此処は君の居る場所じゃない
此処は南国親魔物領。
鉢植えのアルラウネを背負った花屋や頭にサハギンを乗せた漁師、グリズリーに担がれた樵がオーガ夫妻のパブで酒を飲んで居たりするごく普通の町。
店をやってる人間で独身なのは服屋の僕、「テイラー・スイフト」くらいだ。
ある日僕がオーク夫妻の食堂で遅めの朝食を取っていると漁師のフィッシャーさんが奥さんのサハギンに抱えられて飛び込んできた。
フィッシャー「大変だ、俺の網に魔物が掛かっちまった!」
慌てているようだがこの辺は親魔物領だ、漁網にマーメイドや大量発生したシー・スライムが掛かる事は日常茶飯事の筈なんだけど?
サハギン「…見た事無い娘……船着き場で………暴れてる……」
サハギンさんが珍しく動揺している、表情はいつもと変わらないけど目が泳いでる。
テイラー「暴れてるならなぜ僕を呼びに来たんですか?」
普通に考えたら自警団の元勇者のブレイブさんとデュラハンさん達か腕っぷしの強い鍛冶屋のアイゼンさんドワーフさん夫妻じゃないのか?
サハギン「テイラーくん…奥さん居ない……」
サハギンさんそんなに真っ直ぐな目で見つめないで下さい、そんな目で見つめられたら拒否できないじゃないですか。
…
……
………
船着き場に来てみると一人の魔物娘が屈強な漁師を相手に銛一本で無双している。
テイラー「えーっと、何者です?あの娘。」
サハギン「…アザラシ?」
おんぶしたフィッシャーさんと一緒に首をかしげるフィッシャー夫妻。
いや、聞いてんのはこっちなんだけど。
アザラシ?「ワタシをこんなところに連れてきてどうするつもりだ!元の場所に帰せー!」
アザラシの着ぐるみを着た女の子が汗だくで叫んでいる。
テイラー「もしもーし、ちょっと話を聞かせてもらえませんか〜?」
ポケットから白いハンカチを取り出してその辺の棒に括り付け即席の白旗を作り、手を上げながら近づいていく。
テイラー「お、お前もコイツらの仲間か!」
銛をこちらに向け鋭い目付きでこちらを睨んでくるアザラシ?
気のせいか少しフラフラしている。
テイラー「何処のどなたか知りませんが取り合えず話し合いませんか?」
銛の切っ先が胸に当たるところまで近づいて話し合いを持ちかける。
ちょっと怖いけど相手は多分魔物娘だ、いきなりブスリッとはいかないだろう。
アザラシ?「ワタシは、セルキー…のローラ…お前…誰?」
さっきよりフラフラしてるけど突き付けた銛も下ろしてくれたし何とか話し合えそうだ。
テイラー「僕の名前はテイラー・スイフト、宜しくノローラさん。」
自己紹介をしたら握手だ、と思って手を伸ばしたが…
ノローラ?「のろ…ちが…ろー………」
そこまで言うと受け身もとらず前のめりに倒れてしまった、変わった挨拶の仕方をする魔物だなぁ…
でもこのままだと話もできないので顔を上げてもらおうと顔を除き込む。
ノローラ?「きゅう〜」
伸びてんじゃん!
そして慌てて抱き起こす。
テイラー「熱っ、すごい熱だ!早く医者に連れてかないと!」
そして僕はノローラさんを背負って町の診療所へと走った。
背負いきれなかった尻尾はサハギンさんが担いでくれた、やっぱり良い人だ。
旦那のフィッシャーさんは船着き場に置いていかれた、なんだか不憫な人だ。
…
……
………
駄ホメット「熱中症じゃな。」
テイラー「ですよねー。」
ノローラさんを僕の家まで運んだ後、薬屋のバフォメットさんとサハギンさんに毛皮からパジャマに着替えさせられ頭に氷嚢を乗っけた状態で寝てるノローラさん。
因みにこのパジャマは僕の店の商品だ。
結構自信作だったんだが全くと言って良いほど売れなかった。
だってこの町の殆どの人は寝る時服着ないんだもん。(性的な意味で)
テイラー「バフォメットさん、『セルキー』ってどんな魔物なんですか?」
駄ホメット「ワシも詳しくは知らんが確か北の方に住んどる魔物じゃのう、まぁ詳しい事は目を覚ましてから直接聞くんじゃの。」
診察を終えて帰るバフォメットさんにお礼を言うと氷嚢の氷を新しいのに変えて頭に乗せてあげる。
ノローラ?「う〜ん、ここは?」
ちょうど目を覚ましたノローラさんと目が合った。
テイラー「気が付いた?ここは僕の家兼アトリエ、なにか食べるかい?」
そう言うと氷嚢をサイドテーブルに置いて膝をつく。
ノローラ?「あなたは…テイラー・スイフト?ああっ!私の毛皮!何処にやっ…た…」
急に体を起こしたせいでふらつき僕の胸に倒れ込む彼女を慌てて抱き締めるように支える。
テイラー「無理しちゃダメだよ、毛皮なら汗だくだったからそこに干してあるよ。」
壁に掛けられた毛皮を見せて安心させると彼女をベッドに寝かし氷嚢を乗せる。
気のせいかさっきより顔が赤い、まだ安静にしてなきゃダメみたいだ。
…
……
………
それから僕達の同居生活が始まった。
僕が作った服をノローラが着て、それを見たお客さんが僕の店の服を買う。
彼女は今まで自分の毛皮しか身に付けるものを知らなかった為か僕の作る服に興味津々でこれはなんだとかこの服はどうやって着るのとか色々聞いてくる。
僕はその度に細かく説明したり彼女をモデルにして新しい服を作ったりした。
でも種族としての意地なのかいつも頭にはアザラシの被り物を被ったままだった。
そんな生活の中、彼女の事も自分の事を色々話してくれた。
自分の居た場所の事。
テイラー「へー、海の上が氷で被われた世界ねぇ?」
ノローラ?「そうよ、そこで私達は魚を獲って暮らしてるの。」
その日から休みのときは海に魚を獲りに行くようになった。
この町に来る迄の事。
テイラー「流氷の上で昼寝をしてたの?」
ノローラ?「そう、それで気がついたら知らない海の中で強い潮の流れに流されて気が付いたらフィッシャーさんの網に捕まっちゃってたわけ。」
両親の事。
テイラー「え?よくわからない?」
ノローラ?「私達は群で子育てをするから群れのお母さん全員がお母さんみたいなものよ、私が小さい頃の氷の溶ける季節に流されて行った夫婦が居たらしいけどその人達じゃ無い事だけは確かだわ!」
間違いなくその人達が両親だ。
この町で始めて人間の男を見た事。
テイラー「え?君も魔物ならお父さんは人間じゃないの?」
ノローラ?「多分そうなんだろうけど、いつもお母さん達の毛皮の中に居たから一度も姿を見たこと無いわ。」
どうやら船着き場で大立回りしてたのは人間の男を見たこと無かったせいも有るらしい。
少しずつ心を開いてきてくれたようだが彼女の顔に浮かぶ寂しさは日に日に増すばかりだった。
やっぱり故郷とはかけ離れた南の島は彼女の居るべき所じゃないんだろうな。
テイラー「ねぇ、やっぱり君は故郷に帰った方が良いんじゃないかな?」
夕食後、僕は思いきって話を切り出してみた。
ノローラ?「テイラーは、私が側に居るのは…迷惑…なの?」
僕の言葉を聞いた彼女は飲みかけのティーカップを落とし、目を丸くして僕を見つめてくる。
テイラー「そうじゃないけどこの町は君の故郷とは全然違うし同じ種族の仲間も居ない、もう君の寂しそうな顔を見るのは辛いよ。」
僕だって彼女の事は好きだ、ずっと一緒に居たい。
テイラー「此処は君のいる場所じゃない…」
僕はもう彼女の顔を見る事が出来なかった。
ノローラ?「そうね、私の生まれ故郷は氷の世界。」
彼女が席を立つ音が聞こえる。
ノローラ?「こんなムシムシ熱い所なんて、私には相応しくないわね。」
僕の目の前まで歩み寄ってくる音。
ノローラ?「でも…」
椅子に座って俯く僕の顔を包み込む様に手が回される。
ノローラ?「貴方の居るべき所は、私の胸の中だけよ。」
テイラー「え?」
柔らかい
彼女の言葉の意味を理解するまでの数秒間、僕は彼女の胸に抱かれていることに気づかなかった。
ノローラ?「今思い出したわ、お母さん達がお父さん達を自分の毛皮の中に入れてた理由。」
僕は顔を上げた。
僕を抱き締めている彼女の目には涙が溢れんばかりに溜まっていた。
ノローラ?「セルキーはとっても寂しがり屋だから愛しい人といつも一緒に居るために同じ毛皮の中に入るんだって。」
彼女の顔がどんどん滲んで見えなくなる。
ノローラ?「だからテイラー、貴方の居るべき場所は私の胸の中だけよ。」
その言葉を聞いた瞬間僕はノローラの胸に顔を埋め、彼女の腰に手を回し抱き締めていた。
ノローラ?「テイラー?」
拘束を緩め、僕の顔を正面から見つめる彼女。
ノローラ?「貴方は、私の事嫌…」
僕は彼女の言葉を遮り、唇で返事を返した。
その後僕達はベッドで身体を重ね合った。
月明かりに照らされた彼女の肌はシルクのように輝いている。
採寸の時に何度も触れていたのに新鮮で、どの部分もミリ単位で把握していたのにもっと知りたいとばかりに僕は身体中をまさぐった。
ノローラ「もっと、もっと近くに来てテイラー…」
テイラー「え?これ以上どうやっ、うぁあっ!」
戸惑う僕を他所に彼女は臨戦態勢の僕自身を掴み彼女の秘所に宛がった。
すっかり濡れた彼女の柔らかい壁を掻き分け、僕自身が彼女の中に入っていく。
ミチュッグチュッと言う音と共に何かを突き破り彼女がビクンッと身体を跳ね上げる。
その後一層強く僕を抱き締め熱く濃厚な口付けを交わす。
上下で繋がった僕達は身体を擦り合わせるように一ミリたりとも隙間を空けまいと腰を動かす。
激しさは無いものの今まで離れていた時間を取り戻すかのように強く抱き締め合い互いを求め合った。
ノローラ「テイラー…あぁっ!」
テイラー「ノ、ノローラ…うぅっ!」
テイラー&ノローラ「「あ、あああああああああ!」」
…
……
………
翌朝、太陽が昇りきった頃に僕達は目を覚ました。
お互い照れ臭そうにベッドで顔を合わせ、一緒にシャワーを浴び、店の準備のためにドアを開けると町の皆が集まっていた。
サハギンさん「魚…朝一で獲ってきた…お祝い」
豚さん「朝御飯まだでしょう?パンとスープを持ってきたの。」
アルラウネさん「女の子が部屋に居るんだからお花くらい飾っとかないとね♪」
ドワーフさん「家族が増えるなら鍋釜は大きくしないとな!」
駄ホメット「薬に頼りすぎはのは良くないが精力剤くらい持っとかんとな?」
アヌビスさん「町民の結婚登録証だ、こう言うことはキチンとしないとな。」
タヌキさん「結婚式のプランは『リリム』『ドラゴン』『稲荷』のどれにするんや?今ならお祝い価格で三割引きにしとくで?」
南の国の薄い壁と御近所ネットワークによって一晩で町中に伝わっていた。
僕達は顔を真っ赤にしながら皆からの祝福を一部追い散らしながらも受ける。
こうして僕達の新しい生活が始まった。
ノローラ「ねぇ、テイラー?」
遅めの開店準備中に突然彼女が話しかけてきた。
ノローラ「私の名前、ノローラじゃなくてローラなのよ。」
テイラー「ええ!?それじゃあ今までずっ!!」
驚く僕の言葉をローラは唇で遮る。
ノローラ「私はノローラ、南の国の服屋の妻よ。」
そう言って店のクロークにパタパタと駆け出す。
ローラ「本当の私、セルキーのローラは貴方の中だけに居させて♥」
クロークからひょっこり顔を出してそれだけ言うと耳を真っ赤にし戻っていった。
鉢植えのアルラウネを背負った花屋や頭にサハギンを乗せた漁師、グリズリーに担がれた樵がオーガ夫妻のパブで酒を飲んで居たりするごく普通の町。
店をやってる人間で独身なのは服屋の僕、「テイラー・スイフト」くらいだ。
ある日僕がオーク夫妻の食堂で遅めの朝食を取っていると漁師のフィッシャーさんが奥さんのサハギンに抱えられて飛び込んできた。
フィッシャー「大変だ、俺の網に魔物が掛かっちまった!」
慌てているようだがこの辺は親魔物領だ、漁網にマーメイドや大量発生したシー・スライムが掛かる事は日常茶飯事の筈なんだけど?
サハギン「…見た事無い娘……船着き場で………暴れてる……」
サハギンさんが珍しく動揺している、表情はいつもと変わらないけど目が泳いでる。
テイラー「暴れてるならなぜ僕を呼びに来たんですか?」
普通に考えたら自警団の元勇者のブレイブさんとデュラハンさん達か腕っぷしの強い鍛冶屋のアイゼンさんドワーフさん夫妻じゃないのか?
サハギン「テイラーくん…奥さん居ない……」
サハギンさんそんなに真っ直ぐな目で見つめないで下さい、そんな目で見つめられたら拒否できないじゃないですか。
…
……
………
船着き場に来てみると一人の魔物娘が屈強な漁師を相手に銛一本で無双している。
テイラー「えーっと、何者です?あの娘。」
サハギン「…アザラシ?」
おんぶしたフィッシャーさんと一緒に首をかしげるフィッシャー夫妻。
いや、聞いてんのはこっちなんだけど。
アザラシ?「ワタシをこんなところに連れてきてどうするつもりだ!元の場所に帰せー!」
アザラシの着ぐるみを着た女の子が汗だくで叫んでいる。
テイラー「もしもーし、ちょっと話を聞かせてもらえませんか〜?」
ポケットから白いハンカチを取り出してその辺の棒に括り付け即席の白旗を作り、手を上げながら近づいていく。
テイラー「お、お前もコイツらの仲間か!」
銛をこちらに向け鋭い目付きでこちらを睨んでくるアザラシ?
気のせいか少しフラフラしている。
テイラー「何処のどなたか知りませんが取り合えず話し合いませんか?」
銛の切っ先が胸に当たるところまで近づいて話し合いを持ちかける。
ちょっと怖いけど相手は多分魔物娘だ、いきなりブスリッとはいかないだろう。
アザラシ?「ワタシは、セルキー…のローラ…お前…誰?」
さっきよりフラフラしてるけど突き付けた銛も下ろしてくれたし何とか話し合えそうだ。
テイラー「僕の名前はテイラー・スイフト、宜しくノローラさん。」
自己紹介をしたら握手だ、と思って手を伸ばしたが…
ノローラ?「のろ…ちが…ろー………」
そこまで言うと受け身もとらず前のめりに倒れてしまった、変わった挨拶の仕方をする魔物だなぁ…
でもこのままだと話もできないので顔を上げてもらおうと顔を除き込む。
ノローラ?「きゅう〜」
伸びてんじゃん!
そして慌てて抱き起こす。
テイラー「熱っ、すごい熱だ!早く医者に連れてかないと!」
そして僕はノローラさんを背負って町の診療所へと走った。
背負いきれなかった尻尾はサハギンさんが担いでくれた、やっぱり良い人だ。
旦那のフィッシャーさんは船着き場に置いていかれた、なんだか不憫な人だ。
…
……
………
駄ホメット「熱中症じゃな。」
テイラー「ですよねー。」
ノローラさんを僕の家まで運んだ後、薬屋のバフォメットさんとサハギンさんに毛皮からパジャマに着替えさせられ頭に氷嚢を乗っけた状態で寝てるノローラさん。
因みにこのパジャマは僕の店の商品だ。
結構自信作だったんだが全くと言って良いほど売れなかった。
だってこの町の殆どの人は寝る時服着ないんだもん。(性的な意味で)
テイラー「バフォメットさん、『セルキー』ってどんな魔物なんですか?」
駄ホメット「ワシも詳しくは知らんが確か北の方に住んどる魔物じゃのう、まぁ詳しい事は目を覚ましてから直接聞くんじゃの。」
診察を終えて帰るバフォメットさんにお礼を言うと氷嚢の氷を新しいのに変えて頭に乗せてあげる。
ノローラ?「う〜ん、ここは?」
ちょうど目を覚ましたノローラさんと目が合った。
テイラー「気が付いた?ここは僕の家兼アトリエ、なにか食べるかい?」
そう言うと氷嚢をサイドテーブルに置いて膝をつく。
ノローラ?「あなたは…テイラー・スイフト?ああっ!私の毛皮!何処にやっ…た…」
急に体を起こしたせいでふらつき僕の胸に倒れ込む彼女を慌てて抱き締めるように支える。
テイラー「無理しちゃダメだよ、毛皮なら汗だくだったからそこに干してあるよ。」
壁に掛けられた毛皮を見せて安心させると彼女をベッドに寝かし氷嚢を乗せる。
気のせいかさっきより顔が赤い、まだ安静にしてなきゃダメみたいだ。
…
……
………
それから僕達の同居生活が始まった。
僕が作った服をノローラが着て、それを見たお客さんが僕の店の服を買う。
彼女は今まで自分の毛皮しか身に付けるものを知らなかった為か僕の作る服に興味津々でこれはなんだとかこの服はどうやって着るのとか色々聞いてくる。
僕はその度に細かく説明したり彼女をモデルにして新しい服を作ったりした。
でも種族としての意地なのかいつも頭にはアザラシの被り物を被ったままだった。
そんな生活の中、彼女の事も自分の事を色々話してくれた。
自分の居た場所の事。
テイラー「へー、海の上が氷で被われた世界ねぇ?」
ノローラ?「そうよ、そこで私達は魚を獲って暮らしてるの。」
その日から休みのときは海に魚を獲りに行くようになった。
この町に来る迄の事。
テイラー「流氷の上で昼寝をしてたの?」
ノローラ?「そう、それで気がついたら知らない海の中で強い潮の流れに流されて気が付いたらフィッシャーさんの網に捕まっちゃってたわけ。」
両親の事。
テイラー「え?よくわからない?」
ノローラ?「私達は群で子育てをするから群れのお母さん全員がお母さんみたいなものよ、私が小さい頃の氷の溶ける季節に流されて行った夫婦が居たらしいけどその人達じゃ無い事だけは確かだわ!」
間違いなくその人達が両親だ。
この町で始めて人間の男を見た事。
テイラー「え?君も魔物ならお父さんは人間じゃないの?」
ノローラ?「多分そうなんだろうけど、いつもお母さん達の毛皮の中に居たから一度も姿を見たこと無いわ。」
どうやら船着き場で大立回りしてたのは人間の男を見たこと無かったせいも有るらしい。
少しずつ心を開いてきてくれたようだが彼女の顔に浮かぶ寂しさは日に日に増すばかりだった。
やっぱり故郷とはかけ離れた南の島は彼女の居るべき所じゃないんだろうな。
テイラー「ねぇ、やっぱり君は故郷に帰った方が良いんじゃないかな?」
夕食後、僕は思いきって話を切り出してみた。
ノローラ?「テイラーは、私が側に居るのは…迷惑…なの?」
僕の言葉を聞いた彼女は飲みかけのティーカップを落とし、目を丸くして僕を見つめてくる。
テイラー「そうじゃないけどこの町は君の故郷とは全然違うし同じ種族の仲間も居ない、もう君の寂しそうな顔を見るのは辛いよ。」
僕だって彼女の事は好きだ、ずっと一緒に居たい。
テイラー「此処は君のいる場所じゃない…」
僕はもう彼女の顔を見る事が出来なかった。
ノローラ?「そうね、私の生まれ故郷は氷の世界。」
彼女が席を立つ音が聞こえる。
ノローラ?「こんなムシムシ熱い所なんて、私には相応しくないわね。」
僕の目の前まで歩み寄ってくる音。
ノローラ?「でも…」
椅子に座って俯く僕の顔を包み込む様に手が回される。
ノローラ?「貴方の居るべき所は、私の胸の中だけよ。」
テイラー「え?」
柔らかい
彼女の言葉の意味を理解するまでの数秒間、僕は彼女の胸に抱かれていることに気づかなかった。
ノローラ?「今思い出したわ、お母さん達がお父さん達を自分の毛皮の中に入れてた理由。」
僕は顔を上げた。
僕を抱き締めている彼女の目には涙が溢れんばかりに溜まっていた。
ノローラ?「セルキーはとっても寂しがり屋だから愛しい人といつも一緒に居るために同じ毛皮の中に入るんだって。」
彼女の顔がどんどん滲んで見えなくなる。
ノローラ?「だからテイラー、貴方の居るべき場所は私の胸の中だけよ。」
その言葉を聞いた瞬間僕はノローラの胸に顔を埋め、彼女の腰に手を回し抱き締めていた。
ノローラ?「テイラー?」
拘束を緩め、僕の顔を正面から見つめる彼女。
ノローラ?「貴方は、私の事嫌…」
僕は彼女の言葉を遮り、唇で返事を返した。
その後僕達はベッドで身体を重ね合った。
月明かりに照らされた彼女の肌はシルクのように輝いている。
採寸の時に何度も触れていたのに新鮮で、どの部分もミリ単位で把握していたのにもっと知りたいとばかりに僕は身体中をまさぐった。
ノローラ「もっと、もっと近くに来てテイラー…」
テイラー「え?これ以上どうやっ、うぁあっ!」
戸惑う僕を他所に彼女は臨戦態勢の僕自身を掴み彼女の秘所に宛がった。
すっかり濡れた彼女の柔らかい壁を掻き分け、僕自身が彼女の中に入っていく。
ミチュッグチュッと言う音と共に何かを突き破り彼女がビクンッと身体を跳ね上げる。
その後一層強く僕を抱き締め熱く濃厚な口付けを交わす。
上下で繋がった僕達は身体を擦り合わせるように一ミリたりとも隙間を空けまいと腰を動かす。
激しさは無いものの今まで離れていた時間を取り戻すかのように強く抱き締め合い互いを求め合った。
ノローラ「テイラー…あぁっ!」
テイラー「ノ、ノローラ…うぅっ!」
テイラー&ノローラ「「あ、あああああああああ!」」
…
……
………
翌朝、太陽が昇りきった頃に僕達は目を覚ました。
お互い照れ臭そうにベッドで顔を合わせ、一緒にシャワーを浴び、店の準備のためにドアを開けると町の皆が集まっていた。
サハギンさん「魚…朝一で獲ってきた…お祝い」
豚さん「朝御飯まだでしょう?パンとスープを持ってきたの。」
アルラウネさん「女の子が部屋に居るんだからお花くらい飾っとかないとね♪」
ドワーフさん「家族が増えるなら鍋釜は大きくしないとな!」
駄ホメット「薬に頼りすぎはのは良くないが精力剤くらい持っとかんとな?」
アヌビスさん「町民の結婚登録証だ、こう言うことはキチンとしないとな。」
タヌキさん「結婚式のプランは『リリム』『ドラゴン』『稲荷』のどれにするんや?今ならお祝い価格で三割引きにしとくで?」
南の国の薄い壁と御近所ネットワークによって一晩で町中に伝わっていた。
僕達は顔を真っ赤にしながら皆からの祝福を一部追い散らしながらも受ける。
こうして僕達の新しい生活が始まった。
ノローラ「ねぇ、テイラー?」
遅めの開店準備中に突然彼女が話しかけてきた。
ノローラ「私の名前、ノローラじゃなくてローラなのよ。」
テイラー「ええ!?それじゃあ今までずっ!!」
驚く僕の言葉をローラは唇で遮る。
ノローラ「私はノローラ、南の国の服屋の妻よ。」
そう言って店のクロークにパタパタと駆け出す。
ローラ「本当の私、セルキーのローラは貴方の中だけに居させて♥」
クロークからひょっこり顔を出してそれだけ言うと耳を真っ赤にし戻っていった。
13/02/25 21:47更新 / 慈恩堂