分身の術？
その日、俺は暇に任せて部屋で携帯をいじっていた。
時刻はまもなく20時になるところで、ぼちぼち風呂でも入るかとベッドで寝返りをうつ。
安さが売りのマンションだけに、その部屋は大して広くもなく、あっという間に風呂へと移動できるのが利点だ。
逆を言えば、狭いの一言に尽きるのだが。
そんなわけで、風呂に向かおうと体を起こした時だった。
ベッドとは反対側にある窓が静かに開き、どう見てもコスプレにしか見えない格好の女性がするりと部屋に入ってきた。
鍵をかけていなかった俺にも問題はあるが、色々な意味で声が出ない。
部屋主の前で堂々と窓から侵入してきている時点で問題だし、この女性の格好はそれ以上に問題だ。
パッと見は忍者みたいな服？だが、たわわに実った胸の谷間やすらりと伸びた足の太ももなんかは丸見え。まるで安物AVに出てくるお色気くのいちを地でいくような格好は、はっきり言って痴女である。
そんな不審者は俺を見ても微動だにせず、じっと俺を見つめるだけ。
よって、先に痺れをきらしたのは俺だった。
「……おい。人の部屋に、なに勝手に入ってきてるんだ」
「ふむ、悪くない」
人の問いはガン無視で、痴女は独り言をほざく。
そして、顔の下半分を覆っている布を外した。
露わになった素顔はどこかあどけなさを残しつつも、見事なまでに整っていた。芸能人など比にならないと断言できるくらいだ。
そのせいで、しばしぽかんと見つめていた俺だが、不意に現実に戻った。
「おい、人の質問に答えろよ。誰だよお前は？」
「見てわからないか？」
少し小馬鹿にしたような返事が返ってきた。
不法侵入者のくせに生意気な返答である。
「不審者の痴女」
腹立たしい気持ちを抑えて、努めて平然とそう言ってやると、女性は器用に片眉を吊り上げた。
「……もう一度言ってみろ」
「不審者の痴女」
望み通りにもう一度言ってやると、キッと睨まれた。
「誰が痴女だ！綺麗に言い直すんじゃない！」
「痴女じゃなきゃ不審者だ！待ってろ、今迎えの車を呼んでやる！」
「待て、迎えの車だと？」
怪訝そうに尋ねてくるので、俺はわかりやすく言ってやった。
「そうだ。警察と呼ばれるとても頼りになる方々だ。呼んでやるからちょっと待ってろ。110番と……」
「ちょっと待て！どうしてそうなる！？正気か！？」
警察と聞いて取り乱したらしく、携帯を奪い取ろうとしてきた。
「窓から人の部屋に平然と入ってくるお前の方がよっぽど正気じゃねぇよ！」
「扉には鍵がかかってたんだから仕方ないだろう！」
鍵がかかってなかったら扉から入ってくるつもりだったらしい。
開き直りにも近い発言とともに手を放したので、俺も警察へ通報するのは待ってやる。
だが、番号は押してあるので、あとは発信するだけだ。
「はあ。いいか？もう一度訊くぞ。お前は誰だ？」
「クノイチの紅だ」
俺の中で、目の前の女が変態女から変態電波女にランクアップした。
「ああ、くのいちか」
「そうだ。やっとわかってくれたか？」
女性がどこかほっとしたようにため息をつくなか、俺は携帯で別の番号を押す。
「待ってろ。今、別の車を呼んでやる。さっきと違って栄養バランスの考えられた食事に、介護してくれる人までついてるぞ。一度その頭をきちんと見てもらってくるんだな。119番と」
ぽちぽちと番号を押したところで、再び紅に腕を掴まれた。
「わかってないじゃないか！とにかく、その変な物体を渡せ！」
「触んな！お前が一番変なんだよ！なにがくのいちだ！不思議ぶってんじゃねぇ！」
「くっ！かくなる上は！」
俺が携帯を渡さないからか、紅は懐に手を入れると何かを取り出して払った。
取り出したものはクナイだったようで、俺の手にあった携帯が見事に真っ二つになる。
「おま、なにしてくれてんだ！買い換えたばかりのスマホが！」
これで器物損害罪が確定だ。
「人の話を聞いてくれないからだ！安心しろ、危害を加えるつもりはない」
危害もなにも、俺の携帯は既に再起不能である。
「安心しろじゃねぇ！大体、お前は俺になんの用―」
言いかけた言葉はそこで中断された。
それというのも、こいつの腰のあたりにある腰紐だと思っていたものが動いていたからだ。
俺の視線に気づいたのか、紅はそちらに視線を向け、そしてすぐに戻した。
「尻尾が気になるか？まあ、それも含めて説明しよう」
尻尾？
尻尾がある人なんているのか？
いや、それはもう人じゃないだろう。
つまり、目の前のこいつは人ではないわけで……。
「一体、なんなんだよ、お前」
「クノイチだと言っただろう。まあ、君が知っているのと違って、私はサキュバスのクノイチだ」
サキュバスなんだか、くのいちなんだか、はっきりしない発言だ。
「色々とつっこみたいが、とりあえず我慢してやる。で、俺になんの用だ」
「なに、話は簡単だ。私の新術に付き合ってもらいたい」
「新術？」
こいつが言うと、ものすごく嫌な響きである。
「ああ。君も知っていると思うが、分身の術だ」
分身の術といえば、小学生でも知っているくらいに知名度は高いと言える。その新術らしい。
「ほう。で、具体的には今までのとどう違うんだ？」
「いい質問だ。今までの分身の術ではどうしても時間的な制限があってな。一定時間で分身が消えてしまうのだ。しかし、新術は違う。時間では消えない上に、その分身が更に分身を作ることもできるのだ」
大きな胸を揺らして紅は得意げにそう語るが、俺は胡散臭いマルチ商法を聞かされている気分である。
「このようにいいことずくめな新術だが、欠点もあってな。男の協力者が必須な上に、一月くらいしないと術が成功したかわからないのだ」
「おい、それ、欠点の方が目立ってないか？」
術を使っても、一月先まで成功したかわからない時点で駄目だろ。
「それだけじゃないぞ。例え成功しても、分身は当分腹の中だからな」
「ん？腹の中？」
「そうだ。具体的には、子宮の中だな」
そう言われて、俺はようやくピンときた。
「妊娠じゃねーか！」
「おお、よく知ってるな。確かにこの新術の別名は妊娠の術―」
「術じゃねーよ！なにさり気なく術にしようとしてんだ！」
ああ、絶対にこいつの頭はネジが足りてない。
足りてなくて、代わりに手裏剣でも刺してあるに違いない。
「なにを言う！新たな生命を作り出す立派な分身術ではないか！」
「ただの子作りだろう！どこが新術だ！」
なにが悲しくて頭の出来が残念な美人とこんな馬鹿なことを言い合わないといけないのだろう。
「ふむ、物怖じしないのは気に入った。新術の相手として相応しいな。やはり、君に付き合ってもらうとしよう」
ぱたりとさわぐのを止め、紅が妖艶な笑みを浮かべてにじり寄ってくる。
さっきまでのバカっぽい様子が嘘のように消し飛び、男の性欲を掻き立てるような雰囲気を漂わせながら。
「お、おい。待てよ、俺の意思はどうなる！？」
こいつは新術だと言い張っているが、要するにただの子作りである。
子供を作るには、アレをアソコに入れてウフフしなければならないわけで。
そして俺は童貞。
男のアホな理想で、捨てるのはやはり好きになった相手がいい。
当然だが、目の前の痴女など論外である。
「君の意思など関係ない。それに、君は今からこの身体を好きにできるんだぞ？どうだ？男として、なにか疼くものがあるだろう」
俺の目の前で紅はぴたりと止まると、その場に跪いて胸を逸らす。
その結果、ぐぐっとせり出した胸が服を押しのけ、かなり際どい位置までその豊乳を覗かせた。
股間が正直に反応し、思わず誘惑に屈しそうになるが、まだ理性が体を押し止める。
「そ、そんな誘惑には屈しねぇ！さっさと諦めて帰れよ！」
「むう。これでは駄目か。仕方ない、強硬手段とさせてもらおう」
両手を合わせていかにも忍術らしい形にする紅。
途端に俺の体に異変が起こった。
「へ？」
体を起こしていられなくなり、ベッドに仰向けに倒れてしまったのだ。
それだけでなく、手足が動かない。
「お、おい！お前、俺になにをした！？」
「なに、君もよく知っている忍法の一つ、金縛りの術だ」
馬鹿だと思って油断していた。いかにも忍者らしい術を使えやがったではないか！
「おい、冗談だろ！？お前、こんなすごい術を使えたのかよ！？詐欺だろ！？」
「ふふん。どうだ、見なおしたか。ちなみにこの金縛りの術、肉棒だけは動かせるからな。安心していいぞ」
前言撤回。
やっぱりすごくない。
しかも、本当に動かせたから最悪である。
まあ、動かせるといってもびくびくさせるくらいだが、こんなろくでもない術にかかった自分が悲しくなる。
「安心なんかするか！いいから、早く解除しろよ！」
「するわけないだろう。君は今から私と分身作りだ♪」
言うなり、紅は俺の上にいそいそと跨ってきた。
「さて、邪魔なものは脱がないとな」
あっという間に上を脱がされ、今度はズボンに手がかけられる。
「おい、馬鹿！止めろ！」
「フフフ、嫌よ嫌よも好きのうちというやつだ。それでは、拝見させて頂こうか♪」
バカ殿みたいな発言とともに、下着ごと一気に引き下ろされ、解放された愚息が見事に反り立った。
「なんだ、こんなに大きくしてしまって。私が欲しくて堪らないという感じだな。待ってろ、私も脱ぐからな♪」
「そ、そんなわけないだろ！いいから退けよ！」
隣近所への迷惑を省みずに大声で叫ぶが、目の前の変態は聞く気など一切なさそうに膝立ちになって、コスプレチックな服を脱いだ。
うわっ、でけぇ……。
解放された巨乳が存在を強調するように揺れるのを見て、俺は正直にそう思った。
男の悲しい性で、目の前の裸体に視線は釘付けになってしまう。
巨乳に目が行きがちだが、腰のくびれ具合も見事なもので、胸の大きさに対してこの細さは反則だ。
それこそ、グラビアアイドルが裸足で逃げだすレベル。
腰を通り過ぎれば、視線の行きつく先は一つ。
色白の肌にぱっくりとできたピンクの割れ目。
エロ動画なんかで見慣れているはずなのに、現物を前にするとやたらと愚息が反応する。
今更だが、下着は付けてないのかよと、頭が変なところに気付く。
「ほら、よく見ておけ。ここが、君の肉棒を食べてしまうマンコだぞ♪」
見せつけるように、紅が指でそこを広げて見せた。
そして、そこから僅かに赤い液体が流れ出てくる。
「おい、お前、血が！」
「純潔の証だ。そういうわけだから、私の初めてを君にあげよう♪」
サキュバスが処女とかないだろ……。
頭ではそう思うも、今は貞操の危機だ。
「いらねぇ！だから退いてくれ！頼むから退いてくれ！お前が初めての相手とか嫌すぎるんだよ！！」
「なんと、君も初めてか！では、お互いに初めて同士というわけだな♪」
紅は驚き、そして嬉しそうに笑う。
余計なことを言ってしまったと思うも、もう遅い。
できることと言えば、喚くくらいだ。
「待て！俺はお前で童貞捨てるつもりなんてないんだよ！だから止めろ！」
「待つつもりはない。では、頂きます♪」
俺の肩に両手を置くと、紅は無慈悲に腰を下ろした。
それに合わせて反り立った俺の息子が温かい蜜壷へと呑み込まれていく。
そして、すぐになにか若干の抵抗があるものを突き破った。
「んっ♪君の肉棒が、私の中を押し広げて奥まで来てるぞ…！」
「っあ！バカ、止めろって……！」
結合部から血が流れているのに、痛みは感じていないのか、紅は歓喜の声を上げる。
膣内も初めて迎え入れた肉棒を歓迎するように、うねり、絡みつく。
ぬめり、マッサージするように肉棒へとまとわりつく柔壁は頭の中がおかしくなりそうなくらいの快感を与えてくる。
おかげで、初めてを奪われたことに対する怒りを感じる余裕もない。
あるのは、この中で射精してしまいたいというオスの本能だけ。
「さっさと退けって！俺はくあっ！！」
いきなり肉棒を締め上げられ、変な声が出てしまった。
「さあ、新術の準備は整ったぞ。後は君が存分に種付けするだけだ♪」
紅は嬉々として腰を振り始めた。
結合部からぱつぱつと淫らな音がする度、膨張した肉棒が熱したように熱い膣内の柔壁と擦れ合って、快感が体を駆け巡る。
「はぁん♪君の肉棒、固くて、ん…、とても具合がいいぞ♪」
ベッドのスプリングをギシギシ鳴るくらいに腰を振り、蹂躙していく紅。
その色っぽい喘ぎ声が俺を堪らなく興奮させ、呼応するように肉棒がびくつく。
「おい、頼むから退いてくれ！これ以上はっ…！」
「んっ♪んふ、君の肉棒、私の中でびくびくしているぞ♪そろそろなんだな？ほら、出してしまえ♪私の子宮が種付けしてほしいとせがんでいるぞ♪」
紅が深く腰を沈め、俺の肉棒が未知の感触のものにぶつかった。
それは亀頭へと吸いつき、精を吸い出そうと蠢く。
なにもかもが初体験の俺にとって、子宮口との接触は致命的な快感で、頭の中が真っ白になった。
「あっ…で、出る……！！」
押し止めていたダムが決壊した。
理性の抑制を振り切った本能が肉棒を脈打たせ、溜まりに溜まった精液を吐き出させていく。
「きたぁぁぁ♪出てる、出てるぞ、君の精子♪んあっ、すごいな♪おちんちんがびくびくする度に熱い子種汁がたっぷりと出てくるっ♪」
射精される快感がたまらないのか、紅は蕩けた顔で嬉しそうに笑うなか、俺の腰は意思とは関係なく精を吐き出し続けた。
そして出すものを出し終えると、急に頭が冷めていく。
オナニーの場合はここで虚しさを感じるものだが、今、俺が感じたのは取り返しのつかないことをしてしまったという後悔だけ。
「嘘だろ……。俺の初体験が……」
初めては結婚相手とするつもりだったのに、それをなんだかよく分からない相手に奪われてしまった。
そう考えると惨めな気分になり、思わず顔を両手で覆う。
いつの間にか金縛りは解けているが、今更である。
そういや、いつまでこいつは人の上に乗っているのだろう。
こちとら傷モノにされたんだ。さっさと消えてほしい。
怒りが沸々と込み上げてきて、俺の中にとある復讐心が芽生えてくる。
こいつ、今なら油断してそうだし、イケるんじゃないか？
頭が決断したら、動くのは早かった。
「んう？」
間抜けな声を出した紅にがばっと抱きつくと、そのままぐるんと仰向けに押し倒し、今度は俺が上になった。
「な、なんだ？急にどうしたんだ？」
いきなりの事態に戸惑った表情になる紅。
正常位の体勢をとった俺は、ここぞとばかりに言ってやった。
「お前が言ったんだからな」
「い、言った？なにをだ？」
「この身体を好きにしていいと言ったのはお前だからな！」
言葉と同時に、未だにいきり立つ肉棒を深々とねじ込んだ。
「あっ、ちょ、ちょっと待て！あんっ！」
子宮口を突かれ、紅の口から変な声が漏れる。
だが、俺は気にせず更に腰を進める。
俺自身かなりキツいが、そんなことは二の次だ。
「ひあっ！ま、待って！まだ入れる気か！？そこは敏感だから、そんなに強くされたら、あっ！！」
初めて弱気な声になる紅、しかし止めてやるつもりはない。
結果、子宮口の奥まで肉棒を突き入れ、子宮内までねじ込む。
「ひゃあああ♪待って、止めて！おちんちんで子宮口ごりごりしないでぇ♪おかしくなっちゃうからぁぁ♪」
「待たねぇ、止めねぇ！人の初めて奪っといて、言うこと聞いてもらえると思うなよっ！！」
紅から歓喜の声が発せられ、俺は内心ほくそ笑んだ。
俺の作戦の格子はこうだ。
このままこいつとの行為を続けて、まずは紅をイく直前まで追いやる。
こいつは当然中出ししてほしいはずだから、俺の限界が近づいたら、出す直前で抜き、顔射でもしてやる。
これが俺の復讐劇だ。
それを完遂するため、膣内にねじ込んだ息子を強引に動かしていると、二度目の射精感が急激に高まってくる。
情けない話だが、つい先程童貞を卒業したばかりの俺は、まだ生膣が与える快感に耐えるだけの忍耐力などない。
早漏？なんとでも言え。
「くっ、おい、そろそろ出すぞ！！覚悟しろよっ！！」
子宮内にまで到達した肉棒をびくびくさせると、紅も射精のきざしを感じ取ったようだ。
「あん♪いいぞ、出してくれ♪君の精液を子宮に♪んぁ、すごいぞ♪頭がおかしくなりそう♪」
俺の考えなどしらず、よがる紅。
期待を裏切られ、顔に精液をかけられたら、一体どんな反応をするのか楽しみだ。
作戦が成功しつつある今、俺は止めとばかりに子宮へ息子を突き入れる。
その時だった。
紅の両足が俺の腰に絡みつき、しっかりと固定した。
「！？」
いきなりのことに戸惑う俺。
よりにもよって、だいしゅきホールドである。
「ああ、もう我慢できん♪早く、早く種付けしてぇ♪」
「おい、馬鹿！放せ、これじゃっ！！」
高まる射精感がメルトダウンを告げている。
このままでは、再び中出しだ。しかも子宮に。
こいつにとっては最高の結果だが、俺にとっては最悪である。
だから、なんとか足をはがそうとするが、体勢が体勢なだけに力が入らず、紅の足は万力のように俺の腰を挟み込んで外れない。
「や、やばっ、これ以上は……！」
筒先に精が集い、爆発するのは時間の問題だ。
「ほら、ぎゅってしてやるぞ♪たっぷり出して、しっかり孕ませてくれ♪」
言葉と同時に膣内が収縮し、肉棒を柔壁が締め上げた。
「っあ…、ああああああ！」
今度は俺が情けない悲鳴を上げる番だった。
膣内の射精を促す動きに屈し、肉棒が再び精を子袋へと噴射させる。
「ひゃああああ♪かかってる、子宮の中に君の子種がびちゃびちゃかかってるぅ♪」
紅の膣内が蠢き、精を搾り出そうとする。
そのせいか、二度目だというのに、それはとても長く続いた。
おびただしい量の精液を全て子宮に注ぎ、俺の体から力が抜けていく。
「ありえねぇ……。もういやだ、俺がなにしたってんだ……」
紅の上で脱力し、呆然と呟く。
そんな俺に、追い打ちがかけられた。
「はぁぁぁ…♪子宮の中、子種で一杯だ…♪これで決まりだな♪もう君に朝日は拝ません♪」
俺の視界がぐるりと変化したと思ったら、再び紅に跨られていた。
「ちょ、ちょっと待て。朝日を拝ませないって…！」
することしたら、お命頂戴ということだろうか。
これではくのいちではなく、ただのメスカマキリである。
「言葉通りだ。もう君はこの世界からお別れというわけだな♪」
嬉しそうに笑う紅は俺から退くと、自分の服からごぞごそとなにかを取り出し始める。
「お、おい待ってくれよ！そりゃ、俺は態度悪かったかもしれないが、殺すほどじゃなかったろ！？」
「ん？殺す？なんのことだ？」
そう言う紅の手には、札らしきものがあった。
「あ、あれ？殺すんじゃないのか？」
「なにを言う。私は君のことが気に入った。殺すわけがないだろう」
ぺたぺたと床に札を貼っていく紅。
そして再び手を合わせて忍者らしい形にすると、何事かを呟き始めた。
すると、貼られた札から光が発せられ、床に不思議な模様が浮かび上がる。
どうやら魔法陣らしい。
「じゃあ、朝日を拝ませないってのはどういう意味だよ？」
「なに、これから行く私の故郷は一日がずっと夜だからな。朝日は拝めないのだ」
「…じゃあ、この世界とお別れっていうのは？」
「言っただろう、君を気に入ったと。だから、故郷へ君をお持ち帰りすることにした♪」
俺の口から盛大なため息が漏れた。
「紛らわしい言い方すんな！！それに、俺はお前の故郷なんて行かねぇ！！」
「フフフ、それでこそ私の夫だ。さあ、行くぞ。楽しい夫婦生活の始まりだ♪」
俺の叫びなんてガン無視で、紅は俺の腕をしっかりと掴み、光を放つ魔法陣の中へ連れていく。
「ば、馬鹿！放せ、俺は行かないって―」
言いかけた言葉は、魔法陣が強烈な光を放ったことで遮られた。
三ヶ月後。
「ただいま」
「ああ、お帰り。夕飯の準備はできてるぞ」
無理矢理この世界に拉致されてきた俺は、紅と夫婦として暮らしていた。
馬鹿だと思っていた紅だが、家事はきちんとできる上に、立派な家を持っていたから驚きだ。俺からすれば、ちょっとした逆玉の輿に近い。
「おっと。フフ、また動いたな。どうやらこちらも夕飯にする必要がありそうだ♪」
そう言って、紅は膨らんだ腹を嬉しそうに撫でた。
その腹にいるのは、当然俺の子。
あの後、何回もセックスした俺達だが、恐ろしいことに最初の一回で見事に妊娠したらしい。
ゆっくりと、しかし確実に大きくなっていく腹の子は双子のようで、まだ妊娠して三ヶ月だというのに、その腹はなかなかに膨れている。
「そういうわけだから、先に娘達に栄養を与えようじゃないか♪」
「子供を言い訳にするな。シたいならシたいと素直に言え」
「子供が動いたのは本当だぞ？」
少しむくれる様が可愛らしい。
最初はこんなヤツ、と否定していたはずなのに、いつの間にか愛しく思えていたから不思議だ。
これもサキュバスだからだろうか？
「わかったわかった。じゃ、ベッドに行くぞ」
「フフ、今回もたっぷり頼む♪次の分身が作れるくらいにな♪」
俺の腕に抱きつき、嬉しそうに尻尾をくねらせる紅。
「そういうセリフは腹の子を産んでから言え」
とはいえ、こいつのことだから、無事に子を産んだら、すぐにそう言うに違いない。
それを想像して一人笑ってしまった。
俺達の分身作りの日々は終わらないようだ。
時刻はまもなく20時になるところで、ぼちぼち風呂でも入るかとベッドで寝返りをうつ。
安さが売りのマンションだけに、その部屋は大して広くもなく、あっという間に風呂へと移動できるのが利点だ。
逆を言えば、狭いの一言に尽きるのだが。
そんなわけで、風呂に向かおうと体を起こした時だった。
ベッドとは反対側にある窓が静かに開き、どう見てもコスプレにしか見えない格好の女性がするりと部屋に入ってきた。
鍵をかけていなかった俺にも問題はあるが、色々な意味で声が出ない。
部屋主の前で堂々と窓から侵入してきている時点で問題だし、この女性の格好はそれ以上に問題だ。
パッと見は忍者みたいな服？だが、たわわに実った胸の谷間やすらりと伸びた足の太ももなんかは丸見え。まるで安物AVに出てくるお色気くのいちを地でいくような格好は、はっきり言って痴女である。
そんな不審者は俺を見ても微動だにせず、じっと俺を見つめるだけ。
よって、先に痺れをきらしたのは俺だった。
「……おい。人の部屋に、なに勝手に入ってきてるんだ」
「ふむ、悪くない」
人の問いはガン無視で、痴女は独り言をほざく。
そして、顔の下半分を覆っている布を外した。
露わになった素顔はどこかあどけなさを残しつつも、見事なまでに整っていた。芸能人など比にならないと断言できるくらいだ。
そのせいで、しばしぽかんと見つめていた俺だが、不意に現実に戻った。
「おい、人の質問に答えろよ。誰だよお前は？」
「見てわからないか？」
少し小馬鹿にしたような返事が返ってきた。
不法侵入者のくせに生意気な返答である。
「不審者の痴女」
腹立たしい気持ちを抑えて、努めて平然とそう言ってやると、女性は器用に片眉を吊り上げた。
「……もう一度言ってみろ」
「不審者の痴女」
望み通りにもう一度言ってやると、キッと睨まれた。
「誰が痴女だ！綺麗に言い直すんじゃない！」
「痴女じゃなきゃ不審者だ！待ってろ、今迎えの車を呼んでやる！」
「待て、迎えの車だと？」
怪訝そうに尋ねてくるので、俺はわかりやすく言ってやった。
「そうだ。警察と呼ばれるとても頼りになる方々だ。呼んでやるからちょっと待ってろ。110番と……」
「ちょっと待て！どうしてそうなる！？正気か！？」
警察と聞いて取り乱したらしく、携帯を奪い取ろうとしてきた。
「窓から人の部屋に平然と入ってくるお前の方がよっぽど正気じゃねぇよ！」
「扉には鍵がかかってたんだから仕方ないだろう！」
鍵がかかってなかったら扉から入ってくるつもりだったらしい。
開き直りにも近い発言とともに手を放したので、俺も警察へ通報するのは待ってやる。
だが、番号は押してあるので、あとは発信するだけだ。
「はあ。いいか？もう一度訊くぞ。お前は誰だ？」
「クノイチの紅だ」
俺の中で、目の前の女が変態女から変態電波女にランクアップした。
「ああ、くのいちか」
「そうだ。やっとわかってくれたか？」
女性がどこかほっとしたようにため息をつくなか、俺は携帯で別の番号を押す。
「待ってろ。今、別の車を呼んでやる。さっきと違って栄養バランスの考えられた食事に、介護してくれる人までついてるぞ。一度その頭をきちんと見てもらってくるんだな。119番と」
ぽちぽちと番号を押したところで、再び紅に腕を掴まれた。
「わかってないじゃないか！とにかく、その変な物体を渡せ！」
「触んな！お前が一番変なんだよ！なにがくのいちだ！不思議ぶってんじゃねぇ！」
「くっ！かくなる上は！」
俺が携帯を渡さないからか、紅は懐に手を入れると何かを取り出して払った。
取り出したものはクナイだったようで、俺の手にあった携帯が見事に真っ二つになる。
「おま、なにしてくれてんだ！買い換えたばかりのスマホが！」
これで器物損害罪が確定だ。
「人の話を聞いてくれないからだ！安心しろ、危害を加えるつもりはない」
危害もなにも、俺の携帯は既に再起不能である。
「安心しろじゃねぇ！大体、お前は俺になんの用―」
言いかけた言葉はそこで中断された。
それというのも、こいつの腰のあたりにある腰紐だと思っていたものが動いていたからだ。
俺の視線に気づいたのか、紅はそちらに視線を向け、そしてすぐに戻した。
「尻尾が気になるか？まあ、それも含めて説明しよう」
尻尾？
尻尾がある人なんているのか？
いや、それはもう人じゃないだろう。
つまり、目の前のこいつは人ではないわけで……。
「一体、なんなんだよ、お前」
「クノイチだと言っただろう。まあ、君が知っているのと違って、私はサキュバスのクノイチだ」
サキュバスなんだか、くのいちなんだか、はっきりしない発言だ。
「色々とつっこみたいが、とりあえず我慢してやる。で、俺になんの用だ」
「なに、話は簡単だ。私の新術に付き合ってもらいたい」
「新術？」
こいつが言うと、ものすごく嫌な響きである。
「ああ。君も知っていると思うが、分身の術だ」
分身の術といえば、小学生でも知っているくらいに知名度は高いと言える。その新術らしい。
「ほう。で、具体的には今までのとどう違うんだ？」
「いい質問だ。今までの分身の術ではどうしても時間的な制限があってな。一定時間で分身が消えてしまうのだ。しかし、新術は違う。時間では消えない上に、その分身が更に分身を作ることもできるのだ」
大きな胸を揺らして紅は得意げにそう語るが、俺は胡散臭いマルチ商法を聞かされている気分である。
「このようにいいことずくめな新術だが、欠点もあってな。男の協力者が必須な上に、一月くらいしないと術が成功したかわからないのだ」
「おい、それ、欠点の方が目立ってないか？」
術を使っても、一月先まで成功したかわからない時点で駄目だろ。
「それだけじゃないぞ。例え成功しても、分身は当分腹の中だからな」
「ん？腹の中？」
「そうだ。具体的には、子宮の中だな」
そう言われて、俺はようやくピンときた。
「妊娠じゃねーか！」
「おお、よく知ってるな。確かにこの新術の別名は妊娠の術―」
「術じゃねーよ！なにさり気なく術にしようとしてんだ！」
ああ、絶対にこいつの頭はネジが足りてない。
足りてなくて、代わりに手裏剣でも刺してあるに違いない。
「なにを言う！新たな生命を作り出す立派な分身術ではないか！」
「ただの子作りだろう！どこが新術だ！」
なにが悲しくて頭の出来が残念な美人とこんな馬鹿なことを言い合わないといけないのだろう。
「ふむ、物怖じしないのは気に入った。新術の相手として相応しいな。やはり、君に付き合ってもらうとしよう」
ぱたりとさわぐのを止め、紅が妖艶な笑みを浮かべてにじり寄ってくる。
さっきまでのバカっぽい様子が嘘のように消し飛び、男の性欲を掻き立てるような雰囲気を漂わせながら。
「お、おい。待てよ、俺の意思はどうなる！？」
こいつは新術だと言い張っているが、要するにただの子作りである。
子供を作るには、アレをアソコに入れてウフフしなければならないわけで。
そして俺は童貞。
男のアホな理想で、捨てるのはやはり好きになった相手がいい。
当然だが、目の前の痴女など論外である。
「君の意思など関係ない。それに、君は今からこの身体を好きにできるんだぞ？どうだ？男として、なにか疼くものがあるだろう」
俺の目の前で紅はぴたりと止まると、その場に跪いて胸を逸らす。
その結果、ぐぐっとせり出した胸が服を押しのけ、かなり際どい位置までその豊乳を覗かせた。
股間が正直に反応し、思わず誘惑に屈しそうになるが、まだ理性が体を押し止める。
「そ、そんな誘惑には屈しねぇ！さっさと諦めて帰れよ！」
「むう。これでは駄目か。仕方ない、強硬手段とさせてもらおう」
両手を合わせていかにも忍術らしい形にする紅。
途端に俺の体に異変が起こった。
「へ？」
体を起こしていられなくなり、ベッドに仰向けに倒れてしまったのだ。
それだけでなく、手足が動かない。
「お、おい！お前、俺になにをした！？」
「なに、君もよく知っている忍法の一つ、金縛りの術だ」
馬鹿だと思って油断していた。いかにも忍者らしい術を使えやがったではないか！
「おい、冗談だろ！？お前、こんなすごい術を使えたのかよ！？詐欺だろ！？」
「ふふん。どうだ、見なおしたか。ちなみにこの金縛りの術、肉棒だけは動かせるからな。安心していいぞ」
前言撤回。
やっぱりすごくない。
しかも、本当に動かせたから最悪である。
まあ、動かせるといってもびくびくさせるくらいだが、こんなろくでもない術にかかった自分が悲しくなる。
「安心なんかするか！いいから、早く解除しろよ！」
「するわけないだろう。君は今から私と分身作りだ♪」
言うなり、紅は俺の上にいそいそと跨ってきた。
「さて、邪魔なものは脱がないとな」
あっという間に上を脱がされ、今度はズボンに手がかけられる。
「おい、馬鹿！止めろ！」
「フフフ、嫌よ嫌よも好きのうちというやつだ。それでは、拝見させて頂こうか♪」
バカ殿みたいな発言とともに、下着ごと一気に引き下ろされ、解放された愚息が見事に反り立った。
「なんだ、こんなに大きくしてしまって。私が欲しくて堪らないという感じだな。待ってろ、私も脱ぐからな♪」
「そ、そんなわけないだろ！いいから退けよ！」
隣近所への迷惑を省みずに大声で叫ぶが、目の前の変態は聞く気など一切なさそうに膝立ちになって、コスプレチックな服を脱いだ。
うわっ、でけぇ……。
解放された巨乳が存在を強調するように揺れるのを見て、俺は正直にそう思った。
男の悲しい性で、目の前の裸体に視線は釘付けになってしまう。
巨乳に目が行きがちだが、腰のくびれ具合も見事なもので、胸の大きさに対してこの細さは反則だ。
それこそ、グラビアアイドルが裸足で逃げだすレベル。
腰を通り過ぎれば、視線の行きつく先は一つ。
色白の肌にぱっくりとできたピンクの割れ目。
エロ動画なんかで見慣れているはずなのに、現物を前にするとやたらと愚息が反応する。
今更だが、下着は付けてないのかよと、頭が変なところに気付く。
「ほら、よく見ておけ。ここが、君の肉棒を食べてしまうマンコだぞ♪」
見せつけるように、紅が指でそこを広げて見せた。
そして、そこから僅かに赤い液体が流れ出てくる。
「おい、お前、血が！」
「純潔の証だ。そういうわけだから、私の初めてを君にあげよう♪」
サキュバスが処女とかないだろ……。
頭ではそう思うも、今は貞操の危機だ。
「いらねぇ！だから退いてくれ！頼むから退いてくれ！お前が初めての相手とか嫌すぎるんだよ！！」
「なんと、君も初めてか！では、お互いに初めて同士というわけだな♪」
紅は驚き、そして嬉しそうに笑う。
余計なことを言ってしまったと思うも、もう遅い。
できることと言えば、喚くくらいだ。
「待て！俺はお前で童貞捨てるつもりなんてないんだよ！だから止めろ！」
「待つつもりはない。では、頂きます♪」
俺の肩に両手を置くと、紅は無慈悲に腰を下ろした。
それに合わせて反り立った俺の息子が温かい蜜壷へと呑み込まれていく。
そして、すぐになにか若干の抵抗があるものを突き破った。
「んっ♪君の肉棒が、私の中を押し広げて奥まで来てるぞ…！」
「っあ！バカ、止めろって……！」
結合部から血が流れているのに、痛みは感じていないのか、紅は歓喜の声を上げる。
膣内も初めて迎え入れた肉棒を歓迎するように、うねり、絡みつく。
ぬめり、マッサージするように肉棒へとまとわりつく柔壁は頭の中がおかしくなりそうなくらいの快感を与えてくる。
おかげで、初めてを奪われたことに対する怒りを感じる余裕もない。
あるのは、この中で射精してしまいたいというオスの本能だけ。
「さっさと退けって！俺はくあっ！！」
いきなり肉棒を締め上げられ、変な声が出てしまった。
「さあ、新術の準備は整ったぞ。後は君が存分に種付けするだけだ♪」
紅は嬉々として腰を振り始めた。
結合部からぱつぱつと淫らな音がする度、膨張した肉棒が熱したように熱い膣内の柔壁と擦れ合って、快感が体を駆け巡る。
「はぁん♪君の肉棒、固くて、ん…、とても具合がいいぞ♪」
ベッドのスプリングをギシギシ鳴るくらいに腰を振り、蹂躙していく紅。
その色っぽい喘ぎ声が俺を堪らなく興奮させ、呼応するように肉棒がびくつく。
「おい、頼むから退いてくれ！これ以上はっ…！」
「んっ♪んふ、君の肉棒、私の中でびくびくしているぞ♪そろそろなんだな？ほら、出してしまえ♪私の子宮が種付けしてほしいとせがんでいるぞ♪」
紅が深く腰を沈め、俺の肉棒が未知の感触のものにぶつかった。
それは亀頭へと吸いつき、精を吸い出そうと蠢く。
なにもかもが初体験の俺にとって、子宮口との接触は致命的な快感で、頭の中が真っ白になった。
「あっ…で、出る……！！」
押し止めていたダムが決壊した。
理性の抑制を振り切った本能が肉棒を脈打たせ、溜まりに溜まった精液を吐き出させていく。
「きたぁぁぁ♪出てる、出てるぞ、君の精子♪んあっ、すごいな♪おちんちんがびくびくする度に熱い子種汁がたっぷりと出てくるっ♪」
射精される快感がたまらないのか、紅は蕩けた顔で嬉しそうに笑うなか、俺の腰は意思とは関係なく精を吐き出し続けた。
そして出すものを出し終えると、急に頭が冷めていく。
オナニーの場合はここで虚しさを感じるものだが、今、俺が感じたのは取り返しのつかないことをしてしまったという後悔だけ。
「嘘だろ……。俺の初体験が……」
初めては結婚相手とするつもりだったのに、それをなんだかよく分からない相手に奪われてしまった。
そう考えると惨めな気分になり、思わず顔を両手で覆う。
いつの間にか金縛りは解けているが、今更である。
そういや、いつまでこいつは人の上に乗っているのだろう。
こちとら傷モノにされたんだ。さっさと消えてほしい。
怒りが沸々と込み上げてきて、俺の中にとある復讐心が芽生えてくる。
こいつ、今なら油断してそうだし、イケるんじゃないか？
頭が決断したら、動くのは早かった。
「んう？」
間抜けな声を出した紅にがばっと抱きつくと、そのままぐるんと仰向けに押し倒し、今度は俺が上になった。
「な、なんだ？急にどうしたんだ？」
いきなりの事態に戸惑った表情になる紅。
正常位の体勢をとった俺は、ここぞとばかりに言ってやった。
「お前が言ったんだからな」
「い、言った？なにをだ？」
「この身体を好きにしていいと言ったのはお前だからな！」
言葉と同時に、未だにいきり立つ肉棒を深々とねじ込んだ。
「あっ、ちょ、ちょっと待て！あんっ！」
子宮口を突かれ、紅の口から変な声が漏れる。
だが、俺は気にせず更に腰を進める。
俺自身かなりキツいが、そんなことは二の次だ。
「ひあっ！ま、待って！まだ入れる気か！？そこは敏感だから、そんなに強くされたら、あっ！！」
初めて弱気な声になる紅、しかし止めてやるつもりはない。
結果、子宮口の奥まで肉棒を突き入れ、子宮内までねじ込む。
「ひゃあああ♪待って、止めて！おちんちんで子宮口ごりごりしないでぇ♪おかしくなっちゃうからぁぁ♪」
「待たねぇ、止めねぇ！人の初めて奪っといて、言うこと聞いてもらえると思うなよっ！！」
紅から歓喜の声が発せられ、俺は内心ほくそ笑んだ。
俺の作戦の格子はこうだ。
このままこいつとの行為を続けて、まずは紅をイく直前まで追いやる。
こいつは当然中出ししてほしいはずだから、俺の限界が近づいたら、出す直前で抜き、顔射でもしてやる。
これが俺の復讐劇だ。
それを完遂するため、膣内にねじ込んだ息子を強引に動かしていると、二度目の射精感が急激に高まってくる。
情けない話だが、つい先程童貞を卒業したばかりの俺は、まだ生膣が与える快感に耐えるだけの忍耐力などない。
早漏？なんとでも言え。
「くっ、おい、そろそろ出すぞ！！覚悟しろよっ！！」
子宮内にまで到達した肉棒をびくびくさせると、紅も射精のきざしを感じ取ったようだ。
「あん♪いいぞ、出してくれ♪君の精液を子宮に♪んぁ、すごいぞ♪頭がおかしくなりそう♪」
俺の考えなどしらず、よがる紅。
期待を裏切られ、顔に精液をかけられたら、一体どんな反応をするのか楽しみだ。
作戦が成功しつつある今、俺は止めとばかりに子宮へ息子を突き入れる。
その時だった。
紅の両足が俺の腰に絡みつき、しっかりと固定した。
「！？」
いきなりのことに戸惑う俺。
よりにもよって、だいしゅきホールドである。
「ああ、もう我慢できん♪早く、早く種付けしてぇ♪」
「おい、馬鹿！放せ、これじゃっ！！」
高まる射精感がメルトダウンを告げている。
このままでは、再び中出しだ。しかも子宮に。
こいつにとっては最高の結果だが、俺にとっては最悪である。
だから、なんとか足をはがそうとするが、体勢が体勢なだけに力が入らず、紅の足は万力のように俺の腰を挟み込んで外れない。
「や、やばっ、これ以上は……！」
筒先に精が集い、爆発するのは時間の問題だ。
「ほら、ぎゅってしてやるぞ♪たっぷり出して、しっかり孕ませてくれ♪」
言葉と同時に膣内が収縮し、肉棒を柔壁が締め上げた。
「っあ…、ああああああ！」
今度は俺が情けない悲鳴を上げる番だった。
膣内の射精を促す動きに屈し、肉棒が再び精を子袋へと噴射させる。
「ひゃああああ♪かかってる、子宮の中に君の子種がびちゃびちゃかかってるぅ♪」
紅の膣内が蠢き、精を搾り出そうとする。
そのせいか、二度目だというのに、それはとても長く続いた。
おびただしい量の精液を全て子宮に注ぎ、俺の体から力が抜けていく。
「ありえねぇ……。もういやだ、俺がなにしたってんだ……」
紅の上で脱力し、呆然と呟く。
そんな俺に、追い打ちがかけられた。
「はぁぁぁ…♪子宮の中、子種で一杯だ…♪これで決まりだな♪もう君に朝日は拝ません♪」
俺の視界がぐるりと変化したと思ったら、再び紅に跨られていた。
「ちょ、ちょっと待て。朝日を拝ませないって…！」
することしたら、お命頂戴ということだろうか。
これではくのいちではなく、ただのメスカマキリである。
「言葉通りだ。もう君はこの世界からお別れというわけだな♪」
嬉しそうに笑う紅は俺から退くと、自分の服からごぞごそとなにかを取り出し始める。
「お、おい待ってくれよ！そりゃ、俺は態度悪かったかもしれないが、殺すほどじゃなかったろ！？」
「ん？殺す？なんのことだ？」
そう言う紅の手には、札らしきものがあった。
「あ、あれ？殺すんじゃないのか？」
「なにを言う。私は君のことが気に入った。殺すわけがないだろう」
ぺたぺたと床に札を貼っていく紅。
そして再び手を合わせて忍者らしい形にすると、何事かを呟き始めた。
すると、貼られた札から光が発せられ、床に不思議な模様が浮かび上がる。
どうやら魔法陣らしい。
「じゃあ、朝日を拝ませないってのはどういう意味だよ？」
「なに、これから行く私の故郷は一日がずっと夜だからな。朝日は拝めないのだ」
「…じゃあ、この世界とお別れっていうのは？」
「言っただろう、君を気に入ったと。だから、故郷へ君をお持ち帰りすることにした♪」
俺の口から盛大なため息が漏れた。
「紛らわしい言い方すんな！！それに、俺はお前の故郷なんて行かねぇ！！」
「フフフ、それでこそ私の夫だ。さあ、行くぞ。楽しい夫婦生活の始まりだ♪」
俺の叫びなんてガン無視で、紅は俺の腕をしっかりと掴み、光を放つ魔法陣の中へ連れていく。
「ば、馬鹿！放せ、俺は行かないって―」
言いかけた言葉は、魔法陣が強烈な光を放ったことで遮られた。
三ヶ月後。
「ただいま」
「ああ、お帰り。夕飯の準備はできてるぞ」
無理矢理この世界に拉致されてきた俺は、紅と夫婦として暮らしていた。
馬鹿だと思っていた紅だが、家事はきちんとできる上に、立派な家を持っていたから驚きだ。俺からすれば、ちょっとした逆玉の輿に近い。
「おっと。フフ、また動いたな。どうやらこちらも夕飯にする必要がありそうだ♪」
そう言って、紅は膨らんだ腹を嬉しそうに撫でた。
その腹にいるのは、当然俺の子。
あの後、何回もセックスした俺達だが、恐ろしいことに最初の一回で見事に妊娠したらしい。
ゆっくりと、しかし確実に大きくなっていく腹の子は双子のようで、まだ妊娠して三ヶ月だというのに、その腹はなかなかに膨れている。
「そういうわけだから、先に娘達に栄養を与えようじゃないか♪」
「子供を言い訳にするな。シたいならシたいと素直に言え」
「子供が動いたのは本当だぞ？」
少しむくれる様が可愛らしい。
最初はこんなヤツ、と否定していたはずなのに、いつの間にか愛しく思えていたから不思議だ。
これもサキュバスだからだろうか？
「わかったわかった。じゃ、ベッドに行くぞ」
「フフ、今回もたっぷり頼む♪次の分身が作れるくらいにな♪」
俺の腕に抱きつき、嬉しそうに尻尾をくねらせる紅。
「そういうセリフは腹の子を産んでから言え」
とはいえ、こいつのことだから、無事に子を産んだら、すぐにそう言うに違いない。
それを想像して一人笑ってしまった。
俺達の分身作りの日々は終わらないようだ。
12/05/28 23:16更新 / エンプティ