結
地面に敷かれた舌の上に体中から体液を垂れ流しながら気絶している全裸の少女と、その後方で舌に繋がる傘を持ち、抜き身の脇差を片手にこちらも真っ裸で陰茎を勃起させている男。
そんな二人を涙の跡が残る顔で眺めている穂積に対して、盛一郎は何も言えなかった。
何かを説明しなければまずいと思うのだが、少女が気絶している状態では何を言ったところで暴漢の言い訳にしか聞こえない。
なんとも気まずい空気が流れる。
やがて、穂積は手を打ち合わせて立ち上がった。
「盛一郎様、そちらの傘をお貸しください」
「ん、んむ」
盛一郎は手を差し出す穂積に素直に傘を渡した。
穂積は傘を確認すると、少女と傘を見比べて一つ頷いた。
「目覚めたのですね……」
「穂積殿?」
盛一郎の伺うような問いかけに、穂積は笑みで傘布の目が開いていた部分を指でなぞった。
すると、舌が傘の中に収まっていく。
穂積は舌から落ちる前に少女を抱き上げると、使い慣れた道具を扱うような自然な動作で舌を収めた傘を頭に被った。
穂積は盛一郎を見ると、少し目を逸らし気味に、
「せ、盛一郎様も、その……お召し物を……」
彼女の視線が舌に脱がされて放り出されていた盛一郎の服を示した。
「あ、ああ……」
盛一郎が黙って落ちている服を拾おうとすると、彼の目の前で穂積に抱えられた少女の股から交わった証が地面に落ちた。
思わず盛一郎が動きを止めると、「あるじさまぁ……」と少女が甘い声で呟く。
盛一郎の全身に冷や汗が湧いた。
そんな彼に、穂積が気遣うような声で言う。
「それでは、ええと、私はこの子を湯に入れてまいりますので、その間にお召し物を着ておいてくださいね」
穂積は少女を抱いて、家の中に入った。
●
穂積は川から水を引き入れ、妖力で釜を起動させると、少女を椅子に座らせた。
少女からは盛一郎の精の匂いがするが、体には吐き出されたはずの彼の精の跡は見えない。
よく視てみると、生まれたばかりのためか、あるいはあの妖刀化した脇差のためなのか、少女の内部の妖力が漏れ出した形跡がある。それを埋めるために彼の精を即座に吸収したのだろう。
(……残念)
彼の精の気配を辿るように下腹から胸を掌で撫で回していると、ほどなく湯が湧いた。
「いきますよー」
桶で湯をかけると、少女の肩が震えた。
どうやら目を覚ましたようだ。
少女は慌てたように周囲を見回して、傘を被った穂積と一瞬視線を合わせた。
しかしすぐに視線を離すと、どこかに見落としがないか確認するように忙しなく目を彷徨わせて不安そうに零す。
「え、あ……あれ? あるじ様?」
「申し訳ございませんが、盛一郎様には今、お召し物を着てもらっています」
「メギツネ様……」
警戒気味な少女に、穂積は自身の眉尻が下がるのを自覚する。
「ええ、女狐ですよ。
覚えておりますか? あなたは結界が破られて気絶したまま外に放り出されてしまったのですよ? こちらの傘の舌が敷物になってくれていたようですが、それでも汚れてしまっているかもしれませんからね、一度湯殿でさっぱりしていただこうと思ったのです。ご自分で体は洗えますか?」
「……だいじょうぶ」
「良い子ですね」
糠袋を差し出すと、少女はそれを受け取って体を洗い始めた。
無言で体を洗う少女を眺めながら、穂積は被っていた傘の、地面に落ちて土が付いてしまった部分を洗い始めた。
少女がぴくりと反応して、だが特に文句を言うでもなく体を洗う動きを続ける。
穂積が傘を撫で洗っていると、少女が小さく呟いた。
「……あるじ様のせいえき、出てきませぬ」
「盛一郎様は結界を破るために少し無茶をしておられたようですので、その際に漏れ出てしまった妖力を補うためにあなたの体が急いで精を取り込んだのではないかと思いますよ」
「そうなのですか」
ほへえ、と分かったような分からなかったような反応を返すと、結界の中でのことを思い出したのか、少女は頬を染めた。
「たしかに、はげしくつかっていただきました……」
「参考までに訊ねたいのですが、どのように使っていただいたのでしょうか?」
少女はもじもじと股をこすりながら、
「この身のしたべろと、直しておりました刀で大きくなったモノに初めてをささげて、また、その後にかたなで、おしりをくじられてしまいました……」
(まあ、大胆……)
少女が恍惚として語る内容に、感心とも呆れともつかない感想を抱きながら、盛一郎が結界から抜け出すことができたのは少女が生まれたばかりで妖力が足りなかったのではなく、やはりあの妖刀化した脇差が利いたのだと穂積は納得した。
それはきっと、少女が与える快楽の誘惑に耐えながらのことであり、盛一郎の中での穂積の存在は快楽に塗りつぶされるものではないと判断してもいいのだろう。
そのことを理解すると、雌としての自分が喜びに尾を振ってしまう。
(こんな小さな娘に……盛一郎様、ケダモノですね)
非難めいた言葉すら、彼の野性味に惚れ直した蕩けた声音になる。
にやけた顔で傘を洗っていると、穂積が無言になったことに不安を感じたのか、少女が訊ねた。
「メギツネ様はおこっておられますか?」
言われた言葉に、穂積はにやけた顔を収めるために一瞬間を置いた。
「逆……ですね」
「ぎゃく?」
「ええ、私は、盛一郎様に会った時に、あの方が持っていた傘が付喪神化しかかっていたことは気付いておりました。付喪神化したらその娘は盛一郎様を愛する娘になるということにも……それでも、私は盛一郎様を手放すことができなかったのです」
だから、
「あなたから盛一郎様をとってしまったのは私。怒りを向けられるべきは私の方なのです」
今更の罪の告白のような謝罪に、少女は振り向いた。
「それでも、メギツネ様はこの身が目覚めるのを助けてくれておりました。ようきを流してくださいました」
「覚えているのですね」
盛一郎が持つ傘が付喪神化しかかっていることに気付いた穂積は、生まれかかっている命の芽を放っておくことができずに、盛一郎とのまぐわいで生まれた余剰分の精に傘が浴することができるようにしていた。
命が宿る以前のことだ。認識できているとは思わなかったのだが、少女はしっかりと覚えているらしく、傘布を見上げて、
「そのおかげでこの身は早くに目覚めることができ、あるじ様とことばを交わすことができるようになりました。だというのに、おん知らずにもこの身はあるじ様をとじこめてしまおうとしておりました。あれほど好き合っておられたところを引きはなされるメギツネ様こそ、おこるべきなのです」
「主を奪われたことに対しての反応ですもの、あなたには理があります。それに――ええ、盛一郎様の初めてを奪ってしまったということもありますから、嫉妬の気も分かるのです」
「……それはたしかに口惜しゅうございます」
お互いに非は無いと言い合っていた二人だが、ここで初めて少女から怒り、というよりも嫉妬の感情が漏れ出た。
それを受け止めながら、穂積は傘布を洗い終わる。
「今日出かける前に見た時には、ところどころ傷んでいたようでしたけれど、綺麗になっていますね」
「あるじ様につかっていただくためにこの身はととのえておきたいのです」
「折れてしまった刃も見事に打ち直されておりましたね」
傘についてもそうだが、ほとんど作り直しに近い状態での修復がなされている。
脇差の刃が妖刀のそれに変質していることから彼女の体の一部として代謝されたのだろう。
「はい、あるじ様もよろこんでくださいました」
誇らしげに言う彼女は、しかし直後に眉尻を下げた。
「あるじ様に捨てられてしまうこの身の、さいごのほうこうでございます……」
「捨てる……あなたをですか?」
「はい。あるじ様はそうおっしゃっておりました。
だから、この身は捨てられてしまう前に、まだ使えるものなのだと伝えようとしたのですが、あるじ様にこの身のつかい方を伝えているうちに、あるじ様がこの身を捨てることができないように閉じ込めてしまおうなどと、そんなよこしまなかんがえを抱いてしまったのです」
「でも、これだけ身綺麗にしているなら、盛一郎様も、あなたを捨てようなどとは思わないのではないのですか?」
穂積が言うと、少女はかぶりを振り、
「この身はわるい子です。あるじ様のショユウブツの身でふそんなことをかんがえ、恩人を一人仲間はずれにしようとしました。そんな身は捨てられてもしようがないのです」
「大好きな主の精を受けたのです。離れたくないと、離したくないと思ってしまうのは仕方のないことですよ。
そうですね、盛一郎様を結界に囲ってしまったということについては、あなたの主様を先に奪ってしまったということで手打ちとしましょう」
軽く手を打つと、穂積は「ですが……」と続ける。
「盛一郎様があなたを捨てるというのは、何かの間違いではないかと思いますよ」
盛一郎との会話で穂積が聞いた限りでは、替えると言っていたのは脇差だったはずだ。それをこの娘は聞き違えたのではないだろうか。
(そうでなくとも、盛一郎様なら、慕ってくれる行き場の無い娘を外に放り出すということはないでしょう)
「でも! この身は聞いたのです! 聞いて、しまったのです……!」
叫ぶ少女の目から涙が溢れる。
見ていられなくなった穂積は、では、と提案した。
「一緒に盛一郎様に訊いてみましょうか?」
「……え?」
顔を上げた少女に穂積は続ける。
「それで、もしあなたのことを捨てると盛一郎様が本当におっしゃるのでしたら、その時はあなたを置いてくれるよう、私からもお願いしましょう。あの方は困った者を見捨てるような方ではございません。きっと大丈夫ですよ」
そう言うと、少女が問いかけた。
「どうして、メギツネ様はそんなに優しくしてくださるのですか?」
穂積は「そうですねえ」と呟き、
「妖力を切ることができる妖刀が自らの弱点になると知っていながら、あなたは主の愛用の品を直したのです。そのような主思いの子が泣いているとあっては手を差し伸べずにはいられません」
少女は、涙をこぼしながら頭を下げた。
「メギツネ、様っ……もうしわけ、ございませんでした……っ」
「泣き虫さんですね」
本格的に泣き出した少女の頭を撫でながら、穂積は少女を抱きしめた。
「いいんですよ。さあ、暖まりましょう」
一緒にお風呂に入った穂積は、対面に座って泣き腫らした目を擦る少女に笑み混じりに言った。
「盛一郎様を閉じ込めてしまったことについてですけども、たしかに一緒に閉じこもっている時には気が気ではなかったのですけれど、こうして無事に出てきてみるとあなたは盛一郎様と私の子のようなものなので、ふふ、反抗期というのですか? それを見たようで少し嬉しいのです」
つい泣いてしまっていたことについては彼女も気絶していたので言わなければ悟られることはないだろう。
その件については後で盛一郎に慰めてもらおうと思っていると、こちらを見上げる少女が言った。
「わたし、メギツネ様のこども、ちがう」
「ええ、分かっておりますよ。一緒に盛一郎様に愛される同士ですものね」
「そう。それに、わたしの方があるじ様とは長いつき合い。一緒に旅をした仲でございますもの」
「それは、悔しいですが勝てませんね」
少女の自慢げな言葉に、穂積は負けを認めた。彼の信奉者第一号は彼女だろう。
「ですが、先に生まれたのはメギツネ様。先にあるじ様とまぐわったのもメギツネ様でございます。ですから、メギツネ様。おねえ様と呼んでもよいですか?」
思わず耳が立つ。その呼ばれ方は胸に迫るものがあった。
(短い間に、家族が増えていきますね)
浮かんでくる笑みを被った傘の下に隠して、穂積は頷いた。
「そうですね、女狐よりはそちらの方が心地よいですね」
「では、ホヅミおねえ様」
「はい?」
少女は両手を突き出して言った。
「おっぱいをさわらせていただきとうございます。あるじ様、いつも幸せそうでしたので、どんな感じなのか、たしかめとうございます!」
結界の中で何かあったのか、その目は真剣そのものだ。
「んー仕方ないですねえ。しばらくは盛一郎様専用としたかったのですけれど、可愛い妹の言うことですものね」
そう言って穂積は興味津々な少女に胸を開いた。
●
一人外に残された盛一郎は、服を手にしたまま動けずにいた。
家からは湯を流す音が聞こえてくる。争い合うような音が聞こえてこないことが幸いだ。
穂積は少女がどういった存在なのかをある程度理解している様子だった。
その点でいえば、少女が盛一郎に犯されていたことに対する理解も得やすいだろうとは思うが、何事もなかったかのように家に戻るのは、とてもではないができはしない。
(あの傘についての理解を得られても、見られた状況がよくない)
あまりにも場面が決定的すぎて、不貞と断じられ一方的に審判を下されても文句は言えない。
(申し開きはさせてもらえるだろうか?)
彼女を泣かせた分際で何を都合のいいことを、と内心で吐き捨て、盛一郎は井戸に向かった。
水を浴びて体を冷やすと心も落ち着きを取り戻してくる。
粘液や妖刀化した脇差でかなり正気を失っていたとはいえ、付喪神の少女を犯したのは確かに自分だ。言い訳は潔くないだろう。
どのような沙汰が下ったとしても、それを受け容れようと意志を固めた。
(山を追放されたら流石に堪えるだろうな)
まだ数日しか経っていないにもかかわらず、既に穂積が居る生活が自然なものとして感じられていた盛一郎はこれからを憂う。
付喪神の少女にしても、唆されるままに乱暴に扱ってしまった盛一郎に愛想を尽かしていないとも限らない。そうなればまた一人に逆戻りだ。
その情景は想像するだけで気分が沈む。
悪い方へ悪い方へと流れていく思考を切るために、もう一度水を浴びた盛一郎は思わず唸った。
彼は視線を股間にやる。
そこでは彼の逸物が威勢良く勃ち上がっていた。
付喪神の少女から分泌された粘液は井戸水で落としきったはずだが、一向に収まる様子がない。
(脇差を試してみたのがまずかったか)
刃を上にして立てかけてある脇差を見やる。
改めて見ても、素晴らしい刃だ。こんなに素晴らしく直してもらったところ悪いが、この脇差はこれまで通り使うのはやめた方がいいだろう。
「男に襲われでもしたら目も当てられん」
実際に使ったらどうなるのかは分からないが、欲情でもされたらたまらない。
その間にも自己主張に余念がない自身の逸物の姿に穂積に初めてされた時のことを思い出していると、彼女が呼ぶ声がした。
こんな状態で二人のもとに行くのはためらわれたが、それ以上に呼びかけを無視するというのもありえなかった。
家と刀と服と逸物を視線で一巡した末に、盛一郎は服を着込んで脇差を手にした。
精神的にも肉体的にも胸を張るわけにもいかず、前かがみになりながら家に入る。
声がする居間に行くと、ほとんど服としての用をなしていなかった布の代わりに露草色の着物を着せられた少女が、傘布部分を被った穂積に髪を梳られている。
二人はそっと家に入った盛一郎を認めるとそれぞれに含むところのなさそうな笑みを浮かべた。
「盛一郎様」
「あるじ様」
湯殿ではいったいどのような話をしていたのだろうか、二人の仲はかなり良好に見えた。
「体は大事ないか?」
土間から少女に問いかけると、彼女は声をかけてもらうことだけでも嬉しいとばかりに弾んだ声で、
「はい、この身はらんぼうにあつかってもこわれないのです」
欲望に任せた力ずくの行為の後のことなので嫌われてはいないかと心配したのだが、なんとか大丈夫なようだ。
ほっとした盛一郎だが、少女の目が脇差に向けられているのを見て、やはり警戒されているのかと顔を固まらせる。
「いや、鞘に当たる部分がなく、抜き身のままで持ってきてしまってな」
事実であるのだが、どうしても言い訳のように聞こえてしまう。
その言葉を聞いた少女は、おもむろに立ち上がって背を向けた。
そのまま膝を着くと尻を上げ、更に着物をまくり上げて、盛一郎に破壊される勢いで抉られた肛門を晒した。
肉が薄いせいで割り開かなくても見えるすぼまりは、少女の言通り、幸いにもきゅっと締まっていた。
突然の行動に盛一郎が何も言えないでいると、少女が告げる。
「あるじ様、こちらにおしまいください」
「何?!」
少女の発言に盛一郎は思わず脇差と少女を見比べた。
刃が肉を切らないことは知っているし、何故か少女の体に貫通するはずの刃が全て収まったことも覚えている。とはいえ、欲情に煽られた行為の最中ですら突き込むことをためらうそれを、さあ刺してくれと言われてもやはり戸惑いが先に立つ。
「付喪神化した娘ですからね。盛一郎様が付属品を片付ける場所がないと困っているのならばそれを収める場所を示すのは当然ですよ」
穂積が補足し、彼女の言う通りだとでも言うように、少女の尻が頷く。
どうやらここはそうするのが正しいらしい。
盛一郎は二人がこちらを注目しているのを意識しながら居間に上がり、手にした脇差の切っ先を少女の尻に向けた。
先端がすぼまりに触れた瞬間、少女がぴくりと反応する。
穂積がしげしげと見つめている視線を感じながら、盛一郎は今度こそ最後までゆっくりと、間違いがあって少女を傷つけてしまうことがないように納刀する。
「んんん……っ!」
少女が悩ましげな声を上げている。
元々少女の尻の中にあったはずの刃だが、肉体を得た以上は反応してしまうらしい。
当然のように刃を全て呑み込んだ少女のすぼまりは、脇差の柄を少し潜り込ませた辺りできゅっと締めつけを行いそれ以上の挿入をやんわりと押しとどめた。
どうやら柄の部分までは妖刀化しているわけではないらしい。
長く息を吐いて落ち着く少女の頭を穂積が尻尾を載せた膝の上に抱き寄せた。
「ホヅミおねえ様……」
ほっとしたような顔で少女が顔を擦り付ける。
「とても仲が良好なようで喜ばしいのだが、なにゆえ二人はこんなに仲睦まじくなったのだ?」
初対面の状況から考えれば、むしろ関係は最悪に近いものになるのではないかと思っていたし、結界の中で少女は穂積のことを女狐などと呼んでいたので、少なくとも少女の方は敵意を持っていると考えていたのだが、大人しく髪を梳られていたり膝に埋もれて寛いでいる様子を見た限りでは、少女も随分と懐いているようだ。
「湯に浸かりながら、いろいろとお話をしたのですよ」
「ん、メギツネ様はオカミ様がおっしゃっておられたような、おかたくてこわいイナリとはちがったのです。それに、あるじ様がおゆるしくださるのなら、この身はおねえ様ともかぞくになりとうございます。だから、おねえ様なのでございます」
「……彼の種族は私に障りますね」
「なんというか、すまないな。うちの女将も悪気は……悪戯心程度しかないと思うのだ」
「そうなのでしょうね……それが刺さるから困りものなのですが」
穂積はそう言って盛一郎に頭を下げた。
「申し訳ございません盛一郎様。付喪神化がもう少しで成ると、事前に伝えておけば、こうまで混乱することはなかったかもしれません」
「その言い方だと、穂積殿は付喪神化に感づいていたということか?」
「はい。正直に申し上げますと、盛一郎様にお会いしたその日に気付いておりました。
目覚めるその娘が主に対してどのような感情を抱くのかを知っていながら、私は盛一郎様を諦めることができなかったのです。かと言って、生まれかけている命の芽を摘んだり放置するわけにもいかず、盛一郎様に伝えるにも、付喪神がするはずだったかもしれない初めてを奪ってしまったということも伝えなければならないため、お恥ずかしながらためらいが出てしまいました」
「ホヅミおねえ様はねやにあふれるようきにこの身がひたれるよう計らってくださいました」
身を起こした少女の補足に、穂積は彼女の頭に傘布をそっと被せ、
「いつか目覚める。そしてそれはそう遠い話ではない。それは分かっていたので、その時が来る前に盛一郎様に伝えようと思っていたのですが、その……思ったよりも早く目覚めてしまいまして、結局伝えることができませんでした」
「あるじ様とホヅミおねえ様はとてもあいし合っておりましたから、ようりょくがあふれてこの身も早く目がさめてしまったのです」
「私が出かけている間に彼女が目を覚めて、戻って来た時には盛一郎様は結界に取り込まれておりました。解除しようとしたのですが、結界はとても固くて破ることはできませんでした」
そう言って穂積は自嘲気味に笑った。
「付喪神化する程に想いを溜め込んだ器物なのです。そんな彼女から扱われる機会を奪ってしまっていたのですから、もう二度と盛一郎様に合わせる気がないのかもしれないと……ええ、私の勝手を咎められた気分でした」
穂積は何かを振り切るように首を振った。
「戻って来てくださって、嬉しいです。もちろんあなたも、来てくださって嬉しいです」
「戻るのに時間がかかってしまったのが面目ない」
「盛一郎様がご自身の意思で戻って来てくださったことが嬉しいのですよ」
穂積は胸に手を当てた。
「山や町、人間との関係を自分から遠ざけていた私を動かそうとしてくださったのは盛一郎様です。もし、居なくなってしまったら、まだ関係を作り直す途中だった私は、きっと閉じ籠って、いつかこの娘が私に情けをかけてくれる時を待っていたはずです。
それだけ、盛一郎様は私にとって必要不可欠で、それはこの娘も同じなんですよ」
「はい、この身にとってもあるじ様はなくてはならないそんざいでございます」
そう言っては機嫌良く頷き合う義姉妹を眺めながら、どうも覚悟していたのとは別の所に話が進んでいることを盛一郎は悟った。
「ああ……すまない。穂積殿は、俺の不貞を責めないの、か?」
穂積は盛一郎を見て、少女とまた目を合わせた。
「……事情を知ってしまっておりますからね。
雌の本気がぶつけられたのですから、それに寵愛をもって報いるのも殿方の甲斐性ではないでしょうか。
それに、盛一郎様は最後には私のもとへと戻ってきてくださいました。
で、あるならば、私に糾弾の言葉はありません。――ああ、ですが」
穂積は少女の肩を叩いた。
「ホヅミおねえ様、この身はこわいのです」
「あなたの主様を信じてください」
「……はい」
盛一郎には分からないやり取りの後、少女は傘布を横に置いて座礼した。
「あるじ様。どうかこの身を捨てないでくださいませ。さきほどのまぐわいで満足いただけなかったのなら、これからももっとしゅうれんをつんで、ごきたいにそえるようになりますゆえ! どうか、どうか……!」
畳に頭を擦り付けるような勢いで頭を下げる少女に、盛一郎は待て待て、と手を立てた。
「お前が俺を結界に捕らえた時にも言ったが、俺はお前を捨てる気など微塵もない。あれは折れた脇差を取り替えようとしただけで、お前はそれを取り違えたのだ」
結界の中で何度言っても聞き入れてもらえなかったことだが、正気に戻ったせいか、少女はキョトンとした顔で盛一郎の言葉を口の中で繰り返した。
「ね? 言った通りでしょう?」
穂積が少女に言う。言葉からすると、湯の中でも何らかの説得が行われたのだろう。よくできた人で本当に助かる。
少女は何度も頷くと、顔を上げ、
「で、では、この身はあるじ様の物のままでよいのですね?」
「当然だ。むしろないと雨の日など、相当困ったことになる」
畳に水滴が落ちた。
「ああ……! この身は、この身はしあわせでございまする!」
少女が泣いて深々と頭を下げた。
生まれたばかりで頼るものもなく、自分のことを支えてくれるはずの持ち主は自分を捨てると言う。そんな状態で少女はずっと不安だったのだろう。
結界の中にあった時。根気よく説得を続けていたら、もっと早く少女を安心させることができたのかもしれない。
欲望に流された自分が情けなく、盛一郎は少女に対して膝をついて頭を下げた。
「すまない。お前が付喪神になろうとしていることに気づかず、目覚めたばかりで不安だったお前を安心させることができなかった不出来な俺を許して欲しい。
そして、愛想を尽かせていなかったのなら、是非、俺のもとにあってくれないか」
慌てて身動きする音が聞こえて、肩が叩かれた。
盛一郎が顔を上げると、穂積が柔らかな笑みで少女を示す。少女は首を振りながら、
「この身があるじ様をゆるすなど、たちばがちがいまする。
ながくしたっておりました。この身はそばに置いてもらうことをあるじ様にゆるしていただければ、それだけで幸せなのでございます……!」
そう言って涙を溢れさせる。
「ご立派です盛一郎様」
穂積はそう言うと「では改めまして」と少女の肩を抱いた。
「同好の士として、家族として、よろしくお願いしますね」
「よろしくお願いします、ホヅミおねえ様、あるじ様」
「同好の士?」
「ええ、盛一郎様に心酔した、同士なのです」
いきなりな言われように、盛一郎は咳払いした。
「あまり持ち上げないでくれ。そんなにいいものではない」
穂積が半目を向けた。
「……盛一郎様はご自身がどれだけ魅力的なのかを理解していただかなくてはなりませんね」
少女が頷くにつけ、盛一郎は言う。
「まあ、なんだ。これからも酷使することになるだろうが、よろしく頼む。もし何かあったら言ってくれ。直すよう努力する――ああ、泣くな、泣かないでくれ」
「ですが……この身はもう、たまりませぬ……!」
酷使という言葉を聞いて感極まった少女が泣くのにどう対応したものかと困った盛一郎が穂積に救いを求める視線をやると、彼女は両手を握って、
「なく子には勝てませんね、頑張ってください」
困った。
穂積へのとりなしは改めてするとして、ひとまず少女を落ち着かせようと声をかけようとした盛一郎はふと気付いた。
「あ、あー、すまない。君の名前はなんだったか?」
あれだけのことをしておいて名前を知らないというのも随分と業が深いと思いながら訊く盛一郎に、少女は首を左右に振って、
「この身に名前はございません」
「ないのか?」
「これまで名をよんでくださったことが無かったではありませんか」
不満そうに言われると、確かに呼んだことはないなと盛一郎は頷く。
(道具に名をつける性質ではないからなあ……。彼女も生まれたばかりなのだから、誰かが名を付けねばならないのは道理か)
赤子として生まれるのではなく、ある程度成長した状態で付喪神に化生したせいで、つい彼女が生まれたばかりの存在なのだということを失念してしまう。
これから一緒に暮らすにあたって名がないというのは不便だ。
「では、名前を決めるとするか。何か望む名があれば言ってくれれば」
「あるじ様がつける名でしたらこの身はなんでもよろこんで名乗りまする」
少女はどことなく期待するような眼差しを盛一郎に注いでいる。穂積も成り行きを見守る構えのようだ。
(あわよくば皆で考えようと思ったのだが……)
どうやら盛一郎一人で考えるしかないらしい。
諦めて無い知恵を働かせてみる。
あの仕込傘は、元は唐傘を絡繰り仕込みに改造したものだ。なので、
「どうだろう。唐傘の唐の字を字音で読んでとう≠ニいうのは」
いささか安直に過ぎるきらいがあるが、人間はおろか、家畜の名付けすらしたことがない盛一郎だ。どんなに悩んだところではじめに頭に浮かんだこの名と大差ない名前しか付けられないだろう。
もしこれが不評なら穂積に名付けを任せてしまおうと思いながら少女に提案すると、少女の表情ががらりと変わった。
「ありがとうございます! とうはこの名をきざんでこの身がくち果てるまでそばに居させていただきます」
「そうか、気に入ってくれたか」
内心胸を撫で下ろした盛一郎だが、今や輝くような笑みを浮かべながら目から涙を溢れさせるとうに対してやはりどうしたらいいのか分からずに狼狽する。
見かねたのか、穂積が少女を抱き、
「では、とう。これからよろしくお願いしますね」
「おねがい、します……っ」
穂積の胸でゆっくりと落ち着いていくとうを見ていると、穂積が視線を向けてきた。
「盛一郎様は、また後で抱きしめて差し上げますからね」
「ん、ああ。すまな……い?」
「いいえ――それで、ですね」
とうを抱いたまま、穂積が視線を向ける。
「盛一郎様、この娘以外に慕われている娘は居りませんか?」
何も威圧的な部分が含まれていないはずの問いかけに、盛一郎は決まっているはずの答えを返そうとして、何故か言葉を詰まらせた。
改めて記憶を掘り起こし、
「ああ、ないとも。大丈夫だ」
自信を持った回答に、とうがぽそりと言う。
「あるじ様、とうのこと、きづいておりませんでした……」
「……何かあっても自覚は、ない」
穂積も「ああ……」と零して何も言わなかった。
(女心とは、げに恐ろしい……)
盛一郎がしみじみと思っていると、穂積が「心に留めておいてください」と前置きして言う。
「今の盛一郎様でしたら私達の匂いが付いておりますので好意を持たれても肉体関係まではなかなか進まないかもしれませんが、本気の娘は別ですからね。そういう娘が現れた際はせめて一言、お伝えください。
ゆくゆくは化生することが分かっていたとう相手ですら、私は心構えができておらずに取り乱してしまいました。次があるなら、その際にはこじれることがないようにしたいのです。それに、この家だって広くしなければいけないかもしれませんので」
「う、うむ、承知した」
「もしそうなったら、その時はその時ですね」
「かぞくがふえるのでしたらきっと楽しいですよ。おねえ様」
「そうですね。その時を楽しみに待ちましょうか」
「いや、そんなに愛想を振りまくつもりは無いぞ。家族が増えるならお前達との間の子ぐらいだ」
盛一郎の言葉には優しい笑みが二人分返ってきた。
無言の内に盛一郎が何も言うことができない空気を感じて窮していると、話題を打ち切るように穂積が柏手を一つ打った。
「さて、それでは新たな家族を迎えたことですし、盛一郎様。皆で家族としての契を結びませんか?」
●
穂積に言われたことを盛一郎は吟味した。
たしかに、盛一郎たちは家族として一緒に暮らそうとしているが、つい数日前までは交流もなかったのだ。何かしらの儀礼を行って改めて共に暮らすことを誓い合うというのもいいだろう。
「妙案だ。では三人でこれから暮らすための誓いを立てよう。何か準備するものは?」
穂積は含み笑いで応じた。
「何をおっしゃるのですか盛一郎様。準備はもう既に整っておいでではありませんか」
盛一郎がわけが分からず首を傾げると、とうが察したように歓声を上げた。
「ちぎるのですね……!」
「……何だって?」
盛一郎だけが付いていけずにいると、穂積がとうの肩に手を置いた。
「二人一緒に抱いていただくのです」
(そちらの契りか……)
納得と共に、盛一郎は二人の目に情欲を見た。彼が悟ったことに気付いたのか、穂積がどこかうっとりと言う。
「盛一郎様、先程からご立派なモノが猛りを鎮め切れておりませんよ」
股間に視線が向けられている。
元より、彼女達相手に勃起を隠すことは不可能だろうと覚悟をしていた。それを指摘されたところで恥を感じはしないが、だからといってこれ幸いと彼女達の案に二つ返事で乗ることは回復しつつある理性が躊躇わせた。
「とうは年端もいかない……年齢もそうだが、見た目だってまだ成熟したとは言えないだろう」
「あら、そんな年端のいかない子の初めてはもう散らされてしまっているようですが」
「ひとおもいにつらぬいていただきました」
からかうように、そしてどこか夢見るようにそれを言われると返しようがない。
そんなことまで話し合っているとは、妖怪の交流は素早い。
(切り替えよう)
盛一郎としても、勃ったまま身を慎もうという気のない逸物に困ってはいるし、彼女達が求めてくれるのならばそれを断る理由も無い。
とうにしても、彼女自身が犯してくれと言ってきているならばもはや何にも遠慮する必要はないだろう。
用意された答えに大して抵抗なく導かれた自分を自嘲しながら、盛一郎は二人ににじり寄った。
「では、共に暮らす我らの契を行おうと、思う」
「はい」
「とうはいつでもよいです、あるじ様」
簡単な宣言。その後は特に言葉が続くわけでもなかった。
元々盛一郎がそういう仰々しいのは苦手だ。
彼はまず、事の成り行きを見守っていてくれた穂積に手を重ねる。
「あまりいい言葉が出てこないが」
「言葉よりも盛一郎様のお体は皆で淫らに仲良く暮らしたいとおっしゃっておりますよ」
金瞳が細まって穂積の手がそっと盛一郎の股間を撫でる。
びくんと反応するそれを手が撫で回そうとするので、盛一郎は彼女の顔を引き寄せて口を吸った。
口の中に舌を入れて彼女の舌に触れると、穂積は手を股間から肩に回して舌の動きに応えた。
戯れるように穂積の舌が盛一郎の下面をつつき、盛一郎が逃れては彼女の歯茎をなぞる。
唾液を流し込み、それが嚥下されるのを確認して、盛一郎は口を離した。
一瞬だけ抱きしめる力が強くなるが、穂積もそっと盛一郎を開放する。
二人の口の間に唾液が糸を引いた。
それが切れて落ちるのを見ながら、盛一郎は手慰めに穂積の片尾をいじり、
「たしかに、淫らに仲良くしたくてたまらないようだ」
「存分にどうぞ」
上気した顔で言って、もう一方の尻尾を盛一郎の体に擦り付けながら、穂積がとうを呼ぶ。
「さあ、あなたも」
唇に手を添えて、傘の大きな一つ目と合わせて三つの目で二人をぼんやりと眺めていたとうが、肩を震わせる。
「へぁ?」
「あらあら、自分がされているところを想像しましたね?」
穂積は盛一郎に撫でられている尻尾をとうに回して引き寄せた。
「夢ではなく、本当にされましょう」
穂積の言葉を引き継ぐように、盛一郎はとうを膝に抱えた。
見上げてくるとうの両頬に手を添えて固定すると、盛一郎はその口を吸った。
「っ」
間髪入れずに口の中に舌を差し入れると、戸惑ったような声が漏れた。
結界の中で、とうが盛一郎の口を吸った際は、唇を押し付けるだけのものだった。
おそらく口吸いは舌を侵入させるものであるという認識がないのだろう。
盛一郎は差し入れた舌で、閉ざされたとうの歯の表面をなぞった。
(とうには舐められてばかりで、こちらから舐めることはそういえばなかったな)
初めての触れ方だ。
そのことに感慨を抱いていると、とうの歯が少し開いた。
好機、と舌を歯と歯の間に差し入れる。すると驚いたのか、とうの歯が閉じられて盛一郎の舌がその間に挟まれた。
盛一郎が舌を引く前に、とうの喉から慌てたうめき声が漏れて歯の動きが止まる。
詫びるように開かれた口腔に侵入した盛一郎は、とうの口内の味を確かめながら、舌の先がちぎれてはいないことを確認する。
とうの口の中は、穂積のものと若干違う、どこか塩っぽい味がした。
「んっ……、……っ」
口の中を味わっていると、なにやらとうが喋ろうとしているのが感じられる。
おそらく謝罪の類だろうと判断した盛一郎は気にせずにとうの小さな口の中を味わった。
その間も必死に何かを喋ろうとするとうの頭を固定していると、口の端から彼女の唾液が零れていった。
代わりとばかりに盛一郎が唾液を流し込むと、舌の奥の方で受け取ったとうは、大人しくそれを呑み込んだ。
こくん、と喉が動くのを音で感じて、盛一郎は口を離す。
唾液が繋がるのを眺めるのも惜しく、盛一郎はとうの口から溢れだした唾液を口端から頬へと舐め取っていった。
舌が肌を舐める感触にとうが身じろぎするのを感じながらおとがいまで舐め辿ると、とうの言葉がきた。
「あるじさまぁ」
「どうした?」
蕩けて呂律が怪しい声が必死に意思を伝えようとする。
「もうしわけ、ございませぬ。とうはおどろいてしまい、あるじさまのしたべろが……」
そこまで言われ、盛一郎は自分が舐め辿った跡に微かに血が滲んでいることに気が付いた。
歯が閉じられた時に少し舌を傷付けられていたのだろう。
血の量も大したことはないし、痛みも感じられない。大したことはないだろうとは思うが、謝ろうとするとうの声がまた泣きそうな気配を見せるので、盛一郎は咄嗟に穂積に舌を出して見せた。
「どうだ? 何かついているか?」
穂積に振れば巧く応じてくれるだろうという他力本願な思惑だったのだが、穂積は全て理解したように目元を細めると、自然な所作で距離を詰めて盛一郎の舌をぺろりと舐め上げた。
一度目は丁寧に、二度目は遊ぶように軽く舐められる舌の感触に盛一郎が背筋を震わせると、穂積は垂らされた舌の先端を唇で甘く噛んでからそっと離れた。
「いいえ、何も? ただ美味しい盛一郎様の舌があるだけですよ」
悪戯っぽく笑って耳を動かし舌をちろりと出す穂積。
どうやら血を舐め取ってくれたようだ。
盛一郎は自信満々にとうへと舌を見せて言ってやった。
「何もないだろう? まあ、大したことはないということだ。むしろ気にされる方がいきなり舌を入れた側としては参ってしまうのだがな」
傘布の一つ目が大きく開いて、舌が伸びた。
とうの顔の舐め跡をおとがいから口元へと辿ると、とうは頷いた。
「なんにもございませぬ。とうはただ、とうの使い方の一つをあるじ様の手で教えていただいただけでございます」
もう一度盛一郎の舌を心配そうに確認してから、少女は上気した顔でほぅ、と息をつき、
「あるじ様、かんろでございました。これがほんとうの口すいなのでございますね。とうはまだみじゅくでありました」
「これからいろいろ覚えていきましょう」
「はい、ぜひに」
そんな言葉を聞きながら、舌を入れるような口吸いが本当のなのかはなんとも言えないのではないかと盛一郎は内心で疑問する。
(穂積殿にされるまでは、俺もただ唇を当てるだけのものだと思っていたな……)
まだ自分も子供だったということだろう。
「あ、あら? とう? とう?」
穂積が確認するように問いかける声が聞こえ。
どうしたのかと見てみると、穂積がとうの肩を軽く叩いていた。
対するとうはというと、どこか虚ろな目で中空を見つめており、正気がどこかに飛んでいるように見受けられる。
「とう、具合でも悪いのか?」
「いえ、盛一郎様。これは……」
慌てる盛一郎に、穂積が安心させるようにゆっくりと言う。
「主様に愛してもらったことが嬉しかったのですよ。そのせいでしょうね、意識が半分夢の中に入ってしまっております」
とうが目覚めた際、行動は基本的に彼女が起こしていたことや、妖刀や粘液を刷り込んでの襲い襲われだったことを思い出す。
それでもとうは悦んでいたと思うし、とう自身に手荒に使われたいと求める傾向があるようだが、道具は長く大事に使われることもまた求めているはずだ。
結界の中では互いに対する不理解もあって、大事に扱うという考えが至らなかった。
こうしてとうの心が落ち着いて、家族としての契を結ぼうと行われた愛撫に彼女が悦び感じ入っている今、この健気な少女の処女を不安の中で奪ってしまったことが悔やまれた。
彼女を不安にさせたことに対する詫びや、ずっと使われ続け、またこれからも使われてくれる少女への労いとして、何かできることはないだろうかと考えて、一つ思いついてしまった。
(いやしかし……)
盛一郎は、頭の中に浮かんだそれに対して待ったをかける。
一人でそんなことをしていたのが目に付いたのか、穂積が首を傾げ、
「どうかなさいましたか?」
この察しの良さでは密通はできないと感じ、そもそも報告すれば浮気もやむなしというような発言を受けていたのだったと思い出す。
もちろん、この年になるまで女性とそういう関係になることがなかった盛一郎にはそのつもりはないし、そうならないだろうという自信もあった。
しかし、今回の一件でその辺りの信用は揺らいでいることだろう。
穂積にも気苦労をかけてしまった。
本人はいつかとうが付喪神化することは知っていたし、事件が起きることも覚悟していたようだが、だからと言って苦労が無くなるわけではないし、結界から出た直後、穂積は確かに泣いていたのだ。
それでも穂積はとうと良好な関係を、主である盛一郎よりも早く築いて、一緒に暮らそうと勧めてくれていた。
(穂積殿にも、何か返さねば)
そんなことを考えていたせいか、つい盛一郎は内心で待ったをかけたことを素直に話してしまった。
「とうに、捨てられるかもしれないという不安が一切無い中で、精を与えようと思ってな」
それを聞いたとうの瞳が焦点を結び、穂積と顔を見合わせる。
「体だけではなく、心もやる気になってくださいましたか。これもとうのおかげですね」
「あるじ様、とうはいつでもようございます」
淫靡に微笑む二人に、盛一郎は難しいことを考えるのをやめることにした。
穂積に目配せすると、彼女はそれだけで意図を汲んでとうの着衣に手をかけた。
「ホヅミおねえ様?」
「はい、では目をつむってください」
「はい……」
素直に目を閉じたとうから、一瞬で露草色の着衣が脱げる。
一瞬で全裸になったとうを見て唖然としていると、穂積が目で盛一郎の服の帯を示した。
放っておくとこちらも穂積の手で脱がされてしまいそうだったので、慌てて着物をはだける。
窮屈な思いをしていた逸物が耐えていた証の雫をこぼしながらその姿を晒した。
「さ、目を開いて」
穂積が促して目を開けたとうは、目の前に聳える盛一郎の逸物に目を瞠った。
盛一郎は逸物に釘付けになっているとうに最後の確認のつもりで問う。
「これからまぐわうことになるが、このように俺のモノは昂ぶっている。多少手荒なことになると思うが、良いか?」
とうの返事は陶酔した声で、
「どうぞ、あるじ様。おん身を鎮めるためにとうの体をお使いください……っ」
これからの交わりの予感に語尾が上がるとうに、盛一郎は少し困った顔で笑い、
「そうだな。この身を鎮めるため、でもあるが、家族としての契という意味もあるし、それになにより、これまでとこれからのお前にどうしたら報いることができるだろうかという、その答えでもある。その結果考えついたのが、まあこんな欲望と地続きのものですまないが――」
盛一郎は堂々と宣言した。
「これから俺の童貞をお前にやろうと思う」
妖怪達が「え?」と声を上げた。
その光景が、盛一郎には少し嬉しかった。
(ここしばらく、妖怪達に手玉に取られてばかりだったからな)
驚きを引き出すことができたのは少し溜飲が下がる思いだ。
「あ、あの……盛一郎様? 盛一郎様の初めては、僭越ながらこの私が頂戴しておりまして、あの、記憶が飛んでいたり、とか……」
これまで見せていた余裕が無くなり、不安そうに訊いてくる穂積に、盛一郎はこの手の意地悪はもうしないと心に誓った。
「穂積殿。大丈夫だ、覚えている。言い方が悪かったな。その、なんだ。そちらではないということでな」
「そちらではない、ですか……?」
盛一郎は、彼と穂積を交互に見ておろおろしていたとうの腰を掴んで体を回転させた。
数回に分けて半回転させたところで腰から手を離し、畳と尻の間に手を入れる。
とうの座り方は脇差を意識したもので、尻というよりも股で座る特殊なものだ。
(不便ではないだろうか)
「……もし、脇差が生活する上で邪魔なら言うように、家族が不便を感じるならば道具の持ち方を替える甲斐性くらいあるつもりだ」
「ありがとうございます。ですが、とうはこれでふべんを感じることはございませぬ」
そう返ってくることは予想していた。排便などはどうするのだろうと思いもするが、この少女はそもそも排泄を行うのかが謎だ。
(ここは信じようか)
妖怪の体ならばそう負担ではないと、そしてもし不具合があるならば相談してくれるだろうと信じることにして、盛一郎は片手で薄い尻を撫でつつ、もう片方の手で尻から突き出る脇差の柄を少し捻った。
「――――ッ」
とうの体が柄から逃れるように跳ねる。
その動きを補助するように尻を撫でていた手で小柄な体を押してやると、少女の体は膝を着いて尻を上げた、先程の納刀の姿勢になった。
斜め上に掲げられた尻から盛一郎は脇差を引き抜く。
「――――っ!」
柄の部分が少し尻穴に入っていたためか、抜刀されたとうの尻穴は皺を内側から少しめくりあがらせていた。
とうの荒い呼吸に会わせてひくつく尻穴の下で、秘裂から蜜が零れて畳に染みを作る。
脇差を畳に横たえながら、盛一郎は二人に向けて言った。
「俺はこれから、こちらの穴の童貞を失い、とうの処女をもらう」
未成熟な少女を全裸で跪かせ、その尻に向けて欲棒を挿入れるという宣言だ。正気の沙汰ではないが、この場ではこれ以上ないほどに正しい在り方だった。
その証拠に、彼の妻二人はこの宣言に熱が篭った息を吐き出している。
「なるほど、そういうことだったのですね。流石盛一郎様です」
「あ、あるじ様! とうはここにやいばをおさめておりましたが、いまだ未通ということでよろしいのでしょうか?」
「俺がそう言うのだ。問題ないだろう?」
「はい! はい!」
何度も頷きつつ、とうは開かなくても穴が見えているにもかかわらず、尻臀を両手で割り開いた。
「あるじ様、とうのこちらのはじめてを……どうぞうけとってください」
引っ張られて拡がった穴からは、ぬるりとした液体が溢れている。
「大事な道具にそんなに求められては応えねばな」
盛一郎はとうの尻穴の縁に指を添え、溢れた液体を縁の皺に塗り込むように揉み込んだ。
むずがるように尻が動き、心地よさそうなとうの声が聞こえる。
皺を伸ばそうと顔を近づけて熱心に揉み解していた盛一郎は、尻から湧き出す液体から匂いが漂ってこないことに気付いた。好奇心に導かれるままに指先についたそれを舐めてみると、少し塩のような味がする。
(塩気が有る穴の中に入れていても錆びないとは)
妖怪は摩訶不思議だ。
とうの尻が誘うように振られる。
盛一郎は舐めてとうの体液の代わりに唾液がついた指をとうの尻穴に予告なく挿入れた。
「あ、ぁぁ……ッ」
めくれていた尻穴が指の動きに巻き込まれて体内に戻る。とうは挿入した指をきつく締め付けて喜悦とも苦悶ともつかない声を上げた。
盛一郎は入り口付近で指を上下に回しては引き抜き、また指を、今度は二本潜りこませながら言う。
「これからも脇差を抜き差しすることがあると思うのだが、そのたびにこんなに感じてしまうのか?」
指二本を挿れられたとうは喉が潰れたような声を上げてこれまでよりも強く尻を締め上げる。
気を切る刀。
収めるべき場所であるためか、尻にただあるだけではそう効果は示さないようだが、抜き差しする時にはかなり感覚を刺激されるらしいことは数回のやりとりで分かっている。抜刀のたびにこう反応するのでは盛一郎の股間がたまらない。
これからの使い方はやはり一考する必要があると考えていると、慌ててとうが言う。
「やいば、はっ……あ、気を切る、ようとうなの……っで、うごかされるととうはあつくなってしまい……っ、まする。しかし、とうは……ぁん、元の、傘のすがたに……ん、も、へんじることができまする……っ! そうすればやいばではとうは……っ感じませぬっ……!」
道具としての使い勝手は変わらないと訴えてくるとうに、盛一郎はそうか、と応じる。
「そうなのです。ですが、あるじ様の手でやいばをくじられると、すごく、つかってもらっていると感ずるので、時折でいいので、その、このはした女につかってもらってもよいでしょうか……?」
「なかなかの好きモノだな」
「こうなるのはあるじ様のお手でだけでございまする。
あるじ様の精が、とうをたかぶらせるのです。たいせつにしていただきとうございます。ですが、つかってもらいたくもあるのです」
それは美術品の類ではなく、実用の品だからこその願いだろう。
「お前が望むならやるとも」
盛一郎の返事に対して、とうは笑顔で振り向き、
「あるじ様もお気が向きましたらやいばをご自身におつかいくださいませ、われらがしずまるまでおともしますゆえ」
二人のやり取りを、尻尾を抱いて体をもぞもぞ揺らしながら眺めていた穂積が頷く。
「ええ、いつでも、私達はお相手いたします」
妖怪達の好色な誘いは魅力的だ。盛一郎は頷き、目下、その刃のせいで猛ったままのモノが涎を垂らしながら求める先へと先端を押し付けた。
「っ……あつい」
とうがぼそりと漏らす。
井戸水でも冷めない猛りだ。もはや吐き出して鎮めるしかないそれを、盛一郎はすぼまりの中へ挿入れた。
にち、と小さな音を立てて先端が潜り込んだ途端、盛一郎は少し強い力で押し出された。
「ああ……っ、もうしわけございませぬ体がかってにぃ」
「辛ければやめておくか?」
秘裂も小さく、逸物を挿れきるのに苦労したのだ。無理はするものではないだろう。
「いいえ、とうの初めても、あるじ様の初めても、ここで、おねえ様に見てもらいながら、ちらせとうございます」
更にぐいと尻を開くとう。
止まる気のない姿を受けて、盛一郎は逸物に手を添え、もう一度少女の後孔に狙いを定めた。
元々出すためにあるその穴へ、盛一郎は今度は押し出されないように力ずくで入り込む。
うめき声と共に入り口が締まってカリ首の辺りに痛みに近い快感が走る。
盛一郎が快感に震えるのと同時にとうも絞り出すように苦しそうな息を吐き出すが、尻を開く手は相変わらず自ら尻を裂いてしまわんばかりだ。
とうの意思では制御できないのか、尚も逸物を押し返そうとする尻に逸物をねじ込んでいくと、穂積が助言した。
「とう、ゆっくりと息を吐いて」
「ぁ! あ、はっ……――――」
言われた通り、とうが喉から小さく音を交えながら細く長く息を吐き出すと、その入り口の締まりがゆるくなった。
突然の変化に、ねじ込まれようとしていた盛一郎の逸物は、尻穴から湧いていた体液の働きもあってカリ首から根本までを一気に収めることになった。
「ぁぁあああアア――ッ!」
割れた声でとうが叫び、緩められていた入り口がまた締まり、逸物の根本が捻じ切れるのではないかというほど絞められた。
「はー……。はー……」
尻を割り開いていた手も倒して顔を畳に押し付けたとうは、声を零しながら荒い呼吸を繰り返す。
それがあまりに激しいので盛一郎が声をかけようとすると、入り口から先が少しずつ緩くなっていくことに気付いた。
十も数える頃には入り口こそまだ固く締め付けられてはいるものの、そこから先は少女の秘裂の中よりは余裕を持って逸物を包み込んでいた。
とうの呼吸にも声が混ざらなくなり、ペースも落ち着いたものになりつつあった。
呼吸に会わせて少女の直腸が締め付けては緩む感触に、盛一郎は快感を感じる。
動かないように意識してとうが落ち着くのを待っていると、少女は一際長く息を吐き、
「入りました。あるじ様のせいを感じまする」
そう言いながら、意識してか無意識にか、尻を振った。
「ん、ふぅ……っ」
直腸の襞の感触を得ながら、誠一郎はとうの声が快楽を感じるものに変わっていることに気付く。
とうが気持ちよくなっていることに安心して、盛一郎は逸物を半ばまで引き抜き、腰を尻に打ち付けた。
とうの反応を確かめながら数回それを繰り返すと、少しずつとうの感じ方が分かってきた。
盛一郎が逸物を奥に押し込んでいくと、入り口がキツく締まって体内に埋まっていく異物を押し出そうとする力を感じ、抜くと押し出しの力に乗って逸物がぬるりと動いてはとうが嬌声を上げる。
そのとうの声も何かを堪えるようなものになっていた。逸物も、もし体液が滲み出していなかったら痛みを感じていいただろうと思うほどに圧迫し、どちらかというと苦しそうだった逸物が侵入する動きにも快楽の声を上げる。
腰が尻に当たって体内で逸物が跳ねると、とうの口から気持ち良さそうな喘ぎが出た。
(ここがいいのか)
奥を擦り回すように腰を回すと、とうがいよいよ高音で鳴きだした。
「ああアア……っ! おくがぁ! くじられぇ……ッ!」
「とうはぐりぐりと擦られるのが好きなのですね。妖刀と盛一郎様の御珍宝と、どちらが良いですか?」
言ったのは穂積だ。
「あ、あるじ様のものよりっ、良いものなどこの世にありませぬぅ……!
こんなに熱くて、えぐってきて、せいにあふれて……」
尻を抉られながらとうがなんとか、といった風情で応答すると、穂積はきつく抱きしめていた尻尾を離して這い近付いてきた。
「ふふふ……っ、やはりあなたは私の朋輩ですね」
穂積は仰向けになると、突き上げられているとうの下半身の下に潜りこんで、尻尾を下に敷いて頭の嵩を上げた。
「姉として、あなたが気持ちよくなるのをお手伝いいたしますね」
盛一郎は穂積が何をしようとしているのか理解し、両尻臀にやっていた手を腰に置き換えた。
「とう、覚悟するように」
「……ふぇ?」
あまり理解していない様子なとうの腰を軽く揉むと、盛一郎は逸物を奥にねじ込む動きと一緒に、とうの下半身を畳に押し付けるように力を込めた。
「ひぁああっ?!」
とうの、これまでとは違った種類の悲鳴が部屋に響いた。
逸物を包む力の強弱が小刻みに変わって、腸の襞で舐められているような感触に、危うく欲望を暴発させそうになる。
とうの腰を掴んだまま、盛一郎は深く呼吸を繰り返す。
とうはそんな盛一郎を見て、それから手をついて上半身を持ち上げると、自分の下半身の方に目をやる。
「とろとろになっておりますね」
穂積と視線がかち合い、彼女がそんなことを言う。
そのまま穂積は、目の前で蜜をこぼす少女の秘裂に舌を這わせた。
「――――――っ」
舌が液体を舐めとる音がして、悲鳴が上がる。
「あああああ、おねえ様! おねえ様! とうは、そんなところをなめられてはぁ!」
「止まらないのですね。盛一郎様に貫かれてたまらないのですね?」
穂積が舌を動かす音が続き、とうの悲鳴と共に直腸内が蠢く。
いくら動かずに耐えていても、このままではそう遠くない内に欲望を吐き出してしまうだろう。
(穂積殿、これは、俺にも……効く……!)
おそらく穂積は盛一郎に対する効果も狙っていたのだろう。
快楽の度合いが増した二人は、それぞれに堪えるような深く細い呼吸をしていたが、盛一郎はやがて堪えることを諦めた。
このままでは、体を動かさないままでも蠢くとうの直腸に盛一郎は屈してしまう。どうせ我慢も長くは続かないのならば、と彼はとうの腰を掴む手を強く握りしめた。
「あ、あ、――あるじさま?」
とうが何が起こるのかと不安そうに訊ねる。
盛一郎は少女の穴の中で更に張り詰めていく逸物を感じながら、逸物の先端を入り口のすぼまりに阻まれるまで引き抜き、
「初めて同士だ、盛大に乱れよう」
「ひ、っあああ――――ッ」
根本まで力任せに打ち付けるという動きを繰り返した。
一打ち重ねるごとにとうの声が崩れていき、穂積が秘裂を舐める音が耳に届く。
でたらめに締めたり緩んだりを繰り返す少女の体は既に絶頂を迎えているのだろうか。
盛一郎は華奢で、手でも楽に折ることができそうな腰を掴む手にこれまで以上の力を込める。
少女が力に反応して振り向く。涙を流しながら喘ぐ口が笑みの形に曲がる。
決壊の中で強く腰を握られることを望んでいた少女の姿が脳裏に蘇った。
あの時は挿入を拒むために強く握っていたが、今回は違う。既に逸物は中に押し入っており、これは腰を掴んでより深く繋がるためのものだ。
拒絶とは正反対の行い。
それに対して浮かべる少女の笑みが本当に幸福そうで、盛一郎も逸物が昂るのを感じた。
深く息を吸って丹田に力を込め、盛一郎はぱんっ、と音を立てて少女の尻に下半身を押し付ける。
骨の感触で痛みを感じる程の一打ちに、とうが一瞬白目を剥き、上半身が崩れ落ちた。
ここから一層交わりが激しくなると感じ取ったのか、秘裂を舐めていた穂積が、少女の秘裂に吸い付いた。
「――――ッ、したっ! はいって! ああ、――や、ふじょうがぁ! ――――――――ッ!」
二つの性感帯に加えられる刺激を処理しきれなくなったのか、空気を吐き出す音だけを残してとうの声が消えた。
とうの穴の奥に潜り込んだ盛一郎は、その最奥で少女の内蔵を傷つけるかもしれないほど、無茶苦茶に逸物を腸壁に擦り付けた。
入り口が締まっては緩み、締まっては緩みを続け、直腸全体が逸物を締め上げ、数瞬の間を置いては舐めてくる襞を残して腸壁が緩む。
締まる内蔵を圧し拡げる快感に震えていると、盛一郎の下腹に溜まった欲望の塊が決壊は間近だと伝えてきた。
穂積が秘裂に吸い付いて溢れる蜜を吸い上げるじゅるじゅるという音が聞こえる。
舌も入っているのか、とうの体内を異物が蠢く音が盛一郎のものとは別に聞こえる。
「――ッ」
叫びと共に、盛一郎は込み上げる欲望をとうの奥深くに吐き出した。
「――――――――!」
とうが音もなく絶叫する。
下半身が完全に脱力して、辛うじて体を支えていた膝が崩れて腰が落ちそうになる。
盛一郎は抱え込んでいた腰を下半身に押し付けたまま、脱力したとうに合わせるように腰を下ろしていく。
その間も、とうの一番奥で暴れまわる逸物からは精液が注がれ続けていた。
●
逸物から欲望を吐き出しつくすと、同時に盛一郎は膝を着いた。
脱力した尻穴から逸物が抵抗なくぬるりと抜けて、とうが五体で畳に倒れる。
盛一郎は、倒れたとうの下に居る穂積に声をかけた。
「穂積殿、出てこられるか?」
くぐもった声で返事が返り、穂積が敷いていた二本の尻尾が左右に避け、その間の空いたスペースから彼女が頭を抜いてきた。
現れた穂積は、口から胸元までを透明な液体でべったりと濡らしていた。
彼女は気を失っているとうを横向きに寝かせてやり、
「傘なのに、下に居るものを濡らすなんていけない子ですね」
とうの体に乱された髪を手櫛で直しながら慈しむような顔で穂積が言う。
そんな彼女を労う意味も込めて、盛一郎は穂積に唇を合わせた。
濡れた唇に盛一郎の乾いた唇が触れ、それ以上深く繋がる前に、盛一郎は穂積の唇の形をなぞるように舌を這わせた。
少し塩気のある、体液独特の味が感じられる。
ほんのりと口に残る香気が、尻穴から溢れた体液と同じだ。
どうやらとうは絶頂を迎える際、潮でも吹いたらしい。
盛一郎は穂積の唇から顎、それから喉へと舐める位置を徐々に下げていく。
穂積はそれを時折気持ち良さそうに息を吐き出しながら受け容れていく。
胸元に顔を突っ込んで穂積の匂いと、とうの香気を吸い込みながら舌を動かしていると、穂積に頭をそっと抱えられた。
やりすぎただろうかと盛一郎が顔を上げると、穂積の瞳と目が合った。
その金瞳は、零れそうなほどに涙を溜めていた。
盛一郎は無言の穂積から目を逸らせなかった。心を見ることは叶わなくとも、彼女の瞳が全てを物語っている。
とう、そして穂積が感じた寂しさも恐怖も、欲しい時に常に安心を与えてくれる存在が居てくれた盛一郎には真に理解できることはないだろう。それは恐らく、彼女らが居る今となっては生涯理解できまい。
盛一郎は穂積を傷付けないように注意して、耳が伏せられた頭を撫でながら言った。
「待っていてくれたことに感謝している。ありがとう」
「――っ」
穂積の瞳から涙が零れた。
黄金色の瞳から流れるものでも涙は透明なのだ。
穂積は自身の涙に気付く様子もなく、盛一郎に問いかける。
「盛一郎様、もう居なくなってしまいませんよね?」
強い力を持つ瞳が盛一郎が軽く答えることを許さなかった。
穂積の涙を指で拭って、盛一郎は頷く。
「俺は、穂積殿。貴方やとうが居なければだめになる。だから、もう離れることはない……俺の力が能うる限りは」
綺麗に締めくくることができないところが情けないが、これが盛一郎の精一杯だ。
穂積はそんな盛一郎に向かって仕方なさそうに微笑した。
「信じて差し上げます」
そして穂積は盛一郎の顔を自らの胸に押し付けた。
「抱いて差し上げますと申しましたものね」
胸の弾力に穂積の体温。そして彼女の鼓動を感じて盛一郎は胸に顔を擦り付けた。
穂積は盛一郎の頭を挟む胸を両手で外から押し、
「ふふ、これは私だけの愛し方ですね」
得意げな穂積の声に、両側からくる柔肉の感触を味わう盛一郎は、確かにとうではこの感触を与えることはできないだろうと思う。
深く息を吸い込むと、胸いっぱいに穂積を感じる。このまま胸の中に沈み込んでいきたいとすら思える感覚に、しかし盛一郎は離れ難さで穂積の体を一度強く抱きしめながらも身を離して、彼女の着物の帯を解いた。
緩んだ帯が腰から落ちるに任せ、穂積は開いた襟の間に指を入れて少しずつ肌を晒していきながら悪戯っぽく指摘した。
「盛一郎様、まだ大きいままですよ」
「……こいつはどうも欲張りなようでな。最近悪化していて困る」
胡座を組んで座り直した盛一郎の逸物は、急速に元気を取り戻して今や股座から天を勢いよく衝いていた。
妖刀のせいもあるだろうが、とうの体液は傘布のあの舌から滲み出る唾液以外も体を熱くさせる効果があるのではないかと思われた。
直腸の襞に拭われてとうの体液しか残っていない逸物を手で撫でた穂積は、とうの方を向いて呟いた。
「あの子も抜け目がないですね――負けませんよ」
盛一郎は横を向いて隙だらけの穂積の、着崩した着物にまだ隠されている陰部に手をやった。
「――――っ?」
驚いたように顔を盛一郎に向け直す穂積に断りもなく指を動かすと水音が鳴る。
穂積の陰部は既に蜜でしとどに濡れていた。
とうの秘裂を舐めながら、穂積が足をしきりにもぞつかせていたことに気付いていた盛一郎は、さもありなんと内心で呟いた。
「穂積殿も、どうやら欲しくてたまらないようだ」
指摘すると、穂積は熱く息を吐き出して頷いた。
「これから一緒に暮らす家族と、愛する人とが、あんなに激しく情を交わしていたのです。何も感じないはずがないではないですか。
当然、次は自分もこんなに愛されるのだと期待してしまいます」
その様子からはどこか切羽詰まった感じがする。
盛一郎は、今回はどうにも穂積に我慢してもらってばかりだったと思った。
「穂積殿、今度は貴方の番だ。さあ、契ろう」
「正直申しまして、ずぅっと待っておりました。盛一郎様。是非私もお気の済むまでお使いください」
穂積の返答は、彼女の本心が込められたものであると、その声の調子から推し測られた。
「……とうの影響を受けてはいないか?」
「ふふふ、いい所は積極的に取り入れていく構えなのですよ」
いい所かどうかはいまいち分からないながらも、盛一郎は肉洞に挿入れた二本の指を少し激し目に動かしながら、彼女の腰に巻き付いている衣服を取り去った。
穂積は艶のある笑い声を上げながら身を浮かせ、同時に盛一郎の股間で屹立するモノを握った。
支え持った逸物めがけて穂積が腰を下ろしてくる。
盛一郎は肉洞をかき回していた指の動きを止めて、穴を開くように指を横に開いた。
穂積の肉洞から滴った蜜が盛一郎の逸物に意図を結び、どこに性器があるのかが明らかになる。
この期におよんで互いに挿入までの時間を長引かせることはない。穂積の肉洞は盛一郎の逸物を一息に呑み込んだ。
「――――っ!」
その瞬間に穂積が悲鳴を上げて体を震わせた。
声を放ち終わると、穂積は目からまた涙を零した。
「あぁ、盛一郎様……。寂しかったです」
穂積の中は包み込むようにして全体を快楽で漬け込んでくる。
ぬるま湯に浸かるような気持ち良さに、盛一郎は安心感を得た。
穂積の頬を流れる涙を舌で掬い上げて、それを静かに受け容れる彼女の逆の目から溢れる涙も掬いあげようとした盛一郎は、大きな舌が迫っていることに気付いた。
舌は先端を細め、慎重に逆の頬を拭っていく。
穂積はこれにも身を任せて、最後に頬を数回舐めて離れていく舌に、小さく笑んだ。
「――これで全身を舐められた上に妖刀を受けたとあっては……たまらないでしょうね」
穂積が「ん……っ」と何かを堪えるように呻いて、逸物が肉洞が吸い付く。
動いていないはずなのに穂積の洞から水音がする。
とうの舌は彼女にも効果があるらしかった。
「おはようございます。とう」
「おはようございます。ホヅミおねえ様」
頭の傘布から舌を伸ばしていたとうが力の入らないらしい体を必死に動かして盛一郎達の方を向く。
「おねえ様、泣かないでくださいませ。おねえ様がそんなお顔をなされては、とうは、苦しゅうございます」
「心配性ですねとうは、これは……っ、嬉しさと、心地よさの涙ですよ……っ」
その言葉を本当のものにするために、盛一郎はホヅミの胸の先端に吸い付き、もう片方の膨らみには蜜が付いた手を絡みつかせた。
寂しかったという言葉は、盛一郎にのみ告げられるべきもので、とうがその思いを知る必要は無い。
なぜなら、
(……それが、姉としての矜持というものか)
兄弟が居ない盛一郎にはいまいちぴんとこないものだが、年配の者が下の者に弱音を吐いている姿を見せるべきではないという考えそのものには共感できる。
吸い付いた豊満な胸からは乳が出そうで出ない。
少し残念に思いながらも愛撫は止まらない。蜜で滑りがよくなっているもう片方の胸は、先端だけ集中的に責められている片割れとは趣向を変えて全体を揉みしだく。
半ば夢中で行われる行為によってよがる穂積の姿に安心したのか、とうはほっと息を零す。
「では! こんどはとうがお助けいたしまする」
失神から目覚めたばかりだったせいか、これまで力が入っていなかったとうの声に力が篭って、穂積が「んみゃ!」と可愛らし悲鳴を上げた。
胸に集中していた盛一郎が顔を上げると、伸びた巨大な舌が穂積の尻に伸びていた。
盛一郎の方へと穂積の腰が逃げてくるので、腰を持ち上げては落とす動作でそれを迎えた。
逸物に対する心地よい刺激を受けながら、盛一郎は目の前で揺れる二つの塊を放ってはおけず、また胸に顔を埋めた。
とうが「やはりおむねがお好きなのですね」と呟いて、穂積が「初めての日、……っ、胸元に目が、いっておりました……っもの、ね!」と応じる。
「盛一郎様の穂積の胸です……ん、好きにしてくださっていいんですよ」
そう言って頭を撫でる穂積に腰を勢い良く押し付けると、頭を掴む力が強くなって声が乱れる。
とうが穂積の後ろで少し不満そうに唸りながら、舌で舐める動きを激しくするのが音で分かった。
「不浄は舐めるところではございませ……ぃ!」
たまらず穂積が叫ぶと、とうの声が応じる。
「さあ、しっぽをおどけください。おねえ様のお体はどこもおきれいです――とうは少しねたましく思います」
「あ、こら、中は本当にぃ……っ」
穂積の声から余裕が薄れていく。肉洞の締め付けが乱れていることから、とうの責めがかなり効いているのだと分かる。
その様子を見て、盛一郎は穂積に最初の日の仕返しと奉仕とができるのではないかと思い至った。
胸から顔を離した盛一郎に、穂積が腰を揺らしながら問う。
「どうか、されたのですか……?」
盛一郎は浮かべることができる精一杯の笑みを浮かべて、首筋を舐めて腰を突き上げた。
「あぅん!」
締め付けの調子がまた乱れた。
今日あれだけ射精していなかったらもう絶頂を迎えてしまっていることだろう。
息を詰めながら、盛一郎は肩越しにとうの目を見る。
弱々しい尻尾の妨害をかいくぐりながら尻を舐めていたとうが気付いて首を傾げた。
視線で横に置かれている脇差を示すと、盛一郎の意図に気付いたようで、とうは舌を離した。
「……?」
尻への刺激がなくなって物足りなさを感じたのか、穂積が小さく声を零しながら尻尾で周りを探るが、その範囲には舌はない。
探索範囲が広がろうとしたので尻尾の途中を手で握る。尻尾は舌を探していたことを恥じらうように地面についた。
尻尾が下がったのを確認すると、舌が脇差を絡めて穂積の背に回した盛一郎の手元に持ってくる。
脇差を逆手で受け取った盛一郎は、刃のあまりの美しさに、いくらか経験がありながら尚、相手を切ってしまわないだろうかという不安に駆られた。
とうがそんな盛一郎を見て首を傾げる。
少女の体内で鋳直された刃に不信を抱いていることを悟られたくはない。頷きで心配ないと伝えて、盛一郎は穂積の金髪を絡ませた手首に滑らせた。
これが普通の刃ならば毛ごと手首から先が切断される動きに、しかし刃は一切の傷を付けることもなく手首をすり抜けて、強い熱が全身に巡った。
呼吸が満足にできなくなる程に全身が穂積を求める。屹立しているはずの逸物に更に血液が集まり、穂積の中で欲望を叫ぶ。
「あ――ひ、あ……!」
悲鳴を上げる穂積が肉洞で締め上げてくる。
盛一郎は傷を付ける心配はないと確信し、片手で穂積の解された尻穴を探り当てた。
「穂積殿。これが我らの契だ」
そう言って逆手に握った刃を指で探り当てた尻穴へ突っ込んだ。
「んぁぁああああアア?!」
糸が切れたように穂積が乱れ、獣のような叫び声が発された。
搾られた肉洞で穂積が腰を捻って暴れ、頭が焼けるような快感が盛一郎に訪れた。
暴れ乱れた髪が目の前で煌めき、盛一郎は口を開けてそれを咥え込んだ。
歯を噛み締めて穂積の味を感じながら、焼ききれそうな意識の中で手に持った脇差を捻った。
「あ戯れっが、ガ……ッダ、メ――ダメでっい、あ、あああああああッ!」
穂積が背中に爪を立て、首に噛み付いてきた。
瞬間、盛一郎の先端が厚い肉に包まれた。
穂積の一番奥が迎えに来たのだ。
くぐもった絶叫と共に彼女の口がもごもごと動いた。
――お・か・く・ご・を。
穂積の中が逸物の先端に掻い付き、暴れる腰が先端を擦り吸った。
「――――?!」
昂ぶっていたところに強烈な刺激を受けた盛一郎は驚愕した。
先端を強く擦り上げるというのは、盛一郎が自身を刺激する際に最後にしていた行為だ。
雌の胎内で行われたそれは、自身の無骨な手でするそれとは比べ物にならない快楽を盛一郎にもたらし、精を爆発させた。
「――っんぐうううっ!」
二人のくぐもった絶叫が重なって体が快楽の頂きを交換し合う。
吸い上げる穂積が要求するままに、盛一郎は精液を放出し続けた。
何度めか、逸物が脈動した時、肉洞に収まりきらなかった精液が結合部から溢れ出す。
「あ、ああ……もったいないです」
肉洞が隙間をなくそうと締め付けを強め、反応した逸物がまた脈動した。
●
命ごと吸い取られるような強く長い射精がようやく収まる。
盛一郎はいつの間にか命綱を握りしめるように噛み締めていた金糸の髪を離して、恐る恐る脇差を引き抜いた。
「んぁ!」
穂積がぴくんと震えて身を反らせた。
眼前に来た穂積の顔は蕩けており、呼吸も早く、欲情が未だ燻っているのが見て取れた。
「穂積殿……何故、あの動きを……」
最後に盛一郎を射精に導いたあの動きは、覚悟するようにと宣言した上でなされたのだ。偶然したものではないだろう。
穂積は荒い呼吸をしたまま幸せそうに笑った。
「かわいらしい妹分が、教えてくれましたから」
目をとうにやると、こちらを熱心に見ていたとうが目を逸らした。
(これは、弱みを握られた)
苦笑すると、穂積が落ち着かない呼吸で身を押し付けてきた。
体全体が敏感になっており、彼女の胸で勃った乳首が感じられる。背に手を回して噛んでいた場所を丁寧に舐めながら、穂積は小さな、本当に小さな声でこう言った。
「盛一郎様……。不浄が、お尻が疼くのです」
思わず脇差を取り落とした。
「……では、鎮めなくては」
勃ったままの逸物が肉洞の中で次の快楽の予感に震える。
優しく体を押して穂積の体を離すと、腰を持ち上げて逸物を抜いた。
泡立つ結合部からポタポタと精液が流れてくる。一人でしていた時にはありえない量だし、穂積とまぐわうようになってからも数回分の量に匹敵のではないだろうか。
自分の愚息の底力に感心しながら、ようよう身を回して背中から畳に尻尾を回し、上半身をその上に寝そべらせた穂積の尻を眺めていた。
震えが残る体が必死に尻を掲げてくる。
精液と蜜を零す穴の上にある尻は、足が閉じられているせいで肉の奥に隠された穴を見せてはいない。
肉厚の尻臀は、初めて会った日に思わず見とれてしまったそれだ。その玉のような丸みが一糸まとわずにさらけ出されて揺らめいている。
「盛一郎様ぁ……」
乞うような声に、見とれていた盛一郎ははっとなり、咳払いして尻臀に手を触れた。
とうが盛一郎に催促していた時のように大きく尻を割り開く。
すると熱気が盛一郎の顔面を包んだような感覚が来た。
それだけ顔を近づけていたのだ。
とうに舐め解されて光を反射して光る、半ば開いた尻穴に舌を挿入れる。
舌が届く範囲を舐めてみると、汗のような味がきた。
「あ、やめっ、盛一郎様、舌はぁ……!」
そう言いながらも穂積の尻は押し付けられてくる。
そのことを指摘すると穂積は尻尾に顔を埋めて「ううう」と唸った。
「おねえ様、かわいらしいです」
唸り声にそう言ったとうは、傘布を外して盛一郎に這い寄り、尻を舐める彼の股座に口を寄せた。
「ちょうだいいたします」
その言葉の直後、潤んだ肉洞からまろび出て体液が乾燥しそうになっていた逸物が熱い粘液に包まれた。
確認するまでもなく、胡座の腿から顔を突っ込んで逸物を包んだのはとうの口だろう。
下半身から昇ってくる快感に煽られて呼吸が荒れてしまい、息を吐きかけられる穂積の尻穴がひくひく動く。
「あ――はぁ!」
たまらないという風に、勢い良く盛一郎の顔にぶつけられる。
鼻を押さえて誠一郎が顔を離すと、とうが逸物から口を離した。
最後に尿道の残滓を吸い上げるように吸い上げたとうの口と逸物が体液の糸で繋がる。
「きれいになりました」
一仕事終えた顔でそう言うと、とうは足からどいて、
「さあ、ホヅミおねえ様に早くいれてさしあげましょう。このままではむたいでございます」
「ん、うむ」
誠一郎は立ち上がると、他の体液を舐めあげてとうの唾液だけがまとわりついた逸物をひくつく穂積の尻穴に挿入れた。
「ぇイ!? ィ――――」
「――――?!」
濡れ解されていたため、挿入はスムーズに済むだろうと考えていた盛一郎は穂積が上げた悲鳴と彼女の内部の感触に瞠目した。
尻穴は、とうが舐めていた部分だけ粘液で濡れていたようで、奥まで濡れきってはいなかった。
逸物を包んでいたとうの唾液は穂積の尻穴に侵入する途中で腸壁に取られてしまい、奥まで入りきるころには逸物は裸のままで穂積の尻奥に呑まれていた。
逸物はとうの中に挿入れた時と負けず劣らず締め付けており、こちらは内部が乾いたままだ。そんな状態で耳をぴんと立てながら発された悲鳴に、この挿入は無理過ぎたのではないかと盛一郎は慌てて逸物を抜きかけた。
が、盛一郎が狭い尻穴から逸物を半ばまで抜いたあたりで、とうがうっとりと呟く。
「ホヅミおねえ様……あるじ様を感じてよろこんでらっしゃいますね……」
「そうなのか?」
「あるじ様、とうはたいけんしているので分かるのでございます。ああ、ごらんください。心地よすぎてこんなにもみだらなえきがたれておりまする」
とうが言う通り、逸物をねじ切らんばかりに締める尻の下にある肉洞からは精液と蜜とが絡んだ液がだらだらと零れていた。
見た感じもよさそうで、経験者も大丈夫だと言うのならここは信じよう。
盛一郎は下腹に力を入れて逸物を奥まで、今度はゆっくりと、強力な締め付けで閉じている尻穴の奥へ奥へとねじ込んでいく。
穂積はとうが尻穴でまぐわっている際に自身で助言したように、肺の空気が無くなるのではないかという程息を吐き出した。
それでも締め付けはキツく、入り口のみ強烈だったとうよりも異物に対する尻穴の反応はずっと強い。逸物に加えられる刺激も強烈すぎて、盛一郎は痛みに近い快感に膝をついてしまいそうになった。
その時、盛一郎の逸物に加えられる刺激が程よく緩まった。
「――――?」
奥に逸物を挿入れた状態で腰をゆっくりと振り続けながら盛一郎が疑問すると、穂積が喘ぐ声が解決した。
「あ、ひ、と、とう……とう! 待ってくだ……ッ」
よく見てみると、穂積の尻尾に埋もれ肩の両端からは小さな足が見えている。それを辿ってみると、とうが穂積の下に潜り込んで指で穂積の肉洞を弄っているのが見えた。
「お返し、でございます」
言葉通り、自分が交わっている時のまさにお返しだった。
自分がしてもらったことを返せるのが嬉しいのか、顔に体液がかかることも気にもせず、とうは肉洞に挿入れた指を動かしている。
「と、とう! そこ、かかってしまいますっ」
「とうは、傘でございますれば、ぬれることにはなれておりまする」
そう言って指が動かされるごとに、尻穴の絞まりが程よくなる。
「……ん、あるじ様、とうもしてもらったように、おねえ様のをすいとうございます」
とうにねだられるままに、盛一郎は穂積の腿を持ち上げて、力がろくに入っていない下半身を寝かせてしまった。
下敷きになる形になってしまったとうは、穂積の腰に尻に手を回して穂積の陰部に吸い付いた。
尻臀がきゅっと締まって腰が打ち付けられた際に肉が魅力的に波打つ動きが固くなるが、外とは逆に、尻穴は逸物が往復するのに問題ない程に緩くなっていた。
盛一郎が穂積の尻尾の付け根を握って腰を大きく動かすと、尻穴の隙間から空気が入り込んだのか、空気が体内で撹拌される音が鈍く聞こえ、引き抜く動きで入り込んだ空気が吐き出されて音が鳴る。
「や、っめ、あ、聞かないでくださ――っひ、や!」
美しく、神聖さすら感じるような金毛の稲荷が立てるらしくない音に、盛一郎もとうもこれまでとは別種の興奮を感じていた。
とうが染み込ませていた粘液と混ざった空気が押し出される湿った音と共に、穂積は泣き声のような喘ぎを上げて耳を伏せては首を横に振る。
しかしその一方で開いた足の間に居る盛一郎に向かって動かす腰の動きは止まらない。
力の限り腰を動かす度に、穂積の声が憐れを感じさせるものから徐々に悦びに染まっていくのが分かる。
「っや、あ、ひ、や、んァッ!」
声が完全に悦びに染まるのを聞いて、盛一郎は尻の奥を開拓する勢いで逸物を叩きつけた。
緩くなったとはいえ尻穴は膣とは違って乾いた感触を伝えてくる。潤った感覚に慣れていた盛一郎の逸物は、これまでのどことも違う未知の感覚に全体を刺激され、
「ん、っひ、あ、ううぅ……ん、ぁ、が、あ、ああああアア――――ッ!!」
数回目の奥への衝撃で、穂積が獣のような叫び声を上げて果てた。
同時に握った尻尾がぴんと張って、緩んでいた尻穴と尻臀が突然ぎちぎちに締めつけてくる。
暴力的な刺激に腰を動かすこともできず、盛一郎は腸の奥へと射精した。
●
射精が終わるまでどれだけ時間があっただろうか。
とうが、ぷちゅっと音を立てて穂積の陰部から口を離す音で、盛一郎は正気を取り戻した。
知らず肩で息をしていた盛一郎は、強く握っていた尻尾を咄嗟に離し、力が抜けた尻穴からキツく搾られて感覚が曖昧な逸物を引き抜いた。
「んぁ」
穂積がぴくんと反応するが、それ以上の行動は無い。
喘鳴を漏らしている穂積の尻からは、彼女の呼吸に合わせて白濁が零れていた。
征服した。という印象がより強くなる位置で自分が吐き出した欲望の証が溢れている様にしばし見とれていた盛一郎は、下敷きになったとうの足がもぞもぞ動いていたのを見て慌てて声をかけた。
「とう、大丈夫か?」
言葉に反応して、穂積がころんと力なく転がった。下に居たとうはぼんやりとした視線で盛一郎を見上げ、喜の感情が表面張力を超えて溢れたような笑みを浮かべた。
「大丈夫……か?」
「あるじ様とおねえ様ととうの和合の水が……それだけでとうは果ててしまいました」
そんな感想に、直接体を吸われていた穂積は腿をすり合わせ、
「美味でしたか?」
「分けてさしあげます」
とうは体を入れ替えて穂積に向き合うと、唇を合わせた。
「ん」
少女が覚えたばかりの舌を入れ合う接吻だった。
とうの口から穂積の口に向かって何かが送り込まれているのが喉の動きで分かった。
喉が何かを飲み下すたびに、穂積が身を快感によじる。
「いかがでしょうか?」
「このような甘美なものがあるなんて、と感動しております……あの、とう、もう少し」
「はい、おねえ様」
再び口が合わされる。
体液のやり取りがされる間に穂積の二本の尻尾が床に広く敷かれ、唇を離した穂積が言う。
「盛一郎様。申し訳ないのですが、私はもう体が動きません。こちらに寝ていただけませんか?」
発情している女性二人の間に誘われるなど、つい数日前まではあり得なかったことだ。
感慨深いものを感じながら、誘われるままに前のめりに倒れようとして、盛一郎は未だに逸物が勃ったままでそのままでは倒れることができないと気付いた。
肉体の神秘を思いながら仰向けで寝転がると、豊満と未成熟の胸が腕に当たる。
二人が安心したように息を吐いて体を擦り付けてきて、股間にも手が伸びてきた。
「やいばでご自身をたかぶらせて、おねえ様の後ろのはじめてをつらぬいてしまわれたのです。あるじ様は、ますらおでございます」
盛一郎の半分ほどの大きさしかない手が幹をさすり、
「私、お姉さんとしてもっと上手く契を導くつもりでしたのに……」
穂積が繊細な手で先端を強めに刺激した。
彼女が保とうとしていた余裕を奪ってしまった盛一郎は何も言えず、胸に挟まれた手で陰部を慰めるようにさすった。
もぞもぞと穂積が絡めた足を動かして、盛一郎が触りやすいように位置を調整する。
「あ……」
とうが羨ましそうな声を上げるので、少女の陰部も撫でようとすると、穂積が手で制した。
「……?」
求めた刺激が一向に来ないせいか、とうが鼻で鳴いては健気に体を押し付ける。そんな少女を抱きしめてやりたいと思っていると、穂積が咳払いをして口を開いた。
「とう、先程の、和合の水は確かに美味でございました。しかし私は……恐らくとう、あなただって盛一郎様とのややこが欲しいでしょう? なので、全てを吸ってしまうのは、その、やめませんか?」
口調だけは威厳を保とうとしたらしいが、盛一郎は指の動きを止めないし、逸物への刺激は続いたままだ。そんな本気とはなかなか思えない状態での言葉に、とうはこちらも動きは止めずに口調だけ真剣に答える。
「とうもあるじ様との子がほしいです。なので、とうはさきほど、すべてをいただいてはおりませぬ」
「え? ですがもう精が零れてこなくて……」
「おねえ様はあるじ様を迎え入れたおくのへやをしめてしまわれて、とうではどうにもできなんだのです」
言われた穂積は片手で下腹を撫でて「あら」と呟いた。
「……後ろの穴の熱さが強く残っていて気付きませんでした」
「見ていてほれぼれしてしまうほどに放っていたのです。やいばできずつけた分、精をおぎなってなお、おしりにあるじ様の子だねがとどまっておるのでしょう……あれほどの精なのです。正体をもたせるのはしなん。感覚がくるってしまうのもしかたのないことでありましょう」
「そうですね。とうはしっかりしていますね」
「この身はあるじ様とともに歩んだ身でありまする。お姉さまほどではなくとも、それなりに生きているのです」
「ではそのよく学んだ生を褒めなくてはな」
そう言ってとうの陰部を撫でてやると、しばらくいじられていなかったはずだが潤んでいるそこは嬉しそうに盛一郎の指を受け容れた。
チュクチュク水音を立てながら、二人の会話を思い出して盛一郎はぽつりと言う。
「あー、まあ、二人とも、遠慮なしに出してすまなかったな」
反応は即座に来た。
「盛一郎様が心地よく出してくださったのなら私達にとってこれ以上の幸福はございません! もっと出してくださってよいのです! どこにどれだけ出されてもそれは幸福でしかなく、盛一郎様が謝ることなど何一つないのです!」
「そうでございます! あるじ様はもっともっとわれらを使って気持ちよくなることだけ考えてくださってよいのです! だというのにまだこんなにたぎらせておられる。まんぞくされてはおられないのでしょう? えんりょはだめだとオカミ様もおっしゃっておりました!」
「あ、ああ。すまない分かった、悪かった」
両側でそんなことを言われると、術にでもかけられたようにそれこそが正しいと思ってしまう。
「さあ、盛一郎様」
「お気の済むまで出してくださいませ」
火が点いたのか、二人の手の動きが射精させるための激しいものになる。
盛一郎は二人の手に包まれたまま、我慢しようなどという思考も働かずに精を吐き出して二人の手を白濁に汚した。
手の隙間から飛び出すほどに勢いよく出る精の雫を嬉しそうに浴びては喉を鳴らして、入れられた指に吸い付く膣を痙攣させた二人が身体を擦り付けて快感を伝えてくる。
そんな二人の体を込み上げる欲望のままに汚しながら、盛一郎は幸福だった。
16/08/21 11:10更新 / コン
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