私は一度空っぽになった。
誇りも、名誉も、全て失って。

私の身体が、心が、あの親子を受け入れたのは至極当然のことだったのかもしれない。
空っぽになった器に再び水が注がれていくように。
しかし、その先の事を考えると不安になる。
人間の一生など短い。
私達が一呼吸を置いているうちに年老い死んでいく。
それでも、私はこれにすがりつくしかなかった。
何もない虚の様な私の巣穴に迷い込んできたこの親子に。

それから一週間ほどが過ぎた。




「ほら、リアン。おっぱいをやろう。たんと飲め。そして早く大きくなって立派になるのだ」
『………』

いつもは騒がしいアイラが黙って私を凝視している。

「………ど、どうしたのだ？アイラ」
『じ〜〜〜〜〜〜』
「…き、気味が悪いんだが」
『おっぱい。私も欲しいです』
「嫌だ」
『おっぱい、私も欲しいです』
「ダメだ」
『おっぱい。私も飲みたいです』
「だが、断る」
『おっぱい。私に下さい』
「それならお前にもあるだろう。お前の胸にあるそれはなんだ？肉まんか何かか？」
『私にティアさんのおっぱいをください』
「お前のもそれほど悪くないと思うぞ。というか服を着ろ。もう何日全裸なのだ？」
『悪くないとおっしゃるのでしたら是非！』
「嫌だ」
『なんでぇぇぇですかぁぁ！！？！？！？私こんなにティアさんの事愛してるのにぃぃぃ！！』
「そうか、ありがとう。　ふふ。リアン〜いい子だなぁ〜。お、そうか、左側も行くのか。いいぞ、たんと飲め〜」
『うぅぅぅ！！！！リアンばっかりずるいです！　ハッ！そうだ、リアンに憑いて…』
「ほぉ…とうとう母としての魂も売るか（ｷﾞﾛ）」
『ひぅっ！　ふぇ、えと、と、とにかくじゅるいんですよぅ！』
「なんだ？ちょっと強く睨み過ぎたか？泣きながら怒るなよ」
『びえぇぇぇぇぇぇ！ティアさんのばかぁぁ！！！』
「はいはい」
『ティアさんのおたんこなす〜〜！』
「はいはい」
『ティアさんのいきおくれ処女ぉぉ！！！！』
「はいは…ハッ！何で知っておる！？」
『ティアさんのメンヘル処女〜〜〜！！』
「あ、ちょ、おま、待てぇ！何で知っておる！！ってかメンヘル処女言うな！」
『びえぇぇぇぇぇん』
「ちょ、どこへ行く！？言うなよ！？絶対誰にも言うなよ！？！？あの、あ。これはフリではないぞ？ホントは言ってほしいとかそういうのではないぞ！？本当に言うなよ！？絶対だぞ！」

その日、アイラは戻ってこなかった。
まったく…。少し邪険にしすぎたか？
しかし、あれを受け入れるわけにもいかんし…。
やはりゴースト程度にはこの魔力は強すぎるのだろうか…。

「息苦しいのは嫌いなんだがなぁ」

私はバフォメットから受け取った首輪を拾い、自分の首に付けた。



次の日は雨だった。

「ゴーストは雨にぬれたりするのか？」

まいったな。
アイラめ。裸のまま出て行って帰って来んではないか。

――すぅ…すぅ

「はぁ…」

泣き疲れて眠ったか。

「…やっぱり本物の母の方が良いのか？」

――すぅすぅ…

私も寝るか…。

「すぅ…」



「うぅ…」

妙な熱さで目を覚ました。

「く…」

疼く。
くそ、ここしばらくは来なかったというのに…。
やはり首輪で魔力を封じたせいか…。

「うぅ…」

私の胸から母乳が溢れる。
水着の家からにじみ出て恥ずかしいシミが広がっていく。
ぐしょりと湿り、気持ちが悪い。

「く…。アイラが帰ってくる前になんとかせねば…」

――くちゅ

「ひぅ…」

水着をずらそうとした拍子に、大きく隆起していた胸の頂きに水着の端が引っ掛かり、弾けた拍子に声が漏れた。
母乳でぬらぬらと湿った乳が外気に触れてひやりとする。

「くぅ…。なんでこう敏感なのだ…私の乳は…」

――キュポ

「はうぅっ」

搾乳機を装着し、乳を吸いだす。
ただそれだけだと言うのに私の身体は言い知れぬ心地好さを伝え、胸の奥から震える様な感覚が広がる。

「くぅ…こんな…」

いつもよりも酷い。
今までこんなに感じた事などない。

「あぁん！　な、なにか…くる？」

胸の奥からこみ上げてくる様な
胸の奥で何かが爆ぜる様な感覚

「くひぃぃぃ！！」

――ぴゅっ

こんな感覚は初めてだった。
頭が真っ白になり。
まるでリアンの夜泣きのせいで寝不足になっている時の様に目の前が白黒する。
しかし
とてつもなく気持ちいい。
不意に意識が戻ると、私のもう片方の胸からも母乳が噴出され、白い弧を描いていた。

「はぁ…はぁ…。なんだ？今のは…。今のが絶頂というやつか？　こ、こんな姿、アイラに見られでもしたら恐ろしい事に…」
『ふえ？呼びました？』
「………………」
『………………？』




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Now loading…


「オギャァァァァァァァァアアアア！！！　な、ななななななななな何故お前がここに居る！？」
『だって雨降ってきて、寒かったんですもん』
「……見た？」
『ばっちりです♪』

オギャァァァァァァアアアア！！

おわった。
私の威厳が…。
カリスマが…。

『えへへ〜。もぉ〜ティアさんったら〜。そんなに溜まってたんなら言ってくださいよ〜。いつでもイかせてあげますよぉ？』
「いやだ。断る」
『そんな事言って…それ♪』

――むにゅ

「ひあぁぁぁぁ！」

アイラがふいに私の両の胸を揉みしだいた。
握りつぶす様な強い刺激。
普通なら痛い様な刺激。
それが、堪らなく気持ちよかった。

『ティアさんかわいいなぁ〜』
「や、やめろぉ…」
『だめですよぉ〜♪溜まったものを出さないと身体に毒ですよぉ〜』

アイラがまるで牛の乳を搾る様に私の乳を揉む。
乳首からは噴水の様に母乳が弧を描く。
その度に地の底から湧き出てくるような快楽が私の抵抗力を押し流していく。

「くぅ！ほんとに、やめろ…はぅ！」
『だめですよ〜。そんな怖い顔しちゃ〜。お願いする時はそんな怖い顔してても聞いてもらえませんよぉ〜？』

――ぎゅうぅ！

「うひゃうっ！ふひゃぁぁぁぁぁ！」

目の前がちかちかする。
めまいがして頭が揺れる。
私は乳で2度も絶頂を迎えてしまった。
私はたまらず口にしてしまう。

「や、やめてぇ…くださいぃ…」
『（ズキューン）はうっ！落ちた！今恋に落ちた！神様！今私恋に落ちました！』

――きゅぅぅぅぅぅっ！

アイラが私の身体を全身を使って抱きしめる。
煙の様な身体が蛇の様に伸びて私に巻きつく。

　　　　……ティアさん好きです…大好きです……

え？
不意に頭の中にアイラの声が響く。
しかし目を開ければ、アイラは相も変わらず卑猥な言葉を発しながら私の身体を舐めまわす様に見ていた。
空耳だろうか？

　　　　　　　　　　　……私…嬉しかった……ティアさんに助けてもらって…
　　　　…ずっと一緒に居たいって思った…この子と一緒に3人で……

「……アイラ…」
『ふぇ？』

気のせいではない。
やはり頭に声が流れ込んでくる。
いや、
これは声ではない。
もっと、感覚的な…。
そうか
これはアイラの心だ。
右手をアイラに貸した時に感じたもの。
それのもっと根源にも近い様な感覚。
それが火照った私の心を柔らかな温かさで落ちつけていく。

「……アイラ。私はお前たちの助けになれているのか？」
『え？』

私の不意の問いかけに困惑の表情を浮かべるアイラ。

「前に話したであろう。私は人を餌としか見ない残虐なドラゴンだ。子育てなどもした事がない。幼い頃の記憶など最早何一つ思い出せん。そんな私が子育てなど…」
『……助けになって無いわけ、ないじゃないですか』

アイラが目を正気に戻し、言った。

『私。嬉しかったです。ティアさんに助けてもらった時。でも。あの時は同時にとても不安だったんです』
「やはり…」
『ふふ。だって。あんなの、誰が見ても「あぁ、この人はきっとこの子を見ても“かわいい”とは思ってくれないんだろうな」って分かっちゃいますよ。でも。今のティアさんは違う』
「え？」
『ティアさん。とっても優しい人だなっていうのが分かったんです。あの日…ほら、バフォメットちゃんが来た日。あの日、ティアさんは初めてリアンのおむつを仕替えてくれました。リアンにおしっこ掛けられても、ちゃんと。それに、リアンを抱っこして、嬉しそうに笑ってました。そして、リアンの為に自分の身体が作り替わっても、嫌な顔一つせずに。それどころか、それを喜んでくれて。わたし、嬉しかったんです。それで、その時から、ティアさんの事、リアンとおんなじくらい好きになって。身体もこんなにエッチなことばっかりほしくなっちゃって…』
「ふふ。夫が聞いたら泣いてしまうぞ？」
『………夫は。私の事を愛してはいません。夫はリアンが欲しかっただけ…』
「なに？」
『夫は後継ぎが出来ればそれでよかったんです。政略結婚ってやつですよ』
「………そうか」
『でも、あの日、夫は殺されて。私はリアンを抱いて逃げて…。私にはリアンしかいなかった。あそこには私の知らない人ばかりがいて。私を愛してくれない夫がいて。リアンだけが私の味方だった』
「……」

――きゅ

『ふぇ？』
「もう、私も味方だ」

泣きそうなアイラの声。

　　　　　　　　……くるしい…
　　　　　　　　　　　　　　　　　…さみしかった…辛かった……

泣いているアイラの心。
それを聞いて、私はアイラを抱き締めた。

「お前はあの時言ってくれた。リアンは私の子だと。　…嬉しかった。あの時の私は何故嬉しかったのかは分からなかったが。今なら分かる。リアンを拾って、育てて。お前が認めてくれて。私には初めて家族が出来た。私はずっと独りだった。時もかすむ程の昔、ディアナとケンカ別れし、箱庭が出来て間もない頃に、リアン…あの男と死に別れ。それ以来私はずっと独りだった。そんな私にお前は家族をくれた。私がリアンの母でいいと言ってくれた。あの時から。お前は私の友で、私の味方で、私の家族だ。だから、あの時から私もお前の味方になった」
『ティアさん…』

　　　　　　　………なら…エッチしても………

「…………………」

響いてきた。
アイラの心だ。
よりによって人が良い事を云った時に…。

「はぁ…。まったく。お前はどうしようもない奴だな」
『ふぇ？』
「　…少しだけだぞ…（ﾎﾞｿ）」
『ふぇ！？　良いんですか？』
「聞き返すな！んちゅっ！？？？」

私が言うや否や、アイラが私の唇を奪ってきた。

『ティアさん！好きです！私、ティアさんが魔物でも、ドラゴンでも。ティアさんの事大好きなんです！もう我慢なんてできないくらい好きなんです！』

　　　　　　　　……すきすきすき…
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　…我慢できない……

アイラの正真正銘の嘘の無い言葉。
自分の本心に嘘を吐かずこんなに恥ずかしいセリフを言える人間がどれだけいるだろうか。
こんな事を言われては、答えないわけにもいかなくなってしまうではないか、くそ。

「アイラ。これは特別なのだぞ。私は…こういう事は好かんのだからな…」

――ちゅ

再びキスを交わす。
先程胸を揉まれていた時とは違う、中から温まって行くような快感。
心地好く広がって行く。

「はぁ…っはぁ…」

息が上がっている。
アイラがキスの雨を首筋から胸、胸から臍、そして性器へと降ろしていく。

――クチュ

「ひゃっ！」
『うむぅ。ちゃぴゅ。…うふふ。ティアさん。可愛い声』
「あふぅ…ちゃ、茶化すな…」
『気持ちよくしてあげますね。力を抜いてください』
「ぅ…。うむ…。ひぁぁ！」

――ちゅむ　ちゃぷ

アイラがわざと大きな水音を立てて私の性器に吸い付く。
アイラの心が「したい」「ほしい」と催促する様に響く。
私はまるで急かされる様に心音が上がって行くのを感じる。
いけない。
このままでは私だけが一方的に攻められてしまうではないか。

「こうしてやる！」
『うひゃあ！』

私がアイラの性器を同じように舐めてやる。

――ぴちゃぴちゃ

『うきゅぅ〜。きもちいいです〜。もっと、もっとぉ〜〜』
「…む。いちいちムードを壊すな」
『うふふ。じゃあティアさんにも「もっと」って言わせてあげますよぉ〜』

――ずにゅ

「いひぃぃ！？な、中に入って？」
『ふふふ〜。ひょひょまふひょひょままれにゃはにはひっひゃひまひはよ〜』

くぅ…。
アイラの舌が伸びて私の中に入ってくる。
そして何を言っているか分からない。

『ひょれ〜』

――つんつん　くりくり

「うひゃぁぁぁ！？！？」

――ビクビク

私の意識とは無関係に腰が跳ねた。
痺れたようになって頭が春の陽気でも貯め込んだかのようにぼやけてくる。

――ずにゅ　ぽん

『じゅる。ふふふ〜。ティアさんもやっぱりあそこは感じるんですねぇ〜』
「（ぽか〜ん）　…はっ！　お前、私に何をした！？」
『ふふふ〜。私が何の考えもなしに1週間近くもただ自慰にふけっていたと思っていたのですか？　くくく。私はこの一週間で女体の弱点を調べ上げ網羅したのですよ！』
「く、卑怯な…」
『エッチに卑怯も何もないですよぉ〜。あむ』
「ひゃふっ！？」
『次はクリトリス〜』
「ふへぇ！？そ、そこは何か変だ。あぁん！　や、やめろぉ〜」

私の抵抗など問答無用でアイラが私の敏感な所を攻めてくる。

　　　　……ティアさん…こんなに感じてくれてる…
　　　　　　　　　　　　　…嬉しい…かわいいよぅ……

アイラの歓びが私の中に流れ込んでくる。

「うれしぃ……」

アイラの感情が私の感情になる。
呆けきった頭では最早どちらの感情なのかも判らなくなってくる。

「あいらぁ…」
『てぃあさん。おやすみなさい』

――かり

「ひゃぁぁぁぁぁぁぁ！」

あ
落ちて行く
真っ白な闇の底に。
落ちて行く
昇って行く。
もう分からない。

気持ちいい。








　　　　　　　　　………これでお別れなんて…悲しいな…
　　　　　　　　　　　　　　…でも…ティアさんは私の心に答えてくれた……
　　　　　　……もう…大丈夫だから……

■作者メッセージ
付け足しの文章入れてたら更新が遅くなりました。
つぎはぎだらけなので読みにくいかもしれませんが…。
さて、アイラはどうなるのでしょう。
エロからの急転直下です