「くそったれっ…！！」
俺は悪態つきながらもワイバーンの少女に面と向かい、槍を構える。
今のまま逃げてもほぼ絶対追いつかれてしまうだろう。
このまま追いつかれて喰われるぐらいなら、手荒だが少し痛めつけてから逃げたほうがいいと思ったからだ。
それに、俺は元はいえ竜騎士を目指していた身であると同時に、傭兵として生き延びてきたんだ。
だからどんな手を使ってでも、絶対に生き延びてやる…！
「来ないの？なら…、こっちから行かせてもらうわよっ！喰らえっ！」
少女は両手の翼を使って高く飛び、その両翼から突風を繰り出してきた。
その突風はただの風にあらず、風の刃として向かって来ていた。
（こいつ…！こんな高度な技を使うのかよっ！）
予想外の攻撃に行動が遅れてしまったが、なんとか辛うじて避けてみせた。
だが、その隙をワイバーンは逃さなかった。
「貰ったっ！いっただきぃ！」
そのまま一気に俺に向かって急降下してきたのだ。
（これはマズイっ…！）
俺はそのワイバーンの少女の攻撃に対応できず、ズドォォオン！というもの凄い音と共に土煙に巻き込まれてしまった。
「つっかまーえたーっと！それじゃ早速…！？」
ワイバーンの少女は勝利を確信したかのような感じであったが、ワイバーンの少女はすぐさま異変に気付いた。
そう、捕らえたはずの俺がいない事に。

（ふぅ…危ねぇ。）
俺は土煙が広がっている場所から離れ、再び逃走を開始した。
…なに？どうやってしてあの状態から逃げ切れたのかって？
情けない話だが、さっきの急降下自体の攻撃はギリギリ（突風の時よりもかなり際どい）の所で外し、その急降下による土煙と突風によって吹き飛ばされてしまい、まさに九死に一生を得たというわけだ。
さっさと捕まれなんて言わないでくれ…。
こっちだって生き延びる事に必死なんだから…。
…てか、俺は誰に向かって言っているのやら…。
とりあえずこの色んな意味で終わってしまったこのレスカティエから逃れようと裏地をジグザグに通りながら向かっていた。
しかし、こうもうまくいかないのが現実である。

「私から逃げようなんて、甘いわぁっ！」
…はい出ました急降下突撃。
空から追ってきてるのは大体予想は付いていたし、流石に3度目まで食らっていたら傭兵として笑いものである。
「おいおい…まだやるのかよ…。」
「うるさいわね！あんたは黙って私のモノになればいいのよっ！」
少女はそう言うと今度は地上に降り立ち、口から火球を作り出した。
「これでも喰らえっ！」
そしてその火球を俺の足元に向かって吐いてきた。
（足元ってことは…なるほどな。）
火球による爆風を利用して体制を崩させ、そこから捕まえようとしたのだろう。
俺は爆風に当たらないようにそこから距離をとり、ポーチからある物を取り出した。
「ほらっ！くらっとけ！」
俺はそれをワイバーンの少女の目の前に投げ付けたと同時に、腕で目を覆った。
するとそれは強烈な光を放ち、直視などすれば完全に目を眩ませる事ができる…そう、傭兵なら大抵の奴が持っている閃光弾である。
「きゃあぁ！？」
流石のワイバーンの少女も予想外だったのか、完全に光を直視してしまい、フラフラしていた。
「悪いな。俺はこんなとこで捕まるわけにはいかないんだよ。」
俺はポーチから煙幕弾を足元に叩きつけ、ワイバーンの少女から逃走した。
…しかし、結局その行動全てが無駄だったと思ったのはのちの話で。

■作者メッセージ
どう書こうか悩んでるうちにいつの間にかこんなにも時が経っていたとは…。
そう思えば次から次へと作品を書き上げている人達が本当に凄いなとただ思うばかりです(；´Д`A