(42)サイクロプス
座った妻の後ろに回り、彼女の後頭部に皮バンドを食い込ませる。
「痛くないか?」
「大丈夫・・・もう少しきつく・・・」
彼女の言葉に、俺は皮バンドをもう少しだけ締めた。
皮と彼女の水色の頭髪がこすれる音が響く。俺は皮バンドから手を離すと、軽く固定されているかどうか確認した。
「よし・・・目を開けていいぞ」
「・・・・・・本当に大丈夫?」
「俺の作品だ。信用してくれ」
彼女は小さくふるえながら、ややうつむき加減だった顔を上げる。
しかし、なにも起こらなかった。
「あ・・・」
「な?」
俺は彼女の前に回り込むとしゃがみ込み、彼女の手を握った。
「大丈夫だったろ?」
「うん・・・」
鋼鉄製の分厚い眼帯で一つ目を隠したまま、俺の妻であるサイクロプスは小さく頷いた。
「じゃあ、次は片づけだな」
彼女から視線をはずし、室内を見回しながら、俺はつぶやいた。
部屋の壁や家具には、親指と人差し指で作った輪ほどの太さの線が刻まれていた。線は板壁や木製のテーブルを貫き、その向こう側まで続いている。天井に目を向ければ、夜空の見える穴が穿たれていた。
壁の線も、斜めに切断された家具も、全て彼女のやったものだ。
とは言っても、彼女が工具を手に穴をあけて回った訳ではない。
話は今朝にさかのぼるが、彼女が目を覚ますと同時に彼女の一つ目からビームが出たのだ。
何でも、今の姿に押し込められたサイクロプスのパワーだとかエネルギーが、ビームという形で発散されているらしい。
幸い、彼女が目蓋をおろせばビームを抑えることはできたが、ふとしたときに目を開いてしまうため、危ない。
よって、俺が大急ぎでビームを抑え込むため、鋼鉄製の眼帯を作ることになったわけだ。
「ん・・・」
「どうした?どこか食い込んで痛いのか?」
鼻よりも前に突き出る厚みの眼帯にふれながら彼女が声を漏らし、俺が心配して尋ねる。
「違うの・・・あなたがどんな物を作ったのか、確かめているだけ・・・」
「朝から大急ぎで作ったからな・・・造りの甘いところは見逃してくれ」
妻であると同時に、鍛冶の師匠でもあるサイクロプスに、俺はそう言う。
「叱るもなにも、わたしの予想以上の出来よ・・・縁取りは完璧だし、左右の丸みも均等だし・・・」
眼帯にふれながら、彼女は要所要所を評価していく。
「ただ、一つだけ言わせてもらうなら・・・細部の仕上げは程々にして、もう少し早く切り上げてほしかったかな」
「面目ない」
確かに、縁の尖ったところの研磨などを省けば、夕方頃には取り付けられただろう。
「完璧な品物を作り上げるのは職人の義務だけど、時間に間に合わせるのも職人の義務。それに、なにもかもに全力で挑んでいたら、疲れ切っちゃうわよ」
「はい、以後気をつけます」
師匠としての彼女の言葉に、俺は弟子として応えた。
「よろしい・・・じゃ、片づけしようか・・・」
そう言いながら、彼女はイスから立ち上がろうとした。
「いやいい、大丈夫だ」
俺は彼女の手首をつかみ、肩に手をおいて座らせながら言った。
「え・・・?でも・・・」
「テーブルの片づけぐらいなら俺一人でできるし、壁の穴とかは明日人を呼んでこないとだめだ。それに、お前は目が見えないんだから、怪我をしたら大変だ。今日はじっとしていてほしい」
「・・・わかった・・・ごめんなさい・・・」
「謝るなって。困ったときは、お互い様。だろ?」
俺は彼女から手を離すと、立ち上がってテーブルだった木材に向かった。
「とりあえず、寝室までの通路を確保するから、待っていてくれ」
「うん・・・」
木材をある程度まとめて抱えあげ、玄関から外へ運び出す。
明日の朝、適当なところに運んでいけるよう、まとめて置いておくためだ。
俺は寝室のベッドまで続く、天井板のかけらや、斜めに断ち切られたドアなどを次から次へと運び出すと、箒を手に床を掃いた。
木片が、彼女の足に刺さらぬようにするためだ。
一通り破片を取り除くと、俺は彼女の元へ戻った。
「待たせたな。寝室まで片づけたぞ」
「ありがとう・・・」
イスに座る彼女に歩み寄ると、俺は彼女の手を取った。
「さ、行こう」
「うん・・・」
彼女は頷き、俺の手を握った。それも手をただ握るだけではなく、腕を絡ませ、胸に抱き寄せ、もう片方の手を添えながらだ。
まるで、俺の腕にすがりついているようだった。無理もない。目が見えないと言うのは、それだけ不安なのだ。
「大丈夫か?」
俺の問いかけに、彼女は一つ頷く。
しかしそこに不安はなく、むしろ俺の腕を抱いているのが楽しい、という様子が滲んでいた。
それだけ信頼されているということだ。
「もう少しこっちだ・・・」
彼女が箒で掃いた通路の中央を通れるよう、位置を調整しながら導いていく。
そして、寝室にはいると、俺は彼女をベッドに座らせた。
「俺はもう少し片づけてくるから、先に寝ていてくれ」
「待ってるわ・・・」
「でも、ベッドからあまり離れたりしないでくれよ?何か用事があるときは、大声で俺を呼んでくれ」
俺は彼女にそう言い残し、寝室を離れていった。
目を開けても閉じても、変わらぬ闇の中、わたしは夫の帰りを待っていた。
ベッドに横になり、じっと耳を澄ましていると、家の中を歩き回る足音や木材を上げ下ろしする音が聞こえる。
彼の気配は、台所や居間など家の各所を動き回り、木材を外へと運び出していた。
『これでよし・・・と』
家の外から夫の声が響いた。どうやら今日はこれで終わりらしい。
私は彼がベッドに戻ってくるという気配に、胸を膨らませた。
しかしその直後、わたしの耳を重い音が打った。何かがぶつかり合う音、木材と木材がぶつかる音、うめき声。
最後に何か重い物が庭の草の上に倒れる音が響き、一瞬の静寂が挟まれた。
そして、数秒の間をおいてから、草をかき分けながら気配が一つ家に上がり込んだ。
「・・・あなた?」
廊下を進む気配にそう呼びかけると、それは動きを止めた。
まるで、自分のたてた音が家の軋みでしかなかった、とわたしに錯覚させるようにだ。だが、目をふさがれて鋭敏になったサイクロプスの耳は、確かに何者かの息遣いをとらえていた。
やがて、物音が気のせいだったと判断したのか、気配が再び廊下を進み始めた。
一呼吸かけて一歩ずつ足を踏み出す、非常にゆっくりとした動き。気配の主は、寝室に迫りつつあった。
そして、開け放たれた寝室の戸口に、気配が立った。
「あ、あなた・・・?」
声が自然と震えるが、わたしはどうにかそう問いかけた。しかし、気配の主は身じろぎ一つせず、じっと戸口に立っていた。
錯覚だろうか。一対の視線が無遠慮に私の体を撫でていく感触が、肌をはい回った。
夫と出会う前、一人で鍛冶屋をしていた頃に幾度も味わった視線だ。しかし、私の胸中に芽生えたのは当時のような嫌悪感ではなく、恐怖だった。
手を伸ばし、ベッドのそばを探るが何もない。
心細さが頂点に達した瞬間、戸口に立ち尽くしていた何者かがついに動き出した。
床板を踏みならし、数歩でベッドまで距離を詰め、わたしに向かって飛び込んでくる。
「ひ・・・!」
とっさにベッドの上を転がろうとするが、手足が妙に動かず、わたしは寝返りを打つこともできないまま何者かに押し倒された。
汗の臭いがわたしの鼻をくすぐり、荒い息づかいと心臓の鼓動が耳を打つ。
男だ。
「はぁ、はぁ・・・」
男はいたく興奮した様子で、わたしの頬に顔を近づけると、べろり、と頬を舐めた。生ぬるく、濡れた舌の感触が頬をはい回る。
「ひ・・・!」
わたしは身をすくめ、頬をかばうように腕を掲げて顎を引いた。すると彼は、わたしの両手首を片手で押さえ込み、無防備にさらされた乳房に荒々しくもう一方の手を乗せた。
彼の指がわたしの、片手に収まるほどの乳房を無遠慮に揉む。指を衣服越しに、皮膚に軽く食い込ませ、乳房の芯をほぐしていく。
興奮しているというのに、痛みを与えないようにしているという気遣いが、彼の指に宿っていた。
「や、やぁ・・・!」
わたしは声を上げて、手をふりほどこうとするが、男の手はがっちりとわたしの両手首を押さえ込んでいた。両足をバタつかせるが、それも数度も動かさぬうちに、男がわたしの太股にまたがって抑え込まれる。
もはや、わたしには芋虫のように胴をくねらせるしかなかった。
だが、いくら体を動かそうと、彼の手は何の遠慮もなく、わたしの乳房をもみ続けた。
そしてついに、彼の指先がわたしの乳房の先端にふれた。
「ひ、ひぅ・・・!」
ぴりっと走る刺激に、わたしは思わず声を上げ、同時に必死に目をそらし続けていた事実に直面した。
彼の乳房の愛撫に、乳首が勃起しているのだ。眼帯のおかげで全く見えないが、敏感な先端が突出し、衣服を突き上げているのがわかる。
それは同時に、わたしが感じてしまっていることを示していた。
「ん、ん、ん・・・」
口を閉ざしたまま、のどの奥で呻くような音が響いた。彼が声を出さず、低く笑っているのだ。
乳房への愛撫に感じてしまっているわたしを、笑っている。
「〜〜〜!」
わたしは口を真一文字に結び、歯を食いしばった。
声を漏らさぬよう、せめて感じている気配を彼に伺わせぬようにだ。
もちろんそんなことで彼の手が止まることはない。むしろ、彼の手はその動きを大きくしていった。
片方の乳房ばかり愛撫していたのをわびるように、もう片方の乳房へ手を移動させ、突出した乳首を擦りながら揉む。
そして乳房の間、谷間のそこに指を差し入れ、指先を肌で滑らせる。
むずむずとするくすぐったさが背筋をはい上り、わたしは歯を少しだけ食いしばった。
「んんん・・・」
彼はわたしの力みを感じながらも、五本の指先を自在に動かしながら、前進の肌をまさぐっていく。
乳房の根本を囲むように指が這い、浮かび上がる鎖骨を擦り、首筋を撫でる。
そのまま一度、むき出しの脇をくすぐってから、二の腕の内側をたどって、頬へと移った。
肌の上で舞い踊る、五体の小さなダンサーの軌跡は、徐々にむずがゆさから甘い快感を肌に刻み込んでいった。
「ん・・・!」
のどの奥で小さな声が漏れると同時に、彼の指は頬から顎のラインをたどって、引き締めた唇を撫でた。
決して唇を押すわけではなく、そのなめらかさを確かめるような、鳥の羽毛がそっと撫でるような動きでだ。
彼の指の脱力具合に、わたしもつられて唇を緩めてしまう。
直後、彼の指は唇から顎、のど、鎖骨の間をするすると通り抜け、乳房の谷間を抜けてわたしの腹に至った。
快感に堪え、緊張感を味わっていたため、わたしのそこはうっすらと汗ばんでおり、男の指先をなめらかに滑らせた。
彼の指は、皮膚と薄く付いた脂肪越しに、わたしの腹筋の溝をたどり、へそを軽くくすぐった。
瞬間、くすぐったさが背筋を這い上らず、直接的にわたしの下腹に響いた。下腹、内蔵に包まれたわたしの子宮が、きゅんとうずいたのだ。
「ひゃ・・・!」
予想外の刺激と快感に、わたしは思わず声を漏らしてしまった。
すると彼は、間髪入れずわたしの下腹を二度三度と撫で回し、股間に指を滑り込ませた。
とっさに両足をきゅっと閉じるが、彼の指はかまうことなく下着に入り込んでくる。
へその下、薄くはえる産毛から、徐々に長く太くなっていく茂みをかき分けながら、指先がずるずると両足の付け根に近づいてくる。
彼の手の感触は、皮膚に埋まる毛根を動かし、ざわざわとした不安感を伴う快感をもたらした。
そして、一息に両足の付け根に手を差し入れず、左右の太股を軽くくすぐる。
「あ、ああ・・・!」
一度力を抜いてしまったことで、閉じられなくなった口から、声が漏れた。
彼の指はわたしの弱いところ、太股の付け根を的確に擦っていたからだ。
下腹から始まり、右の太股へたどり、左の太股へ移って、再び下腹へ。
股間を中心とする円を太股と下腹に描きながら、彼はゆっくりゆっくり指先を両足の付け根へ近づけていく。
くすぐったさが抱く快感が徐々に大きくなり、円の中心点が奇態に疼き始める。
だめだ、いけない。
わたしは必死に、快感から意識を逸らそうとしたが、徐々に円を狭めていく指の動きから逃れることはできなかった。
そしてついに、彼の指が円の中心、両足の付け根に差し入れられた。
「・・・ひっ・・・!」
股間から脳天へとかけ上ったしびれに、わたしは声を漏らした。彼の指が、太股を擦りながらわたしの女陰を撫でたからだ。彼の指先は滑りがよく、わたしのそこが汗とは異なる液体で濡れていたことを示していた。
そして、普段は包皮をかぶり、亀裂の奥に身を隠しているはずの陰核を、彼の指先が擦った。
指紋の溝、一筋一筋が、膨れ上がった敏感な肉の粒を刺激し、堪えがたいしびれをわたしの意識にそそぎ込んでいく。
指先が陰核を乗り越え、両足を閉じていることで辛うじて閉まっている女陰に入り込む。
快感にとろけた柔肉が、男の指を受け入れ、軽く締め付けた。同時に、わたしの体内に侵入した異物感は、わたしに大きな快感をもたらした。
「あぁっ・・・!」
皮膚への愛撫によって高ぶりきっていた肉体は、指先の挿入をきっかけに、軽々と絶頂へとわたしを突き上げた。
一瞬、解放感と幸福感がわたしの意識を満たし、直後波が引いていくように冷えていった。
その瞬間、ああ、もっと味わっていたかったのに、と絶頂の快感をわたしは求めてしまった。不安と恐怖が、彼のもたらす快感に敗れたのだ。「ん、ん、ん・・・」
何者かが再び、口を開くことなくのどの奥で笑い、わたしの両腕を押さえ込んでいた手を離した。
拘束から解放されるが、わたしには両腕を動かす気力はなかった。
もちろん、両足も彼がまたがっていることで閉じているだけにすぎず、彼が腰を浮かすと同時に、緩く左右に開いた。
彼がわたしの両足を押し開き、両足の間にひざをつく。そして、なにやらごそごそと音を立てた。
衣擦れの音の後、わたしの鼻を嗅ぎ覚えのある匂いがくすぐった。汗と生臭さの入り交じった、男の人の匂い。
彼が男根をさらしたのだ。
彼のやろうとしていることに、わたしの下腹の奥が疼く。胸の奥にぽっかりと穴があき、欠けたものを埋めてほしいという衝動が、わたしの四肢の動きを封じる。
もう、わたしの手足を縛るものはない。転がって逃げることも、暴れて彼に反撃することもできるというのに、わたしは何もしなかった。
ただ、鼻孔を満たす彼の匂いと、彼の放つ静かな興奮の気配に、胸を期待で膨らませていただけだ。
やがて、彼が両足の間で足を進め、ついに薄く口を開く亀裂に、熱を帯びた固いものをふれさせた。
股間のうずきと、期待が大きく膨れ上がり、直後わたしの中に彼が押し入ってきた。
「んぁあああああっ!」
興奮に弛緩し、肉棒の挿入を待ちかまえていたとはいえ、膣道を押し広げる屹立は、わたしに大きな快感をもたらした。
彼は腰を深く突き出し、根本まで肉棒を埋めた。膨れた亀頭が、わたしの奥、膣の底にコツンとぶつかり、軽い衝撃を生み出す。ほんの少し、へその裏にも至らないほどだというのに、衝撃はわたしの脳天まで駆け抜けた。
「んひっ・・・!」
自然と声があふれ、快感が全身に広がる。
すると彼は、わたしの反応を確かめるようにゆっくりと、時折深さを変えながら腰を動かした。
浅く細かく腰を揺すれば、肉棒の先端がコツコツと膣奥を小刻みに小突く。
深くゆっくりと、カリ首のあたりまで屹立を引き抜いてから根本まで挿入すれば、脳天へと衝撃が突き抜ける。
屹立がもたらす衝撃と快感は、わたしの意識をどろどろに溶かし、首の下まで極太長大の肉棒が埋め尽くしているような錯覚をわたしにもたらした。
肉棒が出入りする感触が、ただただ心地よい。
やがて、膣壁を擦りながら前後に揺れる屹立が、細かく脈打ち始めた。押し広げられていた膣道が、肉棒の脈動にあわせてもう少しだけ押し広げられ、新たな快感を生む。
そして、彼が体を細かく震わせ、低く呻いた瞬間、わたしの中に熱いものが溢れた。
精液だ。
膣底を打ち据える、肉棒よりも熱く強い射精の感触は、わたしの意識を遙かな高みへと突き上げた。
夫が作った鋼鉄の眼帯がもたらす眼前の闇が、絶頂の快感に白く塗りつぶされる。
弛緩し、指一本動かせないと思っていたわたしの手足が、わたしの意識の外で跳ね上がり、彼の体に触れた。
背中を抱きしめ、腰に巻き付き、彼の体を逃すまいとしがみつく。射精を続ける屹立がより深く挿入され、陶酔感が絶頂を強く大きなものにしていく。
そして、膣内の肉棒が脈動を弱め、射精が収まると同時に、彼の体から力が抜けてわたしの上に覆い被さった。
「はぁはぁはぁ・・・」
彼の重みと温もりを感じながら、わたしはずっと尾を引く絶頂の余韻に浸り、胸の奥を満たす幸福感を味わっていた。
「・・・なあ、どのあたりから気がついていた・・・?」
一通り呼吸を落ち着けたところで、私にのしかかったまま、夫はそう尋ねた。
「玄関入って、まっすぐに寝室にきたところで・・・かしら?」
私のビームで荒れた屋内をろくに探索せず、まっすぐに寝室に向かった気配に、私はそれが夫ではないかという可能性を感じていた。
それが確信に変わったのは、夫がベッドの上に乗り、手が触れた瞬間からだ。
「でも、かなり興奮したわ・・・」
夫婦の夜に変化をもたらす強姦ごっこ。どちらが攻めをやるかは時々で変わったが、今回の打ち合わせなしでの本格的なごっこは、恐怖と不安という彩りを快感に添えてくれた。
「本当によその男だったらどうする?」
「そのときはビーム打ち込んでやるわ」
夫の問いかけに、私はそう答えて笑うと、軽く手足に力を込めた。
すると、私たち二人の体がベッドの上をころりと転がり、私が上になった。
「じゃあ、今度は私が・・・」
「ひ・・・!やめてくれ・・・!」
早速始めたのか、私の下で夫が声を漏らした。
「ほら、よく見なさい・・・」
おそらく恐怖の表情を浮かべているであろう彼に顔を近づけながら、私は続けた。
「これが、あなたを犯す女の顔よ・・・!」
強姦ごっこの第二幕が幕を開け、ぞくぞくする快感が背筋を上った。
「痛くないか?」
「大丈夫・・・もう少しきつく・・・」
彼女の言葉に、俺は皮バンドをもう少しだけ締めた。
皮と彼女の水色の頭髪がこすれる音が響く。俺は皮バンドから手を離すと、軽く固定されているかどうか確認した。
「よし・・・目を開けていいぞ」
「・・・・・・本当に大丈夫?」
「俺の作品だ。信用してくれ」
彼女は小さくふるえながら、ややうつむき加減だった顔を上げる。
しかし、なにも起こらなかった。
「あ・・・」
「な?」
俺は彼女の前に回り込むとしゃがみ込み、彼女の手を握った。
「大丈夫だったろ?」
「うん・・・」
鋼鉄製の分厚い眼帯で一つ目を隠したまま、俺の妻であるサイクロプスは小さく頷いた。
「じゃあ、次は片づけだな」
彼女から視線をはずし、室内を見回しながら、俺はつぶやいた。
部屋の壁や家具には、親指と人差し指で作った輪ほどの太さの線が刻まれていた。線は板壁や木製のテーブルを貫き、その向こう側まで続いている。天井に目を向ければ、夜空の見える穴が穿たれていた。
壁の線も、斜めに切断された家具も、全て彼女のやったものだ。
とは言っても、彼女が工具を手に穴をあけて回った訳ではない。
話は今朝にさかのぼるが、彼女が目を覚ますと同時に彼女の一つ目からビームが出たのだ。
何でも、今の姿に押し込められたサイクロプスのパワーだとかエネルギーが、ビームという形で発散されているらしい。
幸い、彼女が目蓋をおろせばビームを抑えることはできたが、ふとしたときに目を開いてしまうため、危ない。
よって、俺が大急ぎでビームを抑え込むため、鋼鉄製の眼帯を作ることになったわけだ。
「ん・・・」
「どうした?どこか食い込んで痛いのか?」
鼻よりも前に突き出る厚みの眼帯にふれながら彼女が声を漏らし、俺が心配して尋ねる。
「違うの・・・あなたがどんな物を作ったのか、確かめているだけ・・・」
「朝から大急ぎで作ったからな・・・造りの甘いところは見逃してくれ」
妻であると同時に、鍛冶の師匠でもあるサイクロプスに、俺はそう言う。
「叱るもなにも、わたしの予想以上の出来よ・・・縁取りは完璧だし、左右の丸みも均等だし・・・」
眼帯にふれながら、彼女は要所要所を評価していく。
「ただ、一つだけ言わせてもらうなら・・・細部の仕上げは程々にして、もう少し早く切り上げてほしかったかな」
「面目ない」
確かに、縁の尖ったところの研磨などを省けば、夕方頃には取り付けられただろう。
「完璧な品物を作り上げるのは職人の義務だけど、時間に間に合わせるのも職人の義務。それに、なにもかもに全力で挑んでいたら、疲れ切っちゃうわよ」
「はい、以後気をつけます」
師匠としての彼女の言葉に、俺は弟子として応えた。
「よろしい・・・じゃ、片づけしようか・・・」
そう言いながら、彼女はイスから立ち上がろうとした。
「いやいい、大丈夫だ」
俺は彼女の手首をつかみ、肩に手をおいて座らせながら言った。
「え・・・?でも・・・」
「テーブルの片づけぐらいなら俺一人でできるし、壁の穴とかは明日人を呼んでこないとだめだ。それに、お前は目が見えないんだから、怪我をしたら大変だ。今日はじっとしていてほしい」
「・・・わかった・・・ごめんなさい・・・」
「謝るなって。困ったときは、お互い様。だろ?」
俺は彼女から手を離すと、立ち上がってテーブルだった木材に向かった。
「とりあえず、寝室までの通路を確保するから、待っていてくれ」
「うん・・・」
木材をある程度まとめて抱えあげ、玄関から外へ運び出す。
明日の朝、適当なところに運んでいけるよう、まとめて置いておくためだ。
俺は寝室のベッドまで続く、天井板のかけらや、斜めに断ち切られたドアなどを次から次へと運び出すと、箒を手に床を掃いた。
木片が、彼女の足に刺さらぬようにするためだ。
一通り破片を取り除くと、俺は彼女の元へ戻った。
「待たせたな。寝室まで片づけたぞ」
「ありがとう・・・」
イスに座る彼女に歩み寄ると、俺は彼女の手を取った。
「さ、行こう」
「うん・・・」
彼女は頷き、俺の手を握った。それも手をただ握るだけではなく、腕を絡ませ、胸に抱き寄せ、もう片方の手を添えながらだ。
まるで、俺の腕にすがりついているようだった。無理もない。目が見えないと言うのは、それだけ不安なのだ。
「大丈夫か?」
俺の問いかけに、彼女は一つ頷く。
しかしそこに不安はなく、むしろ俺の腕を抱いているのが楽しい、という様子が滲んでいた。
それだけ信頼されているということだ。
「もう少しこっちだ・・・」
彼女が箒で掃いた通路の中央を通れるよう、位置を調整しながら導いていく。
そして、寝室にはいると、俺は彼女をベッドに座らせた。
「俺はもう少し片づけてくるから、先に寝ていてくれ」
「待ってるわ・・・」
「でも、ベッドからあまり離れたりしないでくれよ?何か用事があるときは、大声で俺を呼んでくれ」
俺は彼女にそう言い残し、寝室を離れていった。
目を開けても閉じても、変わらぬ闇の中、わたしは夫の帰りを待っていた。
ベッドに横になり、じっと耳を澄ましていると、家の中を歩き回る足音や木材を上げ下ろしする音が聞こえる。
彼の気配は、台所や居間など家の各所を動き回り、木材を外へと運び出していた。
『これでよし・・・と』
家の外から夫の声が響いた。どうやら今日はこれで終わりらしい。
私は彼がベッドに戻ってくるという気配に、胸を膨らませた。
しかしその直後、わたしの耳を重い音が打った。何かがぶつかり合う音、木材と木材がぶつかる音、うめき声。
最後に何か重い物が庭の草の上に倒れる音が響き、一瞬の静寂が挟まれた。
そして、数秒の間をおいてから、草をかき分けながら気配が一つ家に上がり込んだ。
「・・・あなた?」
廊下を進む気配にそう呼びかけると、それは動きを止めた。
まるで、自分のたてた音が家の軋みでしかなかった、とわたしに錯覚させるようにだ。だが、目をふさがれて鋭敏になったサイクロプスの耳は、確かに何者かの息遣いをとらえていた。
やがて、物音が気のせいだったと判断したのか、気配が再び廊下を進み始めた。
一呼吸かけて一歩ずつ足を踏み出す、非常にゆっくりとした動き。気配の主は、寝室に迫りつつあった。
そして、開け放たれた寝室の戸口に、気配が立った。
「あ、あなた・・・?」
声が自然と震えるが、わたしはどうにかそう問いかけた。しかし、気配の主は身じろぎ一つせず、じっと戸口に立っていた。
錯覚だろうか。一対の視線が無遠慮に私の体を撫でていく感触が、肌をはい回った。
夫と出会う前、一人で鍛冶屋をしていた頃に幾度も味わった視線だ。しかし、私の胸中に芽生えたのは当時のような嫌悪感ではなく、恐怖だった。
手を伸ばし、ベッドのそばを探るが何もない。
心細さが頂点に達した瞬間、戸口に立ち尽くしていた何者かがついに動き出した。
床板を踏みならし、数歩でベッドまで距離を詰め、わたしに向かって飛び込んでくる。
「ひ・・・!」
とっさにベッドの上を転がろうとするが、手足が妙に動かず、わたしは寝返りを打つこともできないまま何者かに押し倒された。
汗の臭いがわたしの鼻をくすぐり、荒い息づかいと心臓の鼓動が耳を打つ。
男だ。
「はぁ、はぁ・・・」
男はいたく興奮した様子で、わたしの頬に顔を近づけると、べろり、と頬を舐めた。生ぬるく、濡れた舌の感触が頬をはい回る。
「ひ・・・!」
わたしは身をすくめ、頬をかばうように腕を掲げて顎を引いた。すると彼は、わたしの両手首を片手で押さえ込み、無防備にさらされた乳房に荒々しくもう一方の手を乗せた。
彼の指がわたしの、片手に収まるほどの乳房を無遠慮に揉む。指を衣服越しに、皮膚に軽く食い込ませ、乳房の芯をほぐしていく。
興奮しているというのに、痛みを与えないようにしているという気遣いが、彼の指に宿っていた。
「や、やぁ・・・!」
わたしは声を上げて、手をふりほどこうとするが、男の手はがっちりとわたしの両手首を押さえ込んでいた。両足をバタつかせるが、それも数度も動かさぬうちに、男がわたしの太股にまたがって抑え込まれる。
もはや、わたしには芋虫のように胴をくねらせるしかなかった。
だが、いくら体を動かそうと、彼の手は何の遠慮もなく、わたしの乳房をもみ続けた。
そしてついに、彼の指先がわたしの乳房の先端にふれた。
「ひ、ひぅ・・・!」
ぴりっと走る刺激に、わたしは思わず声を上げ、同時に必死に目をそらし続けていた事実に直面した。
彼の乳房の愛撫に、乳首が勃起しているのだ。眼帯のおかげで全く見えないが、敏感な先端が突出し、衣服を突き上げているのがわかる。
それは同時に、わたしが感じてしまっていることを示していた。
「ん、ん、ん・・・」
口を閉ざしたまま、のどの奥で呻くような音が響いた。彼が声を出さず、低く笑っているのだ。
乳房への愛撫に感じてしまっているわたしを、笑っている。
「〜〜〜!」
わたしは口を真一文字に結び、歯を食いしばった。
声を漏らさぬよう、せめて感じている気配を彼に伺わせぬようにだ。
もちろんそんなことで彼の手が止まることはない。むしろ、彼の手はその動きを大きくしていった。
片方の乳房ばかり愛撫していたのをわびるように、もう片方の乳房へ手を移動させ、突出した乳首を擦りながら揉む。
そして乳房の間、谷間のそこに指を差し入れ、指先を肌で滑らせる。
むずむずとするくすぐったさが背筋をはい上り、わたしは歯を少しだけ食いしばった。
「んんん・・・」
彼はわたしの力みを感じながらも、五本の指先を自在に動かしながら、前進の肌をまさぐっていく。
乳房の根本を囲むように指が這い、浮かび上がる鎖骨を擦り、首筋を撫でる。
そのまま一度、むき出しの脇をくすぐってから、二の腕の内側をたどって、頬へと移った。
肌の上で舞い踊る、五体の小さなダンサーの軌跡は、徐々にむずがゆさから甘い快感を肌に刻み込んでいった。
「ん・・・!」
のどの奥で小さな声が漏れると同時に、彼の指は頬から顎のラインをたどって、引き締めた唇を撫でた。
決して唇を押すわけではなく、そのなめらかさを確かめるような、鳥の羽毛がそっと撫でるような動きでだ。
彼の指の脱力具合に、わたしもつられて唇を緩めてしまう。
直後、彼の指は唇から顎、のど、鎖骨の間をするすると通り抜け、乳房の谷間を抜けてわたしの腹に至った。
快感に堪え、緊張感を味わっていたため、わたしのそこはうっすらと汗ばんでおり、男の指先をなめらかに滑らせた。
彼の指は、皮膚と薄く付いた脂肪越しに、わたしの腹筋の溝をたどり、へそを軽くくすぐった。
瞬間、くすぐったさが背筋を這い上らず、直接的にわたしの下腹に響いた。下腹、内蔵に包まれたわたしの子宮が、きゅんとうずいたのだ。
「ひゃ・・・!」
予想外の刺激と快感に、わたしは思わず声を漏らしてしまった。
すると彼は、間髪入れずわたしの下腹を二度三度と撫で回し、股間に指を滑り込ませた。
とっさに両足をきゅっと閉じるが、彼の指はかまうことなく下着に入り込んでくる。
へその下、薄くはえる産毛から、徐々に長く太くなっていく茂みをかき分けながら、指先がずるずると両足の付け根に近づいてくる。
彼の手の感触は、皮膚に埋まる毛根を動かし、ざわざわとした不安感を伴う快感をもたらした。
そして、一息に両足の付け根に手を差し入れず、左右の太股を軽くくすぐる。
「あ、ああ・・・!」
一度力を抜いてしまったことで、閉じられなくなった口から、声が漏れた。
彼の指はわたしの弱いところ、太股の付け根を的確に擦っていたからだ。
下腹から始まり、右の太股へたどり、左の太股へ移って、再び下腹へ。
股間を中心とする円を太股と下腹に描きながら、彼はゆっくりゆっくり指先を両足の付け根へ近づけていく。
くすぐったさが抱く快感が徐々に大きくなり、円の中心点が奇態に疼き始める。
だめだ、いけない。
わたしは必死に、快感から意識を逸らそうとしたが、徐々に円を狭めていく指の動きから逃れることはできなかった。
そしてついに、彼の指が円の中心、両足の付け根に差し入れられた。
「・・・ひっ・・・!」
股間から脳天へとかけ上ったしびれに、わたしは声を漏らした。彼の指が、太股を擦りながらわたしの女陰を撫でたからだ。彼の指先は滑りがよく、わたしのそこが汗とは異なる液体で濡れていたことを示していた。
そして、普段は包皮をかぶり、亀裂の奥に身を隠しているはずの陰核を、彼の指先が擦った。
指紋の溝、一筋一筋が、膨れ上がった敏感な肉の粒を刺激し、堪えがたいしびれをわたしの意識にそそぎ込んでいく。
指先が陰核を乗り越え、両足を閉じていることで辛うじて閉まっている女陰に入り込む。
快感にとろけた柔肉が、男の指を受け入れ、軽く締め付けた。同時に、わたしの体内に侵入した異物感は、わたしに大きな快感をもたらした。
「あぁっ・・・!」
皮膚への愛撫によって高ぶりきっていた肉体は、指先の挿入をきっかけに、軽々と絶頂へとわたしを突き上げた。
一瞬、解放感と幸福感がわたしの意識を満たし、直後波が引いていくように冷えていった。
その瞬間、ああ、もっと味わっていたかったのに、と絶頂の快感をわたしは求めてしまった。不安と恐怖が、彼のもたらす快感に敗れたのだ。「ん、ん、ん・・・」
何者かが再び、口を開くことなくのどの奥で笑い、わたしの両腕を押さえ込んでいた手を離した。
拘束から解放されるが、わたしには両腕を動かす気力はなかった。
もちろん、両足も彼がまたがっていることで閉じているだけにすぎず、彼が腰を浮かすと同時に、緩く左右に開いた。
彼がわたしの両足を押し開き、両足の間にひざをつく。そして、なにやらごそごそと音を立てた。
衣擦れの音の後、わたしの鼻を嗅ぎ覚えのある匂いがくすぐった。汗と生臭さの入り交じった、男の人の匂い。
彼が男根をさらしたのだ。
彼のやろうとしていることに、わたしの下腹の奥が疼く。胸の奥にぽっかりと穴があき、欠けたものを埋めてほしいという衝動が、わたしの四肢の動きを封じる。
もう、わたしの手足を縛るものはない。転がって逃げることも、暴れて彼に反撃することもできるというのに、わたしは何もしなかった。
ただ、鼻孔を満たす彼の匂いと、彼の放つ静かな興奮の気配に、胸を期待で膨らませていただけだ。
やがて、彼が両足の間で足を進め、ついに薄く口を開く亀裂に、熱を帯びた固いものをふれさせた。
股間のうずきと、期待が大きく膨れ上がり、直後わたしの中に彼が押し入ってきた。
「んぁあああああっ!」
興奮に弛緩し、肉棒の挿入を待ちかまえていたとはいえ、膣道を押し広げる屹立は、わたしに大きな快感をもたらした。
彼は腰を深く突き出し、根本まで肉棒を埋めた。膨れた亀頭が、わたしの奥、膣の底にコツンとぶつかり、軽い衝撃を生み出す。ほんの少し、へその裏にも至らないほどだというのに、衝撃はわたしの脳天まで駆け抜けた。
「んひっ・・・!」
自然と声があふれ、快感が全身に広がる。
すると彼は、わたしの反応を確かめるようにゆっくりと、時折深さを変えながら腰を動かした。
浅く細かく腰を揺すれば、肉棒の先端がコツコツと膣奥を小刻みに小突く。
深くゆっくりと、カリ首のあたりまで屹立を引き抜いてから根本まで挿入すれば、脳天へと衝撃が突き抜ける。
屹立がもたらす衝撃と快感は、わたしの意識をどろどろに溶かし、首の下まで極太長大の肉棒が埋め尽くしているような錯覚をわたしにもたらした。
肉棒が出入りする感触が、ただただ心地よい。
やがて、膣壁を擦りながら前後に揺れる屹立が、細かく脈打ち始めた。押し広げられていた膣道が、肉棒の脈動にあわせてもう少しだけ押し広げられ、新たな快感を生む。
そして、彼が体を細かく震わせ、低く呻いた瞬間、わたしの中に熱いものが溢れた。
精液だ。
膣底を打ち据える、肉棒よりも熱く強い射精の感触は、わたしの意識を遙かな高みへと突き上げた。
夫が作った鋼鉄の眼帯がもたらす眼前の闇が、絶頂の快感に白く塗りつぶされる。
弛緩し、指一本動かせないと思っていたわたしの手足が、わたしの意識の外で跳ね上がり、彼の体に触れた。
背中を抱きしめ、腰に巻き付き、彼の体を逃すまいとしがみつく。射精を続ける屹立がより深く挿入され、陶酔感が絶頂を強く大きなものにしていく。
そして、膣内の肉棒が脈動を弱め、射精が収まると同時に、彼の体から力が抜けてわたしの上に覆い被さった。
「はぁはぁはぁ・・・」
彼の重みと温もりを感じながら、わたしはずっと尾を引く絶頂の余韻に浸り、胸の奥を満たす幸福感を味わっていた。
「・・・なあ、どのあたりから気がついていた・・・?」
一通り呼吸を落ち着けたところで、私にのしかかったまま、夫はそう尋ねた。
「玄関入って、まっすぐに寝室にきたところで・・・かしら?」
私のビームで荒れた屋内をろくに探索せず、まっすぐに寝室に向かった気配に、私はそれが夫ではないかという可能性を感じていた。
それが確信に変わったのは、夫がベッドの上に乗り、手が触れた瞬間からだ。
「でも、かなり興奮したわ・・・」
夫婦の夜に変化をもたらす強姦ごっこ。どちらが攻めをやるかは時々で変わったが、今回の打ち合わせなしでの本格的なごっこは、恐怖と不安という彩りを快感に添えてくれた。
「本当によその男だったらどうする?」
「そのときはビーム打ち込んでやるわ」
夫の問いかけに、私はそう答えて笑うと、軽く手足に力を込めた。
すると、私たち二人の体がベッドの上をころりと転がり、私が上になった。
「じゃあ、今度は私が・・・」
「ひ・・・!やめてくれ・・・!」
早速始めたのか、私の下で夫が声を漏らした。
「ほら、よく見なさい・・・」
おそらく恐怖の表情を浮かべているであろう彼に顔を近づけながら、私は続けた。
「これが、あなたを犯す女の顔よ・・・!」
強姦ごっこの第二幕が幕を開け、ぞくぞくする快感が背筋を上った。
12/09/23 14:57更新 / 十二屋月蝕
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