連載小説
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最終話

ん?
あれ?
また夢の中か?

ティアさん。
好きです。
一緒に
居たいです。

どうした?急に
なら、一緒に居ればいいだけの話だろう。
私はお前の味方だ。

ううん。
もうダメみたいです。

え?

私の願いはあの子が救われる事。
ティアさんはもうあの子を十分に幸せにしてあげられるお母さんになってくれましたから…。

何をばかな事を…。
え?
なんで、お前の身体、薄くなっているんだ?

私、とても幸せでした。
ほんの少しの間だったけど。
私、生まれて初めて幸せだったんです。

……消えるつもりか?

ふふ…。
出来れば消えたくなかったです。
でも…もうこれでお仕舞い…

お前は勝手な奴だな。

はい
私はわがままなんです。
そんな私のわがまま、聞いてくれてありがとうございました。

………

ティアさん
大好きです
リアンを、よろしく…





壊れそうな笑顔で
馬鹿者
そんな顔で笑っているつもりなのか?







嫌だ


え?

私はお前以上に我儘なのだ。
だから私はお前の言う事など聞いてやらん。

え?そんな事言ったって…

私はあの子が大きくなったら食ってしまうぞ?
あの子は私が育てているんだ。
さぞ美味だろう。

……ティアさん

私は残酷なドラゴンだからな。
お前たち人間の事などどうでもいいのだ。
ふふふ。どうやらお前は騙されていたらしい。

ティアさん…。
そんな泣き顔で言っても、全然だめですよ。
嘘が下手なんだから…。

泣いてなどいない!
私はドラゴンだ!
あんな赤子など一口でぺロリだぞ!
だからお前が見張ってないとあの子はいずれ私の腹の中だ!

ティアさん
ありがとうございました。
あなたは私の知る中で、一番強くて、一番優しい人でした。
もっと
もっと早くあなたに会いたかった…

アイラ!
逃げるのか!?
あの子はどうするんだ!?
私一人ではあの子が大きくなったらどうすればいいのか分からんではないか!
私にはお前の助けが必要だ!

………………

あいら?

………

アイラ……







目覚めた時、そこにあのゴーストの姿は無かった。
頭の中に呼びかけてみても判事は無かった。
ただ、そこに合ったのは、さびしげな洞窟の中に眠る、我が子の姿だけだった。































あれからずいぶんと日が過ぎた。

「だぁ〜。あぁ〜」
「ふふふ。ずいぶんとハイハイも上手くなったな。いい子だ。立てる様になったら武術も教えてやらねばな。うむ。リアンは私の子だ。そこらの魔物では勝てぬぐらいに強くなってもらわねば困る」
「あむ〜?」
「ふふ。安心しろ。私はお前の母だ。お前は私の子である限り、絶対に最高に幸せな人生を歩ませてやるからな」

リアンを抱き抱え、話しかける。

「ふふ。ずいぶんと重くなったな。いいぞ。その内私を見下ろす程の大男になるのだ。そして誰よりも強く、誰よりも賢く、そして、誰よりも優しくなれ」
「あう〜。まぁ〜ま〜」
「そうだぞ。私がお前の母だ」
「だ〜ぶ〜!」
「ん?違うのか?」
「まんま〜」
「ああ。飯か。わかった、待ってろ」

私が離乳食を持ってこようと立ち上がる

「あむ〜〜!」
「ふひゃっ!?あ、ちょ。お前、いつまで私の乳を飲む気だ?全然乳離れせんではないか…」

リアンは私の服をずらして乳にしゃぶりついた。
まったく…。
などと云いつつも、嬉しくてついつい母乳を与えてしまう。
まったく、困ったものだ。
いや
決して私が甘やかしているわけではない。
リアンが可愛いからいけないのだ。

             ……あぁぅ……

「ん?空耳かぁ?(棒)」
「んく…あむ…ちゅぱ! けふ…」
「ふふふ。相変わらず良い飲みっぷりだな。まったく。たまには離乳食も食うのだぞ」
「むぅ〜。ヤッ!」
「そういうな。あれも多分おいしいのだぞ?」
「ヤァ!ま〜ま〜」
「むむ…。こっちも行くのか…。その内私一人の乳では足りなくなりそうだな…」

リアンが反対側の乳房にもむしゃぶりついた。

「ひゃふぅ!こら。あまり揉むな…ぁん…」

          ……ピク……

「ん?何か不穏な気配が…」

               ……ビクッ!?…
                 …ききき、気のせいですよぉ〜……

「む?気のせいか?なら仕方ない。おかしいなぁ。確かに私の中から怪しげな気配を感じたんだが…」
「ちゅぱ。はふ〜。 すぅ…すぅ…」
「む。おっぱいをたらふく飲んだら即おねんねか…。なかなかに大物になりそうだ」
「すぅ…」
「ふふ。寝顔は天使だな。まったく…。起きがけに髪を引っ張りくしゃくしゃにされた時は小さな悪魔が現れたのかと思ったぞ…」

          ……くすくす…

「まったく。リアンはかわいいな。どうだアイラ?一緒に見んか?」

         ……は〜い!…
           …はっ!?……

「くすくす」

――ドロン

『もぉ〜。いつから気づいてたんですか?』
「3日も前から私の中にお前の気配を感じた。最初は嬉しくて泣きそうだったが、お前が私を驚かせようとしているようだったから黙って置いたのだ」
『む〜。せっかく復活したのに〜』
「ふふ。お帰り。アイラ」
『た…ただいま…です…』
「次はいつまで居るんだ?」
『さぁ…。でも、今度は『ティアさんと一緒に居たい』って思ってたら復活したので、たぶんティアさんが死ぬまでは』
「ふふ。そうか。ありがとな」
『ティアさん…』
「む…。しかしエッチはなしだぞ」
『Σ!? そんな〜! それじゃあ復活した意味がないじゃないですか〜』
「……何のために復活したんだ…」
『そんなの、ティアさんと一緒にラブラブイチャイチャしながらリアンを育てるために決まってるじゃないですか!』
「…………そういえば、東方のジパングと云う所に「祓い屋」と云うのがいるらしいな…」
『ふふ〜ん。もう1年もティアさんの中で眠ってたんですよ?私が祓われたらティアさんもただじゃ済まないですよ〜♪』
「Σ!なにぃ!?貴様、私に何をした!?」
『ふふ。こうしたら分かるですか〜?』

――キュリリ

「ひゃぁん!?」
『うふふ。ティアさんの心を締め付けてあげたです。もう、私を払うにはティアさんの心ごと取り除かないと駄目ですね〜』
「くぅ…貴様…何と言う事を…」
『だって、ティアさんの心が、私の事、「ここにいていいよ」ってずっと護ってくれてたんですもん。そしたら、私の魂、ティアさんと混ざっちゃって…』
「む…」
『ティアさん。ありがとうございます』
「ふん! 知らん。私はお前なんかいなくても良かったのだ」
『ふふ〜。嘘はダメですよ。見ようと思えば、いつでもティアさんの心覗けちゃうんですから〜』
「卑怯者め!そこに直れ!」
『やですよ〜♪』


「すぅ…すぅ…」







「リアン〜今日も元気なうんちだな。いいぞ〜。今すぐきれいにしてやるからな」
『じゃあ私のも ブッ!』
「あほか」
『いてて〜。む〜。ティアさん酷いです〜』
「酷いのはお前だ。リアンが変な子に育ったらどうしてくれる!?」
『大丈夫ですよ〜。男の子はエッチなぐらいでちょうどいいんですから〜』
「私はお前をそんなふしだらな子に育てた覚えはない!」
『いたひっ!!ちょ、ユーレイでも、殴られると痛いんですよ〜?』
「当り前だ!痛くしてるからな」
『む〜。昨日もティアさんエッチしてくれなかったのに〜』
「この前してやっただろ」
『やです〜!毎日しなきゃいやです〜! じゃなきゃ、ティアさんの身体におちんちん生やしちゃいますよ?』

――むくむく

「ひぃ!?やめろ!私の身体を勝手に改造するな!」
『デデーン!な〜んちゃって〜。エクトプラズムでした〜』
「殺されるのと死ぬの、どっちがいい?」
『……死なない方向で…』
「じゃあ半殺しだな」
『ベッドで?』
「そぉい!」
『いだっ!』

まったく…。
あれ以来アイラの奴め、一層エロ化が進行している…。
リアンがこんな子に育ってしまったらどうしよう…。
それが最近の私の悩みになりつつある。

『うふふ〜。リアンかわいいなぁ〜。いいこいいこ〜』
「ふふ。可愛いのは当たり前だ。私達の子だからな」
『です〜。でも、触れないのがちょっと残念です〜』
「ほら。おいで。私の身体を貸してやろ」
『わ〜い』

しかし、流石のアイラもリアンを可愛がる時だけは、正気に戻るようだ。

           ……ふふ〜…幸せだな〜……
         ……ああ…リアンにはもっと幸せになってもらわねばな…
                …はいっ!……















むかしむかし
とある赤子は竜に助けられました
竜は赤子を自分の子のように可愛がり
1匹と1人は幸せに暮らしました
永遠の生きる竜にとっての僅かな暇つぶしなのか
それとも、大きくなった所を食べるつもりなのか
それは誰にも分かりません
でも、ある人はそれを見てこう言いました
「そこには世界一の母親と、世界一幸せな男の子がいたよ」

10/11/08 03:17更新 / ひつじ
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■作者メッセージ
あ、急展開で無理やりラストにこじつけたわけじゃないです
たぶん違います
きっと違います
おそらく違います
アバウト違います
まぁ、最終的にはこんな感じ。
うん
めでたしめでたし…

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