孤独と貴女とオレと不安 前編
「私がこの洞窟の奥深くに身を置いて…もう何年になるかはわかりません。それほどまでここに訪れてくれる人はいませんでした。」
「それでも何度かここの洞窟に訪れてくれる人はいたのです…が、その人はここへ来るまでの道のりの途中にいた魔物達と次々と契りを交わし、夫婦となっていくのです。」
「運よくその魔物達を乗り越えた人も中にはいました。しかしこの洞窟私がおもっている以上に厄介なものなのですよ。」
「来る途中に二手に分かれているところがあったでしょう?それも二回。」
「一番初めの分かれ道は、片方はここへと通じていますがもう片方にはあのバフォメットのすべる魔女達が集会を開く広場へと通じているのです。」
「そちらへ進んでしまった方は彼女達の虜となって二度とこの洞窟から、あの集会場から出てきません。」
「魔女達と仲良くにゃんにゃんして過ごしていることでしょう。腹立たしいですね。」
「二番目の別れ道。それの片方はここへ通じていますが、もう片方にはあのドラゴンの巣窟へと通じているのですよ。」
「そちらへ進んでしまった方は…残念ながら生きてはいません。皆、ドラゴンの餌食となってしまいました。」
「ここに住むドラゴンはそれは強く、伝説的でありとても獰猛…。だから滅多に人も寄り付きません。」
「そのせいか、この洞窟内へ足を踏み入れるものは数少ない。」
「それどころかこの最深部まで到達してきてくれる人はいない。」
「友達であるジャイアントアントの女王に作ってもらったこのダンジョンですが、なんなのでしょうね?」
「もはや一種の嫌がらせですよ。」
「ここまで誰も通さないくらいに難易度上げてくれなんて頼んでないのにこれですよ!」
「他の魔物娘達も勝手に住みついて。」
「そのおかげで何度期待を裏切られ訪問者を持っていかれたことか…。」
「…あの子とは仲良くやっていたはずなのですが…嫌われてでもいたのでしょうか?」
「だからこんな嫌がらせじみたダンジョンをプレゼントしてきたのでしょうか…今となってはわかりません。」
「ですが!」
「今の今まで待ち続けたかいというのがありました!」
「来る日も来る日も待ち続けた意味がありました!」
「一人淋しく眠り、幾度枕を濡らしたことか…!」
「それでも私はただ待ち続けるしかなかったのですが!」
「今日、この日!」
「あの難しすぎるダンジョンを全て乗り越えて来てくれた!」
「あなたという存在に、たった一人の選ばれた者に出会えたのですから!」
「待ちに待ったこの瞬間を!」
「心待ちにしていたこのときを!」
「ようやく迎えることができました!」
「だから!」
「私はあなたへこの言葉を送ります!」
「私の気持ち全てを乗せたこの言葉を!」
「私と!」
「子作りしてもらえませんでしょうか!?」
「遠慮します!」
オレこと黒崎ゆうたは目の前の女性に向かって大声で、ハッキリと、お断りの返事を返した。
まったくわけがわからないっ!
こんな薄暗い洞窟を抜けて、洞窟には不釣合いな豪華な扉を開けてきたと思えばここはいったいどこなんだ!?
この異常なほど広く豪華な生活感の溢れた部屋は何だよ?
目の前にいる奴は何だよ!?
見た目オレよりか年上、それも二十代中盤あたりの女性。
髪の毛はサラサラ。しかし目透き通るような綺麗な緑色。
染めて出るような色じゃない、自然な美しさ。
…でもなんか、その髪に混じって蛇がいる。それも二匹。
それに肌の色は……これ、人の色じゃない。
薄い青がかった肌の色をしている。
額には何かの紋様。
自身の肌から感じるピリピリとした空気。
その感じる空気は師匠に挑んだときに感じたことのある、絶対的な実力の差。
それがただ立っているだけで感じさせられる。
そして、一番目を引いたのは―
「…蛇、ですか?」
「ええ、蛇ですよ。」
下半身が蛇だった。
しかも先っぽ動いてるし。
…これはもうコスプレの類で済ませられないよな。
これにより目の前の女性に向かって言えること、それは―
―人外。
それ以外に言いようがない。
でも、あえて別の言い方が当てはまる。それすなわち―
―美女。
それもかなりの。
10人中10人が、いや100人中100人が口を揃えて美人というくらい。
それくらいに彼女は綺麗で美しかった。
普通ではない髪の色が魅力的で。
人とは違う肌が魅惑的で。
下半身が蛇だというのにそれが逆に彼女の美しさを引き立てる。
こんな美女に言い寄られれば頷くのが当たり前なんだろうけど。
…でもさ!
初対面で名前も知らない人にいきなりの告白だよ!?
ないだろ。ないわ!なさすぎる!!
「初対面で告白はどうかと思うんですけどね…?」
「恋や愛には時間など関係ありません!」
どーんと胸を張って言う彼女。
胸を張ったせいで規格外に大きな胸が揺れる。
…その大きさは反則だろ。
小ぶりのスイカとでも言わんばかりの形のいい胸しやがって。
腹だってくびれて女性らしいプロポーションだし。
魅力的すぎるんだよ…。
「さぁ!私と子作りしてもらえませんでしょうか!?」
「だから断る!」
さっきと同じことを言ってきやがった!
堂々といえるところがすげー!
積極的すぎる!
積極的な女性は勘弁願いたく…はい、本当は好きです…。
好きだけど…。
「なぜダメなのですか?…あ!言い方が難しいからですね!それなら言い方を変えましょう。
私とセック―」
「ストーーーーップ!!」
この人(?)今とんでもない爆弾発言したぞ!
言い方換えれば良いってなんか逆にやらしくなってんじゃねぇか!!
「何ですか?言い方が気に入りませんでしたか?」
「気に入る以前の問題でしょうに…!」
「あ、もしかして体ですか!この私の体が好みじゃないのですか!?」
彼女は自分の胸を持ち上げる。
形のいい胸が彼女の手により形を変えていく。
そんな泣きそうな顔でこっち見んなよ…!
胸揺らしまくんないでくれよ!
…うぅ、理性が。理性の壁にヒビが…。
「!もしかしてこんなに大きな胸はお嫌いですか!?つるつるぺったんの体の方が大好きだったりするんですか!?毎日続けてきた豊乳マッサージが仇となりましたか!?」
「そこは全力で否定させていただきます!」
つか、さらなる爆弾発言したぞ!
「だったらいったい何がダメだというのですか!?」
全部ダメです!とは言えなかった。
スタイルは良いし、顔もまた良い。
ここまで話したからわかるが彼女きっと好きな人にはとことん尽くすタイプだろう。
あまりにも良いとこだらけでダメなんていうのはあほらしくなるほどだ。
でもねー。
「オレは名前も知らない相手としたくはないんですよ!」
純情なんだぞ!こっちは!
まだまだ初体験も済ませてないガキなんだぞ!
「エキドナのエリヴィラ・アデレイトです。」
「あ、どうも。黒崎ゆうたです。」
「さぁ!これでお互いの名前もわかったことですし早速私と子作りしましょう!」
「はっ!しまった!!」
やられた!
あまりにも自然だったから普通に答えちまった!!
「黒崎ゆうた…黒髪黒目からするにジパングの人…。それではユウタ君とお呼びしてもいいですか?」
「…良いですよ。」
「あ!もしくは…その…ユウたん、なんて…/////」
それはやめてもらいたい…。
初対面の人に向かってよくもまぁそんなラブラブカップルが言いそうなことを言えるな…。
「ユウたん……あぁなんといい呼び方…♪恋人同士が呼びそうですね…/////」
「そうですね…。」
「私のことはエリたんと呼んでもらってもかまいませんよ…/////」
お断りします。
「さ、シましょう!大丈夫ですよ、気持ちいいはずですから。」
「え?何!?ハズって言った?!」
「なにも怖がることはありませんよ。優しくしてあげますから。」
そんなことを言いながら蛇の体を揺らし、徐々に近づいてくるエリヴィラさん。
怖えー!!
地面を滑って移動するみたいなその動き怖えー!!
オレは下がるしかない。
捕まったら終わる。いろんな意味で終わる。いろんなものが終わる!
それは火を見るよりも明らかだ!
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!これじゃああまりにも選択権がなさすぎる!」
「…といいますと?」
「せめてオレの意見を聞くとか…。」
「…そうですね。良妻として夫の意見を聞くのは当たり前。それなら―」
エリヴィラさんはすぐさま引き返し、ベッド(高級ホテルにありそうな天井付)の中から何かを取ってきた。
それをオレの前まで来て手渡す。
すぅっと、女性特有の甘い香りがオレの鼻先を掠めた。
…いい匂いするな。香水…とかじゃない自然な匂いだ。
「…これは?」
その手渡された物は良くわからないものだった。
色は青色。形は長方形。ベッドの上から取ってきたところからするに、おそらくコレは―
「枕です。」
「…枕、ですか。」
何で枕?
しかもよく見ればその枕の真ん中にマークと、さらにその中に記号が入ってる。
ピンク色のマーク。…たぶんコレ、一般的にハートって呼ばれるものじゃないのかな?
その中に入っている見たことない記号。
枕をひっくり返す。
そこには同じハートマーク。その中にも同じ記号。
…え?同じ?
「エリヴィラさん、これはなんの枕ですか?」
「あぁ、エリヴィラさんだなんて…エリヴィラでいいのですよ。勿論敬語なんて堅苦しいものも必要ありません。」
そういう彼女の顔はとても優しそうで。
迫ってくるような気迫は見られない。
…見れば見るほど魅入られそうなので目をすぐさま逸らす。
「……エリヴィラ、これは?」
「よくぞ聞いてくれました!」
エリヴィラはどこからかオレが持っているのと同じタイプの枕を出した。
ただし、そちらの枕は色が赤い。
赤と青のペアの枕。
真ん中にハート。
見たことない記号。
…おやおや?コイツはもしや…?
「夫婦の営みには欠かせない、『YES−YES枕』です!!」
「NOは!!?」
拒否権なし!?
両面同じ記号が書かれていたのはそういうことか!!
「夫の無理難題にも全力を尽くして答えるのが妻です。NOなど必要ありません。」
「これ夫用だろ!?」
「ちなみに『YES−はい枕』なるものもあります!!」
「変わってねー!?」
何、この女性!?
突っ込みどころがありすぎる!
オレは漫才でもしてるのかよ!?
「さぁ、その枕を持ったまま私とともにベッドインを…ああ!『YES』の面が向いていますね!肯定という意味で受け取ってかまわないのですね!?」
「肯定以外に返しようがないだろこの枕!」
さっきよりも選択権減ったぞ!いや、さっきもなかったんだが…。
オレの選択肢全部『YES』じゃねぇか!
答えようもない!
「と・に・か・く!」
オレはエリヴィラに枕を突き出す。
「返す!お返します!」
しかし、エリヴィラは受け取らない。
両手を背へまわし受け取る意思さえ見せない。
そんな姿勢をされると大きな形のいい胸がひときわ強調されてしまうので迂闊に目を向けられないのが困る。
「…受け取ってよ。」
「返すのなら。」
エリヴィラは振り返る。
この広く豪華な居住空間の奥を見据えて。
その視線の先にあるもの。
それはもうやはりというか…なんというか。
「ベッドの中で愛の言葉とともに…////」
やっぱり行為に及べというのか…。
さっきっからそればっかじゃん。
「いや、だからさ。初対面の人間とそういう行為に及ぶのはどうかと思うんだよね…。」
「ですから、愛に時間など関係ありません!」
いいこと言った!
言ったけどオレに言ってもらっちゃ困るな。
いや、こんな美人から迫られたら嬉しいけどさ。
「それならこういうのはどうでしょうか?」
エリヴィラはオレのほうへ向き直り、オレの瞳を見つめて言う。
「私があなたの夫となってどれほど良い事があるかをお教えしましょう!」
「はぁ…。」
また話がおかしな方向へ…。
夫って…オレまだ十八歳なんだけど。
あ、十八歳は結婚できる年齢か。
「そうですね…まずは朝から始めましょう。朝、ユウタ君が寝ていたらおはようのキスで起こしてあげます!」
おぉ…そいつは嬉しいな…!朝っぱらからラブラブですか。
望ましいなおい。
…でもオレ朝早く起きちゃうほうだからな。今まで朝早くから授業に出てたから早起きの習慣は抜けないぞ。きっとオレのほうが先に起きてキスを……って何考えてんだ。
「料理だってできますよ。あなたの出身国のジパング料理だって作れますよ!」
おお、ジパング料理か。
どんな料理かはわからないけど少し興味があるな。
「そっそれから…あなたに『あーん』なんてことをしてもあげちゃいますよ…きゃっ////」
そこで照れるのか。
今まで恥ずかしいことかなり言いまくってきてたのに…。
「お風呂だって一緒に入りますよ。それで一日の疲れを労わるように背中を流してあげて…。」
…涎垂れてるよ。
大の大人が涎垂らしてるよ…。
それで妄想にふけってるよ…。
「いつもずっと隣で手を握っていてあげますからね?指を絡めたラブラブな握り方をしてあげますからね?たまにはぎゅっと抱きしめてもいいですか?」
あれ?
疑問系になってね?
オレに聞いてね?
「夜は絶対一緒のベッドですからね!一人寝はさせないで下さいよ!私今まで一人で淋しかったんですから!絶対に約束ですよ!!」
あれ?気のせいか?
なんか既に約束までさせられてね?
なんかもう押し付けられてね?
こういう頼まれ方すると断るに断れなくなっちゃうんだよな…。
オレは押しにとことん弱すぎる。
「…でもさ。」
さっきのセリフの中に混じっていた言葉。
『あの難しすぎるダンジョンを全て乗り越えて来てくれた!』
…って言ってたよな?
「オレはそのダンジョンを抜けてきたってわけじゃない。」
「…?どういうことです?」
そのダンジョンって言うのがどんなものか知らないけど。
オレはそのダンジョンを乗り越えたわけじゃない。
きっとオレがいたあの洞窟内は罠やら他の魔物っていう奴がいなかっただけじゃないのか?
ボス一歩手前の通路にオレは来たということじゃないのか?
「何があったかはオレ自身もよくわからない。…でも貴女の口ぶりからするにあのダンジョンを超えてやってきた人を求めているんじゃないの?」
「…。」
危険な場所にいる生物はかなり強い。
その強さを保てるのは環境が厳しいからかはたまた―
より優秀な親の血をひいているか…。
この目の前の女性。
実力がとんでもないというのは肌で感じる。
だからこそより強い雄と子をなすタイプなんじゃないのか?
「それならオレは不適合だ。オレはそのダンジョンが終わった通路にでも現れたんだ。いったいどうしてかはわからないけどさ。」
ここがいったいどこなのか。
目の前にいるエリヴィラはなんなのか。
人外がいるここはやはり―
「構いません。」
彼女は言った。
静かに、オレの目を見つめて。
どことなく淋しさを感じさせる表情で。
「私達エキドナという種族はユウタ君の言う通りにダンジョンを越えて来たより強い者と子を成します。より強い、優秀な子孫を残すためです。ですが…そんなものを待っていればどれほど時間がかかるかわかりません。」
エリヴィラは言葉を続ける。
「強い種を求めすぎてチャンスを逃がすなど愚の骨頂。だからそんなものはどうでもいいのですよ。」
その瞳に浮かべるのは寂しさ。
「強い種など求めていません。私が求めるのはただ、私と一緒にいてくれる存在です。」
ああ、と思う。
この人は寂しかったんだなって。
さっき言ってた言葉。
『私今まで一人で淋しかったんですから!絶対に約束ですよ!!』
今まで、か。
ここがどんなところで、いったいどれぐらいの時間を一人で過ごしてきたのか考えられない。
だからこそこの女性は飢えていた。
温もりとか人肌とか、孤独を埋めてくれる存在に。
…だからって強行過ぎるのはどうかと思うけど。
「だから…さぁ。」
両手を広げて近寄ってくるエリヴィラ。
…あれ?どうしてだろう?
さっきの表情が消えてるぞ?
目がぎらぎら光って明らかにオレを狩ろうとしてるぞ?
さっきのシリアス台無しになってね?ぐらいの勢いだぞ…。
「私とともに…。」
徐々に狭まるオレ達の距離。
オレの後ろにはこの部屋の入り口。
ただし扉なので出るには一度開けなければいけない。
後ろを見せたら確実にやられる…。
って、なに逃げようとしてんだオレは。
さっきの言葉を聞いて逃げられるかよ。
オレはその場を動こうとせず彼女の手を受け入れようと踏みとどまった。
伸ばされる薄い青の両腕。
近寄ってくるエリヴィラの指先とオレの頬が触れ―
青い閃光がはしった。
「!!?」
「!?」
弾けたように指を離すエリヴィラ。
目を見開いて自分の指を見つめ、オレを見る。
浮かぶ表情は驚愕。
何が起こったのかわからないという様子だ。
オレも今何が起きたのかはわからない。
なんだ…今のは…?
痛みはなかったがまるで静電気のようにはしったそれ。
何か異形なものを感じさせた電撃らしきもの。
触れてはいけないものが接触したときの拒絶反応のような。
「そう…なのですね…。」
見ればエリヴィラはオレを見ていた。
見つめて微笑んでいた。
とても愛おしそうな眼差しで。
慈しむようなその瞳で。
「あなたは―
この世界の住人ではないのですね。」
「っ」
聞きたくなかった言葉。
それは心の隅で考えていたものを打ち砕く一言だった。
踏み切りで光に包まれてこの洞窟へきておいて、こんな人外を目にしておいてここがオレのいた世界だなんて思えない。
オレがまだあの退屈な日常の中にいるとは思えない。
―だからこそ思いたくはなかった。
この洞窟を抜ければどこかの山奥で、実はこの人は政府が黙認していた種族ですなんて白々しい嘘が通って欲しかった。
あの日常のままだと願いたかった。
退屈な日々にまた戻れると思いたかった…!
「…そっか。」
オレは笑う。
ひどく悲しげに、寂しげに。
やっぱりオレは別世界へととばされた。
それならあの家にもう帰れない。
オレのいた世界へ帰ることはきっとできない。
オレの家族の下へは帰れない。
「別世界の人間の血…ですか。ふふふ、どこかの英雄や勇者よりももっとすばらしい…。」
うっとりとした表情で迫ってくるエリヴィラ。
とても妖艶で最初のときに見せた優しそうな表情はない。
でもオレはそんな表情を見る余裕さえなくなっていた。
目の前が徐々に暗くなる。
それと同時に意識も遠のく。
さっきの電流のせいだか、体が疲れていたからかわからない。
オレは気を失い。
目の前のエリヴィラに倒れこんだ。
目の前に広がるのは闇。
それも感じたことのない不安。
家族に会えないという寂しさ。
あの日常から急に切り離されたことによる恐怖。
未知の世界。
そんな負の感情の中でオレは意識を失った。
FIRST FLOOR
これにて 制覇
「それでも何度かここの洞窟に訪れてくれる人はいたのです…が、その人はここへ来るまでの道のりの途中にいた魔物達と次々と契りを交わし、夫婦となっていくのです。」
「運よくその魔物達を乗り越えた人も中にはいました。しかしこの洞窟私がおもっている以上に厄介なものなのですよ。」
「来る途中に二手に分かれているところがあったでしょう?それも二回。」
「一番初めの分かれ道は、片方はここへと通じていますがもう片方にはあのバフォメットのすべる魔女達が集会を開く広場へと通じているのです。」
「そちらへ進んでしまった方は彼女達の虜となって二度とこの洞窟から、あの集会場から出てきません。」
「魔女達と仲良くにゃんにゃんして過ごしていることでしょう。腹立たしいですね。」
「二番目の別れ道。それの片方はここへ通じていますが、もう片方にはあのドラゴンの巣窟へと通じているのですよ。」
「そちらへ進んでしまった方は…残念ながら生きてはいません。皆、ドラゴンの餌食となってしまいました。」
「ここに住むドラゴンはそれは強く、伝説的でありとても獰猛…。だから滅多に人も寄り付きません。」
「そのせいか、この洞窟内へ足を踏み入れるものは数少ない。」
「それどころかこの最深部まで到達してきてくれる人はいない。」
「友達であるジャイアントアントの女王に作ってもらったこのダンジョンですが、なんなのでしょうね?」
「もはや一種の嫌がらせですよ。」
「ここまで誰も通さないくらいに難易度上げてくれなんて頼んでないのにこれですよ!」
「他の魔物娘達も勝手に住みついて。」
「そのおかげで何度期待を裏切られ訪問者を持っていかれたことか…。」
「…あの子とは仲良くやっていたはずなのですが…嫌われてでもいたのでしょうか?」
「だからこんな嫌がらせじみたダンジョンをプレゼントしてきたのでしょうか…今となってはわかりません。」
「ですが!」
「今の今まで待ち続けたかいというのがありました!」
「来る日も来る日も待ち続けた意味がありました!」
「一人淋しく眠り、幾度枕を濡らしたことか…!」
「それでも私はただ待ち続けるしかなかったのですが!」
「今日、この日!」
「あの難しすぎるダンジョンを全て乗り越えて来てくれた!」
「あなたという存在に、たった一人の選ばれた者に出会えたのですから!」
「待ちに待ったこの瞬間を!」
「心待ちにしていたこのときを!」
「ようやく迎えることができました!」
「だから!」
「私はあなたへこの言葉を送ります!」
「私の気持ち全てを乗せたこの言葉を!」
「私と!」
「子作りしてもらえませんでしょうか!?」
「遠慮します!」
オレこと黒崎ゆうたは目の前の女性に向かって大声で、ハッキリと、お断りの返事を返した。
まったくわけがわからないっ!
こんな薄暗い洞窟を抜けて、洞窟には不釣合いな豪華な扉を開けてきたと思えばここはいったいどこなんだ!?
この異常なほど広く豪華な生活感の溢れた部屋は何だよ?
目の前にいる奴は何だよ!?
見た目オレよりか年上、それも二十代中盤あたりの女性。
髪の毛はサラサラ。しかし目透き通るような綺麗な緑色。
染めて出るような色じゃない、自然な美しさ。
…でもなんか、その髪に混じって蛇がいる。それも二匹。
それに肌の色は……これ、人の色じゃない。
薄い青がかった肌の色をしている。
額には何かの紋様。
自身の肌から感じるピリピリとした空気。
その感じる空気は師匠に挑んだときに感じたことのある、絶対的な実力の差。
それがただ立っているだけで感じさせられる。
そして、一番目を引いたのは―
「…蛇、ですか?」
「ええ、蛇ですよ。」
下半身が蛇だった。
しかも先っぽ動いてるし。
…これはもうコスプレの類で済ませられないよな。
これにより目の前の女性に向かって言えること、それは―
―人外。
それ以外に言いようがない。
でも、あえて別の言い方が当てはまる。それすなわち―
―美女。
それもかなりの。
10人中10人が、いや100人中100人が口を揃えて美人というくらい。
それくらいに彼女は綺麗で美しかった。
普通ではない髪の色が魅力的で。
人とは違う肌が魅惑的で。
下半身が蛇だというのにそれが逆に彼女の美しさを引き立てる。
こんな美女に言い寄られれば頷くのが当たり前なんだろうけど。
…でもさ!
初対面で名前も知らない人にいきなりの告白だよ!?
ないだろ。ないわ!なさすぎる!!
「初対面で告白はどうかと思うんですけどね…?」
「恋や愛には時間など関係ありません!」
どーんと胸を張って言う彼女。
胸を張ったせいで規格外に大きな胸が揺れる。
…その大きさは反則だろ。
小ぶりのスイカとでも言わんばかりの形のいい胸しやがって。
腹だってくびれて女性らしいプロポーションだし。
魅力的すぎるんだよ…。
「さぁ!私と子作りしてもらえませんでしょうか!?」
「だから断る!」
さっきと同じことを言ってきやがった!
堂々といえるところがすげー!
積極的すぎる!
積極的な女性は勘弁願いたく…はい、本当は好きです…。
好きだけど…。
「なぜダメなのですか?…あ!言い方が難しいからですね!それなら言い方を変えましょう。
私とセック―」
「ストーーーーップ!!」
この人(?)今とんでもない爆弾発言したぞ!
言い方換えれば良いってなんか逆にやらしくなってんじゃねぇか!!
「何ですか?言い方が気に入りませんでしたか?」
「気に入る以前の問題でしょうに…!」
「あ、もしかして体ですか!この私の体が好みじゃないのですか!?」
彼女は自分の胸を持ち上げる。
形のいい胸が彼女の手により形を変えていく。
そんな泣きそうな顔でこっち見んなよ…!
胸揺らしまくんないでくれよ!
…うぅ、理性が。理性の壁にヒビが…。
「!もしかしてこんなに大きな胸はお嫌いですか!?つるつるぺったんの体の方が大好きだったりするんですか!?毎日続けてきた豊乳マッサージが仇となりましたか!?」
「そこは全力で否定させていただきます!」
つか、さらなる爆弾発言したぞ!
「だったらいったい何がダメだというのですか!?」
全部ダメです!とは言えなかった。
スタイルは良いし、顔もまた良い。
ここまで話したからわかるが彼女きっと好きな人にはとことん尽くすタイプだろう。
あまりにも良いとこだらけでダメなんていうのはあほらしくなるほどだ。
でもねー。
「オレは名前も知らない相手としたくはないんですよ!」
純情なんだぞ!こっちは!
まだまだ初体験も済ませてないガキなんだぞ!
「エキドナのエリヴィラ・アデレイトです。」
「あ、どうも。黒崎ゆうたです。」
「さぁ!これでお互いの名前もわかったことですし早速私と子作りしましょう!」
「はっ!しまった!!」
やられた!
あまりにも自然だったから普通に答えちまった!!
「黒崎ゆうた…黒髪黒目からするにジパングの人…。それではユウタ君とお呼びしてもいいですか?」
「…良いですよ。」
「あ!もしくは…その…ユウたん、なんて…/////」
それはやめてもらいたい…。
初対面の人に向かってよくもまぁそんなラブラブカップルが言いそうなことを言えるな…。
「ユウたん……あぁなんといい呼び方…♪恋人同士が呼びそうですね…/////」
「そうですね…。」
「私のことはエリたんと呼んでもらってもかまいませんよ…/////」
お断りします。
「さ、シましょう!大丈夫ですよ、気持ちいいはずですから。」
「え?何!?ハズって言った?!」
「なにも怖がることはありませんよ。優しくしてあげますから。」
そんなことを言いながら蛇の体を揺らし、徐々に近づいてくるエリヴィラさん。
怖えー!!
地面を滑って移動するみたいなその動き怖えー!!
オレは下がるしかない。
捕まったら終わる。いろんな意味で終わる。いろんなものが終わる!
それは火を見るよりも明らかだ!
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!これじゃああまりにも選択権がなさすぎる!」
「…といいますと?」
「せめてオレの意見を聞くとか…。」
「…そうですね。良妻として夫の意見を聞くのは当たり前。それなら―」
エリヴィラさんはすぐさま引き返し、ベッド(高級ホテルにありそうな天井付)の中から何かを取ってきた。
それをオレの前まで来て手渡す。
すぅっと、女性特有の甘い香りがオレの鼻先を掠めた。
…いい匂いするな。香水…とかじゃない自然な匂いだ。
「…これは?」
その手渡された物は良くわからないものだった。
色は青色。形は長方形。ベッドの上から取ってきたところからするに、おそらくコレは―
「枕です。」
「…枕、ですか。」
何で枕?
しかもよく見ればその枕の真ん中にマークと、さらにその中に記号が入ってる。
ピンク色のマーク。…たぶんコレ、一般的にハートって呼ばれるものじゃないのかな?
その中に入っている見たことない記号。
枕をひっくり返す。
そこには同じハートマーク。その中にも同じ記号。
…え?同じ?
「エリヴィラさん、これはなんの枕ですか?」
「あぁ、エリヴィラさんだなんて…エリヴィラでいいのですよ。勿論敬語なんて堅苦しいものも必要ありません。」
そういう彼女の顔はとても優しそうで。
迫ってくるような気迫は見られない。
…見れば見るほど魅入られそうなので目をすぐさま逸らす。
「……エリヴィラ、これは?」
「よくぞ聞いてくれました!」
エリヴィラはどこからかオレが持っているのと同じタイプの枕を出した。
ただし、そちらの枕は色が赤い。
赤と青のペアの枕。
真ん中にハート。
見たことない記号。
…おやおや?コイツはもしや…?
「夫婦の営みには欠かせない、『YES−YES枕』です!!」
「NOは!!?」
拒否権なし!?
両面同じ記号が書かれていたのはそういうことか!!
「夫の無理難題にも全力を尽くして答えるのが妻です。NOなど必要ありません。」
「これ夫用だろ!?」
「ちなみに『YES−はい枕』なるものもあります!!」
「変わってねー!?」
何、この女性!?
突っ込みどころがありすぎる!
オレは漫才でもしてるのかよ!?
「さぁ、その枕を持ったまま私とともにベッドインを…ああ!『YES』の面が向いていますね!肯定という意味で受け取ってかまわないのですね!?」
「肯定以外に返しようがないだろこの枕!」
さっきよりも選択権減ったぞ!いや、さっきもなかったんだが…。
オレの選択肢全部『YES』じゃねぇか!
答えようもない!
「と・に・か・く!」
オレはエリヴィラに枕を突き出す。
「返す!お返します!」
しかし、エリヴィラは受け取らない。
両手を背へまわし受け取る意思さえ見せない。
そんな姿勢をされると大きな形のいい胸がひときわ強調されてしまうので迂闊に目を向けられないのが困る。
「…受け取ってよ。」
「返すのなら。」
エリヴィラは振り返る。
この広く豪華な居住空間の奥を見据えて。
その視線の先にあるもの。
それはもうやはりというか…なんというか。
「ベッドの中で愛の言葉とともに…////」
やっぱり行為に及べというのか…。
さっきっからそればっかじゃん。
「いや、だからさ。初対面の人間とそういう行為に及ぶのはどうかと思うんだよね…。」
「ですから、愛に時間など関係ありません!」
いいこと言った!
言ったけどオレに言ってもらっちゃ困るな。
いや、こんな美人から迫られたら嬉しいけどさ。
「それならこういうのはどうでしょうか?」
エリヴィラはオレのほうへ向き直り、オレの瞳を見つめて言う。
「私があなたの夫となってどれほど良い事があるかをお教えしましょう!」
「はぁ…。」
また話がおかしな方向へ…。
夫って…オレまだ十八歳なんだけど。
あ、十八歳は結婚できる年齢か。
「そうですね…まずは朝から始めましょう。朝、ユウタ君が寝ていたらおはようのキスで起こしてあげます!」
おぉ…そいつは嬉しいな…!朝っぱらからラブラブですか。
望ましいなおい。
…でもオレ朝早く起きちゃうほうだからな。今まで朝早くから授業に出てたから早起きの習慣は抜けないぞ。きっとオレのほうが先に起きてキスを……って何考えてんだ。
「料理だってできますよ。あなたの出身国のジパング料理だって作れますよ!」
おお、ジパング料理か。
どんな料理かはわからないけど少し興味があるな。
「そっそれから…あなたに『あーん』なんてことをしてもあげちゃいますよ…きゃっ////」
そこで照れるのか。
今まで恥ずかしいことかなり言いまくってきてたのに…。
「お風呂だって一緒に入りますよ。それで一日の疲れを労わるように背中を流してあげて…。」
…涎垂れてるよ。
大の大人が涎垂らしてるよ…。
それで妄想にふけってるよ…。
「いつもずっと隣で手を握っていてあげますからね?指を絡めたラブラブな握り方をしてあげますからね?たまにはぎゅっと抱きしめてもいいですか?」
あれ?
疑問系になってね?
オレに聞いてね?
「夜は絶対一緒のベッドですからね!一人寝はさせないで下さいよ!私今まで一人で淋しかったんですから!絶対に約束ですよ!!」
あれ?気のせいか?
なんか既に約束までさせられてね?
なんかもう押し付けられてね?
こういう頼まれ方すると断るに断れなくなっちゃうんだよな…。
オレは押しにとことん弱すぎる。
「…でもさ。」
さっきのセリフの中に混じっていた言葉。
『あの難しすぎるダンジョンを全て乗り越えて来てくれた!』
…って言ってたよな?
「オレはそのダンジョンを抜けてきたってわけじゃない。」
「…?どういうことです?」
そのダンジョンって言うのがどんなものか知らないけど。
オレはそのダンジョンを乗り越えたわけじゃない。
きっとオレがいたあの洞窟内は罠やら他の魔物っていう奴がいなかっただけじゃないのか?
ボス一歩手前の通路にオレは来たということじゃないのか?
「何があったかはオレ自身もよくわからない。…でも貴女の口ぶりからするにあのダンジョンを超えてやってきた人を求めているんじゃないの?」
「…。」
危険な場所にいる生物はかなり強い。
その強さを保てるのは環境が厳しいからかはたまた―
より優秀な親の血をひいているか…。
この目の前の女性。
実力がとんでもないというのは肌で感じる。
だからこそより強い雄と子をなすタイプなんじゃないのか?
「それならオレは不適合だ。オレはそのダンジョンが終わった通路にでも現れたんだ。いったいどうしてかはわからないけどさ。」
ここがいったいどこなのか。
目の前にいるエリヴィラはなんなのか。
人外がいるここはやはり―
「構いません。」
彼女は言った。
静かに、オレの目を見つめて。
どことなく淋しさを感じさせる表情で。
「私達エキドナという種族はユウタ君の言う通りにダンジョンを越えて来たより強い者と子を成します。より強い、優秀な子孫を残すためです。ですが…そんなものを待っていればどれほど時間がかかるかわかりません。」
エリヴィラは言葉を続ける。
「強い種を求めすぎてチャンスを逃がすなど愚の骨頂。だからそんなものはどうでもいいのですよ。」
その瞳に浮かべるのは寂しさ。
「強い種など求めていません。私が求めるのはただ、私と一緒にいてくれる存在です。」
ああ、と思う。
この人は寂しかったんだなって。
さっき言ってた言葉。
『私今まで一人で淋しかったんですから!絶対に約束ですよ!!』
今まで、か。
ここがどんなところで、いったいどれぐらいの時間を一人で過ごしてきたのか考えられない。
だからこそこの女性は飢えていた。
温もりとか人肌とか、孤独を埋めてくれる存在に。
…だからって強行過ぎるのはどうかと思うけど。
「だから…さぁ。」
両手を広げて近寄ってくるエリヴィラ。
…あれ?どうしてだろう?
さっきの表情が消えてるぞ?
目がぎらぎら光って明らかにオレを狩ろうとしてるぞ?
さっきのシリアス台無しになってね?ぐらいの勢いだぞ…。
「私とともに…。」
徐々に狭まるオレ達の距離。
オレの後ろにはこの部屋の入り口。
ただし扉なので出るには一度開けなければいけない。
後ろを見せたら確実にやられる…。
って、なに逃げようとしてんだオレは。
さっきの言葉を聞いて逃げられるかよ。
オレはその場を動こうとせず彼女の手を受け入れようと踏みとどまった。
伸ばされる薄い青の両腕。
近寄ってくるエリヴィラの指先とオレの頬が触れ―
青い閃光がはしった。
「!!?」
「!?」
弾けたように指を離すエリヴィラ。
目を見開いて自分の指を見つめ、オレを見る。
浮かぶ表情は驚愕。
何が起こったのかわからないという様子だ。
オレも今何が起きたのかはわからない。
なんだ…今のは…?
痛みはなかったがまるで静電気のようにはしったそれ。
何か異形なものを感じさせた電撃らしきもの。
触れてはいけないものが接触したときの拒絶反応のような。
「そう…なのですね…。」
見ればエリヴィラはオレを見ていた。
見つめて微笑んでいた。
とても愛おしそうな眼差しで。
慈しむようなその瞳で。
「あなたは―
この世界の住人ではないのですね。」
「っ」
聞きたくなかった言葉。
それは心の隅で考えていたものを打ち砕く一言だった。
踏み切りで光に包まれてこの洞窟へきておいて、こんな人外を目にしておいてここがオレのいた世界だなんて思えない。
オレがまだあの退屈な日常の中にいるとは思えない。
―だからこそ思いたくはなかった。
この洞窟を抜ければどこかの山奥で、実はこの人は政府が黙認していた種族ですなんて白々しい嘘が通って欲しかった。
あの日常のままだと願いたかった。
退屈な日々にまた戻れると思いたかった…!
「…そっか。」
オレは笑う。
ひどく悲しげに、寂しげに。
やっぱりオレは別世界へととばされた。
それならあの家にもう帰れない。
オレのいた世界へ帰ることはきっとできない。
オレの家族の下へは帰れない。
「別世界の人間の血…ですか。ふふふ、どこかの英雄や勇者よりももっとすばらしい…。」
うっとりとした表情で迫ってくるエリヴィラ。
とても妖艶で最初のときに見せた優しそうな表情はない。
でもオレはそんな表情を見る余裕さえなくなっていた。
目の前が徐々に暗くなる。
それと同時に意識も遠のく。
さっきの電流のせいだか、体が疲れていたからかわからない。
オレは気を失い。
目の前のエリヴィラに倒れこんだ。
目の前に広がるのは闇。
それも感じたことのない不安。
家族に会えないという寂しさ。
あの日常から急に切り離されたことによる恐怖。
未知の世界。
そんな負の感情の中でオレは意識を失った。
FIRST FLOOR
これにて 制覇
11/02/27 00:30更新 / ノワール・B・シュヴァルツ
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