Bossbattle:04 海魔大海戦 前編
「礼の件ですが、三日後の納期には間に合いそうで…」
「納期は明日だと言った筈だ!そんな調子じゃ終わらねぇだろうが!やる気あんのか!てめぇ!」
「も、申し訳ありませんっ!」
とある会社のオフィス。
若い男性社員を、黒いスーツに赤いネクタイを着けた中年男性社員が怒鳴り散らしていた。
「おい、止めとけ。真に受ける必要はねーよ。こんな奴の言うことなんか聞かなくて良いって。」
「高木部長、お言葉ですがそれは納期を三日後と明日を勘違いした貴方に非があるのでは?」
同じく作業をしていたドワーフとスキュラの社員が口を挟み、若い男性社員を庇う。
「先輩…」
「何だ?お前ら。女の腐ったような奴等が俺に一丁前にこんなこと言うなんて、随分と威勢が良いじゃねぇか。」
「貴方は高崎くんの納期を二日前に知らされている筈ですが、何故それを伝えなかったのでしょうか?」
「そ、それはだ!たまたま仕事が忙しくてそこまで手が回らなかっただけだ!」
「へー、一日中他の課の女の子達を飲みに誘いに声を掛けたり、お偉いさんにゴマすってるのが忙しいって言うんだー」
「なっ…!て、てめぇ!」
ドワーフの社員の一言で、高木は怒りを露にする。
拳を硬く握りしめ、今にも彼女達に殴りかからん勢いだ。
「というかさー、それってわざと高崎くんに情報伝えないことで怒鳴る口実作ってんじゃないんですかー?」
「だとすれば最低ですねー」
更にコピーを取ろうとしていたマーシャークの社員、高崎と呼ばれた若い男性社員の同期の男性社員が援護射撃を飛ばす。
「ナメやがって!俺を誰だと思っている!俺は部長だぞ!お前らより遥かに格上なんだ!」
「確かに、役職は確かに上ですが、貴方のような方は一度も上司と思ったこともありません。」
「い、言わせておけば…!この俺を怒らせた事を後悔させてやる!」
拳を振り上げ、デスクワークをしていたスキュラの社員に高木が殴り掛かろうとした、その時。
「喰らえ!高校時代に地元の空手大会で優勝した俺の必殺技を…」
「これは一体どういうことだ?」
修羅場の真っ只中に、新たに一人の男性社員がそこに現れた。
紺色のスーツを着こなし、清潔な感じが漂っている中肉中背の若めの男だ。
彼の名は竜寺(りゅうじ)ワタル。ここの部署の次長だ。
つい十年前まで彼はただのヒラ社員に過ぎず、ロクな仕事を回されずに茶汲みなどの雑用ばかりやらされていたことから、「お茶汲みの竜寺」と馬鹿にされていたダメ社員だったが、自身の地道な努力により評価を見直され、ここまで出世したのだ。
部下からの信頼も厚く、扱いも高木とは雲泥の差だ。
「次長!?」
「どうして!?」
「フン。茶汲みの分際でよくもまぁここまで登り詰めたもんだな。相変わらず気に食わない野郎だ。」
忌々しげな目で、高木は竜寺を睨み付ける。
「高木部長。俺のことはいくらでも悪く言っても構いません。ですが、俺の部下に危害を加えることは止めてください。」
「あぁん?」
「そんなに彼等を殴りたいのであれば、俺を殴って気持ちを落ち着けてはいかがですか。」
「次長!こんな奴なんかに、そんなことする必要なんかありませんよ!」
「 そうですよ!止めてください!」
「ほぉ〜、中々成長したじゃねぇか〜…褒美として、てめぇのスカした面が膨れ上がるまでぶん殴ってやる!」
高木が左手で竜寺の胸ぐらを掴み、右手で彼の顔面を殴ろうとする。
「高木君、お取り込みの最中悪いがちょっと私の所まで来て欲しい。」
「ほほほッ、本部長!?」
質の良いスーツを着ている太った壮年男性、本部長が高木を呼び止めた。
「君に重要な話がある。至急、来てくれ。」
「はい、仰せのままに!」
上からの圧力に弱い高木は、先程までの凶暴な態度をコロリと変え、恐縮した態度で本部長に付いて行った。
高木が連れられた先は彼のデスクで、その上には綺麗に整頓された書類が幾つか置いてある。
「本部長…私に話とは一体何でしょうか…」
「単刀直入に言おう。君はクビだ。」
「えええええっ!」
突然の宣告に、高木は顔面蒼白になった。
「ど、どうしてですか…!私はかれこれここが開設された当初から勤務しているんですよ!」
「ああ、確かに君はここができた時から働いていて、一度の欠勤も無い。しかし…だ…ここの所君の担当する所の売り上げが年々減少し、今では半分以下になってしまっているんだ。」
「ええっ!?」
「それに、わが社が労働環境の改善を押し進めるプロジェクトを施行しているのは知っているね。」
「はい、存じております。それが私のクビと関係あるのですか。」
「勿論、大有りだ。君の担当する部署ではハラスメント問題が多く上がっていてね…極秘裏にアンケートを取った所、なんと100%のこの部署に勤務する社員が、君から数々のハラスメントを受けていることが分かった。」
「……………!」
「また、病気で寝込んでいる夫を無理矢理出社させられそうになった、との苦情が君の部下である高崎君の妻から寄せられている。」
「そんなの濡れ衣です!私がそんなことを言うわけが…」
「これを聞いて、そうと言えるのかね?」
本部長が録音装置を机の上に置き、スイッチを押して再生する。
「「もしもし、お電話変わります。高崎の妻です。」」
「「ああ、奥さんか。部長の高木だ。今この部署は人手が足りなくてね。今すぐにでも高崎君に来て頂きたい。」」
「「それは無理です。夫は今熱を出して寝込んでいまして…とても出社できる状況では…」」
「「ふざけるな!今すぐにでも叩き起こせ!このアバズレが!毎日会社に出てこそ社会人として当たり前なんだぞ!お前の夫はその当たり前の行為を…」」
「「……それでも私は夫は出社させる気はございません。」」
「「何?」」
「「夫はただでさえ体が弱いのに、仕事で壊してしまった体を更にボロボロにさせる真似など…させません!」」
「「そうかそうか…分かった。なら高崎が休むことを許可しよう。」」
「「そうですか。ありがとうござ…」」
「「ただし、お前が俺に身体を捧げれば…の話だがな。」」
「「……………!?」」
「「前に会って見て思ったけど、お前、鰻の下半身は置いといたら上玉の女じゃねぇか。どうだ?俺に一晩抱かれて良いって言うんなら、お前の旦那を休ませてやっても良いぜ。」」
「「…………!私は、高崎さんの妻です!貴方なんかに抱かれる筋合いはありませんっ!」」
「「ほぉ〜?夫がどうなっても良いのか?再び会社に出社する頃には、あいつの居場所は無くなっているだろうな〜?」」
「「………最低ですね!失礼します!」」
音声はここで途切れ、再生が止まった。
額から汗を噴き出させ、口を大きく開けて固まる高木を、本部長は冷たい目で見つめている。
「これは高崎君の妻が私に送ってきたものだ。」
「……………。」
「病気で倒れた部下に出社を強要するだけではなく、その妻を卑劣な手段でレイプしようとするとは…君には妻子がいるというのに…」
怒りと哀しみが露骨に表れている溜め息をつき、本部長は手で額を押さえた。
「……………。」
「こんな業績も人間性も最低な人間を会社に置いておく訳にはいかない。即刻、退職願おう。」
「それでは!私が居なくなったら部長は一体誰が務め…」
「もう決めてある。後任は竜寺君だ。」
「竜寺!?あんな人の良さだけが取り柄の若造がですか!?」
「そうだ。君の部下達は君よりも彼を選んだ。だから、安心してこの会社から出ていってくれ。二度と、来ないで欲しい。」
無慈悲な宣告を受けた高木はその場に崩れ落ち、手を床に着いてその場に伏した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「た、ただいま…」
「随分早いわね。」
「ったく、何で早く帰ってくんだよ。」
高木家。
そこそこ良い土地に立てられた一軒家で、そこに住む住人は高木、本名、高木英二とその妻、娘と息子の四人家族だ。
「実は…会社、クビになったんだ…」
「あっそう。」
「ふーん。」
深刻そうに報告する一家の主に見向きもせず、妻、良子(よしこ)と娘、真貴(まき)はテレビを見ながら菓子を食べている。
「なんだその態度は!今までお前達を支えていた稼ぎ元が無くなったんだぞ!」
「確かに、昔はそうだったわねー。」
「でもー、今はさー、義夫の方があんたより稼いでるってー」
「そーそー、このテレビだって義夫が買ってくれたのよ。」
「あんたの着けてるスーツだって、義夫が買ったもんだし。」
英二の息子である義夫(よしお)は、動画配信サイトでゲーム実況や生放送をしており、最初は名無しの底辺だったが、僅か一年で大人気配信者となっていた。
最初は動画配信業をちっぽけでしょうもない物と考え、軽く見ていた高木だったが、稼ぎぶりが顕著になると、もう認めざるを得なかった。
「そ、そうだったな…」
「だからあんたこそ、義夫に感謝しな。」
「分かったならとっとと出てけよ!クソオヤジ!茶の間が臭くなるだろうが!」
「は、はい…」
妻と娘にどやされ、すっかり滅入ってしまった高木は、せめて息子に慰めて貰おうと、二階に上がり、彼の部屋へと入る。
「おーい、義夫、久しぶりに父さんと街に遊びに行かないかー?お前はもう二十歳になるし、酒や女遊びくらい経験した方が…」
「おい!ジジイ!今放送中だっつーの!デカイ声で下品なこと言うんじゃねぇ!」
背後から現れた父にブチギレる義夫。
彼が行っている生放送のコメント欄には、高木が現れた事を茶化すものや、高木に対する罵倒が大量に出現した。
「すまん…義夫…」
「二度とその面見せんな!………いやー、ごめんねー!みんなー!うちのジジイが不愉快な思いさせちゃってー!じゃ、気を取り直してぇっ!レッチュラゴンッ!」
父親に見せていた態度とは打って変わり、義夫は陽気な声で画面の中の視聴者に愛想を振り撒く。
「…………。」
息子にすらボロクソに言われた高木は、最後の希望である趣味、戦艦のプラモデル作りをしようと、義夫の隣の部屋の彼のプラモ倉庫を開けた。
「あれ……?」
いつもなら、幾つも積み重ねられた彼のコレクションがある筈だが、それらが全て無くなっていた。
代わりに、上等な三脚カメラ、マイクなどの撮影機材が小綺麗に整頓されて収まっている。
「………。」
嫌な予感を覚えた高木は下へ降り、妻と娘にプラモの行方を尋ねることにした。
「おい、俺のプラモなんだけど…」
「あのガラクタね。義夫の動画の機械を入れるのに全部捨てたわよ。」
「す、捨てたっ!?」
「何よ。あんなガラクタまた買えば良いじゃない。」
「元部長なんだから金はあるんでしょ?」
夢と希望が詰まった自慢のコレクションを、軽々しくガラクタ呼ばわりされた事に、高木は怒りを爆発させた。
「ガラクタとはなんだっ!あれは、俺の青春、汗、涙、血…俺の全てを注いだ男の結晶だ!」
「けっ!あんなもんより、ハナクソの塊の方がまだ綺麗だい!」
「言ったな!お前!女であっても許さん!」
高校時代に編み出した必殺技、烈海拳、つまるところ、ただのパンチを憎き古女房に放とうとする高木だったが、彼女が持っていたリモコンで顔面を殴られ、地面にのたうち回る。
「ギャーーーッ!は、鼻がァァァァッ!」
「えーい!見苦しい!」
良子は高木を片手で担ぎあげると、玄関まで行き、彼を家の外に乱暴に放り出して、扉に鍵を掛けて家から完全に締め出した。
「く、くそ…お前ら…それでも…家族…か…」
地面にうつ伏せになって倒れている高木は、仕事をクビにされた事、家族に罵倒された事、心の拠り所であった趣味まで奪われてしまった事…今日の災難を思い返して悔し涙を流す。
「畜生…!どいつもこいつも……!」
「そこのお前。」
「……!?」
高木の前に、どこからともなく一人の男が現れた。
体は黒いローブで身を包み、顔はフードに隠れて分からない。
「お前は、この世界にはもう必要とされぬ人間だ。」
「やはり…そうか……所詮俺は……」
「だが、「この世界」には必要とされていないだけの話だ。お前は別の世界に行けば、もっと輝ける。さぁ、行け…選ばれし者よ…」
黒づくめの男が指を鳴らすと、高木の体は青色の炎に包まれ、その場から消え去った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「隊列!前へ!進め―っ!」
海岸に位置する教団国、レコンカ。
ここは魔王海軍の侵攻を度々受けており、脅威に怯える毎日を送っていたが、ある日を境にこれを撃退し、平和を取り戻した。
「次は銃剣の構えだ!一斉に構えろ!撃て!」
この国の軍隊の訓練場。
ざっと数百人は居るであろう兵士たちが一糸乱れぬ動きで銃剣を構え、魔法で宙に浮いている的に向かって一斉に射撃する。
銃撃を浴びた的は、一つの穴が開いたのを皮切りに次々と弾痕を浮かび上がらせ、一瞬で粉々に砕け散ってしまった。
「よし、今日の訓練はこれまで…」
「貴様!誰が休んで良いと言ったァ!」
「げ、元帥殿ッ!?」
訓練所に、豪華な装飾が施された軍服を着た男、高木が現れた。
「月月火水木金金!軍人たるもの休暇は無い!この国は常に魔物の脅威に晒されていること位分かっておろう!」
「で、ですが!連日12時間にも及ぶ訓練は兵士たちの身心の健康に悪影響だと思われ…」
「たわけェ!」
高木が腰に差していた軍刀を抜き、兵士達の指導をしている軍曹に突き付ける。
「そんなものがどうした!それくらい根性で乗り切らんか!この軟弱者め!切り捨てるぞ!」
「ひぃっ!」
「国と貴様の命、どちらが重いと思っている!答えろ!」
「は、はいぃぃぃぃぃ!国ですっ!世界一の強さを誇る軍国、偉大なるレコンカ国ですっ!」
軍曹は高木よりも体格もあり、身長も高いが、軍刀で脅されている彼は高木より遥かに小さく見える。
「うむ、それで宜しい!良いか!お前達!お前達は国の弾丸だ!憎き敵である魔物を殲滅する為に生まれてきた!365日間毎日鍛錬に励み、それで培った力を振るう事だけを心得ておけ!」
呆然とする兵士達にそう告げると、高木は入ってきた入り口から外へ出て行った。
「…教官、大丈夫ですか。」
「あぁ…だ、大丈夫だ……見苦しい所を見せてすまん……」
「いえ、軍曹殿は何も悪くありませんよ…」
地面に尻もちを着いている軍曹に、数名の兵士が寄り添う。
「しかし、平和が手に入ったと思ったら、更に酷い世の中になってしまいましたね…」
「全部あのエイジ・タカギとかいう男が元帥になってからというもの、国の状態は悪くなる一方ですな…」
「本当にそうだな…魔物の襲撃をしょっちゅう受けていた頃がずっと良かった…」
レコンカ国は半年前まで魔物による襲撃を度々受けていたとはいえ、「平民と王族が肩を組み合って酒を飲み合える」と言われている程陽気で自由な国だった。
ある時、いつもの様に魔王軍と戦っていた時、謎の艦隊、人間界の戦争で使われた戦艦や空母の軍勢が現れ、魔王軍を圧倒的な戦力で蹴散らした。
その艦隊の正体は、図鑑世界に転移された高木が付与された宝具で、彼が今までプラモデルで作った艦船の実物を出現させるものだ。
国の窮地を救った高木に国王は大変感激し、彼をレコンカ王国の軍隊に引き入れた。
彼が王国軍に加入したことにより、魔王軍の侵攻は日に日に減って行き、ついに襲撃してくることは無くなった。
しかし、圧倒的な武力を持っている高木は次第に軍の中で増長し始め、ついに軍を乗っ取り将軍として君臨した。
今では武力を背景に、政治に干渉し、無茶苦茶な政策を、「高木の元に生きる臣民の十ヶ条」という名目で強引に成立させた。
ちなみにその内容は、やはり酷いものだ。
一、高木を敬う事。
二、レコンカ国の物はすべて高木の物。
三、毎日高木に感謝すること。
四、高木の気分を悪くした時は、土下座して謝罪すること。
五、高木の言う事は絶対。逆らえば死刑にする。
六、男は勤勉に働き、女は家庭を守れ。由緒ある伝統を尊守しない者は死刑にする。
七、高木の敵である魔物は見つけ次第痛めつけろ。
八、高木を侮辱した者は死刑にする。
九、毎日高木の好きなマグロの刺身とビールを献上すること。
十、今の自分があるのは高木のおかげだということを忘れるな。
何というか、エゴ丸出しな内容である。
当然、こんな無茶なルールの下で生活させられている国民からは活気が失せ、以前よりも悲惨な暮らしを送っているのが現状だ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「今に見ていろ…忌々しい魔物めが!」
軍の司令室。高木は一人で刺身を喰らっていた。
机の周りには、ビール瓶が数本転がっている。
何もかも、上手く行かなくなったのも奴等のせいだ。
魔物娘だとかいう奴等が世界に来て以降、全てが最悪になった。
今まで冴えなかったヤツが、突如偉くなった。
今まで味方だった本部長の妻が魔物娘になってからというもの、本部長の思想がヒラ社員寄りになった。
奴等に残業を強要しようとしたら、反論されて帰られた。
キャバクラに居た奴等の尻を揉めば、殴られた挙句、出入り禁止にされた。
娘が奴等とつるむようになり、帰りが遅くなった。
本当に、ろくでもないこと、屈辱の連続だ。
今に見ていろ、お前らを俺の自慢の艦隊で地獄へ叩き落としてやる。
ドス黒い思いを募らせ、高木は箸で刺身を乱暴に口の中に入れていく。
「偉大なる高木元帥様!緊急事態です!」
「どうした?」
「たった今、我が国の海域の遠方に魔王軍を観測しました!」
秘書の報告を聞いた高木は刺身を食うのを止め、後ろに飾っていた軍刀を腰の鞘に入れる。
「分かった。今すぐに、我が軍を出撃させろ!」
「承知!」
指令を承った秘書は急ぎ足で司令室を後にし、軍部へ要請に向かって行った。
「…格の差を思い知らせてやる!アバズレ共ッ!」
高木は転移魔法を唱え、自分の軍の中で最も高い性能を誇る戦艦「山斗(ヤやまと)」に乗り込んだ。
今ここで、半年ぶりに来襲した魔王海軍と、高木が率いる大軍勢の戦いの火蓋が切られた。
「納期は明日だと言った筈だ!そんな調子じゃ終わらねぇだろうが!やる気あんのか!てめぇ!」
「も、申し訳ありませんっ!」
とある会社のオフィス。
若い男性社員を、黒いスーツに赤いネクタイを着けた中年男性社員が怒鳴り散らしていた。
「おい、止めとけ。真に受ける必要はねーよ。こんな奴の言うことなんか聞かなくて良いって。」
「高木部長、お言葉ですがそれは納期を三日後と明日を勘違いした貴方に非があるのでは?」
同じく作業をしていたドワーフとスキュラの社員が口を挟み、若い男性社員を庇う。
「先輩…」
「何だ?お前ら。女の腐ったような奴等が俺に一丁前にこんなこと言うなんて、随分と威勢が良いじゃねぇか。」
「貴方は高崎くんの納期を二日前に知らされている筈ですが、何故それを伝えなかったのでしょうか?」
「そ、それはだ!たまたま仕事が忙しくてそこまで手が回らなかっただけだ!」
「へー、一日中他の課の女の子達を飲みに誘いに声を掛けたり、お偉いさんにゴマすってるのが忙しいって言うんだー」
「なっ…!て、てめぇ!」
ドワーフの社員の一言で、高木は怒りを露にする。
拳を硬く握りしめ、今にも彼女達に殴りかからん勢いだ。
「というかさー、それってわざと高崎くんに情報伝えないことで怒鳴る口実作ってんじゃないんですかー?」
「だとすれば最低ですねー」
更にコピーを取ろうとしていたマーシャークの社員、高崎と呼ばれた若い男性社員の同期の男性社員が援護射撃を飛ばす。
「ナメやがって!俺を誰だと思っている!俺は部長だぞ!お前らより遥かに格上なんだ!」
「確かに、役職は確かに上ですが、貴方のような方は一度も上司と思ったこともありません。」
「い、言わせておけば…!この俺を怒らせた事を後悔させてやる!」
拳を振り上げ、デスクワークをしていたスキュラの社員に高木が殴り掛かろうとした、その時。
「喰らえ!高校時代に地元の空手大会で優勝した俺の必殺技を…」
「これは一体どういうことだ?」
修羅場の真っ只中に、新たに一人の男性社員がそこに現れた。
紺色のスーツを着こなし、清潔な感じが漂っている中肉中背の若めの男だ。
彼の名は竜寺(りゅうじ)ワタル。ここの部署の次長だ。
つい十年前まで彼はただのヒラ社員に過ぎず、ロクな仕事を回されずに茶汲みなどの雑用ばかりやらされていたことから、「お茶汲みの竜寺」と馬鹿にされていたダメ社員だったが、自身の地道な努力により評価を見直され、ここまで出世したのだ。
部下からの信頼も厚く、扱いも高木とは雲泥の差だ。
「次長!?」
「どうして!?」
「フン。茶汲みの分際でよくもまぁここまで登り詰めたもんだな。相変わらず気に食わない野郎だ。」
忌々しげな目で、高木は竜寺を睨み付ける。
「高木部長。俺のことはいくらでも悪く言っても構いません。ですが、俺の部下に危害を加えることは止めてください。」
「あぁん?」
「そんなに彼等を殴りたいのであれば、俺を殴って気持ちを落ち着けてはいかがですか。」
「次長!こんな奴なんかに、そんなことする必要なんかありませんよ!」
「 そうですよ!止めてください!」
「ほぉ〜、中々成長したじゃねぇか〜…褒美として、てめぇのスカした面が膨れ上がるまでぶん殴ってやる!」
高木が左手で竜寺の胸ぐらを掴み、右手で彼の顔面を殴ろうとする。
「高木君、お取り込みの最中悪いがちょっと私の所まで来て欲しい。」
「ほほほッ、本部長!?」
質の良いスーツを着ている太った壮年男性、本部長が高木を呼び止めた。
「君に重要な話がある。至急、来てくれ。」
「はい、仰せのままに!」
上からの圧力に弱い高木は、先程までの凶暴な態度をコロリと変え、恐縮した態度で本部長に付いて行った。
高木が連れられた先は彼のデスクで、その上には綺麗に整頓された書類が幾つか置いてある。
「本部長…私に話とは一体何でしょうか…」
「単刀直入に言おう。君はクビだ。」
「えええええっ!」
突然の宣告に、高木は顔面蒼白になった。
「ど、どうしてですか…!私はかれこれここが開設された当初から勤務しているんですよ!」
「ああ、確かに君はここができた時から働いていて、一度の欠勤も無い。しかし…だ…ここの所君の担当する所の売り上げが年々減少し、今では半分以下になってしまっているんだ。」
「ええっ!?」
「それに、わが社が労働環境の改善を押し進めるプロジェクトを施行しているのは知っているね。」
「はい、存じております。それが私のクビと関係あるのですか。」
「勿論、大有りだ。君の担当する部署ではハラスメント問題が多く上がっていてね…極秘裏にアンケートを取った所、なんと100%のこの部署に勤務する社員が、君から数々のハラスメントを受けていることが分かった。」
「……………!」
「また、病気で寝込んでいる夫を無理矢理出社させられそうになった、との苦情が君の部下である高崎君の妻から寄せられている。」
「そんなの濡れ衣です!私がそんなことを言うわけが…」
「これを聞いて、そうと言えるのかね?」
本部長が録音装置を机の上に置き、スイッチを押して再生する。
「「もしもし、お電話変わります。高崎の妻です。」」
「「ああ、奥さんか。部長の高木だ。今この部署は人手が足りなくてね。今すぐにでも高崎君に来て頂きたい。」」
「「それは無理です。夫は今熱を出して寝込んでいまして…とても出社できる状況では…」」
「「ふざけるな!今すぐにでも叩き起こせ!このアバズレが!毎日会社に出てこそ社会人として当たり前なんだぞ!お前の夫はその当たり前の行為を…」」
「「……それでも私は夫は出社させる気はございません。」」
「「何?」」
「「夫はただでさえ体が弱いのに、仕事で壊してしまった体を更にボロボロにさせる真似など…させません!」」
「「そうかそうか…分かった。なら高崎が休むことを許可しよう。」」
「「そうですか。ありがとうござ…」」
「「ただし、お前が俺に身体を捧げれば…の話だがな。」」
「「……………!?」」
「「前に会って見て思ったけど、お前、鰻の下半身は置いといたら上玉の女じゃねぇか。どうだ?俺に一晩抱かれて良いって言うんなら、お前の旦那を休ませてやっても良いぜ。」」
「「…………!私は、高崎さんの妻です!貴方なんかに抱かれる筋合いはありませんっ!」」
「「ほぉ〜?夫がどうなっても良いのか?再び会社に出社する頃には、あいつの居場所は無くなっているだろうな〜?」」
「「………最低ですね!失礼します!」」
音声はここで途切れ、再生が止まった。
額から汗を噴き出させ、口を大きく開けて固まる高木を、本部長は冷たい目で見つめている。
「これは高崎君の妻が私に送ってきたものだ。」
「……………。」
「病気で倒れた部下に出社を強要するだけではなく、その妻を卑劣な手段でレイプしようとするとは…君には妻子がいるというのに…」
怒りと哀しみが露骨に表れている溜め息をつき、本部長は手で額を押さえた。
「……………。」
「こんな業績も人間性も最低な人間を会社に置いておく訳にはいかない。即刻、退職願おう。」
「それでは!私が居なくなったら部長は一体誰が務め…」
「もう決めてある。後任は竜寺君だ。」
「竜寺!?あんな人の良さだけが取り柄の若造がですか!?」
「そうだ。君の部下達は君よりも彼を選んだ。だから、安心してこの会社から出ていってくれ。二度と、来ないで欲しい。」
無慈悲な宣告を受けた高木はその場に崩れ落ち、手を床に着いてその場に伏した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「た、ただいま…」
「随分早いわね。」
「ったく、何で早く帰ってくんだよ。」
高木家。
そこそこ良い土地に立てられた一軒家で、そこに住む住人は高木、本名、高木英二とその妻、娘と息子の四人家族だ。
「実は…会社、クビになったんだ…」
「あっそう。」
「ふーん。」
深刻そうに報告する一家の主に見向きもせず、妻、良子(よしこ)と娘、真貴(まき)はテレビを見ながら菓子を食べている。
「なんだその態度は!今までお前達を支えていた稼ぎ元が無くなったんだぞ!」
「確かに、昔はそうだったわねー。」
「でもー、今はさー、義夫の方があんたより稼いでるってー」
「そーそー、このテレビだって義夫が買ってくれたのよ。」
「あんたの着けてるスーツだって、義夫が買ったもんだし。」
英二の息子である義夫(よしお)は、動画配信サイトでゲーム実況や生放送をしており、最初は名無しの底辺だったが、僅か一年で大人気配信者となっていた。
最初は動画配信業をちっぽけでしょうもない物と考え、軽く見ていた高木だったが、稼ぎぶりが顕著になると、もう認めざるを得なかった。
「そ、そうだったな…」
「だからあんたこそ、義夫に感謝しな。」
「分かったならとっとと出てけよ!クソオヤジ!茶の間が臭くなるだろうが!」
「は、はい…」
妻と娘にどやされ、すっかり滅入ってしまった高木は、せめて息子に慰めて貰おうと、二階に上がり、彼の部屋へと入る。
「おーい、義夫、久しぶりに父さんと街に遊びに行かないかー?お前はもう二十歳になるし、酒や女遊びくらい経験した方が…」
「おい!ジジイ!今放送中だっつーの!デカイ声で下品なこと言うんじゃねぇ!」
背後から現れた父にブチギレる義夫。
彼が行っている生放送のコメント欄には、高木が現れた事を茶化すものや、高木に対する罵倒が大量に出現した。
「すまん…義夫…」
「二度とその面見せんな!………いやー、ごめんねー!みんなー!うちのジジイが不愉快な思いさせちゃってー!じゃ、気を取り直してぇっ!レッチュラゴンッ!」
父親に見せていた態度とは打って変わり、義夫は陽気な声で画面の中の視聴者に愛想を振り撒く。
「…………。」
息子にすらボロクソに言われた高木は、最後の希望である趣味、戦艦のプラモデル作りをしようと、義夫の隣の部屋の彼のプラモ倉庫を開けた。
「あれ……?」
いつもなら、幾つも積み重ねられた彼のコレクションがある筈だが、それらが全て無くなっていた。
代わりに、上等な三脚カメラ、マイクなどの撮影機材が小綺麗に整頓されて収まっている。
「………。」
嫌な予感を覚えた高木は下へ降り、妻と娘にプラモの行方を尋ねることにした。
「おい、俺のプラモなんだけど…」
「あのガラクタね。義夫の動画の機械を入れるのに全部捨てたわよ。」
「す、捨てたっ!?」
「何よ。あんなガラクタまた買えば良いじゃない。」
「元部長なんだから金はあるんでしょ?」
夢と希望が詰まった自慢のコレクションを、軽々しくガラクタ呼ばわりされた事に、高木は怒りを爆発させた。
「ガラクタとはなんだっ!あれは、俺の青春、汗、涙、血…俺の全てを注いだ男の結晶だ!」
「けっ!あんなもんより、ハナクソの塊の方がまだ綺麗だい!」
「言ったな!お前!女であっても許さん!」
高校時代に編み出した必殺技、烈海拳、つまるところ、ただのパンチを憎き古女房に放とうとする高木だったが、彼女が持っていたリモコンで顔面を殴られ、地面にのたうち回る。
「ギャーーーッ!は、鼻がァァァァッ!」
「えーい!見苦しい!」
良子は高木を片手で担ぎあげると、玄関まで行き、彼を家の外に乱暴に放り出して、扉に鍵を掛けて家から完全に締め出した。
「く、くそ…お前ら…それでも…家族…か…」
地面にうつ伏せになって倒れている高木は、仕事をクビにされた事、家族に罵倒された事、心の拠り所であった趣味まで奪われてしまった事…今日の災難を思い返して悔し涙を流す。
「畜生…!どいつもこいつも……!」
「そこのお前。」
「……!?」
高木の前に、どこからともなく一人の男が現れた。
体は黒いローブで身を包み、顔はフードに隠れて分からない。
「お前は、この世界にはもう必要とされぬ人間だ。」
「やはり…そうか……所詮俺は……」
「だが、「この世界」には必要とされていないだけの話だ。お前は別の世界に行けば、もっと輝ける。さぁ、行け…選ばれし者よ…」
黒づくめの男が指を鳴らすと、高木の体は青色の炎に包まれ、その場から消え去った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「隊列!前へ!進め―っ!」
海岸に位置する教団国、レコンカ。
ここは魔王海軍の侵攻を度々受けており、脅威に怯える毎日を送っていたが、ある日を境にこれを撃退し、平和を取り戻した。
「次は銃剣の構えだ!一斉に構えろ!撃て!」
この国の軍隊の訓練場。
ざっと数百人は居るであろう兵士たちが一糸乱れぬ動きで銃剣を構え、魔法で宙に浮いている的に向かって一斉に射撃する。
銃撃を浴びた的は、一つの穴が開いたのを皮切りに次々と弾痕を浮かび上がらせ、一瞬で粉々に砕け散ってしまった。
「よし、今日の訓練はこれまで…」
「貴様!誰が休んで良いと言ったァ!」
「げ、元帥殿ッ!?」
訓練所に、豪華な装飾が施された軍服を着た男、高木が現れた。
「月月火水木金金!軍人たるもの休暇は無い!この国は常に魔物の脅威に晒されていること位分かっておろう!」
「で、ですが!連日12時間にも及ぶ訓練は兵士たちの身心の健康に悪影響だと思われ…」
「たわけェ!」
高木が腰に差していた軍刀を抜き、兵士達の指導をしている軍曹に突き付ける。
「そんなものがどうした!それくらい根性で乗り切らんか!この軟弱者め!切り捨てるぞ!」
「ひぃっ!」
「国と貴様の命、どちらが重いと思っている!答えろ!」
「は、はいぃぃぃぃぃ!国ですっ!世界一の強さを誇る軍国、偉大なるレコンカ国ですっ!」
軍曹は高木よりも体格もあり、身長も高いが、軍刀で脅されている彼は高木より遥かに小さく見える。
「うむ、それで宜しい!良いか!お前達!お前達は国の弾丸だ!憎き敵である魔物を殲滅する為に生まれてきた!365日間毎日鍛錬に励み、それで培った力を振るう事だけを心得ておけ!」
呆然とする兵士達にそう告げると、高木は入ってきた入り口から外へ出て行った。
「…教官、大丈夫ですか。」
「あぁ…だ、大丈夫だ……見苦しい所を見せてすまん……」
「いえ、軍曹殿は何も悪くありませんよ…」
地面に尻もちを着いている軍曹に、数名の兵士が寄り添う。
「しかし、平和が手に入ったと思ったら、更に酷い世の中になってしまいましたね…」
「全部あのエイジ・タカギとかいう男が元帥になってからというもの、国の状態は悪くなる一方ですな…」
「本当にそうだな…魔物の襲撃をしょっちゅう受けていた頃がずっと良かった…」
レコンカ国は半年前まで魔物による襲撃を度々受けていたとはいえ、「平民と王族が肩を組み合って酒を飲み合える」と言われている程陽気で自由な国だった。
ある時、いつもの様に魔王軍と戦っていた時、謎の艦隊、人間界の戦争で使われた戦艦や空母の軍勢が現れ、魔王軍を圧倒的な戦力で蹴散らした。
その艦隊の正体は、図鑑世界に転移された高木が付与された宝具で、彼が今までプラモデルで作った艦船の実物を出現させるものだ。
国の窮地を救った高木に国王は大変感激し、彼をレコンカ王国の軍隊に引き入れた。
彼が王国軍に加入したことにより、魔王軍の侵攻は日に日に減って行き、ついに襲撃してくることは無くなった。
しかし、圧倒的な武力を持っている高木は次第に軍の中で増長し始め、ついに軍を乗っ取り将軍として君臨した。
今では武力を背景に、政治に干渉し、無茶苦茶な政策を、「高木の元に生きる臣民の十ヶ条」という名目で強引に成立させた。
ちなみにその内容は、やはり酷いものだ。
一、高木を敬う事。
二、レコンカ国の物はすべて高木の物。
三、毎日高木に感謝すること。
四、高木の気分を悪くした時は、土下座して謝罪すること。
五、高木の言う事は絶対。逆らえば死刑にする。
六、男は勤勉に働き、女は家庭を守れ。由緒ある伝統を尊守しない者は死刑にする。
七、高木の敵である魔物は見つけ次第痛めつけろ。
八、高木を侮辱した者は死刑にする。
九、毎日高木の好きなマグロの刺身とビールを献上すること。
十、今の自分があるのは高木のおかげだということを忘れるな。
何というか、エゴ丸出しな内容である。
当然、こんな無茶なルールの下で生活させられている国民からは活気が失せ、以前よりも悲惨な暮らしを送っているのが現状だ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「今に見ていろ…忌々しい魔物めが!」
軍の司令室。高木は一人で刺身を喰らっていた。
机の周りには、ビール瓶が数本転がっている。
何もかも、上手く行かなくなったのも奴等のせいだ。
魔物娘だとかいう奴等が世界に来て以降、全てが最悪になった。
今まで冴えなかったヤツが、突如偉くなった。
今まで味方だった本部長の妻が魔物娘になってからというもの、本部長の思想がヒラ社員寄りになった。
奴等に残業を強要しようとしたら、反論されて帰られた。
キャバクラに居た奴等の尻を揉めば、殴られた挙句、出入り禁止にされた。
娘が奴等とつるむようになり、帰りが遅くなった。
本当に、ろくでもないこと、屈辱の連続だ。
今に見ていろ、お前らを俺の自慢の艦隊で地獄へ叩き落としてやる。
ドス黒い思いを募らせ、高木は箸で刺身を乱暴に口の中に入れていく。
「偉大なる高木元帥様!緊急事態です!」
「どうした?」
「たった今、我が国の海域の遠方に魔王軍を観測しました!」
秘書の報告を聞いた高木は刺身を食うのを止め、後ろに飾っていた軍刀を腰の鞘に入れる。
「分かった。今すぐに、我が軍を出撃させろ!」
「承知!」
指令を承った秘書は急ぎ足で司令室を後にし、軍部へ要請に向かって行った。
「…格の差を思い知らせてやる!アバズレ共ッ!」
高木は転移魔法を唱え、自分の軍の中で最も高い性能を誇る戦艦「山斗(ヤやまと)」に乗り込んだ。
今ここで、半年ぶりに来襲した魔王海軍と、高木が率いる大軍勢の戦いの火蓋が切られた。
19/02/11 20:58更新 / 消毒マンドリル
戻る
次へ