雪原の暴虎・前編
野生。それは人間社会と違い過酷だが、自由でもある。
食べ物は店や自販機で買うのではなく、自分で取って食べなければならない。
怪我や病気を患っても治療したり看病してくれる者は誰もおらず、自力で治すしかない。致命傷を負おうものなら人間社会よりも早く死に繋がり、助かる確率は遥かに低い。
人間社会では殺しをするのは違法だが、野生では殺しは合法、否、当たり前なのだ。他の命を奪って自分の命を養う。それが野生で生きる方法なのだ。
人間社会は規則や法律でがんじん絡めに縛り付けてくるが、その代わり命を守ってくれる保証はしてくれる。
自然界では、人間社会のように法律や規則で縛り付けてくるようなことはない。ただし、命を守ってくれるような保証はどこにもない。
そんな厳しくも自由な世界で逞しく生きる魔物娘を紹介しよう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
チンポスキー。魔界の高緯度地域で冷帯気候に属し、夏は暖かいが、冬は厳しい寒さを迎える。
今の季節は冬のようだ。
「どうっ、せいっ!ハァッ!」
雪原の中心で一人の少年が上半身を裸にして、一心に舞を舞うように激しい動きをしている。
ブウンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!
少年は拳や脚に力を込めて、といってもがむしゃらに力任せに振り回してあるわけではなく、絶妙に力を込め相手の急所を攻撃するかのように空中に何度も打ち付けている。
「肉体の鍛練はここまでにして、瞑想にうつるとしよう」
彼の名はカンレン。
霧の大陸で名を馳せている少年憲法家だ。小さな体は見た目よりも鍛えられており、腕相撲でオーガを圧倒し、回し蹴りで自分の身長の数倍はある大岩を砕き、手から出される気功でジパングの相撲取りを吹き飛ばしたりもしている。
そんなカンレンの強さに多くの女性や魔物娘が惚れこみ、結婚を申し出てきたが彼はそれを全て拒否した。
彼は元々女に興味はなくそういうことなどどうでもいいのと、負かされた格闘家に恨みを買っており何度も襲撃を受けた経験があるため、妻の身が危険に晒されてしまう可能性があるため敢えて結婚はしないでいた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
小さな滝。滝の上の両端にある岩には雪が積もっている。
そこから水が流れ落ち、下に水溜まりを作っている。
その水溜まりの中でちょうど水が落ちてくる真下でカンレンは座禅を組み、瞑想していた。
「・・・・・。」
目を閉じ、意識を集中させて精神力を高める。
この滝は小さいといえど、常人なら指先で少し触れただけでも手を押さえて飛び上がってしまうくらい冷たい水が上から大量に激しく落ちてくる。
そんな所で瞑想をしていられる彼の精神力と肉体は相当なものだろう。
「・・・・・。」
パシャッ、パシャッ、パシャッ
何者かが水溜まりを歩いてカンレンのほうに近づいてくる。
「わぁ、男の子だぁっ!しかも裸でいるなんて何て無防備なんだぁ!」
カンレンに近づいてきたのはグリズリーだ。熊の特性を持った魔物娘である。基本的には温厚で、凶暴になるとしてもハニービーのミツを摂取した時くらいといういたって大人しい魔物である。
だが、そんな彼女もカンレンから発せられるオスの強い匂いでかなり興奮しており、今にも襲いかかりそうだ。
「修行の邪魔だ。失せろ。」
「まぁまぁ、修行なんて後でいくらでもできるでしょっ♪だから私とセック・・・」
「失 せ ろ」
カンレンは全身から気迫を出し、口から少年のものとは思えないほど重厚な低い声を出した。
「・・・・・・。」
グリズリーは顔を青くして後ずさり、トボトボと去って行った。
あまりの威圧感に悲鳴を上げて逃げ出す気力すら削がれてしまったのである。
「・・・・・。」
修行中に思わぬ邪魔が入り、(本人としては)取り乱してしまったがカンレンは再び心を無にする。
バシャンッ、バシャンッ、バシャンッ
またしても何者かがカンレンに近づいてくる。しかも今度はさっきのグリズリーより大きい。
「・・・・・。」
しかしカンレンは瞑想に集中しているため気づいていない。
ガバァッ!
侵入者はカンレンがこちらに気づいていないのを確認すると飛びかかった!
ザバシャァンッ!
「ッ!」
カンレンは襲いかかってきた侵入者の気配を感じとると、とっさに身を翻して間一髪のところで回避した。
「ありゃあ、しくじっちまったか!」
さっきのグリズリーのものとは違う女の声がした。
「何者だっ!」
カンレンはさっきまで瞑想で閉じていた目をカッと見開いて相手を睨む。
「中々生きのいいオスじゃねぇか。」
カンレンの視界の前に現れたのは人虎。トラの特徴を持つ魔物娘だ。
ただ、その人虎は図鑑で見る人虎とは違い体格がさらに逞しく発達しており、身長はカンレンの二倍はあり、腹筋が割れているだけではなく、腕には力こぶがあり、背筋が後ろからも見えるほど隆起していて、首も太い。
ガチムチじゃねぇか!?一体どんな鍛え方したらああなるのよ!?ねぇ!?
プロテインとかドーピングでもキメたんじゃねぇの!?
今のは作者の戯れ言なので気にしなくてよい。
身に付けているのは金属の鎧ではなく、毛皮(ここにいる動物では巨大なものの皮だが、彼女の体が大きいため小さく見える)で、手足や尻尾を覆う毛は、図鑑の人虎よりも毛深く、色が薄い。
「強いオスの臭いがしたんで行ってみたんだが、まさかこんなチビから出てたとはな!」
「私にはカンレンという名があるが、チビであれ何であれ好きに言うがいい。もう一度聞こう。何者だ?」
カンレンがグリズリーを追い払ったときよりも更に強い威圧感を放つ。
「そんなのどうでもいいだろ?」
しかし人虎は平然としていた。呑気にボリボリと背中を掻いている。
「貴様・・・・!」
武道家としてのプライドを傷つけられたカンレンは怒りを露にする。
「そう怒るなっての。それじゃこうするか。俺と勝負しろ。二人で闘って、相手を地面に倒した方が勝ちだ。お前が勝ったら俺が何者か話してやる。」
「お前が勝ったらどうするつもりだ?」
「さぁな〜どうするんだろう〜なぁ〜」
人虎が意地悪に笑う。
「なんだ!はっきりと言え!」
「言ってやってもいいけどお前が勝ったら話してやるよ。」
「上等だ!この勝負、受けて立とう!」
「そーこなくっちゃ面白くねぇな!」
人虎は待っていましたと言わんばかりに身を翻してカンレンに向かって飛びかかる。
「同じ手は二度も食らいはせん!」
カンレンは滝で襲われた時のように避けようとした。
「どるぁっ!」
なんと人虎は空中で巨体をアクロバティックに動かし、体の向きをカンレンが避ける方向に合わせたのだ!
「なっ!?」
ドスンッ!
人虎はカンレンの前に着地すると、続けて地面を蹴り、カンレンにエルボータックルをぶち当てた。
「ぐあっ!」
カンレンは自分より遥かに体格が大きい人虎の体当たりをモロに受けて吹っ飛び転がる。
「まだまだっ!」
カンレンは人虎と同じように地面を蹴ると素早く人虎との間合いを詰めた。
「せりゃあああああっ!!!」
カンレンは人虎の真上まで跳躍すると、拳と蹴りの雨を人虎の上半身に浴びせる!
ドゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
スタッ。
一通り攻撃するとカンレンは地面に降りた。
「さぁ、どうだッ!私が編み出した豪雨拳の味は!」
豪雨拳。カンレンの編み出した必殺技で、相手の頭上に跳び上がり、相手が避ける間もなく豪雨のような拳や蹴りの連打を浴びせる必殺技だ。
オーガやミノタウロス、果てはドラゴンまでノックアウトした実績のある強力な技である。
カンレンは上半身を押さえて立っている人虎に言い放つ。
「いや〜、塩加減が全然足りませんね〜、ってそっちの味じゃねぇか!ガハハハハハ!」
「なっ!?」
人虎は豪雨拳を受けても平然としていた。それどころか豪快に笑っている。
「ちょうど肩が凝ってやがったんだ!いいマッサージだったぜ!ありがとよ!」
「なっ・・・・バカな!」
「おいおい、誇り高い武道家さんが何震えちまってんだぁ?」
「あぁ・・・・これからさらに面白い闘いになりそうだと思うと震えが止まらないのだよ!」
「そうかい、そしたらこっちも全力で楽しませてやらあっ!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
カンレンと人虎は十日間休まずに闘っていた。
「ハァ・・・ハァ・・・」
カンレンの方はかなり疲労が溜まっている様子だが、闘志が衰えている様子はなかった。
一方、人虎の方はというと
「おいおい、もうヘバッちまったのか?」
全くピンピンしている。疲労を隠している様子もない。
「ハァッ・・・ハァッ・・・ま・・・だだ・・・」
カンレンは一歩前に進む度に起きる脚の痛みに顔を歪めながらも、人虎に向かって行き、後ろに回り込む。
「そろそろ使わせて貰いますか・・・」
人虎は脚を踏ん張り、大きく息を吸う。
「もう一度食らえ・・・!豪雨拳・・・!」
カンレンは人虎の背に向けて豪雨拳を放とうとした。
が、すぐに人虎は振り向き、
ゴアオルゥアアァァァァァァッ!!!
凄まじい雄叫びを放った!
あまりの声圧にカンレンは吹き飛ばされる。流石に空中で体勢を立て直す力は残っておらず、地面にそのまま落ち、手足を投げ出す形で倒れた。
倒れたカンレンをものすごい脱力感が襲い、カンレンの視界が狭くなる。
ー私は・・・負けたのだな・・・ー
カンレンの意識は、自分を見下ろして勝利の笑みを浮かべる人虎を前にして途切れた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あ、う・・・・」
カンレンは気がつくと、洞窟の中にいた。体は動物の毛皮の布団で包まれている。
「俺は・・・あの人虎に負けて・・・」
「気がついたか?」
目の前にあの人虎がいる。
片手には粥が盛られている石の器がある。湯気が立ち、薬味として入れたであろう香草のいい臭いがする。
「昨日はあれだけ暴れたんだから腹が減ったろ?食えよ。」
人虎はカンレンの口に、粥を盛った木の匙を近づける。
カンレンは静かに匙に食いつく。
「・・・・。」
「どうだ?」
「うまい・・・。」
粥にしてはかなり濃い味付けではあるものの、素材の味が性質を最大限に生かされており、まるで作った本人が食材の性質を理解して作ったようだった。
「そうだろ?お代わりならまだまだあるから遠慮すんな!」
人虎は器を片手に豪快に笑っていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日。カンレンの体から完全に疲労は消え、再び活力が戻った。それどころか、前より元気になった気がする。
カンレンと人虎が布団の上に座り、
顔を会わせて話している。
「そういや前にした約束を忘れるところだったな!」
ああ、あれか・・・。カンレンはいつかは覚えていないがあの時に人虎が勝負を持ちかけてきたのを思い出す。
「そういえば私は負けてしまったが、一体何をする気なのだ?」
「そうだな、お前を「俺の物」にしようと思う。」
「何?どういうことだ?」
「鈍いなぁ〜、お前を俺の旦那にするってことだよ!」
ガバッ!
「うあっ!?」
カンレンが布団に押し倒される。
「さて、今からお前を男にしてやるよ!」
食べ物は店や自販機で買うのではなく、自分で取って食べなければならない。
怪我や病気を患っても治療したり看病してくれる者は誰もおらず、自力で治すしかない。致命傷を負おうものなら人間社会よりも早く死に繋がり、助かる確率は遥かに低い。
人間社会では殺しをするのは違法だが、野生では殺しは合法、否、当たり前なのだ。他の命を奪って自分の命を養う。それが野生で生きる方法なのだ。
人間社会は規則や法律でがんじん絡めに縛り付けてくるが、その代わり命を守ってくれる保証はしてくれる。
自然界では、人間社会のように法律や規則で縛り付けてくるようなことはない。ただし、命を守ってくれるような保証はどこにもない。
そんな厳しくも自由な世界で逞しく生きる魔物娘を紹介しよう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
チンポスキー。魔界の高緯度地域で冷帯気候に属し、夏は暖かいが、冬は厳しい寒さを迎える。
今の季節は冬のようだ。
「どうっ、せいっ!ハァッ!」
雪原の中心で一人の少年が上半身を裸にして、一心に舞を舞うように激しい動きをしている。
ブウンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!
少年は拳や脚に力を込めて、といってもがむしゃらに力任せに振り回してあるわけではなく、絶妙に力を込め相手の急所を攻撃するかのように空中に何度も打ち付けている。
「肉体の鍛練はここまでにして、瞑想にうつるとしよう」
彼の名はカンレン。
霧の大陸で名を馳せている少年憲法家だ。小さな体は見た目よりも鍛えられており、腕相撲でオーガを圧倒し、回し蹴りで自分の身長の数倍はある大岩を砕き、手から出される気功でジパングの相撲取りを吹き飛ばしたりもしている。
そんなカンレンの強さに多くの女性や魔物娘が惚れこみ、結婚を申し出てきたが彼はそれを全て拒否した。
彼は元々女に興味はなくそういうことなどどうでもいいのと、負かされた格闘家に恨みを買っており何度も襲撃を受けた経験があるため、妻の身が危険に晒されてしまう可能性があるため敢えて結婚はしないでいた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
小さな滝。滝の上の両端にある岩には雪が積もっている。
そこから水が流れ落ち、下に水溜まりを作っている。
その水溜まりの中でちょうど水が落ちてくる真下でカンレンは座禅を組み、瞑想していた。
「・・・・・。」
目を閉じ、意識を集中させて精神力を高める。
この滝は小さいといえど、常人なら指先で少し触れただけでも手を押さえて飛び上がってしまうくらい冷たい水が上から大量に激しく落ちてくる。
そんな所で瞑想をしていられる彼の精神力と肉体は相当なものだろう。
「・・・・・。」
パシャッ、パシャッ、パシャッ
何者かが水溜まりを歩いてカンレンのほうに近づいてくる。
「わぁ、男の子だぁっ!しかも裸でいるなんて何て無防備なんだぁ!」
カンレンに近づいてきたのはグリズリーだ。熊の特性を持った魔物娘である。基本的には温厚で、凶暴になるとしてもハニービーのミツを摂取した時くらいといういたって大人しい魔物である。
だが、そんな彼女もカンレンから発せられるオスの強い匂いでかなり興奮しており、今にも襲いかかりそうだ。
「修行の邪魔だ。失せろ。」
「まぁまぁ、修行なんて後でいくらでもできるでしょっ♪だから私とセック・・・」
「失 せ ろ」
カンレンは全身から気迫を出し、口から少年のものとは思えないほど重厚な低い声を出した。
「・・・・・・。」
グリズリーは顔を青くして後ずさり、トボトボと去って行った。
あまりの威圧感に悲鳴を上げて逃げ出す気力すら削がれてしまったのである。
「・・・・・。」
修行中に思わぬ邪魔が入り、(本人としては)取り乱してしまったがカンレンは再び心を無にする。
バシャンッ、バシャンッ、バシャンッ
またしても何者かがカンレンに近づいてくる。しかも今度はさっきのグリズリーより大きい。
「・・・・・。」
しかしカンレンは瞑想に集中しているため気づいていない。
ガバァッ!
侵入者はカンレンがこちらに気づいていないのを確認すると飛びかかった!
ザバシャァンッ!
「ッ!」
カンレンは襲いかかってきた侵入者の気配を感じとると、とっさに身を翻して間一髪のところで回避した。
「ありゃあ、しくじっちまったか!」
さっきのグリズリーのものとは違う女の声がした。
「何者だっ!」
カンレンはさっきまで瞑想で閉じていた目をカッと見開いて相手を睨む。
「中々生きのいいオスじゃねぇか。」
カンレンの視界の前に現れたのは人虎。トラの特徴を持つ魔物娘だ。
ただ、その人虎は図鑑で見る人虎とは違い体格がさらに逞しく発達しており、身長はカンレンの二倍はあり、腹筋が割れているだけではなく、腕には力こぶがあり、背筋が後ろからも見えるほど隆起していて、首も太い。
ガチムチじゃねぇか!?一体どんな鍛え方したらああなるのよ!?ねぇ!?
プロテインとかドーピングでもキメたんじゃねぇの!?
今のは作者の戯れ言なので気にしなくてよい。
身に付けているのは金属の鎧ではなく、毛皮(ここにいる動物では巨大なものの皮だが、彼女の体が大きいため小さく見える)で、手足や尻尾を覆う毛は、図鑑の人虎よりも毛深く、色が薄い。
「強いオスの臭いがしたんで行ってみたんだが、まさかこんなチビから出てたとはな!」
「私にはカンレンという名があるが、チビであれ何であれ好きに言うがいい。もう一度聞こう。何者だ?」
カンレンがグリズリーを追い払ったときよりも更に強い威圧感を放つ。
「そんなのどうでもいいだろ?」
しかし人虎は平然としていた。呑気にボリボリと背中を掻いている。
「貴様・・・・!」
武道家としてのプライドを傷つけられたカンレンは怒りを露にする。
「そう怒るなっての。それじゃこうするか。俺と勝負しろ。二人で闘って、相手を地面に倒した方が勝ちだ。お前が勝ったら俺が何者か話してやる。」
「お前が勝ったらどうするつもりだ?」
「さぁな〜どうするんだろう〜なぁ〜」
人虎が意地悪に笑う。
「なんだ!はっきりと言え!」
「言ってやってもいいけどお前が勝ったら話してやるよ。」
「上等だ!この勝負、受けて立とう!」
「そーこなくっちゃ面白くねぇな!」
人虎は待っていましたと言わんばかりに身を翻してカンレンに向かって飛びかかる。
「同じ手は二度も食らいはせん!」
カンレンは滝で襲われた時のように避けようとした。
「どるぁっ!」
なんと人虎は空中で巨体をアクロバティックに動かし、体の向きをカンレンが避ける方向に合わせたのだ!
「なっ!?」
ドスンッ!
人虎はカンレンの前に着地すると、続けて地面を蹴り、カンレンにエルボータックルをぶち当てた。
「ぐあっ!」
カンレンは自分より遥かに体格が大きい人虎の体当たりをモロに受けて吹っ飛び転がる。
「まだまだっ!」
カンレンは人虎と同じように地面を蹴ると素早く人虎との間合いを詰めた。
「せりゃあああああっ!!!」
カンレンは人虎の真上まで跳躍すると、拳と蹴りの雨を人虎の上半身に浴びせる!
ドゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
スタッ。
一通り攻撃するとカンレンは地面に降りた。
「さぁ、どうだッ!私が編み出した豪雨拳の味は!」
豪雨拳。カンレンの編み出した必殺技で、相手の頭上に跳び上がり、相手が避ける間もなく豪雨のような拳や蹴りの連打を浴びせる必殺技だ。
オーガやミノタウロス、果てはドラゴンまでノックアウトした実績のある強力な技である。
カンレンは上半身を押さえて立っている人虎に言い放つ。
「いや〜、塩加減が全然足りませんね〜、ってそっちの味じゃねぇか!ガハハハハハ!」
「なっ!?」
人虎は豪雨拳を受けても平然としていた。それどころか豪快に笑っている。
「ちょうど肩が凝ってやがったんだ!いいマッサージだったぜ!ありがとよ!」
「なっ・・・・バカな!」
「おいおい、誇り高い武道家さんが何震えちまってんだぁ?」
「あぁ・・・・これからさらに面白い闘いになりそうだと思うと震えが止まらないのだよ!」
「そうかい、そしたらこっちも全力で楽しませてやらあっ!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
カンレンと人虎は十日間休まずに闘っていた。
「ハァ・・・ハァ・・・」
カンレンの方はかなり疲労が溜まっている様子だが、闘志が衰えている様子はなかった。
一方、人虎の方はというと
「おいおい、もうヘバッちまったのか?」
全くピンピンしている。疲労を隠している様子もない。
「ハァッ・・・ハァッ・・・ま・・・だだ・・・」
カンレンは一歩前に進む度に起きる脚の痛みに顔を歪めながらも、人虎に向かって行き、後ろに回り込む。
「そろそろ使わせて貰いますか・・・」
人虎は脚を踏ん張り、大きく息を吸う。
「もう一度食らえ・・・!豪雨拳・・・!」
カンレンは人虎の背に向けて豪雨拳を放とうとした。
が、すぐに人虎は振り向き、
ゴアオルゥアアァァァァァァッ!!!
凄まじい雄叫びを放った!
あまりの声圧にカンレンは吹き飛ばされる。流石に空中で体勢を立て直す力は残っておらず、地面にそのまま落ち、手足を投げ出す形で倒れた。
倒れたカンレンをものすごい脱力感が襲い、カンレンの視界が狭くなる。
ー私は・・・負けたのだな・・・ー
カンレンの意識は、自分を見下ろして勝利の笑みを浮かべる人虎を前にして途切れた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あ、う・・・・」
カンレンは気がつくと、洞窟の中にいた。体は動物の毛皮の布団で包まれている。
「俺は・・・あの人虎に負けて・・・」
「気がついたか?」
目の前にあの人虎がいる。
片手には粥が盛られている石の器がある。湯気が立ち、薬味として入れたであろう香草のいい臭いがする。
「昨日はあれだけ暴れたんだから腹が減ったろ?食えよ。」
人虎はカンレンの口に、粥を盛った木の匙を近づける。
カンレンは静かに匙に食いつく。
「・・・・。」
「どうだ?」
「うまい・・・。」
粥にしてはかなり濃い味付けではあるものの、素材の味が性質を最大限に生かされており、まるで作った本人が食材の性質を理解して作ったようだった。
「そうだろ?お代わりならまだまだあるから遠慮すんな!」
人虎は器を片手に豪快に笑っていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日。カンレンの体から完全に疲労は消え、再び活力が戻った。それどころか、前より元気になった気がする。
カンレンと人虎が布団の上に座り、
顔を会わせて話している。
「そういや前にした約束を忘れるところだったな!」
ああ、あれか・・・。カンレンはいつかは覚えていないがあの時に人虎が勝負を持ちかけてきたのを思い出す。
「そういえば私は負けてしまったが、一体何をする気なのだ?」
「そうだな、お前を「俺の物」にしようと思う。」
「何?どういうことだ?」
「鈍いなぁ〜、お前を俺の旦那にするってことだよ!」
ガバッ!
「うあっ!?」
カンレンが布団に押し倒される。
「さて、今からお前を男にしてやるよ!」
18/01/22 22:42更新 / 消毒マンドリル
戻る
次へ