連載小説
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三章ーどんなに逃げてもー
走る。ひたすら走る。
とりあえずこのレスカティエ教国から一刻も早く脱出するために走る。
目の前では騎士達も、俺と同じ依頼に参加したやつも魔物に捕まってしまった者は場所に関係なく、その場で淫らな淫交をしていた。
「待って!助けてくれぇ!!」
「ああん♪もう、逃げちゃダーメ♪」
助けてやりたい気持ちはあったが、一度捕まれば最期、もう二度と元には戻れない。
「…くそっ!」
絶対に脱出してやる!そしてこの惨事を他の国にも伝えなければ…!
途中で他の魔物にも襲われそうになったが、なんとか撒いてようやく俺はこのレスカティエ教国の外の城壁にたどり着いた。
かつて一度たりとも魔物の進入を許さなかったこの城壁も、今では唯の高いだけの城壁である。
高さは見た限り約50メートルと結構高い。
…ったく、本当に高いだけだなと心の中で悪態ついていたその時だった。
「フフン♪どうやら困ってるみたいね♪」
「なっ…!?」
そう、先程のワイバーンの少女が背後にいたのである。
俺は少女との距離を取り、槍を構えた。
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!あんたはこの国から出たいのでしょ?」
「…だとしたら何だ?俺の邪魔をするつもりか?」
「そうじゃないわよ!というか、人の話を最後まで聞きなさいよ!」
少女はそう怒鳴った後、コホンと咳払いする。
「いい?あんたがここから出たいなら、私が特別に背中を乗せてあげてもいいわよ?」
「背中に乗るだと?馬鹿かお前は。そんな小柄な身体で俺を乗せられるものか。」
「確かに今の身体じゃ無理ね。今なら…ね!」
すると少女は先程の小柄な少女ではなく、正真正銘ワイバーンへと姿を変えた。
「マジかよ…!」
これには流石の俺でも驚かされてしまった。
『どう?これならあんた一人乗せるなんてお茶の子さいさいよ♪んで、どうする?私の背中に乗るか…それともこのまま私に捕まるか…♪』
どっちを取ったとしても、よもや逃げ場は無いぞと言ってるようなものである。
だがしかし、俺には考えがあった。
人間が50メートルの城壁を飛び越えるのは普通に考えれば無理な話ではあるが、俺には出来る根拠がある。
俺は普段戦いの中でもあんまり使わないが、風の魔法を使う事が出来る。
俺はその風の魔力を両足に込めて、城壁に向かって走り、そして…
「せいやアァァアアッ!」
両足に込められる最大の風の魔力で思い切りジャンプし、見事城壁の上に登った。
『嘘!?有り得ない!?』
ワイバーンの少女も驚きを隠せなかったみたいだ。
「悪いな。俺は誰にも捕まるわけにはいかないんだ。」
俺は見下すようにワイバーンの少女に言って城壁から飛び降り、次の目的地から近くの山に逃げ込んだ。
そして俺は山に登り、レスカティエ教国を山の方から見てみる。
レスカティエ教国はよもや完全に魔界へと化しており、もう救いようがない状態になっていた。
魔物から死に物狂いで逃げ回った疲れがここで一気にどっと出てくる。
(疲れた…。しばらくここで休むか…。)
俺は木の下に腰を下ろし、ふぅとため息をついた瞬間。
「残念だったわね。あんたは私からは逃げられないんだから♪」
「…!?お前が何故ここに!?」
俺が居る場所まで特定されるとは信じられなかった。
「何故って…あんたは私が頂くわって言ったでしょ?」
「そうじゃなくて!一体どうやってこの場所までたどり着いた!?」
「あんたに向かって風を起こした後、私は突撃した。その時に実は私の魔力を少しあんたに付けてマーキングしてただけよ。」
「oh…。」
ギリギリ避けたと思っていたが、どうやらかすっていたみたいだ。
「本当ならここで捕まえちゃっても…って、そんなに警戒しないでよ!取って食べる訳じゃないわよ!大体私達はもう人間を殺したりしないの!」
そして俺はその時初めて今の魔物…いや、魔物娘の存在を知ることになった。
しかし…
「という訳だから…って、まだ警戒するの!?」
「…悪いが、まだお前とお前の言葉を信用できない。」
俺はワイバーンの少女に槍を向ける。
「ハァ…わかったわよ。取り敢えず、あんたが何処に逃げても無駄なんだからね♪」
「おいちょっと待て。まさかとは思うが…付いてくるなんてないよな?」
「あら、要領がいいのね。その通りよ♪」
「oh…。」
なんてことだ…こんなことになるなんて…。
「という訳で、これからも宜しくね!」
レスカティエ教国から脱出は出来たものの、ワイバーンの少女からは逃げられなかった俺だった。
めでたしめでたし。

って、終わってたまるかー!
16/10/18 12:35更新 / 放浪な風来人
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■作者メッセージ
久々に書いた(ひどく遅くなってしまい、本当にすみません。)

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