忘却少年と神隠しの少女
とある街の夜道を、僕と彼女は歩く。 周りには誰もいない。もう、普通の人間が起きているような時間ではない。 「…………私がルー君と再会して、一体どのくらいたったのかな……?」 僕の隣で彼女が呟く。 「そうだね、大体…………1年くらいはたったのかな…………?」 そう、僕が答えると、彼女は少し驚いたような顔をした。 「よく覚えてられるよね、そんなこと」 「そんなことって………………」 酷いな……忘れられるわけないよ。 だって………… 「君がいつ居なくなってしまうのか分からなくて、怖くて…………忘れられるわけ、ないじゃないか…………」 「…………ごめんね……私のせいで、あなたを縛ってしまって…………」 本当にすまなそうに、彼女は言う。 そんなことない。 「そんなことないよ。僕は望んで君と一緒にいる。いたいと思ってる。だから…………いつまでも君を探すさ…………」 「…………………………ありがとう、ルー君……」 悲しそうな顔をして、彼女は俯いてしまった。 「…………そろそろ、時間なのかい?」 「……ごめんね……」 また、彼女は謝った。 「大丈夫だよ。また……見つけるから。絶対に、君を」 「ありがとう……。………………一つ、頼んでいいかしら?」 「なんだい?」 「手を……つないでいて欲しいんだ……」 彼女の願いを、僕は微笑みながら叶えた。 僕の手の中に、彼女の温もりが伝わってくる。 「…………一年かぁ……長いようで、短かったなぁ…………」 感慨深そうに言う彼女の体が、暗い闇に包まれていく。 そんな自分の様子を見ながら、彼女は泣きそうな顔で僕に別れを告げた。 「じゃあね、ルー君。また会う日まで」 そして彼女は闇に飲まれて消えた。 僕の手の中にあった彼女の温もりも……消えた。 僕の顔に、一筋、涙が流れた。 「絶対、絶対に見つけるから…………」 夜道に一人、僕は呟く。 「だから……待っててね…………フィス……」 |
||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||