1日目、午前(月曜日)
[朝、ガーゴイル寮312]
「おーい。起きろ、ロック。さっさと朝飯行こうぜ」
俺は早めに起きたため、さっさと顔を洗い、歯を磨き、服を着た。それでもまだロックがイビキかいて起きないので蹴飛ばしてやった。
「んごぉ!?え?はぇ?」
「起きたか?さっさと支度しろ。食堂行ってメシ食おうぜ」
よだれの後をつけたロックに一言言ってから部屋を出た。
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「おや、おはよう。312号の生徒クン」
「おはようございます、ガレッタさん」
部屋を出ると、昨日の寮の入り口に出た。玄関台座の上のガレッタさんが話しかけてきた。
「てか、部屋番覚えてるんですか?」
「寮監長としてね。顔と部屋番は合わせて覚えてるのさ」
すげぇ・・・絶対男子の人数すごい数だろ?
「ま、君の同居人が印象的ってこともあるんだけどね」
「・・・昨日、なんかしたんですか?あいつ」
「寮に入ってきた途端、まだ日が出てて身体を動かせない私を凝視してハァハァし始めたのは彼が初めてさ」
「今すぐぶんなぐっときます」
「わりぃ!ベルン待たせへぶぉぁっ!?」
部屋から出てきたロックに右ストレートを叩き込んだ。
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[巨大食堂『もふもふ亭』]
時刻は7時。眠そうに魚を焼くミノタウロスやニコニコ笑って接客してる稲荷などの受付を回って朝食セットをもらって奥、例の大広間に進む。
ちなみに朝食セットは『ジパングセット』と『洋食セット』があった。俺は白米をあまり食べたことがないのでジパングセットに挑戦。
・・・てか、ロックがうるさい。
「おぉーっ!すげぇー!?なんだこの広い空間!?」
「朝からうるせぇな・・・てか、昨日は来なかったのか?」
「昨日は昼飯を学園内の売店、夕飯は付属都市で買ったからな」
「ふーん。付属都市で何買ったんだ?」
「んーとな・・・あれ??」
「ん?どうし・・・」
・・・あ。
「・・・げ。」
オムエッグを口に運ぼうとして硬直しているサティアがいた。
「あれぇ?サティアちゃんじゃん!奇遇だね!」
「・・・ウザいのが来た・・・」
サティアは友達らしい魔物、ベルゼブブと一緒に朝食を食べていた。
「サティアー?誰、こいつ」
「腐れ縁の幼馴染よ」
「こんちわ」
(チッ、またロリかよ)
ロックがにっこり笑って挨拶した・・・いや、あれは演技の笑顔だな・・・
「おはよう。俺はベルンだ」
「ベルン?・・・あぁ、サティアが話してた愛しのむぐぅ」
・・・なんかサティアが尻尾でベルゼブブの口を塞いだ。
「おい?そのベルゼブブ、なんかしゃべってる途中じゃなかったか?」
「さ、さぁ?気のせいじゃない?」
(ちょっと!余計なこと言わないで!わかったわね!?)
「むぐ・・・むぐ」(コクコク)
・・・なんなんだ?
「ぷはっ・・・えーと、どーも。アタシはベルゼブブの『ベーゼ・B・ティトラス』。ま、サティアの知り合いならベーゼって呼ぶことを許すわ」
「・・・どうも」
えらいお高くとまってるベルゼブブだな・・・
「サティアちゃん、ここ、いいかい?」
「は?他にも席が・・・」
「いいじゃんサティア。ご飯は人多い方がいいし・・・」
(第一、ベルンがオマケについてくるじゃん)
「ハッ!?・・・いいわよ。座って」
・・・珍しいな、ロックの説得が成功するなんて。
「いやー。嬉しいな、サティアちゃんの隣に座れt」
「あんたはベーゼの隣。私の隣に座んな」
「・・・はい」
すごすごとロックがベーゼの隣の席に座る。俺は・・・サティアの隣か。
「隣、失礼すんぞ」
「ど、どうぞ?」
「サティア、声裏返ってるww」
(うっさい!)
さて。いただきます、と。
ジパングの『シャケのシオヤキ』をナイフとフォーク(ハシは難しい)で切り分けて食べる。おぉ、美味い。
「サティアちゃんたちは今日の授業はなに選ぶの?」
「なんでロックに教えないといけないのよ」
んー、『ミソシル』っつうのも美味いな。フォンおじさんの話からいっぺん食いたかったんだよな。昨日は売り切れてたからなぁ・・・
「いいじゃんサティア。なんもしゃべらないで食べる朝食なんてつまんないよ。アタシは『飛行拳士学科』と『初等魔術学科』だよ」
「・・・ベーゼが言うなら・・・あたしむぐっ!?」
(バカ!ベルンが何学科か聞いてからアンタは言うんだよ!どっちかは合わせたらいいんだよ!)
「・・・へ?一日に2教科も取れるのか?」
・・・あ、やべ。変なこと聞いたか?三人がポカーンとしてる。
「・・・ベルン、あんたまさか・・・『学科要項』読んでないの?」
「・・・渡された資料か?」
昨日、迷子から帰ってすぐ寝ちまったからな・・・
「お前・・・俺だって読んだぞ?」
「うるせぇ・・・疲れてたんだよ」
「やれやれ・・・サティア。説明してやりなよ」
「えーとね・・・私たちは一日、2教科選ぶの。月から金まで午前2コマ。1コマ90分の座学授業。で、月〜木の午後は、午前に選んだ2コマの実践授業を2時間ずつ。金曜日だけはホームルームがあって、実践授業はないらしいわ」
・・・そうだったのか・・・今日の夜は読んどこう。
「ていうか、要項読んでないってことは、時間割も読んでないのね?」
「・・・ぇ、時間割とか入ってたのか」
「中身の確認もしてないの!?」
「面目ない」
サティアが呆れてため息をつき、ベーゼがケラケラ笑い、ロックは・・・あ、おかわりしに行った。
「あーもー、しょうがないわねぇ・・・ほら、これが時間割」
サティアが鞄から(床に置いてあったらしい)時間割表を出してくれた。
「今日は月曜だから、1コマ目に選べるのは『戦士学科』『拳士学科』『盗賊学科』『飛行拳士学科』の4つ、2コマ目に選べるのは『初等魔術学科』『初等賢者学科』『初等錬金学科』『初等鍛治学科』の4つあるの。この4つずつから、1つずつ選ぶの。まぁ、飛べない私たちは飛行拳士学科は取れないけど」
「ふぅむ・・・」
・・・戦士や格闘家ってガラじゃないんだよなぁ・・・
(・・・サティア、サティア!)
「ん?なによ?そんな小声で?」
(バカ!チャンスよ!もっと近くに寄りなさいよ!ベルンが顔を上げた時に、偶然を装ってキスできるかもよ!)
「・・・へ?」
魔術や錬金なんかもあんまり興味ないんだよな・・・賢者ってどんなジョブなんだ?
(・・・わっ!わっ!わっ!ち、近い!すごい近い!・・・顔上げたら・・・キス・・・)
あ、サティアに聞けばいいのか。
「なぁ、さてぃ・・・」
「ッ!?」
「おい、ベルン!メシおかわりしたら『スシ』オマケにもらったぞ!」
「マジで!?」
俺は上げかけた顔をぐるんとロックの方に回した!
「なっ!!?」
「あっ!!?」
「ほら!あそこの稲荷さんがオマケにくれたんだ!」
「やべぇ!マジか!スシなんて食ったことねぇし!」
フォンおじさんが『一回は食べないと損するよ』って言うほど美味いらしいんだよな!でも食堂での値段も高いから我慢してたんだが!
「お前、黙ったらイケメンなのが初めて役に立ったな!」
「う、うん?それ、褒めてんのか?」
「とりあえずひとつくれ!な!?」
「いいぜ!おい、サティアちゃんもた・・・べ・・・」
・・・ん?ロックの声が萎んだ?
「・・・死・ね!!!」
『バキィッ!』
「ひでばっ!?」
「っ!?」
ろ、ロックがサティアの尻尾に吹き飛ばされた!?
「さ、サティア?」
「・・・ふんっ!!」
・・・な、なに怒ってんだ?さっさと行っちまいやがった・・・
「あーぁ・・・ロックくん、ご愁傷様。あむ。じゃねー♪」
あ、ベーゼがスシ食べてった。
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さて、授業開始5分前。
戦士も格闘家も俺には似合わん気がするから、盗賊学科を受けてみようと思った俺は、講義教室に入った。
『ザワザワ・・・ザワザワ・・・』
教室は階段状に席が設置されており、教室にはすでに新入生がごった返しており、席がもう全て埋まっているようだ・・・ん?
「あ、あそこ空いてるか」
ちょうど真ん中あたりにポツンと一席空いていた。俺は階段を登り、その空いた席に腰を下ろす。
「ふぅ・・・知り合いもいない授業か。少し不安だな・・・」
結局、サティアがなにを取るか聞かなかったし、ロックは戦士学科を取るらしい。さっさと知り合いを作った方がいいか・・・
「ねーねー、怖い人ー」
・・・右の席からちょいちょいっと服の裾を引っ張られた・・・俺、なんだろーな・・・一応聞くけど。
「・・・俺か?」
「うん。そう、怖い人」
「怖い言うな。この顔がデフォなんだよ」
「ふーん・・・じゃ、悪人顔の人」
「誰が悪人顔だ!それなら怖い人にしろ!」
「じゃー、怖い人。怖い人は、新入生?」
・・・なんなんだろう、この人をおちょくる態度をしてるネズミは・・・
「そうだよ」
「ふーん。じゃ、お仲間だね!アタイはね、ラージマウスの『ラトラ』!よろしく!怖い人!」
「お、おぉ・・・よろしく。俺の名前は・・・」
「怖い人はクラスどこー?ラトラは1ーBだよー!」
「聞けよ俺の名前!てかお前の中で俺は怖い人固定かよ!」
「うん!」
「うん、じゃねぇよ!俺はベルン・トリニティ!1ーAだよ!」
「あっ、隣同士だね!怖い人!」
「名前言ったんだから名前で呼べよ!」
『ガラガラガラッ』
『ザワザワザ・・・シーン・・・』
ラトラと騒いでいると、教室に明らかに一般人とか学生とか先生とかとかけ離れた全身レザースーツみたいな人が入ってきた。俺も周りの学生たちもポカンとして黙ってしまう。
「・・・全員、席につけ。授業を始める」
・・・え?先生?あれ、先生なのか?あの黒色全身レザーな男が先生なのか???
「・・・ここの先生、変態なのかな?」
黙れラトラ。
「・・・ふむ。全員、席についたな?私が盗賊学科を教える『リーフ・ライアー』だ。
諸君、私の服を見て驚いただろうが、私の服は古くから続いていた『盗賊ギルド』の制服だ。私は、盗賊ギルドの元ギルド長としてここに雇われた。本来なら、盗賊ギルドの技術を諸君らに教えるのはご法度ではあるが、現在、盗賊ギルドは衰退し、今では冒険者ギルドに取り込まれてしまった。やり方を選んでいては完全に消え失せてしまうであろう。君たちが優秀な盗賊となり、再び盗賊ギルドの再建を・・・」
・・・えらい熱く語る人だなぁ・・・
「・・・む、すまない。余計な話に熱くなってしまった。
さて、私の授業ではまず座学授業で諸君らに盗賊としての知識、技術を授け、午後の実践授業で盗賊の技能を磨いてもらう。身体的特徴では『敏捷性』、精神的特徴では『察知能力』、技能として『解錠技術』や『隠密性能』を鍛えることになる。
なお、私の授業に教科書はない。予習・復習は『冒険講習』で頑張りたまえ」
・・・ん?冒険講習?なんだそれ?
「・・・そこの青年。『冒険講習とはなんだ?』と思ったな?」
「うっ・・・!?」
み、見破られた!?なんで!?そんなにはっきり顔に出してたか!?
「動揺しなくていい・・・察知能力を極めれば、大まかに人の考えることを察するくらいはできる。表情、手足の動きなどからな・・・今日のうちにちゃんと要項を読んでおけ」
「はい・・・すいません」
くっ・・・あっちこっちでくすくすと笑い声が聞こえる・・・
「ふむ。よろしい。
・・・急な入り方になっていまうが、彼の注意に乗じて、察知能力がいかに冒険に関わるか教えよう。
察知能力というのは、察して、知る、能力と書く。では、何を察するのか?
迷宮などではトラップや野性の動物、ゾンビなどの理性の薄い魔物たちが冒険の邪魔となったり、隠し部屋などが存在したりする。しかし、それらの存在には必ず『証拠』が存在する。盗賊の冒険パーティとしての役目のひとつは、察知能力を高め、様々な証拠を感じ取って仲間を安全に冒険させてやることが目的だ。他にも、敵の存在を知ったのち、その敵の視線、現在のその敵の興味がどこにあるかなどを察知し、状況を有利にするために、安全に、感づかれず、スマートに物事を進めることにも利用される。
つまり。簡単にまとめると、この能力を高めておけば、仲間より真っ先に敵やトラップを発見でき、それに対する行動を取りやすくなるのだ。分かったかな?」
・・・なんとなーくはわかったが・・・そんなカンタンに察知能力って上げられるのか?
「どうやら先ほどの成年は察知能力を簡単にあげられるのか、という疑問にたどり着いたようだ」
・・・また読まれた。そんなに読みやすいですか。俺の感情?
「察知能力は今みたいに机に座ってても鍛えることはできる。簡単だ。『この部屋で誰が何をしているか』を把握できるようにすればよい。たとえば、真ん中の青年に気を取られていると勘違いした右端後ろから3番目のハーピーの娘がそうそうに寝始めようとしているとか、左端の前から2番目の別の青年は青年誌『萌えっ娘もんすたぁ』を隠れて読もうとしているな。取り上げられる前に鞄に入れたまえ」
俺を含め、多くの人がその二人を見た。確かにハーピーはガバッと起き上がりはしたが、うすーくヨダレの跡があるし、男の方はぎょっとしてゆっくりと鞄に・・・なんかピンクい本を仕舞ってる・・・マジかよ・・・
「要は周りの状況をしっかり把握し、記憶することを毎日心がけておけば、案外鍛えられる、ということだ。諸君、日々精進したまえ・・・さて、本格的に授業に移ろうか。今日の話は・・・」
・・・こりゃあ、あんまり気が抜けないな・・・真面目にやってなきゃすぐ怒られる・・・
「・・・さきの真ん中の青年」
「え?はい?」
「隣のラージマウスを起こしてあげなさい」
・・・隣を見ると、ラトラがおもくそガッツリ寝てた・・・机に突っ伏して。
「まずはみんな、隣の生徒の状態をずっと把握することを察知能力をあげる訓練としたらよい。青年、たぶんそのラージマウスの娘はたびたび寝るだろう。その度、起こしてやれ」
「・・・はい」
・・・ま、いい訓練になると考えるかな・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・・・授業中・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「・・・このように、縄を使ったトラップは見分けやすいが、場所によれば飛んでる魔物娘にも通用するように様々な転用ができる。対して圧力板によるトラップは転用はしにくいが、暗い場所、狭い通路などでは効果を発揮しやすく、総じて致命傷にいたるトラップであることがある。気をつけるように。
・・・では、本日の講義はこれにて終了する。午後の実践授業では鍵の解錠について、実際に鍵を使って演習する。道具はこちらで用意するので、諸君、遅刻しない様に」
リーフ先生が部屋を出ていくと、みんなが騒ぎ始めた。あ、そそくさと部屋を出ていくやつもいるな。
「むにゃむにゃ・・・あー、よく寝た」
・・・ラトラはまた寝てたのか・・・
「お前、どんだけ頻繁に寝るんだよ」
「えー?そんな寝てないよ?」
「6回も俺に起こされて言うセリフか!?」
・・・えらい知り合いができちまったもんだ・・・
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・・・さて、続く2コマ目は、初等賢者学科でも取ろうかな。ちょうど教室も近いので、さっさと教室を移動する。
教室の中に入ると、また雰囲気はだいたい同じだが・・・ぐるっと見渡すと少し違う。なかにはいわゆるガリ勉タイプっていうか、本をもくもくと読んでるやつがいるな。
「っと、とりあえず席、席・・・ここでいいや」
手短な席につくと、右に座る眼鏡の男がふと顔をあげた。
「こんちわ。この席、大丈夫ですか?」
「えぇ、どうぞ。はじめまして。1ーCの『ネフィア・カーネス』です」
「ども、1ーAの、ベルン・トリニティだ」
「ベルンさん、よろしく」
「よろしくな・・・しかし、この学科、人が少なくないか?」
ふと周りを見て思ったんだが、さっきの盗賊学科と人の入りが違う。席の1/3くらいがまだ空席だ。
「人気、不人気学科があるんでしょうね。僕はさっき、戦士学科を受けたんですが、ひとつの教室に入り切らないからって、教室を二つに分けて、片方は魔術による投影映像と音声による授業でしたよ」
「マジ?俺、盗賊学科を受けたんだが、普通に収まってた・・・満員ではあったが・・・」
そうか、均等に割り振られるわけではないのか・・・大変だな・・・
「戦士学科は騎士学科や槍兵学科、双剣士学科など様々な学科の基本ですからね」
「・・・そ、そうだな・・・」
戦士学科以外に、いろいろあるのか・・・?あとでしっかり読んどこう・・・
「皆さーん。席についてくださーい。初等賢者学科、始めますよー」
ガラッと扉を開けて入ってきたのは、フェアリーだった。教卓までふわふわ飛んでいくと、自分より一回り小さい魔術マイクで拡大した声でしゃべっている。
「皆さん、こんにちわー。私は賢者学科担当の『ミミル』でーす。よろしくでーす。で、さっそくですが、賢者学科というのは・・・」
「待ってくださ〜い・・・ごめんなさい、遅刻しましたぁ」
ミミル先生の話を遮り、遅刻者がひとり入ってきた・・・ん?あ。
「もー!初日から遅刻なんてダメですよ!注意してください!」
「ごめんなさいぃ、気をつけます〜」
ミルキィ先輩だ。
慌てて席を探す先輩・・・ん?こっち見た。あ、こっち来た。
「ベルンくん、ここ、いい?」
「えぇ、いいですよ」
ミルキィ先輩は俺の隣の席にゆっくり座って、俺ににっこりと笑いかけた。
・・・って、この人、ここにいていいのか?
「ミルキィせん・・・ミルキィお姉さん、ここ、初等賢者学科ですけど・・・新入生でないですよね?」
「ほぇ?そうだよ〜?・・・あ、要項読んでないな〜?」
「うぐっ」
・・・どうやら、墓穴を掘ってしまったらしい・・・
「初等ナントカ学科って言うのはね、一回生のときにふたつ取れるんだけど、自分に合わないな〜って思ったら、2回生や3回生で履修をストップして、初等の別の教科を受け直せるの」
・・・なるほど。そんなことできんのか。さっきネフィアが言ってたのもそんなことかな?・・・っと、ミミル先生の話を聞かなきゃ。
「皆さーん、賢者学科の説明をしまーす。しっかり聞いて下さーい。
えー、賢者学科ってのは、皆さんの中には攻撃魔法、回復魔法を両方使える万能学科と勘違いしてる方がいるかもしれませんが、違いますよー。賢者学科は、知識を活かした学科です。冒険中、いろんな植物や虫、動物に魔物に出会うと思いますが、その植物や虫が毒を持ってるか否か、毒にはどう対処するか、動物や魔物には弱点はないのか、知ってたほうがいいですよね?賢者学科は、それを知っておく学科なんでーす」
なるほど。そんな学科だったのか。
「教科書は午後の実践授業で配られまーす。午前は教科書を見たりして『知識』を得て、午後はそれを実際に触って、さらに『知識』を深めますよー。さ、さっそく皆さん、授業を始めまーす」
ミミル先生の授業が始まった。教科書が無いながらも、黒板に結構リアルな絵を書いたりしてくれて詳しい説明をしてくれる。これは俺向きのいい学科を引き当てたかもしれん。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・・・授業中・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「・・・ふぅ、じゃ!今日の午前中の授業は終わりまーす!午後は生物実験室で、今日教えた物を実際に見て、お勉強しましょー!」
うん。楽しい、いい授業だった。
「う〜ん・・・頭痛いよぅ・・・」
・・・ミルキィ先輩はオーバーヒート気味だけどな。
「ベルンくん、すごいね〜。よく頭痛くならないね〜」
「俺は本読むのとか好きですから」
「羨ましい〜・・・あ、ご飯誘われてたんだった・・・またね〜」
ミルキィ先輩がてくてくと歩いて部屋を出ていった。
「・・・ねぇ、ベルンさん」
「ん?なんだ?」
「今の、まさかミルキィ・カラウ先輩ですか?」
「知ってんのか?」
「はい。僕、2回生の兄がいるんですけど、ミルキィ先輩は、2回生の間で結構人気だそうです。1回生のときからすごい美人で・・・」
ふ〜ん・・・ま、そんな人気な人が俺を気にかけるわけないが・・・変に親しくされてるのは、貢がせようとしてんのかな、あの先輩・・・いや、それはないよな・・・
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[巨大食堂『もふもふ亭』]
「あら、ベルンくん」
食堂に昼食を食いに行くと、クラリアと会った。
「今からお昼?」
「あぁ」
「じゃ、一緒に食べましょう?」
「いいぜ」
ロックやサティアの場所も分からんし、一人で食うよりいいだろうな。
『ヒソヒソ・・・ヒソヒソ・・・』
・・・ん?なんか周りがヒソヒソしてるな?
「ねぇ、ベルンくん、学科は何を取ったの?」
「ん?あぁ、盗賊学科と賢者学科だよ」
「あらら、私とひとつも被ってないわね・・・残念だわ。私は拳士学科と錬金学科よ」
「錬金学科か・・・どんなんなんだ?」
「錬金術ってのは、色んな材料から薬を作る技術よ。『知識』と『器用度』が要求されるの」
「ほう。それは楽しそうだな」
『ヒソヒソ・・・ヒソヒソ・・・』
・・・周りがうっせぇな・・・
「明日は何を取ろうって考えてるの?」
「え・・・わりぃ、考えてないんだ」
「あら、そうなの・・・残念」
・・・何が残念なんだ?
「でも、盗賊学科を取ってるなら、レンジャー学科とか、暗殺学科がいいんじゃない?」
「あ、あんさつ・・・?物騒だな・・・」
「暗殺って言ったって、無力化するだけだから、殺すのではなく、気絶させるとかなんじゃないかしら?あとは・・・ジパングのクノイチ的な暗殺なら、襲って性的な意味で暗殺、かしら?」
・・・それはちょっとアレな気がするがな・・・
「もしそうだったら、暗殺学科を取るなら、私が練習相手になってもいいわよ♥」
『ガタガタッ!』
「ははは・・・遠慮しておこう」
「そう?残念・・・」
『ガタガタ・・・』
・・・なんかマジで周りがうるせぇ・・・なんなんだろうな・・・
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・・・そういや、実践授業のあと、結構ヒマだな・・・どうするか・・・
[4時〜6時ころ、どうしようか?]
1、寮でゆっくりする
2、学校をぶらつく
3、食堂で夕飯を早めに食べる
4、街に出てみる
12/03/13 01:51更新 / ganota_Mk2
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