ザットウーマンキルザディスマン!?
「おにいちゃん、わたしまたもみじちゃんとあそびたい。」
「んー…この街に住む事になるから、すぐに会えるんじゃないかな?」
「やったぁ!」
目を輝かせたソピアが繋いだ手をそのままに、嬉しそうに煉瓦の道を飛び跳ねる。
随分と気が合ったらしく、大人三人が世間話(という名の情報収集)をしている間に先程の茶葉屋の子とえらく仲良くなっていた。
茶葉屋を離れる際にも二人とも名残惜しそうに手を振って別れていたし、君にそんな風に付き合える友人が出来てお兄ちゃんは何よりです。
但し魔王、手前は一発殴る。泣いて謝っても許さん…!
同刻 魔王城ーーーー
「ひゃっ!?」
「…魔王様?どうされたのじゃ?」
「何か凄い寒気が…。」
「風邪ではないですか?」
「そうかしら…?」
ーーーーーー
そして今、あっしの左手には緑茶の茶葉がしこたま入った10糎位の紙袋が抱えられている。
柊さんに此処で住む餞別だと別れ際にレストランへのメモと一緒に貰った物だ。序でに茶器一式も持っていけとやたら勧められたが、流石にそこ迄して貰う訳にはいかないと懇ろに断わった。
気が良いんだか何なんだか…っと。メモだとこの辺りなんだけど…。あ、あったあった。ここが…
「アルカのバカー!!」
突然の怒号と共に、ラミアっぽい魔物が緋色の長髪を靡かせて目の前の扉から出てきた。
「え…きゃっ!?」
「あ…。」
突然出て来たラミアっぽい魔物は気付くのが遅れたのか見事に扉の真ん前にいたあっしにぶつかる。…押し扉で良かった。
「…あ、あの…すいません、大丈夫ですか?」
「……もう、何なのよ!退いてよ!!うわあああああぁん!」
ラミアっぽい魔物はあっしとソピアを押し退けると、涙を流しながら蛇の下半身をずるずると引きずって道の先へ走って(?)行った。……蛇が下半身の割に速いな、もう見えない。
「ん…パパぁ?」
ぶつかった衝撃で起きてしまったのだろう、今まで胸ポケットで眠っていたフウが目を擦りながら顔を出した。お客さんの痴話喧嘩かな?確かラミア種って嫉妬深いから相手は大変だろうなぁ。
「はいはい、パパですよー。」
「お、おにいちゃん…あれ…。」
「ん?んー…!?」
え、何アレどゆこと?腕の裾を引いてきたソピアにつられて店の中に視線を向けたら人が一人割れたテーブルに頭を突っ込んでんだけど。さ…殺人!?ザットウーマンキルザディスマン!?…お、落ち着けこれは孔明の罠なのだきっと奴はこの隙に洛陽へと兵を進めているのだ一応駄目元でも生死を確認して…。
「え…あの…だ、大丈…」
「痛た…。全く、ジーリャは相変わらず容赦ないなぁ…。」
「うわあああああああっ!?」
「きゃあああああああっ!?」
キエアアアアアアシャベッタアアアアアア!?
ーーーーーーーーー
「あはは…すいません、驚かせてしまって…。自分は此処の店主のアルカ・シュディックと言います。」
「は、はぁ…。」
「ふえぇ…。」
いやいや、しれっとにこやかに自己紹介する前にその頭から流れてる血を何とかしなさいよ。
少し経ったとは言えこちとらアンタの事で叫んで騒いで未だにメダパニーマしてんだから。
ソピアなんか半泣きになってあっしのジーンズ放さないじゃないか。なまら可愛い。
「あの…店主って事は…此処、レストランの『エルテ』…ですよね?」
「はい!安く、速く、美味しくをモットーに手の込んだお料理を提供するレストラン『エルテ』です!」
おぉう、笑顔が眩しい。もうその笑顔だけで彼の料理に対する姿勢が真摯である事は容易に分かる…が、宣伝文句が何処ぞで聞いた事あるフレーズだったのは気のせいだろうか。
つかいいから早く血ぃ止めろ?
「すぐにお水をお出ししますんで、此方のテーブルにどうぞ。」
「あ、はぁ…。」
出血を全く気にしてない店主に促され、ついさっきまで店主が頭を突っ込んでたテーブルのすぐそばの四人席に腰を降ろす。…まぁ、当の本人が気にしてないならいい…のか…な?
それとほぼ同時にチリンという鈴の音と共に真後ろの扉が開かれ、外から妙にガタイの良い男性が顔を出した。
「よーっすアルカ。ジーリャが走ってったけど、店やってるか?」
「やぁファベルじゃないか、勿論やってるよ。いつもので良いかな?」
「おう、いつものを大盛りで!」
長年の友人なのだろう、流れるように二人とも会話を終えて店主はカウンターの向こうの厨房に、ガタイの良い男性はカウンターの席にどっかと座り込んだ。
……………血ぃ噴き出さしたまま料理すんの!?
「ん…しょ…。」
「あ、ごめんごめん。」
「わぁい、えへへ…。」
何だかソピアが一生懸命あっしが座っている椅子に登ろうとしてたので隣の椅子に緑茶の紙袋を置いて膝の上に抱き上げてやると、嬉しそうに自身の後頭部を腹部に擦り付けてきた。…きめ細かい髪がこそばゆい。
「むぅ…パパ!」
「うわっ、フウ?」
「むー!」
ソピアにばかり構っていたのが相当気に入らないのか、茶葉屋の時よりも頬を膨らませながらフウは胸ポケットからふわふわと出て来てソピアの頭の上に着地した。畜生、サイズも合間って可愛いなオイ。
「むー…。」
「ごめんごめん、寂しかったよな?よしよし。」
「んー…。」
左手の人差し指でちっこいフウの頭を撫でてやるも、その頬は萎まない。変わらないしかめ面も此方を見つめる緑のつぶらな目も強く不満の色を出していた。……?
「むー!」
「??」
その場に座ってポフポフと足場にしているソピアの頭を叩くフウ。一体何が言いたいんだい、お父ちゃん分かんないんだけど…?
「フウちゃん、もしかしてだっこしてほしい?」
「う!」
ソピアの問いに、フウは今までになく力強く頷いた。あー…なるほど。先刻からソピアを膝に乗せてるから、自分にも同じ事をやれと。駄目でも抱っこしろと。
「はいはい、じゃあ…。」
両手の人差し指と親指で慎重に、包み込むようにしてフウの肩を掴む。…おそがい!ボトルシップ作ってる時より何千倍もおそがい!柔い!……よし、オーケー。
「ほーら、高い高ーい。」
「きゃー♪」
体格差があり過ぎで何かあったら怖いので、でらゆっくりと、かつ少しだけ上にフウの身体を持ち上げる。しかし、それだけでも本人は楽しそうにはしゃいでいた。
「楽しいか?」
「あいっ!」
うん、なら良かった。流石にそろそろ指先の力が限界なのでゆっくりとテーブルの上に降ろさせて貰った。経験者なら分かると思うけど指先だけで対象に適切な力入れるのって結構キツイんだよ。
「むー…。」
「ほらほらむくれない。帰ったらまたやってやるから、な?」
「えへへっ。」
再び不機嫌になり始めたフウのほっぺを指で軽く突つくと、掌を返すように嬉しそうな声をあげる。…構えば形は何でもいいのね。
「お待たせしました。」
声がした方向に首を向けると、頭に包帯を巻いた店主が柔らかい笑みを此方に向けながらお盆を持って立っていた。
「んー…この街に住む事になるから、すぐに会えるんじゃないかな?」
「やったぁ!」
目を輝かせたソピアが繋いだ手をそのままに、嬉しそうに煉瓦の道を飛び跳ねる。
随分と気が合ったらしく、大人三人が世間話(という名の情報収集)をしている間に先程の茶葉屋の子とえらく仲良くなっていた。
茶葉屋を離れる際にも二人とも名残惜しそうに手を振って別れていたし、君にそんな風に付き合える友人が出来てお兄ちゃんは何よりです。
但し魔王、手前は一発殴る。泣いて謝っても許さん…!
同刻 魔王城ーーーー
「ひゃっ!?」
「…魔王様?どうされたのじゃ?」
「何か凄い寒気が…。」
「風邪ではないですか?」
「そうかしら…?」
ーーーーーー
そして今、あっしの左手には緑茶の茶葉がしこたま入った10糎位の紙袋が抱えられている。
柊さんに此処で住む餞別だと別れ際にレストランへのメモと一緒に貰った物だ。序でに茶器一式も持っていけとやたら勧められたが、流石にそこ迄して貰う訳にはいかないと懇ろに断わった。
気が良いんだか何なんだか…っと。メモだとこの辺りなんだけど…。あ、あったあった。ここが…
「アルカのバカー!!」
突然の怒号と共に、ラミアっぽい魔物が緋色の長髪を靡かせて目の前の扉から出てきた。
「え…きゃっ!?」
「あ…。」
突然出て来たラミアっぽい魔物は気付くのが遅れたのか見事に扉の真ん前にいたあっしにぶつかる。…押し扉で良かった。
「…あ、あの…すいません、大丈夫ですか?」
「……もう、何なのよ!退いてよ!!うわあああああぁん!」
ラミアっぽい魔物はあっしとソピアを押し退けると、涙を流しながら蛇の下半身をずるずると引きずって道の先へ走って(?)行った。……蛇が下半身の割に速いな、もう見えない。
「ん…パパぁ?」
ぶつかった衝撃で起きてしまったのだろう、今まで胸ポケットで眠っていたフウが目を擦りながら顔を出した。お客さんの痴話喧嘩かな?確かラミア種って嫉妬深いから相手は大変だろうなぁ。
「はいはい、パパですよー。」
「お、おにいちゃん…あれ…。」
「ん?んー…!?」
え、何アレどゆこと?腕の裾を引いてきたソピアにつられて店の中に視線を向けたら人が一人割れたテーブルに頭を突っ込んでんだけど。さ…殺人!?ザットウーマンキルザディスマン!?…お、落ち着けこれは孔明の罠なのだきっと奴はこの隙に洛陽へと兵を進めているのだ一応駄目元でも生死を確認して…。
「え…あの…だ、大丈…」
「痛た…。全く、ジーリャは相変わらず容赦ないなぁ…。」
「うわあああああああっ!?」
「きゃあああああああっ!?」
キエアアアアアアシャベッタアアアアアア!?
ーーーーーーーーー
「あはは…すいません、驚かせてしまって…。自分は此処の店主のアルカ・シュディックと言います。」
「は、はぁ…。」
「ふえぇ…。」
いやいや、しれっとにこやかに自己紹介する前にその頭から流れてる血を何とかしなさいよ。
少し経ったとは言えこちとらアンタの事で叫んで騒いで未だにメダパニーマしてんだから。
ソピアなんか半泣きになってあっしのジーンズ放さないじゃないか。なまら可愛い。
「あの…店主って事は…此処、レストランの『エルテ』…ですよね?」
「はい!安く、速く、美味しくをモットーに手の込んだお料理を提供するレストラン『エルテ』です!」
おぉう、笑顔が眩しい。もうその笑顔だけで彼の料理に対する姿勢が真摯である事は容易に分かる…が、宣伝文句が何処ぞで聞いた事あるフレーズだったのは気のせいだろうか。
つかいいから早く血ぃ止めろ?
「すぐにお水をお出ししますんで、此方のテーブルにどうぞ。」
「あ、はぁ…。」
出血を全く気にしてない店主に促され、ついさっきまで店主が頭を突っ込んでたテーブルのすぐそばの四人席に腰を降ろす。…まぁ、当の本人が気にしてないならいい…のか…な?
それとほぼ同時にチリンという鈴の音と共に真後ろの扉が開かれ、外から妙にガタイの良い男性が顔を出した。
「よーっすアルカ。ジーリャが走ってったけど、店やってるか?」
「やぁファベルじゃないか、勿論やってるよ。いつもので良いかな?」
「おう、いつものを大盛りで!」
長年の友人なのだろう、流れるように二人とも会話を終えて店主はカウンターの向こうの厨房に、ガタイの良い男性はカウンターの席にどっかと座り込んだ。
……………血ぃ噴き出さしたまま料理すんの!?
「ん…しょ…。」
「あ、ごめんごめん。」
「わぁい、えへへ…。」
何だかソピアが一生懸命あっしが座っている椅子に登ろうとしてたので隣の椅子に緑茶の紙袋を置いて膝の上に抱き上げてやると、嬉しそうに自身の後頭部を腹部に擦り付けてきた。…きめ細かい髪がこそばゆい。
「むぅ…パパ!」
「うわっ、フウ?」
「むー!」
ソピアにばかり構っていたのが相当気に入らないのか、茶葉屋の時よりも頬を膨らませながらフウは胸ポケットからふわふわと出て来てソピアの頭の上に着地した。畜生、サイズも合間って可愛いなオイ。
「むー…。」
「ごめんごめん、寂しかったよな?よしよし。」
「んー…。」
左手の人差し指でちっこいフウの頭を撫でてやるも、その頬は萎まない。変わらないしかめ面も此方を見つめる緑のつぶらな目も強く不満の色を出していた。……?
「むー!」
「??」
その場に座ってポフポフと足場にしているソピアの頭を叩くフウ。一体何が言いたいんだい、お父ちゃん分かんないんだけど…?
「フウちゃん、もしかしてだっこしてほしい?」
「う!」
ソピアの問いに、フウは今までになく力強く頷いた。あー…なるほど。先刻からソピアを膝に乗せてるから、自分にも同じ事をやれと。駄目でも抱っこしろと。
「はいはい、じゃあ…。」
両手の人差し指と親指で慎重に、包み込むようにしてフウの肩を掴む。…おそがい!ボトルシップ作ってる時より何千倍もおそがい!柔い!……よし、オーケー。
「ほーら、高い高ーい。」
「きゃー♪」
体格差があり過ぎで何かあったら怖いので、でらゆっくりと、かつ少しだけ上にフウの身体を持ち上げる。しかし、それだけでも本人は楽しそうにはしゃいでいた。
「楽しいか?」
「あいっ!」
うん、なら良かった。流石にそろそろ指先の力が限界なのでゆっくりとテーブルの上に降ろさせて貰った。経験者なら分かると思うけど指先だけで対象に適切な力入れるのって結構キツイんだよ。
「むー…。」
「ほらほらむくれない。帰ったらまたやってやるから、な?」
「えへへっ。」
再び不機嫌になり始めたフウのほっぺを指で軽く突つくと、掌を返すように嬉しそうな声をあげる。…構えば形は何でもいいのね。
「お待たせしました。」
声がした方向に首を向けると、頭に包帯を巻いた店主が柔らかい笑みを此方に向けながらお盆を持って立っていた。
13/08/23 01:47更新 / 一文字@目指せ月3
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