六日目、昼〜夜
黒い球がはじけ、闇が広まったかと思うと、あっという間に闇が引いていった。
「我を呼び覚ましたのはお主か?」
そして、黒球のあった場所に、ひとりの少女がたっていた。
クリッとした目。
茶色がかった赤い髪。
髪の間から覗く、片方が折れたヤギの角。
肉体は見事なょぅじょ体型。
モッフモフな手に、足には蹄。
そして方に担ぐは巨大な鎌。
ロリの帝王、バフォメットであった。
「ギャーーーッ!!!ロリが出たーーーッ!?」
瞬間、ロックが悲鳴を上げた。
「・・・はぁ?」
「よんな!あっち行け!しっしっ!ロリは要らん!」
「・・・貴様、我の素晴らしい筋肉美のどこを見てそのようなざれご・・・と?」
その時、バフォメットが視界に入った自分の手を見て首をかしげた。
モフモフで小さい自分の手に、なぜか目をパチクリさせる。
「お・・・お?」
そして自分の身体を見て、くるりと一回転して、蹄を鳴らしてみて。
「・・・なんじゃこれはぁぁぁぁぁぁっ!!?わ、我の素晴らしかった肉体が、こんなひょろこい幼子の身体に!!?」
まるで見ているものが信じられないという風に、バフォメットは自分の身体をぺたぺた(モフモフ)まさぐり、大慌てしていた。
「きっ、きっ、貴様!人間!我に何をしたのじゃ!?」
「知らねぇよ!とりあえずこっち近寄るなっつの!!」
「・・・此奴の仕業でないとすると・・・ア、イ、ツかぁ・・・」
バフォメットの顔がみるみる内に怒りの形相に変わっていく。(ロリぃために、あんまし怖くないが)
「ロック!避けろぉぉぉっ!!!」
『…Destroy…Them!!!』
「えっ!?げっ!?」
その時、ロックの背後についたガーディアンが拳を振り下ろした!
「ぬぉぉぉっ!?」
「ぬぉっ!?」
ロックは慌ててバフォメットを抱きかかえて走った!
『ドグァッ!』
間一髪、ふたりにガーディアンの拳が直撃することは回避した。
「ぎゃーーーっ!俺、ロリ抱いてる!なにこれ!?悪夢!?夢なら早く覚めやがれぇぇぇっ!!!」
「きっ、貴様!離せ!離さんか!!」
『Destroy…Destroy…Them!!!』
走って回避したロックに向けて、今度はガーディアンが岩を投げてきた!
「・・・あ」
それの反応に、遅れた。
『ゴガシャァァァッ!!!』
「ローーーーーーック!?」
岩が砕け散る音が響き、パラパラと砂埃が舞う。
しかし・・・
「・・・この投石、我に対する宣戦布告と受け取るぞ、機械人形」
砂埃が晴れた向こうには、へたりこんだロックの腕の中で左手を前に掲げたバフォメットがガーディアンを睨んでいた。
「・・・いいかげん離せこの役立たず!」
「ぐぼぉっ!?」
バフォメットはロックの鳩尾に肘打ちをかますと、すっくと立ち上がってガーディアンに対峙した。
(ロックは後ろで悶え苦しんでる)
「・・・我が誰か知らぬであろうな。我は紳士的じゃからな。名乗ってやろう」
「…Destroy…Her!!!」
「我が名は『バルフォス』!魔王四天王がひとり、『破壊のイープァ』の師にて、魔王様の片腕『魔法の死神』の二つ名を頂いた者!その恐怖の魔の力、受けてみよ!!!」
〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜
[戦闘開始!!!]
ーーーーーーーーーーーーーーー
[モンスター判定、難度 40]
[バルフォス知識点 40、成功!]
ーーーーーーーーーーーーーーー
『機会人形 AGー8型が現れた!』
AG-8型『…Battle,Syrtem…Stand,By…』
バルフォス「ぬ、ぬ?なんか身体が本調子でないぞ?」
〜〜〜俊敏点〜〜〜
1、バルフォス、25
2、AG-8型、12
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜
[ターン1]
〜〜〜〜〜〜
[バルフォスの行動]
バルフォス「ま、まぁよい!一撃で決めてやろう!」
バルフォスは詠唱を始めた!
バルフォス「『我が命に従い、闇よ呼応せよ、眼前の愚者の影を喰らいてその者の生を奪い、奈落の闇へ誘いたまえ』・・・闇に喰われよ!『カーネイジ・ヴァイト』!!!」
バルフォスが大鎌の柄先をAG-8型に向けた!
『・・・ぱすん♪』
バルフォス「・・・へ?」
しかし、要求される魔力Levelが足りないため、魔術は不発に終わった!
バルフォス「なんじゃとーーーっ!?」
『異常状態発生中!!!』
『ロックの魔力値が低すぎるため、契約魔物であるバルフォスの魔力値が60%ダウン!』
『それに伴い、バルフォスの魔力Levelが変更されました!』
『魔力値 80→32』
『魔力Level EX→B』
[AG-8型の行動]
AG-8型『…Fire…Blast…!』
AG-8型の左腕が開き、火炎が吹き出した!
『ボォォォォォゥッ!』
バルフォス「くっ、これなら!」
バルフォスは魔術結界を開き、火炎放射を防いだ!
〜〜〜〜〜〜
[ターン2]
〜〜〜〜〜〜
[バルフォスの行動]
バルフォス「ぬぎぎぎ・・・ならこれならどうじゃ!」
バルフォスは詠唱を始めた!
バルフォス「『我が命に従い、闇よ呼応せよ。眼前の敵を射抜きて、敵を打ち砕け』・・・突き抜けよ!『ダークネス・グングニール』!!!」
バルフォスの片手に紫の光が集約する。それが槍の形を象ると、バルフォスがおもいっきり振りかぶってそれを投げ飛ばした!
『ボゴォォォッ!!』
AG-8型『…!!??!??!!!』
クリティカル!AG-8型のコアを突き抜いた!
魔術の効果により、魔力防御が無視された!
グングニルがAG-8型の身体を突き抜け、デカイ穴を開けた!
(32/2+30)*2=92ダメージ!
バルフォスは魔力を消費した!
[魔力値 32→2]
AG-8型『…d…ger…core…br…k…ca…ove……n't……mo…………』
AG-8型はコアを破壊されたことにより、機能を停止した!
[バルフォスは勝利した!]
〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜
『ゴゴゴゴゴゴ・・・ズズゥン!』
胴の真ん中に穴を開けたガーディアンが大きな音を立てて倒れた。
その前にはバルフォスが肩で息をついていた。
「はぁ・・・はぁ・・・ば、馬鹿な・・・『ダークネス・グングニール』を放っただけで・・・魔力が尽きたじゃと・・・?」
バルフォスはぷるぷる震える手をジッと見て、ハッとしたようにロックを見た。
「っ!?な、なんだよ?」
「き、貴様、ま、魔法才能はあるのか?」
「へ・・・体質のせいで、魔法使えねぇんだけど?」
「ーーーーーー・・・!」
瞬間、バルフォスは頭を抱えて膝を突き、床につっぷして「ぬぉぉぉ・・・」とうめき声を上げた。
「な、なんだよ?」
「き、貴様かっ・・・貴様に魔法才能がないせいでっ・・・我の、我の魔法才能にまで影響がぁぁぁ・・・ぬぉぉぉぉぉ・・・」
バルフォスは右腕で地面をボカボカ叩きながらつっぷしたまま呻いていた。
その時、ガーディアンの死体(?)を回り込んで、サティアたちが来た。
「ロック!だいじょう・・・なに?アンタ、泣かせたの?」
「へ?・・・いやっ!ちが、こいつが勝手に・・・」
「貴様、許さん・・・貴様の、貴様のせいでぇぇぇ・・・」
「やっぱアンタが泣かしてるんじゃない!!!」
「ちげーってば!」
サティアがロックを責め始め、ラトラがバルフォスの横にしゃがみこんでじーっとバルフォスを見、ベーゼがケラケラ笑い、ネフィアはロックとサティアをなだめるべきかオロオロしていた。
「はぁ・・・ん?」
ベルンがホッとため息を吐いた時、ふと倒れたガーディアンの貫かれた胸の穴に、キラリと光るモノが引っかかっているように見えた。
「・・・なんだ?」
みんなが他に色々するのをよそに、ベルンは倒れたガーディアンによじ登り、穴の側に近寄った。
どうやら穴の近くで光っていたのは、コアの中身だったようだ。
『AG-8-Core』と書かれた箱が一部が抉られ、その中で魔導回路がぶすぶすと焼き切れて嫌な匂いを発していた。
その中の小さな透明の硝子球の中で、指輪がキラリと光った。
「これは・・・銀か?」
ベルンは、興味本位でそれを手に取った。
[ベルンは、『銀製の指輪』を手に入れた]
ベルンにはなぜこれがガーディアンのコアの中にあったのか、そしてこれがなんなのかはわからなかった。しかし、ベルンはこれがガーディアンのコアに大切なものであることは推測できた。
「おーい。なんか見つけたぞー」
ベルンはガーディアンの上を歩き、みんなに近づいていった。
「へ・・・きゃーっ!?ベルン!?なにそれに乗ってるのよ!?」
「は、早く下りて来い!いつ動き出すか分かったもんじゃねぇ!」
「いや、どうやら中心部が壊れたみてぇだ。しかも、これも取っちまったしな」
ベルンがみんなの前に降り立つと、手のひらにあった、銀の指輪を見せた。
「・・・なんだこれ?」
「ぶっちゃけ、わからん。が、たぶんコレの起動に必要なもんじゃないか?」
「・・・おい、小僧。我に見せてみよ」
バルフォスが手を伸ばして、偉そうにベルンに言った。ベルンは一瞬面食らったが、すっとバルフォスの手のひらに置いてやった。
「・・・むぅ?・・・これは・・・」
まじまじと見たバルフォスが呟いた、その時。
『ごぎんっ!』
「なに偉そうにしてんのよ!」
サティアがバルフォスの頭にげんこつを振り下ろした。
「いっ・・・だぁ・・・なにをするのじゃ!?我の頭を殴るなど、誰が許した!?」
「うっさいわね!なにベルンのこと『小僧』って見下してんのよ!?バフォメットだからって調子のんじゃないわよ!」
「貴様、我のことを愚弄したな!?面白い!その首刎ねてやろう!そこになおれ、蛇女!」
「アンタみたいな非近接要員に負けるほど弱くないわよ!返り討ちにしてやるわ、この子山羊!」
「やめろガキ!サティアちゃんに喧嘩売るなっつの!」
「やめろサティア!相手に悪気はないんだから!」
バルフォスとサティアがガチ喧嘩に発展する前に、ロックがバルフォスの鎌を取り上げ、ベルンがサティアを羽交い締めにした。
「えぇい!返さんか!ヤツの首を刎ねて、盾の装飾にしてやる!」
「ガチでグロいからやめろ!」
「俺は気にしてないから。な?な?」
「・・・ベルンが、そう言うなら・・・」
「なんでそっち丸く収まってんの!?」
ロックが必死に鎌に手を伸ばすバルフォスの頭を押さえつけてる横で、ベルンの説得に頬をわずかに染めたサティアが矛先を収めた。
「ぬぐぐぐ・・・」
「なぁ、結局、指輪はなんだったんだ?」
ベルンが聞くと、バルフォスはテキトーぶって答えた。
「あー・・・これはの、おそらく『魔法具』じゃ」
「魔法具?」
魔法具とは、普通の武器や防具、指輪やメガネなど、人が身につけるものに魔法をかけて能力を底上げしたり、特殊な力を付与したりするものだ。
たとえば『バスタードソード(炎)』という魔法具は攻撃に炎属性が付与される。『筋力のネックレス(+5)』は装備者の筋力を上げたりできる。
「へぇ・・・性能は?」
「そこまでは分からんのぉ・・・試しにつけてみたらどうじゃ?小僧」
バルフォスがベルンにそれを投げて返す。それを言われたベルンは、じっと手のひらの指輪を見た。
「・・・なぁ、ガキ。なんでそれがガーディアンの中にあったんだ?」
「おそらく、コアのバッテリー代わりじゃろ。魔法具は半永久的に作用するものじゃし、ガーディアンのコアを起動させるくらいの作用魔力はあるじゃろ。てか、ガキはやめろ、契約主」
「・・・ん?契約主?だれが?」
「お主に決まっておろうが」
そう言って、バルフォスがロックを指さした。
「・・・俺ぇっ!?」
「我も諦めてやるから、諦めろ。まったく、なんでこんな屑契約主と・・・」
「チェンジで!」
「やれるもんならやっとるわド阿保!『呪い』のせいで不可能じゃ!」
こんどはロックとバルフォスがやれ契約解除だの、やれどっか行けだの言い争いを始めた。
「やれやれ、忙しいねぇ、あのバフォメット」
「そうね・・・」
ベーゼとサティアが肩を竦める。その時、ラトラがベルンに聞いた。
「ねーねー、いい人ー。それ、つけるの?」
「ん?うーん・・・」
「つけてみてさー、能力要らなかったら、ちょーだい!」
「つける前提かよ・・・しょうがないな・・・」
(あのバフォメットも、ただの魔法具だって言ってし、大丈夫・・・だよな)
ベルンは、なんとなしに指輪を右手の人差し指にはめてみた。
『きゅっ』(指輪をはめた音)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・・・………
・・・感知…
・・・認識…
・・・新規…身体…
・・・宿主…人間…
・・・都合…良好…
・・・我…喰…宿主…魔力…得…『チカラ』…
・・・我…宿主…補助…対価…皆無
・・・我…人間…強化…引換…理性
・・・我…魔物…強化…増幅…欲望
・・・我…機械…操作…消費…精神
・・・宿主…魔力…枯渇…時…我…操作…宿主…模索…方法…魔力…補給…
・・・契約…成立…
・・・備考…契約…解除…不可能…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・はっ!?」
ベルンは、頭に響く声を聞き終え、ハッとした。
「どうしたの、いい人?」
「い、いや・・・」
(なんだ?今の声は・・・)
その時、ベルンが自分の右手を見て、目を丸くした。
「・・・は?」
人差し指にはめたはずの指輪がなくなり、手の甲に見たことのない紋様が刺青のように浮かび上がっていた。
「な、なんだこれ・・・」
「???」
「ねぇ、とりあえず、どうやってここから出るのよ?」
ベーゼが聞いたことに、他のメンバーが首を傾げた。
「は?そんなんさっき入った扉から出れば・・・」
そう言ってロックが入り口を見ると。
なぜか、扉の前に瓦礫の山があった。
『なにぃーーーっ!?』(メンバー)
「さっき、そこのバルフォスさん?が投げた槍が壁突き抜けて、瓦礫の山作ったから、扉使えないのよ」
ベーゼが指差す天井には、ぽっかりと穴があき、パラパラと砂が落ちていた。
「・・・テメェなんてことしてくれやがったーーーっ!?」
「ひょんにゃほろまれきにひれらへんはっはわいいひゃいいひゃいほっへはひっはるにゃーっ!」
(そんなことまで気にしてられんかったわい!痛い痛い!ほっぺた引っ張るなーっ!)
「うぇーん!やっぱりラトラたち、死んじゃうよーっ!びぇぇぇぇぇっ!」
ロックがバルフォスの頬を引っ張り、ラトラが泣き、またもや場がてんやわんやになってしまった。
「ど、どうするベルン?」
「う、う〜ん・・・」
ベルンが頭を抱えた、その時。
『…機械…残骸…操作…可能…』
「うっ!?」
「・・・ベルン?」
ベルンの頭に、声が響いた。
『…宿主…手…翳…機械…残骸…念…『ウゴケ』…』
鐘の響く音を間近で聞いたような頭にくる声にベルンはくらくらしたが、声が止むと、頭を振って思考を戻した。
(な、なんだったんだ・・・いや、それより・・・あれは、念じろと伝えたかったのか?)
ベルンは頭のふらつきが治ってから、倒れているガーディアンに向いて、右手を翳した。
「・・・ベルン?」
(・・・動け・・・動け・・・動けっ!)
ダメ元でベルンが念じる。無心に、動けと。
その時、ベルンの右手の紋様が淡い紫色に光った。
同時にベルンは、気が遠くなる、というか、自分が身体から離れてしまうような感覚を覚えた。
[ベルン精神点 15→10]
すると・・・
『・・・グポーン・・・』
ガーディアンの瞳が、薄紫色に点灯した。
「ひっ!?」
「な、なんだ今のお・・・うげぇっ!?」
サティアが真っ先に反応し、続いてロックと他メンバーが気づいた。
『ギギ・・・ギギギギギィ!』
関節の擦り合う音をたて、ガーディアンが立ち上がった。
「ぬ、ぬぅ・・・まだ破壊出来てなかったのか?」
「ちょちょちょ!?さらにヤバイんじゃないの!?」
「びぇぇぇぇぇぇっ!死ぬのやだぁぁぁっ!」
「ぐっ、くぅっ・・・」
さらに、ベルンは目に痛みを感じ、目を閉じた。
すると、目を閉じたはずなのに、目の前には、やけに高い場所からの景色が写っていた。
(・・・え?)
目だけ動かしたつもりで下を見ると、そこに、右手を自分方向に突き出すベルンと、他のメンバーが見えていた。
「お、おい!こっち見やがったぞ!?」
「べ、ベルン!じっとしてないで!」
後ろから、さらに前からロックとサティアの声が聞こえる。
(・・・まさか、ガーディアンと俺の感覚、リンクしてんのか・・・?)
ベルンは、そのままガーディアン視点で後ろを振り返った。瓦礫の山が目に入る。
「お、お?」
「あ、アタシたちを無視した?」
ベルンは、頭の中で腕を振り回す様子を想像した。
[ベルン精神点 10→5]
『ぶぉんっ!ばごぉぉぉっ!』
ガーディアン視点の方だろうか。岩が砕け散る音が響き、ベルンの耳が痛くなる。
「え、えぇ?」
「ど、どうなってんだ?」
ベルンはそのまま、ガーディアンが扉を開ける様子を想像した。
[ベルン精神点 5→1]
ガーディアン視点が動き、扉を掴んで乱雑に扉を押し開ける。
『ギ、ギギギギィ・・・バギッ、ガラガラガラゴゴォン・・・』
乱暴に扱ったためか、扉が破壊され、バラバラに砕け散った。
「お、おぉ・・・」
後ろで誰かが感嘆の声を上げる。
ベルンに、それが誰か理解できるほどの意識はなかった。突き出していた右手を下ろし、目を開けた。
「・・・ッ!ぜぇっ!ぜぇっ!・・・」
瞬間、身体を動かしたわけでもないのにベルンの身体に激しい疲労が現れ、クラクラと身体を支えられずに膝をつき、目の前が白黒に明滅する。
「べっ、ベルン!?大丈夫!?」
「だ、大丈夫・・・じゃ、ないかも・・・しれん・・・」
それだけ言って、ベルンが倒れた。
その時。
『ズズゥン・・・』
扉を破壊したガーディアンが、扉の向こうで轟音を立てて倒れこんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
[始まりの森丘・フィールドB]
「・・・ん・・・んん?」
ベルンが目を開けると、サティアの顔があった。
「・・・ベルン!気がついた?」
「・・・あれ?ここは・・・?」
「森と草原の分かれ道の場所。ガーディアンが道を破壊したあと、ベルンが倒れて・・・みんなでベルンを背負って、ロックたちが入った穴から出て・・・ついでに水源から水を取ったら、夜になっちゃって。ここでテント張ったの。みんな、もう寝ちゃったけど・・・」
「・・・もう、そんな時間なのか・・・うん?」
ベルンが目覚める意識で考える。
サティアは今、ベルンを上から覗き込むようにしている。そして、頭の後ろにはむにゅむにゅと弾力のある、枕とは違う何かが敷かれている。
「・・・サティア。もしかしてこれ、膝枕的ななにか・・・」
「・・・っ//// 起きてさっそく、そこを聞くの?」
サティアははずかしそうに頬を染めてそっぽを向いてしまった。
「いや・・・すごい気持ちいいからさ・・・」
「・・・そ、そう?////」
下から眺めるベルンがわかるくらい、サティアの顔がにやけていた。
「・・・あ、ベルン。そういえばあの穴・・・学校からの立ち入り禁止看板があったわ」
「・・・げ、マジ?」
「うん・・・私たち、よく帰ってきたよね・・・」
「・・・そう、だな」
ベルンは、自分の右手を上げて見た。
やはり、あの紋様が浮かんでいた。今は黒い模様だが、ガーディアンを動かした時、紋様が淡い紫に光ったのを、ベルンは覚えていた。
「・・・あれ?ベルン、刺青なんてしてた?」
「え?いや、うん・・・えと・・・」
その時、ベルンは迷った。正直に話すべきか、否か。
と、その時。
(ちょっ、押すなって!サティアにバレるじゃん!)
(ラトラ押してないよ!チビの人の羽と、ぺたんこな人の角が邪魔なのー!)
(えぇい貴様ら喧しい!覗くにしても静かに覗かんか!)
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ベルンとサティアがゆっくり首を回すと、女子テントの中で、ちびっ子たちが暴れていた。
「・・・俺、男子テントに戻るわ」
「・・・私も、戻るわ・・・アイツラ・・・」
(あ。)
(げ。)
(ぬ?)
そして、各々のテントに戻り、女子テントが軽い戦場になったのは、言うまでもない・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・・・我…喰…宿主…魔力…
[ベルン魔力 11→6]
・・・魔力…残量…僅…補給法…模索…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
明日、ベルンたちは学校に戻り、報告をせねばならない。
その時・・・
ーーーー[選択肢]ーーーー
1、洞窟であったことを全て話し、ベルンの指輪と、ロックの契約について話す。
2、洞窟に入ったことを隠し、ベルンの指輪と、ロックの契約についても隠す。
ーーーーーーーーーーーーー
「我を呼び覚ましたのはお主か?」
そして、黒球のあった場所に、ひとりの少女がたっていた。
クリッとした目。
茶色がかった赤い髪。
髪の間から覗く、片方が折れたヤギの角。
肉体は見事なょぅじょ体型。
モッフモフな手に、足には蹄。
そして方に担ぐは巨大な鎌。
ロリの帝王、バフォメットであった。
「ギャーーーッ!!!ロリが出たーーーッ!?」
瞬間、ロックが悲鳴を上げた。
「・・・はぁ?」
「よんな!あっち行け!しっしっ!ロリは要らん!」
「・・・貴様、我の素晴らしい筋肉美のどこを見てそのようなざれご・・・と?」
その時、バフォメットが視界に入った自分の手を見て首をかしげた。
モフモフで小さい自分の手に、なぜか目をパチクリさせる。
「お・・・お?」
そして自分の身体を見て、くるりと一回転して、蹄を鳴らしてみて。
「・・・なんじゃこれはぁぁぁぁぁぁっ!!?わ、我の素晴らしかった肉体が、こんなひょろこい幼子の身体に!!?」
まるで見ているものが信じられないという風に、バフォメットは自分の身体をぺたぺた(モフモフ)まさぐり、大慌てしていた。
「きっ、きっ、貴様!人間!我に何をしたのじゃ!?」
「知らねぇよ!とりあえずこっち近寄るなっつの!!」
「・・・此奴の仕業でないとすると・・・ア、イ、ツかぁ・・・」
バフォメットの顔がみるみる内に怒りの形相に変わっていく。(ロリぃために、あんまし怖くないが)
「ロック!避けろぉぉぉっ!!!」
『…Destroy…Them!!!』
「えっ!?げっ!?」
その時、ロックの背後についたガーディアンが拳を振り下ろした!
「ぬぉぉぉっ!?」
「ぬぉっ!?」
ロックは慌ててバフォメットを抱きかかえて走った!
『ドグァッ!』
間一髪、ふたりにガーディアンの拳が直撃することは回避した。
「ぎゃーーーっ!俺、ロリ抱いてる!なにこれ!?悪夢!?夢なら早く覚めやがれぇぇぇっ!!!」
「きっ、貴様!離せ!離さんか!!」
『Destroy…Destroy…Them!!!』
走って回避したロックに向けて、今度はガーディアンが岩を投げてきた!
「・・・あ」
それの反応に、遅れた。
『ゴガシャァァァッ!!!』
「ローーーーーーック!?」
岩が砕け散る音が響き、パラパラと砂埃が舞う。
しかし・・・
「・・・この投石、我に対する宣戦布告と受け取るぞ、機械人形」
砂埃が晴れた向こうには、へたりこんだロックの腕の中で左手を前に掲げたバフォメットがガーディアンを睨んでいた。
「・・・いいかげん離せこの役立たず!」
「ぐぼぉっ!?」
バフォメットはロックの鳩尾に肘打ちをかますと、すっくと立ち上がってガーディアンに対峙した。
(ロックは後ろで悶え苦しんでる)
「・・・我が誰か知らぬであろうな。我は紳士的じゃからな。名乗ってやろう」
「…Destroy…Her!!!」
「我が名は『バルフォス』!魔王四天王がひとり、『破壊のイープァ』の師にて、魔王様の片腕『魔法の死神』の二つ名を頂いた者!その恐怖の魔の力、受けてみよ!!!」
〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜
[戦闘開始!!!]
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[モンスター判定、難度 40]
[バルフォス知識点 40、成功!]
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『機会人形 AGー8型が現れた!』
AG-8型『…Battle,Syrtem…Stand,By…』
バルフォス「ぬ、ぬ?なんか身体が本調子でないぞ?」
〜〜〜俊敏点〜〜〜
1、バルフォス、25
2、AG-8型、12
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜
[ターン1]
〜〜〜〜〜〜
[バルフォスの行動]
バルフォス「ま、まぁよい!一撃で決めてやろう!」
バルフォスは詠唱を始めた!
バルフォス「『我が命に従い、闇よ呼応せよ、眼前の愚者の影を喰らいてその者の生を奪い、奈落の闇へ誘いたまえ』・・・闇に喰われよ!『カーネイジ・ヴァイト』!!!」
バルフォスが大鎌の柄先をAG-8型に向けた!
『・・・ぱすん♪』
バルフォス「・・・へ?」
しかし、要求される魔力Levelが足りないため、魔術は不発に終わった!
バルフォス「なんじゃとーーーっ!?」
『異常状態発生中!!!』
『ロックの魔力値が低すぎるため、契約魔物であるバルフォスの魔力値が60%ダウン!』
『それに伴い、バルフォスの魔力Levelが変更されました!』
『魔力値 80→32』
『魔力Level EX→B』
[AG-8型の行動]
AG-8型『…Fire…Blast…!』
AG-8型の左腕が開き、火炎が吹き出した!
『ボォォォォォゥッ!』
バルフォス「くっ、これなら!」
バルフォスは魔術結界を開き、火炎放射を防いだ!
〜〜〜〜〜〜
[ターン2]
〜〜〜〜〜〜
[バルフォスの行動]
バルフォス「ぬぎぎぎ・・・ならこれならどうじゃ!」
バルフォスは詠唱を始めた!
バルフォス「『我が命に従い、闇よ呼応せよ。眼前の敵を射抜きて、敵を打ち砕け』・・・突き抜けよ!『ダークネス・グングニール』!!!」
バルフォスの片手に紫の光が集約する。それが槍の形を象ると、バルフォスがおもいっきり振りかぶってそれを投げ飛ばした!
『ボゴォォォッ!!』
AG-8型『…!!??!??!!!』
クリティカル!AG-8型のコアを突き抜いた!
魔術の効果により、魔力防御が無視された!
グングニルがAG-8型の身体を突き抜け、デカイ穴を開けた!
(32/2+30)*2=92ダメージ!
バルフォスは魔力を消費した!
[魔力値 32→2]
AG-8型『…d…ger…core…br…k…ca…ove……n't……mo…………』
AG-8型はコアを破壊されたことにより、機能を停止した!
[バルフォスは勝利した!]
〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜
『ゴゴゴゴゴゴ・・・ズズゥン!』
胴の真ん中に穴を開けたガーディアンが大きな音を立てて倒れた。
その前にはバルフォスが肩で息をついていた。
「はぁ・・・はぁ・・・ば、馬鹿な・・・『ダークネス・グングニール』を放っただけで・・・魔力が尽きたじゃと・・・?」
バルフォスはぷるぷる震える手をジッと見て、ハッとしたようにロックを見た。
「っ!?な、なんだよ?」
「き、貴様、ま、魔法才能はあるのか?」
「へ・・・体質のせいで、魔法使えねぇんだけど?」
「ーーーーーー・・・!」
瞬間、バルフォスは頭を抱えて膝を突き、床につっぷして「ぬぉぉぉ・・・」とうめき声を上げた。
「な、なんだよ?」
「き、貴様かっ・・・貴様に魔法才能がないせいでっ・・・我の、我の魔法才能にまで影響がぁぁぁ・・・ぬぉぉぉぉぉ・・・」
バルフォスは右腕で地面をボカボカ叩きながらつっぷしたまま呻いていた。
その時、ガーディアンの死体(?)を回り込んで、サティアたちが来た。
「ロック!だいじょう・・・なに?アンタ、泣かせたの?」
「へ?・・・いやっ!ちが、こいつが勝手に・・・」
「貴様、許さん・・・貴様の、貴様のせいでぇぇぇ・・・」
「やっぱアンタが泣かしてるんじゃない!!!」
「ちげーってば!」
サティアがロックを責め始め、ラトラがバルフォスの横にしゃがみこんでじーっとバルフォスを見、ベーゼがケラケラ笑い、ネフィアはロックとサティアをなだめるべきかオロオロしていた。
「はぁ・・・ん?」
ベルンがホッとため息を吐いた時、ふと倒れたガーディアンの貫かれた胸の穴に、キラリと光るモノが引っかかっているように見えた。
「・・・なんだ?」
みんなが他に色々するのをよそに、ベルンは倒れたガーディアンによじ登り、穴の側に近寄った。
どうやら穴の近くで光っていたのは、コアの中身だったようだ。
『AG-8-Core』と書かれた箱が一部が抉られ、その中で魔導回路がぶすぶすと焼き切れて嫌な匂いを発していた。
その中の小さな透明の硝子球の中で、指輪がキラリと光った。
「これは・・・銀か?」
ベルンは、興味本位でそれを手に取った。
[ベルンは、『銀製の指輪』を手に入れた]
ベルンにはなぜこれがガーディアンのコアの中にあったのか、そしてこれがなんなのかはわからなかった。しかし、ベルンはこれがガーディアンのコアに大切なものであることは推測できた。
「おーい。なんか見つけたぞー」
ベルンはガーディアンの上を歩き、みんなに近づいていった。
「へ・・・きゃーっ!?ベルン!?なにそれに乗ってるのよ!?」
「は、早く下りて来い!いつ動き出すか分かったもんじゃねぇ!」
「いや、どうやら中心部が壊れたみてぇだ。しかも、これも取っちまったしな」
ベルンがみんなの前に降り立つと、手のひらにあった、銀の指輪を見せた。
「・・・なんだこれ?」
「ぶっちゃけ、わからん。が、たぶんコレの起動に必要なもんじゃないか?」
「・・・おい、小僧。我に見せてみよ」
バルフォスが手を伸ばして、偉そうにベルンに言った。ベルンは一瞬面食らったが、すっとバルフォスの手のひらに置いてやった。
「・・・むぅ?・・・これは・・・」
まじまじと見たバルフォスが呟いた、その時。
『ごぎんっ!』
「なに偉そうにしてんのよ!」
サティアがバルフォスの頭にげんこつを振り下ろした。
「いっ・・・だぁ・・・なにをするのじゃ!?我の頭を殴るなど、誰が許した!?」
「うっさいわね!なにベルンのこと『小僧』って見下してんのよ!?バフォメットだからって調子のんじゃないわよ!」
「貴様、我のことを愚弄したな!?面白い!その首刎ねてやろう!そこになおれ、蛇女!」
「アンタみたいな非近接要員に負けるほど弱くないわよ!返り討ちにしてやるわ、この子山羊!」
「やめろガキ!サティアちゃんに喧嘩売るなっつの!」
「やめろサティア!相手に悪気はないんだから!」
バルフォスとサティアがガチ喧嘩に発展する前に、ロックがバルフォスの鎌を取り上げ、ベルンがサティアを羽交い締めにした。
「えぇい!返さんか!ヤツの首を刎ねて、盾の装飾にしてやる!」
「ガチでグロいからやめろ!」
「俺は気にしてないから。な?な?」
「・・・ベルンが、そう言うなら・・・」
「なんでそっち丸く収まってんの!?」
ロックが必死に鎌に手を伸ばすバルフォスの頭を押さえつけてる横で、ベルンの説得に頬をわずかに染めたサティアが矛先を収めた。
「ぬぐぐぐ・・・」
「なぁ、結局、指輪はなんだったんだ?」
ベルンが聞くと、バルフォスはテキトーぶって答えた。
「あー・・・これはの、おそらく『魔法具』じゃ」
「魔法具?」
魔法具とは、普通の武器や防具、指輪やメガネなど、人が身につけるものに魔法をかけて能力を底上げしたり、特殊な力を付与したりするものだ。
たとえば『バスタードソード(炎)』という魔法具は攻撃に炎属性が付与される。『筋力のネックレス(+5)』は装備者の筋力を上げたりできる。
「へぇ・・・性能は?」
「そこまでは分からんのぉ・・・試しにつけてみたらどうじゃ?小僧」
バルフォスがベルンにそれを投げて返す。それを言われたベルンは、じっと手のひらの指輪を見た。
「・・・なぁ、ガキ。なんでそれがガーディアンの中にあったんだ?」
「おそらく、コアのバッテリー代わりじゃろ。魔法具は半永久的に作用するものじゃし、ガーディアンのコアを起動させるくらいの作用魔力はあるじゃろ。てか、ガキはやめろ、契約主」
「・・・ん?契約主?だれが?」
「お主に決まっておろうが」
そう言って、バルフォスがロックを指さした。
「・・・俺ぇっ!?」
「我も諦めてやるから、諦めろ。まったく、なんでこんな屑契約主と・・・」
「チェンジで!」
「やれるもんならやっとるわド阿保!『呪い』のせいで不可能じゃ!」
こんどはロックとバルフォスがやれ契約解除だの、やれどっか行けだの言い争いを始めた。
「やれやれ、忙しいねぇ、あのバフォメット」
「そうね・・・」
ベーゼとサティアが肩を竦める。その時、ラトラがベルンに聞いた。
「ねーねー、いい人ー。それ、つけるの?」
「ん?うーん・・・」
「つけてみてさー、能力要らなかったら、ちょーだい!」
「つける前提かよ・・・しょうがないな・・・」
(あのバフォメットも、ただの魔法具だって言ってし、大丈夫・・・だよな)
ベルンは、なんとなしに指輪を右手の人差し指にはめてみた。
『きゅっ』(指輪をはめた音)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・・・………
・・・感知…
・・・認識…
・・・新規…身体…
・・・宿主…人間…
・・・都合…良好…
・・・我…喰…宿主…魔力…得…『チカラ』…
・・・我…宿主…補助…対価…皆無
・・・我…人間…強化…引換…理性
・・・我…魔物…強化…増幅…欲望
・・・我…機械…操作…消費…精神
・・・宿主…魔力…枯渇…時…我…操作…宿主…模索…方法…魔力…補給…
・・・契約…成立…
・・・備考…契約…解除…不可能…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・はっ!?」
ベルンは、頭に響く声を聞き終え、ハッとした。
「どうしたの、いい人?」
「い、いや・・・」
(なんだ?今の声は・・・)
その時、ベルンが自分の右手を見て、目を丸くした。
「・・・は?」
人差し指にはめたはずの指輪がなくなり、手の甲に見たことのない紋様が刺青のように浮かび上がっていた。
「な、なんだこれ・・・」
「???」
「ねぇ、とりあえず、どうやってここから出るのよ?」
ベーゼが聞いたことに、他のメンバーが首を傾げた。
「は?そんなんさっき入った扉から出れば・・・」
そう言ってロックが入り口を見ると。
なぜか、扉の前に瓦礫の山があった。
『なにぃーーーっ!?』(メンバー)
「さっき、そこのバルフォスさん?が投げた槍が壁突き抜けて、瓦礫の山作ったから、扉使えないのよ」
ベーゼが指差す天井には、ぽっかりと穴があき、パラパラと砂が落ちていた。
「・・・テメェなんてことしてくれやがったーーーっ!?」
「ひょんにゃほろまれきにひれらへんはっはわいいひゃいいひゃいほっへはひっはるにゃーっ!」
(そんなことまで気にしてられんかったわい!痛い痛い!ほっぺた引っ張るなーっ!)
「うぇーん!やっぱりラトラたち、死んじゃうよーっ!びぇぇぇぇぇっ!」
ロックがバルフォスの頬を引っ張り、ラトラが泣き、またもや場がてんやわんやになってしまった。
「ど、どうするベルン?」
「う、う〜ん・・・」
ベルンが頭を抱えた、その時。
『…機械…残骸…操作…可能…』
「うっ!?」
「・・・ベルン?」
ベルンの頭に、声が響いた。
『…宿主…手…翳…機械…残骸…念…『ウゴケ』…』
鐘の響く音を間近で聞いたような頭にくる声にベルンはくらくらしたが、声が止むと、頭を振って思考を戻した。
(な、なんだったんだ・・・いや、それより・・・あれは、念じろと伝えたかったのか?)
ベルンは頭のふらつきが治ってから、倒れているガーディアンに向いて、右手を翳した。
「・・・ベルン?」
(・・・動け・・・動け・・・動けっ!)
ダメ元でベルンが念じる。無心に、動けと。
その時、ベルンの右手の紋様が淡い紫色に光った。
同時にベルンは、気が遠くなる、というか、自分が身体から離れてしまうような感覚を覚えた。
[ベルン精神点 15→10]
すると・・・
『・・・グポーン・・・』
ガーディアンの瞳が、薄紫色に点灯した。
「ひっ!?」
「な、なんだ今のお・・・うげぇっ!?」
サティアが真っ先に反応し、続いてロックと他メンバーが気づいた。
『ギギ・・・ギギギギギィ!』
関節の擦り合う音をたて、ガーディアンが立ち上がった。
「ぬ、ぬぅ・・・まだ破壊出来てなかったのか?」
「ちょちょちょ!?さらにヤバイんじゃないの!?」
「びぇぇぇぇぇぇっ!死ぬのやだぁぁぁっ!」
「ぐっ、くぅっ・・・」
さらに、ベルンは目に痛みを感じ、目を閉じた。
すると、目を閉じたはずなのに、目の前には、やけに高い場所からの景色が写っていた。
(・・・え?)
目だけ動かしたつもりで下を見ると、そこに、右手を自分方向に突き出すベルンと、他のメンバーが見えていた。
「お、おい!こっち見やがったぞ!?」
「べ、ベルン!じっとしてないで!」
後ろから、さらに前からロックとサティアの声が聞こえる。
(・・・まさか、ガーディアンと俺の感覚、リンクしてんのか・・・?)
ベルンは、そのままガーディアン視点で後ろを振り返った。瓦礫の山が目に入る。
「お、お?」
「あ、アタシたちを無視した?」
ベルンは、頭の中で腕を振り回す様子を想像した。
[ベルン精神点 10→5]
『ぶぉんっ!ばごぉぉぉっ!』
ガーディアン視点の方だろうか。岩が砕け散る音が響き、ベルンの耳が痛くなる。
「え、えぇ?」
「ど、どうなってんだ?」
ベルンはそのまま、ガーディアンが扉を開ける様子を想像した。
[ベルン精神点 5→1]
ガーディアン視点が動き、扉を掴んで乱雑に扉を押し開ける。
『ギ、ギギギギィ・・・バギッ、ガラガラガラゴゴォン・・・』
乱暴に扱ったためか、扉が破壊され、バラバラに砕け散った。
「お、おぉ・・・」
後ろで誰かが感嘆の声を上げる。
ベルンに、それが誰か理解できるほどの意識はなかった。突き出していた右手を下ろし、目を開けた。
「・・・ッ!ぜぇっ!ぜぇっ!・・・」
瞬間、身体を動かしたわけでもないのにベルンの身体に激しい疲労が現れ、クラクラと身体を支えられずに膝をつき、目の前が白黒に明滅する。
「べっ、ベルン!?大丈夫!?」
「だ、大丈夫・・・じゃ、ないかも・・・しれん・・・」
それだけ言って、ベルンが倒れた。
その時。
『ズズゥン・・・』
扉を破壊したガーディアンが、扉の向こうで轟音を立てて倒れこんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
[始まりの森丘・フィールドB]
「・・・ん・・・んん?」
ベルンが目を開けると、サティアの顔があった。
「・・・ベルン!気がついた?」
「・・・あれ?ここは・・・?」
「森と草原の分かれ道の場所。ガーディアンが道を破壊したあと、ベルンが倒れて・・・みんなでベルンを背負って、ロックたちが入った穴から出て・・・ついでに水源から水を取ったら、夜になっちゃって。ここでテント張ったの。みんな、もう寝ちゃったけど・・・」
「・・・もう、そんな時間なのか・・・うん?」
ベルンが目覚める意識で考える。
サティアは今、ベルンを上から覗き込むようにしている。そして、頭の後ろにはむにゅむにゅと弾力のある、枕とは違う何かが敷かれている。
「・・・サティア。もしかしてこれ、膝枕的ななにか・・・」
「・・・っ//// 起きてさっそく、そこを聞くの?」
サティアははずかしそうに頬を染めてそっぽを向いてしまった。
「いや・・・すごい気持ちいいからさ・・・」
「・・・そ、そう?////」
下から眺めるベルンがわかるくらい、サティアの顔がにやけていた。
「・・・あ、ベルン。そういえばあの穴・・・学校からの立ち入り禁止看板があったわ」
「・・・げ、マジ?」
「うん・・・私たち、よく帰ってきたよね・・・」
「・・・そう、だな」
ベルンは、自分の右手を上げて見た。
やはり、あの紋様が浮かんでいた。今は黒い模様だが、ガーディアンを動かした時、紋様が淡い紫に光ったのを、ベルンは覚えていた。
「・・・あれ?ベルン、刺青なんてしてた?」
「え?いや、うん・・・えと・・・」
その時、ベルンは迷った。正直に話すべきか、否か。
と、その時。
(ちょっ、押すなって!サティアにバレるじゃん!)
(ラトラ押してないよ!チビの人の羽と、ぺたんこな人の角が邪魔なのー!)
(えぇい貴様ら喧しい!覗くにしても静かに覗かんか!)
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ベルンとサティアがゆっくり首を回すと、女子テントの中で、ちびっ子たちが暴れていた。
「・・・俺、男子テントに戻るわ」
「・・・私も、戻るわ・・・アイツラ・・・」
(あ。)
(げ。)
(ぬ?)
そして、各々のテントに戻り、女子テントが軽い戦場になったのは、言うまでもない・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・・・我…喰…宿主…魔力…
[ベルン魔力 11→6]
・・・魔力…残量…僅…補給法…模索…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
明日、ベルンたちは学校に戻り、報告をせねばならない。
その時・・・
ーーーー[選択肢]ーーーー
1、洞窟であったことを全て話し、ベルンの指輪と、ロックの契約について話す。
2、洞窟に入ったことを隠し、ベルンの指輪と、ロックの契約についても隠す。
ーーーーーーーーーーーーー
12/06/06 13:27更新 / ganota_Mk2
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