5話 予想の斜め上
「おいクノー、コレは大丈夫か?」
「お?ああ、それは大丈夫だな」
目の前にあった他の草とは少し色の違う薬草か毒草か分からない植物を引っこ抜いてクノーに見せる。
俺の腰には小型のナイフが鞘に入った状態でホルダーに入っている。
ココに来る前、武器屋で買った一番安いものだ。
――――――――
「ココが武器屋だ」
クノーがそういって連れてきてくれたのは成程、確かに武器屋だ。
木製のドアの上に斧と剣が交差している前に「WEAPON」の文字が書いてある看板が掛かっている辺り、かなり品揃えはあると見た。
武器屋の主人と言うからにはよほどの豪傑なのだろう、とドアを開きながらそう思った。
でも俺の想像は、驚くほど呆気なく砕ける事になった。
ドアを開いてまず目に付いたのは種類豊富な武器。
看板の通りの斧から短剣までかなりの数があった。
店の奥にあるカウンターで寝ているのは・・・あれ?あの娘・・・。
「何止まってんだスグロ、早く入れって」
「うわっ、ちょっ!?」
背中を思い切り突き飛ばされ、体が前へつんのめる。
バランスを取り損ね、不様にも床にバアンと音がなるほど強く顔面を打ち付けてしまった。
「痛つつ・・・」
「す、すまん・・・こんなにもあっさり吹き飛ぶとは思わなくて・・・」
「・・・お、押すならせめてもっと弱く・・・」
「お、おう。これからは気をつけるぜ」
「ん〜・・・?お客かい?」
打ちつけた鼻を抑えながらクノーのほうを見るとすまなさそうに頭をかいていた。
それよりも、俺が顔面を打ちつけてた音の所為で、カウンターにいた女の子を起こしてしまったようだ。
「んお?よく来たね、少年!」
何・・・だと・・・?
「あ・・・アンタは昨日の・・・」
「・・・何?わっちの顔に何か付いてる?」
「いや・・・何でもない」
・・・まさかこんな小さい娘がこの店の店主な筈が無い。
混乱している俺の顔を、女の子が訝しげに見つめていた。
「・・・そう。んで、何か用?」
「いや何、今から森へ行くからコイツに武器をってな」
「森へねぇ・・・少年はどんな武器が使いやすいんだい?」
「それがさ、鎌がいいんだってよ」
「・・・鎌は無いぞ。わっちの店」
「・・・だよなぁ・・・」
困惑している俺をよそにどんどんと話を進めていく二人。
落ち着け・・・COOLになるんだ俺・・・!
そうだ、この娘は店主の娘あたりに違いない。
無理やり自分にそう思い込ませ、立ち上がろうとした時に止めがきた。
「スズ、鎌作れるか?」
「構造知識程度なら持ってるから、作ろうと思ったら作れるけど・・・時間かかるよ?」
「・・・そっか」
う、嘘だ!
出来ればこの現実を受け止めたくない。
・・・いや、落ち着け。こんな事なら今まで何度かあったじゃないか。
とにかく、今はかなり物騒らしい森へ行く為に武器を調達する事だ。
俺の経験上、今割り入っても無駄だろう。流れに身を任せよう。
まず、俺そんなに武器に詳しくないしな。
「鎌が無いとなると・・・」
「ナイフなんかが良いんじゃない?下手に得意な武器以外で戦っても動きおかしくなるだけだし」
「そうだな。おいスグロ、それでいいか?」
「おう」
ナイフか・・・使った事無い・・・けどスズと呼ばれていた娘の言う事も一理ある。
となるとナイフでの動き方か・・・。
刀身が短い分、相手に接近しなきゃならないから戦闘時は格闘がメインになるだろうな。
それと・・・
「少年」
「うぇ!?」
いつの間にか近づいてきていたスズという少女。
物を考えてるときにいきなり話しかけないで頂きたい。心臓に悪い。
「自己紹介が遅れたね。わっちはドワーフのスズ。ここで武器屋を営ませて貰ってる。これからよろしくね」
そう言って小さな手をこちらに差し出してくる。
・・・もう、この世界で深く考えるのはよそう。
「俺はミツキリスグロ。こちらこそよろしく」
差し出された手を握り返し、握手に答える。
・・・背丈が違いすぎて手が届かなさそうだったので中腰になったが。
「・・・少年、この世から魔物は消えればいいと思ってる?」
・・・おいおい、いきなり何を言い出すんだこの娘は。
自分も魔物だろうが・・・。
・・・ああ、そういう事。
「命を助けてくれた恩人たちを、どうしてこの世から消さなくちゃならないんだい?」
「・・・気に入った!」
そう言うとスズは中腰になっている俺の肩を思い切り叩いた。
「これから武器に関して困った事があったらわっちに言ってくれ!微力ながら、手助けさせてもらうよ!」
叩かれた肩はジンジンと痛んでいる。
それだけでこの子がどれだけ力が強いかを物語っていた。
「あ、ああ・・・。」
「今回のナイフ、お代は要らないよ。まあ、いうなれば餞別かな?」
そう言ってスズは俺にナイフを手渡した。
こちらに来て、初めて持った刃物の感触。
硬くて、冷たい、使えば人を殺す事も出来るその小さな鉄の塊。
「・・・ありがとう」
「ほらほら、しんみりしてないでとっとと行くぞ。もたもたしてると日が暮れちまう」
突然、首筋をクノーに引っ張られる。
「うわっ!?ちょっと待てコケる!」
「気をつけてね!最近はあの森かなり物騒だから」
「お、おう。ナイフ、ありがとうな!ってクノー!もう歩けるって!!とりあえず離してー!!」
――――――――――――
そのままズルズルと引きずられたままギルドで森への通許可を出してもらい、現在に至るわけなんだが・・・。
「あれ?クノー?」
ふと周りを見渡すと、見覚えの無い場所に立っていた。
風景がそんなに変わってないって事は森の外って訳じゃないし・・・。
まさか・・・迷った?
「ふわああぁあああん!」
な、何だ!?
女の子の泣き声!?
・・・近いな。距離は分からないが声の大きさからして、走ればすぐ着きそうだ。
声が聞こえたのは・・・
「ふわあああぁああぁん!」
こっちだ!
体を60度ほど回転させ、声のする方向へと走った。
「お?ああ、それは大丈夫だな」
目の前にあった他の草とは少し色の違う薬草か毒草か分からない植物を引っこ抜いてクノーに見せる。
俺の腰には小型のナイフが鞘に入った状態でホルダーに入っている。
ココに来る前、武器屋で買った一番安いものだ。
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「ココが武器屋だ」
クノーがそういって連れてきてくれたのは成程、確かに武器屋だ。
木製のドアの上に斧と剣が交差している前に「WEAPON」の文字が書いてある看板が掛かっている辺り、かなり品揃えはあると見た。
武器屋の主人と言うからにはよほどの豪傑なのだろう、とドアを開きながらそう思った。
でも俺の想像は、驚くほど呆気なく砕ける事になった。
ドアを開いてまず目に付いたのは種類豊富な武器。
看板の通りの斧から短剣までかなりの数があった。
店の奥にあるカウンターで寝ているのは・・・あれ?あの娘・・・。
「何止まってんだスグロ、早く入れって」
「うわっ、ちょっ!?」
背中を思い切り突き飛ばされ、体が前へつんのめる。
バランスを取り損ね、不様にも床にバアンと音がなるほど強く顔面を打ち付けてしまった。
「痛つつ・・・」
「す、すまん・・・こんなにもあっさり吹き飛ぶとは思わなくて・・・」
「・・・お、押すならせめてもっと弱く・・・」
「お、おう。これからは気をつけるぜ」
「ん〜・・・?お客かい?」
打ちつけた鼻を抑えながらクノーのほうを見るとすまなさそうに頭をかいていた。
それよりも、俺が顔面を打ちつけてた音の所為で、カウンターにいた女の子を起こしてしまったようだ。
「んお?よく来たね、少年!」
何・・・だと・・・?
「あ・・・アンタは昨日の・・・」
「・・・何?わっちの顔に何か付いてる?」
「いや・・・何でもない」
・・・まさかこんな小さい娘がこの店の店主な筈が無い。
混乱している俺の顔を、女の子が訝しげに見つめていた。
「・・・そう。んで、何か用?」
「いや何、今から森へ行くからコイツに武器をってな」
「森へねぇ・・・少年はどんな武器が使いやすいんだい?」
「それがさ、鎌がいいんだってよ」
「・・・鎌は無いぞ。わっちの店」
「・・・だよなぁ・・・」
困惑している俺をよそにどんどんと話を進めていく二人。
落ち着け・・・COOLになるんだ俺・・・!
そうだ、この娘は店主の娘あたりに違いない。
無理やり自分にそう思い込ませ、立ち上がろうとした時に止めがきた。
「スズ、鎌作れるか?」
「構造知識程度なら持ってるから、作ろうと思ったら作れるけど・・・時間かかるよ?」
「・・・そっか」
う、嘘だ!
出来ればこの現実を受け止めたくない。
・・・いや、落ち着け。こんな事なら今まで何度かあったじゃないか。
とにかく、今はかなり物騒らしい森へ行く為に武器を調達する事だ。
俺の経験上、今割り入っても無駄だろう。流れに身を任せよう。
まず、俺そんなに武器に詳しくないしな。
「鎌が無いとなると・・・」
「ナイフなんかが良いんじゃない?下手に得意な武器以外で戦っても動きおかしくなるだけだし」
「そうだな。おいスグロ、それでいいか?」
「おう」
ナイフか・・・使った事無い・・・けどスズと呼ばれていた娘の言う事も一理ある。
となるとナイフでの動き方か・・・。
刀身が短い分、相手に接近しなきゃならないから戦闘時は格闘がメインになるだろうな。
それと・・・
「少年」
「うぇ!?」
いつの間にか近づいてきていたスズという少女。
物を考えてるときにいきなり話しかけないで頂きたい。心臓に悪い。
「自己紹介が遅れたね。わっちはドワーフのスズ。ここで武器屋を営ませて貰ってる。これからよろしくね」
そう言って小さな手をこちらに差し出してくる。
・・・もう、この世界で深く考えるのはよそう。
「俺はミツキリスグロ。こちらこそよろしく」
差し出された手を握り返し、握手に答える。
・・・背丈が違いすぎて手が届かなさそうだったので中腰になったが。
「・・・少年、この世から魔物は消えればいいと思ってる?」
・・・おいおい、いきなり何を言い出すんだこの娘は。
自分も魔物だろうが・・・。
・・・ああ、そういう事。
「命を助けてくれた恩人たちを、どうしてこの世から消さなくちゃならないんだい?」
「・・・気に入った!」
そう言うとスズは中腰になっている俺の肩を思い切り叩いた。
「これから武器に関して困った事があったらわっちに言ってくれ!微力ながら、手助けさせてもらうよ!」
叩かれた肩はジンジンと痛んでいる。
それだけでこの子がどれだけ力が強いかを物語っていた。
「あ、ああ・・・。」
「今回のナイフ、お代は要らないよ。まあ、いうなれば餞別かな?」
そう言ってスズは俺にナイフを手渡した。
こちらに来て、初めて持った刃物の感触。
硬くて、冷たい、使えば人を殺す事も出来るその小さな鉄の塊。
「・・・ありがとう」
「ほらほら、しんみりしてないでとっとと行くぞ。もたもたしてると日が暮れちまう」
突然、首筋をクノーに引っ張られる。
「うわっ!?ちょっと待てコケる!」
「気をつけてね!最近はあの森かなり物騒だから」
「お、おう。ナイフ、ありがとうな!ってクノー!もう歩けるって!!とりあえず離してー!!」
――――――――――――
そのままズルズルと引きずられたままギルドで森への通許可を出してもらい、現在に至るわけなんだが・・・。
「あれ?クノー?」
ふと周りを見渡すと、見覚えの無い場所に立っていた。
風景がそんなに変わってないって事は森の外って訳じゃないし・・・。
まさか・・・迷った?
「ふわああぁあああん!」
な、何だ!?
女の子の泣き声!?
・・・近いな。距離は分からないが声の大きさからして、走ればすぐ着きそうだ。
声が聞こえたのは・・・
「ふわあああぁああぁん!」
こっちだ!
体を60度ほど回転させ、声のする方向へと走った。
11/07/26 13:43更新 / 一文字@目指せ月3
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