三位一体 三心ニ意 三者三様 三汁四菜
「わぎゃあっ!?」
別段こっそりやっていたわけではないのだけれど、すっかり寝ていると思ってた私は驚きの悲鳴を上げた。
いや、でも、よく考えたらあれだけやって起きなかったらそれはきっと寝てるんじゃなくて死んでる。
いや、むしろ、今起きたのだとしたらそれは相当に鈍い人だ。
「お、おにいちゃん。起きてたの?」
「………」
おにいちゃんは寝起きなのか、彫りの深い目を少し細めてこちらをじっと見ている。
「い、いつから起きてたの?」
「…………」
質問に答えず、ただひたすらに見つめるおにいちゃん。
「あ、あの…おにいちゃん?起きてる…んだよね?」
「………」
沈黙。
しかし、よく見るとその眠そうな目は先程よりも見開かれているように見えr
――ガバァっ
「わきゃっ!?」
心の声すら遮られ、私はおにいちゃんの太い腕で、大きな胸板で、まるでプレス機に潰されるように抱きしめられてしまった。
「もが…んごご…もごご………」
おにいちゃんの胸板に顔が押し付けられて息ができない。
喋ったり、息を吸ったりしようとすると強制的におにいちゃんの匂いが口を、鼻を、肺を満たしてしまう。
「むぐぅ〜。うむぅ〜〜」
―バシバシ
私は薄れ生きそうになる意識でおにいちゃんの脇腹あたりを軽く叩いてギブアップを宣言する。
「あ…。ごめんね」
呑気な太い声が聞こえて、
「ぷはぁ!?」
私は開放された。
「はぁ…はぁ…」
「ごめんね。いたずらがバレた子猫みたいで可愛かったから、つい」
つい、で殺されてはたまったものじゃない。
私は抗議の声をあげるために立ち上がろうとする。
――ピク
「ふぁれぇ?」
脚に力が入らない。
頭がくらくらする。
酸欠かな?
私はふらふらとおにいちゃんの膝の上でバランスを崩し、再びおにいちゃんの胸板に倒れこんでしまう。
「はふぅ…」
そして吸い込んでしまう。
おにいちゃんの匂い。
あ、これだ…。
―すぅぅぅ
私は深く深く息を吸って、おにいちゃんの匂いで肺を満たす。
―ふらぁ
なんとも言えない幸福感と朦朧感、そして気持ちよさが頭をしびれさせる。
―すりすり
私はいつの間にかおにいちゃんの胸に顔を擦り付けてその匂いを目一杯取り込んでいた。
「…ふぉ……」
頭の上で感嘆とも驚きともつかない声がしたが、私の頭のなかには入ってこなかった。
―なでなで
「はふぅん…」
頭上に心地よい刺激が降ってくる。
頭がしびれる。
心臓が飛び跳ねる。
心が幸せと気持ちいいで満たされていく。
「にゃに…これぇ……」
もう心の中で思ったことがそのまま言葉として漏れてしまった。
ふにゃふにゃと全身の力が抜けて私の身体はおにいちゃんにより深く体重をのせる。
―ぎゅぅぅ
再びおにいちゃんの太い腕が私の小さな身体に回される。
今度はさっきと違って優しく、そして右腕だけ。
左手はまだ私の頭を撫でたままだ。
私の身体はおにいちゃんの匂いで包まれて、おにいちゃんの抱擁は私の心を掴んで離さない。
なにこれ…。
気持ち良すぎる。
頭おかしくなっちゃう。
本当に猫みたいなオバカさんになっちゃいそう。
「ふにゃぁ…」
なんて馬鹿なことを思っていたら本当に猫みたいな声が漏れてしまった。
そして、私の身体を抱きしめるおにいちゃんの大きな胸板がゾクゾクと震える。
―すりすり
とうとうおにいちゃんは私の頭に頬をこすりつけ始めた。
あ、これは。
魔物になった私にはわかる。
いや、魔物じゃなくても女ならわかる。
このすりすりは女の子に対してするものじゃない。
犬や猫に対して人がするそれだ。
むぅ…。
「おにいちゃん。私、猫じゃない…」
私はできるだけ冷静に言おうと心がけていたけど、その声には明らかな不機嫌さが出てしまった。
「え?あ。ごめんね。小さくて可愛くて…我慢できなくて」
これで私に欲情してたら手遅れな変態さんだ。
でも、そんな危ないセリフを吐きながらもおにいちゃんは全然興奮していない。
いや、たしかに子供のように、少年というよりは、可愛いぬいぐるみをプレゼントされた少女のように目を輝かせてはいるけれど、その興奮は性的な興奮では全くなさそうだ。
その証拠にお兄ちゃんは全く気づいてないけれど、私が服を切り取ったせいで外に投げ出されているおちんちんはもう既に力を失っている。
失ってもこの大きさ…。
こんなの、人間の女の人じゃ相手にできないんじゃないの?
「おにいちゃん。私、こう見えても大人の女なんだけど?」
「?」
予想はしてたけど、おにいちゃんは純粋そうな瞳に純粋な疑問符を浮かべた。
「いや、だから、私もう34歳なの」
私が“私”の年齢を告げるとおにいちゃんの表情が疑問符を浮かべたまま固まった。
そして、数秒経って、
「っ!?!?!?!?」
“っ!?!?!?!?”
その場に居た“私“以外の皆が突然ひどく驚いた。
この“以外”には私達も含まれる。
あれ?言ってなかった?
“私”、34歳だよ。
わたしさん じゅうよんさい だよ。
“十四歳にも見えんわい!”
心の中で“ワシ”のツッコミまで聞こえた。
さすがの両親も私が外見通りの年齢なら、そんな小さな娘を他所に預けたりはしないよ。
今の身体より少しは大きかったけど、それでも10歳にも見られたことなかったよ?
“いや、しかし、“私”は子供だと言っておらんかったか?と言うかキャラ的にも…”
そりゃあ、私は子供だよ?大人になりたくないもん。
でも、大人にならなくても歳はとっちゃうから仕方ないんだよ。
“私”じゃなく私達の言葉を借りるなら、大人になるのを妥協して、諦めちゃったから、大人にならないんじゃないかな?
ほら、大人になると色々めんどくさそうだし。
まぁ、いっか。
「とにかく、そんな大人の私がこうやっておにいちゃんを誘ってるの。薄いワンピースを汗でビチョビチョに張り付かせて、甘いフェロモンムンムン撒き散らせて誘ってるんだよ?なのにその態度は失礼だと思わないの?」
あ、
自分で言ってて気づいてしまった。
なんだかこの言い方は説教臭い。
思った通り、おにいちゃんは姿勢を正して、叱られた子供のような体勢になっていた。
ほんと、おにいちゃんは見た目に反して子供みたいだ。
「ご、ごめんなさい」
申し訳無さそうに言うおにいちゃん。
―ズキュン
何かが私のハートを貫いた。
私の頭のなかが“かわいい”という単語でうめつくされる。
そこで大人な私は強引な方法でおにいちゃんに詰め寄ることにした。
「じゃ、じゃあ、せ、責任取ってよね」
字面だけ見ていればまるでそれはツンデレのテンプレートな文面にも見える。
しかしごめんなさい。
これはそういうのではなく、興奮しすぎて言葉に詰まってしまいました。
まぁ、いっか。
私は悪く無い。
あんな大きい図体しながら子供みたいに可愛いおにいちゃんが悪い。
少し鼻息が荒くなって、涎が垂れて、瞳孔が開いてしまっても、それは私のせいじゃない。
「う、うん。わかったよ」
おにいちゃんが素直な言葉を吐く。
―ズキュン
わたしさん じゅうよんさい の しんぞう は ふたたび うちぬかれた。
と、私が油断しきっていた次の瞬間だった。
――チュ
ふぇ?
ふぇぇぇ?
ふえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?!?
「な、何した!?何した何した!?」
私はキャラも忘れて取り乱してしまった。
「あの、君が…責任取ってって言ったから…。キスを」
ば、ばばばばばばばばばばばば
「馬鹿じゃないの馬鹿じゃないの!?き、キスなんかしたら赤ちゃんできちゃうじゃない!で、できちゃうじゃないのぉっ!!」
“Σ!?”
“私”が動揺して慌てていると、何故か私の中で私達が別な衝撃を受けていた。
しかし私にとってはそれどころではないので、無視する。
「え?キスぐらいじゃ赤ちゃんは出来ないよ?」
呑気そうな声で不思議そうな顔をしたおにいちゃんが答える。
「え?そ、そうなの?」
そのおにいちゃんの態度に私は急激に冷静さを取り戻す。
「赤ちゃんを作るにはセックスをしないといけないよ」
そして、思わぬ追い打ちに私は冷静さを通り越して顔面が熱く燃え上がり、恥ずかしくて死にそうになる。
わ、“私”は子供だから知らなくても仕方ないのよ!
“いや、さっき34歳って…”
ちちちちちちち、違うし違うし!
例え34歳だとしてもそれは34歳児だし!
私まだ子供だから知らなくても仕方ないし!
私悪くないし!
「ご、ごちゃごちゃうるさい!良いから責任取りなさい!私と子作りしないさい!!」
って、私、何を言ってるんだ!!!?
恥ずかしさを誤魔化そうとするあまり、思わぬことを口走ってしまった。
こ、子作りなんて、ど、どうしようどうしよう。
あわわわわわわ。
“いや、先程からもっとエロいことをしておったように思うのじゃが、“私”の貞操観念って、一体…”
うるさい!
フェラやオナニーぐらい誰でもするでしょ!
貴族のたしなみとして侍女に習ったわよ!
でもキスや子作りなんて、そんな恥ずかしいこと!
“うわぁ〜。その侍女、絶対に楽しんでおったのじゃ…”
え!?なに!?私騙されてたの!?
も、もしかしてフェラもオナニーも恥ずかしいことだったの!?
“そりゃぁ…のう…”
ぬがぁぁぁぁぁぁぁああ!
斬る!
きるきるキルキルキルkillkill首を斬る!
もう私のしばらくの目的が決まったわ。
あの侍女の首を斬りに行くわ!
と、私が半狂乱になっていると。
「ぷっ」
私を笑う声がした。
私は反射的にそちらを睨みつけた。
「あはははは。ごめんね。君が可愛いから、つい。そんなに睨まないでよ」
盗賊達が…盗賊のおにいちゃん達が震え上がった私の睨みを受けても意に介さずおにいちゃんは笑っていた。
“いや、先ほどのゴミどもが震えておったのはワシ等、剣があったからであって、“私“単体では普通に5歳児が怒って頬を膨らましているようにしか見えんのじゃ”
ぬあぁぁぁぁ!
ブルータス!お前もか!
まさかの私内反乱。
クーデター!?これはクーデターね!?
これが埋伏の毒…内なる敵がこんなところに。
“落ち着け”
これが落ち着いていられるか!
と、私がキャラも見失って狂乱しているところに、不意打ちのような爆弾が投げ込まれる。
「ごめんね。でも、君は魅力的な女性だと思うよ?」
―ズキューン。ドゴン、ドカン バキン ゴゴゴゴゴゴゴゴ カンカンカン シャキーン!
私の心臓は粉砕された上に巨石で均され、その上に簡素な一軒家が建った。
そんな心地だった。
そうと決まってしまっては仕方がない。
明鏡止水、質実剛健、乾坤一擲、漱石枕流。
一世一代の大勝負。 ↑
私は決心し、言葉を発した。 ?
「わ、私を貰ってください!!」
別段こっそりやっていたわけではないのだけれど、すっかり寝ていると思ってた私は驚きの悲鳴を上げた。
いや、でも、よく考えたらあれだけやって起きなかったらそれはきっと寝てるんじゃなくて死んでる。
いや、むしろ、今起きたのだとしたらそれは相当に鈍い人だ。
「お、おにいちゃん。起きてたの?」
「………」
おにいちゃんは寝起きなのか、彫りの深い目を少し細めてこちらをじっと見ている。
「い、いつから起きてたの?」
「…………」
質問に答えず、ただひたすらに見つめるおにいちゃん。
「あ、あの…おにいちゃん?起きてる…んだよね?」
「………」
沈黙。
しかし、よく見るとその眠そうな目は先程よりも見開かれているように見えr
――ガバァっ
「わきゃっ!?」
心の声すら遮られ、私はおにいちゃんの太い腕で、大きな胸板で、まるでプレス機に潰されるように抱きしめられてしまった。
「もが…んごご…もごご………」
おにいちゃんの胸板に顔が押し付けられて息ができない。
喋ったり、息を吸ったりしようとすると強制的におにいちゃんの匂いが口を、鼻を、肺を満たしてしまう。
「むぐぅ〜。うむぅ〜〜」
―バシバシ
私は薄れ生きそうになる意識でおにいちゃんの脇腹あたりを軽く叩いてギブアップを宣言する。
「あ…。ごめんね」
呑気な太い声が聞こえて、
「ぷはぁ!?」
私は開放された。
「はぁ…はぁ…」
「ごめんね。いたずらがバレた子猫みたいで可愛かったから、つい」
つい、で殺されてはたまったものじゃない。
私は抗議の声をあげるために立ち上がろうとする。
――ピク
「ふぁれぇ?」
脚に力が入らない。
頭がくらくらする。
酸欠かな?
私はふらふらとおにいちゃんの膝の上でバランスを崩し、再びおにいちゃんの胸板に倒れこんでしまう。
「はふぅ…」
そして吸い込んでしまう。
おにいちゃんの匂い。
あ、これだ…。
―すぅぅぅ
私は深く深く息を吸って、おにいちゃんの匂いで肺を満たす。
―ふらぁ
なんとも言えない幸福感と朦朧感、そして気持ちよさが頭をしびれさせる。
―すりすり
私はいつの間にかおにいちゃんの胸に顔を擦り付けてその匂いを目一杯取り込んでいた。
「…ふぉ……」
頭の上で感嘆とも驚きともつかない声がしたが、私の頭のなかには入ってこなかった。
―なでなで
「はふぅん…」
頭上に心地よい刺激が降ってくる。
頭がしびれる。
心臓が飛び跳ねる。
心が幸せと気持ちいいで満たされていく。
「にゃに…これぇ……」
もう心の中で思ったことがそのまま言葉として漏れてしまった。
ふにゃふにゃと全身の力が抜けて私の身体はおにいちゃんにより深く体重をのせる。
―ぎゅぅぅ
再びおにいちゃんの太い腕が私の小さな身体に回される。
今度はさっきと違って優しく、そして右腕だけ。
左手はまだ私の頭を撫でたままだ。
私の身体はおにいちゃんの匂いで包まれて、おにいちゃんの抱擁は私の心を掴んで離さない。
なにこれ…。
気持ち良すぎる。
頭おかしくなっちゃう。
本当に猫みたいなオバカさんになっちゃいそう。
「ふにゃぁ…」
なんて馬鹿なことを思っていたら本当に猫みたいな声が漏れてしまった。
そして、私の身体を抱きしめるおにいちゃんの大きな胸板がゾクゾクと震える。
―すりすり
とうとうおにいちゃんは私の頭に頬をこすりつけ始めた。
あ、これは。
魔物になった私にはわかる。
いや、魔物じゃなくても女ならわかる。
このすりすりは女の子に対してするものじゃない。
犬や猫に対して人がするそれだ。
むぅ…。
「おにいちゃん。私、猫じゃない…」
私はできるだけ冷静に言おうと心がけていたけど、その声には明らかな不機嫌さが出てしまった。
「え?あ。ごめんね。小さくて可愛くて…我慢できなくて」
これで私に欲情してたら手遅れな変態さんだ。
でも、そんな危ないセリフを吐きながらもおにいちゃんは全然興奮していない。
いや、たしかに子供のように、少年というよりは、可愛いぬいぐるみをプレゼントされた少女のように目を輝かせてはいるけれど、その興奮は性的な興奮では全くなさそうだ。
その証拠にお兄ちゃんは全く気づいてないけれど、私が服を切り取ったせいで外に投げ出されているおちんちんはもう既に力を失っている。
失ってもこの大きさ…。
こんなの、人間の女の人じゃ相手にできないんじゃないの?
「おにいちゃん。私、こう見えても大人の女なんだけど?」
「?」
予想はしてたけど、おにいちゃんは純粋そうな瞳に純粋な疑問符を浮かべた。
「いや、だから、私もう34歳なの」
私が“私”の年齢を告げるとおにいちゃんの表情が疑問符を浮かべたまま固まった。
そして、数秒経って、
「っ!?!?!?!?」
“っ!?!?!?!?”
その場に居た“私“以外の皆が突然ひどく驚いた。
この“以外”には私達も含まれる。
あれ?言ってなかった?
“私”、34歳だよ。
わたしさん じゅうよんさい だよ。
“十四歳にも見えんわい!”
心の中で“ワシ”のツッコミまで聞こえた。
さすがの両親も私が外見通りの年齢なら、そんな小さな娘を他所に預けたりはしないよ。
今の身体より少しは大きかったけど、それでも10歳にも見られたことなかったよ?
“いや、しかし、“私”は子供だと言っておらんかったか?と言うかキャラ的にも…”
そりゃあ、私は子供だよ?大人になりたくないもん。
でも、大人にならなくても歳はとっちゃうから仕方ないんだよ。
“私”じゃなく私達の言葉を借りるなら、大人になるのを妥協して、諦めちゃったから、大人にならないんじゃないかな?
ほら、大人になると色々めんどくさそうだし。
まぁ、いっか。
「とにかく、そんな大人の私がこうやっておにいちゃんを誘ってるの。薄いワンピースを汗でビチョビチョに張り付かせて、甘いフェロモンムンムン撒き散らせて誘ってるんだよ?なのにその態度は失礼だと思わないの?」
あ、
自分で言ってて気づいてしまった。
なんだかこの言い方は説教臭い。
思った通り、おにいちゃんは姿勢を正して、叱られた子供のような体勢になっていた。
ほんと、おにいちゃんは見た目に反して子供みたいだ。
「ご、ごめんなさい」
申し訳無さそうに言うおにいちゃん。
―ズキュン
何かが私のハートを貫いた。
私の頭のなかが“かわいい”という単語でうめつくされる。
そこで大人な私は強引な方法でおにいちゃんに詰め寄ることにした。
「じゃ、じゃあ、せ、責任取ってよね」
字面だけ見ていればまるでそれはツンデレのテンプレートな文面にも見える。
しかしごめんなさい。
これはそういうのではなく、興奮しすぎて言葉に詰まってしまいました。
まぁ、いっか。
私は悪く無い。
あんな大きい図体しながら子供みたいに可愛いおにいちゃんが悪い。
少し鼻息が荒くなって、涎が垂れて、瞳孔が開いてしまっても、それは私のせいじゃない。
「う、うん。わかったよ」
おにいちゃんが素直な言葉を吐く。
―ズキュン
わたしさん じゅうよんさい の しんぞう は ふたたび うちぬかれた。
と、私が油断しきっていた次の瞬間だった。
――チュ
ふぇ?
ふぇぇぇ?
ふえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?!?
「な、何した!?何した何した!?」
私はキャラも忘れて取り乱してしまった。
「あの、君が…責任取ってって言ったから…。キスを」
ば、ばばばばばばばばばばばば
「馬鹿じゃないの馬鹿じゃないの!?き、キスなんかしたら赤ちゃんできちゃうじゃない!で、できちゃうじゃないのぉっ!!」
“Σ!?”
“私”が動揺して慌てていると、何故か私の中で私達が別な衝撃を受けていた。
しかし私にとってはそれどころではないので、無視する。
「え?キスぐらいじゃ赤ちゃんは出来ないよ?」
呑気そうな声で不思議そうな顔をしたおにいちゃんが答える。
「え?そ、そうなの?」
そのおにいちゃんの態度に私は急激に冷静さを取り戻す。
「赤ちゃんを作るにはセックスをしないといけないよ」
そして、思わぬ追い打ちに私は冷静さを通り越して顔面が熱く燃え上がり、恥ずかしくて死にそうになる。
わ、“私”は子供だから知らなくても仕方ないのよ!
“いや、さっき34歳って…”
ちちちちちちち、違うし違うし!
例え34歳だとしてもそれは34歳児だし!
私まだ子供だから知らなくても仕方ないし!
私悪くないし!
「ご、ごちゃごちゃうるさい!良いから責任取りなさい!私と子作りしないさい!!」
って、私、何を言ってるんだ!!!?
恥ずかしさを誤魔化そうとするあまり、思わぬことを口走ってしまった。
こ、子作りなんて、ど、どうしようどうしよう。
あわわわわわわ。
“いや、先程からもっとエロいことをしておったように思うのじゃが、“私”の貞操観念って、一体…”
うるさい!
フェラやオナニーぐらい誰でもするでしょ!
貴族のたしなみとして侍女に習ったわよ!
でもキスや子作りなんて、そんな恥ずかしいこと!
“うわぁ〜。その侍女、絶対に楽しんでおったのじゃ…”
え!?なに!?私騙されてたの!?
も、もしかしてフェラもオナニーも恥ずかしいことだったの!?
“そりゃぁ…のう…”
ぬがぁぁぁぁぁぁぁああ!
斬る!
きるきるキルキルキルkillkill首を斬る!
もう私のしばらくの目的が決まったわ。
あの侍女の首を斬りに行くわ!
と、私が半狂乱になっていると。
「ぷっ」
私を笑う声がした。
私は反射的にそちらを睨みつけた。
「あはははは。ごめんね。君が可愛いから、つい。そんなに睨まないでよ」
盗賊達が…盗賊のおにいちゃん達が震え上がった私の睨みを受けても意に介さずおにいちゃんは笑っていた。
“いや、先ほどのゴミどもが震えておったのはワシ等、剣があったからであって、“私“単体では普通に5歳児が怒って頬を膨らましているようにしか見えんのじゃ”
ぬあぁぁぁぁ!
ブルータス!お前もか!
まさかの私内反乱。
クーデター!?これはクーデターね!?
これが埋伏の毒…内なる敵がこんなところに。
“落ち着け”
これが落ち着いていられるか!
と、私がキャラも見失って狂乱しているところに、不意打ちのような爆弾が投げ込まれる。
「ごめんね。でも、君は魅力的な女性だと思うよ?」
―ズキューン。ドゴン、ドカン バキン ゴゴゴゴゴゴゴゴ カンカンカン シャキーン!
私の心臓は粉砕された上に巨石で均され、その上に簡素な一軒家が建った。
そんな心地だった。
そうと決まってしまっては仕方がない。
明鏡止水、質実剛健、乾坤一擲、漱石枕流。
一世一代の大勝負。 ↑
私は決心し、言葉を発した。 ?
「わ、私を貰ってください!!」
16/07/14 08:04更新 / ひつじ
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