すこし湿った空気に混じって消毒液の匂いがする。
（……病院……？）
真っ暗な視界の中、匂いだけで判ずるならそうだが、どこか違う気もする。
閉じていた瞼を開け視界に映ったのは、冷たい印象の部屋だった。
右手に金属製の頑丈そうな扉があり、目の前の壁は一面ガラス張り。
それ以外は天井も壁もコンクリートがほとんどむき出しで、床には黒いビニール製のマットが敷き詰められている。天井にある蛍光灯が唯一の明かりだったが、その光量は頼りなくむしろ部屋の冷たさを強調しているようだ。
（どこだろう……ここ……）
病院の一室というより牢獄のような部屋をぼんやりと眺める。そこで自分の意識にまとわりつく独特の浮遊感に気付く。この感覚は……
（ああ、夢だ……）
夢だとしたら自分はいつ眠ったのだろう？
頭の中を探るように思考を巡らせるが思い出せない。言い知れぬ不安を感じ不気味な部屋から出ようと歩を進めるが
ガチン
いつの間にか手足には枷がはめられ、鎖で後ろの壁に固定されていた。肌に染みるような冷たさは異様な現実味を帯びている。
ならば誰かを呼ぼうと顔を上げると、ちょうど目の前に人の姿が見えた。
灰色の、大きすぎるローブを着て、鎖につながれている幼い少年。
先ほどまでガラスだと思っていたものが鏡に変わり、史郎自身の姿を映していた。精気のない虚ろな目がまっすぐに見返してくる。
（あ……）
ただの夢だと思っていたものに別の感覚と、予感が付け足された。
これは、悪夢だ。
先ほどから感じていた不安が確信に変わる。
ガチャン
重苦しい音と共に金属製の扉が開き、そこから一人の女性が現れた。その姿は墨で塗ったように黒く塗りつぶされている。だが、女性だと史郎には分かった。
（……これは夢じゃない……！）
シルエットのような女性の姿を見た瞬間に、史郎の記憶は蘇った。そう、記憶だ。
今の自分が見ているのは確かに夢だが、これから起こることは空想ではなく、かつて史郎が経験した過去だ。
耐えがたいがゆえに心の奥に沈んだ、罪深き過去。
（いやだ……！）
まっすぐに史郎に向かってくる女性（あのひと）。
これから起こる惨劇。
次々に思い出される忌まわしい映像と感覚、感触。
それから逃れようと史郎は必死にもがいた。
枷が手足に食い込むのも構わずにもがき続ける。
……っ！
…っ！

「あああぁ！」
自身の喉から上がる叫び声と共に目が覚めた。
急激に意識が引き戻され
「……あ……」
絶句した。
喜色満面で覗き込んでくる女性の顔。
体中に巻き付き体を吊り上げている触手、肌に染み込み続ける粘液。
自分の脱力した手足、敏感になり過ぎた全身の感覚。
気絶前の記憶が未だにぼやけているが、目の前の状況は理解できた。
拘束されている史郎の手が固く握られる。
「……まっ！…ぐう！むぅ……！」
「アア…ムゥゥ……！」
何かを言おうとした少年の口にローパーの唇が覆いかぶさった。舌が侵入し、無遠慮に狭い口内を蹂躙し音を立てて唾液をすすり始める。
触手は史郎の上半身をらせん状に擦りあげ極度に敏感になった柔肌を紅色に染め上げていく。すでに史郎から得た精により、すべての触手が再生したようだ。
腰から下は無事なことと、にやついた表情からして、久々の食事をじっくりと味わうつもりなのだろう。

そして、史郎は見た。
極至近距離から覗き込むローパーの茶色の瞳に宿ったおびただしいほどの情欲と、それとは別の微かな光。
その光には見覚えがある。
（あの時……あのひとも……）

プジュン
侵入していた舌が引き抜かれ
「かほっ…けほ…！」
解放された史郎がせき込む。

史郎の様子を気にも留めず、ローパーは口の中の唾液をゆっくりと味わい、嚥下する。
直後にぶるぶると震え、ローパーの表情が一変した。
頬が上気し目が輝き、両手で蕩けそうな頬を押さえて目を見張っている。少年の精はそれほどまでに美味に感じられたらしい。

史郎がようやく咳をおさめて顔を上げると視線が合った。
上気した色の頬、その上にある大きな目は完全にすわっている。
その瞳にはもう、先ほど見た光は見出せない。
「……」
史郎は体の力を抜き、ただ静かにその目を見返した。
ひとたび自分の精を味わった魔物がどうなるのか、これから何が起こるのか。

分かっていたはずだ。
覚悟も決めていたはずだ。

なにせ、
＜江水史郎＞は、そういうふうに＜造られた＞のだから。

それでも幼い胸には、どす黒いものが広がる。
怒り、などというものではない。
それは憎悪だ。
果ての見えない憎悪が湧きあがってくる。

「……っ！？」

胸の内に気を取られていた史郎だったが、
急回転した視界と背中に受けた衝撃とに息が詰まり現実へと引き戻された。
ローパーが史郎を地面に叩きつけ、４本の触手が手足の全てを拘束している。
その上……

ローパーの服が蠢き新たな触手が４本生えてきた。
抵抗はおろか身動きもとれず、磔にされた史郎の体を新たな触手が一斉に襲い始める。

ズルッ、ギュムッ
新たな触手のうち２本は、少年の服に潜り込み左右の乳首を吸い上げ、その吸引力を見せ付けるように幼い体を吊り上げた。
「ひぅっ」
必死に耐える口からわずかな悲鳴が漏れる。

ヅプン
もう１本はズボンの隙間から肛門を探り当て、粘液を出しながら何の躊躇もせずに中へと潜り込む。
「ごほっ」
内臓を押し上げられ息が詰まる。

ズボッ
残りの１本は少年の口に入り込み、深く喉を穿った。
「……！」
最後は悲鳴も上げられず、反射的に浮かんだ涙が頬を流れ落ちる。

少年の身に余る仕打ちは、まさしく拷問。
与えるのは苦痛ではなく、脳が焼き切れそうなほどの快感。
粘液で高まった肌が、狂おしいほどの快楽信号を伝えてくる。

手足は伸びきり、胸を吊られ、頭は沈み、奇妙な体勢のまま痙攣する史郎。

一方、女性部分は両手を伸ばし、暴発を恐れて慎重な手つきで史郎のズボンを引き下ろす。
ピンッ
立ち上る芳香と共に勢いよく跳びだしてきた未成熟なペニスは、限界まで腫れ上がっていた。
今にも破裂しそうな果実にローパーは静かに顔を近づけ、
息さえも止めながら口を大きく開き……

パクッ
素早く咥え

ジュッ！
吸った。

ガクンッ
「〜〜〜〜〜〜！！！！」
ドクンッ

声にならない絶叫と共に、史郎は射精した。
その量も、勢いも、その幼さからは想像しえないほど過剰で激しい。
本来なら意識する間もなく終わる瞬間が、在り得ないほどの快感を伴って神経焼いていく。
強すぎる刺激から逃れようと無意識に腰を引くが、両手で掴まれ強引に押し出されてしまう。
そのまま小さな尻が握られ、指を食い込ませるように揉みしだかれる。
途端、まるでそこに精液が詰まっていたかのように射精の勢いが増す。
魔物の淫らな甘い匂いを吸い込み続け、粘液が浸透し尽くした少年の身体はもはや全身が性感帯と化していた。
対して獲物に食いつく獣となったローパーは痙攣を続ける少年を気にも留めず、強烈な刺激にのたうつ小さなペニスを舐り、噴き出す精液を一滴残らず嚥下していく。
その精の味は、先に味わった唾液よりはるかに濃厚で美味だった。
ゴッ……ゴクッ……
頬が膨らみ、液体を飲み込む音が響くと同時に頬が窄まり、噴き出す精液を受けて再び膨らんでいく。
外に漏れ出す精液がなくとも、その量が尋常でないことは明らかだ。

……約１分が経過し、射精の勢いがようやく収まり始める。

かなりの量を味わったというのに変わらず美味な精を少しでも多く、長く味わおうと少年を犯す触手が脈動し、口が窄まり、舌を蠢かせ、前立腺をえぐる。本体の両手も臀部や腰をまさぐり、揉みしだく。
幼い体は追加される刺激に反応して、再び射精の勢いを増す。
そこに史郎の意思はなく、焦点の合わない目線を彷徨わせながら身悶えることしかできなかった。

それを幾度か繰り返し、それでも噴き出す精の量が減っていく。

すると、ローパーの両手が肌の上を滑るように移動し、
自らの咥えているペニス、そのすぐ下にある袋を手のひらで包み込んだ。
同時にローパーの手の中から赤い光が漏れ始める。
「……！？……！！」
半ば閉じかけていた史郎の目が大きく見開かれた。
まるで睾丸のなかが燃えているように熱く感じる。
射精の度に小さく収縮していただけの袋が、突然に膨れ始め、
光を放つ手は脈打つ陰嚢の中身を撹拌するように揉みほぐす。
「っ！」
磔にされている史郎には自分の体に何が起きているのかは分からなかったが、
朦朧とした意識の中でも異変を感じ、体をよじる。
だが、疲弊しきった少年の動きはあまりにも弱々しかった。
ローパーは射精量の減り始めたペニスをさらに深く咥え込み……
ゴリッ、グミュッ
水風船のように膨らんだ陰嚢を両手で握り潰し、少年の体内、根元に向かって思い切り押し込んだ。
その瞬間、性器の先端から噴水のように精液が飛び出す。
「……っ！！」
史郎が声にならない絶叫を上げた。
口内に触手がいなければ舌を噛んでいたかもしれない。
硬い弾力のある触手を噛み締めながら背骨が折れそうなほどに仰け反る。
ローパーは急激に縮んでいく陰嚢を絞るように握り込みながら、口内溢れだした新鮮な精液を味わい、飲み尽くす。
「……」
強引にたった今生み出されたばかりの精液を搾られ、わずかに残っていた史郎の意識はブレーカーが落ちるように途絶する。
気絶した後も、魔に侵された幼い性器はとっくに越えた限界の果てまで捕食者に向かい精を放ち続けた……。

……ゴクン……チュプンッ
頬にたまった精液を飲み込み、舌を回して口内の精液をこそげ落とす。
最後に口をすぼめて尿道にわずかに残る残滓を吸い取りながら、
ローパーはようやく幼いペニスを解放した。
魔性に喰い尽された未熟な果実は先端が紅く染まり、口内から出てきた時にはすで小さく縮んでいた。
「アア……」
余韻を堪能したローパーは、大きく息をついた。
それが合図だったかのように少年の足を縛っていた触手が離れ、口と肛門からも触手が抜け出す。
次いで胸を吸引していた触手が音を立てて外れ、
史郎は両手に巻き付いた触手に吊り上げられた状態になる。

史郎の白い胸には触手の跡が赤黒く残り、体の至るところに痣ができていた。

しかし、今のローパーの動きには先ほどまでの獲物の生命を貪るような獰猛さはなく、動作の一つひとつが少年の体を労わるように穏やかなものになっている。
最後に腕の触手が少年の体を慎重に地面に降ろし、静かに座り込ませる。
ペチャン……
触手の粘液や、その他の液体でできた水たまりが粘ついた音を立てた。
俯いたままの少年から、腕を支えていた触手がゆっくりと離れていく。

体内に行き渡った精が魔力に変換されるにつれ、ローパーの本体にも力が行き渡り、虚ろだった目にも光が戻る。
そして、
「……あ……」
彼女の口から初めて、呻きとは違う声が上がった。

■作者メッセージ
皆様の作品に励まされながらようやく辿り着けました。
（まだ完結してないのに遠い目）