連載小説
[TOP][目次]
正義無き教会
アルディモート教会。

「アルフェンヌ様!」

一人の騎士が名を呼びながら駆けつける。

「何だ、騒々しい。」

呼ばれて返事した男は、アルディモート教会
担当騎士団アルフェンヌ隊団長・アルフェンヌ・ル・ディアス。

「緊急事態が発生しました。浄化を行った村に残党の調査に行った
騎士リバリウス及び部下5名が死亡したとの報告が入りました。」
「なんだと。」
「リバリウスが部下と傭兵を連れて残党の調査に行ったところ、村の方で
轟音がしたので別の者たちが応援に向かったところ発見しました。」
「ただ変った所がありまして、死体が肉片になって死んだ者・
頭部だけ吹き飛ばされ死亡した者・内側から炎上し死亡した者。」
「そして、リバリウスについては馬だけ死体が確認できました。」
「なぜ馬だけなんだ。」
「馬以外に彼の痕跡が半身を失った槍しか見つかりませんでしたので。」
「おそらくは、消滅させられたかと・・・」

そこまで報告し終えると、アルフェンヌは震えていた。

「アルフェンヌ様、大丈夫ですか?」
「くくく、はぁーーーーはっはっはっは。」
「あ、アルフェンヌ様?」
「そうかそうか、まだ我らには向かう愚かな屑共がおったのか。」
「と、言われますと。」
「このまま簡単に浄化が終わってしまうとつまらんと思っていたところに、
神が私に敵を与えてくれたようだ。」
「まだ町の外にいる屑共も甚振るのに飽きたところだ、
纏めて浄化してくれるわ。」
「では、早急に兵を召集します。」
「まかせたぞ。」

騎士が礼をし去った後、アルフェンヌは笑いが止まらなかった。
新しい餌が来たことを。





アルディモート郊外約2キロ地点。
「ようやく樹海が終わったな。」
「確かに、長かったね。」
「いつも通っていたから長く感じなかったわ。」

廃村を発ち5時間樹海を歩きようやく出てきたザック達。

「町まで後どの位だ。」
「確か2キロ位だから20分くらいかな。」
「だけど、町には近づかない方がいいわ。」
「じゃあ、どうするんだシエラ。」
「町から離れたところに、生き延びた者達がスラムを作っている。」
「そこなら、町の情報が得られるはずよ。」
「ならそこに行くとしよう。」

街道を1キロ進んだところで少し左側に向かって行き、
町から離れて明かりを灯すスラムに辿り着いた。
だがそこは、スラムより地獄に近かった。
周りには怪我人だらけ、皆なんとか生きているような状態。

「酷いな。」
「怪我人がこんなにいるなんて。」
「私が一緒に避難した時はこんなに酷い状況じゃなかったはずだ。」
「あんた、シエラかい?」

そこにいたのは、サキュバスのセフィーネだった。

「セフィーネさん!これは一体どうしたんですか。」
「教会の奴等がここにいる皆を暇つぶしで甚振っているんだよ。」
「男は切られ、刺されたり暴力を振われた。」
「女、魔物は奴等に慰み者にされたんだ。」
「反撃しようにも子供や怪我人を人質に取り反撃できない。」
「逆らえば容赦なく殺された。」
「それでも奴等はこの横暴を「浄化だ」と言うんだ。」
「これが神とやらに仕える奴らのすることなのか!」

涙ながらに必死に訴えるように言うセフィーネ。
それに怒り震わす、エリナ・シエラ。

「教会はどこまで外道なんだ!」
「人の皮をかぶった悪魔め。」
「だがお前らは深く拘るな。」
「ザック、なぜ!」
「この仕打ちに対して黙っていろと!」
「違う、余計な騒ぎを起こせば奴等は大義名分を得る。」
「魔物を浄化する言い訳ができるからだ。」
「だから、エリナ達は囮程度のことだけしてくれ。」
「後は、人間の不始末は人間が付ける。」
「そして、教会付近には近寄るな。」
「加減が利かないから、巻き込まれて死んでも知らん。」
「「!」」

静かに、冷静な様子を見せていたザックが冷気を放っている。
全てを殺さんばかりに放つ殺気が空気を凍らす。
二人が初めて見た、ザックのキレた姿だった。



作戦はその日の深夜に行われた。
日が経てば、廃村での一軒が教会に知られ
浄化の準備をする時間を与えてしまう為。
シエラの持つ知識とエリナの戦術を使い、動ける者達に陽動をしてもらい
兵を分散させガラ空きになった教会をザックが叩く。
功を奏し、兵を召集中だった為か奇襲を受け旨いこと分散できた。
そして、今宵の地獄が幕を開ける。

「皆上手くやってくれたようだな。」
「さて、この町の毒を潰すとするか。」

ザックが教会に近づくと中から兵士たちが飛び出してきた。
かなりの数がいるらしく、ざっと70人位だ。
兵士50に騎士20名、大将と思わしき奴が1名。

「なんだ、傭兵どもを囮に使って誘い込んだのが一匹か。」
「ほう、すでにこちらの動きを読んでいたのか。」
「貴様が廃村にて部下を殺した報告は受けている。」
「なら、次はこちらに奇襲することはすぐにわかった。」
「どんな奴らが来るかと思っていたが、面白くない。」
「貴様ごとき、兵士達で十分だ。」

兵士達でザックの周りを囲む。

「ここにいるので全員か?」
「全員だが、その必要もなかったな。」
「そうか、なら一人たりとも生きて帰すわけにいかんな。」
「余計な報告をされるとまずいからな。」
「この状況で言えることか。」
「むしろ好都合だ。」
「なに?」

両腕に雷を纏い、左右に開き放つ。

「バスターコレダー!!」

高圧電流が流れ囲っていた兵士達は焼死した。

「っとこんな感じだ。」
「だが、お前らは簡単に死なさん。」
「命ある者の誇りを踏みにじった行為、許されると思うか。」
「たがだが魔物如きの誇りなど、なんとも思わんさ。」
「なら遠慮は要らないわね。」
「なっ!!」
「一文字流・斬岩剣!」

縦一文字に線が入り、騎士の体が真っ二つになった。

「エリナ!何故ここに。」
「同じ魔物を侮辱されて黙っているほど私の誇りは
小さくないのよ。」
「たとえ、ザックの忠告を無視してでも。」
「このくそが!!」

騎士がエリナに不意打ちをしようとした時。

「我が怒りを焔に変え、彼の者に撃ちつけん。」
「フレイム・ゲイザー!」
「ぎゃぁぁぁぁーーーー!」

地面から噴出した焔に焼かれ消し炭と化した。

「シエラ、お前もか。」
「あら、私は元から借りが有るから尚のこと忠告を無視してでも
やらせてもらうわ。」
「けど、復讐でやるのではなく同属の誇りのためよ!」

はぁ、とため息をし言っても無駄だと諦めた。

「なら、この騎士たちは任せるぞ。」
「ええ、わかった。」
「まかせて。」
「俺はあの気取った野郎を潰す。」

右にエリナ、左にシエラが付き騎士を相手にする。

「少しは骨がある事を祈るわ。」
「簡単に燃え尽きないでね?」

今まで馬鹿にされた分を返すが如く、騎士たちを挑発する。

「魔物如きが、ざけるなぁ!」
「バラバラに刻んでやる!」

怒りに任せ、闘牛の様に突撃する。

「単純ね、実戦経験無いんじゃないの?」

呆れながら相手を見て、刀を鞘に納め構える。

「勿体無いけど、邪魔だからとっとと消えな!」
「早撃ち・ソニックバスター!」

抜刀と同時に衝撃波で騎士たちの胴体が泣き別れになる。

「魔物を誇りをなめるな!」



一方、シエラは。
石壁を張り、相手を囲っていた。

「どうしたの?出れないの?ザックなら簡単に出れたけどなぁ。」
「騎士って弱いんですね。がっかり。」
「貴方達、下衆野郎共は消し炭で十分ですね。」

杖を構え、呪文を詠唱する。

「我焦がれ 誘うは焦熱への儀式 其に捧げるは炎帝の抱擁」
「イフリート・キャレス」

焔の壁が燃え上がり悲鳴が咆哮する。

「耳障りね、石柱で潰すべきでしたね。」


「さて、残りは貴様だけだな。」
「なるほど、村で部下を殺したのは一人ではなく三人だったのか。」
「いや、俺一人だ。」
「なら貴様は、その二人以上の強さというわけか。」
「そうなるな。」
「面白い、屑ばかりで腕試しにならんかった所だ。」
「人質を使って、反撃出来なくした相手でやった行為がか。」
「それで腕ためしとは、片腹痛いわ!」
「なら受けてみよ、我が剣捌きを!」

剣を抜き、レイピアの如く連続突きを放つ。
だが、エリナにも劣る動きではザックに通じない。
あたる寸前に位置をずらして避ける。
それを余裕が無いと見て取れたらしい。

「は、は、はぁーー、どうしたギリギリで避けているではないか。」
「その程度か、あーーーん?」

ぷ、側から見てエリナが笑っていた。
エリナから見て、ザックがやる気の無い顔で
相手しているのが丸見えだからだ。

「はあ、この程度で騎士団長が務まるのか。」
「それとも、こいつ自体が無能なのか分からんな。」
「な、なんだと!」
「もういいか、終わりにしても。付き合うのが馬鹿らしい。」

エリナのときと同じように剣を持ち、圧し折る。
さらに、エリナの剣よりも軽かった事に驚いた。

「こんな剣で相手にしていたのか、舐められたもんだな。」
「け、剣を素手で折りやがった!」
「さあて、手前は色々とやり過ぎた。」
「特別にフルコースをご馳走してやろう。」

さあ、お仕置きの時間だ。
右腕に雷を纏い、拳を放つ。

「フラッシュピストン・マシンガンナックル!」

閃光と共に放たれた拳の嵐が体全体を嬲り鎧を破壊する。

「6連式レールガンショット、焼けろや!」

腹部に拳を打ち込み電流を内部に流し、内臓を焼き尽くす。

「続けて、6連式パイルバンカーショット!砕けろ!」

上に持ち上げ、バンカーを打ち込む。

「止めの、フルブレットパイルバンカーキャノン!永遠に眠っていろ!」

零距離から放たれて一瞬にして消滅した。

「こんな、ばか・・・ぐえらぁぁーーーーー!」
「貴様が負けた理由はたった一つ。」
「手前は俺を怒らせた。」






それからしばらくして、町は教会から開放されスラムの人たちが
戻って生活するようになった。

「とりあえずは、何とかなったな。」
「でも、死んだ人の数がかなり多いわ。」
「死んだ人は戻らない、私の家族と同じように。」
「だが何とかやってくしかない。生きている限りな。」
「それに俺には行かなければならんからな中央大陸へと。」
「町のことはセフィーナ達に任せよう。」
「きっと大丈夫さ。」
「そうだね。」
「うん。」






教会に蝕まれた町を救い、次の町を目指す。
11/06/23 15:29更新 / 時雨
戻る 次へ

■作者メッセージ
更新遅れてすみません。
シリアスを連続で続けると、内容がうまく出来なくて遅れました。
とりあえず、シリアスは一旦終わってギャグと(ワンワン♪)路線でも
やります。
なるべく早く更新するようがんばります。
ちなみに、技のネタが尽きたので無理やり持ってきました。
かなり、ベタだと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございます。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33