第七話 幸せは白くて甘いクリームの形
ここは『道を逸れた町 カンバス』
シルク「思ったより…大きいんですね///」
スエード「あぁ、私も最初は戸惑ったが、中々良いものだぞ。」
シルク「白くて、トロッとしてて…美味しいです。」
ここは元酒場のカフェ、回りの席にはサバト帰りの魔女達が夕食を食べている。
シルクはそこでスエードに初めてのパフェをご馳走になり、口の回りをホワイトチョコソースで白く汚し、「冷たい!」「甘い!」とはしゃいでいる。
テイラ「砂漠でアイスクリームは食べられないだろうからなぁ。」
グラエキス印の製氷気(ディフオルメされたグラエキスがペロッと舌を出しているマークが付いている)で作られたホルスタウロスミルク100%のアイスに亭拉も舌鼓を打つ。
テイラ「しかし夕食まで馳走になった上に宿代まで立て替えてもらって悪いな。」
カフェを出た後の一戦の後、クエストの受付が締め切られていた事を知り三人でカフェに戻りスエードの奢りで夕飯を食べることとなった。
スエード「テイラには迷惑をかけた、どうも強そうな相手を見るとリザードマンとしての本能を押さえきれなかった。」
私も色々と修行が足りないな…と自嘲気味に呟くスエード。
テイラ「しかし心に決めた相手が居るならなんで修行の旅なんか続けているんだ?」
好きな相手が居るなら闘いに勝っても負けても相手を押し倒すのがリザードマンだと思っていたが、スエードの場合は何か特別な事情があるようだ。
スエード「私が好きになった相手は…教会の騎士団【アラミド騎士団】の団長だ。」
少し迷ったようすだったがスエードはポツポツと事情を語りだした。
―――――――――――――『知識検索』―――――――――――――
【アラミド騎士団】
教会最強の騎士団とうたわれ、『最前線の盾』の異名を持つ超武力集団。
一人一人が魔物を超越する実力を持ち反魔物領の尊敬と畏怖を一身に集めている。
――――――――――――――――――――――――――――――――
シルク「あの【アラミド騎士団】、ですか?」
怪訝な表情を見せるシルクに亭拉が視線を向ける。
テイラ「何か知っているのか?」
亭拉が促すとシルクはチラリとスエードを見た後話を続ける。
シルク「教会最強の騎士団と名高い【アラミド騎士団】ですが、最前線で戦い続ける性質上魔物と結婚する団員が少なくありません。」
シルク「過去の団長の中にも魔物との結婚が原因による退団、魔物に与して反乱を企てた者も出ているそうです。」
スエード「あぁ、私が恋したのもその騎士団の団長、『五代目騎士団長 カーボン・ケブラー』だ。」
そう語るスエードの表情は何処と無く誇らしげである。
スエード「カーボンと出会ったのは彼が戦場への行軍中の事だ…」
―――――――――――――スエード視点―――――――――――――
当時、腕に自身のあった私は単身【アラミド騎士団】の行軍に立ち塞がり勝負を挑んだんだ。
今思えば背筋が凍るほどの無謀な行動だな、だがあの時の私はまだ何処か人間を舐めていたんだろう。
全員から袋叩きに合ってもおかしくない状況でカーボンは一騎討ちを受けてくれた。
結果は惨敗。
彼の扱う双棍に手も足も出ず愛刀も叩き折られた。
私が死を覚悟した時、彼はこう言ったんだ。
カーボン「騎士団に単身乗り込んできた度胸は認めてやる、だがお前は行動も太刀筋も正直すぎる。」
彼は止めを刺さず、私に戦い方に評価をつけ始めた。
カーボン「踏み込みも深すぎる、大剣を使うなら今より半歩下がったところから剣を振るうんだな、殆ど片手剣の間合いで闘っていたぞ。」
そして他の団員が止めるのも聞かず私を逃がそうとした。
カーボン「今までいろんな魔物と闘ってきたがお前みたいなバカは初めてだ、強くなって又かかって来い、何度でも受けてたってやる。」
そう言って少しの医療品を置いて去っていった。
後で聞いた話だが彼は歴代騎士団長最多の撃破数を誇るもただの一人さえ魔物を殺していなかったそうだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――
スエード「そのとき思ったんだ、私はまだ彼に求婚できない、もっと強くなって対等に闘えるようになってからで無いと彼の前に立つ資格すら無い、とな。」
そうして少し俯くが、その表情は何処か嬉しそうでもあった。
スエード「だからテイラ、お前には感謝している、又一つ私の弱さを教えてくれたんだからな。」
総じてプライドの高い魔物が敗北に礼を言うのは意外だったがそれほど強くなることに真剣なんだろう。
スエード「あー、こんな話は素面でするものではないな、なんでこの町には酒がないんだ!」
恥ずかしさを間明わす為に声を荒らげる。
オーナー「すまんなぁ、サバトのバフォメットが『乙女はケーキとミルクティーじゃ!』って言って以来甘い飲物しか置いてないんだ。」
それを聞いて亭拉が店主を呼ぶ。
テイラ「なんとかなるかも知れないな、オヤ…オーナー、酒を入れてたグラスかジョッキは有るか?」
確かまだ有った筈だとオーナーが店の奥から巨大なジョッキを持ってきて亭拉達のテーブルに置く。
テイラ「うまくいくといいが、な!」
そう言って両手をジョッキにかざし魔法をかける。
テイラ「『変質魔法』『ガラスのジョッキ』→『水を酒に変える魔法のジョッキ』」
ジョッキがぼんやりと光ると透明なガラスのジョッキが薄い紫色のジョッキに変わる。
テイラ「オヤ…オーナー、このジョッキに水入れてくれないか?」
そしてオーナーがジョッキに水を入れ、スエードが口をつける。
スエード「さ、酒になっている…しかもかなりきつめの…。」
ガタッ!ガガタガタッ!!
亭拉が後ろを振り返ると手にグラスを持った大勢の魔女が列をなしていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――
この日を境にカンバスのカフェでは
『お酒を飲んだ気になれるグラスセット』
なる裏メニューが加わった事を亭拉達は知るよしもなかった
――――――――――――――――――――――――――――――――
…
……
………
翌朝、サバトの二階に作られた宿の部屋で亭拉が目を覚ますと鞄からキーンと音がするのに気づく。
『ブラジア』で黒いハーピーの新聞屋に貰ったルーン文字入りのカードが光りながら鳴っていた。
窓を見ると髪の毛を後ろで縛りゴーグルをかけたハーピーが、新聞を抱え窓ガラスをコツコツと叩いてこちらを見ていた。
体に巻き付いたシルクを起こさないようにそっとベッドから抜け出すと口元に指を一本立てて『静かに』と合図する。
窓を開けて新聞を受け取ると鞄から封筒を取り出しハーピーに渡す。
配達鳥「話は聞いてます、ご協力感謝します。」
そう言って腰のポーチに封筒をしまう。
テイラ「あれ?そのポーチは…」
見覚えのあるポーチを指差し、ハーピーに訪ねると、
配達鳥「あ、これですか?東の砂漠の担当が持ってたポーチを他の配達員も欲しがりましてね、新聞社のアラクネに頼んで全員分つくって貰ったんです、便利ですよ♪」
そう言って目の前で自慢げに腰を振って見せる。
股上も股下も短いホットパンツから上は谷間が、下からは丸みが覗いていて目のやり場に困る。
しかしまさかあのポーチが量産されているとは思わなかった。
二人分のコーヒーを煎れ、新聞を広げる。
さて、今日はどんな一日になるのやら…
シルク「思ったより…大きいんですね///」
スエード「あぁ、私も最初は戸惑ったが、中々良いものだぞ。」
シルク「白くて、トロッとしてて…美味しいです。」
ここは元酒場のカフェ、回りの席にはサバト帰りの魔女達が夕食を食べている。
シルクはそこでスエードに初めてのパフェをご馳走になり、口の回りをホワイトチョコソースで白く汚し、「冷たい!」「甘い!」とはしゃいでいる。
テイラ「砂漠でアイスクリームは食べられないだろうからなぁ。」
グラエキス印の製氷気(ディフオルメされたグラエキスがペロッと舌を出しているマークが付いている)で作られたホルスタウロスミルク100%のアイスに亭拉も舌鼓を打つ。
テイラ「しかし夕食まで馳走になった上に宿代まで立て替えてもらって悪いな。」
カフェを出た後の一戦の後、クエストの受付が締め切られていた事を知り三人でカフェに戻りスエードの奢りで夕飯を食べることとなった。
スエード「テイラには迷惑をかけた、どうも強そうな相手を見るとリザードマンとしての本能を押さえきれなかった。」
私も色々と修行が足りないな…と自嘲気味に呟くスエード。
テイラ「しかし心に決めた相手が居るならなんで修行の旅なんか続けているんだ?」
好きな相手が居るなら闘いに勝っても負けても相手を押し倒すのがリザードマンだと思っていたが、スエードの場合は何か特別な事情があるようだ。
スエード「私が好きになった相手は…教会の騎士団【アラミド騎士団】の団長だ。」
少し迷ったようすだったがスエードはポツポツと事情を語りだした。
―――――――――――――『知識検索』―――――――――――――
【アラミド騎士団】
教会最強の騎士団とうたわれ、『最前線の盾』の異名を持つ超武力集団。
一人一人が魔物を超越する実力を持ち反魔物領の尊敬と畏怖を一身に集めている。
――――――――――――――――――――――――――――――――
シルク「あの【アラミド騎士団】、ですか?」
怪訝な表情を見せるシルクに亭拉が視線を向ける。
テイラ「何か知っているのか?」
亭拉が促すとシルクはチラリとスエードを見た後話を続ける。
シルク「教会最強の騎士団と名高い【アラミド騎士団】ですが、最前線で戦い続ける性質上魔物と結婚する団員が少なくありません。」
シルク「過去の団長の中にも魔物との結婚が原因による退団、魔物に与して反乱を企てた者も出ているそうです。」
スエード「あぁ、私が恋したのもその騎士団の団長、『五代目騎士団長 カーボン・ケブラー』だ。」
そう語るスエードの表情は何処と無く誇らしげである。
スエード「カーボンと出会ったのは彼が戦場への行軍中の事だ…」
―――――――――――――スエード視点―――――――――――――
当時、腕に自身のあった私は単身【アラミド騎士団】の行軍に立ち塞がり勝負を挑んだんだ。
今思えば背筋が凍るほどの無謀な行動だな、だがあの時の私はまだ何処か人間を舐めていたんだろう。
全員から袋叩きに合ってもおかしくない状況でカーボンは一騎討ちを受けてくれた。
結果は惨敗。
彼の扱う双棍に手も足も出ず愛刀も叩き折られた。
私が死を覚悟した時、彼はこう言ったんだ。
カーボン「騎士団に単身乗り込んできた度胸は認めてやる、だがお前は行動も太刀筋も正直すぎる。」
彼は止めを刺さず、私に戦い方に評価をつけ始めた。
カーボン「踏み込みも深すぎる、大剣を使うなら今より半歩下がったところから剣を振るうんだな、殆ど片手剣の間合いで闘っていたぞ。」
そして他の団員が止めるのも聞かず私を逃がそうとした。
カーボン「今までいろんな魔物と闘ってきたがお前みたいなバカは初めてだ、強くなって又かかって来い、何度でも受けてたってやる。」
そう言って少しの医療品を置いて去っていった。
後で聞いた話だが彼は歴代騎士団長最多の撃破数を誇るもただの一人さえ魔物を殺していなかったそうだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――
スエード「そのとき思ったんだ、私はまだ彼に求婚できない、もっと強くなって対等に闘えるようになってからで無いと彼の前に立つ資格すら無い、とな。」
そうして少し俯くが、その表情は何処か嬉しそうでもあった。
スエード「だからテイラ、お前には感謝している、又一つ私の弱さを教えてくれたんだからな。」
総じてプライドの高い魔物が敗北に礼を言うのは意外だったがそれほど強くなることに真剣なんだろう。
スエード「あー、こんな話は素面でするものではないな、なんでこの町には酒がないんだ!」
恥ずかしさを間明わす為に声を荒らげる。
オーナー「すまんなぁ、サバトのバフォメットが『乙女はケーキとミルクティーじゃ!』って言って以来甘い飲物しか置いてないんだ。」
それを聞いて亭拉が店主を呼ぶ。
テイラ「なんとかなるかも知れないな、オヤ…オーナー、酒を入れてたグラスかジョッキは有るか?」
確かまだ有った筈だとオーナーが店の奥から巨大なジョッキを持ってきて亭拉達のテーブルに置く。
テイラ「うまくいくといいが、な!」
そう言って両手をジョッキにかざし魔法をかける。
テイラ「『変質魔法』『ガラスのジョッキ』→『水を酒に変える魔法のジョッキ』」
ジョッキがぼんやりと光ると透明なガラスのジョッキが薄い紫色のジョッキに変わる。
テイラ「オヤ…オーナー、このジョッキに水入れてくれないか?」
そしてオーナーがジョッキに水を入れ、スエードが口をつける。
スエード「さ、酒になっている…しかもかなりきつめの…。」
ガタッ!ガガタガタッ!!
亭拉が後ろを振り返ると手にグラスを持った大勢の魔女が列をなしていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――
この日を境にカンバスのカフェでは
『お酒を飲んだ気になれるグラスセット』
なる裏メニューが加わった事を亭拉達は知るよしもなかった
――――――――――――――――――――――――――――――――
…
……
………
翌朝、サバトの二階に作られた宿の部屋で亭拉が目を覚ますと鞄からキーンと音がするのに気づく。
『ブラジア』で黒いハーピーの新聞屋に貰ったルーン文字入りのカードが光りながら鳴っていた。
窓を見ると髪の毛を後ろで縛りゴーグルをかけたハーピーが、新聞を抱え窓ガラスをコツコツと叩いてこちらを見ていた。
体に巻き付いたシルクを起こさないようにそっとベッドから抜け出すと口元に指を一本立てて『静かに』と合図する。
窓を開けて新聞を受け取ると鞄から封筒を取り出しハーピーに渡す。
配達鳥「話は聞いてます、ご協力感謝します。」
そう言って腰のポーチに封筒をしまう。
テイラ「あれ?そのポーチは…」
見覚えのあるポーチを指差し、ハーピーに訪ねると、
配達鳥「あ、これですか?東の砂漠の担当が持ってたポーチを他の配達員も欲しがりましてね、新聞社のアラクネに頼んで全員分つくって貰ったんです、便利ですよ♪」
そう言って目の前で自慢げに腰を振って見せる。
股上も股下も短いホットパンツから上は谷間が、下からは丸みが覗いていて目のやり場に困る。
しかしまさかあのポーチが量産されているとは思わなかった。
二人分のコーヒーを煎れ、新聞を広げる。
さて、今日はどんな一日になるのやら…
13/02/07 00:40更新 / 慈恩堂
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