第五話 渡る世間は砂ばかり
亭拉とシルクが砂漠の中継地『ブラジア』を出発し、太陽も頂点を過ぎた頃。
シルク「んっ…ハァ……くっ、うぅ…ふぁっ……ハァ、ハァ…」
二人は歩きながら干し肉をかじっている。
砂漠のど真ん中をテント状に広げた二人用ローブ(歩くキャンプ地 命名 亭拉)を身に纏いゆっくりと進む。
傍目には小型テントが砂漠を横断している非常にシュールな光景であろう。
中には亭拉に巻き付いたシルクと彼女と超重量の旅荷物を担ぎ軽々と歩を進める亭拉が居る。
亭拉はまるでクッキーを食べるように干し肉を噛みちぎるがシルクにはうまく噛みきることが出来ないようだ。
テイラ「うーむ、やっぱりシルクには固すぎたか?」
亭拉も薄々感じてはいたが、いくら身体が弱いと言え魔物娘なんだから干し肉くらい噛みきれるだろうと思ったのだ。
シルク「すみません、でも時間をかければ噛みきれます。」
亭拉に心配かけまいと必死に干し肉に食らいつくが未だに一口も噛みきれていない。
すると亭拉は残った干し肉を一気に食べきるとシルクの干し肉を奪い取る。
シルク「あっ…」
あっけにとられるシルクを他所に干し肉を軽々と噛みきりサクサクと本来鳴る筈の無い音を立てて噛み砕く。
亭拉「んっ」
グイッと正面にシルクを引き寄せると柔らかくなった干し肉をシルクの口に流し込む。
シルク「〜っ///」
頬を染め、言葉を失うシルクに対してさっさと次の干し肉を噛みちぎり咀嚼し始める亭拉。
(何だか赤ちゃんみたいで恥ずかしい…)シルクの心情
(もの○け姫にこんなシーン有ったなぁ…)亭拉の心情
(こんな調子で魔物娘SSとしてやっていけるのだろうか…)誰かさんの心情
…
……
………
昼食を終え、歩きながら今後の方針を話し合う二人。
シルク「先ずはどちらに向かうおつもりですか?」
歩くキャンプ地の中で地図とコンパスを広げた亭拉に向かって尋ねる。
テイラ「予定としては一番近い『中立領 クレバネット』に向かおうと思う、因みにどんな町かわかるか?」
教会の騎士として活動するためには一度教会の支部に立ち寄る必要がある。
魔物連れの亭拉達が安全に教会入りするためには中立領が最も適しているだろう。
シルク「クレバネットですか…」
少し考え込んだ後言葉を続ける。
シルク「別名【砂漠の入り口 クレバネット】、領主の『ギャバジン』様は元豪商の人間で、特別魔物にも教会にも肩入れしない一般的な中立領の領主だそうです。」
シルクはブラジアを訪れる商人に聞いた情報をすらすらと答えていく。
シルク「クレバネットは荒れた土地のため食料は僅かな雑穀と養鶏位しか自給しておらず、貿易を中心に経済活動を行っており町の中には大きな商業地区は勿論の事、冒険者ギルドや教会の支部、親魔物居住区と反魔物居住区が存在するそうです。」
テイラ「なんだかこの世界の縮図みたいな町だな。」
正に亭拉が求めていた理想の町のようだ。
シルク「それはクレバネット領主ギャバジン様が元商人であり『商人たる者仕入れ先を選ばず、買い手も選ばず』と言う考えだからだそうです、そのせいか他の町に比べて治安はあまり宜しくないようですね。」
シルクは最後の一文だけは少し不安そうに語る。
テイラ「その辺はうまくやるさ、何せ俺は『教会の上級聖騎士』だからな。」
そう言ってのベルトに着けた『聖騎士の証』をチャラリと揺らす。
テイラ「教会の支部がある町じゃ教会の騎士においそれと手出しはできんだろう、『教会側』も『魔物側』もな。」
そう言って亭拉は地図とコンパスを鞄にしまう。
…
……
………
すっかり日も暮れて夜空は満天の星空、そして一際存在感を放つ満月が亭拉とシルクを照らす。
亭拉は『歩くキャンプ地』を鞄にしまい、少し大きめのテントを設営すると鍋を携帯用魔導コンロにかけ夕飯の準備をしている。
昼の一件でシルクが干し肉を咬みきれない事がわかったので干し肉と乾燥馬鈴薯(薄くスライスした馬鈴薯を天日で乾燥させた物)を砕いて入れて即席のシチューを作る。
テイラ「ズズッ、うむ、中々旨いな。」
干し肉の熟成された旨味が香辛料で引き締められている。
砕いた乾燥馬鈴薯もトロトロに溶けてポタージュ状になっていて寒い砂漠の夜にはもってこいの一品だ。
皿に盛り付け、仕上げにドライハーブ(バジルのような何か)を散らす。
テイラ「ハムッ、ハフハフッハフッ!」
豪快にシチューを掻き込む亭拉に対しスプーンで一口一口冷ましながら食べるシルク。
シルク「お料理までして頂いて申し訳ありません、私、本を読む以外何もしてこなかったもので…」
食事中、シルクが申し訳無さそうにポツリと漏らす。
テイラ「独り暮らしを十年近くやって来たんだ、これくらいの料理わけないさ。」
一杯目を食べ終え鍋に残ったシチューをかき集めながら亭拉が答える。
テイラ「それにシルクが本を読んでいてくれたお陰で次の目的地を選べたわけだ、十分に働いてくれているさ。」
かき集めたシチューを皿に流し込み一気に掻き込む。
テイラ「さぁ、食い終わったらさっさと寝るぞ。」
空になった鍋と皿に『汚れの否定』の魔法をかけるとこびりついた汚れが煙のように消えてゆき新品のように綺麗になった。
シルク「はいっ!」
本を読む事と寝ることしか出来なかった自分にでも役に立てることがある、そう言ってくれた事が何より嬉しいシルクであった。
…
……
………
風の音はおろか虫の声さえ聞こえない静寂、二人で寝るには広すぎるテントの中。
シルク「んっ…」
旅人用の薄い毛布では寒くて寝付けないのかモゾモゾと体を動かしている。
テイラ「寒いのか?」
それに気付いた亭拉がシルクの方に体を向ける。
シルク「いえ、普段とは違う環境で寝付けないだけです。」
亭拉に心配をかけまいと強がって見せるが小刻みに体を震わせるシルクを見て亭拉は自分の毛布をシルクにかける。
シルク「そんなことをしたらテイラ様が風邪を引きま、あっ…」
シルクが拒否しようとした時、亭拉がシルクの毛布の中に入ってくる。
テイラ「冷たっ、冷えきってるじゃないか!?」
そう言うと片手でシルクを抱き締める。(亭拉はラミアの体温が人間より低いことをいまいちわかってない)
テイラ「巻き付くのは片足だけにしてくれ、いざと言う時と動けないからな。」
トクンットクンッと言う心臓の音が頭に響く、しかしシルクにはそれが亭拉の物か自分の物かさえわからない。
シルク「温かい…」
そんなことはもうどうでも良かった。
シルク(そう言えば小さい頃お母様に聞いたことが有る)
まだ幼い頃、寒いと言ってぐずるシルクに母親が聞かせてくれた話。
――――――――――――――――――――――――――――――――
母『シルク、私達ラミアは元々寒さにとっても弱いの。』
シルクを抱き寄せ優しく語りかける。
母『だから男の人が必要なの、あなたも何時か素敵な旦那様を見つけたら中からも外からもしっかりと温めて貰えるのよ。』
まだ見ぬ理想の旦那様に思いを馳せ、静かに寝息をたて始めるシルク。
母『あなたならできるわ、頑張りなさい。』
そしてシルクの頭を抱き抱え、額にそっとキスをして寝かしつける。
――――――――――――――――――――――――――――――――
シルク(お母様の言う通りでした、テイラ様と居ると胸の中がポカポカと温かくなります///)
母親の言っていた事と若干のズレがあるなかで初心なラミアと童貞勇者の夜は更けて行く。
…
……
………
夜が明け、砂漠を太陽が照らし出す。
太陽は空気を温めて上昇気流を作り出す。
冷えきった砂の大地と灼熱の空との間に激しい空気の流れが生まれる。
砂漠ハプニングのお約束『砂嵐』である。
朝食の準備を始めようとテントを出た亭拉は自らに打ち付ける砂を不振に思い辺りに視線を向ける。
するとそこには二本の巨大な砂の柱。
その二つの柱の間に生じる真空状態の圧倒的破壊空間はまさに歯車的砂嵐の小宇宙!
急いでシルクを叩き起こし、テントを骨が二、三本折れるのも構わず乱暴に鞄にねじ込む。
シルクを体に巻き付け、打ち付ける砂から彼女を護る為にローブを羽織り一目散に駆け出す。
亭拉の全力疾走にも拘らず砂嵐との距離はジリジリと縮まっていく。
砂嵐の速度もあるが、砂に足を取られ思うようにスピードが乗らない。
そしてさらに悪い事に二人を見つめる鋭い視線。
???「男の臭いが風に乗って届いたと思ったら、あんなにガタイの良いのが走ってくるなんて。」
二人用のローブを羽織っているせいでガタイの良い一人の男と勘違いしているようだ。
さらに身体の弱いシルクは身に纏う魔力も微量な上に砂嵐の風に完全に掻き消されている。
???「砂嵐が来てるのは予想外だけどこれはある意味チャンスよ!」
砂の中の住処から目から上だけを出し獲物を見据える。
???「あの男が近くを通り過ぎようとした時、毒針を刺して動けなくして家に引き込む。」
砂から除く頭の背後から音も無く毒針が現れる。
???「毒で動けない→砂嵐から助けてあげた→快楽&感謝でウチにベタ惚れ ♥ 」
自らを狙う怪しい影に気付かず一直線に近付いてくる亭拉達。
???「ギルダブリルちゃん大勝利!!」
高らかに勝利宣言し、亭拉の足に毒針を叩きつける。
ゴスッ!
テイラ「痛てぇ!」
突然脛に衝撃を受け走る勢いそのままに前方に倒れ混むが、背中のシルクの上半身を庇い受け身も取らずに顔面から砂にダイブする。
ポッキンッ
ギルダブリル「え?」
ドラゴンを軽く上回る頑丈さを誇るテイラの肉体に、カウンターで叩きつけた毒針なんかが耐えられるはずもなく真ん中から簡単に折れてしまう。
ギルダブリル「/(^o^)\」
さらに激突の衝撃で砂から引き摺り出され宙を舞うギルダブリル。
そして容赦無く三人に迫る砂嵐、慈悲はない。
ギルダブリル&テイラ&シルク「「「\(^o^)/」」」
ざんねん テイラ と シルク のぼうけんは ここでおわってしまった
のか?
シルク「んっ…ハァ……くっ、うぅ…ふぁっ……ハァ、ハァ…」
二人は歩きながら干し肉をかじっている。
砂漠のど真ん中をテント状に広げた二人用ローブ(歩くキャンプ地 命名 亭拉)を身に纏いゆっくりと進む。
傍目には小型テントが砂漠を横断している非常にシュールな光景であろう。
中には亭拉に巻き付いたシルクと彼女と超重量の旅荷物を担ぎ軽々と歩を進める亭拉が居る。
亭拉はまるでクッキーを食べるように干し肉を噛みちぎるがシルクにはうまく噛みきることが出来ないようだ。
テイラ「うーむ、やっぱりシルクには固すぎたか?」
亭拉も薄々感じてはいたが、いくら身体が弱いと言え魔物娘なんだから干し肉くらい噛みきれるだろうと思ったのだ。
シルク「すみません、でも時間をかければ噛みきれます。」
亭拉に心配かけまいと必死に干し肉に食らいつくが未だに一口も噛みきれていない。
すると亭拉は残った干し肉を一気に食べきるとシルクの干し肉を奪い取る。
シルク「あっ…」
あっけにとられるシルクを他所に干し肉を軽々と噛みきりサクサクと本来鳴る筈の無い音を立てて噛み砕く。
亭拉「んっ」
グイッと正面にシルクを引き寄せると柔らかくなった干し肉をシルクの口に流し込む。
シルク「〜っ///」
頬を染め、言葉を失うシルクに対してさっさと次の干し肉を噛みちぎり咀嚼し始める亭拉。
(何だか赤ちゃんみたいで恥ずかしい…)シルクの心情
(もの○け姫にこんなシーン有ったなぁ…)亭拉の心情
(こんな調子で魔物娘SSとしてやっていけるのだろうか…)誰かさんの心情
…
……
………
昼食を終え、歩きながら今後の方針を話し合う二人。
シルク「先ずはどちらに向かうおつもりですか?」
歩くキャンプ地の中で地図とコンパスを広げた亭拉に向かって尋ねる。
テイラ「予定としては一番近い『中立領 クレバネット』に向かおうと思う、因みにどんな町かわかるか?」
教会の騎士として活動するためには一度教会の支部に立ち寄る必要がある。
魔物連れの亭拉達が安全に教会入りするためには中立領が最も適しているだろう。
シルク「クレバネットですか…」
少し考え込んだ後言葉を続ける。
シルク「別名【砂漠の入り口 クレバネット】、領主の『ギャバジン』様は元豪商の人間で、特別魔物にも教会にも肩入れしない一般的な中立領の領主だそうです。」
シルクはブラジアを訪れる商人に聞いた情報をすらすらと答えていく。
シルク「クレバネットは荒れた土地のため食料は僅かな雑穀と養鶏位しか自給しておらず、貿易を中心に経済活動を行っており町の中には大きな商業地区は勿論の事、冒険者ギルドや教会の支部、親魔物居住区と反魔物居住区が存在するそうです。」
テイラ「なんだかこの世界の縮図みたいな町だな。」
正に亭拉が求めていた理想の町のようだ。
シルク「それはクレバネット領主ギャバジン様が元商人であり『商人たる者仕入れ先を選ばず、買い手も選ばず』と言う考えだからだそうです、そのせいか他の町に比べて治安はあまり宜しくないようですね。」
シルクは最後の一文だけは少し不安そうに語る。
テイラ「その辺はうまくやるさ、何せ俺は『教会の上級聖騎士』だからな。」
そう言ってのベルトに着けた『聖騎士の証』をチャラリと揺らす。
テイラ「教会の支部がある町じゃ教会の騎士においそれと手出しはできんだろう、『教会側』も『魔物側』もな。」
そう言って亭拉は地図とコンパスを鞄にしまう。
…
……
………
すっかり日も暮れて夜空は満天の星空、そして一際存在感を放つ満月が亭拉とシルクを照らす。
亭拉は『歩くキャンプ地』を鞄にしまい、少し大きめのテントを設営すると鍋を携帯用魔導コンロにかけ夕飯の準備をしている。
昼の一件でシルクが干し肉を咬みきれない事がわかったので干し肉と乾燥馬鈴薯(薄くスライスした馬鈴薯を天日で乾燥させた物)を砕いて入れて即席のシチューを作る。
テイラ「ズズッ、うむ、中々旨いな。」
干し肉の熟成された旨味が香辛料で引き締められている。
砕いた乾燥馬鈴薯もトロトロに溶けてポタージュ状になっていて寒い砂漠の夜にはもってこいの一品だ。
皿に盛り付け、仕上げにドライハーブ(バジルのような何か)を散らす。
テイラ「ハムッ、ハフハフッハフッ!」
豪快にシチューを掻き込む亭拉に対しスプーンで一口一口冷ましながら食べるシルク。
シルク「お料理までして頂いて申し訳ありません、私、本を読む以外何もしてこなかったもので…」
食事中、シルクが申し訳無さそうにポツリと漏らす。
テイラ「独り暮らしを十年近くやって来たんだ、これくらいの料理わけないさ。」
一杯目を食べ終え鍋に残ったシチューをかき集めながら亭拉が答える。
テイラ「それにシルクが本を読んでいてくれたお陰で次の目的地を選べたわけだ、十分に働いてくれているさ。」
かき集めたシチューを皿に流し込み一気に掻き込む。
テイラ「さぁ、食い終わったらさっさと寝るぞ。」
空になった鍋と皿に『汚れの否定』の魔法をかけるとこびりついた汚れが煙のように消えてゆき新品のように綺麗になった。
シルク「はいっ!」
本を読む事と寝ることしか出来なかった自分にでも役に立てることがある、そう言ってくれた事が何より嬉しいシルクであった。
…
……
………
風の音はおろか虫の声さえ聞こえない静寂、二人で寝るには広すぎるテントの中。
シルク「んっ…」
旅人用の薄い毛布では寒くて寝付けないのかモゾモゾと体を動かしている。
テイラ「寒いのか?」
それに気付いた亭拉がシルクの方に体を向ける。
シルク「いえ、普段とは違う環境で寝付けないだけです。」
亭拉に心配をかけまいと強がって見せるが小刻みに体を震わせるシルクを見て亭拉は自分の毛布をシルクにかける。
シルク「そんなことをしたらテイラ様が風邪を引きま、あっ…」
シルクが拒否しようとした時、亭拉がシルクの毛布の中に入ってくる。
テイラ「冷たっ、冷えきってるじゃないか!?」
そう言うと片手でシルクを抱き締める。(亭拉はラミアの体温が人間より低いことをいまいちわかってない)
テイラ「巻き付くのは片足だけにしてくれ、いざと言う時と動けないからな。」
トクンットクンッと言う心臓の音が頭に響く、しかしシルクにはそれが亭拉の物か自分の物かさえわからない。
シルク「温かい…」
そんなことはもうどうでも良かった。
シルク(そう言えば小さい頃お母様に聞いたことが有る)
まだ幼い頃、寒いと言ってぐずるシルクに母親が聞かせてくれた話。
――――――――――――――――――――――――――――――――
母『シルク、私達ラミアは元々寒さにとっても弱いの。』
シルクを抱き寄せ優しく語りかける。
母『だから男の人が必要なの、あなたも何時か素敵な旦那様を見つけたら中からも外からもしっかりと温めて貰えるのよ。』
まだ見ぬ理想の旦那様に思いを馳せ、静かに寝息をたて始めるシルク。
母『あなたならできるわ、頑張りなさい。』
そしてシルクの頭を抱き抱え、額にそっとキスをして寝かしつける。
――――――――――――――――――――――――――――――――
シルク(お母様の言う通りでした、テイラ様と居ると胸の中がポカポカと温かくなります///)
母親の言っていた事と若干のズレがあるなかで初心なラミアと童貞勇者の夜は更けて行く。
…
……
………
夜が明け、砂漠を太陽が照らし出す。
太陽は空気を温めて上昇気流を作り出す。
冷えきった砂の大地と灼熱の空との間に激しい空気の流れが生まれる。
砂漠ハプニングのお約束『砂嵐』である。
朝食の準備を始めようとテントを出た亭拉は自らに打ち付ける砂を不振に思い辺りに視線を向ける。
するとそこには二本の巨大な砂の柱。
その二つの柱の間に生じる真空状態の圧倒的破壊空間はまさに歯車的砂嵐の小宇宙!
急いでシルクを叩き起こし、テントを骨が二、三本折れるのも構わず乱暴に鞄にねじ込む。
シルクを体に巻き付け、打ち付ける砂から彼女を護る為にローブを羽織り一目散に駆け出す。
亭拉の全力疾走にも拘らず砂嵐との距離はジリジリと縮まっていく。
砂嵐の速度もあるが、砂に足を取られ思うようにスピードが乗らない。
そしてさらに悪い事に二人を見つめる鋭い視線。
???「男の臭いが風に乗って届いたと思ったら、あんなにガタイの良いのが走ってくるなんて。」
二人用のローブを羽織っているせいでガタイの良い一人の男と勘違いしているようだ。
さらに身体の弱いシルクは身に纏う魔力も微量な上に砂嵐の風に完全に掻き消されている。
???「砂嵐が来てるのは予想外だけどこれはある意味チャンスよ!」
砂の中の住処から目から上だけを出し獲物を見据える。
???「あの男が近くを通り過ぎようとした時、毒針を刺して動けなくして家に引き込む。」
砂から除く頭の背後から音も無く毒針が現れる。
???「毒で動けない→砂嵐から助けてあげた→快楽&感謝でウチにベタ惚れ ♥ 」
自らを狙う怪しい影に気付かず一直線に近付いてくる亭拉達。
???「ギルダブリルちゃん大勝利!!」
高らかに勝利宣言し、亭拉の足に毒針を叩きつける。
ゴスッ!
テイラ「痛てぇ!」
突然脛に衝撃を受け走る勢いそのままに前方に倒れ混むが、背中のシルクの上半身を庇い受け身も取らずに顔面から砂にダイブする。
ポッキンッ
ギルダブリル「え?」
ドラゴンを軽く上回る頑丈さを誇るテイラの肉体に、カウンターで叩きつけた毒針なんかが耐えられるはずもなく真ん中から簡単に折れてしまう。
ギルダブリル「/(^o^)\」
さらに激突の衝撃で砂から引き摺り出され宙を舞うギルダブリル。
そして容赦無く三人に迫る砂嵐、慈悲はない。
ギルダブリル&テイラ&シルク「「「\(^o^)/」」」
ざんねん テイラ と シルク のぼうけんは ここでおわってしまった
のか?
13/02/02 00:40更新 / 慈恩堂
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