第九話 『正義の戦争よりは、ずっといい』
「おはよう、ヴェルナー」
難破船の寝室。目覚めた私の意識がはっきりしてきた頃、レミィナが爽やかな声で朝を告げた。部屋の丸い窓からは陽光が差し込んでおり、反対側の壁に光の輪を形成している。硬い木の床に寝ているせいか、眠気はすぐに晴れてきた。昨日私が望んだ通り、レミィナにベッドを譲って床に寝たのだが、どういうわけかベッドの上に姫君の姿は無い。そして何故だろうか、先ほどから下半身に何か柔らかい物がのしかかっている。
枕代わりに置いた鞄から頭部を起こし、状況を確認した。下半身、それも主に股間に覆い被さっている柔らかな感触の正体を確認し……ため息が出る。
「……姫、いきなり何をしているのです?」
私の腰に抱きついて、レミィナが微笑んでいた。普段ポニーテールにまとめている髪を解いており、銀糸の滝のようになった髪が広がっている。清楚な白い寝間着が、彼女自身の白い肌、白い髪と相まって儚げな印象を醸し出しているものの、その豊かな胸の膨らみが股間部に押し付けられ、過剰なまでに存在感を主張していた。その向こうでは尻尾が丸い臀部からアンテナのように上へ伸び、ゆらゆらと揺れていた。
「んふふっ。わたしを放って、一人で床に寝る不心得者にお仕置きするだけよ」
そう言われ、昨夜の顛末を思い出した。ピッツァ屋で夕食を済ませて宿に戻った後、私が床で寝ようとするとレミィナも隣に添い寝してきた。野宿にも慣れているからと言い張る彼女を何とか説得し、ベッドに寝かせて安心したのが甘かったようである。所詮は同じ寝室にいるのだ、この淫魔と。
彼女は上半身をずりずりと前後に揺り動かす。薄手の寝間着の下にある乳房はパン生地をこねている様になり、動きに反応して柔らかく形を変えていた。それにのしかかられている男根は……朝の生理現象だ、すでに服を持ち上げて勃起している。
「……勘弁していただけませんか、この朝から」
「今搾る。すぐ搾る。今がだめなら後で搾る。路上で」
早口で告げ、レミィナは私の服を脱がせる作業にかかる。言葉の最後に付け加えられた恐るべき脅迫に、抵抗する意思が急激に萎えた。このスケベ姫なら本当に公衆の面前でやりかねないだろう。かといって彼女を思い切り罵倒したり、殴ったりなどという選択はあり得ない。私の騎士道に反するだけでなく、ルージュ・シティである噂を聞いたのだ。かつてレミィナを本気で怒らせた男がいたが、数時間後にはそいつの股の玉がなくなっていた、と。
単に精液を抜き取られるだけだ、やりたいようにやらせるとしよう。私にとって彼女はただ単に魅力的な雇い主であり、特別な存在ではない。依存することがあってはならないのだ。
「わぁ、やっぱり朝は元気ね」
引きずり出した男根を白い手で撫で、レミィナは心底楽しそうに笑っている。彼女の吐息が男根にかかり、それだけ体が反応してしまう。小さな鼻をひくつかせて臭いを嗅ぎ、悪魔の姫君はうっとりした表情を浮かべた。
私が大人しくしていることが意外なのだろう、赤い瞳がしばらくこちらを見つめていたが、やがて彼女は行動を始めた。
「うりゃ」
露出した男根が柔らく温かい感触に晒される。白い絹の寝間着に覆われた胸が、そのまま竿部分を挟み込んだ。薄い布越しに伝わってくる乳房の柔らかさに、体の力が吸い取られるかのようだ。
「今日はなんか良い子だね、ヴェルナー」
「……服が汚れますよ」
「それが楽しいのよ」
ぺろりと出された舌が亀頭をつつく。ただそれだけで痺れるような快楽を感じた。
レミィナは両手で二つの乳房をぐっと寄せて上下に動かし、布の摩擦と脂身の柔らかさで刺激してくる。最初はさらさらとしていた布地が彼女の汗を吸い、次第にしっとりとした感触になってきた。その下にある膨らみにぴたりと張り付き、昨日足でされたのとは違ったソフトな快楽を与えられているのだ。
早くも汁がほどばしる。服の胸元に触れて小さな染みを作るも、柔らかく擦り合わされる刺激にさらに溢れてきた。
「あん、もったいない♥」
再び舌を延ばし、レミィナはねっとりとその液を舐めとった。まるで昆虫が樹液でも吸うように、心底美味しそうに粘液を味わっていく。そのとき、股間にむず痒いとした感触を覚えた。振り乱された彼女の髪が男根をくすぐったのだ。このようなことでさえ、脳が性的快楽として処理してしまう。それもまた魔王の娘の力だろうか。
すると彼女は髪の毛を束にして掴む。そして私の顔に視線を移しながら、その先端を亀頭に押し付けてきた。
「うっ!?」
不意打ちのその行為に、思わず声を出してしまう。チクチクとした毛先に敏感な箇所を刺激され、痺れそうな快楽が湧き上がってきた。
そんな私の反応をレミィナは気に入ったようである。肉体から寝間着まで全て白で構成された彼女の体で、唯一赤い色をした瞳がじりじりと照りつけるかのように私を見ているのだ。
「んふふっ……わたしの髪を汚せるなんて、ヴェルナーは幸せ者だよ?」
レミィナの言葉を脳が理解するまで三秒ほどかかった。元々硬いキャベツ頭が快楽によって麻痺しつつある。
このままでは自分の股から出る物で、彼女の髪を、胸を、そして顔を汚してしまう……それをぼんやりと理解し、彼女を振りほどくべく藻掻く。しかし快楽によるものか、レミィナがどさくさ紛れに金縛りをかけたのか、私の体は十分な力を出せなかった。
抵抗できない私を愉快そうに眺め、レミィナは自分の両乳房と、それに挟まれた胸を右腕で抱きかかえた。そのまま腕全体を使って乳房の上下運動と圧力を制御しつつ、左手で髪の毛を操る。まるで人形でも抱きかかえているかのように、彼女は男根で遊んでいるのだ。
「こちょこちょこちょ〜」
白い毛髪が筆のように亀頭を愛撫し、くすぐっていく。そのむず痒い心地よさと、竿を包む乳房の優しい圧迫感。それだけでも射精に至るには十分すぎる感覚だったが、それ以上に私を興奮させる、どろりとした得体の知れない快感があった。
だがそれが何か考える余裕さえ、レミィナは与えてくれない。私が限界に近いのを見て取ったのか、乳房の速度が加速していく。
「イっちゃう? わたしの顔をベトベトにしちゃえば……きっと気持ちいいよ♥」
亀頭のくびれを髪でなぞるように刺激され、それが決定打となった。こみ上げ、男根から迸っていくそれを感じたとき、得体の知れない快感が全身を支配した。
――そうか、これは……――
背徳感。この小生意気な女の顔を、美しい髪を、母性の象徴たる乳房を自分の欲望で穢してしまうことへの快感。
悪魔が人間にもたらすのに相応しい、禁じられるべき快楽。この世界の教団が恐れている、魔物の本当の力がこれなのだろうか。
彼女たちが作ろうとしているのは快楽にまみれた世界。それは一種の堕落。その一片が私にまとわりつき、引き込もうとしている。
それから逃れる翼を、私は持ち合わせていなかった。
「出……る!」
尿道を押開くようにして、多量の精液を一気に噴出させた。本来子孫を残すためのその白濁は、鈴口の先にあったレミィナの顔に、亀頭を刺激していた髪と手に吹き付けられ、さらには重力に従い落下し彼女の胸へと降り注いだ。勢いが衰えた後も、じわじわと染み出して乳房へと足れていく。ゼリーのように濃いそれらは彼女の寝間着に染み込まず、顔にかけてしまった分もそのまま白い肌にこびりつき、零れ落ちる様子はない。私はレミィナに、最高級の芸術品である魔王の娘に自分の体液をぶちまけたのだ。
「あはぁ……熱い……♥」
白い液体にまみれた顔で、レミィナはとろけた笑みを浮かべた。赤い瞳がぼんやりと光を放っているようにさえ見える。手に着いた精液を舐めとるその姿はどこか得意気で、対する私は為す術も無く絶頂された虚脱感と、彼女の顔目がけて射精した背徳の快楽で放心していた。
……私は一体何をやっているのだろうか。何なのだろう、この気の狂いそうな快楽は。
二年ほど前までは、アフリカの砂漠で死の空を飛んでいた。シュトルヒの三倍以上の速度で飛ぶ敵戦闘機には、貧弱な防御機銃一丁では成す術も無い。機体の軽さを活かして敵の攻撃をかいくぐり、相手の最低速度以下で飛行することでやり過ごし、ときには機体を穴だらけにしながら帰還した。戦友たちからヴァルキューレの女神に嫌われた男と冷やかされつつも、その日帰らなかった同胞のために乾杯する。そしてラジオから流れてくるリリー・マルレーンを聞きながら、束の間の休息。渇きと苦痛が支配するあの戦いが、あの世界で最も私が輝いていた時期だった。
たった一人でシュトルヒに乗り込んで離陸したとき、あれが最後の飛行となるはずだった。それが何故この世界に放り込まれたのか。この世界で、私は何をするべきなのだろうか。この美しく魅力的な悪魔の隣で、何を……
「ヴェルナー」
不意に下半身から重圧が消えたかと思うと、レミィナが私の隣に移動してきた。顔に着いた精液を指ですくい、美味しそうに舐めながら。
「楽しいね」
私の腕に抱きつき、彼女は甘えてくる。遊び終わった後のような、可愛らしい佇まいで。
そうだ、これは妹が……空襲で死んだ妹がよくやっていた仕草だ。
「あっ……」
レミィナが声を漏らした。私が彼女のすらりとした腕を、そっと振り解いたからだ。
ぼんやりと虚空を見つめ、私は先ほど感じた事を思い出した。彼女の母……魔王の目指す理想の世界。そして私の世界で繰り広げられていた、あの戦い。
「……堕落した平和でもいい」
自然と、そんな言葉が口から出た。それは本心からの言葉だが、意図して口にしたという感覚はない。本当に自然と、ぽつりと言葉になったのだ……。
「正義の戦争よりは、ずっといい……」
レミィナは何も言わなかった。笑っても怒ってもいない。ただ私の側に寄り添い、静かに手を握ってくれていた。
…………
………
……
朝食後、レミィナは教団から手に入れた記録を街のマフィアに届けに行き、その間に私はシュトルヒの整備を行った。以前から負傷兵の救出や工作員の回収のため、飛行場以外に着陸することも多かったので、いざという時に自力で整備する技能を身につけておいたのだ。まさか異世界を旅するのに役立つとは思わなかったが。
かくして我々は難破船宿の人魚たちに別れを告げた後、再び飛び立った。今度は陸地の上を飛ぶ。地面の高さに合わせ、徐々に高度が上がっていく。緑豊かな森や所々に点在する畑や集落の上を、私と姫を乗せたシュトルヒは快調に飛行していた。
「ねえ、今思ったんだけどさ」
いつもの胸元が開いた黒い衣装にポニーテールの出で立ちで、レミィナが口を開いた。彼女は後部座席から身を乗り出し、顎が私の肩に乗っている。髪の甘い匂いが鼻をくすぐるも、一緒に時間を過ごしてきたせいか、このくらいで正気を失いそうにはならなかった。白い指が操縦席に並ぶ計器の一つ……高度計を指差した。
「これって、地面の高さは分からないのね」
「ええ。地面からの距離を測定できる高度計も開発されてはいますが」
気圧高度計はあくまでも気圧の一番高い地点、つまり海面からの高さを計測する。山や谷のような地面の起伏までは教えてくれないのだ。レミィナのように自分で飛べる魔物は感覚で距離が分かるのだろうが、人間はこのような機械の補助と、自身の感覚を研ぎすませなくては安全に飛ぶ事ができない。それでもいずれ、進化した機械によってパイロットが不要になるほどの制御が可能になるかもしれないが、私はどの道そのような時代は見たくなかったと思う。
「ヴェルナーの場合、地面の高さってどうやって計る?」
「尻で計ります」
「……お尻?」
頓狂に聞こえるかもしれないが、私の場合感覚として地上からの高さを判断するのが尻なのだ。座席に固定され、操縦中に動かさない部位だからかもしれない。
「ヴェルナーはお尻が敏感か……覚えとこ」
レミィナはまたロクでもないことを考えているようだ。平常運転である。悪魔だから仕方ないと思う事にしているし、そもそも私の世界の人間に比べれば、この世界の悪魔のなんと善良なことか。少なくとも爆撃機で民間人を焼き殺したりはしないのだから。
彼女は相変わらず、機を操縦する私を興味深げに見つめている。今までも時折、計器やスイッチ類について尋ねられたり、航空兵の心構えを訊かれることがあった。今はちらちらと後ろも見ながら私の行動を観察している辺り、尾翼の舵についての質問でも来るのだろう。
私のようにキャベツ頭の頑固な人間でも、価値観というのは多少なりとも変わってくるものらしい。やってみると、女性を乗せて飛ぶというのもなかなか楽しいものだ。私さえ彼女に依存しないよう距離感を保っていれば、この悪魔は非常に愉快な友人であり、良き雇い主である。退屈が嫌いでスリルが好きな所も気が合うし、一緒に酒を飲むのも楽しい。親衛隊にはほぼ無理矢理入隊させられたものの、今彼女の御者としての自分を悪くはないと思っていた。
どうせ祖国に戻る方法など分からないし、戻れたところで死ぬだけだ。それならこの世界を、私の世界以上に混沌としながらも心惹かれるこの世界を楽しもうではないか。祖国への未練はもはやビールのみだ。この不思議で魅力的な悪魔にと共に、新しい道を生きていこう。
飛びながらそのようなことを考え、レミィナと雑談を繰り返した。シュトルヒの動力源である魔力の補給は飛行中でもできるが、体力の都合上小休止や野宿を数回挟んで飛ぶことになった。祖国から緊急用に持っていた覚醒剤もレミィナによって捨てられており、体力の回復は重要な問題である。もっとも副作用もある薬で無理矢理疲労を回復させるよりは、降りて休憩する方が私としてもありがたい。中立都市とはいえ魔物寄りであるエスクーレを過ぎてから、我々は完全に魔物側の勢力圏に入っている。つまり魔王の娘たるレミィナと一緒にいれば、ここは安全圏と言っていいわけだ。
野宿の際にはレミィナから『栄養補給』をねだられることになった。彼女は扇情的な笑みを浮かべて私にすり寄り、あの手この手で男根から精を吸い取る。だがもう気にしないことにした。彼女にとってはサキュバス属という魔物の単なる本能と、自分の魔力を保つための行為に過ぎないのだろう。シュトルヒの原動力が彼女の魔力である以上文句は言えないし、私が気にしなければいいだけだ。
エスクーレからそうやって旅を続け数日、ようやく目的地に辿り着いた。
「あれがトーラガルド。わたしが育った町」
丘の上にシュトルヒを駐機しての小休止。レミィナの指差す先には、窪地に並ぶ中世風の建築物が多数見えた。大小様々の家屋や教会、果樹園などが並び、穏やかな町並みを作り出している。周囲を囲む山には巨大な亀裂が入って谷を形成しており、そこを流れる川が町の中心を横切っていた。その谷は数代前の魔王と神との争いでできたのだと、レミィナは語った。
「どことなく、ルージュ・シティに似ていますね」
それが私の抱いた第一印象だった。建築物の様式などに違いはあれど、どことなくあの町も似たような『空気』を持っていたような気がする。上手く表現できないが、穏やかで、それでいて爽快な雰囲気だ。ある意味レミィナや、ルージュ・シティ領主リライアの雰囲気に近いかもしれない。
「子供の頃にリライアと会ったのもこの町だったし、彼女がここをお手本にした部分も結構あるのよ」
懐かしそうに語りながら、レミィナは愛用の時計を眺めていた。彼女の幼少期からの相棒は、白い手の中で左回りに時を刻んでいる。世界中を奔放に旅しながらも、懐中時計のメンテナンスは必ず行っている辺り、彼女がどれだけこの品を大事にしているかが分かるというものだ。それにどのような由来があるのか、私はまだ多くを聞いてはいない。ただ確かなのは彼女の大切な人からもらった物だということ、そして彼女にとって大きな意味のある物ということ。そしてこれは私の勘だが、これを作った人間は故人なのだろう。レミィナは『大切な人』の死を経験したことがある……一緒にいるうちに、何となくそれが分かったのだ。
レミィナは時計を懐に納めると、不意に翼を開いた。ばさりと広がった白い、しかし禍々しい蝙蝠型の翼がおおきく開き、ニーソックスを履いた足が地を蹴る。
「……ちょっと、二人だけで話してきたい人がいるの。戻ってくるから待ってて」
「何なら私は先に町に行っていますが」
「駄目。みんなには私からヴェルナーを紹介したいの」
宙にふわりと浮き上がった状態でレミィナは微笑む。彼女がそう言うのなら、私はここで休ませてもらうとしよう。幸い天気もよく、風も爽やかだ。
「了解、一服させていただきます」
「うん、早めに戻るから」
その言葉の直後、レミィナは翼を大きく羽ばたかせた。巻き起こった風で私の帽子が吹き飛ぶのを見て笑いながら、下着が見えるのも気にせず、あるいは見せつけるようにして空へ飛び出していく。私は目に焼き付きそうになったレース付きの黒い下着を、瞬きを繰り返して消し去った。
帽子を拾って草を払う。しつこいようだが視力の良い私は、レミィナが何処へ向かっているのかが見える。町外れにある小高い丘が目的地のようだ。
再び、爽やかな風が吹いた。足下の草がなびき、ダンスを踊る。いい所だ。
愛機を見上げてみると、程よい風に吹かれて何処か誇らしげだ。ふと、久しぶりに一人で飛んでみたくなってきた。先に述べたように彼女の御者を楽しんではいるが、一人なら同乗者に気兼ねなく飛び回れる。この晴天と風の中、私もシュトルヒでダンスに興じたい。
そう思ったら、後の行動は早かった。
始動点検を済ませ、エンジンをかける。プロペラがリズミカルに回り始め、私は操縦桿を握った。空中に描くワルツの軌道を思い浮かべつつ、ハンドルを回して翼の高揚力装置……フラップを降ろす。
「行こう、シュトルヒ」
語りかけた直後。
ガラス張りの頭上を、大きな影が覆った。雲だろうか。
「――!」
私は絶句した。
頭上を舞う、巨大な生物。
城塞を一薙ぎにできそうな、長く厳つい尾。巨体を宙に浮かせ、激しく風を切り裂く翡翠色の翼。
太陽の如くぎらつく目、冥府にでも繋がっていそうな顎門。四肢に生えた鋭利な鉤爪。
反キリストの存在でありながらも、人を魅了してやまない恐怖と力の象徴が、そこにいた。
「ドラッヘ……!」
竜。その存在感は圧倒的だった。
だが私は狩られる側である偵察機乗りの本能か、気づいてしまった。
その竜が、私に襲いかかろうとしていることに。
12/05/27 23:15更新 / 空き缶号
戻る
次へ