カグラには最近、悩みがあった。それは、最近出来た彼女の事である。

　約一月前、カグラに人生で始めて彼女が出来た。マッドハッターである彼女はボーイッシュでサバサバしており、男装を好むちょっと変わった女の子である。彼女とは、普通じゃない出逢い方をして結ばれた。そのファーストコンタクトが異常であっただけに、それが後々まで尾を引いているのである。

　その彼女に関する悩みとは何か。それは、以下の通りである。



「メイ、待たせてごめん」
「いや、別に待ってないさ……カグラ、駄目じゃないか」

　とある日のデートにて。待ち合わせ場所に来たカグラは、いきなり彼女のメイに駄目出しをされる事となった。

「あの学祭の時の格好、滅茶苦茶可愛かったんだから、ちゃんと可愛い服を着ないと」

　彼女は、カグラが女装して待ち合わせに来なかった事を残念がる。いつもそうなのだ。結ばれてからというもの、カグラは女装させられる事が多くなっていたのだ。彼女にとって、学園祭の時に見たカグラの女装のインパクトが相当強かったらしい。彼女自身、普段は男装しており、今日も燕尾服を着ている。彼女自身が男装を好むので、カグラが女装すれば、ある意味釣り合いは取れているとも言える。

　さすがに男として見られていないという事は無いのだろう。カグラとメイの身体の相性は抜群で、エッチの時になれば、カグラの逸物でメイがよがり狂う事も珍しくない。もっとも、彼女主体で馬乗りになって動くという情けないシチュエーションではあったが……。

「男の格好した二人が手を繋いでたら可笑しいだろう？　さあ、早く女装しなくちゃ！」
「待て！　その理屈はおかしいっ！　メイが女の子らしい服着たら万事解決だと思うんだ！」

　何故わざわざ男女逆転した格好をしなくてはならないのか。カグラは女性向けファッション店に引きずられながらも、尤もだと思う意見を言う。しかし、彼女はそれで納得してくれなかった。

「ボクに女の子らしい服は似合わないし、性に合わないんだ。それに、学園祭の時のカグラの女装、凄くキュンキュンきたんだよ。なのに、あれ以来自分から見せてくれないじゃないか！」
「あんなの、二度と自分からやるかっ……って、ちょっと！」

　カグラはメイにズルズル引きずられて、哀れな子牛のようにファッション店へと連行されていった。


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「可愛い！　やはりボクが見込んだ通りだよ」

　着せ替え人形のようにカグラに色々な服を着せては、楽しそうな声をあげるメイ。それだけでなく、ショップの店員までもが一緒になってコーディネートを楽しんでいる。一方カグラは、憮然とした表情で服を着せられていく。

「こんなのはどうでしょう？」

　カグラの心中をよそに、店員がどんどん服を持ってくる。店員が持ってきたニットワンピースをメイは手に取り、カグラに見せてくる。

「凄くカグラに似合ってると思うよ。さあ、これを着てよ」
「やっぱり中性的な顔だから、大抵は似合いますね」

　男らしくないと言われたようで、カグラはあまり嬉しくなかった。それでも、メイが心の底から楽しんでいるようで、その空気をぶち壊すのは気が引けた。何だかんだで、カグラはメイの虜になっていたのだから。しかし、このままでは少し拙い。せめて、メイに男らしさを見せられたら、とカグラ思うのだが……。

　それから約一時間程も、カグラの女装ファッションショーは続いた。



　ようやくファッション店から出たカグラたちは、その後もショッッピングを楽しんだ。と言っても、楽しんでいたのは主にメイであったが。ちなみに、カグラは女装させられたままである。値段の事もあり、比較的安価な服を買ったのだが、メイはコーディネートの出来にご満悦である。（カグラにとって）意外な事に、女装していても周囲の人に違和感が無いのが不思議であった。

　一度、メイがクレープを買いに行くのを待っていた時、チャラ男にナンパされるという事があった。結果的に、メイが「ボクの彼女に手を出さないで欲しい」と言ったのだが、チャラ男たちはメイを男装した女子だとは思わずに「チッ、彼氏持ちかよ……」と呟いて去っていったのだ。カグラは「おいっ、気付けよ！」と思わず叫んでしまった。その時、隣でメイが爆笑していたのが忘れられない。

　そろそろ、男を見せるときだと思う。しかし、どうやって男だと実感させられるだろうか。運動は元々得意ではないし、そもそも体格が小さくて外見上の男らしさは皆無に近い。

（やっぱ、アレしか無いかな……）

　カグラは密かに、とある決心をした。



　デートを終え、メイの家に来たカグラたち。メイの家には現在、誰もいない状態である。

「ボクの父と母は今日、家に居ないんだ。だから、泊まってもいいよ？」

　メイによれば、両親は結婚記念日の為、どこかに泊りがけで旅行に行っているらしい。メイ曰く、弟か妹がデキても不思議ではないとの事。カグラも、メイの両親には挨拶を済ませているので会ったことがある。メイの父は温和な雰囲気のある人で、母はメイを妖艶にした様な感じの人である。ちなみに、メイと違って夫の前では男装をしていない。カグラから見ても夫婦仲はすごく良さそうで、それは以前聞いたメイの母の「夫の前では心置きなくオンナの姿をさらけ出せるのよ」という言葉に表れている。

　カグラも、メイとあんな夫婦になれたら、と思う。その為には、まずはメイにカグラが男だと強く印象付けたい。女装させられているようでは、まだまだである。だが、カグラは今、男女再逆転を実行させる。

　一つ屋根の下で、好きな女と二人きり。当然、カグラはメイへの欲情が高まってくる。

「メイ……」

　カグラはメイを抱き寄せ、顔を近づけて口づけていった。

「んっ、ちゅぱっ……カ、カグラ、いきなり……んんっ！　んむっ……」

　唇を奪われたメイは、驚きの声を上げる。当然である。今まではメイの方から誘惑するパターンが多く、カグラの方から積極的に迫る事は皆無だったのだから。しかし、今は違う。今日は、カグラの方がメイを心置きなく抱くつもりである。

　最初は驚いていたメイであったが、すぐに身体の力を抜き、カグラを受け入れる。彼女はカグラの首筋に腕を回し、そして自ら舌を絡めてきた。

「んふぅっ！　んんっ、んちゅっ……ちゅぅっ！　ん、カグラっ、カグラァッ……あむっ！　ちゅっ、ちゅっ……」

　これまでに無いシチュエーションで、メイはすっかり頭がぼうっとしているようである。いつにない乱れように、カグラもまた気分が高ぶってくる。

「んはっ……ああぁぁっっぁぁあアアァァァーーーっ！」

　唇が離れた瞬間、メイは背を仰け反らせて大きな声を出す。カグラはそんなメイを強く抱き寄せ、再びその唇をキスで塞ぐ。

「ああっ、あはぁぁっ！　あっ……あむっ、んふっ……ん、んじゅっ、じゅぱっ……」

　舌を絡め、唾液を啜り、嚥下する。そんな彼女の口の動きに、カグラは先へ進みたくて堪らなくなる。

「メイ、良い？」

　カグラは唇を離し、メイに問う。メイは、今度は彼女の番だと促されたかのように、身体を伏せてカグラの股間に顔を近づけようとする。しかし、カグラがメイに問いかけた意図は、愛撫をさせる為ではない。

「メイ、ベッドに寝転んでくれない？」

　カグラはメイをベッドに導き、仰向けに寝かせる。今日はメイにイかせて貰うのではなく、こっちがイかせるのだ。カグラはメイに覆いかぶさるとまたもや唇を奪い、同時に右手を彼女の胸に這わせた。燕尾服のコートを開き、シャツ越しに豊満な胸をまさぐっていると、彼女が甘い声で鳴きはじめる。

「んむぅっ！　んふぅっ……んあっ！　やっ、おっぱい、いいっ……ひぅっ、うむっ！　むぅぅっ……んんーっ！」

　時折喘ぎ声を漏らしながら、メイが快感におののく。カグラはひとしきりメイの胸を堪能すると、今度は右手を下の方へと持っていく。そして彼女のズボンの前を片手で器用に開くと、秘所をまさぐった。

「んはぁッ！　ああっ、ああアァァァァーーーっ！　もう、もうダメッ！」

　珍しく余裕をなくした彼女が、快感の大きさをアピールする。普段にないシチュエーションで愛撫されている為、いつになく乱れているのだ。

　カグラは口付けを終えると身体を起こし、彼女の足の間に潜り込む。そして、彼女の股座に顔を埋めていった。

「あんっ！　やっ……そんな事、されたら、ボク……はあっぁぁぁぁっ！」

　ショーツの上からぐりぐりと鼻面を押し付けられ、メイは喘ぎまくる。その声がもっと聞きたくて、カグラは指も動員して愛撫の手数を増やした。今やメイは、我を忘れて快感に喘ぐのみである。

「メイ、脱がすよ」

　カグラはメイに声を掛けると、ズボンとショーツを抜き取る。ダメとは言いながらも、メイも腰を浮かして脱がせるのを手伝った。

「メイのここ、凄く綺麗だ」

　普段じっくり見た事が無いメイの秘所を眺め、カグラはますます欲望が増していく。吸い込まれるように顔を近づけ、ついに秘所に口付けた。

「ひゃあぁぁっ！　ああっ、ああーっ！」

　メイにとって、秘所をカグラに舐められるのは初めてと言ってもよかった。その為、いつもの飄々とした口調は、もう出てこない。ただ与えられる快感にあえぎ、腰を揺らせるのみである。カグラはメイの太ももをしっかりと抱え、舌を突き入れてナカを味わい、指も使って彼女のクリにも刺激を与えた。

「いやぁっ、やめてぇっ！　おかしくなっちゃうっ、おかしくなっちゃうよぉっ！」

　彼女はイヤイヤをしながら、カグラの頭を押しのけようとする。しかし、その腕には力がこもっていない。カグラはやめるつもりは全く無い。彼女の「いやっ、やめてっ」はOKサインだと分かっていたから。その内に、彼女はカグラの頭を自身の秘所に押し付けるようにした。

　正直に言えば、クンニはそれほど上手い訳ではない。ただ、いつもと違うシチュエーションに酔ってしまい、メイは一気に絶頂へと駆け上っていく。

「あはぁぁっ！　やっ、もう……イクっ、イクぅぅぅーーーっ！」

　びゅっびゅっと潮を噴出しながら、彼女は絶頂に達した。蜜があふれ出す秘所が卑猥にヒクヒクと蠢く。

　予想以上の彼女の乱れっぷりに、カグラはもう我慢ができなくなる。カグラは身体を起こすとスカートをたくし上げ、下着も脱ぎ捨てて逸物を露わにする。そして彼女の足の間に腰を割り込ませるといきり立つ逸物を秘所にあてがい、ズブズブと埋めていった。

「ああんっ！　今はイったばかり……ひゃあぁぁぁーーーっ！」

　繋がった瞬間、彼女は一際大きな声をあげる。身体をガクガクと震わせ、ハァハァと息を荒げ、それでいて必死で意識を繋ぎとめようとする。

「はあんっ！　おっきいよぉ……カグラ、いつもと違うぅっ、ひぃぃぃっ！」
「当たり前だろ。俺だって男なんだよ！　メイのそんな姿見て我慢できるかっ！」

　カグラは最初から激しく動き、メイを責め立てる。

「ああっ、ああぁぁっ！　しゅごいっ……奥、ガンガン突かれて……はぁぁぁぁっっ！」

　一方、メイは既に最奥をごちゅごちゅと抉られ、頭が真っ白になっている。積極的な責めに、何度も頭がスパークし、そして強制的に意識を戻される。

（ああっ、凄いっ……やっぱり男の子だ）

　いつもは中性的な顔立ちや女装ネタでからかっているのだが、今日はそんな余裕は無かった。圧倒的な責めに、否応無く男を感じていた。エッチの時はいつも感じていたのだが、今日は特に自身がオンナだという事を、メイは実感している。

　それでも、戸惑いは無かった。男装と女装という組み合わせだが、今や完全に立場が逆転していた。メイは、もっと自分にオンナだと主張させて欲しいと思った。だから彼女は、腕を伸ばしてカグラに甘える。

「はあんっ！　ねえ、ぎゅって……ぎゅぅって、して？」

　いつになく可愛らしくおねだりするメイ。その様子に、カグラは心を打ち抜かれたかのような感覚を受ける。カグラはメイに覆いかぶさると、その身体を思いっきり抱きしめた。

（はぁぁっ！　たくましいよぉ……）

　メイは、抱きしめられて至福を感じている。服越しでも分かる、男女の体つきの違い。予想以上に固い身体に抱きしめられ、自身の中のオンナが覚醒していく。もっとさらけ出したい、もっと全てを出したい。そんな感情に、メイは支配されていた。

「はふぅ、あふぅっ……ねえ、もっとっ、もっと激しくシてぇ！」

　メイのおねだりに応じ、カグラは腰の動きを早めていく。膣奥の奥深くを抉り、彼女にいっぱい喘がせ、艶やかでありながらも可愛らしい声で鳴かせる。彼女は、カグラの首筋に強くしがみ付き、足でも抱きつき、全身でホールドしてくる。

「ああぁっ！　ひもひぃっ！　ひもひぃよぉっ……ああっ！　ああっ、はぁっ、ああアアあぁぁーーーっ、もうダメっ！　ボク、もうイクぅぅぅっ！」

　甲高い声で泣き叫び、快感の大きさを口にするメイ。結合部から聞こえてくる水音の大きさが、彼女の絶頂が近い事を物語っていた。

「やばいっ、もう出そう！」
「ああんっ！　一緒に、一緒にっ！　ボクもイクっ！　イクイクイクイク、イッくぅぅぅぅぅーーーっ！」

　全身で抱きつく力をぎゅっと強め、彼女は絶頂に達する。カグラも同時に、彼女のナカにありったけの精液を注ぎ込んだ。


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「ふふっ、今日のカグラ、激しかったね。ボク、凄く興奮したよ」

　激しい時間の後のひと時。メイはカグラに抱きついて甘える。カグラも、そんなメイを可愛がるように、その頭を撫でる。

「普段は可愛いのに、凄く男らしくて……ボク惚れ直しちゃったよ」
「男に可愛いって言うなよ」

　メイの言葉に、カグラは少し憮然とする。これでも一応男なので、可愛いという言葉は、あまり褒め言葉にならない。

「だて、事実じゃないか。でも、さっきのカグラ、本当に男らしかったよ。ボク、負けたと思ったもんっ」

　ボクのこんな姿を見せられるのは、カグラだけ。そう言って、メイはチュッとカグラに口付ける。それには彼女の照れ隠しも含まれていたが、一方でカグラの新たな一面が見られた嬉しさも混じっていた。口調こそ飄々とした調子に戻っているものの、先ほどよりカグラに男を意識し始めているのだろう、メイはカグラの胸に顔を埋め、甘え放題に甘える。

　そしてカグラも、メイの女の子っぽい仕草に心を奪われる。これで、少しは男の一面を見せられたかなと思う。

　不意に、彼女が顔を上げる。

「さっきは、無理やり女装させてごめんね。あまりにカグラが可愛いからボク、少しはしゃぎすぎてた」

　彼女が不意に謝ってくる。どうやら、俺の密かな悩みに気付いていたらしい。すこし弄りすぎたと、彼女なりに反省しているのだろう。

　しかし、俺も少し気にしすぎたかなと思う。いくら普段から女装で遊ばれようとも、肝心なところでは男として見てくれる。それで充分な気がした。

「少し俺も気にし過ぎてたし、メイが望むなら偶には女装しても良いかな」

　まあ、人前でなければ、とカグラは付け加える。さすがに女装して表を歩くのは嫌だが、メイが喜ぶなら、室内でやるくらいはいいかなと思ったのだ。

「ホント！？　じゃあ、今度ボクと一緒に○○に行こうよ！　新しいコスプレ専門店が出来たんだよ」
「ちょっ！　コスプレって……おいっ！」
「ふふっ、どんな可愛い服を着せようか。ああ、今から楽しみだよ」

　あらぬ妄想を始め、トリップしていく彼女。相変わらずな様子に、俺は密かにため息をつく。しかし、それで彼女が喜ぶなら、それでもいいかと思う自分が居る事も、また事実なのであった。