14日早朝『図書館ダンジョンへ!』
月曜日。本日からまた一週間が始まる日。
・・・で、あるが。
今週は『休暇週間』。
リクラスト学園には二週間勉強したあと、一週間休みがある。その一週間は自由期間。なにをしてもいい。ゴロ寝するなり、買い物するなり、デートして、そしてランデブー。この期間は門限さえ緩和されるのだ。
ただし、やはり学園は学園。最低限の宿題がある。
それは、一度冒険にでて、報告をしなればならないのだ。
「・・・ということでベルンくん!約束の図書館ダンジョンに行こう!!!」
目をキラキラさせたフェランに呼び起こされたベルンは、前回の空気っぽさがレベルMAXだったマミーを必死に引き剥がしながら部屋の玄関で応待した。
「・・・とりあえず、えーと・・・フェランだったっけ?まだ6時前なんだが?」
「冒険は朝早い方がいい!」
「どういうことなんだよ・・・」
頭を掻いて面倒臭く思ったベルンだったが、ハッとして、もしこのまま部屋にいたらどうなるかを予想した。
『ベルン!買い物行くわよ!』
『ベルンくん?喫茶店にでも行きません?』
『兄様・・・あの、成美と出かけませんか?』
三人の顔と、すぐあとに起こるであろうことを想像したベルンは・・・
「よし、行こう」
フェランの誘いを快諾した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして、後悔した。
「あれ、ベルンくん?」
「げっ!?なんでアンタがいるのよ!?」
「あっ!ベルン、テメェ!」
ベルンの目の前には、ナナと、シルクとファローがいたのだ。
「・・・・・・フェラン?あいつらとは知り合いか?」
「ん?うん。昨日までの冒険講習のペアだよ」
ベルンは頭を抱え、大きく、重いため息を吐いた。
「あれ、ナナたちって、ベルンくんと知り合いか?」
「えっと、同じ授gy・・・」
「痴漢野郎よ!」
「ライバルだ!」
「・・・了解、把握。授業のクラスメイトだな」
この瞬間、フェランの理解力にベルンは一筋の涙を流すほど感謝した。
「・・・って、待てよオイ」
その時、ベルンはふと気付いた。
ベルン←後衛気味
フェラン←前衛確定
ナナ←後衛確定
シルク←後衛確定2
ファロー←おそらく前衛(性格的に)
つまり、前衛が二人、後衛三人のチームである。
「前衛ふたりでいいのか?ただでさえ回復魔法使えるやついないし、不安じゃないか?」
「ふふん。そこは心配いらないベルンくん。実はもう一人いらっしゃるのだよ」
指を揺らしてチッチッと舌を鳴らすフェランが得意げに言った。
「前衛で、かつ魔法が使えて、さらに上回生の方が手伝ってくれるのさ!」
「へぇ?一体・・・」
誰だ?と、ベルンが聞こうとした時。
「あら、ベルンくんじゃない。お久しぶり♥」
ベルンは後ろから抱きすくめられ、耳にこそばゆいような息とともに声がかけられた。
「わひゃぉ!?」
「うふっ、可愛い声だすわね♪顔に似合わないけど、いいわ♥」
「ね、姉さん!なにしてるのよ!」
ベルンを後ろから抱きしめていたのは、シルクの姉、カンバスだった。ベルンに抱きつき、ベルンの頭を撫でながらカンバスが答えた。
「あら、シルク、なにを怒ってるの?これくらい軽い挨拶よ」
「あっ、挨拶って・・・ダメよ姉さん!そんなやつにベタベタしたら!」
「やれやれ、未だに妹の男性潔癖性には困るわねぇ」
首を振ったカンバスはベルンから離れ、そしてベルンに紙包みを渡した。
「・・・?これは?」
「クラスメイトの茜さんから渡された物よ。昨日、ベルンくんと図書館に行くって言ったら、『そん時渡しといてくれへん?おおきに!』って言われたの」
ベルンは首を傾げたが、紙包みの重さと、茜とを連想して、中身を理解して包みを開けた。
「・・・おぉ」
中にはピカピカに磨かれたリボルバーが入っていた。それに手紙が添えてあり、ベルンはそれを開いた。
『べるん・とりにてぃ殿へ。
すまん!数日で壊れるようなモンを売りつけてもうて。ウチは品質は自身持って売っとるつもりやったし、実際評判はえぇねん。
やけど、新入生が使ってすぐ壊れるようなモン売ったと知れたら、評判落ちてまう。悪いけど、新品の銃包むよってに、堪忍してや!
分福 茜より』
手紙にはそうあり、ベルンは申し訳なく思いながらも、その銃を受け取ることにした。
「・・・なんか、形まで違う気がするけど・・・いいか」
「あらあら、茜さんが贈り物するなんて・・・気に入られてるのかしら?」
その発言にギョッとしたベルンが顔を上げると、案の定、他の女子陣(一人除く)がなんとも言えぬ顔をしていた。
「・・・ベルンくん、スケコマシか」
「・・・痴漢野郎」
「・・・と、年上趣味?」
「あ、いーなー。サラピンのリボルバーじゃん」
ベルンはやはり、大きくため息を吐き、横にいるカンバスはさりげなくニヤニヤしていた。
[ベルンは『ヴィンギナー・DS』を手に入れた!]
[『ヴィンギナー・DS(Dot Site)(32口径)
ヴィンギナーに改良を加えたリボルバー。覗き込んで使うサイトアタッチメントがつけられており、両手撃ちの際に、命中率が+10%される』]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[図書館、B1階]
[ダンジョン受付]
「はいはいどーもこんにちわー!図書館ダンジョン受付嬢、兼、図書館ダンジョン説明役のミミックの『ライブラ』でーす!」
ベルンたちが受付へ下りると、やけにハイテンションなミミックが説明を始めた。
「やー久しぶりのダンジョン利用者だわー。図書館ダンジョン潜っても、入手できるのふっるい魔道書だったり旧魔物時代の今じゃタブーな文献だったり廃番になった書物しかないんだもん。お、しかも一回生かな?いやーずっとここにいると新入生も全然見なくて私とっても寂しくてさー」
((((むちゃくちゃ喋るな、この人))))
ベルン、ナナ、シルク、ファローは、ライブラのまくしたてるような会話に多少引いていた。
「・・・古い魔道書・・・禁忌の前代書・・・廃番のレア本・・・うふははははは・・・期待が膨らんで私の頭が破裂しそうだ・・・」
対するフェランは涎を垂らしてニンマリ笑っていた。
「ライブラさん?できれば早く行きたいんですけど・・・」
「ん?あれ?貴女はたしかカンバス・メライア?なっつかしいなー!去年の〜えっといつだったかな?図書館ダンジョンに男の子たちを引き連れてはいっt」
「は・や・く・行きたいんです♥」
「ごめんなふぁい」
ライブラに痺れを切らしたか、カンバスはライブラの両頬を引っ張り、笑顔で言った。
「えーとね。図書館ダンジョンは階段式ダンジョンだよ。その階の階段を探して下りて行くのが基本。モンスターやトラップはもちろんあるから注意してね。あ、出てくるモンスターたちはみんな既婚者で、君たちを追い返す仕事に集中してるから、そこの男の子をエサに進もうとしても無理だよ?しかも中のモンスターたちの給料は歩合制だからね。君たちを邪魔しないとお給金がもらえn・・・OK、話を戻すよ。だからカンバスは鞭を仕舞おう、ね?
で、えーと、どこまで話したかな・・・あーそうだ!図書室は各階層に1部屋〜2部屋あるからね。あと、君たちは始めての冒険だから、今回はB10階までしか行っちゃダメだよ。危ないからね。初心者は何よりも調子に乗らないことが大事!
あと、本は5冊まで貸出可能だよ。え?もらっちゃダメか?ダメ。中には今の検閲に引っかかるような物まであるからね。貸出期間は1週間。これ厳守。返却は私のとこまで。
OK?OK!ではいってらっしゃ〜い!」
ライブラの長ったらしい説明が一方的に行われ、最後にライブラが笑顔で手を振り、図書館ダンジョンの扉を開いた・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[図書館ダンジョン、B1階]
(Level 10)
扉をくぐった向こう側は、暗く、四隅に蝋燭の炎揺らめくレンガ造りの部屋だった。扉から入って正面と左右に鉄格子のついた道があり、その先は横幅が広いものの、蝋燭がわずかにしか照らさない、長い廊下になっていた。
「むぅ・・・貸し出し制限5冊とは・・・とりまファローに借りさせて10冊か・・・」
「どーしても読みたいんだな・・・」
「あったりまえじゃん!!私は学生時代を浪費してでも、この図書館ダンジョンの本を読破してやる!!」
(・・・毎週通う気か?)
ベルンがフェランとしゃべっていると、ファローがベルンの肩をバシンとひっぱたいた。
「いっで!?なにすんだよ!?」
「勝負だ!ベルン!」
ベルンが振り向くと、ファローはベルンの目にさす勢いで指をベルンに向け、言い放った。
「このファロー様とどちらが多くモンスターを倒せるか勝負だ!私が勝ったらなんでもひとつ、願いを聞いてもらうからな!」
「はぁ?」
「ちなみにお前が勝ったら私がデートしてやる!光栄だろう!」
「・・・いや、正直迷わk」
「さぁて何をさせてやろうかな・・・」
「聞いてくれ、人の話」
すでに勝った気でいるのか、低く笑いながらお願いごとを考えるファローに、ベルンはため息を吐いた。
「あの、ベルンくん・・・」
「ん?」
「が、頑張ろうね?」
その時、ニコリとベルンに笑いかけながら言ったナナに、ベルンは・・・
「・・・ありがてぇっ・・・!ありがてぇっ・・・!」
「えっ!?ちょ、な、泣かないで?だ、大丈夫?」
目を覆ってむせび泣いた。
「・・・シルク〜?これは普通の狩りより難度高いわよ?早くしかけなさい?獲物が逃げるわよ」
「え?どういうこと?」
「・・・ホントにこの娘ったら・・・」
ーーーーーーーーーーーー
[移動判定]
[出目1or4:正面の道
出目2or5:右の道
出目3or6:左の道]
[出目:1d6(1)]
ーーーーーーーーーーーー
ベルンたちは、正面の廊下を進んで行った。廊下は横幅はあるものの、壁にかかった蝋燭しか明かりがなく、足元は暗かった。ベルンは一番前を歩き、カンテラをかざしていた。
「・・・いやなんで俺が一番前なんだよ!?」
唐突にベルンが振り返って女子たちに聞いた。
「ベルンくん、男だろ?」
「ファローには任せらんないし」
「頑張って、ベルンくん♪」
フェラン、シルク、カンバスの順に言われ、ベルンはまた深くため息を吐いた。
そして、また前に進みでた時・・・
ーーーーーーーーーーーー
[探知判定]
[察知難度:2d10
出目(3+9)=12]
[ベルン察知点:16]
[探知成功!]
ーーーーーーーーーーーー
ベルンはピタリと足を止め、自分が踏むはずだった床板に注目した。
「・・・全員、ストップ」
ベルンの一言に全員が足を止める。ベルンは屈んで床板を調べた。
そこの床板は他の床板より5cmほど浮き上がっており、ベルンが1角を軽く押すとわずかに沈んだ。
「ビンゴ。これ、トラップ板。踏まないようにしてくれ」
「あらベルンくん、早速職業柄を発揮ね♥」
カンバスがベルンの頭を撫で、ベルンが少し照れる。
『ガコン』
瞬間、ファローが床を踏んでいた。
「お前ーーーーーーっ!?話聞いてたーーーーーーっ!?」
「はっ!お前のヘッポコ見抜きなんて誰が信用するかy」
ファローがドヤ顔で挑発した瞬間。
『シュピンッ!カィーーーンッ!』
横の壁から矢が飛び出し、ファローの頭の角に当たって弾かれた。
「「「「「「・・・・・・」」」」」」
『カラーン・・・』
全員が沈黙し、落ちた矢が乾いた音を鳴らした。
「・・・俺の。言うこと。聞く。OK?」
「・・・はい・・・」
ベルンの半ギレ混じりの押しに、ファローは涙目で頷いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
たどり着いた部屋には階段があり、他の部屋に続く通路は通ってきた道以外なかった。
「おー!最初から当たり!?」
「あら、幸先いいわね」
「よーし!では他の部屋に戻って本がないか探索を・・・」
そう言ってフェランが後ろを向くと、さっき入った扉がガッチリ閉まっていた。
「・・・あり?」
「あぁ、フェランさん。経験者からの一言だけど、このダンジョン、逆戻りはできないから。その階層を隈なく探索するのは至難の技よ?」
「・・・え?つまりこの階層の図書室は・・・」
「探索不可能ね」
瞬間、静かにフェランが膝をつき、がっくりと燃え尽きた。
「・・・なんでそんな面倒くさい仕掛けなんだ?」(ベルン)
「一回ですべて探索されたら、ダンジョンとして意味ないからじゃないかしら?」(カンバス)
「そんなバカな・・・」(シルク)
「・・・でも、このダンジョンの発案者って、校長先生だって聞いたことあるよ?」(ナナ)
『なるほど。納得』(フェラン以外)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[図書館ダンジョン、B2階]
(Level 10)
階段を降りた先の部屋は、B1階の入り口となんらかわらない部屋であったが、階段は部屋中央に下りており、部屋からの道が4つに別れていた。
「図書室優先しよ!!ね!?」
「わかった、わかったって・・・つうか俺だけじゃなくてみんなに言えよ」
フェランは半べそになりながら、ベルンの服の裾を引っ張りながら懇願していた。
ーーーーーーーーーーーー
[移動判定]
[出目1or5:正面の道
出目2or6:右の道
出目3or7:左の道
出目4or8:後ろの道]
[出目:1d8(7)]
ーーーーーーーーーーーー
左の道を進むベルン一行。
暗い道の先に扉が見えた瞬間、フェランがカッと目を見開いた。
「本の予感がするッ!」
「お前はもはやなんなんだよ・・・あ、おい!」
ベルンのツッコミも聞かず、フェランは扉に駆け寄り、バンと大きな音が響くくらいの勢いで扉を開けた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
フェランの嗅覚?は見事的中し、ベルンたちは部屋が本棚に埋め尽くされた部屋に出た。
「ひゃっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぅっ!」
「ちょっとフェラン!危ないわよ!!」
部屋に入ったフェランは興奮のあまりいきなり本棚に登って本を物色し始め、シルクとナナが駆け寄ってゆく。
「私も本を見ようかしら♪」
「・・・どっかで寝転んどこ」
カンバスも本棚に近寄って本を取り、ファローは入り口横地べたに寝転び始めた。
「自由すぎんだろ・・・まぁ、いいか・・・」
ベルンも本棚を横に見ながらぶらぶらし始めた。どうやら、その本棚は歴史書や古めの資料書の棚のようだった。
「・・・ふーん・・・へー・・・」
ベルンは誰にするでもなく生返事をしながら、ふと目に入った一冊の本に指をかけた。
それは・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[選択肢]
ベルンの選んだ本は・・・
1、『魔王四天史書:1代目クリタリスフ魔王様から現代目ナタリアスク魔王妃様までの代々の四天王の歴史』
2、『魔法装備品目録:初心者装備から禁忌装備までこれ一冊でわかる!武器・防具・指輪のカテゴリ分け有!』
3、『幼児魔物向け絵本:愚かな天使の兄弟のお話』
・・・で、あるが。
今週は『休暇週間』。
リクラスト学園には二週間勉強したあと、一週間休みがある。その一週間は自由期間。なにをしてもいい。ゴロ寝するなり、買い物するなり、デートして、そしてランデブー。この期間は門限さえ緩和されるのだ。
ただし、やはり学園は学園。最低限の宿題がある。
それは、一度冒険にでて、報告をしなればならないのだ。
「・・・ということでベルンくん!約束の図書館ダンジョンに行こう!!!」
目をキラキラさせたフェランに呼び起こされたベルンは、前回の空気っぽさがレベルMAXだったマミーを必死に引き剥がしながら部屋の玄関で応待した。
「・・・とりあえず、えーと・・・フェランだったっけ?まだ6時前なんだが?」
「冒険は朝早い方がいい!」
「どういうことなんだよ・・・」
頭を掻いて面倒臭く思ったベルンだったが、ハッとして、もしこのまま部屋にいたらどうなるかを予想した。
『ベルン!買い物行くわよ!』
『ベルンくん?喫茶店にでも行きません?』
『兄様・・・あの、成美と出かけませんか?』
三人の顔と、すぐあとに起こるであろうことを想像したベルンは・・・
「よし、行こう」
フェランの誘いを快諾した。
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そして、後悔した。
「あれ、ベルンくん?」
「げっ!?なんでアンタがいるのよ!?」
「あっ!ベルン、テメェ!」
ベルンの目の前には、ナナと、シルクとファローがいたのだ。
「・・・・・・フェラン?あいつらとは知り合いか?」
「ん?うん。昨日までの冒険講習のペアだよ」
ベルンは頭を抱え、大きく、重いため息を吐いた。
「あれ、ナナたちって、ベルンくんと知り合いか?」
「えっと、同じ授gy・・・」
「痴漢野郎よ!」
「ライバルだ!」
「・・・了解、把握。授業のクラスメイトだな」
この瞬間、フェランの理解力にベルンは一筋の涙を流すほど感謝した。
「・・・って、待てよオイ」
その時、ベルンはふと気付いた。
ベルン←後衛気味
フェラン←前衛確定
ナナ←後衛確定
シルク←後衛確定2
ファロー←おそらく前衛(性格的に)
つまり、前衛が二人、後衛三人のチームである。
「前衛ふたりでいいのか?ただでさえ回復魔法使えるやついないし、不安じゃないか?」
「ふふん。そこは心配いらないベルンくん。実はもう一人いらっしゃるのだよ」
指を揺らしてチッチッと舌を鳴らすフェランが得意げに言った。
「前衛で、かつ魔法が使えて、さらに上回生の方が手伝ってくれるのさ!」
「へぇ?一体・・・」
誰だ?と、ベルンが聞こうとした時。
「あら、ベルンくんじゃない。お久しぶり♥」
ベルンは後ろから抱きすくめられ、耳にこそばゆいような息とともに声がかけられた。
「わひゃぉ!?」
「うふっ、可愛い声だすわね♪顔に似合わないけど、いいわ♥」
「ね、姉さん!なにしてるのよ!」
ベルンを後ろから抱きしめていたのは、シルクの姉、カンバスだった。ベルンに抱きつき、ベルンの頭を撫でながらカンバスが答えた。
「あら、シルク、なにを怒ってるの?これくらい軽い挨拶よ」
「あっ、挨拶って・・・ダメよ姉さん!そんなやつにベタベタしたら!」
「やれやれ、未だに妹の男性潔癖性には困るわねぇ」
首を振ったカンバスはベルンから離れ、そしてベルンに紙包みを渡した。
「・・・?これは?」
「クラスメイトの茜さんから渡された物よ。昨日、ベルンくんと図書館に行くって言ったら、『そん時渡しといてくれへん?おおきに!』って言われたの」
ベルンは首を傾げたが、紙包みの重さと、茜とを連想して、中身を理解して包みを開けた。
「・・・おぉ」
中にはピカピカに磨かれたリボルバーが入っていた。それに手紙が添えてあり、ベルンはそれを開いた。
『べるん・とりにてぃ殿へ。
すまん!数日で壊れるようなモンを売りつけてもうて。ウチは品質は自身持って売っとるつもりやったし、実際評判はえぇねん。
やけど、新入生が使ってすぐ壊れるようなモン売ったと知れたら、評判落ちてまう。悪いけど、新品の銃包むよってに、堪忍してや!
分福 茜より』
手紙にはそうあり、ベルンは申し訳なく思いながらも、その銃を受け取ることにした。
「・・・なんか、形まで違う気がするけど・・・いいか」
「あらあら、茜さんが贈り物するなんて・・・気に入られてるのかしら?」
その発言にギョッとしたベルンが顔を上げると、案の定、他の女子陣(一人除く)がなんとも言えぬ顔をしていた。
「・・・ベルンくん、スケコマシか」
「・・・痴漢野郎」
「・・・と、年上趣味?」
「あ、いーなー。サラピンのリボルバーじゃん」
ベルンはやはり、大きくため息を吐き、横にいるカンバスはさりげなくニヤニヤしていた。
[ベルンは『ヴィンギナー・DS』を手に入れた!]
[『ヴィンギナー・DS(Dot Site)(32口径)
ヴィンギナーに改良を加えたリボルバー。覗き込んで使うサイトアタッチメントがつけられており、両手撃ちの際に、命中率が+10%される』]
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[図書館、B1階]
[ダンジョン受付]
「はいはいどーもこんにちわー!図書館ダンジョン受付嬢、兼、図書館ダンジョン説明役のミミックの『ライブラ』でーす!」
ベルンたちが受付へ下りると、やけにハイテンションなミミックが説明を始めた。
「やー久しぶりのダンジョン利用者だわー。図書館ダンジョン潜っても、入手できるのふっるい魔道書だったり旧魔物時代の今じゃタブーな文献だったり廃番になった書物しかないんだもん。お、しかも一回生かな?いやーずっとここにいると新入生も全然見なくて私とっても寂しくてさー」
((((むちゃくちゃ喋るな、この人))))
ベルン、ナナ、シルク、ファローは、ライブラのまくしたてるような会話に多少引いていた。
「・・・古い魔道書・・・禁忌の前代書・・・廃番のレア本・・・うふははははは・・・期待が膨らんで私の頭が破裂しそうだ・・・」
対するフェランは涎を垂らしてニンマリ笑っていた。
「ライブラさん?できれば早く行きたいんですけど・・・」
「ん?あれ?貴女はたしかカンバス・メライア?なっつかしいなー!去年の〜えっといつだったかな?図書館ダンジョンに男の子たちを引き連れてはいっt」
「は・や・く・行きたいんです♥」
「ごめんなふぁい」
ライブラに痺れを切らしたか、カンバスはライブラの両頬を引っ張り、笑顔で言った。
「えーとね。図書館ダンジョンは階段式ダンジョンだよ。その階の階段を探して下りて行くのが基本。モンスターやトラップはもちろんあるから注意してね。あ、出てくるモンスターたちはみんな既婚者で、君たちを追い返す仕事に集中してるから、そこの男の子をエサに進もうとしても無理だよ?しかも中のモンスターたちの給料は歩合制だからね。君たちを邪魔しないとお給金がもらえn・・・OK、話を戻すよ。だからカンバスは鞭を仕舞おう、ね?
で、えーと、どこまで話したかな・・・あーそうだ!図書室は各階層に1部屋〜2部屋あるからね。あと、君たちは始めての冒険だから、今回はB10階までしか行っちゃダメだよ。危ないからね。初心者は何よりも調子に乗らないことが大事!
あと、本は5冊まで貸出可能だよ。え?もらっちゃダメか?ダメ。中には今の検閲に引っかかるような物まであるからね。貸出期間は1週間。これ厳守。返却は私のとこまで。
OK?OK!ではいってらっしゃ〜い!」
ライブラの長ったらしい説明が一方的に行われ、最後にライブラが笑顔で手を振り、図書館ダンジョンの扉を開いた・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[図書館ダンジョン、B1階]
(Level 10)
扉をくぐった向こう側は、暗く、四隅に蝋燭の炎揺らめくレンガ造りの部屋だった。扉から入って正面と左右に鉄格子のついた道があり、その先は横幅が広いものの、蝋燭がわずかにしか照らさない、長い廊下になっていた。
「むぅ・・・貸し出し制限5冊とは・・・とりまファローに借りさせて10冊か・・・」
「どーしても読みたいんだな・・・」
「あったりまえじゃん!!私は学生時代を浪費してでも、この図書館ダンジョンの本を読破してやる!!」
(・・・毎週通う気か?)
ベルンがフェランとしゃべっていると、ファローがベルンの肩をバシンとひっぱたいた。
「いっで!?なにすんだよ!?」
「勝負だ!ベルン!」
ベルンが振り向くと、ファローはベルンの目にさす勢いで指をベルンに向け、言い放った。
「このファロー様とどちらが多くモンスターを倒せるか勝負だ!私が勝ったらなんでもひとつ、願いを聞いてもらうからな!」
「はぁ?」
「ちなみにお前が勝ったら私がデートしてやる!光栄だろう!」
「・・・いや、正直迷わk」
「さぁて何をさせてやろうかな・・・」
「聞いてくれ、人の話」
すでに勝った気でいるのか、低く笑いながらお願いごとを考えるファローに、ベルンはため息を吐いた。
「あの、ベルンくん・・・」
「ん?」
「が、頑張ろうね?」
その時、ニコリとベルンに笑いかけながら言ったナナに、ベルンは・・・
「・・・ありがてぇっ・・・!ありがてぇっ・・・!」
「えっ!?ちょ、な、泣かないで?だ、大丈夫?」
目を覆ってむせび泣いた。
「・・・シルク〜?これは普通の狩りより難度高いわよ?早くしかけなさい?獲物が逃げるわよ」
「え?どういうこと?」
「・・・ホントにこの娘ったら・・・」
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[移動判定]
[出目1or4:正面の道
出目2or5:右の道
出目3or6:左の道]
[出目:1d6(1)]
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ベルンたちは、正面の廊下を進んで行った。廊下は横幅はあるものの、壁にかかった蝋燭しか明かりがなく、足元は暗かった。ベルンは一番前を歩き、カンテラをかざしていた。
「・・・いやなんで俺が一番前なんだよ!?」
唐突にベルンが振り返って女子たちに聞いた。
「ベルンくん、男だろ?」
「ファローには任せらんないし」
「頑張って、ベルンくん♪」
フェラン、シルク、カンバスの順に言われ、ベルンはまた深くため息を吐いた。
そして、また前に進みでた時・・・
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[探知判定]
[察知難度:2d10
出目(3+9)=12]
[ベルン察知点:16]
[探知成功!]
ーーーーーーーーーーーー
ベルンはピタリと足を止め、自分が踏むはずだった床板に注目した。
「・・・全員、ストップ」
ベルンの一言に全員が足を止める。ベルンは屈んで床板を調べた。
そこの床板は他の床板より5cmほど浮き上がっており、ベルンが1角を軽く押すとわずかに沈んだ。
「ビンゴ。これ、トラップ板。踏まないようにしてくれ」
「あらベルンくん、早速職業柄を発揮ね♥」
カンバスがベルンの頭を撫で、ベルンが少し照れる。
『ガコン』
瞬間、ファローが床を踏んでいた。
「お前ーーーーーーっ!?話聞いてたーーーーーーっ!?」
「はっ!お前のヘッポコ見抜きなんて誰が信用するかy」
ファローがドヤ顔で挑発した瞬間。
『シュピンッ!カィーーーンッ!』
横の壁から矢が飛び出し、ファローの頭の角に当たって弾かれた。
「「「「「「・・・・・・」」」」」」
『カラーン・・・』
全員が沈黙し、落ちた矢が乾いた音を鳴らした。
「・・・俺の。言うこと。聞く。OK?」
「・・・はい・・・」
ベルンの半ギレ混じりの押しに、ファローは涙目で頷いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
たどり着いた部屋には階段があり、他の部屋に続く通路は通ってきた道以外なかった。
「おー!最初から当たり!?」
「あら、幸先いいわね」
「よーし!では他の部屋に戻って本がないか探索を・・・」
そう言ってフェランが後ろを向くと、さっき入った扉がガッチリ閉まっていた。
「・・・あり?」
「あぁ、フェランさん。経験者からの一言だけど、このダンジョン、逆戻りはできないから。その階層を隈なく探索するのは至難の技よ?」
「・・・え?つまりこの階層の図書室は・・・」
「探索不可能ね」
瞬間、静かにフェランが膝をつき、がっくりと燃え尽きた。
「・・・なんでそんな面倒くさい仕掛けなんだ?」(ベルン)
「一回ですべて探索されたら、ダンジョンとして意味ないからじゃないかしら?」(カンバス)
「そんなバカな・・・」(シルク)
「・・・でも、このダンジョンの発案者って、校長先生だって聞いたことあるよ?」(ナナ)
『なるほど。納得』(フェラン以外)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[図書館ダンジョン、B2階]
(Level 10)
階段を降りた先の部屋は、B1階の入り口となんらかわらない部屋であったが、階段は部屋中央に下りており、部屋からの道が4つに別れていた。
「図書室優先しよ!!ね!?」
「わかった、わかったって・・・つうか俺だけじゃなくてみんなに言えよ」
フェランは半べそになりながら、ベルンの服の裾を引っ張りながら懇願していた。
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[移動判定]
[出目1or5:正面の道
出目2or6:右の道
出目3or7:左の道
出目4or8:後ろの道]
[出目:1d8(7)]
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左の道を進むベルン一行。
暗い道の先に扉が見えた瞬間、フェランがカッと目を見開いた。
「本の予感がするッ!」
「お前はもはやなんなんだよ・・・あ、おい!」
ベルンのツッコミも聞かず、フェランは扉に駆け寄り、バンと大きな音が響くくらいの勢いで扉を開けた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
フェランの嗅覚?は見事的中し、ベルンたちは部屋が本棚に埋め尽くされた部屋に出た。
「ひゃっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぅっ!」
「ちょっとフェラン!危ないわよ!!」
部屋に入ったフェランは興奮のあまりいきなり本棚に登って本を物色し始め、シルクとナナが駆け寄ってゆく。
「私も本を見ようかしら♪」
「・・・どっかで寝転んどこ」
カンバスも本棚に近寄って本を取り、ファローは入り口横地べたに寝転び始めた。
「自由すぎんだろ・・・まぁ、いいか・・・」
ベルンも本棚を横に見ながらぶらぶらし始めた。どうやら、その本棚は歴史書や古めの資料書の棚のようだった。
「・・・ふーん・・・へー・・・」
ベルンは誰にするでもなく生返事をしながら、ふと目に入った一冊の本に指をかけた。
それは・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[選択肢]
ベルンの選んだ本は・・・
1、『魔王四天史書:1代目クリタリスフ魔王様から現代目ナタリアスク魔王妃様までの代々の四天王の歴史』
2、『魔法装備品目録:初心者装備から禁忌装備までこれ一冊でわかる!武器・防具・指輪のカテゴリ分け有!』
3、『幼児魔物向け絵本:愚かな天使の兄弟のお話』
13/07/13 14:58更新 / ganota_Mk2
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