連載小説
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四匹目。〜闇夜に紛れ影を這う蛇〜前編

「ここは一体どこだ」


俺はギル、忍びと呼ばれる者だ
今はもう、唯の人殺しだが
昔は、忍びの里という所で
己の教訓を説いたものだ。


「腹が減った」


この辺りに食料になりそうな
物があるといいんだが...


「・・・」スタスタ


考えるのは面倒なので
とりあえず、歩いて行く

「今日は、よく風が吹く」


と言っても、忍び装束を纏い
顔は口と鼻、右目は布で覆っている。


「・・・」


木々のざわめきが聞き取れる程
静かな空間で。


「先に言っておく、
俺は目がいいんでな
丸見えだぞ、娘。」


「...っ!」


「まだまだ修行が足りないな
出直せ、そしてわかったら消えろ」


「・・・」


「手を出してくれば
容赦はしないからな」

「・・・」シュン


「何もして来なければ
俺も手出しはしない」


「・・・」コクン


「・・・」スタスタ


「・・・」スタスタ


「・・・」サッ


「・・・」サッ


(この娘、一体何者だ?
俺の動きに正確に付いてくる

顔が良く見えないから、誰かわからん)


「・・・?」


「まぁ...良い」


「...?」


「いや、なんでもない」


「・・・」


「そういえば、
オマエ喋れないのか?

さっきから無言だが」


「...い」


「?」

「...話題がない」


「ならば、少し話をしよう」


「・・・?」


「オマエは『蛇狩り』だな」


「・・・」コクン


「なら何故殺そうとしない」


「・・・」


「まぁ、いい。
今の所、お前から殺気は
見られないからな」


「それが...貴方様の...」


「・・・、『様』?」


「...いえ」


「悪いが、俺はお前と
ずっと一緒にいるつもりはないぞ」


「・・・?」


「俺は天涯孤独の身
他人と寄り添うつもりはない」


「...なんで...?」


「隙を見せれば寝首をかかれ
好意を持てば裏切られる
俺はそういう世界で生きてきた」


「・・・」


「だから、女だから
殺せないなんて事はないぞ」


「・・・!」ザッ!


「ようやく消えたか」


さて


「今日は、よく風が吹く」


四方八方から飛んでくる
手裏剣やクナイを叩き落とす


「なるほど、誘導させられたか」


無駄だ、全て『見えて』いる


キィン!キィン!キィン!キィン!


「・・・、ふん」


「・・・、そういえばあいつ
どこかで見たような気が...」


気のせいか...?



ーーーーーー城下町ーーーーーー



「ここは宿か?
部屋を一つ貸して欲しい」


「ほいほい〜そうですよ〜
ほな、これが鍵どす〜
お支払いはお帰りの際に〜」


「了解した」


これが、城下町という奴か
初めて見るな。


「『団長』殿達は
元気でやっているだろうか」


他人と寄り添うつもりはない
とあの娘には言ったが
彼等は違う、彼等は俺の理解者だ。


「ふぅ、少し表にでも出るか」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「・・・」スタスタ


賑やかな所だな
付けてくる奴がいなければ
ゆっくり見られるのだが


「・・・」スタスタ


「・・・」スタスタ


「また、お前か」

「・・・!」


「今度は、何をしに来た?」


「・・・」フルフル


「この前は手裏剣にクナイだったな」


「・・・」フルフル


「残念だ。
お前はなかなか俺好みだが」


男の隻眼が、娘を捉える


「・・・」ボフッ


「目くらましか...
だが、『見えて』いる」


キィン!キィン!!


激しい攻防が続く


そんな中、娘は違和感を感じたが


気付いた時には遅かった。


「『影踏み』の術」


もはや、娘は一歩も動けない


「お前、クノイチだな?
下手に近づけば、隠れている尻尾に
足元を掬われる訳だ」


「・・・」ジロリ


「俺はそんなにぬるくない」


そして男は懐から刀を抜き


女に向かって思い切り振り抜いた


スパーン。


切れていたのは丸太だけであった。


「身代わり...分身か」


「・・・」スタッ


「なかなかやるな」


「・・・」スッ


「・・・ん?」


娘は一つの文を寄越してきた


「それだけか?」


「・・・」コクン


「・・・興が冷めた
俺は帰らせてもらうぞ」


「・・・」トタタタッ


「付いてくれば、殺す。」


「・・・」シュン


「・・・付いてくるなよ」


「・・・」



ーーーーーー宿にてーーーーーー



「何が書いてあるのか」



拝啓。

『蛇』の一人、ギル殿へ
そなたの腕は我々忍びの里
一同が認めております。
それ故、貴方様には
里へ帰ってきて頂きたい
そうすれば、かつての
里を抜けだした罪は
取り消しとしようと思います。

我らが師、『常闇のシュテン』殿へ

忍びの里一同より。



「くだらない」


文を細切れに切り刻んだ。


「・・・!」スタッ


「やはり、付いてきていたか
だがしかし、見ての通りだ

里に帰り、皆に伝えろ
貴様らの師はすでに死んだとな」


「・・・どうして...そこまで」


「もう俺は忍びではない
ただの、人殺しだ」


「・・・っ!」


「悪いが、出ていってくれないか
少し休みたいんだが」


「・・・」キッ


「二度は言わない」


娘はクナイを手に構える。


「そういえば、里を抜ける時も
一早く気付き、止めに来たのは
お前だったな、クイナよ」

「...!えぇ」


「悪いが、もう俺は昔と違う」


「・・・っ!」


「俺を連れ戻すか?
その為に、また俺と試合をするか?
俺の右目を潰した、あの時のように」


「...!?」


「随分と震えているな
好きな男に再会できて
そんなに嬉しいか?」


「・・・」キッ


「それとも、その
好きな男を殺す機会を
与えられて歓喜しているのか」


「貴方様は何を・・・」


「とにかく、里に俺は戻らん
お前とも、これで最期にしよう」


「...っ」



今宵。


『蛇』と『蛇狩り』


『師』と『弟子』は


殺し合う。
16/03/02 23:04更新 / 紫酔染香*・ω・)ゞ
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■作者メッセージ
どうも。シスイでございます

今回は現在と過去が交差する

そんな感じで行きたいと思います。

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