(34)マタンゴ
森の中、草に制圧されつつある獣道をしばらく進んだ場所に、小さな集落があった。
小さな畑と数軒の小屋が並ぶだけの、名もない集落だった。
日はすでに高く上っているが、畑に人の姿はない。
だが、完全に無人というわけでもないらしく、小さな声が響いていた。
「あ、あぁぁ・・・」
「おく、もっとおくぅ・・・」
「でる、でちゃうよお・・・」
男に女、大人に子供と、いくつもの声が小屋の中から響いていた。
だが、出る口は違えども、声はいずれも喘ぎ声であった。
甘い快感のうねりに身を任せる声。
身を苛む刺激に、思わず漏らした快楽と苦悶の声。
違いはあれど、いずれも悦びによるものだった。
集落の縁にほど近い小屋に目を向けると、戸が中途半端に開いており、そこから声が溢れだしていた。
薄暗い小屋の中には、四つの人影がいた。
二つはベッドの上、もう二つは食卓と思しきテーブルの傍らに。
「あぁぁ・・・いいわ、いいわぁ・・・」
ベッドの上の人影の一つが、そう甘い快楽の喘ぎを漏らした。
その声は成熟した女性のもので、年の頃は二重半ばといったところか。
だが、小屋の入り口より差し込む日の光に照らされていたのは、人間の女性の姿ではなかった。
天井を仰ぎ、口を開いて悦楽のうめきを漏らすその顔は、確かに女性のそれである。しかし、肌から直接生じた、白く粘つく繊維状の何かは衣服のように彼女の姿を覆い、下半身にいたっては両足とベッドのシーツが白いものと一体化しているという、人間離れした姿をしていた。
その姿を一言でたとえるなら、『人に似た姿のキノコ』だろうか。
事実そうだ。彼女はマタンゴという魔物なのだから。
「うぁ・・・あぁ・・・!」
女の下、スカート状に広がる菌糸とシーツの間に、少年が一人仰向けになっていた。
ちょうど、女にまたがられているような姿勢になっている彼は、女と少しだけ似た顔をしていた。母子なのかもしれない。
しかし、マタンゴと化し、情欲に思考を塗りつぶされた彼女にとって、自分の下にいるのが誰かなどどうでもいいことのようだった。
菌糸の下、両足がなくなってもなお形を残している女陰が、少年の小さな屹立を咥え込み、ぐにゅぐにゅと揉みたてていた。
しかし、女陰の中に詰まっているのは肉ではなく、しっとりと湿り気を帯びた菌糸だった。
絹糸よりも細く柔らかな繊維が、幾重にも彼女の体内に詰まっており、押し入ってきた未熟な肉棒に優しく絡みつき、ゆっくりと締めあげていた。
「うぁ、あぁ・・・!」
つい先日までは無縁だった、極上の布地に肉棒を包み込まれるような感触に、少年は声をあげて身震いした。
すると、跨る女のスカート状に広がる菌糸が、少年の肌を撫で擦り、くすぐる。
普段ならば身をくねらせ、笑い声を絞り出させる刺激は、現在の少年には興奮を煽る快感となっていた。
「はぁ・・・っ・・・あっ、あぁ・・・!」
自身に跨り、未知の快感を与える母親。
母子でやってはいけないことをしている、という未熟な背徳感が、少年を高みへと引き上げていく。
そして、菌糸が彼の屹立をくすぐりあげた瞬間、少年の意識が弾けた。
身体を包み込む白い繊維と同じ色に意識が染まり、粘つく粘液が女の胎内に迸る。
「ん、んん・・・」
繊維を濡らし、隙間に入り込む熱を帯びた粘液の感触に、マタンゴはのけぞって声を上げた。
その様は、まるで十月十日をその中で過ごした少年の凱旋を、感慨深く受け入れているようだった。
一方、ベッドから少し離れたテーブルの傍らでは、男が少女に覆い被さっていた。
少女の細い足を左右に開き、腰を前後に揺する男の体には、白い繊維がまとわりついていた。
つい先ほどまで、妻だったマタンゴと体を重ねていたのだ。しかし、彼女が少年に意識を向けている今、男の欲望の矛先は少女に向けられていた。
少年よりいくらか年かさの、女と似た顔立ちの少女。おそらく彼の姉だろうか。
男とは父娘のはずだが、男には娘を犯すことへの忌避はなく、内なる衝動を娘にたたきつけているばかりだった。
一方娘も、父の肉棒を挿入されてはいるものの、その顔は歓喜に染まっていた。
まはや、背徳感のもたらす興奮を通り過ぎ、互いの肉体が相互に与えあう快感におぼれているようだった。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・!」
男が呼吸も荒く腰を揺すり、肉棒に絡む極細の白い糸を少女の膣内に擦り付ける。
荒々しく膣を押し広げ、出入りを繰り返す父親の男根に、少女は随喜の声を漏らした。
膣がとろけ、熱以外の感覚が不明瞭になっていく。
手足など、既に溶けてしまったかのように少女には感じられていた。
だが、事実そうだった。
膝を曲げ、Mの字に広げられる両足の先端は、既に床板と足の間に白い糸が張りつつあった。
彼女の肉体が変質し、菌糸になっているのだ。
それもそのはず。つい最前までマタンゴと交わっていた男が、彼女に菌糸をもたらしたのだ。
女にとりつき、仲間を増やすマタンゴの菌糸は、父の体を通じて母から娘へと伝えられていた。
両足は既に床板に根を張り、体のあちこちから菌糸が生じ始めている。
そして、男の肉棒を包み込む膣も、一突きごとに肉がほぐれ、折り重なる繊維質の穴になりつつあった。
「うぐぅぅ・・・!」
男が小さくうめき、腰を深々と突きだして射精する。
すると、少女が舌を突き出しながら声にならぬ喘ぎを空に放った。
同時に、胎内に迸る精液を菌糸が取り込み、少女の全身を浸食していく。
両足が肌の色を失い、少女の全身に菌糸が浮かび上がる。
髪の毛の間から白い繊維が生じ、徐々に傘を形作っていく。
もう一日、あるいは数度の射精があれば、少女がマタンゴになるまでそう時間はかからないようだった。
森の中に小さな集落があった。
並ぶ小屋や田畑は白い糸に包まれていた。
そして、うっすらと膜状に張った糸越しに見える小屋から、嬌声がいくつも響いていた。
ここはマタンゴの群生地。かつて人が暮らしていた、群生地だった。
小さな畑と数軒の小屋が並ぶだけの、名もない集落だった。
日はすでに高く上っているが、畑に人の姿はない。
だが、完全に無人というわけでもないらしく、小さな声が響いていた。
「あ、あぁぁ・・・」
「おく、もっとおくぅ・・・」
「でる、でちゃうよお・・・」
男に女、大人に子供と、いくつもの声が小屋の中から響いていた。
だが、出る口は違えども、声はいずれも喘ぎ声であった。
甘い快感のうねりに身を任せる声。
身を苛む刺激に、思わず漏らした快楽と苦悶の声。
違いはあれど、いずれも悦びによるものだった。
集落の縁にほど近い小屋に目を向けると、戸が中途半端に開いており、そこから声が溢れだしていた。
薄暗い小屋の中には、四つの人影がいた。
二つはベッドの上、もう二つは食卓と思しきテーブルの傍らに。
「あぁぁ・・・いいわ、いいわぁ・・・」
ベッドの上の人影の一つが、そう甘い快楽の喘ぎを漏らした。
その声は成熟した女性のもので、年の頃は二重半ばといったところか。
だが、小屋の入り口より差し込む日の光に照らされていたのは、人間の女性の姿ではなかった。
天井を仰ぎ、口を開いて悦楽のうめきを漏らすその顔は、確かに女性のそれである。しかし、肌から直接生じた、白く粘つく繊維状の何かは衣服のように彼女の姿を覆い、下半身にいたっては両足とベッドのシーツが白いものと一体化しているという、人間離れした姿をしていた。
その姿を一言でたとえるなら、『人に似た姿のキノコ』だろうか。
事実そうだ。彼女はマタンゴという魔物なのだから。
「うぁ・・・あぁ・・・!」
女の下、スカート状に広がる菌糸とシーツの間に、少年が一人仰向けになっていた。
ちょうど、女にまたがられているような姿勢になっている彼は、女と少しだけ似た顔をしていた。母子なのかもしれない。
しかし、マタンゴと化し、情欲に思考を塗りつぶされた彼女にとって、自分の下にいるのが誰かなどどうでもいいことのようだった。
菌糸の下、両足がなくなってもなお形を残している女陰が、少年の小さな屹立を咥え込み、ぐにゅぐにゅと揉みたてていた。
しかし、女陰の中に詰まっているのは肉ではなく、しっとりと湿り気を帯びた菌糸だった。
絹糸よりも細く柔らかな繊維が、幾重にも彼女の体内に詰まっており、押し入ってきた未熟な肉棒に優しく絡みつき、ゆっくりと締めあげていた。
「うぁ、あぁ・・・!」
つい先日までは無縁だった、極上の布地に肉棒を包み込まれるような感触に、少年は声をあげて身震いした。
すると、跨る女のスカート状に広がる菌糸が、少年の肌を撫で擦り、くすぐる。
普段ならば身をくねらせ、笑い声を絞り出させる刺激は、現在の少年には興奮を煽る快感となっていた。
「はぁ・・・っ・・・あっ、あぁ・・・!」
自身に跨り、未知の快感を与える母親。
母子でやってはいけないことをしている、という未熟な背徳感が、少年を高みへと引き上げていく。
そして、菌糸が彼の屹立をくすぐりあげた瞬間、少年の意識が弾けた。
身体を包み込む白い繊維と同じ色に意識が染まり、粘つく粘液が女の胎内に迸る。
「ん、んん・・・」
繊維を濡らし、隙間に入り込む熱を帯びた粘液の感触に、マタンゴはのけぞって声を上げた。
その様は、まるで十月十日をその中で過ごした少年の凱旋を、感慨深く受け入れているようだった。
一方、ベッドから少し離れたテーブルの傍らでは、男が少女に覆い被さっていた。
少女の細い足を左右に開き、腰を前後に揺する男の体には、白い繊維がまとわりついていた。
つい先ほどまで、妻だったマタンゴと体を重ねていたのだ。しかし、彼女が少年に意識を向けている今、男の欲望の矛先は少女に向けられていた。
少年よりいくらか年かさの、女と似た顔立ちの少女。おそらく彼の姉だろうか。
男とは父娘のはずだが、男には娘を犯すことへの忌避はなく、内なる衝動を娘にたたきつけているばかりだった。
一方娘も、父の肉棒を挿入されてはいるものの、その顔は歓喜に染まっていた。
まはや、背徳感のもたらす興奮を通り過ぎ、互いの肉体が相互に与えあう快感におぼれているようだった。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・!」
男が呼吸も荒く腰を揺すり、肉棒に絡む極細の白い糸を少女の膣内に擦り付ける。
荒々しく膣を押し広げ、出入りを繰り返す父親の男根に、少女は随喜の声を漏らした。
膣がとろけ、熱以外の感覚が不明瞭になっていく。
手足など、既に溶けてしまったかのように少女には感じられていた。
だが、事実そうだった。
膝を曲げ、Mの字に広げられる両足の先端は、既に床板と足の間に白い糸が張りつつあった。
彼女の肉体が変質し、菌糸になっているのだ。
それもそのはず。つい最前までマタンゴと交わっていた男が、彼女に菌糸をもたらしたのだ。
女にとりつき、仲間を増やすマタンゴの菌糸は、父の体を通じて母から娘へと伝えられていた。
両足は既に床板に根を張り、体のあちこちから菌糸が生じ始めている。
そして、男の肉棒を包み込む膣も、一突きごとに肉がほぐれ、折り重なる繊維質の穴になりつつあった。
「うぐぅぅ・・・!」
男が小さくうめき、腰を深々と突きだして射精する。
すると、少女が舌を突き出しながら声にならぬ喘ぎを空に放った。
同時に、胎内に迸る精液を菌糸が取り込み、少女の全身を浸食していく。
両足が肌の色を失い、少女の全身に菌糸が浮かび上がる。
髪の毛の間から白い繊維が生じ、徐々に傘を形作っていく。
もう一日、あるいは数度の射精があれば、少女がマタンゴになるまでそう時間はかからないようだった。
森の中に小さな集落があった。
並ぶ小屋や田畑は白い糸に包まれていた。
そして、うっすらと膜状に張った糸越しに見える小屋から、嬌声がいくつも響いていた。
ここはマタンゴの群生地。かつて人が暮らしていた、群生地だった。
12/09/11 15:54更新 / 十二屋月蝕
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