第七章 雨降って地交わる：竜泉秘境②
―４―
キスを終えると、呈は涼むように岩の縁に腰かけた。温泉の雫が呈の身体を煽情的に滑り落ちていく。
「……」
おれの中にこんな自分がいたのかと、自身が抱いている感情に困惑を隠しきれなかった。
潤んだ呈の紅い瞳に紅潮する頬、玉肌な首元から降りると緩やかな、しかし確かな起伏があり、頂点で淡い桃色の果実を実らせている。そこから腰元へ流麗な曲線が描かれて、蛇体との境目には未だ誰にもその奥を許したことのない秘唇がぴっちりと口を閉じていた。
呈の下半身の蛇体は湯に沈み、忙しなく泳いでいる。お湯の輝きに乱反射している彼女の蛇の鱗が足や背につるつると擦れる度に、感情の昂りが抑えようもないほどに高まっていく。
以前、一緒にお風呂に入ったときは綺麗だという感想しか抱かなかった。そっと触れることしかできないくらい綺麗で大切な宝物だと。
だけどいまは違う。
呈の身体におれはどうしようもなく感情を昂らせている。多分これが、性欲とか情欲とかそういうものなんだろう。
前は被せるように掌で呈のおっぱいに触れただけだったが、いまはどうだろう。撫でるように手を這わせ、下から揉みしだき、指で桃色の乳首を弾いて、あまつさえ乳房を舐めしゃぶりたいとさえ思ってしまっている。口の中で呈の乳首を転がして、甘噛みして味わいたいと思っている自分がいる。
「っ、はぁ、はぁはぁ……」
動悸が激しくなる。全身熱を感じるが何よりも、おれは股間の辺りに血が集まっているのを感じた。こんなのは初めてだ。
「スワローの、こんなにおっきくなってる……」
呈の呟きに、おれの股間にあるもの。つまりはペニスが、呈へと顔を上げていた。
皮は被ったまま。父さんのとは比ぶべくもないけれど、それでもいつもより数倍大きく膨らんでいた。
「え、あ、えっと、これはその」
ついしどろもどろになってしまう。初めての勃起状態におれはどうすればいいのかわからなくなってしまっていたのだ。
「嬉しいな、嬉しいな。スワローがぼくの身体で興奮したってことだよね？」
「興奮……うん……そのさ、呈の身体がすごくエッチで。なんだかさっきから、ずっと興奮が収まらないんだ」
綺麗さっぱり白状した。
おれは呈に欲情している。母さんたちがしているようなことを呈としたいと思っている。
「ねぇ、スワロー。触って……欲しいな」
呈が潤んだ瞳でおれを見つめてきて、おっぱいを差し出すように胸を張った。
生唾を飲み込む音がいやに鮮明に聞こえて、気づけばおれは呈の胸に両手を伸ばしていた。
柔らかいけど弾力のある感触が掌を包むように押し返す。指の間にちょうど呈の乳首が顔を出していた。たまらず、右手指で呈の乳首を摘まむ。コリコリとした感触で乳房と対照的に意外と硬い。
「んっ、あ、んんぅ」
呈が悩ましい声を漏らし、おれは手を止めた。痛かったのかと疑問に思ったけど、呈は首を横に振って、熱を帯びた視線をおれに浴びせてくる。
「もっと、して……ぼくのおっぱい好きに弄って……もっとエッチにして」
おねだり。そんなことを言われて、止まれるほどおれはいま冷静じゃない。
クリクリと摘まむ度に呈の乳首は硬く、尖っていった。おれは喉を鳴らす。もう理性なんて必要ない。思うがまま、おれは呈のおっぱいにしゃぶりついた。
「んあっ！ イイっ、スワローにおっぱい食べられちゃったっ！」
柔らかい食感が唇と歯を温かく出迎えてくれる。舌で探るように柔らかい乳房をなぞり、おれは呈の硬くなった乳首を見つけた。
「ちゅぅぅ、ちゅる、じゅるるるるっ」
「あんっ、ああっ、吸われて、るっ。母乳なんてでないのにぃ、スワローにおっぱい吸われてるよぉ」
どんな果実よりも甘い、蕩けてしまいそうな気分におれは陥った。本当は甘さなんてないのだと思うけれど、呈のしゃぶっていると思うと、どんなに甘くて芳醇な果実よりもおいしく感じてしまう。
顔を押し付けて、耳で空いた柔らかい胸のベッドに頭を預けながら、口ではもう片方の呈のおっぱいを吸う。夢見心地だった。舌で硬くなった乳首を転がしたり、歯で甘噛みしたり、唇で取れそうになるくらい強く吸ったり。さっきまでのおれなら決してしなかったようなことをおれはいま平気でしている。もっとしたいとさえ思っている。
「じゅるるる……ぷはっ、呈の、おっぱい、すごく甘くて、おいしい、あむ」
「あは、なんだかスワロー、赤ちゃんになった、みたいひゃんっ！？ んんっ、そんなに吸っちゃ乳首取れちゃ……でも吸うのやめないで！ 取れちゃうくらい強く吸ってぇ！」
息を吸うのも忘れて、おれは呈の柔らかいおっぱいを口にまるごと頬張り、思い切り吸った。喉の奥で呈の乳頭がこつんこつんと辺り、もっと吸ってとせがんでいるようで、おれは止まれなかった。
「じゅるるるるるっ！」
「スワロぉ……んんっ」
頭が真っ白に蕩けそうになった瞬間、さすがに息が続かずおれはおっぱいから口を離す。
ぜぇぜぇと荒い呼吸を繰り返しながら顔をあげると、呈は舌を垂らし、目尻も下げて蕩けた表情で情欲を煽る息を吐いていた。
息も絶え絶えなのはお互い様。なのに目が合った瞬間おれたちは同時に互いの口を貪った。舌を口内に這わせ、歯の裏を舐り、舌同士を絡ませる。融けて混じりそうなくらいの熱をおれたちは口内で高め合う。ぐちゅぐちゅと音を鳴らして、肉厚な長い舌におれは自分のものを巻きつけて唾液を交換し、飲み下し合う。頭が真っ白になればなるほど、おれの頭の中を呈が占めていった。呈のことしか考えられない。考えたくない。もっと呈を貪りたい。貪られたい。止まらない情欲の炎が脳髄まで焼き焦がす。
「ぷはぁっ、はぁはぁはぁ」
「んんんっ、はぁはぁはぁ」
どちらでもなく、キスは終わり、唇が離れていった。あれ以上続けていたら失神間違いなしだっただろう。
「はは」
「ふふ」
そんなになるまで続けていたことがおかしくて、でも嬉しくて、おれたちは笑いあった。
呈の笑みに変化が訪れたのはその直後。長い舌で舌なめずりをして、蠱惑的な笑みでおれの下腹部を見下ろしている。まるで獲物を見据える蛇のような縦割れの瞳に見えた。
「スワローのここ、もうはち切れそうなくらい、パンパンだねぇ」
「っ」
呈が右手と蛇体の尾先でおれのペニスの陰嚢と竿を持ち上げる。
「ぼくたち、いまからシちゃうんだね……スワローのペニスで、ぼくのオマンコを突き刺しちゃうんだよね。それとも、ぼくのオマンコがスワローのペニスを食べちゃうのかな？ もぐもぐって……」
いつもの呈らしからぬ、エッチな言葉遣いに握られたペニスがおれの意識に関わらず跳ねてしまった。
「あはっ、スワローのペニスすごいビクンビクンってしてる。熱くて脈打ってって、食べて欲しいって。あぁん、ぼくも、食べたいよ……でもオマンコで食べる前に、こっちのお口で食べて皮をムキムキしないとね」
んあっ、と呈は口を開く。人よりも倍くらい長い舌が口から垂れ、涎を滴らせた。
「っ、どこでそんなの覚えんの？」
呈のいやらしい言葉とそれを紡ぐ口に、おれの情欲の炎が燃え盛っていく。
「ふふっ、ねぇスワロー、ぼくのあそこもほぐしてくれるかな？」
呈が空いた片方の手で、自分の秘唇をツーっとなぞった。よく見ると、その亀裂から温泉の湯とは明らかに違う、透明で粘性のある液体が漏れているように見えた。
「ほら触って。こんなにも濡れてるんだよ、ぼくのオマンコ」
呈がおれの手を取って自分のものを触らせる。
「あんっ！」
指先が割れ目に触れた瞬間、呈は甲高い喘ぎ声をあげた。狭い割れ目にちゅぷっと音を立てて第一関節の半分くらいが呑み込まれる。多分、まだ膣内に入ったわけじゃない。なのに秘唇だけでおれの指に貪欲に食いついていた。軽く引き抜こうとしても決して離してくれない。
「うわ、すごい。熱くてぬるぬるで……なんだかひくひくしてる」
「うん。スワローに触られてると思うとね、嬉しくてオマンコが喜んじゃうんだ。早く、スワローの食べたいってもう言うこと聞いてくれないの」
すっかり主導権を握った呈に促されるまま、おれは温泉に足を着けたまま膝を曲げて、湯舟の縁に腰かける。呈は湯舟に浸かったまま、おれの大きくなったソレの前に顔を近づけた。
愛おしいもの、かけがえのない宝物を見つめるような瞳の呈におれは当然ながら恥ずかしさを覚えてしまう。けれども隠したいとは思わない。むしろもっと見て欲しいと思ってしまうおれは変態なのだろうか。
最初よりも幾分か大きさを増したペニスは皮が被っていたが、赤くなったお頭と小さな口をすでに覗かせていた。
「すー、はぁ～。匂い嗅ぐだけで、ぼくもう蕩けちゃいそう」
「……もう蕩けてない？」
「ふふ、まだまだこれからだよ。スワローにも蕩けてもらわないといけないんだからね」
呈が薄く横に引かれた唇から紅色の蛇をにゅるりと這い出させた。
呈はおれから視線を外さない。それでも目的地がわかっているようにまっすぐ、しかし焦らすようにゆっくりとおれの皮被りのそれへと迫ってくる。
舐められたい？ 舐められたいよね？ ほら、言ってよ。おねだり。
そんな呈の声を幻聴したおれは、もはや耐え切れずに口を開いていた。
「て、呈、早く舐めて……」
おねだりをしてしまった直後、呈の笑みが獰猛な毒蛇に変貌する。
伸ばしていた舌の先が、突如二股の本当の蛇のソレに変わったかと思った瞬間、おれのペニスの頂点に触れ、皮の下へとじゅるりと潜り込んだ。
「ッッッッ～～！？」
脳内で想像だにしない快感がスパークした。呈と目線を合わせられず、カクンと肩が震え、天上を仰いでしまう。
「じゅれろじゅるじゅるるるじゅぶじゅぶるじゅぶぶぶじゅるる」
「んあ、っッ、ぐぁ、て、て、い、んあッ！？」
涎塗れの舌がおれの皮の下を潜り、這いずり回っていく。細く二股になった舌先がおれのカリ裏と亀頭を絶え間なく舐り、こべりつく汚れをこそぎ落とすようにおれのペニスの敏感な部分を掻いていた。
早く終わって欲しい。でもこのままずっと続けて欲しい。舐めるのをやめて欲しい。でもしゃぶり続けて欲しい。快楽を感じたくない。でももっと暴力的な悦楽を味わいたい。そんな矛盾した考えが堂々巡りし、その間も呈はおれのペニスを二股の舌で苛め続けた。
「イっひゃいほう？」
呈の言葉に意識させられる。根本から熱い何かが昇りつつある感覚があった。細い管にぐつぐつと煮えたぎったドロドロの何かが出ようとつっかえる感覚が、妙に生々しく、そしてそれを開放したい欲望が、何にも勝っておれの頭を支配する。
しかし、その気持ちを言葉にしようにもあまりの快楽の暴風におれはろくに言葉を紡げない。しかし、呈はおれの内心を悟ったのだろう。心底嬉しそうな笑みをこぼして、舌を這わせるスピードを上げた。
もうすっかり皮と亀頭の間は呈の舌が埋め尽くしている。もう呈の気分次第でおれはいつでも大人のペニスへと変貌するだろう。おれは呈に支配されている。
そのことが堪らなく心地いい。
「じゃあ、イこっか？」
ちゅぷんっ、と涎の弾ける音が響いて舌が皮の中から引き抜かれる。
寂しさが来訪する、そう思う間もなく。
「スワローの初めて精液、いただきます」
呈がすぼめた唇をおれのペニスの頂点にキスするように被せた。
そして、唇の中にペニスが呑み込まれる。唇がおれの皮に引っ掛かり、その中身だけを沈めていく。
そこからは一瞬。皮をめくった唇は一気におれのペニスの根本まで沈んだ。
同時に、二股の舌がペニスの口をついばむようにこじ開けて。
「ッッッッッッ――」
声は出なかった。
押しとどめられていたドロドロの塊は、おれの尿道に快楽を与えながら頂点まで登り詰める。
そして、おれのペニスの亀頭がこつんと呈の喉奥に直撃した瞬間。
白濁の快感が弾けた。
「んんんっ！？ んぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ！？」
呈の悲鳴にも似た快楽の嬌声がこの場所に響き渡る。
あまりの快楽の暴風雨。おれは腰を引いて嵐から逃れようとするが、呈はおれの腰に腕を回し、さらにさらにもっともっととペニスを奥へ奥へ誘い、おれの脳髄に焼き付けるほどの快楽を与えてきた。
もはやまともに座っていられず、おれは呈の頭にもたれかかるように前かがみになる。それはなおのこと、呈の喉奥へとペニスを押し付けることとなるのだが、もはやこの快楽を抗うことはできやしなかった。
呈がもたらす魔性の快楽に、ただ呑み込まれ続けるしか道はなかったのだった。
そして。
「ん、んく、んぐ、んく……」
たっぷり十数秒。おれが解き放った欲望の塊を嚥下していく卑猥な音が響いた。
唇がペニスの根本をきゅうっと締め付けながら、まるで尿道に残ったものまで逃さないと言いたげに貪欲に吸い上げられながら、口が引き上げられていく。
「ッ！？」
カリに唇が引っかかった瞬間に、おれは尿道に残った精液が通過していく最後の快楽を味わわせられ、呈の唇はおれのペニスから離れていった。
おれのペニスは真っ赤に充血し、皮は完全に剥かれた状態でいま始めて外気に触れることとなったのだった。
「うふ、くちゅ、ぬちゅぬちゃ、くちゅ」
呈が口を開くと、赤いはずの口内は白濁の洪水に呑まれていた。舌がまるで精液の海に泳ぐようにいやらしく、くちゅくちゅと卑猥な音を立てながらうねっている。
おれの吐き出した精液を、まるで最高の美食を味わうように咀嚼する。恍惚な笑みを浮かべる呈は口を閉じると、ごくんと生々しい音を立ててその白濁の精液を飲み下した。
「ぷはぁ……ほらぁ、全部飲んじゃったぁ。もぉう、スワローの味、病みつきになっちゃったよぉ」
「っ、呈」
「スワローも気持ちよかった？ ぼくのエッチなお口で気持ちよくなれた？」
ああ、もうなれた。なれたに決まってる！
それどころか、全然収まりがつかない！
「わぁ……！ あれだけ出したのに、小さくなるどころ大きくなってる。じゃあ、次はぼくのオマンコで」
挿れたい。挿れたいけど。
「呈っ！」
「ふぇ！？」
おれは呈を無理矢理立ち上がらせ、彼女のオマンコの前まで湯舟に浸かった。
そして驚いている呈を無視して、そのぴっちりに閉じられた秘唇にむしゃぶりつく。
「ひゃんっ！？ スワ、ローいきなりぃ……！ さっきと逆ぅ！」
お湯に濡れた入口をおれは舌を使ってこじ開ける。掻き出せばぷしゅと音を当ててとろりとした液体が漏れ出てきた。それが舌に触れた途端、これまで味わったことのない甘さが舌を蕩けさせる。もっともっと欲しいとおれの舌は秘所を掻きまわして、液体を啜った。
「じゅるっ、れろ、じゅるるるっ、じゅぶぶる」
もはや理性など擦り切れていた。
この甘い蜜をもっと啜りたい。心行くまで堪能したい。呈の一番大切な場所をおれの口で味わい尽くしたい。そんな情欲に塗れた想いが頭を支配し、突き動かしていた。
何より、呈がそれを望んでいるということがおれの行為に拍車をかけていた。
「イイっ！ スワ、ロー！ もっと舐めてぇ、ぼくのエッチなお汁でとろとろのオマンコを、スワローの舌で掻き出してぇ！」
上擦った声で途切れさせながらも、淫乱な言葉を次々と呈は紡いでいく。
両手で呈の陰唇をくぱぁと開く。一切の穢れも侵入も許していない綺麗なサーモンピンクの秘所は、なのに淫乱に涎を滴らせている。そこを舌でなぞりながら上部に辿り着くと、ぴんと張った小さな突起に触れた。
舌で触れる感触は少し硬い。皮で包まれたソレを舌で舐め転がして剥く。
「あ、あ、あ、そこっ！ そこぉ！ ぼくの敏感なとこぉ！ クリちゃん、んひぃ！？ はっ、はっ、舐められ、ると、おかしく、なるぅっ！」
綺麗に剥いたソレを外気に触れさせる間もなく口の中へと含んだ。
直後の呈の乱れっぷりはわかりやすい。おれの頭を乱暴に掴んでオマンコに押し付け、それだけでは飽き足らず腰まで使っておれの口にオマンコをめり込ませたのだ。
息ができない。それでも構わずおれは口と舌、鼻息を鳴らして呈の秘唇、濡れそぼった膣への入り口、びんびんに勃起したクリトリスを刺激した。
「イぃぃぃいいいっ！？」
溢れ出す蜜を空気とともに音を鳴らしながら吸い飲み込んだ。
呈の嬌声を聞きながら、昂っていく彼女をさっきのおれと同じ場所へと行かせるためにクリトリスへと口を寄せる。
「あ、だ、だめっ、スワロー、そこやっちゃ、ぼ、ぼく……！」
恐れと期待の入り混じった呈の声音。視線だけ上へ向けると、これから訪れる快楽を待ち望む雌の表情があった。
おれはクリトリスに舌を這わせ、薄膜をめくり、剥き出しになってさらに勃起したその豆粒を歯で挟んだ。
「あ……」
呈の期待の眼差しが最高潮に達し。
カリッ、とおれは呈の剥き出しのクリトリスを軽く噛み潰した。
「んひぃぃぃぃぃぃぃぃッ！？」
ぶしゅわっと半透明な液体が呈のオマンコから盛大に噴き出る。びちゃびちゃと温泉に雫の波紋を広げた。
「イクぅぅぅぅぅぅぅぅぅ！！」
浴びせてくる呈の汁を顔で受け止めながら、もっと飲むために口づけて啜る。
コップ一杯じゃ足りないくらいの量を噴き出し続ける呈のオマンコは、おれだけの専用サーバー。おれの渇きを癒してくれる最高の飲み物を提供してくれる。
鼻の奥まで呈の匂いでいっぱいになり、口の中は呈の体液で満たされた。ごくごくと飲み下す度に、電気が走ったように頭が痺れる。呈のことを感じられる。
頭が解放されて、顔をオマンコから話すと、呈の股間はどろどろの白っぽい半透明の液体でしとどに濡れていた。美味しそうだった。
「はぁはぁ、ん、はぁ……んんっ、スワロー……綺麗にして、くれるの？ あ、ん。スワローの舌、優しい……温かくて、んん、丁寧に舐め舐めして、くれてるよぉ」
一滴も残したくない。全部おれのものだ。そんな気持ちだった。
最後に秘所に舌を這わせると、残っていた呈の蜜がぷしゅっと噴き出る。
飽きが来そうにない。ずっとでも舐めていられそうなくらい美味しかった。本当は味なんてほとんどしないはずなのに、呈のオマンコはおれを魅了する魔性の蜜壺だった。
おれが半ば茫然状態に陥っていると、呈が尻尾を器用に使ってリュックの中身をほじくり出していく。取り出したのはぎゅうぎゅうに圧縮された分厚めの毛布だった。呈はそれを広げて俺の後ろの岩場に敷いていくと、そこにころりと寝転がる。
僅かに朱色が差した肌に湯か汗かの雫が、呈の曲線を煽情的に滑り落ちていく。全てをさらけ出した呈の裸体が、おれの前で寝転がっていた。
「はぁはぁ、ふぅ、んんっ。ふふ……」
茫然とするおれを誘うように、呈が尾をおれの手に触れさせる。つるつるとした鱗の感触、それと対照的に蛇腹のふにふにとした多少の弾力のある柔らかい触感。
おれは湯舟から立ち上がりながら、その呈の尾を撫でつつ彼女に近づく。
「んん」
蛇の尾でもしっかりと感覚はあるようだった。
そして、岩場へと身体を乗り上げながら、指先は蛇体と人の身体の境目へ。鱗肌と人肌が混ざり合う場所を撫でると、わかりやすいくらいに呈が身体を震わせる。
人肌の沈んでいく柔らかさ、弾く感触の蛇の肌。どちらも触っていて心地いい。
もっと触っていた欲求に後ろ髪を引かれたが、おれは手を離す。そして、手と膝を岩場の毛布の上で立たせ、呈の身体の上へ乗りかかった。
呈に誘われてなったこの状況、おれが押し倒した形に見えなくもない。
呈の紅い瞳と視線が絡み合う。
「呈……なんというか、ほんっと月並みだけど、綺麗だ」
頬を撫でて、うっとりとする呈にそんな言葉を落とす。
散々舐めて舐められてのあとでこのセリフである。我ながらおかしいと思うけど、どうしても言わざるを得なかった。
呈はというと顔から真っ白なはずの耳まで赤く染めて、恥ずかし気に目を伏せる。というより、おれの下腹部を注視しているようだった。
「スワローのも、すごく逞しくて、その……美味しかったよ。ドラゴニアで食べたどんな料理よりも、ううん、ぼくが生まれてきて食べたどんな料理よりも」
「そ、それなら呈のアソコだって、美味しい汁がいっぱい出て、ずっと飲んでいたくなるくらいだったから」
「……」
「……」
何言っているんだろう、おれたち。
さっきまでの理性を焼き切った野生が不意になりを潜める。理性が盛り返してきたのだ。
「あ、う、えっと、その、シちゃう、んだよね？」
伏し目がちに呈が尋ねてくる。何を？ 本番。いわゆるセックス。
父さんと母さん、ドラゴニアのバカップル諸君が毎日のように見せつけてくるアレを、おれたちはいまからするのだ。
「……うん」
たっぷり沈黙を流しておれが紡げたのはその一言。さっきまでの変態行動と言動の数々はどこへやら、羞恥心と緊張がいまさらながらぶり返してきた。
すっげぇ、やばいことをやったんだよな、おれ。おれだけじゃなくて、呈も。
お互いの秘部に顔を埋めて、その体液を啜ったんだよな。
やばい、恥ずかしい。でも恥ずかしそうに目線を逸らす呈がまた可愛い。口元を押さえて、羞恥に耐えているようで、いままでとは違うムラムラが沸き起こる。
「い、言っておくけど、いまさらやめるなんて無しだからな」
「も、もちろん！ スワローが嫌だーって言ったって無理矢理シちゃうよ、ぼくは！」
と言いつつ、おれたちは動けないでいた。
やるべきことは単純なのに、おれのペニスを呈のオマンコに挿れる。それだけなのに緊張のせいで一歩踏み出せない。
正直、本能の赴くまま、さっきの状態で一気に突っ走りたかったというのが本音。
羞恥なんて取っ払って、呈と一緒に快楽に溺れた方が楽だったに違いない。
ただ、それでも、理性を抱いたまま、呈を求めるのも悪くない……のか？
「て、呈」
「う、うん」
すー、はー。深呼吸。
おれが呈を好きなのは間違いない。愛している。それには理性も本能もない。
理性があったって、シたいものはシたい。呈と気持ちよくなりたい。
昨日までのおれならそんなこと考えもしなかっただろうけど、いまのおれは違うのだ。
おれの全てが呈の全てを求めている。
「い、いくぞ？」
おれは呈の濡れそぼった割れ目に、皮を脱いだイチモツをあてがった。
先っぽで穴を探るように上下前後に動かす。
「ッ……！」
「んんっ！」
もうそれだけで達してしまいそうなほど気持ちがいい。呈にあれだけしゃぶられて吐き出したあとなのに。
しかし、なかなか穴が見つけられない。あれほど舐めたのに、いざ挿入となると難しかった。
「ええっと、スワロー、こ、ここ」
呈がおれのペニスを握って、自身の膣穴にあてがってくれる。照準は定まり、おれはそこで腰を下ろそうとしたのだが。
「あ」
つるんと滑りの良くなった入口にペニスは穴から逸れてしまった。
「……」
「……」
まるでコントか何かのような。
「ぷっ」
「ふふ」
おれたちは顔を見合わせて吹き出していた。初めてとは言え、あまりのテンポの悪さについおかしくなってしまった。あれだけ前戯はスムーズに言っていたのに、本番直前になってこの始末である。
ただ、これもこれで楽しかった。まだ繋がっていないけど、呈と繋がりあえている。そんな風に思えた。
「んんっ……これで、どうかな？」
呈は両手で秘唇を目いっぱい広げて、オマンコの穴を白日の下に晒す。顔を真っ赤に染め上げて、羞恥の化粧に彩られた呈をもっと見ていたくもあったけど、堪えておれはペニスを動かした。
「これなら」
膣穴の位置はさっきわかった。おれは腰を下ろし、鈴口を呈の秘唇の中の口にあてがう。
甘いキスのような軽い触れ合い。それでもここから腰を降ろせば、濃密なディープキスに変わることはお互いわかっていた。
呈をまっすぐに見据えると、彼女もおれを見つめ返してくれた。
「スワロー、ぼく、いま幸せ……だってスワローと繋がれるんだもん」
「おれもだ。呈とひとつになれるのがこんなに嬉しいと思えるなんて、最初会ったときは思わなかった」
「嬉しいな。いま、ぼくとスワローの気持ちは同じなんだね」
「うん。おれたちはずっと一緒だ」
呈の期待に膨らんだ笑みが最高潮に達すると同時に、おれは腰をゆっくりと下ろした。
ぷちり、と呈の処女膜を破る音をペニスで感じながら、しかし呈のことを気遣う余裕は一瞬で消えうせた
まるでどろどろに煮詰めたミルクに挿したかのような、熱い肉壺におれのペニスの亀頭は包まれる感覚。まだ先っぽだけ。それだけなのに、先ほど呈の口で達したときくらいの快楽がおれのペニスを集中攻撃していた。
「っはぁっ、はぁっ！」
「ひぃぅん、ひっ、ひっ、ひゅんっ！」
お互い息がまともに吸えない。さっき舐め合ったときに感じたものとはまるで比べ物にならない気持ちよさが襲い掛かっている。呈も痛みどころか快楽を耐える上擦った声を漏らしている。
これでもっと先へ進んだらどうなるんだ？ これ以上気持ちよくなれるのか？
未知なるものへの恐怖、というよりはさらなる快楽が待ち受けているという期待と悦びの方が圧倒的に勝っていた。
「ひ、ひひっ、あは、ふふっ」
「は、はは、っ、へへ」
もう笑いが込み上げてくる。呈の嬉しそうな顔はおれの鏡だ。
「あ、ああああ、あああああああああぁぁぁぁ！」
じゅぶぶと小さく音が立っているのをペニスで感じながら、狭い穴にゆっくりと沈めていく。もはや挿入というよりは抉る、と言う感じ。それくらい呈の膣穴はきつい。でも押し返そうとはしておらず、それどころかもっと奥に奥にと収縮して、貪欲に貪ろうとしている。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅふぅふぅ」
浅い息を繰り返す。息を吸う度に頭が真っ白になりそうになる。もう息も絶え絶えなのに、おれのペニスは呈のオマンコを事細かに感じていた。
「て、呈の、ヒダヒダ、や、っばい……」
「ひ、き、気持ちひい？」
頷いたつもりだけど本当に頷けたかわからない。
細かい無数のヒダが、隙間なくおれのペニスに絡みついてくる。奥へ進める度にきゅうきゅう締め付ける呈の膣でそれらヒダがおれのペニスを擦り、カリ裏をしゃぶるように吸い付いている。
「しゅごいぃ、スワローのぉ、ぐりぐりっごりごりってぼくのオマンコの肉、抉ってるぅ……！ すごく、熱くてぇ、硬くてぇ、ぼくのぉヒダヒダをぉ削ってぇ、オマンコ全部スワローのでぇ、満たひゃれるのぉっ！」
呈の蕩けた声は一層おれを昂らせていく。
「おいしいよぉ、スワローのぉおいひぃ……もっろ、ちょうらいぃ、ぼくのオマンコにひゅわろーのペニスゥ、オチンポォ、食べひゃへへぇ」
呂律の回らないほど昂る呈の膣内はまるで竜のブレスのように熱く、しかし、ワームのように包容力に長けていた。
そこは零れんばかりの蜜で溢れていて、その蜜を絡めた一本一本のヒダがおれのをさらなる奥へ誘うために、ぐちゅぐちゅに蠢く。
おれのペニスを咀嚼しもっと食べようと貪欲に貪ろうとする。
逃れられない。おれは呈に、蛇の大口に自ら飛び込み、自ら呑み込まれようと望む哀れな、しかし幸福な犠牲者になろうとしていた。
呈がもたらす最高の快楽に溺れようとしていたのだ。
「ヒュ、ワ、リョぉー……」
呈が口を開けて、長い舌をおれへと伸ばす。キスを望む呈に、ぼくに食べられてと望む呈に、おれは一考の猶予もなく飛び込んだ。
掌ほど伸びた長い二股の呈の舌をおれは咥える。そして、その舌をどんどん口の中に収めていきながら、呈の唇との距離を詰めた。ペニスをどんどん呈の奥へと沈めていくように。
ペニスにヒダが絡まるのと、口内に受け入れた呈の舌がおれの舌を犯すのとはまるで連動しているようだった。
呈の舌は涎を垂れ流し、おれの口内を呈の唾液で満たしていった。それを飲み下しながら、呈の舌におれの舌はぐるぐる巻きにされて、涎をさらに塗り込まれていく。
下の口でも上の口でもおれは呈に犯されていた。
呈の唇が間近に迫る。淡い桃色の唇に触れる。それと同時に、おれのペニスはひとつの終着点に辿り着いた。
おれと呈は、完全に混ざり合った。
呈の肩甲骨と後頭部に腕を回し、足は呈の乱れた尾に引っ掛けるように絡みつけた。呈もおれの背に腕を回して、尾を好きに乱れさせて、自身とおれに尾が絡まってしまいそうなほど適当に巻き付いている。
まるで蛇同士の性交。互いの身体の位置がわからなくなるような絡み合い方。
だけどこれで終わりじゃない。終わりなものか。
「ぐちゅれろ、むちゅるるるぐちゅれろろ、あむ、スワロー……」
呈が焦れる腰を浮かせる。奥へ辿り着いて終わりじゃない。ここからだ。
おれはゆっくりと引き抜く、キツキツの貪欲な呈のオマンコは引き抜くときこそ気持ちよかった。竿とカリ裏が削がれていく感覚が筆舌にし難い。
これを何度もおれたちは繰り返すのだ。
「じゅずずずずずずず」
呈の舌を呑み込むように吸いながら、甘い甘い唾液の蜜を飲みながら、おれは腰をギリギリまで上げ、そして、これまでのゆっくりとは違う、槌を振り下ろすような速度で一気に、奥まで挿しこんだ。
「……！？ ……！？ ……！？」
「ッッッ！？」
呈が白目を剥く。きゅうっとペニスとおれの舌が締め付けられ、快楽が一気に弾けた。
白い奔流が呈の奥へ迸った。ドプドプという音を立てて、奥の蜜穴へと注ぎ込まれていくのがわかった。
なのに。
「ひぅっ！？」
「くぅぁっ！？」
絶頂に達した。たった一突きで達した。なのに。
腰が止まらない！
「ひゅ、ヒュ、ワロ、あっ、あっ、ら、らめっ！ い、いまイッた、イッひゃからぁ！！」
キスすら続ける余裕なく、もつれた舌を垂らしながら、甘い蜜の涎を飛ばしながら、呈は快楽に塗れた抗議の声を響かせる。
「だ、め、なんだ、腰が止まらなっ、くぅっ！ て、呈、締め付け、強いっ！」
最初の比にならないくらいの締め付け。でも膣肉はドロドロに蕩けて柔らかい。縦横無尽に動かしても隙間なくヒダが絡みついておれのペニスの急所を的確に攻めてくる。
そんなキツキツで熱々の呈のオマンコを無理矢理こじ開けて、抉っていく快感は一突きごとにおれの脳を焼き焦がした。
バツンバツン、バツンバツンと腰の肉と肉がぶつかりあう甲高い音が岩場に響き、温泉の湯煙に吸い込まれていく。
「なんれぇ！？ ぼくの尻尾ぉ、スワローを離しへふれないぃぃぃ！？」
「っあ！？ おれの腰に巻き付けてッ！？」
おれの腰の動きをサポートするように、やめてという言葉とは裏腹にもっと突くことをせがむようにおれの腰に呈の尾は巻き付いて動く。
自分たちでは制御できない快楽の支配におれたちは屈してしまっていた。身体は完全に淫蕩の奴隷と化し、快楽を貪るために腰を震わせ、ペニスを屹立させ、オマンコはより雄汁を絞るために脈動している。
もはや何度、呈の子宮口とキスしたかわからない。どれだけ精液を注いでイッたかもわからない。現在進行形でその数を増やして、イキ続けている。
呈は壊れたような笑顔で歯を噛み締めながら、白目を剥いている。涎と鼻水でいつもの綺麗な顔は完全に失われ、娼婦ですら浮かべないような淫乱な表情となってしまっている。
そんな呈の顔がおれにはヤマトナデシコにしか見えなかった。
淫乱なおれだけのヤマトナデシコ。
愛しい愛しいおれの呈。
そんなことを考えられたのはほんの一瞬、すぐに快楽の渦に巻き込まれ、自分という存在が消えてしまわないように呈の身体にしがみつく。
呈の、尖った先が蒼く染まった耳におれはかぶりついた。
「ンヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ！？！？」
東の荒野全土に響くほどの呈の甲高い絶叫。
「イクイク、イクゥ、イクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！！！！」
いままでで最高の締め付けが、おれのペニスを根本から鈴口までを包み込み、そして、子宮口がおれのペニスにキスを落とした。
魂が抜けるほどの快楽が全身を駆け抜ける。
白濁の汁が、ドプドプとえぐい音を立てて、呈の子宮を侵食していく。
意識が急速に真っ白に染まっていく。それでもおれの腰は止まることなく、おれの身体は快楽を求め続けていた。
「あ、あああ……あ……あひぃぁ、あぁァああぁ、ああああああああああ」」
舌を突き出して、淫乱なアヘ顔を晒して失神する呈の横顔を見ながら、おれも意識を手放した。
意識を取り戻してもおれたちの状態は変わっていなかった。
互いに足やら尾を絡めたまま、真正面から抱き合っている状態。ただ下半身は繋がっているが、腰はもうおれの意思から離れて動いてはいなかった。
とりあえず一段落。おれの呈を貪りたい本能も満足してくれたようだった。
「……おはよ、スワロー」
呈が目尻を垂れさせながらうっとりと笑いかけてくれた。どうやらおれよりも早く気が付いていたらしい。
「どれくらい寝てた？」
「ぼくもわからないけど、でもまだ夜みたい」
呈がまるで猫のようにおれの頬に自分の頬をこすりつけてくる。
「えへへ、スワローとシちゃった」
心の底から嬉しそうに呈は声を弾ませる。
「シちゃったなぁ」
「気持ちよくなかった？」
あまり声に気持ちが乗っていないように聞こえたのかもしれない。不安そうになる呈におれは笑いかける。
「まさか。母さんたちがセックスにハマる気持ちがわかって感慨深くなってるの。まーさか、こんなに気持ちのいいもんだったなんてなぁ」
「うん。ぼくもこんなに気持ちいいものだなんて思わなかったなぁ。ぱんでもにうむってところに引きこもっちゃう人たちの気持ちがわかっちゃったよ。ずぅっとしていたいもん。時間も忘れて身体の疲れも忘れてずっとずっと」
いつかそこに行ってみるのも悪くないけど、片づけることは片づけてからだな。
「っ……」
ちょっと身をよじったら、見事にペニスが呈の膣内のヒダに擦れて気持ちいい。小さくなっているけど、このままだとまた大きくなってしまいそうだった。
「……抜いちゃう？」
呈が上目遣いで尋ねてくる。その表情は反則だ。もっとシテくれって言っている顔で、おれもシたくなるじゃないか。
「もうちょいしたら、もう一度しよう。でもその前に温泉にもう一度入っちゃわない？」
湯冷めしかねない。
「うん。よいしょよいしょ。ふぅ、えへへ。スワローと絡まりながらのお風呂は気持ちいいなぁ」
器用に尻尾を動かして温泉に再び浸かる。絡み合いながらおれが岩場の縁を背にして呈の身体の重さを感じる。呈を感じられることがいまはどうしようもなく幸せだった。
「このまま温泉の中でシちゃうのもありか」
「汚れちゃったりしないかな？」
「いや、さっき呈の身体の泥を落としたときも全然汚れなかったし、特別な湯なんじゃない？」
サラサラの砂のようなものは底にあるけれども、汚れは一切浮かんでおらず、綺麗な透明を保っている。
「そう、だね。なんだか、竜泉郷よりも濃い水の魔力……ううん、それよりももっとすごい水神様の魔力を感じる気がするよ」
「水神様って、龍のことだっけ？ 竜泉郷の宿の女将さんたち」
龍は確か呈の姿をもっとドラゴンっぽくした感じの魔物娘。竜泉郷でよく見かける。鱗などの体色は様々だったけれど。
「うん。もしかしたら近くにいたりしてね」
「あながち間違いじゃないかもな。実際、おれをここに導いたのは誰かが操作してたらしい湯気だったし」
見てたなら直接助けてくれても良かったじゃないかと思わなくもない。まぁこうして呈が無事な以上、文句どころか土下座を丸一日続けて感謝を伝えたいくらいだが。
「ん……気持ちいいなぁ、中も外も。なんだか、スワローの精液を通してぼくの中にいっぱい魔力が染み込んでくるよ。水神様のも、スワローのも」
「そういや、なんで東の荒野に向かってたの？」
ミクスがなんだかんだ言っていた気がするけど、あのときは上の空でよく覚えていない。呈が東の荒野にいるときいてすぐに駆けだしたし。
「ミクスさんにここのこと聞いて、エリューさんの歌を思い出してね。ほら、女性が竜になったってお話。ぼくもここに来て力得たら、スワローが天の柱を登るときに足手纏いにならないって思って」
「いや、あれはでも人間の女性がって話じゃなかった？ 呈はもとから魔物娘でしょ」
「……ああっ！」
いま気が付いたように愕然とする呈。自分のわかりやすい身体くらい覚えておかないと。思い込んだら本当に止まらないなぁ、呈は。
「うう……」
しょんぼりして俯く呈を愛おしく思いながら、おれは苦笑しつつ呈の頭を撫でた。
「正直、おれが言った足手纏い云々は本気じゃないから。その蛇の身体を上手く活かせば多少の地形は踏破できるし、隠密行動にも適してるし、何よりおれの士気を最大値に引き上げてくれる」
「士気？」
「うん。呈が傍にいるって思っただけでなんでもできる気がする。いやしてみせる」
「でも、ぼくも役に立ちたいよ。ついていくだけじゃいやだもん」
「まだ時間はあるんだ。呈にしかできないことはきっとあるよ。まっ、そこらはキサラギにサービスしてもらおう」
相当、呈のことを働かせてたみたいだしな。変なものはおれが掴ませたりはしない。
ようやく安心したのか、呈は笑顔になるとおれの肩に首をちょこんと乗せた。鼻歌まで聞こえて上機嫌。いいな、この感じ。本気で今度は行けるような気がする。
「あれ？ 呈、そういえばその耳」
「え？」
セックス中にも一瞬だけ気になった耳のことをおれは思い出した。呈の耳の先っぽ。そこがよく見ると蒼く染まっている。
呈の尾先がリュックから器用に手鏡を取り出して、自分の耳を見た。すぐに湯煙に曇ったようだけど、確認はできたらしく、呈が驚きに声を詰まらせている。
「おれの荷物何入ってるか知ってたの？」
「キサラギさんに装備準備してもらうために内緒で確認してたの」
悪びれるでもなく答える呈。まぁ、いいか、別に変なものは入ってないし。
それにしても耳。耳の尖った先はただ蒼く染まっているだけじゃなく、硬質な鱗で覆われているらしかった。手に触れると爪みたいに硬い。
「んんっ」
「あ、悪い、敏感？」
「もともと耳は感じるんだけど、こんなのになっても同じみたい」
さっき、最後に耳噛まれて盛大にイッてくれたもんなぁ。今後は行為の時は噛むようにしよう。そうしよう。
「うう、スワローがそこはかとない悪巧みを抱いている気がする……でも、大丈夫かな。これ、ぼく病気とかじゃないかな」
「明日にでもファリアさんに診て貰おう。まぁおれは大丈夫だと思うけどね」
魔物娘が命に関わる深刻な病気にかかったという話は聞いたことがない。エッチになる病気はあるらしいが。
「うん……」
と呈が耳を気にするようになぞっていると、おれの視線は不思議とその手首に吸い寄せられた。白と青と緑の紐を通したドラゴンオーブのブレスレット。
「て、呈、それ」
無色透明だったはずのそれが、いまではまるで飛沫をあげる海のように、燃え盛る蒼炎のように、脈動する蒼い輝きを放っていた。
「スワローにもらったブレスレット……色がついてる」
「夜伽石……」
ドラゴンオーブの別名。夫婦が濃密な魔力を発散させる激しいセックスをすることで、この石に魔力が宿ることから名づけられたもう一つの名。
まず間違いなく、スることをシたからだろう。
「まさか一回で色づくなんてなぁ」
「……」
おれの呟きが聞こえていないのか、呈は茫然とそのブレスレットを見つめていた。
さっきまでの不安なんてすっかり消し飛んで、眦が下がったかと思うとうっとりとした表情に変わる。
「最高の一日だね」
「色々あったけど、そうだな。これからずっとそうだ」
すれ違って、喧嘩して、言葉と想いをぶつけて、仲直りして、そしてセックスした。
色々あったけど、いまはこうして呈と繋がり合えている。
繋がり。ああ、そうか。まだ本当に繋がっているんだよなぁ、下半身。
「んっ、スワロー……またシたくなっちゃった？ びくんってなって大きくなってきたよ？」
「呈はもっと休んでいたい？」
「ううん、スワローに気絶するくらい、頭おかしくなるくらい犯して欲しい」
「じゃあ、呈が淫乱なヤマトナデシコになれるように頑張るよ。おれもさっきみたいに気絶するまで」
「うん。ぼくをスワロー好みのエッチな大和撫子にして」
この繋がりを得ることができた奇跡に感謝をして。
おれは再び呈に溺れることにした。
―５―
湯煙に囲まれた某所。もとい、スワローと呈が行為に勤しんでいる場所のすぐ傍の温泉。
いまなお嬌声を響かせる幼い二人の声を酒の肴にしながら、龍泉は温底に蛇の目の描かれたおちょこを傾けていた。
彼女は龍泉。ドラゴニアに竜泉郷を築き、巨大老舗旅館「竜泉苑」の大女将を務める龍であった。
自然に出来上がった岩場の温泉に浸かり、隣にはいつものように愛しい旦那様がいる。湯舟に浮くお盆の上には清酒の入ったとっくりとおちょこ。竜泉饅頭とある狸からもらったスラドラゼリーがお皿に盛られている。
こうしてふらりふらりと温泉地を巡りながら、夫としっぽりやるのが彼女の日課であった。
ただ、今日はちょっとばかり違う日常になった。
いま隣で繰り広げられているまぐわいがそれである。ここはまだ温泉宿が建っていない手付かずの温泉地帯。湯煙が周囲を覆い、視界も悪く人気はほとんどない場所だ。
しかし、少年少女はやってきた。しかも少女の方は酷い大怪我を負って。二人に気づけたのは霧に自身の魔力が滲ませていたのと、何より少年の悲痛な叫びを聞いたからだった。
全てを投げ打ってでも愛しい女性を助けたいという気持ちに応えないわけもなく、すぐに龍泉は少年を助けた。少年に少女を助けさせるため、湯煙であらゆる怪我を治す『転生の湯』に導くという形で。
そのあとの流れも全て龍泉は耳にしていた。無事、仲直りもしてしかも少年は精通、少女は大人の身体を迎えた直後のまぐわい。
酒の肴としてはこれ以上ないほどの、心が温まるどころか隣の夫と少年少女たちと同じようにまぐわいたくなるほどの熱い光景だった。
残った最後のスラドラゼリーを夫と口移しで味わいながら、自分を尋ねてきた刑部狸の女性を龍泉は思い出す。
スラドラゼリーに釣られて、わざわざ今日はここに赴くこととなったのだ。ついでに魔力もたっぷりと温泉に含ませておいて欲しいとお願いもされて。
結果としてはそのことが功をそうした。迷った二人をここに導き、自身の高濃度の水の魔力を含ませた転生の湯で少女の怪我も完治させられた。もともと自身の魔力との親和性が高い白蛇である。効果は抜群だっただろう。
刑部狸の頼み事はまるで今日こうなることがわかっていたようだった。いや、わかっていたのだろう。おそらくはこうなるよう仕向けた。
龍泉は訝しむ。だとすると奇妙だった。刑部狸は魔物娘である。企みをよくするとは言っても、さすがに怪我をさせるような真似はしない。増してや命に関わりかねないようなことは、たとえ助かるとわかりきっていてもするはずがない。
あの刑部狸の人となりは知らないが、そこだけは明言できた。
だとするなら、あの怪我はあくまで本当に事故？ 予想外の出来事？
では自分をここへ来るようお願いした目的は……。
龍泉がそこまで考えたところで、湯煙の中を進む四つの影を感じ取った。
少年少女の二人きりの世界を邪魔させるわけにもいかないので、龍泉は自分たちの温泉へと道を拓く。
「あら。これはこれは大水神様ではありませんか」
「龍泉様？ どうしてここに」
白蛇の婦人と、ワイバーンの婦人、それぞれ別の方向からどちらも夫を伴ってやってきた。
「……なるほど、そうでしたか。娘を助けていただきありがとうございました」
「息子がご迷惑をかけてすみません」
自己紹介を挟みつつ、龍泉は簡単に事情を説明する。白蛇夫婦は見た通り少女の両親で、ワイバーン夫婦は奇妙なことに少年の両親だった。しかし、養子だと説明されてすぐに納得する。
四人はそれぞれ我が子の身に起きたことを聞きつけ、すぐさま駆け付けた次第であったらしい。服は雨でびしょ濡れであった。
「リムさん。娘が大変お世話になっております。ご挨拶にもお伺いできず、このような形でお会いすることになって申し訳ありません」
「あぁ、いいのいいの。私も娘ができたみたいですっごく楽しかったから。それに真白さんが単に娘を放ったらかしにしてたんじゃないってことはわかっているし」
訪れた四人はすでに龍泉と同じ温泉に浸かっている。母同士の会話が弾んでいるようだった。弾む、というのは語弊があるかもしれないが。
「初めての娘ということもあって、私、呈をすごく甘やかしてしまったんです。家では普通ですけど、外ではすごく内気になってしまって。高い自身の妖力を上手く扱えず、他人に影響を与えてしまったこともあってより一層。一通りの制御法は教えましたが、それでも友達は全然作りませんでした」
自嘲めいた笑みを浮かべる白蛇の母。しかし、すぐに明るい表情に変わる。
「ですが、あれだけ内気だった娘がスワロー君にだけは明るく振舞って見せて。勇気を出して、好きになった男の子に振り向いてもらおうって頑張っている娘を思うと嬉しくて」
きっと邪魔をしたくなかったのだろう。
「呈の成長の妨げにならないよう、私たちは極力二人の前に姿を出さないようにしていたんです。すみません、リムさんたちに任せきりにしてしまって」
「謝らないでいいよぉ。さっき言ったように呈ちゃんといると楽しかったし、特に何もしてないし。……それに私も子育てに関してはダメダメだったしね」
ワイバーンの母が大きな翼を広げて、岩場の縁で腕枕をしてうなだれる。
「記憶のことで悩んでるスワローを助けてやれなかったもの。あの子にとって一番の答えをあげることができなかった。ただ見守ることしか……」
明るく快活そうな性格のように見えたが、そのときばかりは弱々しかった。
沈みかけた雰囲気を、龍泉はぱちゃんと水面を叩くことで払う。
二人の視線が集まったところで、龍泉は二人に微笑んで語った。
いままぐわいを続けている二人を見れば、二人の母たちの育て方は間違っていなかったと自分にはわかる、と。
「そうで、しょうか。呈はきっと自分の力で彼を好きになることができたのだと思います。私は見守っていてあげることしか……」
少女は人の愛し方を知っている。想うことを知っている。それは魔物娘という種だからだけではない。愛し合う親から学んだかけがえのない宝物なのだろう。
数多の龍の娘を持つ龍泉は確信をもって答えた。これは親が子に与えられる最大の贈り物。その娘自身を産んだ、愛し合っている二人だからこそ教えられることなのだ。
あとのことは少女自身が学んでいくべきことでもある。
「見守るだけでいい、のですか……？」
湯気のせいか、白蛇の母の目尻に雫が浮かんでいた。
龍泉は鷹揚としながらおちょこを傾け、ワイバーンの母の方へと視線を向けた。
「私は、あの子にしてあげられたことなんて、何もないですよ……むしろもらってばかり。なかなか子が授かれない私たちのもとにやってきてくれて、ずっと温かい時間をくれたんですから」
母は湯煙の先を見る。まぐわいの音は収まり、ピロートークに入っていた。
龍泉は落ち込むワイバーンの母の背をそっと優しく撫でた。抱く悲しみを洗い流すようにしながら、囁くように語り掛ける。
親の喜びは子に伝わるものだ。その喜びはきっと少年の心の拠り所となったことだろう。
「なれてたかなぁ。正直、あんまり自信ないんです。子供を持つことなんて初めてだったから」
少年が曖昧な記憶に悩まされていたとしても、それでも彼には唯一二人の親という居場所があった。自分の存在を認めてくれる、親として傍にいてくれる二人がいたからこそ、少年は道を違えずにここまで生きてこられたのだ。
なにより、白蛇の両親たちと同じように、唯一の相手を愛す方法をもう教えてあげられている。
「っ……！ ありがとうございますっ、龍泉様」
まぁ、これからは少年の一番の居場所はあの少女になるだろうけれど。
「ひどいっ！？」
茶目っ気たっぷりに言う龍泉に、大袈裟なリアクションで跳ねてみせるワイバーンの母。
しんみりしかけた空気から一転、三人はくすくすあははと笑いあった。
他三名の夫チームのことは完全に蚊帳の外に置いて。
さて、と咳払いをしながら龍泉は湯煙の一部を晴らした。もう一人、客が来ていたのだ。
あえて、二人への話が終わるまで触れずにいたがそろそろ頃合いだと龍泉は判断した。
「あれ？ キサラギさんじゃない。どうしてこんなところに？」
ワイバーンの母とは面識があるらしい。彼女は今日ここで入浴するよう頼みこんできた刑部狸であった。
困ったように眉毛を下げながら笑む刑部狸は少しばかり雰囲気が違った。
「申し訳ないっす、テーちゃんとスワッちのお父さんお母さん！」
突然の土下座だった。
「テーちゃんを唆したばっかりに、怪我させてしまったみたいで本当に申し訳なかったっす」
「えっと、というと？」
刑部狸の大まかな説明によると、彼女の主人でもあるリリムのミクスが少女を唆した結果、土砂崩れに巻き込まれたという話であった。
「本当にすいませんでしたっす！ ミクスは生憎、いまお伺いできないので先んじて自分が謝りに来させていただいた次第っす」
「まぁ私は別に怒っていないけれど。怒るべきは当人の二人だしね。一生許さないけど」
「私も過程よりは結果主義ですので。絶対に許しはしませんが、怒ってはいません」
むしろ不気味に聞こえるほどに声音を平坦にしながら、二人の母は怒っていないと告げる。
龍泉自身もある意味巻き添えを食らった形だが、二人の大切な瞬間を目撃することができたので決して怒ってはいない。怪我のことも運が悪かった話だろう。運が悪かった、で済ませられるかどうかはそれこそ当人次第でそこに自分が入る余地はないからだ。
ただ、唆した張本人であるリリムがこの場にいない理由が何か聞かなくては気が済まない。
そのことを尋ねると刑部狸は苦笑しながら、目を泳がせた。言うべきかどうか、迷っている風だったので、数多の龍としての母なる魔力を軽く解き放ってみる。
グランドワームの配下であったドラゴンの威圧は受け流せても、さすがにグランドワームと同格と思われる龍の母のソレは受け流せなかったらしい。
面食らったように背筋をピンと伸ばした刑部狸は、トレードマークとも言える笑みを綺麗さっぱり消し去って答えた。
「デオノーラ様よりお説教を賜っております！ っす！」
ひどく納得した。この分だと実際に謝罪に来るのは明日以降だろう。
「……会いに来てもあまり口うるさく言うのはやめておきましょ」
「デオノーラ……ドラゴニアの女王様でしたか。そのお方直々にお説教を受けているのであれば、私たちから言うことはないかもしれませんね」
納得した二人に刑部狸がほっと息をついた。先ほどまで放っていた竜すら射殺さんばかりの殺気は、龍泉でも肌が痛く感じるほどだった。我が子を想う気持ちはそれほどなのだろう。自分と同じように。
「……それでですねぇ。ちょーっと不躾なんですけどもぉ」
調子を取り戻したらしい刑部狸が、企みを抱いた笑みを浮かべながら手を揉む。
「皆さんに協力して欲しいことがあるんっす」
目を瞬かせる二人の母に、刑部狸は言った。
龍泉はその言葉の裏に、彼女の主人であるリリムの影を垣間見る。
「天の柱の頂上を目指す、スワッちとテーちゃんのためのお祭りの準備を手伝っていただけないっすか？」
キスを終えると、呈は涼むように岩の縁に腰かけた。温泉の雫が呈の身体を煽情的に滑り落ちていく。
「……」
おれの中にこんな自分がいたのかと、自身が抱いている感情に困惑を隠しきれなかった。
潤んだ呈の紅い瞳に紅潮する頬、玉肌な首元から降りると緩やかな、しかし確かな起伏があり、頂点で淡い桃色の果実を実らせている。そこから腰元へ流麗な曲線が描かれて、蛇体との境目には未だ誰にもその奥を許したことのない秘唇がぴっちりと口を閉じていた。
呈の下半身の蛇体は湯に沈み、忙しなく泳いでいる。お湯の輝きに乱反射している彼女の蛇の鱗が足や背につるつると擦れる度に、感情の昂りが抑えようもないほどに高まっていく。
以前、一緒にお風呂に入ったときは綺麗だという感想しか抱かなかった。そっと触れることしかできないくらい綺麗で大切な宝物だと。
だけどいまは違う。
呈の身体におれはどうしようもなく感情を昂らせている。多分これが、性欲とか情欲とかそういうものなんだろう。
前は被せるように掌で呈のおっぱいに触れただけだったが、いまはどうだろう。撫でるように手を這わせ、下から揉みしだき、指で桃色の乳首を弾いて、あまつさえ乳房を舐めしゃぶりたいとさえ思ってしまっている。口の中で呈の乳首を転がして、甘噛みして味わいたいと思っている自分がいる。
「っ、はぁ、はぁはぁ……」
動悸が激しくなる。全身熱を感じるが何よりも、おれは股間の辺りに血が集まっているのを感じた。こんなのは初めてだ。
「スワローの、こんなにおっきくなってる……」
呈の呟きに、おれの股間にあるもの。つまりはペニスが、呈へと顔を上げていた。
皮は被ったまま。父さんのとは比ぶべくもないけれど、それでもいつもより数倍大きく膨らんでいた。
「え、あ、えっと、これはその」
ついしどろもどろになってしまう。初めての勃起状態におれはどうすればいいのかわからなくなってしまっていたのだ。
「嬉しいな、嬉しいな。スワローがぼくの身体で興奮したってことだよね？」
「興奮……うん……そのさ、呈の身体がすごくエッチで。なんだかさっきから、ずっと興奮が収まらないんだ」
綺麗さっぱり白状した。
おれは呈に欲情している。母さんたちがしているようなことを呈としたいと思っている。
「ねぇ、スワロー。触って……欲しいな」
呈が潤んだ瞳でおれを見つめてきて、おっぱいを差し出すように胸を張った。
生唾を飲み込む音がいやに鮮明に聞こえて、気づけばおれは呈の胸に両手を伸ばしていた。
柔らかいけど弾力のある感触が掌を包むように押し返す。指の間にちょうど呈の乳首が顔を出していた。たまらず、右手指で呈の乳首を摘まむ。コリコリとした感触で乳房と対照的に意外と硬い。
「んっ、あ、んんぅ」
呈が悩ましい声を漏らし、おれは手を止めた。痛かったのかと疑問に思ったけど、呈は首を横に振って、熱を帯びた視線をおれに浴びせてくる。
「もっと、して……ぼくのおっぱい好きに弄って……もっとエッチにして」
おねだり。そんなことを言われて、止まれるほどおれはいま冷静じゃない。
クリクリと摘まむ度に呈の乳首は硬く、尖っていった。おれは喉を鳴らす。もう理性なんて必要ない。思うがまま、おれは呈のおっぱいにしゃぶりついた。
「んあっ！ イイっ、スワローにおっぱい食べられちゃったっ！」
柔らかい食感が唇と歯を温かく出迎えてくれる。舌で探るように柔らかい乳房をなぞり、おれは呈の硬くなった乳首を見つけた。
「ちゅぅぅ、ちゅる、じゅるるるるっ」
「あんっ、ああっ、吸われて、るっ。母乳なんてでないのにぃ、スワローにおっぱい吸われてるよぉ」
どんな果実よりも甘い、蕩けてしまいそうな気分におれは陥った。本当は甘さなんてないのだと思うけれど、呈のしゃぶっていると思うと、どんなに甘くて芳醇な果実よりもおいしく感じてしまう。
顔を押し付けて、耳で空いた柔らかい胸のベッドに頭を預けながら、口ではもう片方の呈のおっぱいを吸う。夢見心地だった。舌で硬くなった乳首を転がしたり、歯で甘噛みしたり、唇で取れそうになるくらい強く吸ったり。さっきまでのおれなら決してしなかったようなことをおれはいま平気でしている。もっとしたいとさえ思っている。
「じゅるるる……ぷはっ、呈の、おっぱい、すごく甘くて、おいしい、あむ」
「あは、なんだかスワロー、赤ちゃんになった、みたいひゃんっ！？ んんっ、そんなに吸っちゃ乳首取れちゃ……でも吸うのやめないで！ 取れちゃうくらい強く吸ってぇ！」
息を吸うのも忘れて、おれは呈の柔らかいおっぱいを口にまるごと頬張り、思い切り吸った。喉の奥で呈の乳頭がこつんこつんと辺り、もっと吸ってとせがんでいるようで、おれは止まれなかった。
「じゅるるるるるっ！」
「スワロぉ……んんっ」
頭が真っ白に蕩けそうになった瞬間、さすがに息が続かずおれはおっぱいから口を離す。
ぜぇぜぇと荒い呼吸を繰り返しながら顔をあげると、呈は舌を垂らし、目尻も下げて蕩けた表情で情欲を煽る息を吐いていた。
息も絶え絶えなのはお互い様。なのに目が合った瞬間おれたちは同時に互いの口を貪った。舌を口内に這わせ、歯の裏を舐り、舌同士を絡ませる。融けて混じりそうなくらいの熱をおれたちは口内で高め合う。ぐちゅぐちゅと音を鳴らして、肉厚な長い舌におれは自分のものを巻きつけて唾液を交換し、飲み下し合う。頭が真っ白になればなるほど、おれの頭の中を呈が占めていった。呈のことしか考えられない。考えたくない。もっと呈を貪りたい。貪られたい。止まらない情欲の炎が脳髄まで焼き焦がす。
「ぷはぁっ、はぁはぁはぁ」
「んんんっ、はぁはぁはぁ」
どちらでもなく、キスは終わり、唇が離れていった。あれ以上続けていたら失神間違いなしだっただろう。
「はは」
「ふふ」
そんなになるまで続けていたことがおかしくて、でも嬉しくて、おれたちは笑いあった。
呈の笑みに変化が訪れたのはその直後。長い舌で舌なめずりをして、蠱惑的な笑みでおれの下腹部を見下ろしている。まるで獲物を見据える蛇のような縦割れの瞳に見えた。
「スワローのここ、もうはち切れそうなくらい、パンパンだねぇ」
「っ」
呈が右手と蛇体の尾先でおれのペニスの陰嚢と竿を持ち上げる。
「ぼくたち、いまからシちゃうんだね……スワローのペニスで、ぼくのオマンコを突き刺しちゃうんだよね。それとも、ぼくのオマンコがスワローのペニスを食べちゃうのかな？ もぐもぐって……」
いつもの呈らしからぬ、エッチな言葉遣いに握られたペニスがおれの意識に関わらず跳ねてしまった。
「あはっ、スワローのペニスすごいビクンビクンってしてる。熱くて脈打ってって、食べて欲しいって。あぁん、ぼくも、食べたいよ……でもオマンコで食べる前に、こっちのお口で食べて皮をムキムキしないとね」
んあっ、と呈は口を開く。人よりも倍くらい長い舌が口から垂れ、涎を滴らせた。
「っ、どこでそんなの覚えんの？」
呈のいやらしい言葉とそれを紡ぐ口に、おれの情欲の炎が燃え盛っていく。
「ふふっ、ねぇスワロー、ぼくのあそこもほぐしてくれるかな？」
呈が空いた片方の手で、自分の秘唇をツーっとなぞった。よく見ると、その亀裂から温泉の湯とは明らかに違う、透明で粘性のある液体が漏れているように見えた。
「ほら触って。こんなにも濡れてるんだよ、ぼくのオマンコ」
呈がおれの手を取って自分のものを触らせる。
「あんっ！」
指先が割れ目に触れた瞬間、呈は甲高い喘ぎ声をあげた。狭い割れ目にちゅぷっと音を立てて第一関節の半分くらいが呑み込まれる。多分、まだ膣内に入ったわけじゃない。なのに秘唇だけでおれの指に貪欲に食いついていた。軽く引き抜こうとしても決して離してくれない。
「うわ、すごい。熱くてぬるぬるで……なんだかひくひくしてる」
「うん。スワローに触られてると思うとね、嬉しくてオマンコが喜んじゃうんだ。早く、スワローの食べたいってもう言うこと聞いてくれないの」
すっかり主導権を握った呈に促されるまま、おれは温泉に足を着けたまま膝を曲げて、湯舟の縁に腰かける。呈は湯舟に浸かったまま、おれの大きくなったソレの前に顔を近づけた。
愛おしいもの、かけがえのない宝物を見つめるような瞳の呈におれは当然ながら恥ずかしさを覚えてしまう。けれども隠したいとは思わない。むしろもっと見て欲しいと思ってしまうおれは変態なのだろうか。
最初よりも幾分か大きさを増したペニスは皮が被っていたが、赤くなったお頭と小さな口をすでに覗かせていた。
「すー、はぁ～。匂い嗅ぐだけで、ぼくもう蕩けちゃいそう」
「……もう蕩けてない？」
「ふふ、まだまだこれからだよ。スワローにも蕩けてもらわないといけないんだからね」
呈が薄く横に引かれた唇から紅色の蛇をにゅるりと這い出させた。
呈はおれから視線を外さない。それでも目的地がわかっているようにまっすぐ、しかし焦らすようにゆっくりとおれの皮被りのそれへと迫ってくる。
舐められたい？ 舐められたいよね？ ほら、言ってよ。おねだり。
そんな呈の声を幻聴したおれは、もはや耐え切れずに口を開いていた。
「て、呈、早く舐めて……」
おねだりをしてしまった直後、呈の笑みが獰猛な毒蛇に変貌する。
伸ばしていた舌の先が、突如二股の本当の蛇のソレに変わったかと思った瞬間、おれのペニスの頂点に触れ、皮の下へとじゅるりと潜り込んだ。
「ッッッッ～～！？」
脳内で想像だにしない快感がスパークした。呈と目線を合わせられず、カクンと肩が震え、天上を仰いでしまう。
「じゅれろじゅるじゅるるるじゅぶじゅぶるじゅぶぶぶじゅるる」
「んあ、っッ、ぐぁ、て、て、い、んあッ！？」
涎塗れの舌がおれの皮の下を潜り、這いずり回っていく。細く二股になった舌先がおれのカリ裏と亀頭を絶え間なく舐り、こべりつく汚れをこそぎ落とすようにおれのペニスの敏感な部分を掻いていた。
早く終わって欲しい。でもこのままずっと続けて欲しい。舐めるのをやめて欲しい。でもしゃぶり続けて欲しい。快楽を感じたくない。でももっと暴力的な悦楽を味わいたい。そんな矛盾した考えが堂々巡りし、その間も呈はおれのペニスを二股の舌で苛め続けた。
「イっひゃいほう？」
呈の言葉に意識させられる。根本から熱い何かが昇りつつある感覚があった。細い管にぐつぐつと煮えたぎったドロドロの何かが出ようとつっかえる感覚が、妙に生々しく、そしてそれを開放したい欲望が、何にも勝っておれの頭を支配する。
しかし、その気持ちを言葉にしようにもあまりの快楽の暴風におれはろくに言葉を紡げない。しかし、呈はおれの内心を悟ったのだろう。心底嬉しそうな笑みをこぼして、舌を這わせるスピードを上げた。
もうすっかり皮と亀頭の間は呈の舌が埋め尽くしている。もう呈の気分次第でおれはいつでも大人のペニスへと変貌するだろう。おれは呈に支配されている。
そのことが堪らなく心地いい。
「じゃあ、イこっか？」
ちゅぷんっ、と涎の弾ける音が響いて舌が皮の中から引き抜かれる。
寂しさが来訪する、そう思う間もなく。
「スワローの初めて精液、いただきます」
呈がすぼめた唇をおれのペニスの頂点にキスするように被せた。
そして、唇の中にペニスが呑み込まれる。唇がおれの皮に引っ掛かり、その中身だけを沈めていく。
そこからは一瞬。皮をめくった唇は一気におれのペニスの根本まで沈んだ。
同時に、二股の舌がペニスの口をついばむようにこじ開けて。
「ッッッッッッ――」
声は出なかった。
押しとどめられていたドロドロの塊は、おれの尿道に快楽を与えながら頂点まで登り詰める。
そして、おれのペニスの亀頭がこつんと呈の喉奥に直撃した瞬間。
白濁の快感が弾けた。
「んんんっ！？ んぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ！？」
呈の悲鳴にも似た快楽の嬌声がこの場所に響き渡る。
あまりの快楽の暴風雨。おれは腰を引いて嵐から逃れようとするが、呈はおれの腰に腕を回し、さらにさらにもっともっととペニスを奥へ奥へ誘い、おれの脳髄に焼き付けるほどの快楽を与えてきた。
もはやまともに座っていられず、おれは呈の頭にもたれかかるように前かがみになる。それはなおのこと、呈の喉奥へとペニスを押し付けることとなるのだが、もはやこの快楽を抗うことはできやしなかった。
呈がもたらす魔性の快楽に、ただ呑み込まれ続けるしか道はなかったのだった。
そして。
「ん、んく、んぐ、んく……」
たっぷり十数秒。おれが解き放った欲望の塊を嚥下していく卑猥な音が響いた。
唇がペニスの根本をきゅうっと締め付けながら、まるで尿道に残ったものまで逃さないと言いたげに貪欲に吸い上げられながら、口が引き上げられていく。
「ッ！？」
カリに唇が引っかかった瞬間に、おれは尿道に残った精液が通過していく最後の快楽を味わわせられ、呈の唇はおれのペニスから離れていった。
おれのペニスは真っ赤に充血し、皮は完全に剥かれた状態でいま始めて外気に触れることとなったのだった。
「うふ、くちゅ、ぬちゅぬちゃ、くちゅ」
呈が口を開くと、赤いはずの口内は白濁の洪水に呑まれていた。舌がまるで精液の海に泳ぐようにいやらしく、くちゅくちゅと卑猥な音を立てながらうねっている。
おれの吐き出した精液を、まるで最高の美食を味わうように咀嚼する。恍惚な笑みを浮かべる呈は口を閉じると、ごくんと生々しい音を立ててその白濁の精液を飲み下した。
「ぷはぁ……ほらぁ、全部飲んじゃったぁ。もぉう、スワローの味、病みつきになっちゃったよぉ」
「っ、呈」
「スワローも気持ちよかった？ ぼくのエッチなお口で気持ちよくなれた？」
ああ、もうなれた。なれたに決まってる！
それどころか、全然収まりがつかない！
「わぁ……！ あれだけ出したのに、小さくなるどころ大きくなってる。じゃあ、次はぼくのオマンコで」
挿れたい。挿れたいけど。
「呈っ！」
「ふぇ！？」
おれは呈を無理矢理立ち上がらせ、彼女のオマンコの前まで湯舟に浸かった。
そして驚いている呈を無視して、そのぴっちりに閉じられた秘唇にむしゃぶりつく。
「ひゃんっ！？ スワ、ローいきなりぃ……！ さっきと逆ぅ！」
お湯に濡れた入口をおれは舌を使ってこじ開ける。掻き出せばぷしゅと音を当ててとろりとした液体が漏れ出てきた。それが舌に触れた途端、これまで味わったことのない甘さが舌を蕩けさせる。もっともっと欲しいとおれの舌は秘所を掻きまわして、液体を啜った。
「じゅるっ、れろ、じゅるるるっ、じゅぶぶる」
もはや理性など擦り切れていた。
この甘い蜜をもっと啜りたい。心行くまで堪能したい。呈の一番大切な場所をおれの口で味わい尽くしたい。そんな情欲に塗れた想いが頭を支配し、突き動かしていた。
何より、呈がそれを望んでいるということがおれの行為に拍車をかけていた。
「イイっ！ スワ、ロー！ もっと舐めてぇ、ぼくのエッチなお汁でとろとろのオマンコを、スワローの舌で掻き出してぇ！」
上擦った声で途切れさせながらも、淫乱な言葉を次々と呈は紡いでいく。
両手で呈の陰唇をくぱぁと開く。一切の穢れも侵入も許していない綺麗なサーモンピンクの秘所は、なのに淫乱に涎を滴らせている。そこを舌でなぞりながら上部に辿り着くと、ぴんと張った小さな突起に触れた。
舌で触れる感触は少し硬い。皮で包まれたソレを舌で舐め転がして剥く。
「あ、あ、あ、そこっ！ そこぉ！ ぼくの敏感なとこぉ！ クリちゃん、んひぃ！？ はっ、はっ、舐められ、ると、おかしく、なるぅっ！」
綺麗に剥いたソレを外気に触れさせる間もなく口の中へと含んだ。
直後の呈の乱れっぷりはわかりやすい。おれの頭を乱暴に掴んでオマンコに押し付け、それだけでは飽き足らず腰まで使っておれの口にオマンコをめり込ませたのだ。
息ができない。それでも構わずおれは口と舌、鼻息を鳴らして呈の秘唇、濡れそぼった膣への入り口、びんびんに勃起したクリトリスを刺激した。
「イぃぃぃいいいっ！？」
溢れ出す蜜を空気とともに音を鳴らしながら吸い飲み込んだ。
呈の嬌声を聞きながら、昂っていく彼女をさっきのおれと同じ場所へと行かせるためにクリトリスへと口を寄せる。
「あ、だ、だめっ、スワロー、そこやっちゃ、ぼ、ぼく……！」
恐れと期待の入り混じった呈の声音。視線だけ上へ向けると、これから訪れる快楽を待ち望む雌の表情があった。
おれはクリトリスに舌を這わせ、薄膜をめくり、剥き出しになってさらに勃起したその豆粒を歯で挟んだ。
「あ……」
呈の期待の眼差しが最高潮に達し。
カリッ、とおれは呈の剥き出しのクリトリスを軽く噛み潰した。
「んひぃぃぃぃぃぃぃぃッ！？」
ぶしゅわっと半透明な液体が呈のオマンコから盛大に噴き出る。びちゃびちゃと温泉に雫の波紋を広げた。
「イクぅぅぅぅぅぅぅぅぅ！！」
浴びせてくる呈の汁を顔で受け止めながら、もっと飲むために口づけて啜る。
コップ一杯じゃ足りないくらいの量を噴き出し続ける呈のオマンコは、おれだけの専用サーバー。おれの渇きを癒してくれる最高の飲み物を提供してくれる。
鼻の奥まで呈の匂いでいっぱいになり、口の中は呈の体液で満たされた。ごくごくと飲み下す度に、電気が走ったように頭が痺れる。呈のことを感じられる。
頭が解放されて、顔をオマンコから話すと、呈の股間はどろどろの白っぽい半透明の液体でしとどに濡れていた。美味しそうだった。
「はぁはぁ、ん、はぁ……んんっ、スワロー……綺麗にして、くれるの？ あ、ん。スワローの舌、優しい……温かくて、んん、丁寧に舐め舐めして、くれてるよぉ」
一滴も残したくない。全部おれのものだ。そんな気持ちだった。
最後に秘所に舌を這わせると、残っていた呈の蜜がぷしゅっと噴き出る。
飽きが来そうにない。ずっとでも舐めていられそうなくらい美味しかった。本当は味なんてほとんどしないはずなのに、呈のオマンコはおれを魅了する魔性の蜜壺だった。
おれが半ば茫然状態に陥っていると、呈が尻尾を器用に使ってリュックの中身をほじくり出していく。取り出したのはぎゅうぎゅうに圧縮された分厚めの毛布だった。呈はそれを広げて俺の後ろの岩場に敷いていくと、そこにころりと寝転がる。
僅かに朱色が差した肌に湯か汗かの雫が、呈の曲線を煽情的に滑り落ちていく。全てをさらけ出した呈の裸体が、おれの前で寝転がっていた。
「はぁはぁ、ふぅ、んんっ。ふふ……」
茫然とするおれを誘うように、呈が尾をおれの手に触れさせる。つるつるとした鱗の感触、それと対照的に蛇腹のふにふにとした多少の弾力のある柔らかい触感。
おれは湯舟から立ち上がりながら、その呈の尾を撫でつつ彼女に近づく。
「んん」
蛇の尾でもしっかりと感覚はあるようだった。
そして、岩場へと身体を乗り上げながら、指先は蛇体と人の身体の境目へ。鱗肌と人肌が混ざり合う場所を撫でると、わかりやすいくらいに呈が身体を震わせる。
人肌の沈んでいく柔らかさ、弾く感触の蛇の肌。どちらも触っていて心地いい。
もっと触っていた欲求に後ろ髪を引かれたが、おれは手を離す。そして、手と膝を岩場の毛布の上で立たせ、呈の身体の上へ乗りかかった。
呈に誘われてなったこの状況、おれが押し倒した形に見えなくもない。
呈の紅い瞳と視線が絡み合う。
「呈……なんというか、ほんっと月並みだけど、綺麗だ」
頬を撫でて、うっとりとする呈にそんな言葉を落とす。
散々舐めて舐められてのあとでこのセリフである。我ながらおかしいと思うけど、どうしても言わざるを得なかった。
呈はというと顔から真っ白なはずの耳まで赤く染めて、恥ずかし気に目を伏せる。というより、おれの下腹部を注視しているようだった。
「スワローのも、すごく逞しくて、その……美味しかったよ。ドラゴニアで食べたどんな料理よりも、ううん、ぼくが生まれてきて食べたどんな料理よりも」
「そ、それなら呈のアソコだって、美味しい汁がいっぱい出て、ずっと飲んでいたくなるくらいだったから」
「……」
「……」
何言っているんだろう、おれたち。
さっきまでの理性を焼き切った野生が不意になりを潜める。理性が盛り返してきたのだ。
「あ、う、えっと、その、シちゃう、んだよね？」
伏し目がちに呈が尋ねてくる。何を？ 本番。いわゆるセックス。
父さんと母さん、ドラゴニアのバカップル諸君が毎日のように見せつけてくるアレを、おれたちはいまからするのだ。
「……うん」
たっぷり沈黙を流しておれが紡げたのはその一言。さっきまでの変態行動と言動の数々はどこへやら、羞恥心と緊張がいまさらながらぶり返してきた。
すっげぇ、やばいことをやったんだよな、おれ。おれだけじゃなくて、呈も。
お互いの秘部に顔を埋めて、その体液を啜ったんだよな。
やばい、恥ずかしい。でも恥ずかしそうに目線を逸らす呈がまた可愛い。口元を押さえて、羞恥に耐えているようで、いままでとは違うムラムラが沸き起こる。
「い、言っておくけど、いまさらやめるなんて無しだからな」
「も、もちろん！ スワローが嫌だーって言ったって無理矢理シちゃうよ、ぼくは！」
と言いつつ、おれたちは動けないでいた。
やるべきことは単純なのに、おれのペニスを呈のオマンコに挿れる。それだけなのに緊張のせいで一歩踏み出せない。
正直、本能の赴くまま、さっきの状態で一気に突っ走りたかったというのが本音。
羞恥なんて取っ払って、呈と一緒に快楽に溺れた方が楽だったに違いない。
ただ、それでも、理性を抱いたまま、呈を求めるのも悪くない……のか？
「て、呈」
「う、うん」
すー、はー。深呼吸。
おれが呈を好きなのは間違いない。愛している。それには理性も本能もない。
理性があったって、シたいものはシたい。呈と気持ちよくなりたい。
昨日までのおれならそんなこと考えもしなかっただろうけど、いまのおれは違うのだ。
おれの全てが呈の全てを求めている。
「い、いくぞ？」
おれは呈の濡れそぼった割れ目に、皮を脱いだイチモツをあてがった。
先っぽで穴を探るように上下前後に動かす。
「ッ……！」
「んんっ！」
もうそれだけで達してしまいそうなほど気持ちがいい。呈にあれだけしゃぶられて吐き出したあとなのに。
しかし、なかなか穴が見つけられない。あれほど舐めたのに、いざ挿入となると難しかった。
「ええっと、スワロー、こ、ここ」
呈がおれのペニスを握って、自身の膣穴にあてがってくれる。照準は定まり、おれはそこで腰を下ろそうとしたのだが。
「あ」
つるんと滑りの良くなった入口にペニスは穴から逸れてしまった。
「……」
「……」
まるでコントか何かのような。
「ぷっ」
「ふふ」
おれたちは顔を見合わせて吹き出していた。初めてとは言え、あまりのテンポの悪さについおかしくなってしまった。あれだけ前戯はスムーズに言っていたのに、本番直前になってこの始末である。
ただ、これもこれで楽しかった。まだ繋がっていないけど、呈と繋がりあえている。そんな風に思えた。
「んんっ……これで、どうかな？」
呈は両手で秘唇を目いっぱい広げて、オマンコの穴を白日の下に晒す。顔を真っ赤に染め上げて、羞恥の化粧に彩られた呈をもっと見ていたくもあったけど、堪えておれはペニスを動かした。
「これなら」
膣穴の位置はさっきわかった。おれは腰を下ろし、鈴口を呈の秘唇の中の口にあてがう。
甘いキスのような軽い触れ合い。それでもここから腰を降ろせば、濃密なディープキスに変わることはお互いわかっていた。
呈をまっすぐに見据えると、彼女もおれを見つめ返してくれた。
「スワロー、ぼく、いま幸せ……だってスワローと繋がれるんだもん」
「おれもだ。呈とひとつになれるのがこんなに嬉しいと思えるなんて、最初会ったときは思わなかった」
「嬉しいな。いま、ぼくとスワローの気持ちは同じなんだね」
「うん。おれたちはずっと一緒だ」
呈の期待に膨らんだ笑みが最高潮に達すると同時に、おれは腰をゆっくりと下ろした。
ぷちり、と呈の処女膜を破る音をペニスで感じながら、しかし呈のことを気遣う余裕は一瞬で消えうせた
まるでどろどろに煮詰めたミルクに挿したかのような、熱い肉壺におれのペニスの亀頭は包まれる感覚。まだ先っぽだけ。それだけなのに、先ほど呈の口で達したときくらいの快楽がおれのペニスを集中攻撃していた。
「っはぁっ、はぁっ！」
「ひぃぅん、ひっ、ひっ、ひゅんっ！」
お互い息がまともに吸えない。さっき舐め合ったときに感じたものとはまるで比べ物にならない気持ちよさが襲い掛かっている。呈も痛みどころか快楽を耐える上擦った声を漏らしている。
これでもっと先へ進んだらどうなるんだ？ これ以上気持ちよくなれるのか？
未知なるものへの恐怖、というよりはさらなる快楽が待ち受けているという期待と悦びの方が圧倒的に勝っていた。
「ひ、ひひっ、あは、ふふっ」
「は、はは、っ、へへ」
もう笑いが込み上げてくる。呈の嬉しそうな顔はおれの鏡だ。
「あ、ああああ、あああああああああぁぁぁぁ！」
じゅぶぶと小さく音が立っているのをペニスで感じながら、狭い穴にゆっくりと沈めていく。もはや挿入というよりは抉る、と言う感じ。それくらい呈の膣穴はきつい。でも押し返そうとはしておらず、それどころかもっと奥に奥にと収縮して、貪欲に貪ろうとしている。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅふぅふぅ」
浅い息を繰り返す。息を吸う度に頭が真っ白になりそうになる。もう息も絶え絶えなのに、おれのペニスは呈のオマンコを事細かに感じていた。
「て、呈の、ヒダヒダ、や、っばい……」
「ひ、き、気持ちひい？」
頷いたつもりだけど本当に頷けたかわからない。
細かい無数のヒダが、隙間なくおれのペニスに絡みついてくる。奥へ進める度にきゅうきゅう締め付ける呈の膣でそれらヒダがおれのペニスを擦り、カリ裏をしゃぶるように吸い付いている。
「しゅごいぃ、スワローのぉ、ぐりぐりっごりごりってぼくのオマンコの肉、抉ってるぅ……！ すごく、熱くてぇ、硬くてぇ、ぼくのぉヒダヒダをぉ削ってぇ、オマンコ全部スワローのでぇ、満たひゃれるのぉっ！」
呈の蕩けた声は一層おれを昂らせていく。
「おいしいよぉ、スワローのぉおいひぃ……もっろ、ちょうらいぃ、ぼくのオマンコにひゅわろーのペニスゥ、オチンポォ、食べひゃへへぇ」
呂律の回らないほど昂る呈の膣内はまるで竜のブレスのように熱く、しかし、ワームのように包容力に長けていた。
そこは零れんばかりの蜜で溢れていて、その蜜を絡めた一本一本のヒダがおれのをさらなる奥へ誘うために、ぐちゅぐちゅに蠢く。
おれのペニスを咀嚼しもっと食べようと貪欲に貪ろうとする。
逃れられない。おれは呈に、蛇の大口に自ら飛び込み、自ら呑み込まれようと望む哀れな、しかし幸福な犠牲者になろうとしていた。
呈がもたらす最高の快楽に溺れようとしていたのだ。
「ヒュ、ワ、リョぉー……」
呈が口を開けて、長い舌をおれへと伸ばす。キスを望む呈に、ぼくに食べられてと望む呈に、おれは一考の猶予もなく飛び込んだ。
掌ほど伸びた長い二股の呈の舌をおれは咥える。そして、その舌をどんどん口の中に収めていきながら、呈の唇との距離を詰めた。ペニスをどんどん呈の奥へと沈めていくように。
ペニスにヒダが絡まるのと、口内に受け入れた呈の舌がおれの舌を犯すのとはまるで連動しているようだった。
呈の舌は涎を垂れ流し、おれの口内を呈の唾液で満たしていった。それを飲み下しながら、呈の舌におれの舌はぐるぐる巻きにされて、涎をさらに塗り込まれていく。
下の口でも上の口でもおれは呈に犯されていた。
呈の唇が間近に迫る。淡い桃色の唇に触れる。それと同時に、おれのペニスはひとつの終着点に辿り着いた。
おれと呈は、完全に混ざり合った。
呈の肩甲骨と後頭部に腕を回し、足は呈の乱れた尾に引っ掛けるように絡みつけた。呈もおれの背に腕を回して、尾を好きに乱れさせて、自身とおれに尾が絡まってしまいそうなほど適当に巻き付いている。
まるで蛇同士の性交。互いの身体の位置がわからなくなるような絡み合い方。
だけどこれで終わりじゃない。終わりなものか。
「ぐちゅれろ、むちゅるるるぐちゅれろろ、あむ、スワロー……」
呈が焦れる腰を浮かせる。奥へ辿り着いて終わりじゃない。ここからだ。
おれはゆっくりと引き抜く、キツキツの貪欲な呈のオマンコは引き抜くときこそ気持ちよかった。竿とカリ裏が削がれていく感覚が筆舌にし難い。
これを何度もおれたちは繰り返すのだ。
「じゅずずずずずずず」
呈の舌を呑み込むように吸いながら、甘い甘い唾液の蜜を飲みながら、おれは腰をギリギリまで上げ、そして、これまでのゆっくりとは違う、槌を振り下ろすような速度で一気に、奥まで挿しこんだ。
「……！？ ……！？ ……！？」
「ッッッ！？」
呈が白目を剥く。きゅうっとペニスとおれの舌が締め付けられ、快楽が一気に弾けた。
白い奔流が呈の奥へ迸った。ドプドプという音を立てて、奥の蜜穴へと注ぎ込まれていくのがわかった。
なのに。
「ひぅっ！？」
「くぅぁっ！？」
絶頂に達した。たった一突きで達した。なのに。
腰が止まらない！
「ひゅ、ヒュ、ワロ、あっ、あっ、ら、らめっ！ い、いまイッた、イッひゃからぁ！！」
キスすら続ける余裕なく、もつれた舌を垂らしながら、甘い蜜の涎を飛ばしながら、呈は快楽に塗れた抗議の声を響かせる。
「だ、め、なんだ、腰が止まらなっ、くぅっ！ て、呈、締め付け、強いっ！」
最初の比にならないくらいの締め付け。でも膣肉はドロドロに蕩けて柔らかい。縦横無尽に動かしても隙間なくヒダが絡みついておれのペニスの急所を的確に攻めてくる。
そんなキツキツで熱々の呈のオマンコを無理矢理こじ開けて、抉っていく快感は一突きごとにおれの脳を焼き焦がした。
バツンバツン、バツンバツンと腰の肉と肉がぶつかりあう甲高い音が岩場に響き、温泉の湯煙に吸い込まれていく。
「なんれぇ！？ ぼくの尻尾ぉ、スワローを離しへふれないぃぃぃ！？」
「っあ！？ おれの腰に巻き付けてッ！？」
おれの腰の動きをサポートするように、やめてという言葉とは裏腹にもっと突くことをせがむようにおれの腰に呈の尾は巻き付いて動く。
自分たちでは制御できない快楽の支配におれたちは屈してしまっていた。身体は完全に淫蕩の奴隷と化し、快楽を貪るために腰を震わせ、ペニスを屹立させ、オマンコはより雄汁を絞るために脈動している。
もはや何度、呈の子宮口とキスしたかわからない。どれだけ精液を注いでイッたかもわからない。現在進行形でその数を増やして、イキ続けている。
呈は壊れたような笑顔で歯を噛み締めながら、白目を剥いている。涎と鼻水でいつもの綺麗な顔は完全に失われ、娼婦ですら浮かべないような淫乱な表情となってしまっている。
そんな呈の顔がおれにはヤマトナデシコにしか見えなかった。
淫乱なおれだけのヤマトナデシコ。
愛しい愛しいおれの呈。
そんなことを考えられたのはほんの一瞬、すぐに快楽の渦に巻き込まれ、自分という存在が消えてしまわないように呈の身体にしがみつく。
呈の、尖った先が蒼く染まった耳におれはかぶりついた。
「ンヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ！？！？」
東の荒野全土に響くほどの呈の甲高い絶叫。
「イクイク、イクゥ、イクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！！！！」
いままでで最高の締め付けが、おれのペニスを根本から鈴口までを包み込み、そして、子宮口がおれのペニスにキスを落とした。
魂が抜けるほどの快楽が全身を駆け抜ける。
白濁の汁が、ドプドプとえぐい音を立てて、呈の子宮を侵食していく。
意識が急速に真っ白に染まっていく。それでもおれの腰は止まることなく、おれの身体は快楽を求め続けていた。
「あ、あああ……あ……あひぃぁ、あぁァああぁ、ああああああああああ」」
舌を突き出して、淫乱なアヘ顔を晒して失神する呈の横顔を見ながら、おれも意識を手放した。
意識を取り戻してもおれたちの状態は変わっていなかった。
互いに足やら尾を絡めたまま、真正面から抱き合っている状態。ただ下半身は繋がっているが、腰はもうおれの意思から離れて動いてはいなかった。
とりあえず一段落。おれの呈を貪りたい本能も満足してくれたようだった。
「……おはよ、スワロー」
呈が目尻を垂れさせながらうっとりと笑いかけてくれた。どうやらおれよりも早く気が付いていたらしい。
「どれくらい寝てた？」
「ぼくもわからないけど、でもまだ夜みたい」
呈がまるで猫のようにおれの頬に自分の頬をこすりつけてくる。
「えへへ、スワローとシちゃった」
心の底から嬉しそうに呈は声を弾ませる。
「シちゃったなぁ」
「気持ちよくなかった？」
あまり声に気持ちが乗っていないように聞こえたのかもしれない。不安そうになる呈におれは笑いかける。
「まさか。母さんたちがセックスにハマる気持ちがわかって感慨深くなってるの。まーさか、こんなに気持ちのいいもんだったなんてなぁ」
「うん。ぼくもこんなに気持ちいいものだなんて思わなかったなぁ。ぱんでもにうむってところに引きこもっちゃう人たちの気持ちがわかっちゃったよ。ずぅっとしていたいもん。時間も忘れて身体の疲れも忘れてずっとずっと」
いつかそこに行ってみるのも悪くないけど、片づけることは片づけてからだな。
「っ……」
ちょっと身をよじったら、見事にペニスが呈の膣内のヒダに擦れて気持ちいい。小さくなっているけど、このままだとまた大きくなってしまいそうだった。
「……抜いちゃう？」
呈が上目遣いで尋ねてくる。その表情は反則だ。もっとシテくれって言っている顔で、おれもシたくなるじゃないか。
「もうちょいしたら、もう一度しよう。でもその前に温泉にもう一度入っちゃわない？」
湯冷めしかねない。
「うん。よいしょよいしょ。ふぅ、えへへ。スワローと絡まりながらのお風呂は気持ちいいなぁ」
器用に尻尾を動かして温泉に再び浸かる。絡み合いながらおれが岩場の縁を背にして呈の身体の重さを感じる。呈を感じられることがいまはどうしようもなく幸せだった。
「このまま温泉の中でシちゃうのもありか」
「汚れちゃったりしないかな？」
「いや、さっき呈の身体の泥を落としたときも全然汚れなかったし、特別な湯なんじゃない？」
サラサラの砂のようなものは底にあるけれども、汚れは一切浮かんでおらず、綺麗な透明を保っている。
「そう、だね。なんだか、竜泉郷よりも濃い水の魔力……ううん、それよりももっとすごい水神様の魔力を感じる気がするよ」
「水神様って、龍のことだっけ？ 竜泉郷の宿の女将さんたち」
龍は確か呈の姿をもっとドラゴンっぽくした感じの魔物娘。竜泉郷でよく見かける。鱗などの体色は様々だったけれど。
「うん。もしかしたら近くにいたりしてね」
「あながち間違いじゃないかもな。実際、おれをここに導いたのは誰かが操作してたらしい湯気だったし」
見てたなら直接助けてくれても良かったじゃないかと思わなくもない。まぁこうして呈が無事な以上、文句どころか土下座を丸一日続けて感謝を伝えたいくらいだが。
「ん……気持ちいいなぁ、中も外も。なんだか、スワローの精液を通してぼくの中にいっぱい魔力が染み込んでくるよ。水神様のも、スワローのも」
「そういや、なんで東の荒野に向かってたの？」
ミクスがなんだかんだ言っていた気がするけど、あのときは上の空でよく覚えていない。呈が東の荒野にいるときいてすぐに駆けだしたし。
「ミクスさんにここのこと聞いて、エリューさんの歌を思い出してね。ほら、女性が竜になったってお話。ぼくもここに来て力得たら、スワローが天の柱を登るときに足手纏いにならないって思って」
「いや、あれはでも人間の女性がって話じゃなかった？ 呈はもとから魔物娘でしょ」
「……ああっ！」
いま気が付いたように愕然とする呈。自分のわかりやすい身体くらい覚えておかないと。思い込んだら本当に止まらないなぁ、呈は。
「うう……」
しょんぼりして俯く呈を愛おしく思いながら、おれは苦笑しつつ呈の頭を撫でた。
「正直、おれが言った足手纏い云々は本気じゃないから。その蛇の身体を上手く活かせば多少の地形は踏破できるし、隠密行動にも適してるし、何よりおれの士気を最大値に引き上げてくれる」
「士気？」
「うん。呈が傍にいるって思っただけでなんでもできる気がする。いやしてみせる」
「でも、ぼくも役に立ちたいよ。ついていくだけじゃいやだもん」
「まだ時間はあるんだ。呈にしかできないことはきっとあるよ。まっ、そこらはキサラギにサービスしてもらおう」
相当、呈のことを働かせてたみたいだしな。変なものはおれが掴ませたりはしない。
ようやく安心したのか、呈は笑顔になるとおれの肩に首をちょこんと乗せた。鼻歌まで聞こえて上機嫌。いいな、この感じ。本気で今度は行けるような気がする。
「あれ？ 呈、そういえばその耳」
「え？」
セックス中にも一瞬だけ気になった耳のことをおれは思い出した。呈の耳の先っぽ。そこがよく見ると蒼く染まっている。
呈の尾先がリュックから器用に手鏡を取り出して、自分の耳を見た。すぐに湯煙に曇ったようだけど、確認はできたらしく、呈が驚きに声を詰まらせている。
「おれの荷物何入ってるか知ってたの？」
「キサラギさんに装備準備してもらうために内緒で確認してたの」
悪びれるでもなく答える呈。まぁ、いいか、別に変なものは入ってないし。
それにしても耳。耳の尖った先はただ蒼く染まっているだけじゃなく、硬質な鱗で覆われているらしかった。手に触れると爪みたいに硬い。
「んんっ」
「あ、悪い、敏感？」
「もともと耳は感じるんだけど、こんなのになっても同じみたい」
さっき、最後に耳噛まれて盛大にイッてくれたもんなぁ。今後は行為の時は噛むようにしよう。そうしよう。
「うう、スワローがそこはかとない悪巧みを抱いている気がする……でも、大丈夫かな。これ、ぼく病気とかじゃないかな」
「明日にでもファリアさんに診て貰おう。まぁおれは大丈夫だと思うけどね」
魔物娘が命に関わる深刻な病気にかかったという話は聞いたことがない。エッチになる病気はあるらしいが。
「うん……」
と呈が耳を気にするようになぞっていると、おれの視線は不思議とその手首に吸い寄せられた。白と青と緑の紐を通したドラゴンオーブのブレスレット。
「て、呈、それ」
無色透明だったはずのそれが、いまではまるで飛沫をあげる海のように、燃え盛る蒼炎のように、脈動する蒼い輝きを放っていた。
「スワローにもらったブレスレット……色がついてる」
「夜伽石……」
ドラゴンオーブの別名。夫婦が濃密な魔力を発散させる激しいセックスをすることで、この石に魔力が宿ることから名づけられたもう一つの名。
まず間違いなく、スることをシたからだろう。
「まさか一回で色づくなんてなぁ」
「……」
おれの呟きが聞こえていないのか、呈は茫然とそのブレスレットを見つめていた。
さっきまでの不安なんてすっかり消し飛んで、眦が下がったかと思うとうっとりとした表情に変わる。
「最高の一日だね」
「色々あったけど、そうだな。これからずっとそうだ」
すれ違って、喧嘩して、言葉と想いをぶつけて、仲直りして、そしてセックスした。
色々あったけど、いまはこうして呈と繋がり合えている。
繋がり。ああ、そうか。まだ本当に繋がっているんだよなぁ、下半身。
「んっ、スワロー……またシたくなっちゃった？ びくんってなって大きくなってきたよ？」
「呈はもっと休んでいたい？」
「ううん、スワローに気絶するくらい、頭おかしくなるくらい犯して欲しい」
「じゃあ、呈が淫乱なヤマトナデシコになれるように頑張るよ。おれもさっきみたいに気絶するまで」
「うん。ぼくをスワロー好みのエッチな大和撫子にして」
この繋がりを得ることができた奇跡に感謝をして。
おれは再び呈に溺れることにした。
―５―
湯煙に囲まれた某所。もとい、スワローと呈が行為に勤しんでいる場所のすぐ傍の温泉。
いまなお嬌声を響かせる幼い二人の声を酒の肴にしながら、龍泉は温底に蛇の目の描かれたおちょこを傾けていた。
彼女は龍泉。ドラゴニアに竜泉郷を築き、巨大老舗旅館「竜泉苑」の大女将を務める龍であった。
自然に出来上がった岩場の温泉に浸かり、隣にはいつものように愛しい旦那様がいる。湯舟に浮くお盆の上には清酒の入ったとっくりとおちょこ。竜泉饅頭とある狸からもらったスラドラゼリーがお皿に盛られている。
こうしてふらりふらりと温泉地を巡りながら、夫としっぽりやるのが彼女の日課であった。
ただ、今日はちょっとばかり違う日常になった。
いま隣で繰り広げられているまぐわいがそれである。ここはまだ温泉宿が建っていない手付かずの温泉地帯。湯煙が周囲を覆い、視界も悪く人気はほとんどない場所だ。
しかし、少年少女はやってきた。しかも少女の方は酷い大怪我を負って。二人に気づけたのは霧に自身の魔力が滲ませていたのと、何より少年の悲痛な叫びを聞いたからだった。
全てを投げ打ってでも愛しい女性を助けたいという気持ちに応えないわけもなく、すぐに龍泉は少年を助けた。少年に少女を助けさせるため、湯煙であらゆる怪我を治す『転生の湯』に導くという形で。
そのあとの流れも全て龍泉は耳にしていた。無事、仲直りもしてしかも少年は精通、少女は大人の身体を迎えた直後のまぐわい。
酒の肴としてはこれ以上ないほどの、心が温まるどころか隣の夫と少年少女たちと同じようにまぐわいたくなるほどの熱い光景だった。
残った最後のスラドラゼリーを夫と口移しで味わいながら、自分を尋ねてきた刑部狸の女性を龍泉は思い出す。
スラドラゼリーに釣られて、わざわざ今日はここに赴くこととなったのだ。ついでに魔力もたっぷりと温泉に含ませておいて欲しいとお願いもされて。
結果としてはそのことが功をそうした。迷った二人をここに導き、自身の高濃度の水の魔力を含ませた転生の湯で少女の怪我も完治させられた。もともと自身の魔力との親和性が高い白蛇である。効果は抜群だっただろう。
刑部狸の頼み事はまるで今日こうなることがわかっていたようだった。いや、わかっていたのだろう。おそらくはこうなるよう仕向けた。
龍泉は訝しむ。だとすると奇妙だった。刑部狸は魔物娘である。企みをよくするとは言っても、さすがに怪我をさせるような真似はしない。増してや命に関わりかねないようなことは、たとえ助かるとわかりきっていてもするはずがない。
あの刑部狸の人となりは知らないが、そこだけは明言できた。
だとするなら、あの怪我はあくまで本当に事故？ 予想外の出来事？
では自分をここへ来るようお願いした目的は……。
龍泉がそこまで考えたところで、湯煙の中を進む四つの影を感じ取った。
少年少女の二人きりの世界を邪魔させるわけにもいかないので、龍泉は自分たちの温泉へと道を拓く。
「あら。これはこれは大水神様ではありませんか」
「龍泉様？ どうしてここに」
白蛇の婦人と、ワイバーンの婦人、それぞれ別の方向からどちらも夫を伴ってやってきた。
「……なるほど、そうでしたか。娘を助けていただきありがとうございました」
「息子がご迷惑をかけてすみません」
自己紹介を挟みつつ、龍泉は簡単に事情を説明する。白蛇夫婦は見た通り少女の両親で、ワイバーン夫婦は奇妙なことに少年の両親だった。しかし、養子だと説明されてすぐに納得する。
四人はそれぞれ我が子の身に起きたことを聞きつけ、すぐさま駆け付けた次第であったらしい。服は雨でびしょ濡れであった。
「リムさん。娘が大変お世話になっております。ご挨拶にもお伺いできず、このような形でお会いすることになって申し訳ありません」
「あぁ、いいのいいの。私も娘ができたみたいですっごく楽しかったから。それに真白さんが単に娘を放ったらかしにしてたんじゃないってことはわかっているし」
訪れた四人はすでに龍泉と同じ温泉に浸かっている。母同士の会話が弾んでいるようだった。弾む、というのは語弊があるかもしれないが。
「初めての娘ということもあって、私、呈をすごく甘やかしてしまったんです。家では普通ですけど、外ではすごく内気になってしまって。高い自身の妖力を上手く扱えず、他人に影響を与えてしまったこともあってより一層。一通りの制御法は教えましたが、それでも友達は全然作りませんでした」
自嘲めいた笑みを浮かべる白蛇の母。しかし、すぐに明るい表情に変わる。
「ですが、あれだけ内気だった娘がスワロー君にだけは明るく振舞って見せて。勇気を出して、好きになった男の子に振り向いてもらおうって頑張っている娘を思うと嬉しくて」
きっと邪魔をしたくなかったのだろう。
「呈の成長の妨げにならないよう、私たちは極力二人の前に姿を出さないようにしていたんです。すみません、リムさんたちに任せきりにしてしまって」
「謝らないでいいよぉ。さっき言ったように呈ちゃんといると楽しかったし、特に何もしてないし。……それに私も子育てに関してはダメダメだったしね」
ワイバーンの母が大きな翼を広げて、岩場の縁で腕枕をしてうなだれる。
「記憶のことで悩んでるスワローを助けてやれなかったもの。あの子にとって一番の答えをあげることができなかった。ただ見守ることしか……」
明るく快活そうな性格のように見えたが、そのときばかりは弱々しかった。
沈みかけた雰囲気を、龍泉はぱちゃんと水面を叩くことで払う。
二人の視線が集まったところで、龍泉は二人に微笑んで語った。
いままぐわいを続けている二人を見れば、二人の母たちの育て方は間違っていなかったと自分にはわかる、と。
「そうで、しょうか。呈はきっと自分の力で彼を好きになることができたのだと思います。私は見守っていてあげることしか……」
少女は人の愛し方を知っている。想うことを知っている。それは魔物娘という種だからだけではない。愛し合う親から学んだかけがえのない宝物なのだろう。
数多の龍の娘を持つ龍泉は確信をもって答えた。これは親が子に与えられる最大の贈り物。その娘自身を産んだ、愛し合っている二人だからこそ教えられることなのだ。
あとのことは少女自身が学んでいくべきことでもある。
「見守るだけでいい、のですか……？」
湯気のせいか、白蛇の母の目尻に雫が浮かんでいた。
龍泉は鷹揚としながらおちょこを傾け、ワイバーンの母の方へと視線を向けた。
「私は、あの子にしてあげられたことなんて、何もないですよ……むしろもらってばかり。なかなか子が授かれない私たちのもとにやってきてくれて、ずっと温かい時間をくれたんですから」
母は湯煙の先を見る。まぐわいの音は収まり、ピロートークに入っていた。
龍泉は落ち込むワイバーンの母の背をそっと優しく撫でた。抱く悲しみを洗い流すようにしながら、囁くように語り掛ける。
親の喜びは子に伝わるものだ。その喜びはきっと少年の心の拠り所となったことだろう。
「なれてたかなぁ。正直、あんまり自信ないんです。子供を持つことなんて初めてだったから」
少年が曖昧な記憶に悩まされていたとしても、それでも彼には唯一二人の親という居場所があった。自分の存在を認めてくれる、親として傍にいてくれる二人がいたからこそ、少年は道を違えずにここまで生きてこられたのだ。
なにより、白蛇の両親たちと同じように、唯一の相手を愛す方法をもう教えてあげられている。
「っ……！ ありがとうございますっ、龍泉様」
まぁ、これからは少年の一番の居場所はあの少女になるだろうけれど。
「ひどいっ！？」
茶目っ気たっぷりに言う龍泉に、大袈裟なリアクションで跳ねてみせるワイバーンの母。
しんみりしかけた空気から一転、三人はくすくすあははと笑いあった。
他三名の夫チームのことは完全に蚊帳の外に置いて。
さて、と咳払いをしながら龍泉は湯煙の一部を晴らした。もう一人、客が来ていたのだ。
あえて、二人への話が終わるまで触れずにいたがそろそろ頃合いだと龍泉は判断した。
「あれ？ キサラギさんじゃない。どうしてこんなところに？」
ワイバーンの母とは面識があるらしい。彼女は今日ここで入浴するよう頼みこんできた刑部狸であった。
困ったように眉毛を下げながら笑む刑部狸は少しばかり雰囲気が違った。
「申し訳ないっす、テーちゃんとスワッちのお父さんお母さん！」
突然の土下座だった。
「テーちゃんを唆したばっかりに、怪我させてしまったみたいで本当に申し訳なかったっす」
「えっと、というと？」
刑部狸の大まかな説明によると、彼女の主人でもあるリリムのミクスが少女を唆した結果、土砂崩れに巻き込まれたという話であった。
「本当にすいませんでしたっす！ ミクスは生憎、いまお伺いできないので先んじて自分が謝りに来させていただいた次第っす」
「まぁ私は別に怒っていないけれど。怒るべきは当人の二人だしね。一生許さないけど」
「私も過程よりは結果主義ですので。絶対に許しはしませんが、怒ってはいません」
むしろ不気味に聞こえるほどに声音を平坦にしながら、二人の母は怒っていないと告げる。
龍泉自身もある意味巻き添えを食らった形だが、二人の大切な瞬間を目撃することができたので決して怒ってはいない。怪我のことも運が悪かった話だろう。運が悪かった、で済ませられるかどうかはそれこそ当人次第でそこに自分が入る余地はないからだ。
ただ、唆した張本人であるリリムがこの場にいない理由が何か聞かなくては気が済まない。
そのことを尋ねると刑部狸は苦笑しながら、目を泳がせた。言うべきかどうか、迷っている風だったので、数多の龍としての母なる魔力を軽く解き放ってみる。
グランドワームの配下であったドラゴンの威圧は受け流せても、さすがにグランドワームと同格と思われる龍の母のソレは受け流せなかったらしい。
面食らったように背筋をピンと伸ばした刑部狸は、トレードマークとも言える笑みを綺麗さっぱり消し去って答えた。
「デオノーラ様よりお説教を賜っております！ っす！」
ひどく納得した。この分だと実際に謝罪に来るのは明日以降だろう。
「……会いに来てもあまり口うるさく言うのはやめておきましょ」
「デオノーラ……ドラゴニアの女王様でしたか。そのお方直々にお説教を受けているのであれば、私たちから言うことはないかもしれませんね」
納得した二人に刑部狸がほっと息をついた。先ほどまで放っていた竜すら射殺さんばかりの殺気は、龍泉でも肌が痛く感じるほどだった。我が子を想う気持ちはそれほどなのだろう。自分と同じように。
「……それでですねぇ。ちょーっと不躾なんですけどもぉ」
調子を取り戻したらしい刑部狸が、企みを抱いた笑みを浮かべながら手を揉む。
「皆さんに協力して欲しいことがあるんっす」
目を瞬かせる二人の母に、刑部狸は言った。
龍泉はその言葉の裏に、彼女の主人であるリリムの影を垣間見る。
「天の柱の頂上を目指す、スワッちとテーちゃんのためのお祭りの準備を手伝っていただけないっすか？」
17/10/01 18:56更新 / ヤンデレラ
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