「痛たた……首の留め具がないことを忘れていた……」

　テーブルの上に転がるレイチェルの首。そして首がなくなり、あたふたとしている体。
　デュラハンは首が外れる魔物だと知ってはいたが、実際に外れたのを見るのは初めてだ。かなり驚いたが、喋る生首も、首のなくなった体も、見てみると案外不気味ではない。そもそも、下半身が蛇や蜘蛛だったり、体から触手が生えているような魔物がごろごろいる町だ。免疫ができたというか、感覚が鈍くなったのだろう。しかし突然取れるのは心臓に悪い。
　レイチェルは自分の首を拾い、俺の方に向ける。青い瞳が気恥ずかしそうに見つめてきた。

「驚かせてごめん。……気持ち悪く、ない？」

　心なしか、口調がいつもより砕けているように思えた。本当に、普通の女の子のような喋り方だ。

「平気さ。打った所、大丈夫？」
「ちょっと痛かっただけ」

　微笑みながら、レイチェルは俺に首を差し出してきた。反射的に受け取ってしまい、落とさないよう抱きかかえる。俺の腕の中で、首だけのレイチェルが目を細めて笑う。かなり可愛い。いや、キモ可愛いとか言うのだろうか。何故か息遣いが荒いようにも感じ、その頬も熱くなっていた。汗も出ているようだ。

　‐‐コクるなら、今か……？

　なんとなく、チャンスだと思った。それに、レイチェルは俺の料理を食べてくれた。美味しいとも言ってくれた。今なら、自分に自信が持てる。

「レイチェル」
「ん、なに？」

　彼女の声が妙に甘ったるい。
　俺は心を落ちつかせ……率直に、思いを吐きだした。

「俺、レイチェルのことが好きだ！」

　その刹那。

　背中に伝わる衝撃と共に、視界に店の天井が広がった。
　何かに圧し掛かられ、体に重さを感じる。

　‐‐な、何が……？

「ふふふふ〜、シャルルぅ〜」

　背筋がゾクリとするほど、甘く蕩けた声がした。それが、今抱きかかえているレイチェルの首から発せられたことを理解するまで、少しだけ間が必要だった。そして俺の上に圧し掛かっているものは……彼女の体だった。

「好きって言ったわね？　言ったのよねぇ？」

　驚くほど淫靡な笑顔を浮かべる、レイチェル。青い目を潤ませ、何かを待ち望んでいるかのようだ。
　何が起きているのかさっぱりだ。料理に何か変なを物入れたか？
　混乱する俺を見下ろして笑いながら、レイチェルは自分の首を取り上げた。そしてそれを、俺の顔に押し付けてくる。

「んんっ!?」
「んむ……ちゅ…じゅる……」

　唇を強引に重ねられ、舌が押し入ってきた。唾液を流し込まれ、柔らかい舌で口の中を掻きまわされていく。まるで、口内を犯されているような感覚。溜まっていくレイチェルの唾液を飲み下し、息が苦しくなっても暴虐は終わらない。それどころか、彼女はより一層強く唇を押し付けてくる。ぷるぷるとした柔らかい感触に、唾液のぬめりが合わさって、頭がぼーっとしてしまう。

　そこでようやく、レイチェルは唇を離した。

「はぁ……はぁ……」

　新鮮な空気を吸い込み、呼吸を整える俺を見て、レイチェルがくすりと笑う。

　‐‐これは……まずいだろ!?

　圧し掛かっている彼女を引きはがそうともがくが、すぐに肩を押さえつけられてしまう。指が肩に食い込んできそうなほど強い力で、レイチェルは俺を拘束してくる。俺の胸の上に転がった彼女の首が、鈴のような声で笑っていた。

「今から、凌辱しちゃうね……♪」

　‐‐りょ、りょーじょくって……

　先に述べたように、『魔王軍装備名鑑』の挿絵を見てレイチェルが自分を犯してくる妄想をしたことはある。だが、妄想は妄想。俺はその当たりの区別はつけられる人間だ。それが今、いきなり現実になろうとしているのだ。
　今のレイチェルはおかしい。いや、この豹変はおかしすぎる。ヅギさんとの戦いで頭をやられたのかもしれない。なんとか止めなければ。

「れ、レイチェル……め、目を覚まして……！」
「え、なぁに？　私の頭がおかしくなったと思ってるの……？」

　再び自分の首を掴んだかと思うと、再び顔に押し付けてくる。だが今度はキスではなく、頬ずりだった。汗でぺたぺたする頬が、柔らかく擦れていく。

「おかしくしたのはシャルルなんだよ……♪　私、シャルルのことが大好きなんだもん……♪」

　耳元に注ぎ込まれる、蜜のように甘い声。頭がぼーっとしていく。

「もしシャルルが、無理矢理私の首をはずしてくれたらぁ……いつでもこうしてあげたのにぃ♪」

　れろ、っと耳を舐められる。ぬめりが這いまわる感触に、全身が震え、力が抜けてしまう。
　するとレイチェルは、俺の胸に首を置いて、上体を起こした。

「シャルル、私ね……戦争で姉上が死んで……泣き虫の私が、家督を継がなきゃならなくなって……」

　胸の上で、レイチェルが告白する。
　だがその間、体の方は着ているキャミソールの裾に手をかけ、捲り上げようとしていた。

「凄く不安で……自分が姉上のスペアだって考えると、凄く虚しくて……」

　キャミソールが胸の下までめくられる。綺麗なお腹と、可愛らしいおへそが露出した。

「義勇軍に赴任した後、姉上を殺した男がこの町にいるって知って……私じゃ、勝てるわけないって分かっていても、仇を……刺し違えてでも、仇を討って……」

　胸まで露出し、大きめの乳房が揺れる。つんと勃った乳首は薄いピンク色をしており、谷間はじっとりと汗ばんでいた。

「でも、シャルルと会ってから、死ぬのが怖くなって……シャルルに会えなくなるのが怖くなって……シャルルのことばかり考えるようになって……」

　キャミソールを脱ぎ捨て、彼女は手探りで俺のズボンを脱がせようとしてきた。切なそうな声で語られる告白に、俺は抵抗する気がなくなっていく。

「それなのに私……結局自分の意地で、死のうとして……！　それなのに、シャルルは私のことを好きって言ってくれたから……！　もう、我慢できないの！」

　レイチェルの目元に涙が溜まり始めたとき、すでに俺のムスコはズボンとパンツから解放されていた。そそり立つそれを、レイチェルの手がそっと撫でていく。それだけでも静電気のような快感が、俺の体を疼かせた。

　‐‐なんだ。レイチェルも、悩んでいたんじゃないか。

　俺がこんなに強く、凛々しい彼女に釣りあうとは思えない……そんなことに考えていたのが馬鹿だった。彼女だって悩むのだ。人を憎んだり、好きになったり、苦しんだりするのだ。
　そっと、レイチェルの首を抱き寄せる。すると彼女は安堵したような笑みを浮かべ、人懐っこく俺の頬を舐めてきた。

「うっ……!?」

　突然、何か柔らかい物が股間を圧迫してきた。

　‐‐ま、マジかよ！

　彼女の豊かな双峰が、俺のムスコを挟み込んでいる。両手を使って上下に擦り合わせ、もちもちと刺激してくる。次第に汗のニオイが漂い始め、胸の動きも激しくなっていく。

「ふふ……シャルルのおチンポ、おっぱいの間で震えてる♪」

　レイチェルも興奮しているのだろう。息が荒くなり、青い瞳の奥まで蕩け切った表情になっている。そしてなにより、普段硬派な彼女がこうまでも豹変し、卑猥な言葉を口にしているという事実が、俺の欲望を掻き立てていく。形を変えながら、胸が股間を刺激し続け、時々指先が先端部分をつついてくる。

「う……気持ち、いい……」
「先っちょからぬるぬるが出てきた……♪」

　ぐりっ、と指先が擦りつけられ、体が痙攣する。その震動を楽しむように、レイチェルは俺の腕の中で笑った。
　じわじわと生殺し状態で与えられる快楽に、俺はレイチェルの首を抱きかかえて必死で受け止めていた。あまりにもみっともない。完全に、辱められている。しかもそれを、今まで恋い焦がれていた女の子にされているのだ。そんな俺の目を、レイチェルはじっと見つめ……

「……やーめたっ♪」

　突然、胸を股間から離した。
　空気がひんやりと肉棒を撫で、中途半端に快楽を中断された虚しさが広がる。

「れ、レイチェル……？」
「おっぱいでイきたかったのねぇ？　でも、だ〜め♪」

　首は愉快そうに笑い、体の方はゆっくりと立ち上がった。そして見せつけるように、短パンのボタンを外す。

　‐‐ま、まさか!?

「シャルルはぁ……私のために料理を作ってくれたよねぇ♪　だからお返しに、私がシャルルを料理してあげる♪」

　するりと、短パンが脱ぎ捨てられた。生足が完全に露出され、まばゆいばかりの曲線美を晒している。だがそれよりも重要なのは、彼女がノーパンだったということだ。考えて見れば下着まで汗だくだっただろうし、奥さんは下着をつけないらしいから、風呂に入ってから身に付けていなかったのだろう。

　その股間部……粘液が滴るその割れ目を、レイチェルは指で広げた。グロテスクなピンク色の肉から、蜜が止めどなく溢れている。奥の方が微かに脈動し、何かを待ち望んでいるかのようだった。
　そして首の無いオールヌードを観賞させられているうちに、俺はこの淫らな穴によって与えられる快楽を心待ちにしていた。

「シャルルのおチンポ、私の処女まんこの中で煮込んであげるっ♪」
「しょじょ、って……!?」

　俺の言葉を遮るように、レイチェルは腰を降ろした。
　蜜壺の入口に、肉棒の先端が触れる。ぬるりとした、柔らかい粘膜が妖しい快感を与えてきた。


　そのまま一気に、まるで吸い込まれるかのように咥え込まれた。

「あ、あああああっ♪」

　レイチェルが体をのけ反らせた。薄い膜を突き破った感触も一瞬で、あっという間に奥まで到達する。彼女の中はとても温かく、柔らかい膣肉が急激に狭まり、甘い圧迫感を与えてきた。
　彼女に凌辱されるという形で、俺達はお互いの『初めて』を捧げ会ってしまったのだ。

「痛、い……けど気持ち、イイ♪　ほ、らぁ……シャルルのおチンポ、私の中で煮えて、いくよぉ♪」

　レイチェルの口から涎が垂れ、俺のシャツを汚す。だがそれさえも、俺の快感を増すだけだった。
　むわりと辺りを包む、彼女の汗のニオイ。それを吸い込む度に、体が熱くなっていく。膣内に収められた肉棒には、多数の肉粒が吸いついて刺激を続ける。
　やがて、レイチェルが腰上下させた。

「うう、あ、ああああっ！」

　肉の筒が甘く摩擦してくる感触。胸で刺激され、焦らされ、溜まっていた物が抑えられなくなった。
　快感が全身を突きぬけ、あっという間に尿道から熱い液体が迸った。

　‐‐や、やばい……なんだこれ……

　自分の手と妄想で抜くのとは全く違う、圧倒的な快感。酔いしれて脱力する俺に、レイチェルの首が笑いかけた。

「んふふ、シャルル、美味しい……♪」

　蕩け切った笑顔の彼女を見て、さらに頭がクラクラしてきた。このまま一緒に蕩けていたい……そんなことを考えたとき。

「えいっ♪」
「うっ!?」

　レイチェルのが再び、腰を振り始めたのだ。単調な上下運動から、左右に捻りを加え、前後に揺さぶり、快感を強制し始める。やたらと激しく、それでいて巧みな動き。卑猥な水音が、店内に響いている。
　そう、俺の肉棒は萎えていなかったのだ。いや、一瞬萎えたものの、彼女の汗のニオイで再び勃起したようだ。硬さを取り戻した肉棒に、レイチェルは容赦なく二回戦を始めたのだ。自分の若さが恨めしい。
　と、言うより、俺はここまで性欲が強かったのか？　これでは完全に変態だ。

「あは……あんっ、きゃぅっ♪　ああぁん、ひゃっ♪」

　だが、まともな思考すら許されなかった。腕の中で彼女の首が囀り、腰の上で体が躍る。それはもはや、暴力的な快楽だった。止めるよう懇願しようにも、言葉にならない。それでも、凛々しい女騎士の面影などまるで無くなったレイチェルの姿は、俺の欲望を掻き立てるばかりだ。これがレイチェルの、魔物としての本性なのだろうか。或いは、今まで溜めこんできた物が、俺に向かって爆発してしまったのか。
　あっけなく、俺は二度目の絶頂を迎えてしまう。大量に吐き出された白濁が、膣を逆流し少量溢れだす。魔物にとっては最高の御馳走だという液体を、彼女は貪欲に搾りとる。

「ひぎ、来たぁ！　あぁ、あぅぅぅぅ♪」

　そして、すぐに次の快楽が始まる。容赦なく、根こそぎ搾ろうとするかの如く腰が振られ、膣が締め付けられる。
　俺はまさしく、彼女に料理される食材となっているのだ。

「ふああ、ひっ、イクぅ！　イっちゃうのぉ♪　シャルルぅ、シャルルーッ♪」

　レイチェルの嬌声を聞いているうちに、




　俺は、考えるだけ無駄だと悟った。