まってきたらしいし、ふと窓から外をみる。空は茜色、もう夕方じゃねぇかよ…。
ーーー続くと思って間違いない。
しかし実害は今のところ無いと。いや、実害が無いから『調査』なのか…?なんにしても魔王軍が危険視してるんだ、何かがありそうだ。
と、そんなわけで仕事なのだが…。
「さて、準備できたか?出来たんだよな、ああ?」
俺は朝食を済ませ身支度を終えてベッドを見る。
「んー…兄貴にはー準備出来てるようにみえんのかー?」
那由多は未だに布団の中である。しかも明らかに遅れかけてる人間の受け答えじゃない。
「はよ起きろバカ、仕事だぞ。置いてくぞ」
「おいてけぼりはかんべんでーすよぉー」
呆れたことに勘弁と言いながらもぞもぞと布団を揺らすだけで起きてこない。
こいつ確か別次元の俺だっけ?流石に俺はここまでひどくない、こいつやっぱり俺じゃないんじゃないかな。
「よし、那由多置いてく」
なんかもうそれでいい気がしてきた
「ーー2.1.0…っと、よっし行こう!!」ガバッ
那由多が勢いよく布団を弾き飛ばす、布団から出るのに勢いがいるのはまぁ分かるけどさ…
俺と那由多はギルドにダッシュで向かう
ーーーギルドーーー
朝のギルド、珍しく四人も居る室内は少し賑やかに感じる
「ご主人様おっそいわ〜」
出発の時間にはまだあるが暇ですオーラを隠さないライラがぼやく
「んー、まぁ余裕もって招集してあるがなぁ」
それに対しクロードが書類整理をしながら言った。
「カヤもナユもナニやってンだか、いやナニとは言わないけどさ」
「言ってるじゃない」
ヴェルエがボケてライラツッコむ
きっと普段は無いであろうボケとツッコミの応酬。
因みに今日は非番のラナリアはソファでずっと寝ている。
バンッ ギルドの扉を勢いよく開けてカヤと那由多が入ってくる
「すんませんマスター!!遅れました!!」
「スミマセン、寝てましたわ…!!」
カヤが那由多をズルズルと引っ張り入ってきた
カヤばかりが焦って那由多は余裕気味な表情
「いいって、結構余裕をもって呼んであるから」
笑って許してくれるマスター、仕事の遅刻など普通は笑って許せる問題では無いであろう。申し訳無さが込み上げる。
「じゃ、揃ったな?カヤ、ナユ、ライラ、ヴェルエ、俺と。このメンバーで行く」
今回はジローを待つとのことでラナリアは留守番だ
本来偵察任務ならこれでも多い気がするが
「うーん、今日はちょおっとだけゆっくり目に行かない?」
皆が那由多の方を見る、そこに俺が聞いた
「何でさ」
「うん、と言うのもね…うーん」
何故かうなりはじめる、適当いったのか?
「神様のお告げがあったのよん、今日は太陽が真上に上ってからがラッキーデイだよーって」
神様のお告げが?経験値でも聞くのか?
「なんのこっちゃ、皆どうす…る…?」
俺以外は意外にも真剣に受け止めてた
「神様って、あたしたちにとっていい存在なのかしら…?」とヴェルエ
「やっば、神様のお告げって…アタシ大丈夫かな…」とライラ
「ふむぅ…まぁ昼間からなら行けるか…」とマスター
因みにいまはマイ携帯電話が10時を示しております
あと二時間位か…マスターがいいなら良いんだが…
「分かった、昼に出発しようか」
「うん、それがいいよ。ほら兄貴も、暇ができたしイチャイチャしよーぜぇー」
何を言い出すかこの妹(?)は、仮にも自分自身だぞ
「ばっ、誰がお前となんて!!?」
「…!?ってああ、そうとっちゃうか…」
呟いて赤い顔で訂正する
「ライラちゃんと変身の練習でもしながらイチャイチャしてきたら?って意味でおなしゃす…!」
そういう意味か、分かりづらい
「主語を抜くな主語を」
<なんだかんだラブラブだよねーライラとカヤって
<ああ、気持ちに区切りがついたんだろう。ライラの格好を見るに恐らく…
<カヤを襲うタイミング、取れなかったなぁ
いつの間にか起きていたラナリアとクロードが図星を突いてくる。あとヴェルエは冗談じゃなく襲う気だったのね。
「じゃ、ごゆっくりぃ〜」
そう言って那由多は外に出ていってしまった
何なんだろうアイツは…そう思いながらも変身の練習という言葉に思うところもあり…
「そうだな、うん。ライラ、練習しようか」
「ああー、うん。そうしようかな…」
結局那由多の言う通りに行動することに。
二時間の暇を潰す為に二人でギルドを出た
ーーー宿ーーー
ふらふらと、なるべくなにも考えないように宿に戻りリーゼに挨拶をして階段をあがり借りた一室の扉を開けた。
「ああーっぶねぇー」
器用に後ろ足で扉を閉め布団に寝転び一人呟く
「んー流石になぁヘンなこと言ってると思われたろうなぁ…」
ゴロゴロと頭を抱えて悶える、考えれば考えるほど意味がわからない言動だったと思う。
「黒歴史更新しちゃったぞおいいいいいいいいいいい!?」
大体神様(正確には神様を語る集団)が魔物を悪としている世の中で魔物に神様の話をして『信じて?』と言っても普通は信じないだろうし人間にとっても異世界人が何を?と思われるのがオチである
「あああああっー!!!!」
ひたすら悶えたあと仰向け大の字で転がり天井を見つめる
外からは賑やかな人々の声。窓からはまだ朝と言い張れる日射し。
「待ってろよ…」
天井に手を伸ばし拳を握りしめ、その眼差しは真剣な決意を秘めていた。
「ナユちゃーん?大丈夫〜?」
「はぁ〜い、大丈夫で〜すよ〜!!」
暴れすぎて一階からリーゼさんに心配されてしまった
ーーーギルドーーー
ギルドは結局クロードとヴェルエの二人になってしまった
那由多はふらふらと出ていったし、カヤとライラは変化能力の練習に。
実に妙な話だが那由多のいう神のお告げは信じてもいい、信じなければいけないような何かを感じた。それに根拠はなく、『勘』だとか『胸騒ぎ』と呼ばれる何かだった。
そんなこんなでヴェルエと二人。カウンター越しに片や向かい準備をこなし、片や飲み物を片手にカウンターに突っ伏す。普段は見せないそんな様子にクロードが声を掛ける。
「どうした、ヴェルエ。やることはないのか?」
ぐでーっと突っ伏した頭と机の間からやる気のない声が漏れる。
「んー、なんかねぇ…考えることが多くてねぇ…」
考えること、数日前のヴェルエを襲撃した事件。クロードはヴェルエのことを理解しているつもりでいた。ところが今回の事件、クロードの知らないヴェルエ。彼女と過ごした30年間よりもその前数年間の過去がクロードの知らない彼女をクロードに見せる。勿論幼い頃の記憶を無くした彼女が一番ショックを受けているだろうが…。
「お前の平和を掴む覚悟は出来たか?」
ヴェルエは十分幸せではないのか、今のままではいけないのか。だが事実彼女自信にも分からない過去があって、それが邪魔で彼女は悩んでいる。クロードは聞きながら自らも悩んでいた。
「今のままが一番平和よ、そう言う意味じゃ自ら平和を壊しに行ってる自分が何だか可笑しいね」
まるで現状に呆れたように、諦めたようにフッと笑い彼女は言葉を吐き捨てる。
「ヴェルエ、お前…」
分からなかった。やはり平穏無事な今のままただの冒険者として生きる事がいいのか、真実を知ってなお彼女に真の平和をつかんでほしいのか。クロード自信の心も揺れる。
バタンッギルドの扉があき入ってきたのはカヤとライラ
「ふいーただいまー」
汗をかいたのか手に持っていた布で額を拭うカヤとそれに引っ付くライラ…らしき少女。
「あの、あの…ただい、ま…」
人違いだろうか、ライラだと感じたのだがカヤに引っ付く少女は明らかにライラではない。
「なぁ、ライラ…だよな?」
恐る恐る聞いてみる、するとビクンッとしたあと反応があった。
「そう、だけど…」
カヤにしがみつき声は震え蚊の鳴くようなか細い声。普段の横柄さは微塵も感じられない。
何時もの灰色の髪は黒く煌めき、猫の耳が頭にちょんと乗っかるように生えて服装がいつもに比べて少し地味で黒を基調としたワンピースに金の縁取り。もしやと思いクロードは聞いた。
「これ、変身能力の結果か?」
やはりビクンッと震える、怖がらなくてもいいじゃないか…と少し寂しい気持ちになる。
「ああ、そうなんだよ…まぁ、色々あってさ。取り敢えず視界に入ったもので練習させたらドッペルゲンガーの女の子が珍しく素のまま歩いてて、あとワーキャットを見たら…っていってたな」
なぜここまでその状態で連れてきたのだろう…。その疑問は続く言葉で明らかになった。
「んでこんなんじゃ使いたいとき使えないってんで度胸つけるためにつれ回したんだけどさ、これがまた露出プレイみたいなドキドキ感があるとか言い出しちゃうのよこいつ!」
どんどんとうち新人が怪しい方向に…。そう思いながらライラの方を見やると顔を真っ赤にして俯き、小刻みにプルプル震えている。
「…!!?言わないでって…言ったのにぃ…も、う、インプに戻るよ…?えい…!」
その声と共に体の変化が起きた、決して光るわけでも煙が出るわけでもないのだな。と少し感心してしまった。
「もぉーご主人のばかぁー!!言わないって言ったじゃないさ!!」
「はっはっは、すまんないぢめてオーラが見えたもんでつい…な!」
そうしていつものじゃれ合い、まだそう彼らが所属してから日はたってないはずだがこれが日常として浸透しつつある、他者に影響を強く及ぼす面白い二人組だ、とクロードは評価した。
「さて、あとはナユタか」
遅刻ではないがこう早めに皆が揃ってしまうと遅く感じるものだ。
ガチャ 扉が開く、あっけらかんと笑って那由多は来た。
「いやぁー遅れました、すんません」
ふっと笑ってクロードが話し出す。
「よし、揃ったな?では出発前に依頼内容と作戦を話す」
本格的に始まった調査依頼に一同に緊張が走る。
「今回の依頼、依頼主は魔王軍トップのリリー·クライン。内容は第三勢力らしきものの勢力調査だ」
クロードが皆を見渡す
「砂漠の地グラザリルにて調査をする。規模、活動内容、出来れば戦力まで調査がしたい。」
「はいはーい、マスター質問いい?」
「ん、どうした」
確認を取り、頷いてヴェルエは話始めた。
「今回の勢力、正体不明なんでしょ?戦力調査も兼ねて襲ってきたら撃退しちゃって良いよね?」
ヴェルエはこの前の一件もあって警戒しているようだ。それを解っていたのかクロードは大きく頷いた。
「ああ、その為の俺だ。ソコについては向こうで二手に分かれる事を考えている。」
勿論場合に依りけりだが、と付け加える。
「オッケー、わかった。じゃ私からは以上ね」
それを聞いてクロードが見渡す。
「他に何かあるやつはいるか?」
皆なにもないようで、真剣にギルドマスタークロードを見る。
「無いみたいだな、よし。じゃあもう少し詳しく決めておくか。俺はヴェルエと動く。」
「アタシはご主人と動くよ、譲らないから!」
ん、とクロードが頷く。問題は…
「あー、んー、むぅーどーすりゃいいんですかねあたしゃ」
那由多だ、ハッキリしない。戦力も不明であるため皆どちらに加えるか考えたが。
「うし、あたしゃマスターに着くよ、宜しくねマスター」
「よし、お前の働き見せてもらうぞ。」
那由多がはぁーいと気合いのない返事をしてライラがきゅっと俺の手を握る。可愛い。
話が纏まってきたらしいし、ふと窓から外をみる。空は茜色、もう夕方じゃねぇかよ…。
ーーー続くと思って間違いない。
14/03/12 15:43更新 / キムカヤ
戻る
次へ