解放された欲望
扉を開けると、瓶詰と皿を持ったレニが立っていた。
服は着替えていて、風呂に入ったのか石鹸の匂いがしている。
「もしかして寝てた？」
どうにか人間の姿には戻れたけど、頭の角が引っ込んだ後
乱れた髪を整える余裕はボクになかった。
「ううん、ちょっと寝付けなくて」
「クリスが昼食の時間になっても食堂に降りて来ないから食欲無いのかと思ってさ、
この間実家から送ってきたリンゴのシロップ煮を持ってきたんだ」
レニはそう言って瓶を掲げた。
瓶の中には透明な液体に漬かったリンゴが詰まっている。
その色はレニの髪に似て、黄金色に透き通っていた。
「これなら少しは口に入るだろ」
「うん、ありがとう」
ボクはレニを部屋に招き入れた。
やっぱりレニは、他の生徒と比べても気がきく性格だ。
こういう男が女の子にもてるんじゃないかと思う。
でも、レニは他の生徒のように寄宿舎を抜け出して
夜の街に遊びに行く事はなかった。
田舎とはいえ酒場はいくつかあり、そこで働いている娘を
口説きに行く生徒は後を絶たない。
さすがに学生に酒を出す店はないけれど、学生の飲食自体は
どこの酒場でも黙認されていた。
ボクも友達に誘われて何度か行ったことはある。
酒場の娘たちの目にはボクが完全に子供として映るらしくて、
からかわれるだけで終わったけれど。
「二切れ食べられる？」
瓶の蓋を開けることに成功したレニが聞いた。
ベッドの脇に腰を下ろしたボクはかぶりを振って答える。
「一切れでいいよ」
魔物になってからは、人間だった頃のような空腹感を
感じることはなくなった。
おいしい物を味わいたいという欲求は変わらずにあるものの、
それだけで貴重な瓶詰を食べてしまうのは悪い気がした。
「わかった。残りは置いてくから、食欲が戻るまでは
こいつでしのぐといい」
「そんな、悪いよ」
「いいって。里帰りすればいつでも食える物だし」
そう言って、レニは微笑んだ。
シロップで煮たリンゴはとても柔らかかった。
甘みに負けない強い酸味が、体のだるさを忘れさせてくれる。
「ごちそうさま。おいしかった」
この二日間ずっと憂鬱な気分が続いていただけに、
レニのプレゼントはありがたかった。
「少し表情が明るくなったな。熱はどうだ」
ボクの額に手を当てたレニの表情が、不意に険しくなる。
「ん？ クリス、おまえその瞳の色」
「どうかした？」
「前からそんなに赤かったっけ？」
レニの言葉に思わず体を震わせてしまった。
魔物の瞳。
人間の姿に戻っても、瞳の色が戻らない事には気づかなかった。
「ちょっと充血してるかも」
「白目じゃない、瞳の色だ。ちょっと見せてみろ」
あわててそむけようとしたボクの顔を、レニの両手が挟み込む。
近い。この距離は近すぎる。
レニの匂い、体温、そしてボクの瞳をじっとのぞき込む視線は
意識してはいけないと思うほど、強く意識してしまう。
鼓動が跳ね上がり、肌の上に再びむずむずとした感触が生じる。
「あ」
「その姿は――！」
レニが絶句する。
高ぶる心を静めきれず、角が、翼が、尻尾が、レニの目の前で
あらわになってしまった。
もうだめだ。魔物になってしまった事が知れ渡ってしまったら、
このまま学校にはいられない。
人間と魔物が共存している地域もあるとは聞いているけれど、
ここからははるか遠くの場所だ。
「――もしかして、魔物にやられたのか」
レニの反応は意外にも冷静だった。ボクは黙ってうなずく。
「じゃあ食事は？魔物になったということはつまり――」
レニが言い終わる前にボクは首を横に振った。
言葉にしてほしくはない。
「ずっと我慢していたのか」
「うん」
レニは騒ぎ立てるのではなく、むしろ気遣ってくれる態度だ。
そのことに安心してようやく緊張が解け、声を出せた。
そして、ボクは堰を切ったように全てを話し始めた。
サキュバスがボクの部屋に侵入したことや、体に起きた異変、
ボクの変化を見たサキュバスに魔力を抜かれたこと、
このままだとあと一日で死んでしまうこと。
話しを全部聞いたレニは、長い沈黙の後にようやく口を開いた。
「とにかく、まずは食事だ。飢え死にだけは防がないと」
「無理だよ急に」
「ここだけの話、昔飢えた魔物に精を与えたことがあるんだ」
「レニが？」
レニは黙ってうなずいた。
いきなりの衝撃の告白に、ボクの頭は真っ白になった。
自分と同じく女の子との大人の付き合いの経験が
全く無いと思ってた友人が、自分のはるか先を行ってたのだ。
いや、でもだからといって問題が解決するわけじゃない。
「レニは良くてもボクには無理だ。一昨日までは男だったのに」
沈黙が流れる。
「わかったよ」
うつむいたボクの肩にレニが手を置いた。思わず顔を上げる。
「俺のことは嫌ってくれていい。軽蔑してくれてかまわない」
「えっ」
「それでもおまえが死ぬよりはいい」
ボクの唇をレニの唇が塞いだ。
逃げようにも両肩をつかまれていて逃げられなかった。
ボクの口に滑り込もうとするレニの舌を押し返す。
が、逆に舌を吸われて、快感に全身の力が抜けてしまった。
再び入ってくるレニの舌を押し返すことができない。
「んーっ」
甲高い声が喉から漏れる。
その声を脅えと思ったのか、レニはボクの頭を撫で始めた。
大きな手のひらで後頭部や耳をゆっくりと撫でられて、
ボクの胸を締め付けていた不安感が溶かされていく。
この数日、自分の身に起きたことを誰にも言えなかった苦しさや
このまま死んでしまうかもしれないという心細さ、
元の体に戻れないという絶望。
不安がやわらいだことで、自分がたくさんの負の感情によって
潰されかけていたのだとボクは実感した。
そして、レニの愛撫はこれから起こるであろうことに対して
ボクが抱いてる不安までも溶かしていった。ずるいよこんなの。
居ても立ってもいられずに、ボクはレニの胸にしがみついた。
レニの体温に触れて、肌に感じていた寒気が快感に変わる。
今まで感じていた寒気は、体調不良なんかじゃない。
ボクの全身が温もりと安心を求めていたからだったんだ。
口の中に入ってきているレニの舌を、ボクは思いっきり吸った。
長いキスの後、ようやくレニは顔を離した。
気のせいか、だるかった体が少し軽くなっている。
「少しは精を吸えた？」
レニがボクのほおを撫でながら言った。
「えっ」
「口を通しても少しだけ吸えるらしい」
確かにボクの体調は回復し始めている。
レニが昔魔物に精を与えたという話は、間違いないみたいだ。
「でもそれだけじゃ全然足りていないはずだ」
そう言ってレニはボクの額にキスをすると、服に手をかけた。
拒もうとする間もなく、上着とシャツを脱がされてしまう。
まだが膨らみの見えない未熟な胸にレニはいきなり口をつけた。
「っ、痛っ！」
先端を驚くほど強く吸われてボクは痛みに悲鳴を上げた。
「ご、ごめん」
慌ててレニは顔を離す。
吸われた方の乳首はじんじんと痛みの余韻を訴え続けた。
レニの手が、優しく胸を撫で、脇腹を撫でて、
ボクのズボンにたどり着く。
脱がされることにまだ抵抗はあるものの、
このまま履き続けているのも不快だった。
パンツの中はもうぐしょぐしょに濡れてしまっている。
戸惑っていると、レニの手がズボンとパンツを一気に降ろした。
その瞬間、内股の間から湯気が立ち昇るのが一瞬見えた。
「えっ、あっ、これは――」
自分の体が思っていた以上の反応をしていたことに、
驚きと恥ずかしさが込み上げ、ボクはうろたえた。
もう十分すぎるほどの準備が出来上がってしまっている。
見えた物に一瞬動きを止めたレニは、すぐ自分の服を脱ぎだす。
一糸まとわぬ姿になった時、その下腹部には
隆々とそそり立つ肉棒があった。
レニが興奮している。ついこの間まで男だったボクに対して。
異性への興味をほとんど示さなかった友人が、
自分に欲情しているというのは、どこか非現実的な光景だった。
だが、足の間に割り込んでくるレニのひざの感触が、
ボクをすぐに現実へと引き戻す。
「ま、待って、ちょっと待って！」
ボクの訴えには答えず、レニは唇でボクの口を塞いだ。
本気だ。本気でやるつもりなんだ。
ギュッと目をつむったボクからレニの唇が離れる。
次の瞬間、びっくりするほど熱い物が股間に押し当てられた。
思わず体が震え、股に力が入り、硬直する。
熱い肉棒はその硬くなった肉の隙間に強引に押し入ってきた。
ひとたび中に入ってしまうと、濡れきったボクの膣内は
どこまでもレニの熱さを受け入れる。
痛みは無かった。
魔物だから普通の女の子とは違うのか、
それとも精に飢えていたからなのかは分からない。
ボクは不安に恐る恐る目を開けた。
目を開けたボクを見て、レニは笑みを浮かべ、
頭を撫でてくれた。
「動くよ。いい？」
ちゃんと気遣ってくれたレニを信じ、ボクは黙ってうなずいた。
レニの腰が動き始め、肉棒が内側からおなかを突く。
「んっ、うっ、あっ」
呼吸をすると、突かれるたびに独りでに声が出てしまう。
男だった頃、女の子は突かれると快感を得るのだと思っていた。
でも実際のところ、声が出るのはおなかを突かれるからなのだ。
逆に、レニが腰を引き、カリが膣内を撫で下ろすときに
ぞくぞくと鳥肌が立つような快感が沸く。
これは男だった頃には想定して無かった。
トンボのオスの生殖器には鉤状の構造があり、
交尾の際に前のオスが残した精子をかき出すようになって――
今朝の補習で聞いた教師の言葉がフラッシュバックする。
ボクが感じている『これ』も同じだ。
前のオスの精子をかき出す行為。
自分の精子だけをメスの中に残すための行為。
メスを自分だけのものにする行為。
その行為に魔物化したボクの体が喜び、快感を覚えている。
ボクはレニの物になりたがっている――？
レニの腰の動きが早まり、膣内の刺激が強まった。
男だったボクには何を意味するかがよくわかる。
もうすぐ射精する。
レニの頭はそれ以外考えられなくなっている。
今ここでボクが止めようとしても、
レニはボクの意志を無視して強引に犯そうとするだろう。
その光景を思い浮かべた瞬間、膣がレニの肉棒を締め付けた。
「うぁっ」
ため息と共にレニが気持ち良さそうな声を漏らした。
肉棒がピクピクと膨らむ感触があり、肉棒よりさらに熱い物が
膣内にほとばしる。
体の心から少しずつ甘い快感が染み渡ってきた。
ボクは初めて男の精を吸い取ったのだ。
レニが出した精は膣内から少しずつ体の中へと染みてきている。
体が前より軽くなり、寒気は完全に治まっていた。
精から得た十分な魔力で、興奮時も人間の姿を保てる。
そう、ボクの心はまだざわついているのだ。
女になった体で男と交わってしまった。
心は人間だった頃と同じだと思っていたのに、
精に飢えた体に引きずられて、次第に変わりつつある。
「ごめん。強引にしちゃって」
レニは動揺が収まらない様子のボクを見て謝った。
「本当はクリスが自分で相手を選ぶべきなんだろうけど、
気持ちが定まるのを待っていたら手遅れになるから」
「――うん」
確かにレニの言う通りだったかもしれない。
「他の誰かがいいなら、もう俺からは何もしない。
クリスが選んだ相手が精をくれるよう俺からも説得するけど」
他の子と言われて、友人や知り合いの生徒の顔が思い浮かんだが
どれもこれも精を吸う相手としては想像できなかった。
少なくともレニのように相手を気遣える子はいない。
「いや、他の子はちょっと――」
「あと、こういう形で精を吸うのが嫌なら、精液だけ渡すよ。
魔物は口から飲んでも吸収できるらしいから」
「それだけは絶対に嫌だ！」
あの青臭い液体を口から飲むのはさすがに抵抗があった。
結局消去法で今のやり方が一番マシということになる。
「まあ、また精が必要になるまでに考えておくといいよ」
「うーん――」
レニの言葉にはうなずきたかったけれど、
ボクにはそこまで余裕が無かったために曖昧な返事をする。
初めて精を吸収したボクの体は、それだけでは満足しなかった。
吸収されたばかりの精はすぐに魔力へと変換され、
さらなる精を得るために、体をより魅惑的に変化させ、
誘惑の魔力となって体外に放出され始めていた。
肌は以前よりきめが細かくなりつやを増していた。
未熟だった胸は、ほんのりと乳房の形が見え始めている。
汗ばんだ髪からは、濃厚な女の匂いが漂い始め、
目の前のオスに異性の存在を主張していた。
「どうしたの」
問いかけるレニと目を合わせた瞬間、
ボクの中で静電気のような痺れる感覚があった。
レニも体をびくりと震わせる。
この感覚には覚えがあった。
以前サキュバスに襲われた時と同じだ。
「クリス、何を――！」
レニの上半身がぐらついた。
暴走気味のボクの体がレニに魅了の魔法をかけてしまったのだ。
精の味を知ったボクの体はさらに飢えるようになっている。
幸いにも魅了の魔法はそれほど強くはなかったようで、
すぐにレニは平衡感覚を取り戻した。
だが、その股間では魔法の影響で再び肉棒が勃起していた。
「ごめん、まだちょっと体がだるいかも。だから――」
遠慮がちに言葉を紡ぐボクの唇にレニの指が当てられた。
「それ以上は言わなくていい。心が新しい体になじまないうちに
無理をして現状を受け入れようとすれば、
魔物になったばかりの人間の心が壊れてしまう」
レニの大きな手がボクの頭を撫でた。
「クリスは俺を求めたり誘ったりしていない。
俺が勝手にクリスの魅力に負けて押し倒した。
今はそういうことにしておこう」
これは凌辱なんだろうか。それとも優しさなんだろうか。
心と体がずれたままのボクの体に精を与えるために
レニは悪者を演じようとしている。
背後から両手首をつかまれて、ひざ立ちの姿勢にさせられた。
お尻のすぐ後ろにレニの熱い肉棒が起立している。
レニの温もりを感じられず、不安で体が少し震えた。。
囚われのボクに逃げ場はない。一方的に犯される体勢だ。
再び肉棒が侵入してくる。だが、今度はさっきと事情が違った。
膣内に残っている精が、レニの肉棒によって周囲に押し付けられ
塗りたくられてしまう。
強制的に精の吸収を速められて、痺れるような快感が広がった。
まずい。これはちょっとまずい。
レニが無言で腰を振り始めた。
「あうんっ」
高い声が、自分でも信じられないくらい媚びた音色で漏れた。
中でレニの一物が太さと硬さを増し、動きが速くなる。
今の声で興奮させてしまった。
レニの腰が勢いよくボクのお尻に打ち付けられる。
くびれができかかっているボクの腰には、
まだ荒々しい性欲を受け止め切れるほどの豊満さはない。
そして、吸収したばかりの精から生じた魔力は
ボクのお尻から少年の肉の硬さを奪っていた。
レニの腰がぶつかるたび、柔らかい小さなお尻の肉が潰される。
こんなに激しくされたら、お尻が赤くはれてしまう。
そんな姿を見られるのはたまらなく恥ずかしかった。
「やだっ、ちょっと激しすぎる」
叫んだつもりのボクの声は、またよがり声になってしまう。
レニの腰から逃れようと体をくねらせるが、
手首をしっかりつかまれていて逃げられない。
体の動きは媚びてしなを作っているようになり、
逆に強い力でレニの腰へと引き寄せられてしまった。
ボクの声が、体が、よりいっそう精を作らせるために
優しい少年を快楽をむさぼるオスに変えようとしている。
じゅぶりっ ずびりっ
二人の結合部分がひときわ下品な音を立て始めた。
膣内に精を擦り込まれたボクの体は快感で弛緩し、
次第に力が入らなくなってきている。
「い――やあっ、変な音出てるぅっ」
ボクが嫌がってもお構いなしにレニは腰を動かし続けた。
犯されている。今ボクはレニに犯されている
そう思った時、ボクの心を抑えていた最後のたがが外れた。
ボクは感じているんじゃない。感じさせられているんだ。
喜んでいるんじゃない。喜ばされているんだ。
だから、心が体に流されて変わっても仕方ないんだ――
弛緩していたボクの膣がレニの肉棒にむしゃぶりついた。
敏感になった魔物の性器は、表面の凹凸一つ一つが与える刺激を
お腹の奥から全身に広げていく。
「女に――なっちゃうっ、女の子になっちゃうんんっ！」
レニがボクの背後から覆いかぶさり、うなじにキスをする。
その瞬間、ボクの膣内は再び濃厚な精で満たされた。
服は着替えていて、風呂に入ったのか石鹸の匂いがしている。
「もしかして寝てた？」
どうにか人間の姿には戻れたけど、頭の角が引っ込んだ後
乱れた髪を整える余裕はボクになかった。
「ううん、ちょっと寝付けなくて」
「クリスが昼食の時間になっても食堂に降りて来ないから食欲無いのかと思ってさ、
この間実家から送ってきたリンゴのシロップ煮を持ってきたんだ」
レニはそう言って瓶を掲げた。
瓶の中には透明な液体に漬かったリンゴが詰まっている。
その色はレニの髪に似て、黄金色に透き通っていた。
「これなら少しは口に入るだろ」
「うん、ありがとう」
ボクはレニを部屋に招き入れた。
やっぱりレニは、他の生徒と比べても気がきく性格だ。
こういう男が女の子にもてるんじゃないかと思う。
でも、レニは他の生徒のように寄宿舎を抜け出して
夜の街に遊びに行く事はなかった。
田舎とはいえ酒場はいくつかあり、そこで働いている娘を
口説きに行く生徒は後を絶たない。
さすがに学生に酒を出す店はないけれど、学生の飲食自体は
どこの酒場でも黙認されていた。
ボクも友達に誘われて何度か行ったことはある。
酒場の娘たちの目にはボクが完全に子供として映るらしくて、
からかわれるだけで終わったけれど。
「二切れ食べられる？」
瓶の蓋を開けることに成功したレニが聞いた。
ベッドの脇に腰を下ろしたボクはかぶりを振って答える。
「一切れでいいよ」
魔物になってからは、人間だった頃のような空腹感を
感じることはなくなった。
おいしい物を味わいたいという欲求は変わらずにあるものの、
それだけで貴重な瓶詰を食べてしまうのは悪い気がした。
「わかった。残りは置いてくから、食欲が戻るまでは
こいつでしのぐといい」
「そんな、悪いよ」
「いいって。里帰りすればいつでも食える物だし」
そう言って、レニは微笑んだ。
シロップで煮たリンゴはとても柔らかかった。
甘みに負けない強い酸味が、体のだるさを忘れさせてくれる。
「ごちそうさま。おいしかった」
この二日間ずっと憂鬱な気分が続いていただけに、
レニのプレゼントはありがたかった。
「少し表情が明るくなったな。熱はどうだ」
ボクの額に手を当てたレニの表情が、不意に険しくなる。
「ん？ クリス、おまえその瞳の色」
「どうかした？」
「前からそんなに赤かったっけ？」
レニの言葉に思わず体を震わせてしまった。
魔物の瞳。
人間の姿に戻っても、瞳の色が戻らない事には気づかなかった。
「ちょっと充血してるかも」
「白目じゃない、瞳の色だ。ちょっと見せてみろ」
あわててそむけようとしたボクの顔を、レニの両手が挟み込む。
近い。この距離は近すぎる。
レニの匂い、体温、そしてボクの瞳をじっとのぞき込む視線は
意識してはいけないと思うほど、強く意識してしまう。
鼓動が跳ね上がり、肌の上に再びむずむずとした感触が生じる。
「あ」
「その姿は――！」
レニが絶句する。
高ぶる心を静めきれず、角が、翼が、尻尾が、レニの目の前で
あらわになってしまった。
もうだめだ。魔物になってしまった事が知れ渡ってしまったら、
このまま学校にはいられない。
人間と魔物が共存している地域もあるとは聞いているけれど、
ここからははるか遠くの場所だ。
「――もしかして、魔物にやられたのか」
レニの反応は意外にも冷静だった。ボクは黙ってうなずく。
「じゃあ食事は？魔物になったということはつまり――」
レニが言い終わる前にボクは首を横に振った。
言葉にしてほしくはない。
「ずっと我慢していたのか」
「うん」
レニは騒ぎ立てるのではなく、むしろ気遣ってくれる態度だ。
そのことに安心してようやく緊張が解け、声を出せた。
そして、ボクは堰を切ったように全てを話し始めた。
サキュバスがボクの部屋に侵入したことや、体に起きた異変、
ボクの変化を見たサキュバスに魔力を抜かれたこと、
このままだとあと一日で死んでしまうこと。
話しを全部聞いたレニは、長い沈黙の後にようやく口を開いた。
「とにかく、まずは食事だ。飢え死にだけは防がないと」
「無理だよ急に」
「ここだけの話、昔飢えた魔物に精を与えたことがあるんだ」
「レニが？」
レニは黙ってうなずいた。
いきなりの衝撃の告白に、ボクの頭は真っ白になった。
自分と同じく女の子との大人の付き合いの経験が
全く無いと思ってた友人が、自分のはるか先を行ってたのだ。
いや、でもだからといって問題が解決するわけじゃない。
「レニは良くてもボクには無理だ。一昨日までは男だったのに」
沈黙が流れる。
「わかったよ」
うつむいたボクの肩にレニが手を置いた。思わず顔を上げる。
「俺のことは嫌ってくれていい。軽蔑してくれてかまわない」
「えっ」
「それでもおまえが死ぬよりはいい」
ボクの唇をレニの唇が塞いだ。
逃げようにも両肩をつかまれていて逃げられなかった。
ボクの口に滑り込もうとするレニの舌を押し返す。
が、逆に舌を吸われて、快感に全身の力が抜けてしまった。
再び入ってくるレニの舌を押し返すことができない。
「んーっ」
甲高い声が喉から漏れる。
その声を脅えと思ったのか、レニはボクの頭を撫で始めた。
大きな手のひらで後頭部や耳をゆっくりと撫でられて、
ボクの胸を締め付けていた不安感が溶かされていく。
この数日、自分の身に起きたことを誰にも言えなかった苦しさや
このまま死んでしまうかもしれないという心細さ、
元の体に戻れないという絶望。
不安がやわらいだことで、自分がたくさんの負の感情によって
潰されかけていたのだとボクは実感した。
そして、レニの愛撫はこれから起こるであろうことに対して
ボクが抱いてる不安までも溶かしていった。ずるいよこんなの。
居ても立ってもいられずに、ボクはレニの胸にしがみついた。
レニの体温に触れて、肌に感じていた寒気が快感に変わる。
今まで感じていた寒気は、体調不良なんかじゃない。
ボクの全身が温もりと安心を求めていたからだったんだ。
口の中に入ってきているレニの舌を、ボクは思いっきり吸った。
長いキスの後、ようやくレニは顔を離した。
気のせいか、だるかった体が少し軽くなっている。
「少しは精を吸えた？」
レニがボクのほおを撫でながら言った。
「えっ」
「口を通しても少しだけ吸えるらしい」
確かにボクの体調は回復し始めている。
レニが昔魔物に精を与えたという話は、間違いないみたいだ。
「でもそれだけじゃ全然足りていないはずだ」
そう言ってレニはボクの額にキスをすると、服に手をかけた。
拒もうとする間もなく、上着とシャツを脱がされてしまう。
まだが膨らみの見えない未熟な胸にレニはいきなり口をつけた。
「っ、痛っ！」
先端を驚くほど強く吸われてボクは痛みに悲鳴を上げた。
「ご、ごめん」
慌ててレニは顔を離す。
吸われた方の乳首はじんじんと痛みの余韻を訴え続けた。
レニの手が、優しく胸を撫で、脇腹を撫でて、
ボクのズボンにたどり着く。
脱がされることにまだ抵抗はあるものの、
このまま履き続けているのも不快だった。
パンツの中はもうぐしょぐしょに濡れてしまっている。
戸惑っていると、レニの手がズボンとパンツを一気に降ろした。
その瞬間、内股の間から湯気が立ち昇るのが一瞬見えた。
「えっ、あっ、これは――」
自分の体が思っていた以上の反応をしていたことに、
驚きと恥ずかしさが込み上げ、ボクはうろたえた。
もう十分すぎるほどの準備が出来上がってしまっている。
見えた物に一瞬動きを止めたレニは、すぐ自分の服を脱ぎだす。
一糸まとわぬ姿になった時、その下腹部には
隆々とそそり立つ肉棒があった。
レニが興奮している。ついこの間まで男だったボクに対して。
異性への興味をほとんど示さなかった友人が、
自分に欲情しているというのは、どこか非現実的な光景だった。
だが、足の間に割り込んでくるレニのひざの感触が、
ボクをすぐに現実へと引き戻す。
「ま、待って、ちょっと待って！」
ボクの訴えには答えず、レニは唇でボクの口を塞いだ。
本気だ。本気でやるつもりなんだ。
ギュッと目をつむったボクからレニの唇が離れる。
次の瞬間、びっくりするほど熱い物が股間に押し当てられた。
思わず体が震え、股に力が入り、硬直する。
熱い肉棒はその硬くなった肉の隙間に強引に押し入ってきた。
ひとたび中に入ってしまうと、濡れきったボクの膣内は
どこまでもレニの熱さを受け入れる。
痛みは無かった。
魔物だから普通の女の子とは違うのか、
それとも精に飢えていたからなのかは分からない。
ボクは不安に恐る恐る目を開けた。
目を開けたボクを見て、レニは笑みを浮かべ、
頭を撫でてくれた。
「動くよ。いい？」
ちゃんと気遣ってくれたレニを信じ、ボクは黙ってうなずいた。
レニの腰が動き始め、肉棒が内側からおなかを突く。
「んっ、うっ、あっ」
呼吸をすると、突かれるたびに独りでに声が出てしまう。
男だった頃、女の子は突かれると快感を得るのだと思っていた。
でも実際のところ、声が出るのはおなかを突かれるからなのだ。
逆に、レニが腰を引き、カリが膣内を撫で下ろすときに
ぞくぞくと鳥肌が立つような快感が沸く。
これは男だった頃には想定して無かった。
トンボのオスの生殖器には鉤状の構造があり、
交尾の際に前のオスが残した精子をかき出すようになって――
今朝の補習で聞いた教師の言葉がフラッシュバックする。
ボクが感じている『これ』も同じだ。
前のオスの精子をかき出す行為。
自分の精子だけをメスの中に残すための行為。
メスを自分だけのものにする行為。
その行為に魔物化したボクの体が喜び、快感を覚えている。
ボクはレニの物になりたがっている――？
レニの腰の動きが早まり、膣内の刺激が強まった。
男だったボクには何を意味するかがよくわかる。
もうすぐ射精する。
レニの頭はそれ以外考えられなくなっている。
今ここでボクが止めようとしても、
レニはボクの意志を無視して強引に犯そうとするだろう。
その光景を思い浮かべた瞬間、膣がレニの肉棒を締め付けた。
「うぁっ」
ため息と共にレニが気持ち良さそうな声を漏らした。
肉棒がピクピクと膨らむ感触があり、肉棒よりさらに熱い物が
膣内にほとばしる。
体の心から少しずつ甘い快感が染み渡ってきた。
ボクは初めて男の精を吸い取ったのだ。
レニが出した精は膣内から少しずつ体の中へと染みてきている。
体が前より軽くなり、寒気は完全に治まっていた。
精から得た十分な魔力で、興奮時も人間の姿を保てる。
そう、ボクの心はまだざわついているのだ。
女になった体で男と交わってしまった。
心は人間だった頃と同じだと思っていたのに、
精に飢えた体に引きずられて、次第に変わりつつある。
「ごめん。強引にしちゃって」
レニは動揺が収まらない様子のボクを見て謝った。
「本当はクリスが自分で相手を選ぶべきなんだろうけど、
気持ちが定まるのを待っていたら手遅れになるから」
「――うん」
確かにレニの言う通りだったかもしれない。
「他の誰かがいいなら、もう俺からは何もしない。
クリスが選んだ相手が精をくれるよう俺からも説得するけど」
他の子と言われて、友人や知り合いの生徒の顔が思い浮かんだが
どれもこれも精を吸う相手としては想像できなかった。
少なくともレニのように相手を気遣える子はいない。
「いや、他の子はちょっと――」
「あと、こういう形で精を吸うのが嫌なら、精液だけ渡すよ。
魔物は口から飲んでも吸収できるらしいから」
「それだけは絶対に嫌だ！」
あの青臭い液体を口から飲むのはさすがに抵抗があった。
結局消去法で今のやり方が一番マシということになる。
「まあ、また精が必要になるまでに考えておくといいよ」
「うーん――」
レニの言葉にはうなずきたかったけれど、
ボクにはそこまで余裕が無かったために曖昧な返事をする。
初めて精を吸収したボクの体は、それだけでは満足しなかった。
吸収されたばかりの精はすぐに魔力へと変換され、
さらなる精を得るために、体をより魅惑的に変化させ、
誘惑の魔力となって体外に放出され始めていた。
肌は以前よりきめが細かくなりつやを増していた。
未熟だった胸は、ほんのりと乳房の形が見え始めている。
汗ばんだ髪からは、濃厚な女の匂いが漂い始め、
目の前のオスに異性の存在を主張していた。
「どうしたの」
問いかけるレニと目を合わせた瞬間、
ボクの中で静電気のような痺れる感覚があった。
レニも体をびくりと震わせる。
この感覚には覚えがあった。
以前サキュバスに襲われた時と同じだ。
「クリス、何を――！」
レニの上半身がぐらついた。
暴走気味のボクの体がレニに魅了の魔法をかけてしまったのだ。
精の味を知ったボクの体はさらに飢えるようになっている。
幸いにも魅了の魔法はそれほど強くはなかったようで、
すぐにレニは平衡感覚を取り戻した。
だが、その股間では魔法の影響で再び肉棒が勃起していた。
「ごめん、まだちょっと体がだるいかも。だから――」
遠慮がちに言葉を紡ぐボクの唇にレニの指が当てられた。
「それ以上は言わなくていい。心が新しい体になじまないうちに
無理をして現状を受け入れようとすれば、
魔物になったばかりの人間の心が壊れてしまう」
レニの大きな手がボクの頭を撫でた。
「クリスは俺を求めたり誘ったりしていない。
俺が勝手にクリスの魅力に負けて押し倒した。
今はそういうことにしておこう」
これは凌辱なんだろうか。それとも優しさなんだろうか。
心と体がずれたままのボクの体に精を与えるために
レニは悪者を演じようとしている。
背後から両手首をつかまれて、ひざ立ちの姿勢にさせられた。
お尻のすぐ後ろにレニの熱い肉棒が起立している。
レニの温もりを感じられず、不安で体が少し震えた。。
囚われのボクに逃げ場はない。一方的に犯される体勢だ。
再び肉棒が侵入してくる。だが、今度はさっきと事情が違った。
膣内に残っている精が、レニの肉棒によって周囲に押し付けられ
塗りたくられてしまう。
強制的に精の吸収を速められて、痺れるような快感が広がった。
まずい。これはちょっとまずい。
レニが無言で腰を振り始めた。
「あうんっ」
高い声が、自分でも信じられないくらい媚びた音色で漏れた。
中でレニの一物が太さと硬さを増し、動きが速くなる。
今の声で興奮させてしまった。
レニの腰が勢いよくボクのお尻に打ち付けられる。
くびれができかかっているボクの腰には、
まだ荒々しい性欲を受け止め切れるほどの豊満さはない。
そして、吸収したばかりの精から生じた魔力は
ボクのお尻から少年の肉の硬さを奪っていた。
レニの腰がぶつかるたび、柔らかい小さなお尻の肉が潰される。
こんなに激しくされたら、お尻が赤くはれてしまう。
そんな姿を見られるのはたまらなく恥ずかしかった。
「やだっ、ちょっと激しすぎる」
叫んだつもりのボクの声は、またよがり声になってしまう。
レニの腰から逃れようと体をくねらせるが、
手首をしっかりつかまれていて逃げられない。
体の動きは媚びてしなを作っているようになり、
逆に強い力でレニの腰へと引き寄せられてしまった。
ボクの声が、体が、よりいっそう精を作らせるために
優しい少年を快楽をむさぼるオスに変えようとしている。
じゅぶりっ ずびりっ
二人の結合部分がひときわ下品な音を立て始めた。
膣内に精を擦り込まれたボクの体は快感で弛緩し、
次第に力が入らなくなってきている。
「い――やあっ、変な音出てるぅっ」
ボクが嫌がってもお構いなしにレニは腰を動かし続けた。
犯されている。今ボクはレニに犯されている
そう思った時、ボクの心を抑えていた最後のたがが外れた。
ボクは感じているんじゃない。感じさせられているんだ。
喜んでいるんじゃない。喜ばされているんだ。
だから、心が体に流されて変わっても仕方ないんだ――
弛緩していたボクの膣がレニの肉棒にむしゃぶりついた。
敏感になった魔物の性器は、表面の凹凸一つ一つが与える刺激を
お腹の奥から全身に広げていく。
「女に――なっちゃうっ、女の子になっちゃうんんっ！」
レニがボクの背後から覆いかぶさり、うなじにキスをする。
その瞬間、ボクの膣内は再び濃厚な精で満たされた。
11/04/19 13:51更新 / 偽典書庫
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